旅記録

2000 夏 北海道(道南)
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浜松 − 東海道本線・ムーンライトながら → 東京 −山手線→ 上野
−東北本線 → 黒磯 →福島 → 仙台 → 一関 → 盛岡 → 青森
2000/08/30
 蒸し暑く、老朽化した文丘荘でパッキング。今夜は順調に輪行も進み、収まりも良い。一人ホームに駆け上がり、電車を待つ。もうすっかりシーズンも終わりかけて空いているムーンライトながらがホームに入る。場所の取り合いもなく、座席にも座れて東京まで眠る。
 東京で一応、気合いの乗り換えをやったが、3分後の山手線には乗り遅れたが、その1分後の京浜東北線には乗れて上野発の東北線始発には間に合った。黒磯行き始発に乗って、再び眠る。目が覚めると宇都宮だ。そろそろ黒磯も近い。黒磯で気合いの3分乗り換えだ。荷物をすべて一気に持ち電車を降りて、階段を駆け上がり郡山行きに乗り換える。今回もぎりぎりセーフ。もはや「慣れ」すら感じる。
 るるぶを読んだり音楽を聴いたりケータイメールで遊んだりしながら、乗り続け福島で乗り換え、仙台で乗り換え、一関で乗り換え・・・とこなし、最後に盛岡で乗り換えて青森に到着。今日の移動は終了だ。駅ビルと駅の間の隙間にシュラフを広げて、近くのコンセントでケータイを充電して寝る。ストリートミュージシャンがうるさい。力尽きたときに眠りについた。

青森 −津軽海峡線・海峡→ 函館 −函館本線→ 長万部
2000/08/31
 青森はもう秋で、寒い。微妙な寒さとおびただしい数の小学生の声で目が覚めた。遠足の集団が大集合している。あわててシュラフを片づけて撤収した。この姿は教育上よろしくない。
 電車は昼前だ。しばらく暇なので青函連絡船・八甲田丸を見物。船に電車を積んで函館と青森をつないでいたという時代に驚きだ。
 バス待合室で携帯電話を充電し、時間をつぶす。ちょっと電源を入れてメールで遊んでいたら、すぐ電池がなくなる。携帯電話をツーリングに持って行くのは初めてだが、今後、こいつの充電に振り回されるのだろうか。2日目にして不安を感じる。
 昼食を買い込み、快速・海峡 函館行きに乗り込む。いろいろと思い出のある電車だが、こんなスタイルの輪行も今年で最後なのかと思うと少し寂しい。ホタテ弁当とリンゴのシャーベットをほおばりながら、ねぶたの柄のリンゴジュースは、パッケージも旅情あふれており、100%でうまい。リンゴジュースはあまり好きじゃない俺でも楽しめる。
 走り出した電車の車窓から、懐かしい蟹田からの陸奥湾を眺める。陸奥湾の海の青は太平洋や駿河湾や他の日本海と色が違い、何か深みがある。少し金属っぽさを感じる青い海だ。海の向こうには下北半島が見えている。こじんまりとした湾だ。
 長い青函トンネルに入った。抜ければ北海道だ。すっかり乗り慣れた路線だが、わくわくする。トンネルに入ったら昨夜の野宿の影響で疲れているので眠った。目が覚めた頃にはもう函館の街が見えてきた。

青森駅名物 凍りんご



帆立飯とリンゴジュース

 函館駅の通路を歩いていると足下から違和感が・・・ SPDサンダルのストラップがソールから抜けてしまった。走るための靴がなくなってしまう。途方に暮れている暇もない。切れたのが函館だったのが幸運。デパートの地下の靴修理のところに持って行った。年季も入ってるし若干汚いし、まず靴じゃない。だめもとで修理依頼してみたらあっさり引き受けてもらえた。そのまま待つこと10分 値段は忘れたが割と安い修理代で帰ってきた。足のホールド感もしっかりある。強度も十分。これで今回のツーリングも乗り切れそうだ。
 意気揚々と長万部行きの普通電車に乗り込む。北上するにつれて徐々に天気が悪くなってきた。長万部に到着すると、夕方ですっかり曇っている。公園を探してキャンプするのもアリだが、面倒なので自転車を組んで駅寝とする。駅員がいたので遠慮して駅の表にテントを張っていたら、「中で寝ていいよ」と声をかけられた。すっかり安心して、長万部名物駅弁の蟹飯を買いに行き、飯を食ってから風呂、駅に戻ってベンチにシュラフを広げて眠りについた。

1日目 長万部 → 昭和新山 → 洞爺湖 → 伊達 113.91km
2000/09/01
 始発列車の客の出入りで目覚めた。荷物をまとめて出発の準備をする。いよいよ学生生活最後、もしかすると一生で最後になるかもしれないツーリングの初日だ。最後を惜しむかのようなどんより曇った空。雨降らずに昭和新山や洞爺湖が眺められる程度にもてばいいと願いつつ出発。わくわくした感覚より、終わってしまうことの寂しさもある出発だ。それに天気も悪いし、寒い。
 そんな天気に対する願いも儚く散った。20kmほど走って虻田を通過する頃には大粒の雨が降ってきた。時間を追うごとに雨脚は強くなる一方だ。今日はあきらめるしかない。虻田で雨宿りをしつつ休憩をして再出発。
 虻田から昭和新山、有珠山、洞爺湖の方へ上っていく。北海道らしくちんたらちんたら上る坂。周りの山々はガスっていて頂上までは見えない。すぐ左には噴火したばかりで、まだ活動中の有珠山が見えるはずだが見えてこない。そんな坂も登り切ると右に昭和新山が見えてきた。赤茶けた岩の固まりから蒸気がもくもくでている。この天気の中、昭和新山がみれたのはラッキーだった。洞爺湖に向けて出発しようとしたころには、霧がかかり山が全く見えなくなってしまった。洞爺湖に下り、真っ青な美しい湖面が・・・と言いたいところだが、霧の向こうにかすんでる島と鉛色の湖面。土砂降りの雨。火山灰で泥だらけの道。とりあえず洞爺湖に来てはみたが、何も見所はない。とりあえずは洞爺湖の湖畔で昼食をとるべく、観光地の真ん中まで走る。
 観光地のど真ん中から有珠山へ向かう道は通行止めだ。通行止めのフェンスの向こうには全壊したガソリンスタンドがあり、すぐ近くで噴煙が上がっている。3月の有珠山噴火の爪痕が生々しい。衝撃的過ぎて呆然としてしまうだけだった。
 適当に洋食屋で昼食を済ませて暖を取らせてもらい、引き返す。さすがに秋も近く雨が降ると寒い。洞爺湖を眺めながら来た道を引き返し、昭和新山の方へ上り、また来た道を下っていく。ほとんどの道が通行止めなので道を選ぶことはできない。
 虻田に下った後は、東へ向かい、日も暮れてきたところで伊達市内でキャンプ。何とか雨をしのげる屋根付き東家も見つけ、ひとまず安心して風呂に入る。・・・と雨足はかなり強くなってきた。屋根があるから安心。夜中になって突風が吹き荒れ始めた。テントごとひっくり返りそうな突風だ。テントがよこから煽られる。風上に体重をかけて荷物を集めてしのぐ。眠れない夜が続く。風がようやくおさまった時、眠りについた。


長万部 出発!
学生生活 最後の旅へ・・・



昭和新山


有珠山の噴煙


雨の洞爺湖畔



   出発(北海道長万部町)から 113.91 km

2日目 伊達 → 室蘭 → 奥登別(倶多楽湖) → 登別温泉 87.46km
2000/09/02
 もの凄く疲れの残る朝だ。テントの周りは木の葉や枝が散らかっていた。昨夜のすごさが分かる。しかも雨はやまない。憂鬱な気分でテントをダラダラとたたみ出発。
 小雨の中、室蘭に向けて走る。こんな天気だが地球岬と白鳥大橋を見ておきたい。昨夜の風の強さは若干引き継いでいて不安定な風で、向かい風や追い風を繰り返す。
 一瞬の晴れ間に白鳥大橋を眺める展望台だ。ここ一発だけはツキが残っているのかもしれない。白鳥大橋と室蘭の海を眺めていると、白鳥大橋を渡るのが楽しみになってきた。いよいよ白鳥大橋の入り口への上り坂だ。坂のつらさより橋を渡る楽しみが勝り勢いよく上っていく。そして衝撃の看板が!!「自動車専用道路」坂の手前で書いてくれ。
 結局、橋を渡ることはできず、室蘭港を回り室蘭市内を通過して地球岬を目指す。最後に地球岬への急な坂を上っていると地元の子供が話しかけてきた。情けないかな子供が坂を歩くスピードに勝てるか勝てないかのスピードで上っていく。天気が悪く水平線も見えず、海も空も鉛色。単調にすら思える景色。楽しみといえば地球岬に女子大のサイクリング部の集団が居たことぐらいだ。
 坂を下り、コンビニでフロントバッグを開けたときに、さわやかな香りがした。シャンプーがだだ漏れして、中の荷物に広がってしまった。セイコーマートの前でうちひしがれながら、洗える荷物を洗って袋に詰め直した。手持ちのCDも全部シャンプーまみれになった。室蘭市街の電器屋でCDケースを買い、それなりに体裁を整えて出発。室蘭から電話をかけて登別温泉のYHを予約。もう天気も悪いしキャンプする気にはなれない。それにしても今回から初めて携帯電話をもったのだがYH予約は楽だ。
 室蘭からは雨だが追い風に乗ってあっという間に登別まで走りきった。精神的にはぼろぼろだが肉体的余裕はあるので、一山上って倶多楽湖(くったら湖)と奥登別を見に行くことにした。天気が悪かろうと最後のツーリングにもなるかもしれない焦りから来る変な積極性が俺を駆り立てる。うっそうとした森の中の林道を上って行くと、小さな湖が見えてきた。雨と風で波立っているが、そこまで見通せる透明度が分かる。
 湖から登別の温泉街へ下る途中に源泉と地獄谷がある。硫黄のゴツゴツした岩と吹き出す蒸気が豪快だ。
 日も暮れて間違えて下りすぎないように気をつけてYHを探す。割と坂の下の方にあったが、何とか通り過ぎず到着。ずぶぬれの荷物を宿に入れさせてもらい、自転車も屋根の下に置かせてもらえた。時期が遅いのでライダーの姿もまばらだが、熟年のライダーなども居た。
 まずは温泉だ。これに入らないと話にならない。宿を出て行き、ホテルの日帰り入浴で満喫。雨で冷え切った体は底から温まる。帰りにビールとつまみを買いYHに戻る。心に決めた禁酒をここで解除。わずか2日目だが、飲まないとやってられない。時期が遅く玄人ばかりの旅人揃いで会話は盛り上がった。
 明日は晴れてくれ。そんな気持ちを共有して眠りにつく。

室蘭白鳥大橋 展望台




奥登別 倶多楽(クッタラ)湖




登別 大湯沼


登別 地獄谷



   出発(北海道長万部町)から 201.37 km

3日目 登別温泉 → 白老 → 支笏湖 77.01km
2000/09/03
 ついに北海道に来て初めて青空が見えた。いよいよ、本領発揮する時だ。YHの旅人達とともに晴天の喜びを共有する。
 しかし、雨の後の晴れは強い風を生む。すべて向かい風の突風として俺を食い止めた。だが、晴れの日に走れる喜びの方が勝っている。緑が鮮やかな牧場と青い空と青い海を眺めながら、苫小牧へ向かう。走りはきついが、のどかな景色が、いかにも北海道らしく心地よい。
 こんな日は寄り道も楽しい。まずは白老のポロトコタンでアイヌの文化を見学。異国情緒と古き日本(本州)の田舎をあわせた不思議な感覚だ。天気も良いので寄り道も楽しい。
 また、向かい風に耐えて東へ向かう。当初の予定では傾斜も少なく楽だろうと予測して苫小牧市街から支笏湖へ上ろうと思っていたが、向かい風の距離を減らすべく、苫小牧より手前で左折して道道へ向かった。最後にダートも残ってるぐらいだから道は悪くてガンガン上らされて・・・という道を想像していたが、意外や意外。国道よりよっぽど道はきれいに舗装されていて、しかも真正面に樽前山を眺める豪快な道だ。車のCMに使いたくなるような景色だ。
 頂上を越えるとダートだ。割と締まった砂のダートだが、路面の凹凸は多い。CDが音飛びしまくる。バランスをとりながら下っていると、腰が痛くなってきた。
 そして意外と楽しませてもらった下り坂を終えると支笏湖畔だ。今日は支笏湖の向こうの恵庭岳の稜線も美しく青く澄み切った湖面だ。湖の眺めはこうでなきゃいけない。YHの近くへ買い出しをしに行こうとしたが、店らしきものは見あたらず、しかも予定のキャンプ場への道を間違えて立ち往生。ただでさえ疲れがたまってきたのに、きつい。
 モーラップキャンプ場に到着したところで、遅い昼ご飯だ。名物のヒメマスを・・・と思ったが今年は不漁な上に時期が過ぎた冷凍で高い。あきらめて、イモモチで済ませた。それでも北海道を感じさせる美味だ。湖畔にテントを張り、テントに荷物を放り込んでペグをしっかりたたき込んで、夕食の準備と風呂だ。
 風呂から出ると、ちょうど夕焼けがみれた。ていうか夕陽を見逃した。夕暮れの湖畔の雰囲気は大好きだ。しばしまったりとした時間を過ごす。
 キャンプ場内の売店で何でも売っていた。米は持っていたので、ビールとジンギスカンとタマネギを買って、氷を少しをもらい準備万端だ。全5日間のこの旅の3日目にして初めての自炊だ。マトンの臭みが嫌いな人はいるようだが、俺は好きだ。結構、きつい走りを強いられただけにタンパク質はありがたい。しかしフライパンで作るジンギスカンは味が濃すぎて飽きる。やはり北海道に来るときはジンギスカン鍋持参が基本なのだろうか・・・。(当時、使い捨てのものは売ってないか あることすら知らなかった)それにしてもビールとジンギスカンはよく合う。ご飯とジンギスカンもよく合う。すばらしい。満腹、酩酊状態で眠りにつく。支笏湖畔の夜は結構寒い。もう秋だ。



白老 ポロトコタン


道道141号 樽前山方向




支笏湖
テントから見る夕暮れ


キャンプで作るジンギスカン



   出発(北海道長万部町)から 278.38 km

4日目 支笏湖 → 美笛峠 → 喜茂別 59.41km
2000/09/04
 湖面に立ちこめる朝霧が神秘的だ。売店のイモモチで朝食を済ませてテントをたたんで出発。周りのファミリーキャンパーと会話が盛り上がり楽しい朝となった。相変わらず抜けるような秋の青空の下で、湖畔の道を気持ちよく走る。左は深い森、右は木々の間から紺碧の湖面の支笏湖、湖の向こうには恵庭山の稜線がくっきりと見える。今日は昨日ほど風も強くなく湖面も静かだ。
 こんな日は徹底的に寄り道するに限る。今日は中山峠を越える気はないので、走り自体は少ないので気楽だ。
 早速、苔の洞門に寄り道してトレッキングだ。樽前山が活火山だった頃にできた地形に苔が生えて、ちょっとうっそうとしてるところを歩けるコースになっている。岩に囲まれた狭くて薄暗いコースが続く。途中、切り通しに岩が挟まったところをくぐり抜けるスリルなんてのもある。自然の神秘を感じる。
 楽しませてもらった支笏湖沿いから抜けて、美笛峠へと登っていく。峠の途中で美笛の滝へ向かう林道へ曲がる。割と整備されたダートを力強く走り、行き止まり。そこから登山道を5分ほど歩くと、白くまぶしい滝だ。天気もいいし水もきれい、水量も十分で迫力もある。
  大満足で峠に戻る。峠は峠で北海道独特の雰囲気。大きなすり鉢状の谷を回りながら上っていく。豪快な峠に北海道のスケールの違いを感じる。峠自体はきつすぎず退屈すぎず、それでいて眺めもよく頂上から樽前山と恵庭岳と支笏湖を見下ろせる。おそらく、ここから見る支笏湖が最後だろう。支笏湖に別れを告げてトンネルをくぐり峠を下る。
 下りの途中の道の駅 フォーレスト276大滝で休憩と昼食だ。世界最大のログハウスと書いてある。適当におにぎりやらおかずをかき集め、1杯100円のキノコ汁を食う。100円のキノコ汁にすっかりハマってしまった。キノコの出汁がよく出た味噌汁がうまい。わずか100円でここまで満足させられてしまうのも素晴らしい。
 もう今日の宿泊予定地の喜茂別までは下りONLYだ。トウモロコシ畑の向こうに羊蹄山が見えている。富士山みたいなきれいな稜線がいい。富士山フェチの俺としては蝦夷富士という呼び名はいただけないが、富士山に敬意を表してのネーミングなので許す。楽勝のうちに喜茂別に到着。この後は札幌に行く中山峠のみだ。峠を越えて無理して札幌まで行ってもしょうがないので、ここで一泊だ。公園も風呂もあっという間に見つけた。町で唯一のセイコーマートもある。
 夕飯も道の駅で100円キノコ汁だ。道の駅のテラスで夕日に染まる羊蹄山を見ながらビールと焼き鳥とおにぎりとキノコ汁で夕食。大満足。ちょっと酔っぱらったところでテントで眠りにつく。 

朝の支笏湖


苔の洞門
岩が挟まっている


美笛の滝


美笛峠から見る樽前山


道の駅 大滝
世界最大ログハウス


美笛峠下りからの羊蹄山


喜茂別からの羊蹄山夕暮れ



   出発(北海道長万部町)から 337.79 km

5日目 喜茂別 → 中山峠 → 札幌 75.04km
2000/09/05
 順調にいくと、今日は最終日だ。もしかするとサイクリストとしての最終日かもしれない。寂しさを感じながら中山峠に向けて出発。最後を飾るにはふさわしい峠攻めにしたい。きっちり札幌まで走り切りたい。気合いと羊蹄山を眺める楽しさ両方を持って峠に挑む。中山峠はチャリダーであれば誰でも越える峠だ。不安はない。
 みんなに言われているほどきつくもない。しばらくはインナーギアを使わずに上れてしまった。最後の最後だけ疲れからインナーギアを使ったもののインナーの1速は最後まで使わずに越えた。何かやり切った感がないが、もしかしたら最後かもしれない峠を越えた。気持ちのどこかに「これで最後かもしれない」が染みついているせいか、盛り上がりより寂しさが勝つ。

中山峠 踏破!
札幌市へ…
 峠でジャガイモ三昧で昼食を済ませ、札幌へ下る。慎重に攻める。昔は80km/h以上出して無茶な下りをしていたが、今は速度より完走だ。定山渓の温泉街もすぎ、一気に都会化してきた。ついに札幌の市街地へ到着。ラストスパート!! そして横断歩道を渡りきり、札幌駅に到着!!今年も短かったものの完走を果たした。完走した喜びは相変わらず強い。しかし、これで「終わった」という感覚はなかった。来年の今頃も完走した喜びを味わっている自分を想像した。学生時代で終わりという気持ちだけは起こらなかった。まだ気持ちに整理がつかないだけなのだろうか。
 駅前に自転車を止めて、YHの予約の段取りをする。もともとは応用物理学会を聞きに行くために札幌に来ている。駅に近いYHを2連泊おさえた。さっさとYHへ移動し、宿に荷物を入れる。淡々と風呂にも入り、飯を食う。部屋に戻ると応用物理学会組がいっぱいいた。どう見ても、そういうアカデミックな雰囲気の無い俺が専門的な話をするので驚いていた。部屋自体は野生派 vs 知性派 という感じである。ミーティングルームのノートを見ると、「卒論頑張ります ○○大 工学部・・・」なんて書いてあり、幻滅だ。こんなことならキャンプにすりゃよかったかとさえ思う。
 今日の完走の喜びと、これで旅が永久にまたは数十年の間は休みになってしまうかもしれない寂しさの入り混じった若干複雑な感情を持って眠りにつく。


   出発(北海道長万部町)から 412.83 km

6日目 (札幌市内) 0km
2000/09/06
 今日は、札幌市内を歩いて観光してみる。あんまり天気もよくないし、たまには歩いてみるかとばかりにYHを歩いてでかける。札幌駅で情報収集をして、大通り公園の方へ行く。何となく見慣れた景色だ。時計台、二条市場、旧道庁など定番コースを散策。昼食にはラーメンとジャガイモ。まあ、何となく札幌観光を楽しんだ。
 夕方に一度YHに戻るが、結局学会には一度も顔を出すことはなかった。夜からは研究室の連中と合流し、ビール園へ飲みに行く。すっかり酔っぱらってYHに戻る。ちなみに飲みメンバーの一人は数年前に日本縦断した時に札幌駅でバッタリ会ったやつだ。 

札幌時計台


大通公園


札幌市資料館


7日目 (札幌市内・小樽市内) 0km
2000/09/07
 今日は大学の同期の連中と一緒に小樽へ行き、観光&寿司だ。たまにはリッチな旅もいいものだ。札幌駅の待合室に輪行したチャリを置いて、小樽へ移動。ちょうど昼時なので寿司屋に入り、いろいろと頼む。さすが北海道だ。貧乏学生の五臓六腑にしみわたる。すっかり満足して、市内へ。小樽も数回来てるので、ほとんどガイド状態だが、それなりにエンジョイした。そして札幌に戻り飛行機で飛び立つやつは千歳へ。泊まるやつは夜の飲みへ…。
 同期のオススメで札幌の魚や一丁へ。ボリュームも味もすごい。味は当然うまいが、ボリュームがいい。鮭茶漬けは、大ぶりな鮭の切り身が乗っている。

札幌駅にて 輪行完了!

8日目 札幌 −室蘭本線・ミッドナイト→ 函館 −津軽海峡線・海峡→ 青森
−羽越本線→ 秋田→ 酒田 → 村上
2000/09/08
 そんな貧乏旅離れした時間も終わり、帰りの電車だ。札幌駅でメールで遊びつつミッドナイトを待つ。今回は指定席も取れたので安心だ。ここから先は長い。渋い感じの電車が入ってきた。電車に乗り込み寝れるぐらいリクライニングするシートで眠りにつく。しっかり寝ておかないと明日がつらい。
 起きたら既に函館だ。夜行列車でこんなにしっかり爆睡できたのも珍しい。ある意味スキルを身につけたということだろうか。函館で降りて駅でニシン蕎麦を食い、快速・海峡の始発を待つ。サンダルを直したり、いろいろと思い出の多い街になった。
 そしてドラえもん満載の海峡に乗り、北海道を離れる。これもカーペットカーなので爆睡。今さらトンネルなど珍しくもない。そして起きたら蟹田だ。懐かしい蟹田の海岸。不思議な色の陸奥湾。こんな景色もこれからは、なかなか見ることもできなくなるんだろうかと思うと、寂しい。そんな気分にさせる海だ。
 青森で3時間待ち。青函連絡船・八甲田丸を見物し、青森駅に戻る。秋田行きの電車に乗り、淡々と乗り換えをこなす。
 大館駅で15分停車なので、本家 忠犬ハチ公像で写真を撮り、抑えるべき所はしっかり抑えて、電車に戻る。本荘からの日本海沿いはサンセットだ。夕陽をみると寂しくなる、サラリーマンのブルーな気分が少し分かる学生の俺だった。
 寂しくなるような夜の乗り換えをこなし、いよいよ村上だ。ここでムーンライトえちごに乗り換える。これも指定席を押さえてあるので、楽勝だ。乗り込んで爆睡。熟睡。完睡。すっかり夜行慣れしてしまった俺だ。

快速ミッドナイト


快速 海峡 (現在は廃止)
カーペット車で快適。

大館駅 忠犬ハチ公と比内鶏

9日目 村上 −ムーンライトえちご→ 水上 −上越新幹線→ 高崎−高崎線→
上野 −京浜東北線→ 東京−東海道本線→ 熱海 → 浜松
2000/09/09
 そして目覚めると、周りがザワザワしてる。新宿到着の時間は過ぎているが、どう見ても風景は山奥。越後湯沢から先は豪雨により止まってしまった。青春18切符だが、越後湯沢から水上まで新幹線始発に乗れることになった。そして新幹線ホームへ移動。どうせ一駅なので通路につったって待つ。トンネルを越えて駅に到着。そして輪行で荷物てんこ盛りの俺だが改札にトップで突入。ムーンライトの乗り換え組がいっぱい来るのは分かってるはずなのに18切符を見せたら、特急料金をどう扱うかを議論し始めた。なんで、そんなことを未だに決めても居ないのだろう。別に遅れてるのはどうでもいいのだが、新幹線代を請求されても困るので先頭の働きは重要だ。そこでサングラスと無精ひげの俺が、「何でまだ決めてねえんだよ 早くしろ」と怒ってみると、18切符で乗れることになったようだ。ゴネ勝ちだ。
 ここからは淡々と何事もなく電車を乗り継ぎ、浜松に到着。何となくフェイドアウトして旅が終わっていく。そして浜松駅でチャリを組んで家に帰った。俺の夏、そして俺の旅は終わった。いつか年を取ったあとでも定年した後でも走れたら走りたい。


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