0〜1日目 |
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宇都宮−東北新幹線→東京−東海道本線→品川
−東海道本線・ムーンライトながら91→岐阜 |
2004/08/06
2004/08/07 |
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岐阜→郡上八幡 |
62.77km |
今年は準備で徹夜、そして仕事、そして出発という序列は崩れた。しかしギリギリ出勤前に準備を済ませ、会社へ行き屈辱と恥辱に耐えながら仕事をこなして、PRELUDEをとばして速攻で帰ってきて速攻でパッキングして出発。
すぐに宇都宮駅でチャリをばらして、21:30の新幹線に乗り込む。ほぼムーンライトながらに間に合うだろう。安心して東京到着を待つ。 程なく東京に到着し、東海道線のホームへ。臨時ってどこから発車だっけ?時刻表を見ると品川のようだ。品川までの移動がめんどくさいが岐阜に1時間近く早く到着できるメリットを生かしたい。激混みの東海道線にフル装備持ち込み、気合いで品川駅に降りる。
品川で汗だくになりながらムーンライトながら91を待つ。ホームに列車が来たら、すぐに荷物を通路につっこみ発車を待つ。全車指定席で指定席券が無いと乗れないとしつこく放送されている。しかし、券が無くても俺は乗る。発車前に車掌が切符をもぎりに来ている。それをホームで交わして、いよいよ発車。でてしまえばこっちのもんだ。 |
地図を見たりまっぷるを見たりして時間をつぶす。ドアの前で寝ていたいのだが、停車駅の度に開くドアが左右変わって全然寝れない。浜松を過ぎたところで、席が空いたので座らせてもらえた。つかの間の眠りについた。 しかし、レム睡眠が終わりもしないうちに岐阜到着。疲れ切った体で荷物を運び出す。駅の前で自転車を組み立てる。とにかく眠くて疲れてはかどらない。気分も上の空状態だ。
気付けに食欲も無いが朝食を取り、出発。数年前の初日事故リタイアの悪夢がよぎるほど疲れていて集中力もない。あふれんばかりのモチベーションもすでにない。そして岐阜の湿っぽい猛暑が俺を襲う。35kgの荷物と15kgの自転車を運んだ疲労で走りも伸びない。
しかし、今日は距離は短い。何とか昼過ぎには郡上八幡に着いて観光したいものだ。美並で「日本のまんなか」なんて標示が出てきた。全くノーマークだったが、日本の4隅を制している俺にさらなるメモリアルか?と期待させられた。今年の目標の最高地点と別に花が添えられるかと思っていた。さらさらと流れる長良川に沿って変な記念碑にあがってみた。「日本人口重心」なんじゃそりゃ。期待させられただけにガッカリだ。
何とか昼前に郡上八幡に到着。イメージ通りいやイメージ以上に風情のある街だ。きれいな水がサラサラと流れてる街並にフェチズムを感じる俺にはたまらない。見た目は涼しげだが、今日は暑い。そこだけが期待はずれだ。ただ、今日は暑くてバテバテなので、そこら中にわき水が出ていて水が飲めるのは助かる。天然水なので、うまい。
バテがちょっとだけ回復したところで、郡上八幡の町中で昼食を買い集める。朴葉寿司と明宝ハムと鮎の塩焼きを買い、河原に出て足を水につっこんで昼食を食う。どれも、めちゃうまだが、基本的に今日は暑く涼は得られなかった。本格的に泳ぎたいところだが、着替えもあんましない。
ちょっとだけ街を散策して、宗祇水の町並みの日陰で地元の婆さんと立ち話をし、12mの橋の上から飛び込んでる奴らを見て、とてもじゃないがへたれな俺にはできんと足がすくんだところでにわか雨が降ってきたので、チャリを屋根の下に止めて橋の下で川からの風を浴びて休む。疲れからか寝てしまった。
起きたら大学の同期からのメールがケータイに入っていて、すでに郡上八幡入りしているようだ。とりあえず俺のキャンプ予定地に呼び、テントを張っていると、土砂降りの雨が降ってきた。隣のサイトのファミリーのタープの下に避難させてもらった。雷と雨が凄い。タープの下で一安心したのもつかの間。だんだん水がたまって垂れ下がってきた。俺も水をはきだすのを手伝う。そして風が吹いたとたん重さと風で崩れた。BBQの上の火に当たらないように必死で立て直す。雨宿りのはずが余計濡れてしまったような気もしないこともないが、なかなかおもしろい状況だ。
雨も止んで落ち着いたところで、BBQで焼いた鰻とビールをごちそうになり、キャンプ場のすぐそばにある銭湯で風呂に入り飲みに行く。鮎から飛騨牛から郷土料理がうまい。ほどよく酔っぱらったところで郡上踊りに参戦。なかなか動きの難しい踊りだ。意外と俺と同じぐらいのいわゆる盆踊りに一番来なさそうな世代の人たちもいっぱい居た。ホントは踊りを覚えて浴衣で参戦したいところだが、このぎこちなさが楽しいものだ。 ちょっとだけ満足してテントに戻り眠りについた。でも、プレツーリングから続く夕立攻勢はちょっと勘弁してほしい。(苦笑 |

ムーンライトながら91号
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眠い。岐阜駅 出発
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日本人口重心
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郡上八幡の街並み
涼しげな風景だが暑い。
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郡上踊り 参加。
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2日目 |
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郡上八幡→せせらぎ街道・西ウレ峠→高山 |
83.64km |
2004/08/08 |
どうやら天気は良さそうだ。徹夜輪行の疲れからかなかなか目覚めないがテントの暑さで追い出された。隣のテントに別れを告げて出発。いきなり、だらだらとした上り坂が俺に襲いかかる。先の乗鞍や平湯や上高地なんかと比べたら大したことのない峠と思っていたがナメてかかりすぎていた。確かに川沿いで気持ちのいい「せせらぎ街道」を上っていく。目標よりだいぶ遅いが明宝の道の駅で休憩。わき水仕立ての冷やしトマトが無料で配られていたので、気付けに食っていく。ちょっとだけ疲労回復。
何とか、気合いだけで峠を登っていく。途中に標高1100mの峠があるのはわかっていたが、郡上八幡からずっと登り続けるとは思っていなかった。かなり凄いワインディングの坂本峠をエスケープする美濃飛騨有料道路へ行く。いつもならワインディングを楽しみたいのだが、先の行程に向けて疲れを極力溜めずに行きたい。有料道路のゲートでおじさんに同情されたか自転車通行料の50円はまけてもらえた。道の駅の福引き券も2枚もらえた。最後にちょっとだけ坂を上ってトンネルへ突入。トンネルからは下りのようだ。勢いに乗って下ると、道の駅パスカル清見に到着。 |
少し遅いがここで昼飯だ。もともと12時に着いて昼飯にする予定だったがすでに13:30。道の駅内の蕎麦も売り切れ続出。今日も食い物をかき集めての昼食だ。ます朴葉寿司と牛玉焼きとトマトソフトで昼食。やはり朴葉寿司は朴葉の香りがあってうまい。これは隠れた飛騨名物ヒット作だ。たこ焼きのタコの代わりに飛騨牛を入れて醤油で味付けた牛玉焼きもうまい。薄くトマトの味がするソフトも疲れてバテてる俺にはよかった。
ここからまた上り坂だ。すぐそばに川のせせらぎがあり、緑が心地よく、傾斜も緩くカーブも少ない道を上っていく。PRELUDEでサンルーフ全開で走りたいところだ。どうも傾斜が緩い坂が続くのは苦手だ。まだグイッグイッと上らされる急な坂の方がいい。そんな気持ちよくもきつい峠を登り、若干遅くなったが15:30に西ウレ峠を越えた。今季3回目の1000m越えだ。なんだかんだ言ってせせらぎ街道は、登りがいは無いものの雰囲気の良い峠だった。 |

せせらぎ街道
緑が、気持ちいい。超気持ちいい。
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ここから本気で下る。早いとこ高山に着いて寝床を確保したり野暮用を片づけたい。結構良い感じにアウトインアウトしながら下る。車もほとんど来ないので安心だ。途中、傾斜が緩いところでイノシシが道路を横断してるハプニングもあったが、ほぼ急傾斜が終わった頃に大きな漬け物屋があった。実家に何か送るものがあるか吟味してみた。漬け物は味があっさりしていて意外とうまかった。赤梅ソフトで疲れを癒すのみにした。土産は高山の朝市とかでいいものが見つかるだろうと期待してみた。
16:30高山駅到着。2日目も無事完走。観光案内所で風呂の場所とコインランドリーの場所を聞き市内地図をもらう。完全にいつものペースで野暮用を片づける。どうも宮川沿いによさげな場所がありそうだ。疲れた足でペダルをこいで意外と風情のある高山の町並みを通りテント場を探す。人も来なそうで河川敷の公園を発見。宿は確定。
コインランドリーは明日行くとして風呂へ向かう。どうせなら高山温泉に行こう。こんな超高級そうなホテルで大丈夫か!?と思ってしまうが、スーツで決めてるボーイに聞いたら日帰り入浴OKとのこと。ホテルの前には土産物屋があつまった大きなモールがある。その前に足湯もある。非常に充実している。最近はまっているのだが、風呂に入るとのぼせやすい俺にとってサイクリストの足の疲労を癒すには足湯が最高だ。足だけ長湯できるというのがいい。土産物を見て歩いて足湯に浸かる。
すっかり疲れを癒したところで、そろそろ全身をいやしたい。フロントで受付を済ませて風呂へ。露天風呂で足の筋肉をストレッチしながら疲れを癒す。と言っても意外と筋肉に疲労はたまっていないようだ。明後日からのハードなヒルクライムに向けて良い傾向だ。
風呂でスッキリして、街へ飲みに行く。なんとなくうまそうな居酒屋「からくり」を見つけ、入ってみた。朴葉味噌、漬け物ステーキ、こも豆腐の高山名物を満喫。店の主人とも話しまくり、気持ちよく公園に移動。宮川のせせらぎとカモの声がする公園の木陰にテントを張り眠りにつく。 |
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3日目 |
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高山連泊 |
26.89km |
2004/08/09 |
今日も天気がよい。カモを見ながらテントの中を軽く片づけて、テントを張りっぱなしで出発。朝市で遅めの朝食というか昼食をあさりつつ、実家に送る土産も探したい。輪島、勝浦に続いて三大朝市を制覇したわけだが、ここは川がすぐそばを流れていて風情が一番ある。小京都的な雰囲気があるのがいい。そんなことを思いながら歩いていると、会社の人と偶然会ってしまった。世の中本当に狭いものだ。朝市で日本酒と朴葉味噌を買い自宅へ送った。
買い物を済ませたところで、ラーメンで昼食を済ませて市内観光だ。次は高山祭の屋台会館へ行く。高山祭も一度見てみたい憧れの祭りだ。会館に入り入館料を払うと、かなりまじめそうな説明の巫女さんが着いてきた。1対1なのに喋りが棒読みだ。それにしても高山祭の屋台はでかくて派手だ。どうせ写真とかガイドブックで見るほどのもんじゃないだろうと思っていたが、それ以上の迫力だ。だんだん巫女さんの説明を聞く人も増えてきた。巫女さんの喋りもだんだん調子があがってきたようだ。
次はちょこっとテントに戻って、陣屋の方へ向かう。まさに小京都という雰囲気の古い町並みを抜けて陣屋の近くまで行くと、光ってはすぐ落ちる雷が連発。陣屋の前の信号は消えている。さっきの雷で市内がすべて停電したようだ。 陣屋の前で大粒の雨が降ってきた。チャリを木の陰に止めてあづまやで雨宿り。大阪出身の日本一周中のチャリダーや地元のじいさん婆さんと話しながら雨が止むのを待った。雨の量も半端じゃなく、まさにバケツをひっくり返したような感じだ。あづまやに居ても、しぶきがかかるほどの水量だ。あづまやの中も20人以上こもっていて、中には入り込めない。
雨が止んだところで、陣屋の中を見物。さっきの雨が降り込んだせいか畳が一部濡れている。通路は複雑に長い。屋敷の広さが結構半端じゃない。見物を終わらせたところで、テントに戻り衣類サイドバッグをリアに付けて、風呂と洗濯に行く。まだ3日目だが今日洗濯しないとおそらく5日後の松本までコインランドリーはない。銭湯で入浴を済ませて、コインランドリーで洗濯をしながら明日からの食料を買う。 |

高山・宮川朝市
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高山祭 会館
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高山陣屋
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洗濯を済ませたら手筒花火を見に宮川へ行く。開始から45分経過した20:00頃に宮川の近くに到達。手筒花火というのがどんなもんか想像できず、花火大会のようにドーンとした音がない。さらに道には会場から戻ってくる浴衣の人たちがいる。もしかして終わったのかと不安にすらさせられる。
しかし、宮川沿いは人でごった返していた。ビールを一缶買って見物する。「いよ〜っ」というかけ声とともに、職人が抱えている太い筒に点火し、その筒から火花が飛び出す。こんな勇壮な花火はかつて見たことがない。いわゆる打ち上げ花火とは違う迫力があって感動してしまう。ひとしきり火花が出たあとは筒自体が爆発する。シューーー・・・
ドカーンという感じだ。それをくるりと回して衝撃を回避する様が粋でかっこいい。しばらく花火に見入ってしまった。当然、最後まで見ていく。最後に大将の3本締めにあわせて俺も拍手を送る。勇気をもらい、景気づけてもらい明日からの走りに決意を新たにした。 |

高山・手筒花火
勇壮で豪快 もちろん きれい。
まさに男の花火
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4日目 |
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高山→平湯峠→平湯温泉 |
38.99km |
2004/08/10 |
起床しテントを張ったままコンビニへ行き朝食を買う。テントを撤収しないままカモを見ながら朝食を食う。人なつっこいカモで俺が飯を食っていてもガンガン上陸してくる。テントをたたんで撤収。
最後に古風な街並みを抜けて、高山に別れを告げて平湯へ向かう。軽く一山越えた後でコンビニで休憩。明日に備えて1.5Lペットボトルをもう1本買っておく。これで3.5Lの水を持つことになる。おそらく今日飲むことは無いだろうが、明日に備える。コンビニで平湯を下ってきたロードのチャリダーと話し、出発。気合いが空回りするほど緩く長い坂が続く。正直、緩く長いのより短くきつい坂の方が好きだ。若干いらつきながら坂を上っていく。上っても特に眺望もなく退屈だ。
標高1000mを越えたあたりから傾斜が急になってきた。らしくなってきたものの、すでにきつい。途中の素麺屋に昨日の大阪のチャリダーのチャリがあったが、目標は乗鞍へのバス停での昼食だ。このまま進もうとしたが、しばらく上ると大きめのドライブインがあったので、休憩がてら昼食にする。えごまソフトクリームで糖分を補給して水をもらって再出発。
そこからは、体力を消耗させずに着実に上ることだけを心がける。乗鞍へのシャトルバスもちらほらと見かけるようになってきた。さすがハイブリッドだ。発進停止時は電気アシストだからか黒煙が目立たない。乗鞍へのバス停を過ぎてしばらく上ると乗鞍スカイラインへ上る道が見えてその先には平湯トンネルが見えてきた。ようやく今日の上りは終了か。トンネルへ入ると道は徐々に下り始めた。路面と右後ろの車に気をつけて慎重にトンネルを抜ける。
トンネルを抜けると山の眺めは一変した。美しい稜線と存在感がありすぎる山々。これが北アルプスの眺めか。明日のことを考えると、あんまり調子よく下りまくってもらっても、また上るわけだから困るのだが、コーナーに傾斜に眺めに路面。峠フェチの俺を満足させてしまうほどの下り。しかし、それは5分で終わり。すぐに平湯キャンプ場と乗鞍スカイラインへの県道の入り口も見えた。 |
平湯キャンプ場で受付をして、ミニチュアダックスのブーイングに耐えてテントを張る場所を探した。あっさりといい物件が見つかりテントを張った。空荷の自転車で平湯温泉街の方へ少し下って買い出しをしようとした。明日の朝と昼を買っておきたい。荷物がなくなってプラプラになった自転車でダートを下る。すると男女のサイクリストがチェックインしてきた。温泉街のバスターミナルに自転車を置いて温泉街を歩く。パンをおいてる店もあっさり見つかり買い出し終了。足湯を見つけたのでそこで疲れを癒してキャンプ場へ1回戻る。まだ昼はあるので平湯大滝の方へ歩いてみる。
結構、寂れた場所だと思っていたが滝の方へ上がってみると、いきなり「都会化」していて驚いた。とんでもなく広い足湯、足湯に足を入れたまま食事ができるとのこと。売店もいっぱいある。温泉街よりこっちの方が栄えてるんじゃないかと思うほどだ。きれいに整備された道を歩いて滝の方へ行く。滝自体は縦にまっすぐ落ちてくる割と平凡なものに見えた。 |

平湯大滝
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滝からキャンプ場に下り、お風呂セットと着替えを持って風呂の方へ歩いていく。途中のガソリンスタンドにキュウリとトマトを売ってる。帰りに買っていこう。今日はレトルトのカレーになりそうだから華を添えたい。内湯より広い露天風呂の温泉を満喫し、筋肉もよく伸ばしておく。日が完全に暮れてしまわないうちにキャンプ場に戻る。
テントに戻るとサイドバッグをまるごと持ってテーブルもベンチもある炊事場に移動する。そこで飯盒炊爨してカレーを作ってるファミリー(?)が居た。軽く挨拶して俺もご飯を炊き始めた。今年から巨大チタンコッフェルデビューだ。是非、これでうまい飯を炊きたい。1.5合の米をといでアルミホイルを敷いて点火!!
しかし状況がおかしい。全然沸騰しないし吹いてこない。そして焦げ臭い。俺は異変を感じた。明らかに水も足りない。まだ焚けていない。水を追加してかき混ぜる。向こうのカレーと違いこちらは戦場だ。俺の悲鳴と罵声が飛び交う。のんきにキュウリを食べてる場合ではなくなった。何とか状況が落ち着いたがおかゆっぽい飯になった。まあ、あとは具材のうまみでカバーしてもらうしかないだろう。すぐそばのカレーはうまそうにできている。何とかレトルトのハヤシライスというかハヤシライス風リゾットは仕上がった。決してうまくはないが、よくここまで盛り返したものだ。すぐそばでカレーを作ってる子供に笑われながらも、会話の多い楽しい晩餐だ。冷たい水で食器を洗い夕食も終了。
テントに戻って自転車のチェーンにオイルを少し吹いて、眠りにつく・・・が 明日の乗鞍スカイラインのことを思うと興奮して眠れない。とはいえ明日は早朝から攻めたい。何とか気を静めて後頭部のツボを押して眠りについた。 |
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5日目 |
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平湯温泉→乗鞍スカイライン・畳平→乗鞍高原 |
49.68km |
2004/08/11 |
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畳平→富士見岳→乗鞍岳→畳平 |
携帯の目覚ましが鳴った。ついに勝負の朝だ。さくっと起きてレーパンに履き替える。さっさとマット、シュラフ、テントを片づけて自転車にパッキング。パッキングが終了したら朝食を持って、昨日の夕食の炊事場に移動。ランドナーで乗鞍スカイラインに上るもう一人のチャリダーも居た。彼の方が一足先に出発していった。俺は缶コーヒーとパンで朝食を済ませて、山を眺めながらストレッチをして出発写真を撮って登山家と少し話してから気合いを入れて出発。
キャンプ場を出ると、「乗鞍山頂 晴れ」の表示。そりゃ、ここからでも雲一つ無い天気だから晴れだろう。こんな日が晴れというのがラッキーだ。すべてが俺を後押ししてくれているように思えた。国道から乗鞍スカイラインへの県道へ左折。すぐに急な上り坂はおそってきたが、今日は調子が良い。スカイラインの入り口までの短い坂かと思っていたが、結構な長さと傾斜だ。
ついにレストハウスとゲートが見えて駐車場があって、向こうには白山連峰が見えている。この高さでも結構良い眺めだ。おとといの高山で会ったチャリダーも上がってきた。大学生のチャリダーも上がってきた。これから親子3人で挑む家族も居た。ちょっとしたチャリダー大集合状態だ。ここからは抜きつ抜かれつの走りになるだろうか。頂上でもう1回会えればと願って、それぞれのタイミングで上り始めた。
ゲートで食い止められた。いきなり紙切れ一枚渡されて「ヘルメット着用」と書いてある。そして係員にはヘルメットが無いなら立ち入り禁止と言われた。当然、食い下がる。下界にはそんな規制があることは一言も書いていない。当然、道路交通法の規定にもない。ごねるとしまいには何も言い返せなくなって「高山警察署と直接交渉してください」と来た。勝利を確信した。警察署相手なら勝てる自信がある。そんなもん電話したふりして許可もらったことにして入るに決まってる。あとは言った言わない論にしかならない。議事録なき打ち合わせってやつだ。当然だが電話で問い合わせても「シャトルバスで上ってください」の回答しかない。抜け漏れだらけの制度ならこちらも抜け漏れの隙間を縫った対応をするのみだ。そんな適当で不条理な制度で足止めされるほど俺の旅は軽いものでないものだ。 |
心底不愉快な気分で上り始めた。しかし、そんなに長続きするイヤな気分でもない。そんな気分もさくっと吹っ飛ばすほど山の眺めが美しい。最後まで山の名前はわからなかったが、雲上に頭を出す白山連峰、すぐそばの山々もよく見える。そして天気も最高潮。
この道路は標高などの表示もなくどこまで上ったのかはわからない。1kmごとのキロポストから推測するしかなさそうだ。ツーリングマップルも、通行規制で誰も来なくなったからなのか目印とかの表記が適当だ。夫婦松の展望台に着くと、思わず叫んでしまうほどの下界の景色だ。背の低い山々と向こうの白山連峰まで見渡せる。目の高さに雲が見える。
ここからは、どこにいても絶景続きだ。とにかく気持ちの良い坂を上っていく。10%の傾斜がきつくのしかかるがコーナーを回るたびに展望が開けていく。午前10時には半分を越えた。かなり順調なペースだ。目標としては最悪でも今日の夕方までに畳平にたどり着ければいいと思っている。今日中に下る気もなかった。当然、その目標が達せられないほどの事態にならなければ急ぐ必要もない。せっかくの絶景を前に急いではもったいない。
まだ午前中だが森林限界を超えた。おそらく2400mぐらいには来たはずだ。富士山五合目の2500mが森林限界ということを考えると先はそんなに長くない。だんだん目の前の景色もひらけて来た。振り返っても前を見ても横を見ても美しい。
この辺からはハイ松の原と山が目前にある。山と山の間を縫って上ると山の上なのに広大な原っぱが見えてきた。ちょうど眺めもいいので休憩だ。タクシーが止まって観光始めたので写真を撮ってもらうべく上っていく。
桔梗ヶ原を越えると畳平が見えてきた。久々に標高が書いてある看板があり、2650mを越えている。目標の2700mも近い。そしてコーナーを曲がると鶴が池と長野への道と畳平の道が見えた。この分岐を長野側へ曲がってしばらく行けば公道最高地点があるはずだ。鶴が池の時点で2700m。
わずかに上っている道の先にゲートと県境の看板が見えてきた。そして坂がそこで途絶えて先が見えない。あそこが最高地点だ。 |

遠く広がる北アルプスの峰
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乗鞍スカイラインから
白山連峰を望む
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遠くに見る北アルプス
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乗鞍スカイライン標高2650m
桔梗ヶ原 いよいよクライマックスへ
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乗鞍スカイライン
標高2600mぐらい 乗鞍の山々
(上高地・槍ヶ岳方面)
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渾身の力をこめてゴールスプリントだ。多くの観光客とサイクリストに見られながら、坂を登り切った。下りの寸前にたった。最高地点の看板はないが、県境の公道最高地点に立つ。ついに、今年最大の目標を達成した。そして10年のサイクリスト人生の節目を飾るにふさわしい実績が手に入った。ここへ来ることを思い立って10ヶ月、自転車通勤も積極的にこなし、プレツーリングできつい峠も登った。今年ほど、コースに対して意志を入れて鍛えてきた年もないだろう。昔と比べると随分上り坂にも強くなったものだ。渋峠でへとへとになっていたころと比べたら余力もある。あのころのようなうれし涙はここでは出てこなかった。それでも喜びと快感は史上最高のものだ。頂上で写真を撮り、何度もガッツポーズを決めて喜びをかみしめた。
畳平の駐車場に行き、昼食を食う。今度はせっかくだし天気も最高なので乗鞍岳に歩いて登りたい。天気が良い今日のうちに、この景色を味わい尽くしたい。午後1時から上り始める。しかし足の疲れがたまってきたからか歩きにキレはない。使う筋肉は似てるが異なるからだろうか。すぐそこの富士見岳をちょこっと登るだけで足がきつい。それにしても山の上に行くとさらに眺めは凄い。長野側のエコーラインの豪快なワインディング、松本の街並み、乗鞍岳に白山連峰まで見渡せる。そして今日の本ちゃん、乗鞍岳へアタック。乗鞍の斜面の雪渓、山頂の池、ゴツゴツした岩、遠くの眺め、青い空 やはり3000m級の本格的な山であることを実感する。もはや美しいとかそういう次元は越えている。すれ違いの登山家に聞いてみると、ここまで晴天なのも珍しいとのこと。天気までもが俺を後押しして祝福してくれているようだ。 |

乗鞍畳平
公道最高地点(標高2710m)
踏破!!
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乗鞍岳山頂(剣が峰)
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大満足の登頂を決めて下り始める。あまり本気で下ると膝が爆笑してしまうので、そこだけは気をつける。何となく、すべてをやりきった感がある。結構、疲れた状態で畳平に戻ってきた。今日はもうおなかいっぱいだ。あとは、乗鞍高原に向けてエコーラインを下りたい。畳平でジュースでも買おうと売店へ向かうとMTBが3台居た。上るときゲートで会った家族だ。晴れの日に家族そろって踏破を決めたことを祝い労をねぎらう。ただ、畳平に到達したが、まだ最高地点の方は行っていないようだ。俺もトレッキングシューズからSPDに履き替えて、一緒に最高地点を究めにいく。2度目になるがうれしいものだ。そして、一緒に走っていた子供の方は「楽しかった」と言っていたのが何よりうれしいものだ。小学生か中学生そこそこだが、「きつかった」より先に「楽しかった」が出てくれたのがよかった。一緒に写真を撮り、家族は岐阜側、俺は長野側へと下っていった。 |
長野側の下りを徹底的に楽しむ。どんどん遠くなっていく畳平の山頂の景色。6時間もかけて上った道を自ら突き放す自虐がなんとも言えない。そして豪快なワインディングをアウトインアウトしながら下っていく。対向車線のシャトルバスも最終が出たあとだからだろうか本数が少ない。最高速度は80km/hにも達した。直線もそこそこ多く傾斜もきつく下りが楽しい。
そして途中で自転車を2台追い越し、しばらく1車線になったり荒れたりする道を気をつけて下り、エコーラインのゲートを越えた。ここからはStreamの後ろをついて走る。別にあおってる訳じゃないのだが車間が詰まって、向こうも焦り始めたのかレーンキープできなくなってる。そんなやりとりをしていると「一ノ瀬キャンプ場入り口」なんて看板が見えてかなり荒れた林道が見えた。こんなハードなとこにキャンプ場があるのだろうか。だとしたらイヤだと思いつつ、さらに下る。 |

下る予定の
乗鞍エコーラインを望む
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途中に風呂があったが日帰り入浴が17:00で終了。もう17:10終わってる。ていうか宿も決まってないのに風呂はあり得ない。さらに下ると白骨温泉へ上がる林道と一ノ瀬園地と観光案内所と風呂があった。キャンプ場の場所を聞いてみると、かなり遠い。とはいえそこに泊まるしかなさそうだから、しかたなく走っていく。
キャンプ場までの道は、緩いアップダウンが結構ある。しかも道がわかりにくい。牧場のようなものが見えてきて、どうもその脇の木道がキャンプ場の入り口っぽい。ちょうど木道を歩いて出てくる人がいたので聞いてみたら、木道の先がキャンプ場とのこと。喜び勇んで木道を走っていく。途中で馬が飼われていたりでのどかな場所だ。ちょっとしたリゾート地なのだろうか。そして、道の途中に何かの糞が大量に落ちている。そして、放し飼いのホルスタインが大量に。びっくりしてしまった。頼むから道を空けてくれ!
そしてしばらくダートを走るとキャンプ場のゲートが見えてきた。テントの華もいっぱい咲いている。これは安心できそうだ。荷物を運んでる女の人と話ながらキャンプ場に到着。これチャリの俺の方はいいけど車で来て荷物運ぶとしたらうんざりする距離だ。そして受付を済ませて、カレーを食った後の容器が見える緑のテントの隣のスペースに張った。木陰だしチャリも止めやすい。向かい側の子供に見つめられながらテントを張り、荷物の中で爆発したシャンプーの後処理を泣きながらしていたら、なんか見たことのある顔、聞き覚えのある声と関西弁が来た。昨日のキャンプ場で一緒に飯を食ってた家族(?)だ。「あっ ハヤシライスのおっちゃんや」
しかも隣のテントだ。世の中、本当に狭い。今夜は楽しいキャンプになりそうだ。日が暮れる前に風呂に行きたい。風呂セットを小ザックに詰めて風呂へ行く。さっきの木道を走っていく。今度は牛は見あたらない。ほとんど平地に近い道を気持ちよく走り、風呂に到着。とにかく腹が減ったから、さっさと入浴をすます。風呂でビールを買い、つまみも買っていく。今夜はささやかでも祝杯をあげたい。
すっかり暗くなった道を戻る。真っ暗な道、2連発付けたライトだけが頼りだ。真っ正面の看板ですら見落としそうな暗闇。ただ、道の向こうには山の稜線と星が見えてる。かなり今夜も星が凄いかもしれない。湯上がりでさっぱりした肌に涼しい夜風が心地よい。そして牧場の脇の木道を走る。これが意外とアップダウンあってきついが、たちこぎで越えていく。そしてキャンプ場のゲートも近くなった頃に、闇に白と黒の壁が!!ホルスタインの群れが居る。目が光っている。こてこての草食動物の牛、いつも焼き肉でお世話になってる牛を相手に初めて「やばい。食われる!!」という感覚に襲われた。
テントに戻ると隣のテントは盛り上がっていた。俺も昨日の炊飯の反省を生かしてパスタにした。正直、疲れてるし祝杯だし飯であんまり失敗したくない。パスタをゆでながらビールを飲む。隣のテントの子供は笑いの神様が宿っているからかおもしろく、俺も走りきった満足感もあって楽しい夜となった。そして空には満天の星が見えている。
今日はよく走った。10年目の節目をしっかり決めた。ただ、同時に目標を失ったからかモチベーションが下がっている。明日の上高地までの上りを考えるとだるい。ただ、ここまで10年で公道最高地点を究めることが目標であったわけではない。当然4隅を制することでもなければ全都道府県を制することでもない。「楽しい」が「きつい」を上回るまで走るのみだ。さらなる「楽しみ」のために、ひいては「幸せ」のために走るのだ。何故走るか?何度も考えたことはある。去年、北海道で会った人には「走る理由なんて今はわからなくてもいい」と言われたりもした。そんなことを問い直してもしょうがない。まずは今年を楽しもう。
今日、やりきった偉業を振り返り満足して眠りについた。 |
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6日目 |
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乗鞍高原→白骨温泉→沢渡→釜トンネル→上高地 |
29.99km |
2004/08/12 |
今日も、雲一つない天気だ。今日も楽しい走りになりそうだ。適当に昨日の昼食用に買ったパンを食って朝食を済ます。今日は焦る気にもなれず、のんびり撤収する。ちょうどお隣とタイミングが合いそうだから一緒に出発して、車まで運ぶ荷物の1個ぐらいならチャリに積んでやることにした。記念写真を撮り、駐車場までの道を一緒に歩いて行った。すでに荷物満載の自転車は思ったよりはバランスが悪く手伝ってるのか邪魔してるかわからない状態だったが楽しい帰り道だ。
ちょっと寂しくなるような別れだ。そして俺は俺の旅を続ける。別れと同時に俺は約束をしてしまった。「来年はどこで会えるの?」と子供に聞かれて「北海道やな」と答えた。それは11年目の現役続行と来年は北海道に行くと言うことだけは果たさなければならない。俺のポリシーで自転車に乗る限り子供と約束したこと、子供に宣言したことは守らなければならない。ということで来年は北海道だ。 |

乗鞍高原・一ノ瀬園地 出発
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そんな別れを惜しむ間もなく、乗鞍上高地林道突撃だ。ゲートのおばさんはいい人だが、言うことがきつい。白骨温泉から上高地ゲートまでの林道は閉鎖で国道を通る必要ありとのこと。上り坂のトンネル連続か…。それでも乗鞍上高地林道は楽しい。乗鞍岳もよく見上げられる。緑と青い空と太陽が心地よい。さすがに昨日の疲れが残って上り坂の走りはキレない。とはいえ今日の上りは短い。1時間ほどでトンネルを越えて白骨温泉へ下り始めた。下りの傾斜も半端じゃない。逆走じゃなくてよかったと心から思いながら道の悪い急な下りを進む。ようやく温泉宿もポツポツと見え始めてきた。白骨温泉の温泉街は急な傾斜の途中にポツポツあるだけのようだ。観光案内所で休憩し昼飯にする。ちょっと高い昼飯を食って、ちょっとだけ情報収集して続きを走りに行こうとしていた。入浴剤で話題になった公共野天風呂があった。TVで取材されていた。今回は立ち寄るつもりは無いが、そのうちまた来る機会があれば行きたい。当分、再開の予定はなさそうだ。
そしてさらに急な坂を下っていくと国道に合流した。ここからはジリジリと上っていく。そして狭く交通量も多く上っているトンネルが連続だ。緊張感もあり体力消費もある。昨日の疲れで上りはキレがない。とにかく安全だけ気をつけて上っていく。そんなトンネルをいくつも越えると、上高地へのゲートが見えてきた。ゲートの前で休憩し、係員に上り方をガイドしてもらった。ゲートから上高地までは上下交代の信号になるほど狭いトンネルだ。しかも傾斜は10%を越えると言われている。まずは体力を回復させたい。
ゲートの前の売店のおじさんと話が盛り上がり、温泉の存在も教えてもらった。帰りに寄ることを考えに入れて、意を決して登に行く。急いでもしょうがないので、じっくり行く。観光バスの束をやり過ごして、隙を見て釜トンネルを上っていく。確かに傾斜が凄い。乗鞍スカイラインの10%は遙かにしのぐものだ。何とかトンネルの中間の待避所にたどり着き、そこで足を止めて、向こうから降りてくる車の束をやり過ごす。排ガスの量も半端じゃない。だんだん息苦しくなってきた。車をやり過ごしたら、今度は隙を見て上っていく。次の待避所、その先の待避所も見えてて行けそうなので踏ん張る。排ガスのたまっているトンネルで、頑張りすぎると息が上がる。だんだん頭もクラクラしてきた。待避所で足を止めて上りの車をやりすごす。そしてまた下りが来る前に上っていく。すると1車線のトンネルは終わりトンネル内で2車線に変わった。左側を上り車の束が来たら止まってやり過ごす。そして、何とか2.5km近くある釜トンネルを抜けた。間違いなく上り坂のトンネルで最高にきつかった。 |
トンネルを抜けるとちょっとしたアップダウン、その中でバスがすれ違えず立ち往生、抜かれるときは抜かれ放題だが立ち往生だけはお付き合いだ。そんな苛立ちを過ぎると、大正池と穂高が見えてきた。穂高の稜線がくっきり見えて美しい。ツーリングマップルに河童橋の近くに風呂があって16:00までと書いてあるので、少々急いで走る。今の俺の体力では、ジリジリ上るのもちょっとしたアップダウンでも十分に疲れる。観光案内所で風呂の場所を聞いたが「15:30で終わり」と言われた。というよりあんまり歓迎されていない雰囲気すら感じる。観光客もいっぱいで冷たい目線すら感じる。
風呂はあきらめてキャンプ場へ向かう。まず受付をする。どうやらキャンプ場に風呂があるようだ。安心した。結構、混んでるキャンプ場なので隣のテントに挨拶してテントを張らせてもらう。テントも張って落ち着いたところで観光モードに行くことにした。荷物なしのチャリを漕いで河童橋へ。水の流れと穂高の稜線が美しい。水は澄み切っていて底まできれいに見える。
売店で今日の夕食の食材になりそうなものを探してみる。何となく名産品で夕食を食いたいと思い始めた。意外とあるものだ。地ビールと蕎麦と乾燥野沢菜と馬肉で立派な夕食になりそうだ。ざる蕎麦と野沢菜ご飯とビールのつまみに馬肉でいけそうだ。満足の買い物をしてテントに戻る。 風呂に入ってテントに戻って夕飯を作る。そして今日の本命、ざる蕎麦だ。今回のツーリングから導入した3.0Lコッフェルに水を汲んできて火にかける。失敗は許されない。ゆで加減を見極めて、洗い場に持って行って一気に冷やす。水が冷たいのでしゃっきりと冷える。完璧なまでに仕上げた麺をテントの前に戻って食う。これはうまい。さすが安曇野の蕎麦だ。そば湯もうまい。そば湯だけでなんか料理が作れてしまうのではないかと思うほどの濃厚な味だ。そして馬肉もビールとの相性抜群だ。それだけで満腹になってしまったのでご飯は明日の朝食に回すことにしてテントにしまった。 |

大正池と穂高連峰
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馬肉のハムとビール
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ざるそば
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今夜も星がきれいなので火器を片づけて、河童橋の方へ散歩へ行く。キャンプ場より河童橋の方が空が広くて見やすいかと思った。同じことを考えている人は河童橋に既にいっぱいいた。俺も橋の上に陣取って空を見上げた。天の川までくっきり見えている。星というのは自分の頭上が一番きれいなのだ。そこで、人目もはばからず河童橋の上で仰向けになって空を眺めた。かっこつけてもしょうがない。その姿勢だと視界は星しかない。そして自然な姿勢だ。まるで星空に自分が浮かんでいるような感覚にすらなる。欄干から川に落ちないことだけ気をつけて、すっかり自分の世界に入った。いくつもの流れ星を見る。さすが上高地だ。昼もきれいなら夜の星空もすごい。
すっかり満足してテントに戻り、眠りについた。 |
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7日目 |
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上高地連泊 |
0.00km |
2004/08/13 |
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小梨平→明神池→徳沢→大正池→小梨平 |
何と何と今日も好天だ。雲一つ無い。3日も続くとは…。嬉しいが逆に怖い。今日はチャリを置いて上高地をトレッキングしてみたい。やり切った後のお楽しみだけなので、あんまり頑張る気は無いが、でも頑張ろうという変な気分だ。ツーリングで「ウィニングラン」のような一日を過ごすのも久しぶりな気がする。隣のテントの家族と話しながら俺も朝食を食う。ご飯は冷え切ってるが乾燥野沢菜が味を引き立てる。それにしても今朝は寒い。売店でティーパックの煎茶を買ってきて、お湯を沸かす。お茶で暖をとりながら飯を食う。隣のテントの人の会話はどこかで聞き覚えのある喋り方だと思ったら、浜松のすぐそばの新城の人だった。家族の撤収を見送って、俺も準備を始めた。
ま、どう考えても雨なんてあり得ないけどザックにゴアの上を突っ込み、高山で買ったおやつとまっぷるを詰めて出発。明神までの道を歩く。今日は天気も良く緑も空も気持ちいい。もちろん水もきれいで穂高も相変わらず美しい。装備が本格的な人から一般観光客まで行き来する道の人間の温度差が何とも言えない。俺はどっちに属しているのだろう。短パンの時点で素人派だろうか。観光客がいっぱいだがたまに穂高を眺めるポイントがあるとそこは美しい。対岸の人は見えず後ろの人の声を聞かなければ自然の中に止まったような空気が流れる。 |
あっという間に明神まで歩ききった。明神で休憩し明神池の方へ向かって歩く。吊り橋を渡ってしばらく歩くと明神池だ。相変わらず水はきれいな池で野生のカモが群れている。その向こうには穂高の峰が見える。ただ池に近づきすぎて山が逆さに映るような景色にはならなかった。池の畔の木の根、澄んだ水の池、その向こうの穂高の荒々しく美しい稜線。観光客はわんさか居るが、あまりある景色だ。柿田川を思い出させるような池から流れ出す川。あまり生き物がいっぱいいる自然を感じさせず、きれいすぎる水の流れしか無い場所だと思っていたが、いろんな表情があるようだ。
明神橋の前で軽くドーナツを食って簡単に昼食を済ませる。山と川と青い空を見ながらの昼食は気持ちいい。そしてちょっと奥の徳沢と新村橋で引き返すべく歩く。ハイキングコースのわきには、水たまりと枯れたしなの木、その周りを囲むように、うっそうとしたしなの木、木漏れ日で水がキラキラ輝いている。観光スポットでも何でも無いが神秘的な光景に息をのむ。
そんな場所があったかと思うと、川への展望がひらけて向こうに穂高の峰が見える。上高地という場所はいろんな「顔」を持っている。次にどんな顔がみれるのか楽しみにすらなってくる。きっと穂高や槍を上ると、頂上に至までにいろんな景色を見れるのだろう。ちょっとだけ登山もいいかなと思い始めた。そんな思いをめぐらして山と川を見ながら休憩しているとテンションの高い登山家3人組に写真を頼まれた。何となく意気投合したので徳沢まで一緒に歩いてみることにした。
よくよく話していると、なんと4人とも宇都宮人。彼女らは槍ヶ岳に登るようだ。装備さえしっかりしてれば、いっそ付いて行ってしまってもよかったのだが、もう夏休みも終わりに近いし、何も持っていない。さすがに山屋は歩くのが速い。あっというまに徳沢も過ぎて新村橋に到着。橋ごしに一緒に穂高を眺めて橋の上で川面の風の流れを感じて、楽しくも短く濃い時間は終わり、俺は新村橋を渡って対岸のジープロードを下っていく。彼女らは槍ヶ岳を目指して歩いていく。何しろ今年は出会いと別れが多く楽しい旅だ。しかもサイクリストばかりでない。
さすがに観光ロードの対岸のジープロードに人はいない。1時間ほど俺だけの時間が過ぎていく。一人だとがんがんペースをあげて歩いていく。この辺はさほど展望もない。うっそうとした森の向こうに穂高がチラチラと見えるだけだ。川の流れもあまり見えない。
何となく短く感じるほどの道を歩き明神を過ぎて、行きとは逆の対岸側を河童橋の方へ歩いていく。木道も整備されていて、かなり歩きやすい。歩くことについては専門家ではないので、既に疲れた足だが快適に歩ける。しばらく森に湿原に柿田川ばりの清流、広い河原に梓川の流れ、対岸の名も無き山々、もちろん穂高連峰、ここでも変化の多い景色を楽しみながら歩いていく。走りきった俺へのご褒美と思いながら頑張らないように頑張る。 そして対岸の名も無き山が妙にきれいに見える気がしてきたあたりで、川面の方へ曲がる短い木道があった。当然寄り道をする。そこで、俺の動きが止まってしまう。ゆっくりと流れる清流、向こうの名も無き山、白樺としなの森、静かに澄み切った流れには対岸の山が逆さに映る。もはや美しいとかきれいという次元を超えている。今まで景色を見て固まった経験なんて無いかもしれない。10年続けてきたこと、今年も乗鞍の後で燃え尽きたがここまで頑張って走ってきたこと、人力の旅で培った感受性、やはり何においても、上高地に来て良かったと心から思えた。
この辺からは観光客の波だ。河原と湿原とうっそうとした森の中を歩いていく。こころなしか上流より川の流れがよどんで見える。こなすように歩き田代湿原に着いた。湿原ごしの穂高がまた美しい。老夫婦と同じベンチで小休止。あまりにきれいな山々と天気の話で少し盛り上がった。俺は夜の星空を見ることを薦めておいた。 そろそろ腹も減ってきた。景色も見飽きはしないものの、そろそろ新鮮な感動も薄れてきた。枯れ木が湖に生えてる不思議な大正池を眺めて、その向こうの横岳の眺め、斜めに差す光の筋が山を横切り、山が2トンカラーのような感じになってる神秘的な光景を楽しんで、河童橋に戻る。 |

明神池
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明神橋からの川の眺め
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穂高連峰と俺
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上高地・新村橋
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上高地 河童橋のちょっと奥
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帰りはかなりすっ飛ばして歩く。河童橋で馬肉と蕎麦を買いたい。星見のワインも買いたい。ワインに合わせるカマンベールも買いたい。10周年記念を飾るにふさわしい夜にしたいものだ。売店の開いてる時間にたどりついた。予定通り買い物をこなす。ワインと昨日余ったビールを川の流れに浸して冷やしながら、今日も風呂に入りに行く。気温がちょうどよくて汗はほとんどかいていないが、さっぱりした気分で祝杯をあげたい。
テントに戻ったら朝買ったレジャーシートを広げて夕食の準備をする。蕎麦をゆでながら冷やしていたビールを引き上げて馬肉をつまみに乾杯。ビールを飲んで良い気持ちになってきたところで蕎麦をゆでて、手早く水道で冷やす。今日もざる蕎麦(ザルは持ってないが)がうまい。そば湯も濃厚でうまい。今日は雲行きがちょっとだけ怪しく100%晴れとはいかないようだ。隣のテントの夫婦も河童橋に星を見に行ってみたが売店が営業中で明るく雲もかかっていてイマイチだったようだ。自称ツーリングプロデューサーの俺が薦めた星見だけに残念だ。
しかし、蕎麦も食い終わって片づけていると、PM9:30。空は完全に晴れた。だんだん星も増してきた。準備していたワインとカマンベールを持って河童橋に行く。今日は橋の上で星を見ている人は少ないようだ。橋の真ん中に腰掛けてワインの栓を開けた。チーズの封も切った。星空にボトルを掲げ乾杯。10周年記念&乗鞍スカイライン踏破記念の祝杯だ。五千尺ホテル推奨の四賀ワイナリーの一本はスッキリした甘さを含む辛口でかなりうまいワインだ。満天の星空を見て飲むには最高だ。ワインを1本飲み干してしまった。今日は準備も万全だ。フリースの上にゴアを着込んできた。
やはり星を見るには仰向けが一番。今夜も人目もはばからず仰向けで空を眺める。昨夜以上に星が鮮やかだ。天の川ももちろん見える。穂高の稜線、焼岳の稜線、無数の星、漆黒の闇、仰向けだと空を飛んでるような気分にすらなる。自分へのご褒美の星空だと思えてしまう。
そんな神秘的なまでに美しい星空をぼーっと眺めていると、いろんなことを考えてしまう。次の10年をどうするか。俺は何のために旅をしているのだろう。日本の4隅も最高所も究めた今となって他にチャレンジャブルな目標が見つかるだろうか。結論なんてものは相変わらず出てこないが、また帰ると自転車馬鹿のままの俺で居られて、来年になれば旅に出たくなって自然に行き場が見つかるだろう。
一生で一番凄い星空を眺めていると、まぶしいほどの流れ星が俺の視界を横切る。流れ星をちょうど10個見送ったところでテントに戻ることにした。何せ寒い。
今夜は一般人が俺のマネをして仰向けで星を見て、その良さに気付いてくれたようなので、ちょっと嬉しかった。 |
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8日目 |
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上高地→松本 |
72.82km |
2004/08/14 |
連休はあと1日あるが今日は最終日。もう1泊連泊しちゃいたくなるほど、だるい。ていうか飲み過ぎだ。隣のテントの夫婦に笑われつつ、俺も朝食のしたくを始める。備蓄のスパゲティーをゆでる。何となく暖かいものを食べたくなるほど寒い。今日は、俺の最終日を惜しむかのように天気は悪い。久々に雲らしい雲を見たような気もする。小雨もぱらついてきた。あんまりテントなどが濡れてしまう前に撤収する。
天気は悪いが気合いを入れる。今日は楽なはずだが、登ってきたトンネル連続の道を下ることになる。釜トンネルも気をつけてくだらなければならない。当然、松本駅へのゴールも決めなければならない。ビジターセンターに寄って出発する頃には小雨が本格的に降ってきた。最後に売店で土産を買って自宅に送る。蕎麦と馬肉とワインだ。 |
買い物を済ませて、出発。完全に小雨の天気だ。今から観光の奴らざま見ろという意地悪な気持ちすら起こってしまうほどごった返している観光客を縫って走り、帰って行く。大正池を背後に見送って、いよいよ坂の下に釜トンネルが見えた。釜トンネルに入ると、上高地を後にしたという感じがして、長く楽しい時間を過ごした上高地を去る寂しさが胸を突き上げる。下りは楽勝だ。車の列の一角を俺が占める。後ろのシャトルバスの客に注目されながら、車の流れについて行って下る。今日は路面が濡れてるから気をつけたい。スピードを抑える方が難しいほどの坂を下るとトンネルを抜けてゲートを抜けた。最後にゲートの係員と再会し、ゲート前の売店が受付の朴伝の湯という洞窟風呂に寄ろうとしたが1時間待ちなので通過。最後にどこまでもいい人なゲートの係員に写真を撮ってもらい、親指を立てて「グッドラック!!」で釜トンネルゲートを見送り、松本への下りへ入った。 |

さらば上高地
釜トンネルゲート前にて
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峠の下りに入るとスピードがグングン伸びていくかというと、そうでもない。傾斜はたいしたことが無く車の流れに乗れてしまうほどのものはない。トンネルではあおられる。車の流れを俺が食い止める。へたすると上ってるんじゃないかという錯覚すらしてしまうトンネルもある。微妙に路面も悪くアップダウンしている道を徐々に下る感じだ。つまらん。もう俺に坂を上る体力など残っていない。
途中で金もおろせず飯も食えず、どんどん下っていく。そして13:30ついに松本市突入!! もうゴールは近い。リーチだ。徐々に都会度が増してくる。道もバイパス型になり広くなってきた。見覚えのある道も出てきた。JRのゲートをくぐり、松本駅へ向かう。そして14:00 ついに松本駅到着。今シーズンも無事走り終わった。今年は充実感がありすぎる。そして10周年の節目をしっかり決めた。そんな完走の喜びはひとしおだ。人目もはばからず喜びを全身で表している。
そんななか、なんか見覚えのあるやつと目があった。早々とやめたサイクリング部だが同期とばったり再会。松本に住んでることすら知らなかったが、世の中狭い。というか、今年は変な強運に支配され後押しされている。 |
松本市内で野暮用をこなしながら、松本城と開智学校を見物。ホントに学校かよと思うほどの派手な歴史建造物に驚く。雰囲気のいい縄手通りを散策する。キャンプ地も昔テントを張った公園を見つけ楽勝のうちに確保した。風呂に入り、すべての衣類を使い果たしたところでコインランドリーに行き洗濯をする。さすがに高山から山ごもりが続いたので、手持ちの衣類がすべて汚れ物だ。豪快に洗濯機に突っ込み洗剤をぶち込んで洗う。洗濯が終わるのを待つ時間が旅の後処理という雰囲気が漂い寂しいもんだ。たまたま居合わせた大学生のチャリダーと話しながら時間をつぶす。
洗濯が終わったところで、縄手通りの祭の方へ移動だ。軽くビールと焼き鳥で晩酌をしてラーメンを食って終了。昨日が華やかな打ち上げだったので今日は静かに終了。花火で盛り上がってしまってる公園へ戻りテントを張って眠りについた。 |

松本市内・なわて通り
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松本城
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旧開智学校
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9日目 |
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松本市内 |
2.09km |
2004/08/15 |
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松本−篠ノ井線→長野−長野新幹線→大宮−東北新幹線→宇都宮 |
朝っぱらから雨が降っている。今夜は雨なんて降らないと思って、芝生の上に思いっきりテントを張ってしまった。うっとうしい雨をやり過ごしてテントでのんびりしてると、誰かにノックされ声をかけられてしまった。今日は公園で終戦記念式典があるようだ。よく考えたら終戦記念日だ。さすがに撤収を求められた。
荷物を近くのあづまやに移動し、空のテントをあづまやに移動する。何とか屋根の下で作業する。どうせ行き場もないので、地元の夫婦と話しながらのんびりと片づける。たまに公園職員があおりに来るのが腹立たしい。旅終了の寂しさを象徴するような雨の中で荷物をまとめ、雨が止んだところで市内へ出発。
郵便局に行って荷物を送ってしまいたい。いつものようにゆうパックの国際サイズの段ボールを3つ買って荷物を梱包する。リアキャリアとサイドキャリアも送ってしまう。輪行袋とMP3プレイヤーとCDRとデジカメと財布だけになった。身軽なチャリで駅に移動し、自転車をばらし始める。自転車をばらしていると、昨日コインランドリーで会ったチャリダーと会った。まだまだ若いようだから、何とか天気に回復してもらって頑張ってほしいものだ。 |
土産を買って、帰りの読み物を買って、いよいよ帰路へ向かう。自転車1個を軽々と運んで改札を通り篠ノ井線の長野行きに乗り込む。さらば俺の夏。向こうの山の稜線を見ながら長野に向かっていく。スイッチバックの路線も初めて体験した。不思議なものだ。長野でそそくさと新幹線に乗り換えた。始発なので一匹なら余裕で座れた。しかし1駅ごとに混雑してきた。通路も人で埋まった。さすがUターンラッシュだ。
あっという間に大宮に到着。寂しくなるほど速い。大宮で激混み状態で降りれるか心配だ。何とか駅で荷物を下ろして、東北新幹線に乗りかえ。座るつもりはないので連結部にチャリを突っ込んで立ちのりで宇都宮へ向かう。どうせ一駅だ。
さすが新幹線。あっという間に宇都宮に到着。駅に降りてみると意外と涼しい。行きの蒸し暑さが嘘のようだ。宇都宮駅西口でいつものようにチャリを組み立てて、軽すぎるチャリを漕いで自宅に戻った。旅の終わりが涼しい夏の旅というのも寂しいものだ。今年はやり切ったので後悔はない。これ以上休みが長くても、もう足は動けない。満足のうちに燃え尽きた。 |

松本駅
今年も完走して終了。
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