1日目 |
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宇都宮−高速バス・マロニエ号→羽田空港第2ターミナル |
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羽田−ANA→福岡 |
2005/04/28 |
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福岡空港−地下鉄→博多
−鹿児島本線・久大線 特急ゆふいんの森→豊後森 |
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玖珠(豊後森)→深耶馬渓→耶馬渓→中津 |
58.87km |
今年は新型ランドナーでのツーリングに挑む。俺の読みでは先代より走りが良いはずだし、そんなに大きい峠もない道程なのでエンジンフレームともに登坂性能は若干落ちているが問題ないはずだ。東九州という場所にどんな楽しみがあるのかは、不明だ。わくわくした気持ちで準備を進めていく。何とか3時間ほど寝る時間を確保して前日は終わった。
やっつけ仕事で1日の仕事を終えて、帰宅。90%は準備完了しているので、じっくりと荷物を整理して自転車に積み込んで準備終了。残りの汚れ物を洗濯してコインランドリーで乾燥して家の鍵を閉めてすべて完了。この時点で1:00。
高速バスは3:20発だが、初の新型ランドナー輪行なのでリスク対応含めて1:30には出発。荷物を積んだ状態で先代より重心が高いせいかふらつき感が大きい。ただ、直進性は素晴らしい。旋回性は倒せば重心の高さが生きて曲がりやすいが、普通にステアだけで曲がろうとすると若干不安定だ。荷物を積んだ状態での検証というのは全くやっていないので良い点と悪い点があらわになってきた。心配なのはセンターのトップギアで踏み込もうとすると意外と今までより重くて踏めないことだ。
宇都宮駅前のバス停の前で自転車をばらしていく。構造自体は先代のランドナーと同じなのでばらし自体は手慣れた感じで進んでいく。途中でイタリア人と雑談しつつばらし終わり、結局2:00には完了してしまった。暇なので新型MP3プレイヤーで音楽でも聴きながら待ち続ける。箱乗りしてる日産の元高級セダンやら変な車もロータリーを回っているがひたすら待つ。
3時過ぎにバスは来た。今回は荷物が多すぎて露骨に嫌がられたが無理矢理乗せて羽田に向けて出発。始発便で結構ギリギリなので、順調に走ってくれと願うばかりだ。まだ道は混んでいなさそうなので安心である。ここで睡眠時間を存分に稼いでおきたい。集中して眠る。とにかく寝る。朝5:30に定刻通り羽田第2ターミナルに到着。まだ搭乗手続きの端末は起動していないので待つばかりだ。
ウェストバッグ以外はすべて荷物を預けてゲートへ行く。ここでは眠気を我慢し、飛行機に乗り込んだらさっさとシートベルトを締めて眠る。飲み物やら毛布やら勧めて来るのも気づかないほどの熟睡だ。そして8:30には福岡空港に着陸。 |
預けていた荷物を受け取って急いで地下鉄へ行く。9:16発のゆふいんの森に何としても乗りたい。だが、荷物を1回ですべて運べるほど若くない。9:00発の地下鉄で博多に行き、わずか5分の差で乗り換える。とにかくダッシュでホームに向かい出発に間に合った。ゆふいんの森レディーに迎えられ、荷物置きも手伝ってもらって何とか電車は出発。全車指定席なので俺の席はなくデッキに立ち乗りだ。森の木々をあしらった車両の内装がいかにも観光特急という感じである。
久々に見る九州の景色を眺めつつ列車は進んでいく。田んぼの向こうに切株山が見えたところで豊後森に到着。荷物を下ろして、疲れた体をひきずってホームを出る。指定席券無しでゆふいんの森に乗った俺がよっぽど気に入らないのか駅員に怒られる。「切符を持っていないとゆふいんの森には乗れないはずだ」と俺に文句を言ってくる。てめぇの社内の問題だ。座ってないので1円も払いたくないが500円払わされる。本来、一介の駅員じゃなくて車掌が請求するべきだろ。駅前で自転車を組んでいても、時々
駅員ににらまれる。全く気に入らない。まあ俺が豊後森で乗り降りするのも一生無いだろうし、普通の人はみんな湯布院まで行くだろうから勝手に寂れて無人駅に落ちてくれればいい。客に対する感謝の意志を全く感じない不愉快な駅だ。 |

ゆふいんの森と荷物@豊後森駅
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11:00着と昼前の時間帯ながら、自転車を組む最中からして暑い。栃木モードで長袖基調でそろえて来たが、ハッキリ言って暑すぎて駄目だ。長袖のアンダーウェアとTシャツとウィンドブレーカーと長ズボンのジャージで来たが、上はTシャツでも大丈夫な勢いだ。下は短パンじゃないことを後悔。少し汗ばみながら自転車をくみ上げて、近所のスーパーの前で昼飯だ。九州と言えば鶏肉だ。かしわおにぎりと唐揚げと野菜ジュースで腹を満たして出発。 |
出発早々、上り坂が襲いかかってくる。初っぱなからハードな走りになってきた。ノーマークだったが深耶馬渓までに峠が1個あったようだ。登坂性能の低下がもろに響いた形だが、峠らしき場所を越えて下りに入った。生ぬるい風と日差しに疲れて案内板が立ってる休憩所に立ち寄り、地元のドライバーと少し雑談をしてまた出発。ここから先は下り基調と聞いて安心した。あとは中津までの下り基調の走りを楽しみたい。初日に半分徹夜状態であんまりきついコースは勘弁して欲しい。
深耶馬渓に入ると、新緑と清流と岩が続く。カーブを曲がるたびに頭上の景色が一変する心地よい下りのルートを楽しむ。カーブもそこそこ複雑に入り組んでおり、走りの楽しさを演出する。新ランドナーの下り坂の走りは先代を遙かにしのぐものがあり、この先も楽しみである。深耶馬渓を抜けて少しだけダムを登ると、次は本耶馬渓だ。ここからは鉄道廃線跡を利用した自転車道が中津まで続いている。傾斜も少なく車も居ない。景色もよくベストオブ自転車道かもしれない。田園と川の流れと耶馬渓の奇岩を眺めながら気持ちよく走っていく。観光客がレンタサイクルで走っているのとすれ違いつつ追い越しつつ進んでいく。
そして、今日の最大の観光地である青洞門に立ち寄る。いかにも手彫りという感じの岩がむき出しのトンネルが続く。ただ、昔の人が何人も川に落ちたというほど道は険しくなく、ぶっちゃけ「がっかり」感は否めない。ただ、これだけのものを人の手で作った偉業だけはたたえたい。そろそろ寝不足から来る疲れと暑さにやられた感じでぐったりしてきた。早いとこ中津まで行って休みたいものだ。 |

耶馬渓 サイクリングロード
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耶馬渓 青洞門
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川沿いの下り基調の道を進み、15:30頃には中津市に突入。市街地を巡り寝床もいろいろと見つかって一安心だ。市内観光もしておきたい。中津城と福沢諭吉生家を目指して走る。割と良い家の出なのか、少し興ざめな感もある福沢諭吉記念館だ。なけなしの1万円札をかざして写真を撮り、次の中津城へ向かう。日本に数少ない水城で川に面したお城だ。黒い立派な天守閣である。ただ、観光客は少なく天守閣の下では犬が暑さにバテたように寝ている。気持ちは分かる。
そろそろ、風呂とか買い物とか野暮用をこなしたい。商店街の文房具屋でスタンプ用と記録用のノートを購入したらアイスとお茶を御馳走してもらえた。跡継ぎが元サイクリストのようで話が盛り上がり閉店まで話が続く。ササキ文具店はサイクリストなら立ち寄って欲しい。
お城の近くの汐の湯へ行き、風呂だ。海の水を焚いた風呂で何となくミネラルとか豊富そうで疲れが取れそうだ。古く広く素朴な銭湯で風情がいい。すっかり日が沈んだ中津の街で飯を食う場所を探す。中津名物ハモというのが見つかったのでそこで晩飯だ。ビールと新鮮な魚を味わい、ハモのちらし寿司を食べる。ハモはほっこりした柔らかさがあっておいしい。やはり東九州は魚がうまい。内陸で悶々とした日々を過ごしている俺には嬉しい限りだ。
初日の順調な完走を喜びながらの乾杯だ。満足して、公園へ行きテントを張って眠りにつく。 |

福沢諭吉 生家
手に持っているのは 1万円札
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中津城とランドナー
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2日目 |
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中津→宇佐→熊野磨崖仏→別府 |
95.01km |
2005/04/29 |
割と早く目覚めて、8時に中津を出発。真っ直ぐな国道10号線旧道を南に向かう。700C化した影響かグングン走れてしまうが、やはりトップギアは重くて踏み続けられない。ギア比は失敗の感がある。
結構、疲れた状態で宇佐神宮に到着し観光&休憩だ。かなり立派な境内である。自然も豊かで朱色の建物が鮮やかだ。そんな境内を歩いていくと朱色の鮮やかな本宮が見えてきた。九州や四国の神社は何か派手な気がする。まだ巫女さんが境内を掃除している時間帯で、お祈りをする賽銭箱の向こうでは巫女さんが掃除している。巫女さんに拝んでいるようで何となくこっぱずかしいもんがある。交通安全の御守りを買って出発する。 |

宇佐神宮
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宇佐市を抜けて国東半島の中へと入っていく。徐々に登っている県道を耐えて走り続ける。目的地の熊野磨崖仏まで20km弱だが、全区間登りなのかと思うとげんなりしてしまう。傾斜は大したことのない長い坂が続いていく。熊野磨崖仏の手前で昼食にする。山菜の定食で腹を満たして、真木大堂で国宝級の仏像を見てさらに登っていく。真木大堂で飯を食っておいて正解だったと思えるほどきつい坂が続いている。県道から左折すると熊野磨崖仏だと思ったら左折後もまだ上り坂が続く。もう足がきつい。最後に1車線で激坂を登り、入り口で自転車を置いて金を払って登山道を上っていく。これもかなりハードな登山道である。思いっきり山の中腹にあり、結構本気で歩かないと辿り着けない。同じぐらいのペースで歩いていた夫婦と話しながら息あがりながら登り、磨崖仏に着いた。崖を削って仏像を作ってある。若干、風化して分かりにくくはなっている。とはいえ、これだけ急な崖で大きい仏像を作ってしまうのもすごいことだ。 |

熊野磨崖仏
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ハードな登山道を下って、入り口の前の茶屋で休憩して、また出発。ここから山香までは気持ちの良い下りだ。新型ランドナーの神髄を見るような走りだ。スピードが出すぎて怖いぐらいだが、意外とそれでも曲がれてしまう。山香から海の方までは下り基調で続いていく。しかし、快走すればするほど汗が噴き出してくる。暑さが半端じゃなくなってきた。そのまま海まで下って海沿いかと思ったら、ハーモニーランドの前で「登坂車線」なんて看板が出てきた。つまり登りだ。別府に行く直前にもう1発峠だ。もう登りに関してはお腹一杯だ。
峠を越えると別府湾を前に見ながら下っていく。微妙に天気も悪くなってきている。重い空と鉛色の海になってきた。国道10号のバイパスで車に風をもらいながら快走し、別府市内で鉄輪温泉の方へ曲がっていく。ぱっと地図を見る限り地獄巡りは山の上だ。前に来たときも気付いたが、別府市自体は湯布院方面に行くほど登っていく全体的に傾斜した街なのだ。つまり内陸に入れば入るほど上り坂だ。 |
予想通り血の池地獄の手前から上り坂が始まった。この重さの自転車と疲れた足で登っていく。地獄巡りよりもそこに行く道の方がよっぽど地獄ですから〜
残念!! まずは血の池地獄と竜巻地獄だ。竜巻地獄は30分に1回吹き出す間欠泉でタイミングよく5分待ちぐらいで吹き出してくれた。まあ、見て終わりという感じのものである。ただ、自然に吹き出すぐらいだからよっぽど温泉の湯量は豊富なのだろう。次は血の池地獄だ。ツツジの花がきれいな入り口を入ると真っ赤な温泉の池がある。隣は透明な間欠泉だったりするのにこの違いはどこに出るんだろう。温泉は不思議だ。 そして次の地獄は、一山越えた向こうにある。もう勘弁してくれ。でも2000円の地獄巡り共通券を買ってしまった以上は後に退けない。坊主地獄と海地獄は見ておきたいし頑張る。坊主地獄より上り坂地獄の方がよっぽど地獄。別府市内を見下ろして峠を越えて、次の地獄へ行く。まずは坊主地獄だ。その前に温泉プリンで糖分を補給してあと30分で地獄6つ回る強行スケジュールに備える。駆け足で坊主地獄、海地獄、白池地獄、鬼地獄、山地獄を回り、ギリギリで17:00の閉園までに全地獄を制覇した。
妙な達成感を持って地獄から市街地へ下っていく。結構な傾斜と長さの下りを終えて海沿いのバイパスを走り、また別府駅方面に曲がる。懐かしく渋い別府駅前高等温泉に宿を求めたが、今夜は満員。やはりGWは厳しいもんだ。この時点でキャンプをしなければならなさそうだが雨も降りそうだ。必然的に屋根付きを探す必要がある。市内を探し回ってもできそうな公園はない。 |

血の池地獄
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海地獄と温泉卵
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もう1回仕切り直すべく駅に戻る途中に宿を見つけた。1泊3000円ならOKなので飛び込みで宿を確保した。駅の前の良好な立地だ。宿に落ち着いたところで、着替えとお風呂セットを持って温泉へ行く。200円で温泉を満喫し疲れを落として街へ飲みに行く。城下ガレイと関サバと関アジを食いたい。しかしどっちも1匹丸ごと姿作り4000円とかそんなのばっかりだ。断念せざるを得ない。普通の居酒屋で軽く飲んでラーメンを食って宿に戻って眠りにつく。ニュースで「別府駅前
高等温泉 存続の危機」という報道があった。せっかくなので守り抜いて欲しいものだ。泊まれなかったので協力したくてもできなかったが・・・。
夜中になって大粒の雨が降ってきたようだ。 |

別府駅前 高等温泉
風情があって 宿泊もできて
2500円程度
もちろん温泉に入り放題。
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3日目 |
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別府→臼杵→佐伯 |
95.31km |
2005/04/30 |
朝っぱらから大雨だ。そんなに調子よく走れなさそうだ。既に半島を回って関崎へ行くプランも頭にない。憂鬱な気分で準備をして出発だ。駅の前のコンビニで朝飯を食いながら、今日の走行プランを練る。行く道だけは決めうちしておく。まずは国道10号線を飛ばしまくって大分市へ向かう。メーターが雨で誤作動している。なかなか低信頼性のシグマスポーツには悩まされる。そこでビニールをフロントバッグのストラップで共締めしてメーターを覆って防水する。これが意外と調子良い。
大分市内で雨はあがった。ゴアを脱いで雨が降らないうちに距離を稼ごうと飛ばしていく。しかし、臼杵へ上がる峠の5km手前でまた大粒の雨が降ってきた。今日は諦めるしかなさそうだ。土砂降りの雨の中で臼杵の石仏の方へ左折する。容赦なく傾斜が俺に襲いかかる。しかも結構長い上り坂だ。こんなにハードな峠を越える気は無かったのだが、ルート選びがミスだ。 |
少し足を使いすぎた感がありながら、臼杵石仏に着いた。ここで、一気に晴れてきた。蒸し暑くまぶしくなってきた。また、九州の洗礼を浴びる地獄の走りになるのを覚悟した。とはいえ、まずは観光だ。今度は石仏の数も半端じゃなく、一体一体の造形が細かい。熊野磨崖仏ぐらいの大きさは無いもののリアルな造形に驚かされる。大量の観光客の列に紛れて山を下りて昼飯だ。昨日食いそびれたアジをアジ寿司として頂く。関アジではなく豊後アジだが脂も乗っていて、それでいて生臭さもなくおいしい。上に絞り掛けるカボスともよく合う。もう一つの大分名物の鳥天も鶏肉が柔らかくさっくりした衣とマッチしてうまい。鶏の唐揚げ以上に鶏肉の味わいを生かした一皿だ。やっぱ鶏肉は九州だ。 |

臼杵石仏 崖を彫って作られた石像に圧巻
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海まで下り臼杵の町中を味わいに行く。○○の小京都という感じの風情がある街が好きだしランドナーと合わせた写真も撮りたい。しかし、三重塔以外はそれらしき城下町が見つからず断念。車道を挟む形になり撮りにくいが何とか三重塔を撮って、佐伯へ向けて出発。雨が再び降ってくる気配はもうない。
いきなり上り坂が俺に襲いかかる。ここから延岡ぐらいまでは覚悟しているがリアス式海岸のアップダウンは半端じゃないはずだ。ヒルクライムとはまた違うきつさのあるリアス式海岸アップダウンだが、じっくり走れば不可能ではないだろう。まずは国道217号の津久見への峠が一本だ。そんなに長くもない直登の峠を越えるとトンネルだ。ここも手慣れたものでリフレクタを点滅させてヘッドライトを点けて後ろから追い越してくる車に気をつけつつこなしていく。トンネルを抜けると津久見に向けて気持ちの良い下りだ。
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臼杵 三重の塔とランドナー
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津久見の街中で軽く休憩したところで今日の宿は佐伯になりそうなのは決まりだが、どうせなら豊後二見浦あたりも見ていきたいので峠越えで佐伯にショートカットできる県道は避けて海沿いを回る。とたんに強烈な上り坂が俺に襲いかかる。どっちから行ってもどうせ上り坂なら海の眺めがいいだけ、こっちのルートの方が正解だ。そう言い聞かせながら静かな入り江を眺める峠を越えていく。入り江と向かい側の半島と小さな島を見下ろす心地よい峠となった。海を見慣れない内陸住まいの俺としてはそれだけでも満足である。 |
さらに幸運なことに峠1本と見込んでいた峠は今回の峠の下りに含まれた。今日の山場はあと1つとなった。雨上がりにしては静かな入り江を左に見ながら海岸沿いの道を走り、瀬会の半島を横切るトンネルを渡る。峠1本かと思っていたが平地のままトンネルだ。あとは海沿いに平地を走れば佐伯に辿り着けそうだ。トンネルを抜けたところで、夫婦岩にしめ縄がかけてある豊後二見浦が見えてきた。ここで休憩。海に面した学校の校庭から岩と入り江と海を眺めて海の気持ちよさを満喫して続きの走りに急ぐ。 |

豊後二見浦 夫婦岩
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気持ちよくカーブを繰り返しながら複雑に入り組んだ湾岸を走っていく。海もきれいだしカーブが多く運転も楽しい。何もなく左に海があるだけの道だが、そんな田舎道が気持ちいい。何と言ってもそれが平地で味わえるのがありがたい。やや足も疲れたところで、佐伯に到着。
もう既に17:00だしここで一泊としたい。ここから30km近く街らしい街はない。まず駅前の観光案内所で風呂とコインランドリーのありかを尋ねる。風呂だけは見つかったがコインランドリーは見つからなかったようだ。まあ明日の延岡でやればいいか…と半分あきらめて撤収しようとしたら観光案内所のおばさんが走って寄ってきた。結局コインランドリーの場所が分かったようで教えてもらえた。
雨はしのげそうもないものの民家が密集する場所に公園はあった。公園の真ん前の家がカーテンを閉めてくれず、目立ちっぱなしなのでテントは張れない。仕方ないので風呂と買い出しをしにいく。風呂の開き時間を確認して買い出しだ。スーパーで生鮮食品を見ていると急に創作意欲が湧いてきた。小さいアジが4匹で300円と安い。生節もおいしそうだ。米とか調理器具とかポン酢とか買い込んだ。それを持ったまま福祉センターで風呂に入り公園に戻ってテントを張る。まだカーテンは開けっ放しだが隠密行動でテントを張り、そんなに目立たずにことは済んだ。 |
公園の水道でアジをさばき、生まれて初めて魚を3枚に下ろす。あまりうまくいかないが、アジのたたきにするので形は度外視だ。まず鱗を取るのを忘れていることを2枚目まで裁いたところで気が付いた。まあ、食えないことはないだろう。骨もきれいにとれない。やっぱりアジをさばくのは難しい。大きいアジならもっと裁きやすかったのかもしれないが…。魚をさばいていると地元の猫がニャンニャン言いながらも俺を警戒しながら寄ってきた。試しに魚の骨とわたをあげてみたら、喜んで食い始めた。魚の食い方は内陸の人間より猫の方が上だ。とはいえ、腕が悪くても素材がいい。アジのたたきは上々のできだ。生節もアジもカボスポン酢と絶妙に合う。御飯は炊きすぎたので明日の朝も食うことにして、生節とアジをおかずに晩餐は終わった。 |

東九州グルメ旅 豊後アジのたたきと鰹生節
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4日目 |
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佐伯→蒲江→延岡 |
103.34km |
2005/05/01 |
朝っぱらからコンビニでサンマの蒲焼きの缶詰を買い、昨日の飯の残りと一緒に食べて朝飯にする。既に俺の足には昨日までの走りで筋肉痛をまとっている。体のきつさもあり、飯の片づけのめんどくささもありはかどらない。のんびり準備をしていると、近所の住民の方が昼飯にどうぞとばかりに、ホカホカのおにぎりと夏みかんとお茶を差し入れして頂けた。こんな状況のキャンプだからご近所様には嫌われてばかりかと思っていただけに心温まる。いい年したおじさんの趣味で自転車をやっているだけなのに、心遣いがありがたい。何があっても鹿児島、指宿まで走りきる決意を新たに出発だ。
今日は、きつい走りになるのは目に見えているため、あらかじめレーパンを穿いて備える。佐伯市内を抜けて田園地帯を抜けると、今日1発目の峠だ。まずは峠を越えて蒲江を目指さなければならない。見積もりでは今日は4発の峠があるが、まだ1発目だ。しかし、1発目からなかなかボリュームのある上り坂で苦戦を強いられる。昨日までの疲れがずーんと足に響き渡る。深い山奥の峠を越えてトンネルを抜けると蒲江に向かって爆走して下っていく。 |
蒲江に下ると、静かな入り江沿いの道を走る。基本的に平地で気持ちのよい道路だ。静かな入り江の向こうに雄大な海原を眺める。静かな漁村という面持ちの集落を走れる最速ペースで走る。特にきつい向かい風があるわけでもなく快走だ。そんな入り江の道を走っていると、道の駅蒲江にたどり着いた。昼飯には早いが、今日はペースとしては大分県と宮崎県の県境の峠ぐらいで、ちょうど昼過ぎという感じというタイミングねらいで、昼食としてはもらったおにぎりだけでは若干物足りないので買い出しもしておく。途中、何回か収穫しているところを目撃しているひおうぎ貝の炊き込み御飯を追加で買う。休憩中のドリンクで残り少ない大分県でのやり残しの「かぼすちゃん」を飲んでおく。昔流行ったはちみつレモンのレモンの代わりにカボスが入ったものだ。糖分とクエン酸は走りのエネルギー補給には最適だ。観光客のファミリーと少し話して十分にストレッチして出発。 |

ご当地 グルメ かぼすちゃん
(道の駅 蒲江)
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昼飯前に峠を越えてしまって宮崎県に行ってしまおう そんなモチベーションでガンガン走りを進めて国道の峠に差し掛かる。いきなり強烈に道が狭くなる。入り口の橋の上に婆さんが座っている。「上は通行止めだよ」と言われてしまう。確かに工事中で大型車は通行止めになっている。まあ、工事していなくても大型車は通れなさそうな雰囲気ではあるが。迂回路の峠はあるものの、その一言でモチベーションは低下したので、すぐそばの海を眺められる公園で昼食にすることにした。少しピリ辛にしてあるタレと大葉に包まれたおにぎりを開ける。スタミナが付きそうでうまそうなおにぎりだ。かなりおいしい。しっかり味わって、次はひおうぎ貝の炊き込み御飯だ。これも貝の出汁が出ていてうまい。夏みかんも酸味と甘みとわずかな苦みがあっておいしい。かなり豪華な昼食になったと思う。 |

豪華な昼飯。
左からひおうぎ貝の炊き込み御飯、
おにぎりと夏みかんとおーいお茶
奥様に感謝。
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国道388号の峠より一本南側の峠を登り始める。道は国道より太くきれいだが、傾斜は容赦ない。食後だし昨日までの疲れが足に響く。ほとんど車は来ないものの、たまに大きいトラックなどは来る。さすが大型用迂回路。地図をよくよく見ると元々越えようとした峠より標高は低い。実は通行止めになって幸運だったのではと思ってしまう。そんな名もない峠だが、カーブは大きく北海道の峠を思わせるスケールをたまに見せる。半分ほど峠を登ると蒲江の海を眺める絶景になってきた。複雑に入り組んだ入り江を見下ろす感じが気持ちいい。
いよいよ峠を越えてトンネルを抜けている最中に「宮崎県」の看板が!さらば大分県。思い出をありがとう。過去にえびの市のみ通過した宮崎県だが、今度はどんな思い出を得られるのか楽しみである。大分県を抜けてしまった寂しさにも勝るほど楽しみだ。 |

たまには食い物以外。
大分宮崎県境から大分県側を望む。
Goodbye 大分県!
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相変わらず飛ばせるところはガンガン飛ばして下る。ここから10km強は久々に内陸というか山岳コースという感じだ。北浦で再び海に出るまで峠が1つありそうだ。もう俺は覚悟しているからいつでも来い!と思いつつも、いつになったら登り始めるんだろうという悶々とした気持ちで走り続ける。しかし、俺が峠と見込んでいたトンネルまで全く登ることもなくたどり着いた。トンネルを抜けると、一気に海に向かって下り始めた。
再び、のんびりした雰囲気の漁村に着いた。ここで足と腰を少し休める。クリートのポジションが悪いのか靴底が踏みすぎで薄いのか足の裏に痛みが走り始めた。完全に足を止めて足の痛みが少し収まったところで、国道のトンネル続きをエスケープして日豊海岸を眺める裏道へ登っていく。足は売り切れに近いが、アップダウンのありそうな道でしかもトンネル続きでは足が疲れてしまう。それに楽しくない。俺の読みは正解だった。多少は登るものの素朴な道と海を眺める景色。内陸の俺にとってはいくら海を眺めても眺め飽きない。昨日まで眺めていた海とはまた違う海がそこにある。
そんな短いお楽しみの最後は北浦の道の駅だ。ここで本休憩とする。芝生が整備されていて、隣は海水浴場と川をせき止めた遊び場とキャンプ場がある。川に大量の鯉のぼりがかけてある。自転車を止めて芝生で横たわり体の疲れを落とす。糖分補給のために、はちみつ平兵衛酢(へべず)を飲み、小麦粉の生地であんこを巻いた
うずまき を食べる。糖分とクエン酸のコラボレーションで疲れた足にパワーが注入された…ような気がする。すると地元のファミリーが話しかけてきた。2歳ぐらいの子供がかわいく面白い。海からキャンプ場から川に鯉のぼりと何でもあるこの公園の片隅にある小型ブルドーザーを指さして「ユンボ、ユンボ」と叫び始めた。子供が注目する物って凄い。 |

ご当地グルメ
うずまきとはちみつ平兵衛酢(へべず)
(道の駅 北浦)
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道の駅 北浦 いや〜GWだね♪
フェニックスがいかにも宮崎県
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軽くアップダウンするトンネル続きの国道を走ると、延岡に向けて最後の山場を迎えた。足の裏に痛みが走るわ太ももがつらいわで足はとっくに売り切れである。特に眺めらしい眺めは何も無いが、今日の最後の山場を踏ん張る。明日は久々に平地を走り抜いて宮崎の予定だし、多少は楽ができるだろう。峠のトンネルから下りが始まった。あとは延岡に向けて下るだけだ。
下りも足が踏ん張れなくなり、こがなくても足の裏が痛くつらい。クリートポジションを修正したい。クリートが前にありすぎて力が集中してしまっている。1カ所以外は靴の中で浮いている。もう限界だSPDシューズを買い換えたい。大きい自転車屋を探しながら延岡市内を駅に向けて走っていく。旭化成もあるし結構栄えているのかと思ったが意外と寂れた街である。しかも国道10号には延岡駅への案内板が見あたらないまま、視界の右側に鉄道の駅らしきものが見えた。急遽、右折して延岡駅に行く。
形はどうあれ、今回の旅の最大の山場を越えたような気がして走りきった感がある。妙に満足できてしまうが、まだまだ終わりたくない。とにかく自転車屋を探して走り回る。延岡の街の隅から隅まで探してみるが、「SPDシューズ」というキーワードで何の事か分かるレベルの自転車屋すらない。市内で唯一のスポーツ用品店も閉まっている。全く使えない街だ。仕方なく薬屋系を探して防臭とか抗菌とかその手のソールを探す。今の踏みつぶしてペラペラのインナーソールよりはマシだろう。ショッピングセンターの前の薬局でソールをゲットして湿布も購入。ショッピングセンターの前でクリートのポジションを少し後ろに修正して足の裏の負担が軽くなったことと、そこそこ走れることを広い駐車場で加減速を繰り返して検証する。
延岡駅に戻り待合室で靴の中に投入してみる。少し足下がフワフワして衝撃が軽くなったような気がする。これで、多少は楽になった。延岡市内で疲れた足を引きずりながら寝床を探す。今日は天気がよさそうだが夜露を防ぎたいので屋根付きを探す。かなりあっさりと見つかった。クローバーが咲き誇り、そこそこ立派な水道もあり、トイレもある。これで決まりだ。野暮用がすっかり長くなったが、買い出しをする。今日も自炊で魚をさばきたい。やはり宮崎や大分は魚が安い。昨日よりも立派なアジが300円で買える。イサキなんかも安い。魚をいろいろ買って、刺身とあら汁で楽しみたい。創作意欲が湧いてしまってしょうがない。
スーパーの近くで風呂にも入る。番台のおばさんと意気投合してしまったりで楽しい風呂となった。銭湯の隣の人のよい交番でコインランドリーの場所も聞いて忙しいながらも準備万端な夜だ。まずは腹が減ったので公園で飯だ。さっとテントを張って荷物を放り込んで、魚をさばく。水道でわたを取り除いては木の根本に捨てて肥やしにしながら作業を進めていく。やはり昨日のアジと違って魚が大きい方がさばきやすい。だが、鱗取りはしっかりとした道具があったほうが良さそうだ。果物ナイフではきつい。それでも新鮮な素材がいいのか刺身は甘みがあってうまいものになった。あら汁もよく出汁が出て素晴らしい。御飯も最高のできだ。あら汁を御飯にかけた雑炊にしても良い味だ。今日の晩餐も大成功を収めた。
すっかり遅くなってしまったが、23:00から洗濯に行って、コッフェルを洗いながら服も洗って乾燥して公園に戻る。向こうの道にパトカーが待っている。もしかして俺待ち?びくびくしながらテントに戻る。おまわりさんが駆け寄ってくる気配もない。そんな状況ながらも図太く1:00に就寝。サイクルツーリングで寝るような時間ではない。 |
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5日目 |
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延岡→日向岬→宮崎 |
108.34km |
2005/05/02 |
昨夜、遅くまで野暮用がかかってしまったせいで、朝がきつい。結局のところ出発は10時前にずれ込んだ。昨日、延岡駅で気になっていた豚軟骨うどんを食べに行く。朝飯からスタミナが欲しいくらい、足の疲労は蓄積している。甘辛く煮込んだ豚の軟骨がコクがあってコリコリしていてうまい。うどんとの相性もばっちりだ。ただ、この暑い日に熱いうどんは失敗だった。何となく、豚とか角煮とかそのあたりに南九州らしさを感じ始めてきた。 |
午前中は20km強ほど走って日向岬を目指す。追い風に乗ってペースは伸びて1時間強で日向市にたどり着いた。そろそろ、日差しが半端じゃなくなってきた。完全に南国の日差しだ。ギラギラとまぶしい太陽と海。東京や高知からのフェリー乗り場に旅情を感じつつそこを通り過ぎて日向岬へ向かう。あと2,3kmというところで上り坂は始まった。サイクルステレオの電池を入れ替えてテンションを上げて登っていく。しかし、テンションをいくら上げても蓄積疲労だけは克服できない。悲鳴を上げる太ももにムチを入れて登っていく。最後の最後も激坂が襲いかかる。しかし、ビローやソテツやフェニックスが生えているあたりに亜熱帯ムードを感じる。今日は好天に恵まれて海も真っ青で輝いている。この自転車のコンセプトカラーにマッチしている。青い空、青い海、青い自転車である。 |

日向岬
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頂上の駐車場に自転車を置いて、遊歩道を歩いて日向岬の先端を目指していく。とにかく暑くなってきた。上り坂で体も熱くなっているので、もう冷める気配はない。木々の間も蒸し暑くなっている。そこを抜けると、遊歩道の右側に切り立った崖に挟まれた谷とその向こうに広々とした海が見えてきた。馬ヶ背だ。柱状のたくさんの岩でできた崖が切り立っている。迫力もあるし、海もきれい。思わず息をのむ景色だ。岬の先端まで行くと今度は開放感がある海の眺めだ。すぐ直下を見下ろすと複雑な地形の箱庭のような海岸もある。ただ、岩の迫力は抜群だ。暑いばかりの今日だが、岬の先端に行くと潮風が少し涼しく思える。 せっかくなので来た道とは別に日向岬の半島の南側の道を日向市内の方へ戻っていく。このルート選びはきつかったが正解だ。ひたすら開放的な海と日向岬の迫力ある岩を眺めながら走っていく。昨日までの海とは違い、今日の海は開放感がある。日差しも明るく海の色も大分とは少し違う。 |

日向岬から日向市までの道
海の眺めが気持ちいい!
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小倉浜の有料道路を抜けて国道10号を海沿いに少し走ったところの道の駅 日向で少し遅めの昼食とする。道の駅の表では宮崎名物の地鶏を焼いている。もちろん昼食のおかずだ。売店で日向夏ドリンクとおにぎりを買って、焼きたての地鶏を買う。歯ごたえがありつつも決してごりごりと固いわけでもなく、鳥のうまみがじゅっと出てくる地鶏焼きは格別だ。天然系のクエン酸で糖分を少し体に回す。それにしても、今日は日差しがまぶしくて暑い。
午後は平地の海沿いの道を南下して宮崎を目指す距離がひたすら長く国道10号バイパスで車から風をもらって走る… 予定だったが、もっと海側に道を通してくれればいいものを若干内陸のせいでアップダウンが多い。半端じゃなく多く、もう既に足が売り切れている俺にはきつすぎる。風が無く日差しが強く、まさに炙られている感覚だ。たまりかねてツーリングマップル50ページに突入したところで休憩。ここで徹底的にストレッチして太ももと股関節とふくらはぎを伸ばして再び走り出す。すこぶる好調だ。35km/h巡航でガンガン走っていく。 |

ご当地グルメ
日向夏ドリンクと宮崎地鶏
(道の駅 日向)
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もう少しで宮崎というところで、左足の裏が痛くなってきた。またクリートポジションがイマイチなようだ。今回のは少し捻れている感覚があり、ポジションが若干前寄りなようだ。夕方近くになり少し涼しくなってきたところでコンビニの駐車場で調整する。どうせなら、きっちり直してフィーリング良く走りたいものだ。いろいろいじってみると、多少は足の裏が楽になるポジションが見つかった。
ポジションを修正した後は、残り15kmの道のりも軽く走れてしまう。16:00には宮崎市内のフェニックスの並木通りを抜けて、宮崎駅に到着。走行距離が長い今日も走り抜いた。何故か宮崎市にたどり着いたところで、終わったわけでも何でもないが達成感が湧いてきた。今夜は飲もう。徹底的に飲もう。晩酌ではない。飲みだ。決意は固かった。そのためには、段取りはさっさと済ませたい。どうせ天気もいいので屋根付き公園は不要だ。大淀川沿いの緑地にテントを張れそうなスペースを見つけた。もう面倒なのでそこでOKだ。 |
風呂は大淀川沿いのホテルはみんな温泉で日帰り入浴も盛んにやっているので悩む必要はない。あとは、温泉カタログで選ぶだけだ。もちろん露天風呂付きできれいそうな場所だ。おっとその前に足湯で足の疲れだけ集中的に落としたい。温泉街で足湯があるはずの場所に行ってみると閉鎖されていた。もういい。入浴だ。大淀川沿いのフェニックス並木とホテル街の絵が夕陽に照らされて美しい。思わず写真を撮らずにいられない。ちょっとリッチなホテルで風呂に入ると、何かの体育会系の合宿なのかマッチョな兄さんばっかり風呂にあふれていて暑苦しい。さっさと上がることにした。でも足だけは負けてない自信がある。
宮崎の市内を走り、飲み屋を探す。どこも混んでいるようだが、俺には相応しくないほどきれいな店に入ってみる。地元の味と焼酎と言うところに惹かれた。少し場違いかもという不安を払拭するほど、メニューは充実している。宮崎地鶏の焼き物に新鮮な魚介類に芋焼酎。なかでも日南の潤平が最高にうまかった。すっかり満足して柚子庵を後にした。ネットで探してもあまり見つからないが良い店を見つけたものだ。今度から出張で積極的に宮崎に来たい。 |

宮崎 大淀川沿いフェニックス並木
たまゆら温泉街
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完全なる酔っぱらい運転で大淀川沿いをぷらぷらと走って寝床へ移動する。少しひんやりして気持ちいい草の上にテントを張り、草の上で寝転がって日記を書く。さすがに眠くなってきたのでテントに潜って眠りにつく。 |
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6日目 |
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宮崎→青島→鵜戸神宮→日南・飫肥→日南・油津 |
86.56km |
2005/05/03 |
朝っぱらから、何かの合宿で俺のテントの周りでトレーニングしている。足音とかけ声と号令が朝5時から響き渡る。正直、迷惑な話でテント張ってあるんだから気を使ってくれよ…と思いながら目が覚めたが、酒が少し残っている。さすがに最近酒力が向上した自分にしても飲み過ぎた。緑茶で少し体の中の酒を薄めて、再び眠りに落ちた。次に目覚めると9:00だ。テントを畳んで、さあ出発というところで腕時計が見あたらない。どこを見ても見つからない。パッキングした荷物の中だろうか。草むらにでも紛れているのだろうか。左腕に巻いていないと雨が降るというジンクスがあるので、意地でも探しておきたい。テントの中にもない。考えられる場所というと、シュラフの中?シュラフを広げてみると入っていた。
たたみ直して出発する頃には10:30。大淀川を渡ってしばらく走ったところのコンビニでさっと朝食をとり、猛暑と輝く日差しの中をさらに南下していく。雲一つ無い好天が俺を炙り続ける。フェニックスの並木、真っ青な海と空。まさに南九州という感じの景色が続いていく。 |
そんな猛暑の中10km強走ったところで、青島に到着。当然、寄り道して観光だ。救いなのは今日の予定は日南までと距離は短い。走りもそこそこ好調だ。砂嘴の向こうの島まで橋が続いている。地形だけ見れば小さい志賀島という感じだ。橋の向こうには段差がある岩が並んでいてフェニックスの林となっている島が見える。それを囲むように青いきれいな海がひろがっている。島に渡ってみると、島の中には神社がある。赤い鮮やかな神社がうっそうとしたソテツのジャングルの中にある。この光景を見ると神が居るものだと思って祀ってしまう気持ちは理解できる。人は多いが神秘的な雰囲気がある。ソテツのジャングルの奥にも小さい赤い鮮やかな社がある。何か神話があるようだが、低教養の俺には理解できない。(詳しくはGoogleで) |

青島と鬼の洗濯板と
炎のツーリング車
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この景色に感動しつつ、岩づたいに海の方まで歩いてみる。亀の甲みたいな不思議な形をした1枚岩が波打ち際まで続いている。岩の表面は砂粒のような形でざらっとしている。海の水もきれいだが、若干波が高い。島一周歩こうかと思ったが、出発遅れもあって少し走りをまいていかないと駄目そうなので今回は諦めて戻っていく。そこらで売っている冷凍パインが妙に気になり、今日は暑い。日向夏ジュースと冷凍パインを売店で買って日陰で食っていると、元気でハイテンションな地元のおばさんが話しかけてきた。「自転車ね やっぱ男はいいねぇ〜! はははは」という感じで、言われるこっちも照れてしまう。出発しようと思ったら小さな小屋の観光案内所があったので、スタンプを押して行こうと立ち寄ると、さっきの元気なおばさんが居た。すっかり話が盛り上がってしまい楽しくなってきた。やはり旅先の出会いというのは良い。 |

青島神社
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元気よく見送られて、次の観光地の堀切峠を目指して走っていく。峠と言いつつも海沿いアップダウンの一部でしかない。猛暑に炙られながら坂を上り、ついに視界が開けた。峠の向こうは海が広がっている。下りは海岸線沿いに真っ直ぐにフェニックス並木の道だ。確かに眺めは素晴らしい。開放感のある眺めが気持ちいい。直下には青島の洗濯板みたいな地形の岩礁が広がっている。沖は真っ青な海と水平線。標高80m弱でこんなに楽しめる峠はお得だ。写真を撮って下っていく。車が混んでいて飛ばせないが、左の海の眺めとフェニックスの並木と潮風が気持ちいい。昨日の日向岬からトライしているが開放感を構図に表現して写真を撮るのは難しい。今日も、青い海青い空青い自転車で決まる。 |

堀切峠からの眺め
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下りの途中で右折して道の駅に寄る。アジの鮨とフライで昼食を取る。やはり魚のうまさが光る。そして、宮崎の名物
完熟マンゴーを買ってみる。いろんなところで見かけるが1個2000円から3000円する。高い物だと4000円なんてのもある高級フルーツだ。しかし今日は1000円で見つけた。身の丈にあった贅沢としては、これで十分だ。ベンチで民間人の注目を浴びながら、かじる。皮が固い。そのままでは食いにくそうだ。その瞬間、周囲からは「ざま見ろ、背伸びしてる貧乏人め」という冷たい目線が浴びせられる。しかし、俺は冷静だった。サイドバッグから果物ナイフを取り出して、丸く美しく皮をむいていく。汁がたくさん出てくる。さすが完熟マンゴーだ。黄色い美しい実があらわになる。汁をしたたらせてかぶりつく。口の中に濃い爽やかな甘みが広がる。同時に甘い香りが立ちこめる。うまさを口いっぱいで味わい完食。近くの水道で手とナイフを洗いに行く。羞恥心を捨てて快楽を極限まで求める俺のリッチな昼飯は終わった。民間人はせいぜいマンゴーアイスで我慢することだ。はっはっはっは。 |

ご当地グルメ
宮崎産 完熟マンゴー
(道の駅フェニックス)
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道の駅もかなりの眺めのよさである。目下には相変わらず青島から鬼の洗濯岩が続いている。海の開放感も鮮やかさも抜群である。フェニックス並木のムードも南国らしさを演出している。写真を撮って、続きの下りを楽しむ。
しばらくは平地で海沿いをくねくねと走れる。カーブも多くそれをこなすたびに展望が一新する快感がある。日南までのルートも楽勝かと思えてしまうほどだ。亜熱帯ムードのある海岸線を南下していく。途中、旧道とトンネルのあるところは徹底的に旧道の海沿いへ行く。そのうちの1個はトンネルなら1kmで旧道だと4kmの道がある。当然4kmの海沿いの旧道へ行くが、結構アップダウンも大きい。そして3km走ったところで道が崩れていて通行止めになっていた。もっと早く「この先通行止め」と書いて欲しい。 |

道の駅・フェニックスからの眺め
(堀切峠 南側下りの途中)
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トンネルを抜けて、しばらく走ると次の観光地の鵜戸神宮だ。鵜戸神宮までは結構気合いの入った上り坂が控えていた。鳥居をくぐると、急な石段が続いていく。これは、結構きついかもしれないので日向夏ドリンクを1本買って登っていく。石段の途中で老夫婦と会い、何故か意気投合してしまったので一緒に歩いてしまう。結構、歩くのは速い。風情のある石段の境内だ。頂上まで登ると、今度は海際への下りが控えていた。石段の真ん中は人の足によって磨かれて削られたへこみがある。境内に歴史を感じる。海沿いに降りると山越えの境内をエスケープする道があったようだ。でも、これだけ風情のある境内を歩けただけでもエスケープに気付かなくて良かったかもしれない。海の崖っぷちに神社が建っている。激しい波の打ち寄せる奇岩に玉を投げて願掛けをするしきたりがあるようだ。岩の下にある神社は神秘的な雰囲気だ。ここも神が宿っていると昔の人が思ってしまうのも理解できるシチュエーションだ。いつか崩れ落ちてきてしまうのではないかと思ってしまう恐怖感もあるが、岩が一枚岩に見える安心感もある。
老夫婦と話しながら帰りはエスケープを戻っていく。それにしても80歳というのは驚きだ。俺も歳とっても歩いたり走ったりできる体力を維持したい。老夫婦と別れて、続きの走りに向かっていく。日南市から内陸に曲がっていく。次は飫肥を目指して走る。○○の小京都というのが大好きなので、10kmぐらいの道のりを走っていく。 |

鵜戸神宮の海岸
波が半端じゃなく荒い。
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鵜戸神宮 岩の下に神社がある。
神秘的。
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もう夕方近くなのでうまくいけば飫肥で一泊したい。何故か地元の女子高生にすれ違いざまに挨拶されてしまったり不思議なできごともありつつ、飫肥駅に到着。わざとそうしているのか風情のある駅舎である。ここで情報収集するが、飫肥には風呂はなさそうだ。ていうか日南自体に風呂が見あたらない。どっちみち飫肥では何もできないようだ。日南市の中心部はもっと海よりの油津になるので、そこまで走るしかない。まずは、飫肥の観光に行く。城下町を目指して走りつつ、焼酎の造り酒屋を探す。国道から城下町へ曲がるところに大手門酒造なる店が見つかった。帰りに立ち寄ることにして飫肥城へ向かう。武家屋敷が続く街並みが続いている。それぞれの庭園はソテツなどの南国系の植物で造られている。本州の武家屋敷には無い風情で楽しいし趣がある。あまりじっくりとは観光せず雰囲気だけを味わって、土産屋に寄り道する。飫肥天という薩摩揚げににてる雰囲気のものがあり、おやつにちょっとだけつまんでいく。柔らかくて香ばしくてうまい。やはり原料の魚がいいから、香りが立つのだろう。帰り道に焼酎の造り酒屋に立ち寄って、自宅に発送する。芋くさいぐらいの芋焼酎が九州の味である。 |

飫肥の街並みとランドナー
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安息日のはずが、80km弱も走っている。それなりに疲れてきた。単調な道を海に向かって走り、油津に行く。芝生でこぎれいな公園があっさり見つかり宿は決定である。問題は風呂だが、油津にもなさそうだ。交番に入ると人が居なかったが電話で警察署に問い合わせてみた。油津と飫肥の中間地点より少し飫肥よりのかんぽの宿に日帰り温泉があるようだ。そんなわけはないと思ってたが、立ち寄っておけばよかったと後悔。
テントを張って身軽にしてから、すっかり日が暮れた日南の街を戻ってかんぽの宿に行く。露天風呂も完備した立派な温泉で疲れを落として、また油津に戻っていく。既に20:30と遅くなってしまった。今日も、油津の飲み屋にぎわいに入り、魚と宮崎名物のチキン南蛮とビールで乾杯だ。刺身も新鮮でうまく、地鶏のチキン南蛮は柔らかくても歯ごたえがあり濃厚でうまい。ビールが進んでしまう。店主と旅の話をしていると、同じカウンターに座っていたおじさんが、目を輝かせて俺の隣に来た。サイクリスト仲間のようで去年、6年かかって日本縦断を終わらせたと言っていた。旅の話と自転車の話と人生の話に盛り上がる。店主も人の良い感じのおじさんで遅くまで盛り上がってしまう。最後の締めは、宮崎地鶏の卵かけ御飯だ。過去に、こんなにうまい卵かけ御飯は食べたことはない。今日も走りも飲みも出会いも景色も充実して、お腹も心も満たされてテントに戻って静かに眠る。 |
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7日目 |
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日南→幸島→都井岬→志布志 |
83.29km |
2005/05/04 |
今日は、最大の山場だ。高低差300m強の都井岬を越えて志布志に行って鹿児島県突入だ。早朝からパークゴルフでにぎわってしまっている俺のテントの周りで老人達と話しながらテントを撤収する。噂では今日の夕方から天気が崩れるようだ。都井岬まではもってほしい。そんな期待をしながらも、まだまだ好天の空の下を出発。まず、近所のコンビニで朝食をとる。パン屋が合体したコンビニで、焼きたてのパンがうまい。
今日からの日南海岸はアップダウンが容赦ないようだ。油津を出るといきなり結構なボリュームの坂が俺に襲いかかる。1発目のトンネルは自転車走行禁止で旧道に行かされる。今日はずっとこんな調子なのだろうか。アップダウンの3つ目の上り坂を登り切ると、道の駅なんごうにたどり着く。道の駅からの海の眺めは気持ちいい。やはり、もう足は売り切れていて上り坂を終えると足はパンパンに張っているし、筋肉痛ものしかかる。とにかく徹底的に暖まった足をストレッチする。完熟マンゴーを試食して、また南へと走り出す。 |

道の駅 なんごうからの海
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その後も売り切れた足を苛めるようにアップダウンが続く。それも高低差100m近くもある。今まで走った中では但馬海岸道路に次ぐ規模に思える。リアス式海岸の合間にある弓形の砂浜を眺めてしばらく走ると幸島に到着。島は目の前だが船で渡るようなので、砂浜を歩いて港へ向かう。小さな漁船にはしごで下りて、船の上でお金を払うと出航した。船は容赦なくかっ飛ばして幸島の岩場に付けた。そのまま上陸すると、いきなり猿の群れが迎えてくれる。人間を全くおそれる様子のない野生の猿というのも珍しい。野生と言っても餌付けされているからだろうか。岩場を歩いて抜けると砂浜がある。ここが芋洗いの砂場なのだろうだが、餌らしきものは全くなく何も洗ってくれない。麦を海に浮かべて砂を落として食べる場面や、芋を波打ち際で洗って食う場面を想像していたが何もない。せいぜい、親子猿を目の前で見れたぐらいだ。 |

幸島の猿
砂の中から餌を探す
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あまり間ももたないので、戻ることにして船を待つ。頻繁に往復している船はすぐに来た。帰りも泳げない俺には恐怖なほど飛ばしている。コーナーを攻めまくっている。競艇はよく分からんがモンキーターンだ。この船だけでも料金1000円払う価値があった。
幸島を出発し、次は都井岬を目指していく。できれば登り始める前に昼飯にしたいところだ。幸島からもアップダウンの多い海岸道路は続く。容赦なく道は上っていく。汗だくで峠を越えてまた下る。そんな峠を2つ越えるとサーファーだらけの恋ヶ浦に着いたが、サーファースポットにしては飯を食う場所がない。そのまま峠を1本越えても食う場所はない。 |

石波海岸 砂浜
岬の先端の島が猿の幸島
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そうしている間に都井岬への上り坂に来た。今回の旅では数少ない峠らしい峠だ。最後の山場と言える。疲れ切った足に鞭を打ち登っていく。傾斜も容赦なしだ。30分ほどもがくと国道から都井岬へ曲がる分岐に着く。そこを曲がると幾分傾斜は緩くなってきた。すると道に猿の群れが出てきている。餌を与えているけしからん観光客がいっぱいいる。都井岬の野生馬が外に出ないための駒止の門でお金を払おうとしたが自転車は無料のようだ。
駒止の門を越えると、また少し傾斜が出てきた。野生馬はいつになったら見えるのだろう。もしかして野生と言うだけのことはあって奥まった所にしか居ないのだろうか。どこぞの夜中の牛のように容赦なく襲いかかってくるのだろうか。しばらく走ると木が無くなってきた。草地が続く。そして視界の先にある草山の上に黒い姿が!あれが野生馬か。どう見ても牧場のような景色だが、一応野生馬だ。写真を撮りたいがやや遠い。もう少し進めてみると、割と近いところの馬もぼちぼち見れるようになってきた。サラブレッドのような感じではなく、多少ずんぐりしているが足の筋肉とケツの筋肉は傾斜で鍛え抜かれているせいか、マッチョである。 |

都井岬 野生馬
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そんな馬ウォッチングを終えると、下り坂が始まった。ということは帰りにも上り坂があるということだ。しばらく楽しく下ったところで観光ホテルがあったので、そこで飯にする。おそらく飯を食える場所は最後だろう。しかもランチの開店時間ギリギリだったようだ。ここまで来て納得いかないがカレーで済ませる。若干物足りないが売店にはすぐに食えそうな物は売っていない。そのまま都井岬灯台を目指す。しかし灯台はまだ山の上だ。さらに追い打ちをかけるように道は下っている。かなり攻めまくりの下りの後に、灯台までのヘビーな上り坂が待ちかまえている。また、どぎつい上り坂を登っていく。もう足も限界に近い。そんな言葉をもう3日間はき続けている。しかし坂は容赦ない。押して歩かない、引き返さない、そのポリシーだけで登っていく。そしてついに都井岬灯台に到着。ある意味、九州東海岸を完走した気分だ。妙に達成感がある。去年のGWの野島崎灯台にたどり着いた感動と達成感を思い出す。
喜びをかみしめて都井岬灯台へ入場する。標高が高い分だけ眺めは素晴らしい。さっきまで走ってきた恋ヶ浦や幸島方面も見下ろせる。どこまでも広がる太平洋と大隅半島。複雑な地形の都井岬の半島。何と言っても東海岸の南端まで来た満足感がある。最大の山場を終えたと思っている。 |

都井岬灯台と俺とランドナー
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そして、さっき下った分だけの上り坂が俺を待ちかまえている。そこは我慢するしかないだろう。さっき上った分だけは気合い入れて下る。しかし、下り始めてすぐのところで、観光客がたむろしている。岬馬がすぐ目の前で草を食っている。やはり野生とは言え草食動物だ。顔はおとなしい。でも足と尻の筋肉は美しい。少し写真を撮ったら、また気合いの下りを始める。70km/hにも達した。そして勢いをもらえるだけもらって、登りに挑む。しかし、上り坂の長さは容赦なかった。来るときも登りだったが帰りも登りのように思えてしまうほど長い。
駒止の門が近づくと、本格的な下り坂が始まった。そして下り坂の途中でいやなものを見てしまった。これから走る予定のコースが見えたが思いっきり峠だ。まだまだ終わっていなかった。エスケープする道も地図上を見る限り見あたらない。これは耐えるしか無いのだろうか。そんな都井岬が終わると、徐々に雲行きはあやしくなってきた。とりあえず見るべき所は見終わったので、ぶっちゃけた話そろそろ雨でもかまわない。一雨降って気温が下がってくれた方がありがたいかもしれない。もう売り切れ御免の状態が4日ぐらい続いている俺の足を動かして峠を越えていく。直登のなかなかボリュームのある峠である。そして都井峠を越えて串間の市街地へ下っていく。下りの途中で温泉があったが、ここで風呂では早すぎる。やはり志布志か串間の西よりまで距離を稼ぎたい。ということでスルーだ。
串間の駅前で休憩しつつ、情報収集をする。どうやら串間の風呂はさっきの温泉しか無いようだ。今日も汗だくなので風呂は意地でも入りたい。ということを考えると、志布志まで走るのが得策のようだ。雨も降ってきたが、あと20km走って志布志を目指す。海沿いアップダウンが容赦ないのかと思ったが、意外とそうでもなく程よく冷やされている体は調子が上がってきて30km/hを割らない走りが続く。左に海を見ながら、グングン距離を稼ぐ。志布志までの距離が目に見えて減っていく。
そして目の前に大黒温泉を見ながら、県境を越える。渾身のガッツポーズで鹿児島県に突入した。そのまま勢いに乗って志布志の市街地へと急ぐ。完全に土砂降りの雨の中、志布志駅に到着。情報収集できるぐらい駅前は充実しているかと思ったら、駅も無人駅で何もない。あれこれ探すのも面倒なので、駅の近くのビジネスホテルで一泊することにした。一応、情報収集してみると温泉だけはあるようなので、宿はホテルに落ち着くことにして風呂だけ入りに行きたい。
荷物をすべて部屋に置いて、自転車を銀行の屋根付き駐輪場に止めて、風呂に入りに行く。だいたいの勘で歩きつつ、コンビニにでも寄って折りたたみ傘を買って風呂まで行こうとしたが、雨足が強くなってきた上、コンビニも風呂もありそうな雰囲気がない。仕方なく戻っていく。結局、駅前のショッピングセンターの中で傘を買い、駅の公衆電話から電話して場所を聞く。駅から徒歩10分程度だと言っている。歩いてしまおう。歩けば歩くほど雨足が凄くなってきた。しまいにはバケツをひっくり返したような土砂降りになってきた。そんななか、何とか風呂に到着。渋くて風情のある鉱泉で疲れを癒して、風呂屋と合体している蒲鉾屋で薩摩揚げを買ってビールを飲みながら休憩。タクシーを呼んで駅前に戻る。風呂上がりなのに、あんな土砂降り雨を歩く気はない。
タクシーで駅前に戻り、飲み屋で夕食にする。地鶏の焼き鳥と明太茶漬けで夕食を済ませてホテルに戻り、すべての衣類を乾かしながら眠りにつく。 |
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8日目 |
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志布志→→国分→鹿児島 |
97.49km |
2005/05/05 |
降水確率100%の朝、やはり外は雨である。憂鬱な気分で準備をする。とはいえ、今日の位置づけは鹿児島への移動日だ。とにかく走り抜くことだけが目標だ。どこをゴールと位置づけるかはともかく、鹿児島まで走れば「完走」と言える。
荷物を持って外に出ると、ちょうど雨は止んだ。この瞬間から奇跡が始まる。屋根付きの向かい側のホテルの駐車場でパッキングをして、コンビニで朝食を食って出発。今日は平地に近い上り坂をちんたら走れば、国分に抜けれると考えていた。しかし、天気の奇跡とは裏腹にとんでもないアップダウンが志布志から始まっている。これがシラス台地の洗礼なのか。いつ終わるでもないアップダウンが延々と続く。降水確率100%からの晴天で蒸し暑い。もはや俺にとどめを刺そうという勢いなのだろうか。そんな道と天気が続く。
10kmも走れずに力尽きていると、古びた定食屋の主人が俺に話しかけてきた。手招きして呼んでいる。中で休憩させてもらい、鹿児島名産の手作りの餅も食べさせてもらえた。餅米を蒸したチマキだが冷やすとうまい。そして砂糖とよく合う。疲れ切ってる俺に糖分は助かった。しかし、まだ朝飯が消化できてないぐらい満腹でもある。それでも善意がありがたい。いろいろと人生論と旅論について語る。主人にはめっぽう気に入られてしまった。「あんたみたいな兄さんが、教師になれば良い人間が増える」と何故か太鼓判を押されてしまった。俺もまんざらでもない。そして、おみやげにチマキを1本もらって再び出発。
こういう善意に答えるためにも、俺は完走しなければならない。足がつらくとも走り抜く。そんな決意をしたら、もう動かないと思っていた俺の足に活力がみなぎってきた。精神的な効果もあるが、チマキの効果も大である。心の底からありがたい。土石流のようになっている川をいくつか渡りつつ、力強く進んでいく。それでも、アップダウンの本数は半端じゃなくどこまでも続いている。そしてアップダウンしながら徐々に上っている。どこまで続くのか、傾いた洗濯板のようなアップダウンロード。
そして出発から40kmあまり走ったところで、休憩と昼食だ。さっきのチマキを是非昼食に頂きたい。そのためには砂糖か黒蜜なんてものが欲しいところだが、そんな贅沢品はない。今度は、霧が出て寒くもなってきた。醤油もチマキに合うと主人は言っていたので、手持ちの醤油で楽しむことにした。それでも確かにおいしい。またエネルギーがよみがえってきた。
そして、眺めがいいはずのドライブインを通過したが霧で何も見えない。宮崎でリフレクタを無くしているので後方に存在を知らせる物が何もない。コンビニに寄って懐中電灯を購入する。パッキングした荷物に縛り付けて点灯する。少しは後ろから見えるようになってきた。安全性は金をかけてでも追求したい。
そして国道10号に合流すると道路は一気に下り始めた。そんなに長い下り坂ではないと読んでいたので、左によって車をどんどん流す。しかし、意外と長いし疲れてきた。タイミングを見て車道に飛び出し、姿勢を低くして車の流れに着いていくことにした。どんどんスピードは上がる。路面の悪い路肩をチマチマ走るよりは、よっぽど安全だ。コーナーも自転車を倒してこなしていく。姿勢を下げれば車と同じスピードで巡航できる。新型ランドナーでダウンヒル性能が向上したのを、ここぞとばかりに発揮する。
下りきると、国分に突入。かつて日本縦断で通過した街だ。ここからは、サイクリストとしての実績を稼ぐ旅になる。俺の日本縦断では北からおりてきて国分から大隅半島へ抜けて、大隅の南端の大根占から薩摩半島の山川にフェリーで渡ってから日本最南端の西大山駅に行っている。日本の4隅と最高地点の駅に自転車で到達したことは間違いないが、最南端の西大山駅だけはフェリーが絡んでいるため自走区間として浮いている。今回の旅で国分〜西大山をつないでしまいたい。日本縦断で通過した国道210号と10号の合流点に着いた。この時点から浮いた西大山駅を自走でつなぐ旅が始まる。お祭りではあるが本気だ。
国道10号を順調に走っていく。今回も、多少足の裏の痛みがあるが時折休憩してもみほぐしながら進む。降水確率100%なのに朝から一度も雨に降られることなく、しかもペースは徐々に上がって、グングン進んでいく。今年の旅もまたいつものようにラストスパートの力が働いているようだ。ここまで私を応援してくれた地元の方々への感謝、11年目もしっかり走れている幸福、旅の喜び、新型ランドナー作成にあたって多大な補助を頂いた自転車屋の方々、そんないろんなものへの感謝を胸に鹿児島市へ向けてのラストスパートである。
錦江湾沿いの道になってきたが、今日は天気が悪く桜島は麓しか見えない。錦江湾も鉛色の海である。そこだけは晴れの海と山で迎えて欲しかったが、致し方ない。雨が降らないだけマシだと思おう。向こうに桜島と大崎ヶ鼻を見ながら国道10号バイパスを走っていると、鹿児島市に突入!明日は指宿まで走るが、今回の旅の目標地点に到達だ。今年も、何とか「完走」という形になりそうだ。鹿児島の市街地へ向けてのラストスパートは続いていく。わずかな坂もカーブも力強く走り抜いていく。今までの足の疲れはどこにいったのだろうか。
鹿児島中央駅を目前にして雨が降ってきた。カッパを着直している場合ではない。このままゴールだけでも決めてしまいたい。そして、いよいよ右に大きなビルが見えてきた。交差点を右折して歩道を走り、ついに鹿児島中央駅に到着。喜びをかみしめてGWツーリングのゴールを決めた。蒸気屋のかるかんとかすたどんを買って、お風呂マップを観光案内所でゲットしてきてお茶でもしながら作戦を練ることにした。鹿児島市内は風呂は豊富にある。当然、温泉、日帰り入浴、露天風呂 が必須条件だ。しかし、そこまで揃うのは意外と見つからない。
あまりはまっても居られないので、雨の中だが市内にキャンプスポットを探しに出掛ける。しかし、どこを当たってもホームレスが住み着いていて安心して張れそうな雰囲気ではない。暖かい地方都市はホームレスとの取り合いになってしまう。少なくとも張りっぱなしで天文館通りに飲みに行ける状況にはない。そうこうしているうちに「あきらめる」という選択肢が頭をよぎった。そしてリアスプロケットのゆるみが顕在化してきた。走っていてもがたつきが分かる。明日は午前中に増し締めしよう。
駅の前に戻り、安いビジネスホテルを見つけて宿を確保する。何が凄いって、有料のはずのAVが無料で見放題だ。普通にTVのチャンネルを回していて驚いた。腹も減ったし汗だくだし、まずは風呂と飯と酒だ。今夜は打ち上げだ。自転車は雨ざらしにしかできないので駅の有料駐輪場で屋根の下に置くことにする。とにかく荷物を部屋に放り込んで濡れた物を干して、着替えとお風呂セットを持って出掛ける。駅のすぐそばの温泉を見つけて入りに行く。風呂に入って疲れを落としてサッパリする。
路面電車に乗ってあこがれの天文館通へ。黒豚が食えそうな店を探して歩き回る。呼び込みの兄ちゃんに店を探してもらい、居酒屋に落ち着く。今日もビールでのどを潤して、キビナゴの刺身と天ぷらをつまみに飲む。何と言っても黒豚を欠かすわけにはいかない。角煮などをつまみにさつまの芋焼酎ロックで飲む。すっかり飲み過ぎたというほど飲み、天文館通を後にした。
ホテルに戻って、日記を書きながら爆睡してしまう。今年の完走の喜びを飲みで表現した。 |
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9日目 |
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鹿児島→指宿スカイライン→知覧→頴娃→西大山駅→指宿 |
89.78km |
2005/05/06 |
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指宿−指宿枕崎線→鹿児島中央−九州新幹線つばめ→新八代
−鹿児島本線 特急リレーつばめ→博多 |
目覚めると、天気は完全に回復して良くなっている。とりあえず、洗濯と朝飯とスプロケットの修理に出掛ける。鹿児島中央駅の屋内駐輪場から自転車を引っ張り出して、ホテルの近くにあったコインランドリーに洗濯物を突っ込んで、鹿児島中央駅に戻っておにぎりと揚げたての薩摩揚げで朝食を取る。少し甘みが強いが俺は好きだ。そこから街の自転車屋でスプロケットを増し締めする工具を求めて走り回ったが、態度がでかい割に知識が欠片もないプロショップばかりで用は済まない。「そんなとこ増し締めなんてしない」の連続だ。洗濯を終えてホテルに戻り荷物をまとめる。どうせ発送するので適当だ。
何だかんだやっているとチェックアウトが遅くなってしまった。すでに9:30。そこから貯金を下ろして荷物を郵便局で発送する。郵便局の表で荷物を解体して段ボールに詰め込む。郵便の方が宅急便と違って局に行けば24時間受け取れるし安い。その場で国際用の箱を買って発送完了。フロントバッグとザックのみになった。身軽になった状態で、さらに南に走っていく。ようやく桜島も見えてきた。昨日は曇っていて全く見えなかったが、やはり雄大な山だ。
谷山ICから指宿スカイラインに入っていく。九州自動車道と接続されているが本当に自転車で走れるのか? 地図で見る限り少しあやしい。そして谷山ICまでは、結構な傾斜の上り坂が待ちかまえている。売り切れの続いている俺の足には空荷でもきつい。そしてICに衝撃の看板が!! 「谷山IC-鹿児島IC 自転車通行禁止」うわっやられた〜と一瞬へこまされたが、逆に谷山から頴娃までは通行可ということのようだ。
いわゆるスカイラインらしい道路が始まった。いきなり、しっかりした上り坂が始まった。さすがスカイラインだ。一度登り切ってしまえば尾根づたいに快走できそうな淡い期待を持って頑張ってみる。いかんせん、出発も遅いがペースも伸びない。この調子じゃ今日のうちに指宿まで走りきって福岡に行くなんて不可能に近い。まあ、福岡の実家もスルーして栃木に帰ってしまっても最悪はしょうがないかとも思い始めてきた。 常に、左側には桜島と真っ青な錦江湾の絶景が広がる。しかしながら、距離とボリュームを侮っていて水分の手持ちが足りない。徐々に俺自身も枯れてきた。川辺の展望公園までの5kmの上り坂を無水で走る必要が出てきた。昼食も食いたいが、展望公園でも食えるか微妙だ。もしかすると昼過ぎに到着予定の知覧まで無理かもしれない。せめて水道だけでもあることを願いつつ走っていく。売り切れた足、半端じゃない日差し、どこまでも続くアップダウンしながらの上り坂、飲みきってしまった水分、空腹…。とにかく我慢の走りが続く。時折見える錦江湾と桜島の眺めだけが精神的な救いである。 |
そして、展望公園に到着。地図で見る限りは、まだ峠ではないようだが休憩だ。売店もある。飯も食えそうだ。まずはペットボトルのお茶を飲みながら昼食にして、うどんとおにぎりで腹を満たす。かなり生き返った。ご当地グルメとして焼き芋を売っているが、正直今は熱い物を食いたい気分ではない。麺類だけでは腹が減るのは目に見えているが、そのまま展望公園を歩いて展望台へ行く。先ほどから続いている錦江湾の青い海と稜線に迫力のある桜島の風景のハイライトとも言える眺めだ。
展望公園を後にして、知覧を目指す。木床峠に向かって、最後の力を振り絞って上っていく。峠を越えると、走りは一変した。一気に下り始めた。直線的で気持ちのいい下り坂が続く。新型ランドナーの性能を存分に発揮する。あっという間に知覧ICに着いてしまった。どうせならもっと下りを楽しませて欲しかった。しかし、ICを出ると知覧の市街地へ向けて、さらなる激しい下り坂だ。スピードもグングン伸びる。もはや車には負けないペースになってきた。逆に言うと、上るのはイヤだ。
あっという間に知覧の街並みに到着。古い街並みはメインストリートより一本入り組んだ所にあり、入り口がどこにあるか見つかりにくい。何とか武家屋敷街を見つけて走ってみる。南国の強い日差しを浴びた風情のある街並み、庭には南国らしい木が植えられていて京都や鎌倉とはまた違う風情を醸し出している。
ひととおり走り回って満喫したところで、指宿までの走りの作戦を練る。やはり、先ほど下った道を上り直して、また指宿スカイラインを走っていくと、地図で見る限りは池田湖まで山を1つか2つ越える必要がありそうだ。どう見積もっても終電までには走りきれない。ここは残りの指宿スカイラインはいつか行く予定の屋久島ツーリングに宿題として残して、ここは一本枕崎寄りの県道を南下することにする。10km長いが、アップダウンがなく下り基調に持ち込めることを考えると得策だろう。
知覧茶の産地を駆け抜ける県道を下っていく。俺の読み通り下り基調の道が続いていく。ペースはかなり速い。分岐を見落とすほど速い。35km/hを割ること無い好調な走りが続く。向こうに富士山のような形をした開聞岳を見つつ、目の前には茶畑が広がる。一瞬、懐かしの静岡県かと思ってしまうが、ここは鹿児島県だ。この旅の最後をしめくくるような開聞岳と茶畑を見下ろす絶景が続いていく。しかも道は下り基調で足に優しい。我ながら、指宿スカイラインの残りを回避してここに来た判断はよかったと振り返る。
頴娃からは東シナ海を右側に眺めつつ、向かうところに開聞岳の稜線を眺めつつの走りが続く。気持ちが良いくらいの平地で、ペースは全く落ちない。何とか終電前には辿り着けそうな目途が立ってきた。そして、開聞岳と畑の間の国道を走り抜けて(JRの)日本最南端・西大山駅に到着。写真を頼みたくても、めったに人が来ないローカル駅だが、たまたま観光客のカップルが居たので写真を撮り合い、俺の日本縦断で唯一浮いていた指宿から西大山駅までのルートを自走でつないだ喜びと、日本の端っこに来た喜びを満喫する。
そんな喜びに浸る間も無く、続きの走りを続けていく。山川と指宿の境目に向けて徐々に上り、登り切ると海の向こうに佐多岬も見えてきた。日本縦断を懐かしみながら、指宿へのラストスパートを走っていく。最後の峠を越えてトンネルを抜けると指宿市に突入だ。今年も完走がみえてきた。一気に指宿市内に下り、指宿駅に向かっていく。駅までの距離がぐんぐん減っていく。そして、指宿駅のターミナルに到着。2005年GW九州ツーリング すべての目標ルートを完走である。新型ランドナーを作るところから俺の挑戦は始まって、このハードなアップダウンルートを走り抜いた。 |

指宿スカイラインから 桜島と錦江湾
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知覧の街並み
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開聞岳と茶畑
富士山と茶畑の静岡県のようだ…。 |

景色がよく走り甲斐のある農道
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(JR)日本最南端 西大山駅
通算2度目の到達。
ついに自走で踏破する。
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記念写真を撮り、西大山駅の記念切符を買い、自転車をばらす。輪行はスムーズに終わってしまい、風呂に入りに行く。終電まで時間が多少ある。駅のすぐそばに温泉がある。残念ながら露天も砂蒸しもないが、温泉を満喫して、コンビニで夕食を軽く買ってビールも買う。駅のベンチで乾杯しながら電車を待つ。撤収する寂しさと走りきった満足感をビールで流し込む。
すっかり身軽になった荷物を持って、ホームに行き電車に乗り込む。完全に日が暮れて、電車が寂しげに発車する。10日間確保した長かったGWも終わりだ。寂しさとまた忙しい日々を夏まで頑張ろう、そんな決意を乗せて電車は帰って行く。新型MP3プレイヤーで音楽を聴き、たまっている日記を書きながら鹿児島中央への到着を待つ。それにしても宇都宮から出発して、充電池+乾電池2本でここまでもっている。さすが220時間は伊達じゃない。 もうすぐ鹿児島中央というところで、何故か膝をすりむいて血が出てる子供が隣のボックス席に乗ってきた。見た感じ少し痛そうなので、まだ発送していないはずのバンドエイドをフロントバッグから取り出す。ランドナーのハンドルが付いてるバッグをいじくり回している俺を怪訝そうに見ているが、さすがに生活のすべてを積んでいるだけあって何でもありだ。とりあえず血は止まったようなので安心だ。 |

新型ランドナーにて今年も完走!
指宿駅
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そして、鹿児島中央駅に到着。新幹線の乗り換えと土産購入に急ぐ。まだ売店は閉まらないだろうと思っていたが、容赦なく閉まっている。かるかんの蒸気屋でかるかんを買い、豚の角煮をKIOSKで買い、鹿児島名物の「しろくま」を買って新幹線のホームに向かう。そこら辺は「西鹿児島」と言われていたころとは大きく変わってしまった感じである。
鹿児島新幹線のつばめがホームに入ってきた。白く近代的な雰囲気の列車である。新幹線不要論の俺ではあるが、博多から鹿児島まで開通したら便利だろうと思ってしまう。こぎれいな車内に乗り込み、席に座ってしろくまをつついていると、女性の車掌さんが「荷物が大変多いようですので 新八代のお乗り換えはお手伝い致します」と言ってきた。正直、驚いてしまう。新八代の乗り換えをこなせば博多到着が約束されたようなものだし、安心だ。静かに力強く加速する新幹線はあっという間に新八代に到着してしまった。
そろそろ、乗り換えの準備をと思っていたら車掌さんが来た。蒸気屋の紙袋とフロントバッグを手伝ってもらい、新八代に着くまで話は盛り上がった。意外と南九州の女性にはサイクリストというのはウケがいい。日焼け具合とひげの具合がホークスの陽気な大砲ズレータに似ているからだろうか(たぶん違)。九州では「少し焼けてるぐらいがちょうどいい」という風潮もあるようだ。そこら辺が本州とは違う。
リレーつばめに乗り換えて、車掌さんに見送られて博多に向かって出発。懐かしの熊本を抜けて大牟田、久留米、鳥栖を抜けて、夜中の12時に博多に到着。今度は手伝ってはもらえない重い荷物を持って、のんびりと改札を出てタクシーへ。実家に帰るのも久しぶり過ぎて、近所の信号の交差点名が思い出せない。道を見ながら、右とか左とか指示しないと自宅にたどり着けない。もはや、実家はアウェイになりつつある。
疲れているので、寝てしまいたいところだが中州へ飲みに行く。帰ってきたのは5時。もはや力尽きた。 |
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10日目 |
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博多−東海道・山陽新幹線→東京−東北新幹線→宇都宮 |
2005/05/07 |
昼間は友達の家族に会いに行くが、髭と日焼けで熊っぽくなっている俺はイマイチ好かれず、爺さん婆さんに顔を合わせて昼飯を食いに行って、俺は栃木へと帰っていく。ビールも少し入っていて、やや眠い俺は新幹線に荷物を載せてお茶を買いに出たところで、乗り遅れてしまう。ウォークマンと財布とケータイと日記帳を俺の手元に残してのぞみ号は旅立ってしまった。しかし、妙に冷静に調整し東京駅でピックアップしてもらえることになり後続の500系のぞみで追いかける展開になった。出発は30分近く遅いが、到着はわずか7分遅れの予定だ。
残りの日記を書いて音楽を聴きながら寝ている間に東京に到着。東京駅で荷物を引き取り、東北新幹線に乗り換える。明日から仕事だというのに、10時過ぎに宇都宮に到着。荷物をコインロッカーに入れて、我が家まで歩いて戻ってPRELUDEで引き取りに来る。せっかくばらしてあるのでメンテしながら組戻したい。組戻して走って戻るのも面倒だ。徒歩15分でPRELUDEで5分なら、車で取りに来た方が楽なのである。
そして自宅に到着。俺のGW旅は終わった。 |
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