0日目 |
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宇都宮-東北新幹線やまびこ→仙台−東北新幹線はやて→八戸
-東北本線・特急 津軽→青森 |
2006/08/08 |
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青森市内 |
7.24 km |
今年は段取りよく準備を整えていく。夏休みも長く取れそうだし、初日は函館市内を観光して終了予定なので初日のホテルに荷物を送り込む。段ボール箱3つに渡る荷物を詰め込んで日通の営業所から送り出す。この時点で出発の4日前。去年みたいに空港で荷物が足止めされても、まだまだリカバリーの利く日程だ。もちろんオイルはスプレー缶をやめたし危険物にあたるものは入っていない。そして青森までの切符も購入済み、青森から函館へ渡るフェリーも夜間はひっきりなしに出ているし予約済みだ。もう準備万端といった状態である。 |
20:10のデッドリミットに対して18:30には宇都宮駅の西口へたどり着いた。さっさと自転車をばらしてホームへと向かう。至って順調な出発であるかに思えた。ちょうど夕食時だ。駅弁でも食いながら夏休み突入をビールで祝おうと思ったのだが、新幹線の改札を入ってしまうと弁当を売っている店がない。ひもじい思いを我慢して仙台まで行かないといけないようだ。ビールだけというのもつらいので
ピーナツを買ってホームへと再びあがる。仙台行きの やまびこに乗り込み、新幹線にゆられながら一人で乾杯。何かとつらい出来事も多かった夏までの日々をビールで流して旅へとテンションを上げていく。やまびこという名前の割に各駅停車の列車は仙台の駅に到着。 仙台で45分ほど待ち時間があるし、仙台までは自由席特急券で仙台から先は
はやての指定席券と特急券も仙台で分かれているし途中下車もOKなので夕食を食いにでかける。仙台といえば牛タンでしょう。今夜は長いのでしっかり飯を食っておきたい。仙台駅内にある「青葉亭」へ立ち寄る。22時頃で開いている店はここだけのようだ。俺のような人種が行くにはたたずまいがオシャレ過ぎるのが気になるけど仕方ない。オシャレな食器にのった牛タン定食は出てきた。ブルーチーズやワサビなどいろんな種類のソースが付いている。シンプルにワサビだけを付けて食べるのが一番美味しい気がする。固すぎずしっかりした歯ごたえの牛タンが美味い。さすが本場だ。
食い終えて満足して新幹線ホームへと戻り待合室で、最終のはやてを待つ。まだ
さほど混んでいない はやてに乗り込み八戸を目指していく。1時間ほどで盛岡まで走り抜いて、途中の駅でまばらに下りていく客を見送りつつ八戸へ。これで高規格線の新幹線は全区間制覇したことになる。 |

夏の旅 出発に乾杯。
東北新幹線 やまびこ車内
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仙台駅 青葉亭の牛タン定食
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特急津軽に乗り込んだら、まだまだ続く長い夜に備えて眠りについた。しかし、青森まで1時間半ほどの道のりなので、仮眠にもならない眠りだ。野辺地、浅虫温泉… 昔 自転車でも鈍行でも来たことのある懐かしい地名の駅を見送っているうちに、青森駅へと電車は入っていく。
今日の青森発着の最終列車のようで駅舎を閉めようとしている動きにあおられつつ、旅情を感じずにいられない本州の最果ての駅を歩いて玄関口に降り立つ。ほどなく玄関口の扉は施錠されて中は清掃作業が始まった。暗い駅の表で自転車を組む。ここで輪行の旅は終了で、走り始める。わくわくした気持ちで、スムーズな作業にしてランドナーを組み上げた。フェリーの時間まで4時間近くあるので青森市内へとりあえず徘徊する。コンビニで日記帳を買いたいし、青森名物のリンゴジュースも飲んでおきたい。
懐かしいような、意外と変わったような真夜中の青森の街を走っていく。中部地方のイメージの強いサークルKに立ち寄って手帳サイズのリング式のノート2冊とペンとシャイニーの100%リンゴジュースを買う。青森のリンゴジュースといえば、当然ながら青森産のリンゴ100%だ。スッキリとした味わい、強い甘みと酸味 これぞリンゴの味だ。
11年前に買い出しした店や我らが国道4号線の終点など見つつフェリーターミナルへと走っていく。5kmほど真夜中の寂しい街を走り抜けて、フェリーターミナルに着いた。既にライダーでごった返していた。一応、予約はしているものの他の社のフェリー(存在自体をここで初めて知ったが)で出航が早い物に乗ってしまおうかという考えもあったが、キャンセル待ちの列は長蛇なので、並ばずに仮眠をしつつ予約していた4時のフェリーを2時間半ほど待つことにした。 |

シャイニーのアップルジュース
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JAアオレンのりんごジュース
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その間に、もう一つ見つけたリンゴジュースを買ってみた。こちらはメーカーはアオレン。ねぶたのパッケージが観光客のハートをくすぐる。味は正直な感想としては、パッケージが地味でもシャイニーの方が素直にリンゴの味が出ていたように思える。そこは好みの問題なので、どちらが良い悪いは言い切らないことにしよう。ただ、いずれのリンゴジュースもどこに出しても恥ずかしくない、さすがは青森産と言ったところだ。
船着き場の前のベンチで横たわって仮眠を取りつつフェリーを待つ。夏の夜とは言え結構寒い。決して本州のような熱帯夜という雰囲気ではない。
朝4時発のフェリーへの乗船が始まった。先に自転車など2輪を載せてから4輪が乗り込むので、これはありがたいとばかりに、さっさと乗り込みデッキの端のスペースを確保して毛布と枕を手に入れて眠りについた。5時間ほどの航路なので、ここでしっかり眠っておきたいものだ。 |
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1日目 |
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青森-青函フェリー→函館 |
2006/08/09 |
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函館市内 |
35.91 km |
寝ている間にフェリーは函館へと近づき津軽海峡を渡っていく。アナウンスがかかって目が覚めると函館の湾へと入り、すぐそばに函館山が見えていた。いよいよ北海道上陸だ。車両デッキへと駆け下りて準備する。と言っても自転車はのんびり構えていても何の問題もないのだが居ても立ってもいられず下に降りたくなったというだけである。柔軟体操をしつつ、周りの車を観察しつつ船が着くのを待つ。
いよいよ接岸してゲートが開いて車が出て行く。俺の自転車があった位置は割と奥なので、半分以上の車が出た後で俺が出れるか出れないかという順番になりそうだ。そして、いよいよ俺の前にいたトラックが出て行った時、視界の向こうに開いたゲートが見えた。係員のGoサインが出た。SPDをカチッとはめて、ペダルを踏み込む。そして、フェリーの外へ向かって加速していく。ゲートを渡り北海道へ上陸。軽くガッツポーズをしてターミナルを飛び出していく。
北海道とは思えないほど暑いが、夏の日差しと晴れた空。何はともあれまずは函館の市街地を目指して走っていく。眠さも忘れて観光モードでいきたい。まずは函館の朝市で朝食を食べて、実家に蟹をはじめとした北海道の海産物を送りたい。北海道らしい広々とした道幅の道路。積雪時の道路の端っこを示す頭上の矢印マーク、縦型の信号。細かいところにも北海道らしさを感じて走っていく幸せの瞬間である。
すっかり、こぎれいな駅舎に様変わりしてしまった函館駅に着いて、まずは駅の向こうの朝市へと急ぐ。市場の中を歩きつつ、気が合いそうなお婆さんの店で毛蟹とウニを買って福岡の実家に送る。夏休みの初日の朝に北海道から電話してる俺に、「もう北海道におると?」と驚かれる。
買い物が終わったところで俺も朝食としたい と言うことで北海道の港町 函館らしく海鮮丼でしょう。朝飯からガッツリという感じもあるが、寝起きという感覚もない。市場の通りで通行人が食べているのを見たら俺も我慢できなかった。衝動にかられて生バフンウニを500円で買って、スプーンですくって頬張る。口の中にとろけるようなウニの濃厚な磯の味。これが北海道の味だ。
さすがにウニだけでは飯にならないので、近くの店でイカ丼を食べる。さっきまで生きていたイカをざくざくと切って、ワタで和えてご飯の上にドンッと盛りつけた豪快な丼だ。イカの旨みと歯ごたえにやられそうだ。本州では絶対に味わえない朝食だ。これからしばらくは走る日本海沿いでは、このレベルかはたまた
こんなのを遙かにしのぐ海鮮物が俺を待っているのかと思うとワクワクしちゃいます。何よりも夏休みの初日の朝ご飯を函館の朝市で、豪華海鮮丼という快挙だろう。内陸で我慢しながら暮らし、徹夜で函館まで移動してきたかいがあったというものだ。
函館自体は輪行とか日本縦断で5回ほど来たが、実はまともに観光したことはない。元町の方も五稜郭もトラピスト修道院なども見ていないのである。しいて言えば日本縦断で通った時に函館山の夜景を見たぐらいで当時は台風直撃にあって土砂降りの雨の中で1日駅舎で寝ながら滞在したのみである。今回は、まともに観光できるだけの時間があるので、眠さを忘れて頑張りたい。
まずは市場を後にして港町を抜けて函館の教会が集まっている元町を目指して走る。古き異国情緒の港町に酔いしれつつ、立ち止まっては写真を撮り…という感じで、なかなか前には進めない俺がいる。半分もとのまま半分は作った景色ではあるのだろうが、雰囲気に酔ってしまう。
函館山の麓にある元町の方へと向かっていく。その途中でも、古い洋館を改装してレストランにしたような店が何軒も見つかる。これは観光客にとっては楽しいものでしょう。ほとんどの古い洋館は元町から坂を登ったあたりに建っているので、ここは眠い体にムチを打ちつつ頑張るしかないようだ。ただ、坂を登れば函館の港町を見下ろすような形になるので、今日みたいな日だと気持ちいいものがある。
坂を登り切って、最初に立ち寄ったのはハリストス正教会だ。花が咲き乱れる庭園に古き良き洋風の教会が堂々と建つ。こういうところに函館の異国情緒というものを感じる。休憩がてら見事なまでの建築などを見て満喫。写真を撮って遊ぶにはちょうどいい教会にも思える。
時間が経つにつれて、気温は上がってきた。暑さに耐えながらの観光となってきた。次は領事館へ行ってみる。なぜなら坂を下りなくてもいいし、近いからだ。眠気と暑さで徐々にキレがなくなってきた。この街をのんびりと自転車で散歩している、そんな状態といえるだろう。領事館は建物自体も立派で数々の歴史的な行事も行われてきたのだが、何と言っても1着1000円/20分の貸衣装が楽しそうだ。女性がいわゆるハイカラなドレスを着ている。男にはタキシードを貸してもらえる。俺は汗だくだったので
遠慮しておいたが、コスプレをしている女性客を見るか女性なら是非ともチャレンジしてもらいたいものだ。
内陸に押し込められてしまった海育ち ぐっさん。昼飯も海鮮です。再び朝市の方へ行き、海鮮系のお店で昼飯にする。今度はミニ海鮮丼と何と言ってもイカ素麺でしょう。生のイカを細く切ってつゆを付けて素麺のように食べる。日本縦断の途中で来たときも、函館で食って感動した物だった。その感動の再来だ!と意気込んだが、いざ食べてみると朝飯のイカ丼の方がイカの美味さが存分に出ていたような気がする。それでも内陸栃木では食べれないレベルの味なので満足は満足なんですが、イカの美味さを最大限味わう手法かというとそうではない。…と海原雄山っぽく厳しいことを言ってみる。
お腹も満たされたところで、今度は東の方へと向かいたいですね。五稜郭、トラピスチヌ修道院
このあたりを回ります。のんびり走る路面電車と広々とした通りを走って五稜郭へ。
五稜郭を見下ろすタワーも気になったが、まずは五稜郭を自転車で回ってみることにした。角から入って、五稜郭の角の数を数えながら自転車で流してみる。全身で五稜郭の形を実感できたようだ。緑もいっぱい、白の形と同じく複雑な堀ではボートに乗る人たちがのんびりとしている。何だか良い景色。そして橋で堀を渡り中にも入ってみる。中には歴史博物館があり、五稜郭の由来や支配した人などの歴史が展示されている。
一通り楽しんだあとは、五稜郭タワーにも昇ってみる。今日はやる気満々だ。チケットを買ってエレベーターに乗ると、演出がある。ライトダウンしてブラックライトで映し出された絵と解説が流れ、今時は減少の一途をたどっている美人のエレベーターガールがいる。タワーの上から見ると、五稜郭の芸術的な星形の輪郭が見事なまでに分かる。タワーの展望台も五稜郭と同じ星形となっている。もう少し離れていれば五稜郭全体が見えるのだが…と言う点だけが少し残念で、上から見下ろした写真が撮りにくい。
そして穴場中の穴場とも言える観光スポットがあった。それは北洋資料館だ。北の海の自然、そして漁についての展示がある。ある意味ではマニアックな博物館だが、俺みたいな製造業に身を置く者にはおもしろみがある博物館に思えた。そして圧巻は体験コーナーだ。地味なのか派手なのかイマイチ不明な部分があるが、リアルに作り込まれた漁船の船室に入り船の揺れを体験できる。ゆったりと大きく揺れるシミュレーターで窓を模したディスプレイには冬の北洋の景色が流れて解説の音声も出る。何だかんだ言ってマニアックな地味な博物館だが満喫してしまった。
続いて、10km弱離れたトラピスチヌ修道院を目指す。ここさえ回っておけば主だった函館の観光地はおさえたことにはなりそうだ。そろそろ眠気と暑さで体力の限界も近いのを実感する。最後に軽く坂を登って、ヘトヘトになってトラピスチヌ修道院にたどり着いた。俺のほかにはサイクリストらしき人もない。
教会の敷地内は、観光客は多いものの閑静な雰囲気である。ゴミ一つ落ちてないほどきれいな庭。教会としての厳かな雰囲気を感じる。お婆さんの修道女の方が中でいろんなものを売っていたりで不思議な雰囲気でもある。奥の方まで歩くと煉瓦造りの修道院が見えてきた。雰囲気が本当にいい。厳かな雰囲気と美しさ、そんなものが感じられる。 海沿いの道を市街地へと戻っていく。もう疲れてしまったので、のんびりだ。左に広い海を眺めつつ、潮風で涼みつつ戻る感覚が心地よい。10kmという道のりの長さも感じなくなってくる。市街地へと戻りホテルにチェックインする。荷物も無事に届いているし、2Fの玄関の1Fはドアの内側に自転車を置けるので安心感もある。駅にも近い立地で選んだので飲みに行くのもシャトルバスで夜景を見にいくのも楽だ。部屋へと入り荷物を開梱して明日に備えて、シャワーを浴びてから出かけていく。 |

北海道上陸へ!(フェリー内)
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函館 朝市の風景
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函館 朝市のバフンウニ
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函館 朝市の イカ丼
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函館の港町
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ハリストス正教会
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函館 旧英国領事館
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函館名物 イカそうめん
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五稜郭 外周を走りながら
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五稜郭をタワーから眺める
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北洋資料館 漁船シミュレータ
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トラピスチヌ修道院
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日が暮れ始めた函館の街はすっかり涼しくなってきた。その辺は本州の熱帯夜とは感覚が違い心地よい。朝市のあたりに質素な居酒屋を探す。さすがに朝市とあって夜まで営業している店は少ない。居酒屋も数えるほどしか見あたらない。店の表の炭火で魚を焼いている様子が見えた居酒屋に決めて一人で入ってみる。ざっかけない雰囲気で気取らずいける。時間はかかるようだが名物のイカ飯の他にホッケなど焼き物とタコとウニとツブ貝の刺身盛り合わせを頼みビールで乾杯。何はともあれ旅の初日が無事であったこと、準備などの段取りがうまくいったこと、この旅の前途を祝う。そんな一人の宴も日が完全に暮れたあたりで終了しないといけない。自家製のイカ飯で夕食のしめとする。イカの味が濃厚で、オリジナルのたれが本当に美味い。店の名前は忘れたがオススメだ。 |

店は忘れたが自家製のイカ飯
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俺がそこまで急ぐには理由がある。早いとこシャトルバスに乗り込んで函館山へ行きたいのだ。そう、函館の夜景だ。今日は天気が良いので、夜景も絶景が期待できる。昇らない手はない。自転車でヒルクライムしないのか? 残念。繁忙期は一般車通行禁止なのだ。バスターミナルへ行ってみると既に行列ができていた。見たところ1台ギリギリ乗れるか乗れないかというポジションが俺だ。残念ながら俺を乗せることなく1本目は出て行ったが、30分も待たずに次が来て乗っていく。昇っていく途中から夜景が見え始める。これは期待できそうだ。走ると楽しそうな函館山のワインディングをバスは昇っていく。30分弱で山頂へ到着。降りてみると展望台は既に人でごった返していた。ねばり強く前へ進めるのを待つしかない。行列ではないので好きな場所が空くまで、その後ろで待つ。前の人が見終わっていなくなったら詰めて…という繰り返しでポジションを取る。 |
俺が見始めた時は函館の市内だけはガスっていて夜景が隠されている状態だった。雲から透けて見える夜景というのも神秘的だったが、もう少し鮮やかなのが欲しい。そこから30分ほど待つと雲は流れていった。すると函館市内の光の粒は鮮やかに無数にあらわれ、その不思議な形の海岸線を形取り始めた。さすがに夜景の名所というだけのことはある。感動した。いろんなモードを試しながら写真を撮りまくった。1時間ほど、場所を変えつつ眺めて帰りのバスを待つ。心から満足!
と言いたいところだが正直、日本縦断で宗谷岬からここまで来たあと、かつ初めて見た夜景の方が感動が大きかった。精神的な面というのは大きいものだ。 満足した気持ちを載せてバスは山を下っていく。非常にマメな解説のバスガイドさんの喋りを聞きながら函館の駅前へと向かう。ほどなくしてバスは函館駅前に到着。俺はホテルへと戻り、眠りについた。満足でかつ内容の濃い初日が終わった。 |

雲がはける前の夜景。
これはこれで 幻想的と思う。
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函館の夜景 (雲が完全にはけた後)
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2日目 |
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函館 → 知内 → 福島 |
84.91 km |
2006/08/10 |
気持ちよく目覚めて、2日目の走りへと準備を始める。まずはチャリにリアキャリアとサイドアウターキャリアを取り付ける。この夏から新導入のサイドバッグを搭載し、いつも通りに荷物をパッキングする。もう慣れたものなので、あっさりと終了。ホテルをチェックアウトする。昨日から旅は始まっているが、気持ちとしては今日が初日。北海道の南の海岸を回っていく旅の始まりだ。
ということで、出発直後のコンビニで朝食をと思って立ち寄って、ギアをローに落としたそのとき! 今年からローノーマル(ワイヤーが緩むとローギア側に落ちる)に変更してみたが、スポーク側にガードプレートなりがないと落ちてしまうのかランドナーとの相性はあまりよくないようだ。MTBならほとんどの場合はガードがついているので落ちない。レバー自体も一気に数段落ちるような仕組みではないのでMTBとの相性は良いがランドナー(ガードプレートのないギア、ダブルレバー)との相性が悪かったのではないかと。暑さにいらつきながら落ちたチェーンを戻して手は油まみれになりつつも事なきを得た。 |

函館を出発! ホテルの前にて
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函館湾を左に眺めつつ、徐々に遠ざかっていく函館山と函館市街地を寂しく見ながらペダルを気持ちよく漕いでいく。離れれば離れるほど海の景色は自然のものに近くなり、道も開放感を感じるものになっていく。左に見える津軽海峡だが沖はやや曇っていて下北半島や津軽半島が見えるわけでもないのが残念なところだ。
とうとう函館山も見えなくなるほど遠ざかった木古内のセイコーマートで昼食にする。生鮮食品にオリジナルドリンク
北海道限定の食品たち。一応クレジットカード決済もできるオレンジ色のオアシス。北海道に来たら基本的にはセイコーマートを愛用している。
弁当を頬張ってから、また続きの道へと走り出す。木古内から10kmほど走った知内からは一時、内陸へと入っていく。じりじりと上っていく坂、そして蒸し暑い今日の天気。徐々に体力を奪っていくが、これが自転車で走る醍醐味。きつ楽しいというところだ。知内といえば、青函トンネルの北海道側の入り口がある町だ。
まずは、青函トンネルを越えた列車が最初に通過/停車する知内駅で休憩する。ここで情報を集めてみる。どうやら青函トンネルの北海道側入り口の見える場所があるようだ。国道からさほど離れていないようなので、これは見にいきたい。知内の駅の中にある地場産品の売店を覗いてみると、「おっぱい饅頭」なるものが売られていた。そして知内名産のトマトを使ったトマトジュース。早速、おやつに買ってみた。トマトジュースが嫌いな俺でもグイグイ飲めるほど美味しいトマトジュースだ。俺がトマトジュース嫌いなのはトマトジュースの味は必ずしもトマトの味じゃないからだ。トマトが好きな俺なら飲めるはずなのである。おっぱい饅頭は、白い餡と砂糖で作った衣で包まれていて、乳首の部分は薄いピンク色で、もちろん2個セットだ。結構、美乳いや美味だった。
国道から分かる位置に青函トンネルの撮影台と書いた地味な展望台があり、結構遠くの高架上にトンネルの口が見えている。これが青函トンネルの入り口だ。本当に遠い。遠すぎる。携帯電話のカメラなどでは何を撮っているのか分からないほど遠い。普通のデジカメなどで思いっきりズームしないと何の写真か分からない。もっと近づく道があるようなので近づくと高架沿いにトンネルの入り口になっている山に突き当たるようだ。しかし、今度は高架が邪魔でトンネルが見えない。いずれにしろ、ベストな撮影スポットは無いように思える。 |

知内 おっぱい饅頭とトマトジュース
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青函トンネル北海道側 入り口
高架の線の向こうの黒い穴です
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青函トンネル入り口を見る展望台
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そこからはジリジリと距離を使って上っていく北海道らしい峠が始まる。暑さと出来ていない体に苦戦しながら徐々に上がっていく。さっきの駅で水を補給しなかったので、飲みきってしまった状態だ。森の中の広々とした国道を延々と進む。こういう緩い直登型の峠に北海道を感じる。
福島峠のトンネルを越えると道は下り始めた。一応、今日の目的地としている福島町までは下るのみだ。一安心である。せっかくなので下り坂を満喫して、下りきると福島町の市街地へと出た。道の駅もあるし、青函トンネル記念館もある。看板を見ていると、青函トンネル記念館の他に千代の富士・千代の山記念館なるものもあるようだ。千代の富士ファンとしては是非とも寄っていきたいところだ。ついでに情報収集もしていきたい。
ということで、まずは青函トンネル記念館に寄り道。トンネルの断面の半円を模した形の建物の中にトンネル建設時の資料、現在のトンネルの中の様子、ライブカメラなどが展示してある。物を開発する仕事をしている人間としては、こういう展示物にはロマンを感じてしまう。建築士によっては、職業人としていられる年数のうち、多くを青函トンネルに費やすほどのビッグプロジェクトだっただろう。そんな男たちの熱い物語に俺の胸も熱くなった。
そこで情報収集をしてみると、風呂は6km先の吉岡というところにある温泉だけのようだが、買い出しはこの近くでやらないとダメそうだ。そう吉岡というのは鉄道マニアならピンと来るかもしれないが、青函トンネル内の吉岡海底駅のほぼ真上の町だ。ちょうどセイコーマートもここにあった。それだけを確認できたら、次は千代の山・千代の富士記念館だ。世代的には千代の山は俺が生まれる40年以上前の横綱なので記憶にないが、千代の富士は、ちょうど見ていた世代だ。小柄ながら筋肉質な力士離れした体から来る強さと技。かっこいい力士として記憶に残る。なぜ福島町に記念館があるかというと、出身地だからだ。こんな小さい町から二人も横綱が輩出されたということで記念館のようだ。いろんな記念品などが展示されていて館内に稽古部屋もある。そんな千代の富士に胸がまた熱くなって、館を後にした。 |

青函トンネル記念館 (外観)
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青函トンネル記念館 (中の様子)
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横綱 千代の山・千代の富士 記念館
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さてセイコーマートで買い物だ。コンビニだからといって侮るなかれ。北海道産の肉から野菜から、その他調味料まで何でも手にはいるのだ。米とジンギスカンともやしを買っていった。昨日は魚をいっぱい頂いたので今日は肉もいいだろう。荷物をサイドバッグにつっこんで吉岡へと向かう。海岸沿いのほぼ平地なので苦労することもなく到着。吉岡の港のあたりを自転車で流しつつキャンプできそうな公園を探してみるが、見つからない。やはり坂の上の公園に行くしかないか。諦めつつ、漁船の写真を撮っていると犬の散歩中の漁師さんに話しかけられた。一見、イカ釣り船に見えるが、これはマグロ漁船だと。その心は、イカを夜中に釣って、そのイカを餌にしてマグロを延縄で釣り上げるということらしい。津軽のマグロなら一本で数百万なので一攫千金を狙うそうだ。貴重な話を聞けて、いろいろと話が盛り上がった。早朝から昼間はマグロ漁、夜中はイカ釣り。いつ寝るか?
肉体労働だというのに漁の最盛期はほとんど寝ないという答えに驚く。 |

マグロ漁船
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坂を軽く上って公園にテントを張る。芝生のサイトで広々としていて快適だ。まずは蚊取り線香に火をつけて周りの蚊を追い払って、テントを組み立てたところで、風呂に入りに行く。空荷の自転車で坂を下り、温泉へと向かう。温泉の建物の中でビールも売っていたので帰りに買うことにしよう。風呂はこぎれいな温泉で、露天風呂もしっかりあって良い感じだった。しかし、俺にしつこくつきまとうブヨに追い回されて、露天風呂はあっさりと上がらざるを得なく、内風呂に入る。そこだけが残念でならない。
風呂から出たらSAPPORO CLASSICを買い込んで、公園へと戻っていく。ビールの缶をジンギスカンで冷やしつつ、ランタンに火を付けて、ガスストーブでご飯を炊く。すると、地元の女の子が待ち合わせに来た。いろいろと話が盛り上がった後に、車だけ置いて待ち合わせ相手と一緒にどこかに行ってしまった。好意的な来客ならWELCOMEだ。ご飯も上々の炊きあがり、ジンギスカンもフライパンでは汁だらけになるが、ちょっとしたコクのある煮込み料理のようで、それはそれで好きだ。順調な自炊晩餐となった。 |

ジンギスカンとSAPPORO CLASSIC
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3日目 |
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福島 → 白神岬 → 松前 → 江差 |
87.64 km |
2006/08/11 |
比較的早く目が覚めた今朝だ。昨日買い込んでおいたパンを朝食に食べて、公園から津軽海峡を眺めて準備して出発した。坂を下って海沿いの道を走っていく。空は曇っているが沖の方は晴れているので、対岸の津軽半島や下北半島が見える。道は平らだが右側は切り立った崖が続き、海にせり出している崖をトンネルで抜ける。そんな荒々しくも津軽海峡を越えると日本海であることを予感させるルートを10kmほど走り南に向かうルートが曲がり始めるところで左に駐車場と石碑がある。気がついたら到着、北海道最南端・白神岬だ。これで北海道の最北端、最東端に続いて最南端を制覇したことになる。ただ、何にもないといえば何もない岬で、そのすぐ向こうに本州がよく見えているということもあり、イマイチ大きい達成感というのは無いものの、まずは節目を迎えたことを喜んでおこう。 |

北海道最南端
白神岬に到達!
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岬を過ぎると空は晴れて日が差すようになってきた。いや差すどころの騒ぎではない。もはや炙られるような暑さになってきたという感じでもある。昆布が干してあったり、時に岩がちだったり砂浜だったり変化の多い海岸線を走り抜けていく。しかも気持ちの良い追い風。そんな後押しにもあって、白神岬から30分程度という快走で松前には朝9時にはたどり着いた。何はともあれ松前城へ行きたい。北海道で「城」というのは、あまりイメージもない。松前漬けの店が建ち並ぶ街を駆け抜けて、城への坂を上っていく。当然、花は咲いていないものの桜並木の向こうに城郭が見える。そんなに大きい城ではないが、雰囲気はいい。そしてこの時期にアジサイが満開である。本州では梅雨の花なので雨の中で咲いているイメージの強い花だが、灼熱の太陽の下でアジサイが満開。何だか不思議な景色でもある。
時間もあるので城の中を見物していく。内部は昔のままの城ではなく博物館として改装してあった。何か寒冷地の城独特の工夫とか見えるところがあるかと期待したが、その点では期待はずれであった。城のそばで売っているサクラアイスクリームでも食べようとしたが、品切れ。何だか売る気が感じられない店員に俺も愛想が尽きたので、次に行く。少しがっかり感は否めない。武家屋敷街を再現した松前藩屋敷にも行ってみた。桜並木の公園の中の道を抜けて、ちょっとした丘を越えたところに何件かの武家屋敷を再現した街ができている。中に入ってみる。なかなか凝った作りでありながら、一部は売店になっていたりで結構楽しめた。 |

松前城とランドナー
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松前藩屋敷。
結構 凝った武家屋敷街
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松前を出るとしばらく店はなさそうな予感がしたので、コンビニで買い出しをしてから走る。松前から江差へ向かう海岸沿いの道は松前までの道と違って基本的に崖の上を走っているような傾向だ。つまりアップダウンが多い。広々とした道と左に見える海の開放感、複雑な地形、カーブや坂が多く刺激的な道。雰囲気は最高だが体にはきつい。そんなルートである。上から後ろから容赦なく照りつける太陽。暑さとアップダウン(ていうか上り坂)に苦しみつつも耐えて走って距離を稼いでいく。傾斜はさほど急でもないが、北海道らしく緩く長くどこまでもアップダウンする。そのたびに違う表情を見せる海岸と右の陸地。
そんな道に苦戦する途中で、先ほど買っておいたパンを食べて昼飯にする。道路の端に自転車を置いて待避所で簡単に食事を済ませる。松前から40km近く走ったが店らしき物はない。たまに民家が数軒建っている程度だ。そんな刺激の多いルートを60kmほど走って上ノ国までたどり着くと、久々に「道の駅 上ノ国もんじゅ」なんてものがあった。ここまでのルートで一番眺めが良さそうなところに道の駅を作るあたりの心意気がにくい。
上ノ国を越えると江差まで10kmというところだが、ここからは今までみたいなアップダウンはひとまず休みのようで、正直助かるといったところだ。相変わらず内陸人の俺には心地よい海岸沿いの道は続いていて左はいつまで走っても海だ。江差町へ入ったところで、ようやく今日の終わりが見えてきた。明日のフェリーで奥尻に渡るため、江差まで走れば次第点だし、江差は絶対にたどり着けないといけない線でもあった。安堵感とともに喜びで小さくガッツポーズした。 |

松前→江差の
海岸沿いルート@
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松前→江差の海岸沿い
ルートA(上ノ国)
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ようやく江差の町らしく、民家も多くなり、右のがけの上には街らしきものも見えている。そして左前の方は鴎島が見えてきた。ペダルを踏み込む足も緩んできた。今日は祭りなのか浴衣や装束を着た人たちが道を歩いている。祭りの日に江差に来れるとはラッキーだ。さらに市街地へと近づいていくと御輿も見えてきた。結構、街をあげての派手なお祭りの予感である。 まずは寝るところを探すために鴎島へ。島と江差の町が陸続きになっている島だ。島のすぐそばには江戸時代(幕末)の船を再現した開陽丸があり、博物館となっている。そして鴎島と江差をつなぐ部分は砂浜で、テントを張っている人の姿もある。鴎島自体はキャンプ場なのだが、自転車を置いて結構歩かないといけないようだ。もう面倒だし明日は朝も早いし天気も荒れそうにないから砂浜でキャンプしてしまおう。とは言え、基本的にはキャンプ禁止なのでゲリラキャンプということで、テントは張らずに荷物は全て持ったまま風呂や祭り参加などこなしてしまう。
観光案内所にもなっている開陽丸の入場券売り場へ行き、銭湯の情報収集も兼ねて、開陽丸の見学だ。船内を忠実に復元した開陽丸へと入っていく。蝋人形の兵隊や当時の船内の様子などが展示されている。結構、見所ある展示物が多く楽しめた。甲板で外の風に吹かれて休憩してから船を後にした。
次にフェリーの時間と場所をチェックしにフェリーターミナルの下見へ行く。ネットで公開されている通り出航は7:00。ターミナルの場所もとりあえず分かった。坂の上にある江差の街へと上っていく。少し道に迷いつつ何とか銭湯を見つけて風呂に入る。北海道で風呂に入ろうとすると温泉ではない普通の銭湯の方が珍しいので、ある意味 貴重だ。風呂から出ると、ちょうど御輿が銭湯の近くを通りそうなタイミングだった。自転車は置いたまま、御輿を追ってみることにした。何だか「ヨイヨイ!」と言ってるお囃子も少し独特な感じがある。時々、御輿が軽トラックに乗っているときがあるのは見なかったことにしておこう。
祭りの見物をとりあえず済ませて、露店で夕食を買う。もちろんビールも買う。お好み焼きと焼鳥とビールで乾杯。本当は焼きイカとか北海道らしいものが欲しかったが何故か無かったのだ。。飲んでいると、「さっき追い越しましたよ」っていうライダーに話しかけられたり、東京から来ている婆さんに話しかけられたり 何だか絶好調である。ちなみに祭りの名前は姥神大神宮渡御祭(うばがみだいじんぐうとぎょさい)というそうだ。
明日は早いし、早々と20時には引き揚げてテントを張りに開陽丸の前に行き、砂浜にささっとテントを張り、中に砂が入らないように気をつけながら、荷物を入れて俺も入って眠る…。眠る…。はずだったが、隣のテントの若者は地元の若者だったせいで、夜中まで騒ぐが、ここはキャンプ場じゃないので文句を言うに言える状況になく、マフラーを改造したセルシオやアリストが来たり、夜中の2時頃になっても街の方からお囃子が聞こえたりで、寝床も祭りだった。腹いせにライトアップされた開陽丸の写真を撮って眠りについたのは夜中の3時。何度も言うが明日のフェリーは朝7時だ。 |

開陽丸とランドナー
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江差のお祭り
御輿を担いでいく若者
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夜、テントから見た開陽丸
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4日目 |
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江差 → 奥尻 |
2006/08/12 |
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かもめ島→江差港 / 奥尻→青苗→稲穂岬 |
61.06 km |
完全に寝不足の朝、強制的に5時に起きた。テントから出ようとファスナーを開けたその景色が何か芸術的に思えたので写真を撮った。さすがに隣のテントの若者は力尽きたか静かだ。ま、こういうハプニングも起きれた今となっては楽しい思い出といえば思い出である。そんな「祭のあと」の余韻に浸りながらテントを撤収する。砂が中に入らないように、荷物に着かないように気をつけてたたむ。 近くの水道で足を洗って、自転車で1分もかからない港へ移動。港へ行く途中にコンビニもある。現時点でフェリーから降りたら2000円しか残らないのが不安要素だが、片道6km離れたセブンイレブンに行く時間はない。奥尻島にATMがあることを祈るのみだ。 |
フェリーターミナルで乗船手続きを終えて、フェリーに乗り込む。冴えない天気だが、乗り込みが遅かったので既に船室内は人でごった返していた。たまたま空いていた場所があったので、そこに上がり込んで腰掛けた。船内のAC電源でいろんなものを充電している男がいた。顔を見てびっくり!
会社の同僚じゃないか。しかも一昨年までアパートで俺の隣の部屋だったやつだ。なんと狭い世の中なのだろうか。大洗→苫小牧のようなメジャー路線のフェリー内で会社の同僚と会うのはよくあることらしいが、江差→奥尻のような日本の片隅のルートで知り合いとばったり会うとは驚きだ。混んでいて横にもなれないし、話し込みながら向かっていく。ちなみにヤツのキャンプしていた場所は鴎島だ。昨夜寝ていた場所すら近所で俺のテントのすぐ近くにバイクを止めていたようだ。 |

テントから見る開陽丸
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フェリーが奥尻島に近づくに連れて天気が崩れてきた。完全に雨だ。気が重い。この雨の中、70kmあまり走って島を一周するか。そのままフェリーで引き返してしまおうかなどという気分にすらなってくる。いよいよ船が奥尻に接岸しようとしている。重い腰をあげてデッキへと向かう。甲板から見た海の色は雨だというのに真っ青で澄んでいる。一周とはいわなくとも半周ほど走って明日の天候回復を待ってしまうか、そんなプランすら思いついたが、まずは島の南の青苗を目指すか。
フェリーを下りたら雨宿りがてらフェリーターミナルで情報収集し、うにまるの写真を撮ってから走り出す。目に雨が入りまくって前が見づらいほどの大雨。波乱のスタートとなったが、まずはATMへ。電気もついているしシャッターも開いている。一応、ATMは稼働しているようだ。問題は三井住友の貯金が下ろせるか。操作した。何の問題もなく現金が俺の前に現れた。じり貧の奥尻島ツーリングとはならず、そこそこは裕福な旅ができそうだ。2000円では奥尻に来たは良いがウニすら食えないところだっただけに、起死回生といったところだろう。 |

雨のせいか、寂しげな うにまる君
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金が手に入った喜びからかテンションが多少は上がってきた。雨の中だし、左に見る海は青が鮮やかながらも荒れ気味だが、走りもキレが出てきた。せっかくのうにまる公園も、なべつる岩もスルーだ。とにかく先のことはあまり考えずに、時々は雨の中でも写真を撮りながら走っていく。1時間半ほどのノンストップ走行で奥尻島の東の海岸線を走り抜けていく。徐々に雨足も弱まってきた。奥尻から25kmあまり走った青苗まで来ると、とりあえず雨は止んだ。奥尻島青苗という地名で思い出すのは、何と言っても1983年の北海道南西沖地震の津波災害だろう。青苗の海岸線は高さ10m以上の防護壁で囲われている。もう復旧しているが、その備えの頑丈さから、当時のすさまじさが伺える。
青苗の街まで行ったところで、奥尻島津波館に立ち寄る。犠牲者の鎮魂、災害の様子、復旧の過程、などについて展示してある。そして説明員もすごく丁寧だ。ずっと付き添い気味に解説してくれる。3Dの映像を見れるシアターもあり、なかなか充実したところだ。今の俺のすべきこと、それは復旧した奥尻を徹底的に楽しみ尽くすこと そしてその楽しさをどこまでも人に伝えること だと思う。
そんな俺の決心をさっそく行動に移すということで、昼飯はうに丼でしょう。うにの店ならハズレなどあるわけないので、とりあえず青苗でうにの看板が出ている店に立ち寄る。うにの味わいが、今までに食べ慣れている物と違いすぎる。かなり感動してしまう。 |

奥尻島津波館 時翔碑
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奥尻島のうに丼
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そして青苗から走り出す。青苗からは奥尻島の西側を北上するルートになる。一度、牧場などがある場所を少し上る。奥尻島で唯一、酪農が行われている地域だと思われる。ペースの上がらない俺をジャージー牛が目で追う。北海道の牧場沿いを走るときの快感になりつつあるが、全ての牛が俺に注目して目で追ってくれる。これが照れくさいやら気持ちいいやらでくせになってしまいそうだ。道沿いには花も咲いている。良い季節だ。
そして坂を下って海岸線へと出るときには、空が完全に晴れた。進めば進むほど日差しは強くなる。そして海の鮮やかさは増してくる。大きな岩で作られた複雑な地形の海岸線。澄んだ海の水。海岸沿いを走る快感や醍醐味のようなもの全てがそこに込められている。俺の走りもどんどんノってきた。テンションも加速されていくばかりである。 |

奥尻島 西側 海岸沿いの道
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そんな絶好調の走りも、徐々に山場へと近づいていく。神威脇への上り坂が始まる。坂を登り切ったところの岬に神威脇温泉とキャンプ場と奥尻島の最西端、つまりは人が行ける範囲で北海道最西端がある。ここを制したら北海道の5極(東西南北端と最高地点)を制覇となる。ある意味ではラストスパートのような気合いで登り切る。そして岬の公園の方へと入っていく。何らか石碑だのモニュメントだのがあるだろう。そしていよいよそれっぽいモニュメントが見えてきた! んむ? これは最西端か? 3つほど飛び出している鼻のような地形はあるが、どれが最西端か分からない。方位磁石でも持ってればハッキリしたのかもしれないが、分からない。とりあえず3つ回ってみることにした。厳密にはどれなのか分からないが、制したのは間違いない。せっかくの端っこなので「北海道最西端」とか「奥尻島最西端」と書いて欲しい。これは切に願う。端っこが大好きなサイクリストだが、その程度ですまされるのは、どの岬からも眺めが素晴らしいからだろう。鮮やかな海の青と空の青そして草の緑。形も複雑で見た目に迫力がある。 |

たぶん北海道最西端
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そんな景色と最西端にたどり着いた満足感を胸に、一度海の方へと下っていく。そしてしばらくまた海岸沿いの平地を走っていく。奥尻島唯一にして最大の山場を迎え撃つ。450mUPの峠、下りは一部で未舗装の区間もある。久々に本格的なヒルクライムを満喫する。意外と調子よくインナーを使わなくても上って行けている自分がいる。上れば上るほどに奥尻島の周りの海が見渡せるようになり開放感ある景色が広がる。峠自体も、真っ直ぐとゆったりしたカーブで上っていく北海道らしいものだ。ただ、思ったより長い。いつまで経っても上り坂が終わらないという印象だ。しばらく尾根づたいの道を走りつつ左側の海を眺めて、ついに峠らしき場所にたどり着いた。山が2連発で、そろそろ足も良い感じに売り切れ気味だ。 いよいよ気合いの下り坂。ちょうど良い傾斜にちょうど良いRの曲がり具合。割と良い路面。下界に見える開放的かつ牧歌的な景色。気持ちのいいダウンヒルを満喫しながら下り、道案内の看板を慎重に見る。一本道ではなく奥尻や他の場所へのエスケープがいっぱいある。俺が行こうとしている稲穂への道自体も島のメインルートではない。何とか角を見極めて稲穂へ向かう道へと曲がる。そこから上り返しが始まった。心の準備もなく「聞いてねぇよ」とばかり売り切れた足にムチを打って上っていく。それも意外と長い。
そんな上り坂を終えると、下り始めた。さらに途中でダートも始まった。舗装しようとしている工事が始まっているのか かなり整ったダートなので700Cのランドナーでも難なく下れる。結構、長く続くのかと思いきや短いダートでまた舗装路の豪快な下りが始まった。こっちは北海道にしては珍しくタイトなカーブが続き、逆を上るとなると地獄だと思うほど急な傾斜が続く。すっかり満喫してしまった下りも終わり海沿いに再び出た。もう上り坂らしい上り坂は稲穂岬まで無いはずだが、足は売り切れ間近になってきた。
奥尻の海沿いの景色に懐の深さを感じる。マイナールートだけに自然も手つかずで箱庭のような海岸が続いていく。しかし、そのたびに訪れるアップダウンに足は既に動かない。まだ稲穂を回って奥尻の港に戻って寝床を探して…という道のりを考えるとげんなりしそうだ。
そんな充実の奥尻島西側もいよいよ終わりが見えてきた。アップダウンも一区切りしたかのような海岸線に民宿が立ち並ぶ。そして奥尻島の北の端・稲穂岬が見えてきた。白と黒のストライプの灯台。その向こうも俺の左側も海。奥尻島の最果てに着いた。 |

峠の途中から眺める海
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稲穂岬へと向かうダート
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稲穂の海岸線
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何と言っても稲穂岬に来たら賽の河原を観光したい、そして休憩ということで茶屋の前に自転車を置いたが、店の表で炙っているイカに心を奪われた。奥尻のイカ焼きを頬張るうちに、気持ちが変わってきた。このまま奥尻港へ行こうと思っていたが、稲穂岬はキャンプ場もあるし、この売店も充実しているし、シャワーもある。ここで宿にしてしまおう。決定だ。何よりも、急いで港まで戻って明日の朝早いフェリーに乗っては勿体ない気がしたのだ。この地でキャンプするのが今からできることで一番楽しいと思った。
まずは、テントを張ってしまう。すぐそばでキャンプの準備をしていたライダーと話しながら強い風に邪魔されつつ何とか張って、売店へ行き夕食の材料を買いだしする。酒のつまみと奥尻ホッケの三平汁とビールを買っていく。三平汁は俺のコッフェルに注いでもらう。大きめのコッフェルだったせいか、ずいぶんいっぱい入れてくれた。売店のおばちゃんたちとも何だか意気投合。楽しい一泊になりそうだ。
テントを張ってご飯を炊いていると、だいぶ日が傾いてきた。西も北も東も海。そんな奥尻島の稲穂岬だけあって、夕日は海に沈む。西の空は晴れていて、ちょうど海へと沈みゆく真っ赤な夕日が見えてきた。しばらくご飯を炊きながら眺める。日本海の旅の醍醐味だ。
ご飯が炊けたところで、蒸らしている間に三平汁をコッフェルごと火にかけて暖める。三平汁も温まったところで、風をよけるためにキャンプ場の大きい石の影で料理していたのをテーブルへと持って行きライダーと一緒に飯を食う。三平汁は出汁が出ていて本当に美味い。ワカメもホッケも絶品だった。ホッケって干物以外で食べたのは初めてかもしれないな。ライダーともすっかり意気投合して楽しい夕べが過ぎていく。 |

奥尻島 稲穂岬から眺める夕日
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奥尻産のホッケの三平汁
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5日目 |
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稲穂岬→奥尻港 / 瀬棚町内 |
25.09 km |
2006/08/13 |
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奥尻→瀬棚 |
昨日は若干飲み過ぎた… 朝ものんびりと目覚めて準備をする。9時に売店が開いてから店で朝食という優雅な朝だ。フェリーは朝7:20発は全く乗る気もなく見送って、12:30のフェリー狙いだ。昼過ぎに瀬棚に渡って、そのまま瀬棚で一泊という魂胆。洗濯したり、いろいろとやることもあるから安息日としては良いだろう。
テントを張ったまま、すぐそばの賽の河原を見にいく。水子の霊をまつってあるその場所は石を積み重ねた河原となっている。河原と言っても当然ながら海で、何だか不思議な感覚の霊場だ。お盆で多くの霊が帰ってきている時期なんだろう。厳密に言うと水子ではないが生まれて3日で亡くなった兄に手を合わせる。賽の河原の奥の祭壇のある祠は、ここにおそってきた大津波にも流されず元の形をとどめていた奇跡を起こしている。
荷物を自転車に積んで奥尻の港を目指して走り出す。港まであと10kmほど。これを走りきれば奥尻島1周の道のりも完走ということになる。昨日走らなくて良かったと思うほどアップダウンも激しい道が続いている。売り切れてるわ今日は走る気が無いわの足に、かなり重くこたえる。今日もきれいに青く輝く海を左に見ながらアップダウンを耐えて短い距離を走り終えると、最後は砂浜を見ながらの平地。そして、向こうに奥尻の港が見えてきた。ようやく長かった奥尻島1周の走りが終わろうとしている。
フェリーターミナルへの道を左折したところで奥尻島1周の完走を果たした。意外ときつかったからか満足感や達成感もあり大きくガッツポーズしながらフェリーターミナルへ行く。そして窓口で12:40発の瀬棚行きのフェリーのチケットを買い、一安心。というところで、うにまる君と写真を撮り、少しだけ青苗方面に走り、雨でスルーしたなべつる岩を見にいく。なべつる岩は浅い海の上にアーチ上の形を作る自然の岩だ。何故、こんな形ができたのかという神秘もあり、周りの海がきれいなのもあり、この眺めは奥尻を象徴するものだというのも納得だ。
奥尻らしい岩を見た後でフェリーの時間まで1時間近くあるので、昼食も奥尻島で済ませていきたい。どうせなら打ち上げとばかりに美味い物を食べて行きたい。ということで、うに丼でしょう。港の側の店に入る。うに丼にイカ素麺を付けてガッツリと行く。しかしながら、ボリュームをなめていた。うに丼のうには山盛り。イカ素麺もイカ一杯分。うには昨日のよりも一層美味く感じる。こんなに美味いウニは食べたことがないと思うほどの絶品のウニだ。甘みも香りも強い。舌触りも柔らかくなめらか。イカ素麺も歯ごたえがあってイカの甘みや味が存分に出ている絶品。最後の飯に心の底から満足して店を後にした。店の大将も気さくでいい人だった。 |

奥尻島 稲穂岬・賽の河原
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奥尻港 うにまる
※俺の子ではありません。
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奥尻島 なべつる岩
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圧巻。山盛りのうに丼
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昨日すれ違ったサイクリストと同じフェリーになったりで、北海道の小さな島であることを実感してフェリーに乗り込む。たくさんのきれいな景色、たくさんの海の幸、たくさんのいい人たち、大津波という惨劇から立ち直った島、そんな全てへの感謝を載せたフェリーは島を後にして瀬棚へと向かった。また、いつか旅したみたい島ですね。そして、これを読んで頂いた方も是非、行ってみて下さい。オススメです 奥尻島。
一服するとフェリーは瀬棚へと到着。フェリーを下りるとさっき会ったサイクリストたちは、去っていった。まずはフェリーターミナルで情報収集。風呂の場所は分かった。あとはコインランドリーを見つけないといけない。経験的には銭湯の近くにコインランドリーがあることが多いので、まずは風呂の方へ行ってみる。風呂は簡単に見つかった。すぐ近くに交番があったのでコインランドリーの場所を聞いてみるが、瀬棚には無いという回答だった。これでコインランドリー3連敗となった。江差、奥尻(洗濯するヒマもなかったが)、瀬棚 このエリアは無いので旅する人は気をつけて欲しい。後で調べてみると奥尻島は島内のホテルなどにはあるようなので、泊まるか交渉してみるといいかもしれない。 |
割と時間はあるので、山の上のせたな青少年自然村へと行ってみる。こんな名前の施設ならコインランドリーの一つぐらいありそうな気もする。えっちらおっちらと坂を上っていくと、芝生のサイトになっていて、展望台やコインシャワーまであるキャンプ場があった。奥にコインランドリーがあった。速攻で、宿泊の段取りをしてしまう。この際、無料でキャンプできてしまう北海道で1000円かかろうと構わない。洗濯と安心のキャンプができれば払う価値はある。コインランドリーについての問い合わせもしたが、特に問題ないようだ。テントを張って、坂を下りて風呂に入って買い出しに行く。温泉でたまった疲れを洗い流し、商店でジャガイモを買って、また坂を上ってキャンプ場に行く。そして、汚れ物と洗剤とお金を持って受付に行くと「16:00以降はコインシャワーの水の出が悪くなるので使用禁止」といわれた。朝は何時から使えるかと聞くと「昼まで使用禁止」と言われた。さっきコインランドリーについて問い合わせた時に、そんな話はしていない。「さっき聞いただろう 何でそんな大事な話をいわねぇんだよ!!」と怒鳴って受付を後にした。入るだけで2000円も払わされてるキャンプ場なのに設備が酷すぎる。たまたま枚数を間違えて6日分持っていたので、明日の黒松内で洗濯ができないと いよいよ着替えられないという事態に陥るという状況である。おそらく函館を最後に、北斗、福島、松前、江差、瀬棚、島牧、寿都と日本海沿いの街は岩内まで400kmに渡って洗濯は不可能なので注意が必要だ。せめて江差か松前か瀬棚あたりに1個ぐらい まともなものができて欲しいものだが。
立象山という山の上にあるこのキャンプ場、眺めはバツグンだ。南を見ると満開のアジサイ越しに瀬棚の街と海岸線を見下ろせる。風力発電の風車がいくつも建ち並び、何だか不思議な風景でもある。そして、少し山を上がって西を見れば日本海に沈む夕日を三本杉岩ごしに眺められる。一人でしんみりと眺めたいところだが観光客は多い時期なので、そうも行かずでいかに精神を集中させて一人で眺めている気分になるかという勝負だ。それでもため息が出てしまうような大きな赤い夕日と、赤く染まる日本海と三本杉岩の影が美しい。 |

立象山から瀬棚市街地を眺める
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瀬棚 立象山から眺める夕日
二つの岩は三本杉岩
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立象山からの眺め(北)
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次は夕食だ。今日はパスタを茹でて、さっき買ってきたジャガイモを茹でる。まずはパスタを塩水で茹でる。続いてそのお湯を使ってインスタントのソースを暖めてパスタと絡める。続いて鍋を一度洗って、ジャガイモを塩水で茹でる。パスタは何のこともないインスタントだが、外で食う飯の美味さを感じずにいられない。精神的な効果というのは大きい物だ。北海道のキャンプといえば茹でジャガは欠かせなくなってきた。すごく単純な料理なのに、素材がしっかりしているおかげか、本当にホクホクしてて味が豊かで美味い。
食器を洗ってから、自転車のメンテをやる。すると、後輪がかなり振れている。ニップル回しを片手に修理を試みるがふれが大きい部分のスポークを見ると、ハブ側で折れている。スポークの本数は32Hと多いので何とか騙し騙し走れる気はするが、距離が伸びれば歪みで2本3本と折れていくので不安はある。そんな不安を胸に寝ようとしたら原付ライダーが俺のテントのすぐ近くにレジャーシートを敷いて寝始めた。既に俺はテントの中なので特に話もせずに眠りについた。 |
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6日目 |
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瀬棚→島牧→寿都→黒松内 |
99.64 km |
2006/08/14 |
昨日は安息日だったおかげか、疲れが心なしか取れたような気がする目覚めだ。今朝も天気は良い。海沿いを走る日は海の青さが映える青空に限る。テントを撤収して自転車に積みつつ原付のライダーと話す。なかなかハードな旅をしているようだ。互いに健闘を祈りつつ俺は坂を下って瀬棚の市街地へと降りた。まずはセイコーマートで朝食を食う。何故か地元の赤ちゃんに懐かれて、飯を食いながら手を振って見送るサービス精神を見せる。
三本杉岩の前を通り過ぎて日本海沿いの道を走っていく。足取りも軽く追い風に力をもらいながらグングン前進していく。右は切り立った崖が続き、左は青い海が続く。崖がせり出している箇所はトンネルで処理しているので、長いトンネルをいくつも越えなければならない。そのたびに緊張が走る。いろんなところを見て走る。ライトはLED5発のものを2つONして、自発光型のリフレクタはもちろんONして自転車の右端の位置を示す。右後ろから来る車、対向車、左の縁石、正面の路面… いろんな情報を入れながら考えて走る。しかし、そんなトンネルを抜けるたびに海の景色は一変して、トンネルの前と全く違う形の岩があらわれる。 トンネルで処理している分、海岸の道路は平らだ。45kmを2時間あまりで走り抜いて島牧の道の駅よってけ島牧に到着。売店で笑えるグッズを見つけた。スポーツウェアのブランドPUMAを文字って、KUMAとなっていて動物の柄もクマに変えてある。ちょうどストーブや蚊取り線香に火を付けるためのライターがガス欠寸前だったので買っていく。
道の駅から10kmほど走って島牧の市街地(?)へと向かう。相変わらず平らな海沿いの道が続いていて走りやすくて助かる。そろそろかというところで海水浴場が見えてきて、そこは海水浴客でごった返している。さすがお盆の最盛期だけあってにぎやかだ。そのすぐそばのセイコーマートで昼食を買って昼飯とする。セイコーマートの混雑ぶりも半端じゃなく、もはや弁当を選ぶ余裕すらない。 |

島牧の海岸線
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PUMAのフェイク KUMA
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半端じゃなく混んでいるセイコーマート
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店の表で真夏の日差しの下で飯を平らげたら続きの道へと走り出していく。今日の目的は黒松内で少し内陸に入っていくわけだが、近道をしようと思えば寿都や弁慶岬を回らずにショートカットして峠を越える島牧から黒松内を結ぶルートがあるが、ここは峠ではなくあえて海岸線を回って寿都の弁慶岬の方へ行く。今日は天気もいいし、珍しく体力的にも余裕があるので楽しみ尽くさないともったいない。しかし、ここからの海岸線は、さっきまでの平らな海岸線ではなく、容赦なくアップダウンするルートだ。やや高いところから海を眺められる快感もあるが、体力的にきついというのが正直なところ。北海道らしくダラダラと上り、ゆったりと下る。そんなのをいくつもこなしつつ、前方と左側に海を見ながら進んでいく。真夏の草原と底がやや透けるほどのきれいな海、海際の牧場とのんびりと草を食う牛たち。なんて言うことのない景色ではあるが、これが北海道の海岸だ。 |

寿都の海岸線
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そんな海岸を25kmほど走ると、弁慶岬へとたどり着いた。少しだけ日本海に突き出た形になっている岬で、青い海と草のコントラストが気持ちいい場所だ。弁慶の伝説のあるこの地に、海を背に弁慶の銅像が立つ。他の旅人を話をしながら休憩する。とにかく今日は暑いので、それで徐々に体力を奪われている。励ましの言葉をもらって、また走り出す。
さっきまでは追い風だったが岬の先を回ると、今まで北上していたのが一時的に南下する形になり、もろに向かい風になって、さらに風力もあがってきた。アップダウンと真夏の日差しに加えて向かい風も。余力は残しつつも、岬から10kmほどの寿都市街地のコンビニで休憩を取る。この休憩を境に向かい風に打ち勝てるようになってきた。そして海沿いを離れて走っていくうちに、向かい風もいくらか弱まってきた。そのころから徐々に空も曇ってきた。 寿都から黒松内へと徐々に坂を上っていくルートになってきた。あと15kmほど走れば目的地としている黒松内へたどり着く。向かい風とジリジリな上りだが意外と苦戦することもなく走り抜いた。黒松内の駅で情報収集をする。と言っても紙切れ1枚で、一応、キャンプ場の電話番号も書いてあった。宿をそこに確保してしまいたいので電話で予約を入れる。すると一杯ですと断られた。気を取り直してゲリラキャンプする場所を市街地に探す。あまり見つかりそうもない。コインランドリーも市街地には見つかりそうもない。途方に暮れて、ダメもとで auのGoogleで「黒松内 コインランドリー」で検索すると、さっき断られたキャンプ場がヒットした。何はともあれ、そこに向かってしまおう。そして、管理人に隠れてキャンプ場の客のふりをして洗濯機に洗濯物を入れて泊まるところとかを探そう。そんなプランとなって、さらに坂を上っていく。 |

寿都 弁慶岬
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弁慶岬 千畳敷
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静かなブナの森を抜けるとキャンプ場はあった。まずは管理人室から見えないところに自転車を置いて、袋から汚れ物を取り出す。そこで少し様子見をしてみるとフリーのサイトはがら空きだ。とにかく洗濯物を洗濯機に放り込み、お金と洗剤を入れて洗濯を開始する。洗濯機が水を入れて洗濯槽が回る前にトイレで着替えて、今着ているモノも放り込む。一応、管理人に今日宿泊できないか聞いてみたら、フリーのサイトを自分で確認して空きがあればOKと言っていた。何だか商売っけがない。いっぱいか空いてるか分からないから電話の問い合わせは断っていたようだ…。あきれてしまうところだが、金を払って受付を済ませて、管理棟の前に置いた自転車から荷物を持って移動してテントを張る。
管理棟で売っている地元のカマンベールチーズとソーセージを買い込み、テントに放り込む。筋肉痛気味なのでタンパク質重視の食事としたいものだ。洗濯が終わって乾燥機へと移したところで、空荷の自転車で風呂と買い出しに出かける。まずは近所の温泉で風呂に入り、さっぱりしたところでセイコーマートで買い物をする。地元のシメジと北海道産の豚肉、明日の朝食を買う。
テントへ戻り、料理を始める。まずはご飯を1合炊いた。蒸らしている間にお湯を沸かして、さっき買った黒松内のウィンナーをボイルしつつビールを開けてソーセージをつまみに飲む。あまりの美味さにビールが進む。その間にフライパンを火にかけて、豚肉とキノコをソテーして塩胡椒をふった。北海道は意外と豚肉が美味しいと言うことはあまり知られていない。なかなか上出来な炒め物でご飯もビールも進む。最後はカマンベールチーズをちびちびとつまみながら、ビールを飲みつつ日記を書く。洗濯物も乾いたところで、袋に収めて、食器も洗って眠りについた。 |

森のキノコと北海道産豚肉のソテー
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黒松内のカマンベールチーズ
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7日目 |
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黒松内→真狩→京極 |
81.88 km |
2006/08/15 |
しっかりと疲れを残して目が覚めた。昨日、セイコーマートで買ってきたパンとトウモロコシをブナの森を眺めつつ食べて、テントを片づける。朝は比較的早く目覚めたので、走る時間は取れそうかと思えた。たたんだ荷物を管理棟の前に置いている自転車の所まで持っていく。そこでパッキングしていると子供が困った顔で話しかけてきた。こんな髭面で怖そうなおじさんによく話しかけてくるものだと思っていたが、レンタサイクルに乗りたいのだが、乗れるサイズの自転車が帰ってこないと…
ある意味では駄々をこねている状態なのだが、優しく相手をしながら帰ってくるのを待つことに。ルール通りいけば1時間で帰ってくるはずなので、あと30分も待てば帰ってくるだろう。相手にしつつ、少しずつパッキングをしていくが、なかなか集中できないものがある。この子は時計を持っていないので、「分かった。この時計が9:00になったら来るからまとうね」と。オオカミの皮をかぶった羊となって一緒に待ちつつ準備をしていると、他の自転車に乗っている子供が「おじさん
自転車が動かなくなっちゃった」と泣きついてくる。チェーンがはずれたようなので俺が治してまた行ってこい!なんて作業をしつつ待っていると、レンタサイクルの前は混雑してきた。「おじさん、この自転車乗れるかな」俺がハンドルを抑えて倒れないようにして跨らせてOKなら
じゃあ あのノートに名前を書いて行ってこい! なんて作業が続く。俺はレンタサイクル屋さんか!?
一応、レンタサイクルで困っている子の親からは感謝はされたものの、すっかり出発はずれ込んだ。レンタサイクルぐっさん。朝から絶好調である。こんなハプニングも旅にはつきものかな。 |
まずは国道5号線を目指す走りだ。うっそうとした静かなブナの森を抜けるアップダウンの多いルートを頑張る。道の駅くろまつないにたどり着いたところで国道5号線に出た。国道5号は日本縦断で逆走ながら走ったこともあり、当時は楽々走れた道なので、そこそこは安心している。道の駅で売店を覗いて、チーズソフトクリームを頬張る。ほんのりとクリームチーズの味がして、なかなか美味だ。
そのまま国道5号線を快走して…と言いたいところだが、黒松内を出た最初の峠 目名峠(219m)に苦戦する。体が全くキレない。足に力が入らず自転車も当然ながら坂をまともに上がっていかない。すぐに息が上がって立ち止まってしまう。今シーズン絶不調な俺の全てがここにあらわれているような気がする。とにかく体に力が入らない。グロッキーに近い状態で目名峠を越えて蘭越へと下ろうとしたところで、また足が止まった。下りまで絶不調か… というわけではなく、道路を挟んで広がる蕎麦畑の丘と満開の蕎麦の花に感動した。広くなだらかな丘一面に広がる花。少し紫が入った白い花。思わず写真を撮りまくる。同じくこの感動に気付いて立ち止まる車もいるようだ。観光スポットでも何でもない蕎麦畑にここまで気を奪われるとは、北海道の懐の深さだ。 |

道の駅くろまつない
チーズソフトクリーム
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目名町のそば畑
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目名を過ぎて蘭越へと向かっていく。まだまだアップダウンの厳しさと俺の体のキレのなさは変わらない。どこまでも波打つようなルートに、グロッキーとなり上り坂のたびに足が止まる。さらに熱中症に近い症状か頭がぼーっとしてくる。そこそこにある日差しと湿気、坂。全てが重くのしかかる。19歳の時は楽勝で走り抜けたコースに、29歳では大苦戦を強いられている。しかも、幹線国道とあってコース的にも大しておもしろみも見所もない。いらいらする体力もないまま蘭越の町にたどり着いた。
何はともあれセイコーマートで飯だ。あまり食欲もないが、しっかり食べておく。熱中症で食欲がないからといって食べないと、前に静岡県の佐久間であったような熱中症+ハンガーノックで本当にぶっ倒れてしまう。経験に裏打ちされたやばい予感はしっかり回避しておきたい。それなりに回復をしたところで、再び走り出す。今日の目標では、まだこれから羊蹄山を一周回って倶知安まで行くつもりだった。しかし、この体力では無理だ。ここで判断したい。@案:羊蹄山一周をやめて倶知安に行く、A案:羊蹄山一周を目指すが倶知安まで回りきらずに途中で終わりにする。考えたが@案もA案もアップダウンが厳しいルートである。明日はニセコの山越えの40km程度しかないルートなので今日の目的地が倶知安である必要もない。どうせつらいなら、どっちが楽しいかで言うと未踏のルートでもあるA案。ということで腹づもりはA案になった。
決意が固まれば後は走るだけだ。まずは国道5号直進と羊蹄山一周の分岐である道の駅ニセコビュープラザを目指す。あまりの暑さに水も消費し尽くしてしまった。何とか道の駅へとたどり着いた時点で14:30。何はともあれ水をボトルに汲んで、500mlのスポーツドリンクも買って、糖分も補給して先の道のりに備える。ここからは国道を離れて道道へと入っていく。羊蹄山を一周するルートではあるものの、左に見えるはずの羊蹄山はより雲が増えて見えなくなってしまった。どうせなら富士山のような鮮やかな稜線を眺めたいところだが残念である。
8kmほど走ると、左に羊蹄山のわき水が湧いている場所がある。そこそこ大きい駐車場や売店などもある。立ち寄り、冷たい水をシェラカップに入れて飲んでみる。暑さにやられ気味の今日に自然の冷たさを帯びたミネラルウォーターはありがたい。水自体にうま味を感じる。さすがに浴びるには冷たいのでボトルの中で少しだけぬるくなった水を頭から全身に浴びて体を冷やす。そしてボトルの水はここの湧水に詰め替える。大量のボトルを持って汲みに来ている「プロ」っぽい人が居たりで、結構
大きなわき水スポットのようだ。 |

羊蹄山を望む。
山頂に雲がかかってる…。
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羊蹄山のわき水
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わき水飲むときはシェラカップでしょう
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また羊蹄山一周道路を走っていく。アップダウンはそこそこあるものの、さっきの国道5号の方がひどかったような気がする。水浴びをしたおかげか、多少は体力が回復してきた。そのまま元気に5km走って、真狩(まっかり)へ。真狩といえば演歌歌手
細川たかしの出身地ということで銅像が立っている。そこに寄り道をしてみる。側面にセンサーが付いていて触れると歌う仕組みになっている。羊蹄山をバックに熱唱する細川たかし像がどこか笑える。
ここからは、0.1%程度かと思われるジリジリとした上り坂が続く。気温も相変わらず高いし体にキレはないので苦戦が続く。一見平らに見えるが、振り向いてみると道路は着実に上っている。北海道ならではな地形に苦しむ。これが下りなら楽しいんだが…。ただ、このペースで行ければ夕方には京極に行けそうなので、そこで一泊ならちょうどいいかもしれない。喜茂別に入ると道は徐々に下りまたは平地という形になってきた。ようやく終わりが見えてきた。夕暮れ迫る畑をのんびりと流しつつ京極を目指す。 |

真狩 細川たかし像
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地図で京極のあたりを見ると、温泉あり、街あり、キャンプ場あり、わき水ありで、全てが近くに寄っている。ビバークするには理想の街だ。キャンプもそこそこ楽しめそうだ。買い出しの心配もないし、風呂もキャンプ場から近そうならテントを張って身軽にいける。わき水を汲んで行ってそれで飯を作ろう。このあたりは野菜がいっぱい取れるところなので、今夜は野菜を中心とした晩餐にできるだろう。まずは京極のわき水を目指す。ここで水を汲んでいきたい。
畑を抜けるとわき水の公園に出た。売店で野菜の直売なんかもやっている。水を汲んだら買っていきたい。まずは公園へとボトルを持って駆け下りて水を飲んで汲む。ここの水は水量がものすごく豊富でわき水による池ができるほどだ。常にこんこんとわき出ているなんてレベルではなく、勢いよく流れている。水自体も甘みを感じるほど美味い。さっそくボトルに入れて自転車に戻り、売店で野菜を物色する。最近、有名になった生でも食べれるほど甘いトウモロコシの味来、山ワサビを買っていく。店のお婆さんとも、なぜか意気投合してしまい料理の仕方から雑談まで盛り上がってしまった。すると、キタアカリを6個タダでもらってしまった。たった250円しか買い物していないのに200円のキタアカリをもらえる。俺って 得なキャラクター!?
公園から坂を駆け下りるとキャンプ場と温泉とコンビニがある。なんて便利な場所なんだ。キャンプ場を物色する。どこにでも張れるほど広々とした芝生のサイト。そこそこにぎやかで楽しいキャンプになりそうな予感がする。街灯が近くて作業しやすそうな平らなサイトを選んでテントを張ってから、荷物を全て放り込んで、おふろセットを持って、手慣れた様子で出かけて受付をする。500円程度と安いのは良いが、ゴミ箱がないのだ。 |

羊蹄山 吹き出し湧水
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吹き出し湧水の池
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まず、京極の街へといき、買い出し。さすがにジャガイモとトウモロコシだけではおかずとして弱い。お友達情報で京極の隣町の喜茂別のアスパラが甘くて美味しいという話があったのでスーパーで探してみたら見つかった。アスパラに合わせるなら豚肉あたりがいいかと思い北海道産の豚肉も確保。喜び勇んで祭でにぎわう京極の街を抜けて、キャンプ場のすぐそばの温泉へと向かう。温泉で今日の疲れを落とす。
コンビニでよく冷えたSAPPORO CLASSICを買って、テントへと戻る。炊事場で米を磨いで最後のすすぎはわき水でやる。水を吸わせる時間ももったいないので、火にかけて炊き始める。火にかけている間に野菜を仕込む。ジャガイモは洗っただけ皮のまま塩ゆででいいだろう。アスパラは皮は剥かずに、大きめに切る。トウモロコシは皮を剥いて半分に折る。ご飯が炊けるまでの間に端っこから少しだけ食べてみた。衝撃的な美味さだ。本当にトウモロコシが果物のような甘さだ。少し茹でて暖めると、この甘みが活性化すると売店のお婆さんが言っていたので、その結果を期待したい。そして、至って順調に湧き水仕立てのご飯は炊けた。続いて、喜茂別のアスパラと豚肉のソテーを作る。フライパンを火にかけて豚肉をさっと炒める。少し色が付いたところでアスパラを入れる。最後に塩胡椒を軽く振って終わり。そのまま塩水を入れたコッフェルを火にかけてお湯を沸かす。そうしている間にご飯と喜茂別のアスパラと豚肉のソテーを食べる。ご飯が、水だけでここまで違うかというほどうまい。米のうま味を全て引き出してご飯自体に甘みを感じる。粒が立っていて今までにない弾力を持っている。あまりの美味さにコッフェルの底のお焦げまでしっかり食べてしまうほどだ。そしてアスパラは甘みのあるさわやかな味がたまらない。そして、柔らかく心地よい歯ごたえだ。豚肉の味と香りは強い物だが、まったく負けない。むしろ調和する。さわやかな味が豚肉を引き立てる。豚肉のこくはアスパラのさわやかなおいしさを引き立てる。ビールもご飯も進んでしょうがない。そうしている間にお湯が沸いてきたのでキタアカリを2個放り込む。7分ほど茹でればOKと売店のお婆さんが言っていたので、そのぐらいでフォークを刺してみるとサクッと刺さる。このジャガイモも、ホクホクしていて香りも味も強い。本州で今まで食べていたジャガイモとは格の違いを感じる。いつもならマヨネーズぐらいは付けたくなるのだが、そんなごまかしは不要なほど美味い。トリをつとめるのは、トウモロコシ。さっき生で5粒ほどつまみ食いしただけでも美味かったが、火を通すこと2分。さっとお湯から出してかじる。俺は一粒ずつむしって食うようなことはしない。すると口の中に甘みがふわーっと広がる。粒自体の歯ごたえもぷちっぷちっと気持ちいい。汁気がものすごく多い。果物のようなトウモロコシとはこのことだ。
心の底から夕食に満足して、片づけて眠りについた。今日は羊蹄山が見えないのは残念だ。そして振り返ってみると、ベテランらしい走りと行動だったと思う。体調が悪いのは仕方がないが、明日の行程まで含めてベストな着地点を探し、先を読んで行動できた。こんなに満身創痍な状態から、キャンプも ここまで立て直して楽しめた。走りで意地を見せるばかりではなく、こういうところでベテランの味を出していきたい。明日は羊蹄山もニセコも眺めがよければいいな。ニセコのヒルクライムは今回の旅で最大の山場となるだろう いい結果を出したいものだ。 |

京極町 祭の風景
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喜茂別アスパラと豚肉のソテー
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京極のキタアカリ ほくほく塩ゆで
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京極の味来 甘みゆで
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8日目 |
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京極→倶知安→ニセコ→岩内 |
67.14 km |
2006/08/16 |
スッキリと目覚めた。しかし、羊蹄山の雲は依然として晴れない。むしろ今日は曇りという感じの空だ。晴れとは言えない天気である。キャンプ場はゴミを回収してくれないので持って行くしかない。とは言え生ゴミは腐ってしまうので、サイトの隅の土の部分に穴を掘って埋めた。テントをたたんでパッキングをして、そそくさとキャンプ場を出発し、すぐそばのコンビニで朝食を食べる。コンビニもゴミを回収しないとかでゴミ箱がない。売った物のゴミを回収するのは売るがわの責任だと思うのだが、違うだろうか?
もちろん無料で何とかせいとは言わない。その場で金を徴収してもいいからゴミを回収するようにして欲しい。最近の北海道のゴミ事情に困ったものだ。
荷物にゴミをくくりつけて羊蹄山沿いの残りの道を走って倶知安を目指す。これもアップダウンは多い。途中で、家族のサイクリストとも出会ったが荷物満載の俺が追い越してちぎっていく。意外と調子はいい? 北海道の内陸らしい牧歌的な丘をいくつか越えて20kmほど走ると倶知安に着いた。倶知安のコンビニはゴミを回収していたので、とりあえずここに捨てていき、ボトルを満タンのものに買い換える。ゴミを捨てるだけでは申し訳ないので、そこで今日の昼でニセコの山の上に食うところが無かったときに備えてパンを買っていく。飯が食えれば明日の朝食になる。
日本縦断の時に一泊した懐かしい倶知安の街をぶらぶらと流して倶知安の駅前に行く。この街はコンビニが増えたこと以外は、そんなに変わらないという印象である。駅前の湧き水も何だかコミカルな形に変わっていた。冷たさとか味のキレを考えると、さすがに昨日の吹き出し湧水には遠く及ばない。当然といえば当然だが駅前まで引っ張ってきてくれたのはありがたいと思う。
ここからはニセコへの上り坂が徐々に始まる。日本縦断の時に入浴した倶知安温泉の前を通り過ぎて、アップダウンを繰り返しながら徐々に標高を稼いでいくルートが続く。20km程度は続く上り坂だと思われるので、気長に頑張るしかない。午前中いっぱいかけて1つ目の峠にあたる五色温泉あたりまで行きたい。今日は調子がいいのか傾斜のきつさを、さほど感じないで上っていける。ある意味では荷物満載で遅いスピードで上る坂というものを達観しているので遅くても焦りやいらだちはない。歩くのとあまり変わらないスピード、多少は足に余裕があってもあまり踏み込まないin-1速。今は軽すぎるぐらいのギアだが、そのうちこれでも踏み込まないと上がって行かなくなる。
振り返ると倶知安の街を見下ろせる高さまで来た。ただ、相変わらず天気はイマイチでその向こうに見えるはずの蝦夷富士こと羊蹄山は見えない。こんな天気だからか雑念に邪魔されず集中して上っていける。俺の目の前を通り過ぎてミヤマクワガタの♂が路面に落ちた。ひっくり返ったままもがいている。一度、足を止めた。車に轢かれるのは目に見える位置でひっくり返っているので、一度捕まえてみた。子供の頃は昆虫採集が大好きで、カブトムシとかクワガタとか捕まえては飼っていた俺には、憧れの天然のミヤマクワガタに興奮してしまった。旅に連れて行くわけにはいかないので、写真に収めて山の木に戻してやった。
ワイス温泉から上は広葉樹林が始まった。俺が好きな白樺の木がたくさん生えている。やや狭い道に真っ白な幹の白樺の森。タイトなコーナーと傾斜が急になってきた坂。ヒルクライムの醍醐味が徐々に出てきた。下界を眺めるような眺めはないが森の中を走り抜けていく雰囲気が好きだ。白樺を見ると「高原」に来たような華やいだ気持ちになる。
下の方からパトカーと救急車のサイレンが聞こえてきた。何だかイヤな予感である。徐々に音が大きくなってきた俺の後方のカーブから姿見えた。まずは救急車。続いてパトカーが来た。特に悪いことをしているわけではないので、俺の横をスルーして追い越していった。それから10分ほど上っていると、警察官が交通整理をしていた。交互通行となっているその先では車とバイクが正面衝突していた。ライダーらしき人は無事に見えるので、ひとまず安心だが、気をつけて走りたい。
そしてさらに上ると霧が濃くなってきた。もう峠は近い。しかし坂は最も急な区間を迎える。何とか最後の力を振り絞って登り切った。しばらく尾根づたいの平らな道を走るが霧は濃い。後ろから車の気配にも気をつけつつ走っていく。このあたりは花畑という地名が付いているようだが花の季節は終わっていて、ハイマツとわずかに流れる川が霧の中にかすかに見える そんな光景である。きっと花の季節で晴れていれば絶景スポットなのだろう。そんな雰囲気だけは感じる。
少し下り始めたところで、五色温泉が見えてきた。とりあえず昼飯が食えるか、旅館に立ち寄ってみる。レストランは客がいないが営業はしていた。カツカレーで腹を満たす。お冷やがニセコの湧き水というところが泣ける。旅館から道を挟んで向かい側の山小屋風のレストハウスに寄ってみる。レストハウスの前で水が汲めるのでボトルの中の水を詰め替えて、レストハウスの中で湧き水で淹れたコーヒーを飲む。天気が天気なので少し寒いため暖かいコーヒーはありがたい。水がいいからか、味が柔らかくて美味しいような気がする。(コーヒーの味にはさほどうるさくない方なので…)五色温泉の谷を少し眺めてから、続きのルートへと出発だ。
しばらくは気持ちいいほどの下りが続く。下に横に眺める白樺の森、下界にはニセコ湯元、ニセコ昆布の街が広がる。カーブは多いけど走りやすい下り。これから、もう1本坂を上ると言うことは分かった上での下り。心境は複雑だ。下れば下るほど次の上りの量は多い。そこを割り切って思い切り下れないあたりが俺の器の小ささか。
ニセコ湯本温泉方面に曲がる道と、もう一山越えて岩内の方へ抜ける道との分岐に来た。湯本方面は下り、もともと行こうとしてた道は上り。苦渋の決断で上りの方を選ぶ。いくら昼飯で休んだとは言え、そろそろ足の疲れがきている。ここからの傾斜もさっきの峠と同じぐらい厳しい。北海道らしく直線でグイグイと上って大きくラウンドするカーブを曲がってまた直線で上がっていく形の峠である。時折、後ろを見下ろすと、豪快な峠道と下界の街、白樺の森が気持ちいい。ただ、天気だけは悪いので山の上は見上げられないところだけは残念だ。
峠が近づくにつれて霧が濃くなってきた。そんな霧もピークに達してきたときに、峠っぽい最後のコーナーが向こうに見えてきた。最後の力を振り絞って坂を上り、濃い霧の中で2つ目の峠を制覇。この旅で最大の山場を制した。名もない峠だが、胸を突き上げる達成感や喜びはひとしおである。喜びをかみしめて、岩内方面へと下っていく。日本海側は、山中とはうってかわって晴れ間が見える。道の向こうに雲の切れ間と光が見える。これはこれで何だか神秘的な景色でもある。相変わらず続く広葉樹の森を真っ直ぐと下る道。これも北海道の峠らしい道と言える。 |

京極→倶知安
真っ直ぐなアップダウン
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倶知安駅前
日本一の湧水が出るジャガ太くん
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山の途中から倶知安を見下ろす
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ニセコの山中で出くわした
ミヤマクワガタ
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白樺の森を上っていく
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五色温泉 レストハウス
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ニセコの湧き水で淹れたコーヒー
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ニセコの上り坂
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ニセコの下り坂 大谷地を望む
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すると山の途中で突然、湿原が広がる大谷地(おおやち)へと出た。その不思議な地形と緑の鮮やかさ、遠くに眺める山と逆に上から眺めると遠くに見える海という景色の組み合わせが美しい。しばらく眺めてから、また下り始める。何だか寄り道の多い下り坂になりそうな予感である。次は神仙沼への入り口の駐車場が見えてきたので、自転車を止める。少し休憩してから、山への遊歩道を入っていき神仙沼を目指して歩き出す。10分も歩くと広々とした湿原が見えてきた。険しい山の中に水をたたえた平らな湿原があるところに神秘を感じてしまう。湿原の奥に見える白樺、水草が生える沼、初めて見た色鮮やかなトンボ、名の知らぬ高山植物の花、湿原の真ん中で不思議な形をして立ち枯れした木。不思議で美しい景色に感動する。自分の脚力でここまで来た喜びを感じる。 |

大谷地
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そこから20分ほど歩いて、長沼も見にいく。こちらは広い湖だ。原生林の山奥に大きな湖があるのも不思議な風景だ。戻る道からは日本海や積丹半島を見下ろせる景色が広がる。駐車場に戻って少し休憩してから、またダウンヒルの続きを楽しむ。せっかく苦労して上った分は楽しまないともったいない。しかし、そんな俺の足を止めてしまうほどの絶景がそこには広がっている。ニセコパノラマラインと呼ばれている道だけあって、下界はまさにパノラマだ。原生林の下に広がる平野とその向こうには日本海と霞に浮かんでいるような積丹半島。足を止めて写真を撮りまくる。傾斜の緩いところでは走りつつポケットからカメラを取り出しては撮る。そのパノラマに向かって落ちていくように真っ直ぐ下るのが気持ちいい。 |

ニセコ パノラマラインからの眺め
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そこは諦めて観光案内所で銭湯とコインランドリーを探す。いずれも市街地にあったので、まずは洗濯だ。一昨日に洗濯したばかりだが、昨日は猛暑、今日はヒルクライムでグローブがくさくてしょうがない。ついでに、他の洗濯物も全てコインランドリーで洗濯する。洗濯をしながらケータイとデジカメのバッテリーを充電しつつ日記を書いていると、俺より5歳ぐらい下の女性と その親が大量の洗濯物を持って来た。コインランドリー自体を使ったことがないようで、家の洗濯機では容量が足りないほどたまった岩内の実家のお祖母ちゃんの洗濯物をまとめて洗いに来たようだった。コインランドリーを使うこと自体は、もはやベテランの域に達していると思うので、懇切丁寧に使い方を教えてあげたら、喜ばれて少しモテ気味な状況に。その後、乾燥機が終わるまで2時間近くも楽しく話し込んで、また大量の洗濯物をHonda LiFEに積み込んで彼女たちはコインランドリーを後にした。 |
続いて、風呂に入ってから、まずは飯だ。今日は海に出たので また 内陸的な食事よりは漁村的な食事がしたい。ゲリラキャンプだし時間も遅いので自炊は頭にない。そこで目に入ったのは回転寿司。さほど混んでもいないが、ネタが全て地の物だ。客が少ないので回転しているネタはほとんどなく、言えばカウンターで握ってくれる。岩内の魚貝類とビールで満足して店を後にした。
まだ時間はいっぱいあるので、盆踊りに参加しに行く。アウェイなら喜んで踊りに参加してしまう。ビールも入っているので調子がいい。見るからに上手そうな年寄りの後ろに入って踊りまくる。盆踊りが終わって人がはけるまで会場の隅で日記を書く。4日分たまっていた日記を何とか取り戻したころには、人は完全にいなくなったので、公園でテントを張って眠りについた。山場も越えたし出会いも多く良い1日だった。 |

岩内 北海盆踊り
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9日目 |
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岩内→泊→神威岬→積丹・野塚 |
68.25 km |
2006/08/17 |
意外と早く目覚めた。朝食を食べてからテントをたたもうとしていたら、公園に人が集まり始めた。夏の公園で早朝に行われるダンスイベント。そう、ラジオ体操だ。この際、勢いに任せて踊ってみた。体の疲れもたまってきているし、久しぶりなので動きもぎこちなく足や肩が痛い。やっぱり、ここに来てアップダウンだのヒルクライムだのは堪えるもんがあったようだ。今日は天気がよく昨日は全く見えなかったニセコの山がよく見えている。この好天の中で積丹の海岸線を走るのは気持ちよさそうだ。最後の見所、積丹もしっかり晴れた。
気分良く岩内を後にする。6kmほど走ると海沿いの道に出た。いよいよ積丹半島一周ルートの始まりだ。幸先良く海の向こうには雷電岬が鮮やかに見える。青い空と空に映える青い海に真夏の日差し。シーサイドサイクリングの醍醐味が全て込められている。
ややアップダウンしながらさらに5kmほど走ると、泊のニシン御殿と書いた看板が見えてきた。せっかくなので寄り道をしてみる。
結構、急な坂を下って漁村を抜けると、古い大きな建物が見えてきた。何だか面白そうなので入場料も払って見物しにいく。ニシン漁師たちの暮らしを建物と一緒に蝋人形や展示パネルで再現し、説明ビデオなどもある。2階建ての結構大きな建物の中を見て回る。出稼ぎでニシンの漁をしている話や上下関係や漁法などなど見所は多い。何と言っても、こんな古く立派な建物を復元しているところが貴重だと思う。 |

海の向こうに見える雷電岬
積丹半島から
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泊の鰊御殿
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鰊御殿を後にして泊村を抜けるまでの間は、左に海を見ながらアップダウンしながら走っていく。ただ、積丹半島ほどのルートならアップダウンはもっと凄いのかと思ったら、意外と高低差も回数も少ない。そんなに峠を何本も繰り返すような壮絶なアップダウンはない。予想より楽なルートで走りははかどる。距離を走れば走るほど海の透明度も上がってきた。底が見える海は、エメラルドのような色の海面となってきた。泊村を抜けて神恵内(かもえない)に入る。ちょうど時間的には昼時より少し早い11:30。
とりあえずはスーパーに立ち寄ってみる。あまり、これという食材も総菜もないのでスルーした。このあと7kmほど先に、道の駅
オスコイ!かもえないがあるので、そこに行けば、もうすこし積丹らしい何かがあるだろうということで、そこを目指した。神恵内に入ると海沿いの道路は完全に平地となった。日本海へとせり出す積丹半島の山をトンネルでくりぬいている。長いトンネルが続くがアップダウンはない。体力的には楽だ。そして、そろそろ道の駅があるはずの場所だが、それらしき看板もなければ、右にあるはずの道の駅も見あたらない。やけに道路工事をしている地帯を過ぎた時に、道の駅があるはずの場所を通り過ぎたことに気付いた。(※台風18号の影響で閉鎖中とのこと)
地図を見る限り、この先は神威岬の向こうの積丹町まで何もなさそうだ。さっき何も買わなかった判断が悔やまれる。少し凹みつつも進む。長いトンネルがいくつも続く。そしてトンネルを抜けるたびに海岸の景色は変わる。複雑な形をした大きな岩と薄い青の海。そんな道を走っていると、右は閉店しているレストラン、左に商店が見えた。積丹まで来て、魚貝類無しというのも納得いかないが、ここでパンと魚肉ソーセージを買っていく。背に腹は代えられない。自転車を商店の前に止めて、岸壁から足を投げ出して座り、潮風を浴びつつ昼飯を食う。メニューはお粗末だが雰囲気を楽しみながら飯を食うしかないだろう。ピーナツサンドとソーセージ2本を平らげて、また出発。
相変わらずトンネルで無理矢理くりぬいて開通させた、建築士の力業を感じる道を走っていく。海の美しさは走れば走るほど増していく。そして神恵内を抜けて積丹町へ突入。至って順調な走りだ。トンネルは多いが車は少ないし道もきれいなので、さほど恐怖は感じずに走り抜いたところで、神威岬への分岐が見えてきた。分岐の先には、泣けるほどの上り坂が見える。
分岐から先は、最初から諦めモードでインナーへとギアを落とし、坂の途中であっさりローギアへ落とした。9%の結構ハードな上り坂を越えると、丘の向こうに駐車場とレストハウスが見えてきた。軽くそこへ下って自転車を置いて、買い出しや情報収集も視野に入れつつ売店を物色してみる。もしかすると塩ウニを買えるのは、この売店が最後かもしれないので、一応チェックしておく。レストハウスの表で売っているものを試してみた。積丹を回りきった仁木のサクランボジュースと、ミントで積丹ブルーに色づいたソフトクリーム。ぶっちゃけ、どちらもイマイチ。サクランボジュースはサクランボの果汁の味以上に甘味料や香料の風味が勝っている。もっとサクランボの味で勝負すればと思うのだが、サクランボ自体が高価な果物だし味が濃い物ではないのでそうもいかないか…とエンジニアらしく弁解してあげて、ソフトクリームはまあ普通といえば普通だ。たまにはハズレもある。 |

積丹ブルーの海
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積丹半島を回る道
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神威岬 B級グルメ
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神威岬
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神威岬に着いてから、微妙に空は曇り始めてきたが、気を取り直して神威岬の先端の方へ遊歩道を歩いていく。歩きにしてもアップダウンが多い。結構、急な階段を下りては、上っての繰り返しで息が上がる。遊歩道もさほど広くない。途中、何度も足がとまる。だが、それは疲れからではない。日本海に突き出た神威岬の遊歩道から見える景色は息をのむものだった。南を見れば複雑に入り組んだ海岸線が水墨画のように重なって見える。北を見ると、足下は積丹ブルーの海、その先は濃い青、そのさらに先で日が当たっている部分で、また鮮やかな明るい青と色が変化する。変化に富んだ積丹の海と複雑な地形に夏草の生える岬を眺めつつ岬の先端へと向かっていく。立ち止まっては眺めつつを繰り返して神威岬の先に行くと、自然の造形による芸術というか神秘というか、そんな景色だ。積丹ブルーの海に岩が立ち並んでいる。この地形を見れば、ここに神が宿っているような気になるのは当然だ。しばらくがけの下の神秘的な景色を眺める。
神威岬の崎からまた景色を楽しみつつレストハウスに戻る。そこで、買い出しをしようとウニを見たら売り切れていた。観光で歩いてる間に暖まってしまうのを嫌った判断が裏目に出てしまった。積丹の街のあたりで何か買えることを願いつつ、出ようとしたら雨がポツポツと降り始めてきた。空も本格的な雨を予感させるような曇り。また海沿いの道に下って走っていく。夏の16:00だというのに薄暗い。天気がもってくれればと願いつつ、アップダウンもない海岸沿いを走り抜けていく。ようやくうに丼屋の並ぶエリアに出た。この辺の店でウニを探してみる。いずれにしても見つからない。そうこうしているうちに本格的に雨が降ってきた。レインウェアを着て海岸沿いを走り、キャンプ場を目指す。こんな雨の中だがキャンプぐらいしか宿泊も選択肢がない。 |
このあたりで唯一の野塚キャンプ場の位置を確認して、とりあえずは少し先の温泉に入りにいく。この雨の中でテントを張ってから風呂に行くのも面倒だ。温泉は丘の上にあった。とりあえずは気合いで上っていく。風呂のすぐそばに産地直売の店もあった。買い出しがろくにできなくてパスタと魚肉ソーセージになってしまうかという状況の今日の夕飯から脱出。美味しんぼで見た、茹でたジャガイモに塩ウニをやってみたかったが、生ウニなら売っていた。路線変更で自炊でウニ丼ということにした。地元で取れた小さめのカニの浜茹でも売っていた。これも買う。夕飯はリッチにウニ丼とカニということに。温泉につかって雨で冷えた体を温める。一応、露天風呂にも入ってみる。海がよく見えるので晴れていればフルチンで夕日を眺められるのだが、今日はあいにくの雨で何も見えない。体は露天風呂で温まったが頭は雨水を浴びっぱなしになったので、頭からかけ湯をしてからあがる。相変わらず降り続く雨の中、温泉の出口の軒先で支度をして出て行く。気も腰も重い。
雨の中、キャンプ場へたどり着く。平らな部分が少なく足下は砂で決してキャンプしやすいサイトではない。しかも蚊が多くて追い払っても追い払っても来る。海は荒れているので浜辺からは1段あがったサイトで何とか張る。自転車は屋根のある炊事場にとりあえず置いて屋根とテントの間で荷物を移動する。面倒なのでさっさと飯にする。さっき買った食材を出して、最後の米を炊く。今日はウニ丼なので失敗無く炊きあげたい。それにしても蚊が多い。蚊取り線香を3方向で炊いて俺の周りを煙で埋める。しかし、それでも刺しに来る。なかなかしぶとい。何とか追い払いつつ米を炊きながら、カニをつまみにビールを飲む。小さいカニだからか殻は柔らかく殻ごとかじっても食えてしまうので不器用な俺にはもってこいのカニだ。足も胴体も身が詰まっていて甘みすら感じる。しかも味噌の部分は、ものすごくボリュームがあり美味い。ご飯が炊けたところで、積丹産のウニをご飯に広げる。ご飯の炊け具合も完璧。ウニはさすが積丹の地の物だけあって、うま味が凄い。ウニ丼とカニに大満足の晩餐となった。キャンプの晩餐はおそらく今夜が最後。良い感じにしめれたと思う。
相変わらず回復しない天候。荒れた海。波の音と雨粒の音。テントも老朽化が激しくメッシュに空いたわずかな穴から入ってきた蚊に刺されまくる。蚊との格闘しながら寝る。 |

積丹のカニ (名前は失念)
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積丹の生ウニ
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生ウニをご飯へ。自炊のウニ丼
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10日目 |
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積丹・野塚→積丹岬→余市→小樽 |
78.56 km |
2006/08/18 |
昨夜の荒れた天気から一転。朝から快晴。海も穏やかさを取り戻している。テントやマットなどを乾かしながら、朝飯を作る。米も切らしたしすぐに食べれるものはないのでパスタを茹でて、インスタントのミートソースと絡める。残りの食材だけで飯を済ませて食材を使い切る。キャンプで迎える朝も最後かと思うと感慨深いものがある。
日が昇ってきたので干しているテントやマットはすぐに乾いた。パッキングして出発する。まずは積丹半島の先端の積丹岬を目指して走る。野塚キャンプ場から10kmもないので、入り口にはすぐたどり着いた。キャンプ場に沿って坂を上って積丹岬へ向かう。岬というと上り坂はつきもの。気合いを入れて上っていく。駐車場に自転車を止めてそこから歩いてみる。駐車場から出る遊歩道は2方向。1つは車が通れないほどのトンネルを抜けると崖の向こう側にある島武意海岸が見下ろせる。薄い青、積丹ブルーの海面と切り立った崖の景色。見慣れたと言えば見慣れた景色だが、積丹らしさと海のきれいさに心が洗われる気がする。また駐車場に戻り、歩いて上がるのですらつらい坂を歩いて上っていく。ここは歩きで正解だった。登り切ると灯台と広がる海の眺めが気持ちいい。積丹の海は青がきれい。そんな積丹半島沿いの海岸の集大成に岬まで上ったので開放感が追加された感じだ。急な坂を下って、積丹1周道路へと戻る。
久々に海の見えない道路を走る。しかし、海が見えない=山だった。積丹岬のヒルクライムは想定していたが、こんなところに一山あるとは思いもしなかった。北海道らしくジリジリと緩い傾斜の直線道路で
いつまでも上る。今日は日差しもきびしく炙られながら、疲れた足にムチを打ちながら走るしかない。今日
一気に札幌まで行ってゴールしてしまおうかとひそかにたくらんでいたが、この足ではとてもじゃないが無理そうだ。無理をすればろくな事がないのは過去のツーリングの失敗で分かっている。良いとこ小樽までだろう。
中途半端な峠も終わった。しかし、下りはなかなか刺激的なカーブが続く。思わず本気で下ってみた。当初の目標より10km程度手前で正午を迎えた。古平に出てから昼食にしたいところだったが、まだ積丹町の三国。今日は絶不調…というか、もう体力の限界も近いのかと思ってしまう。足以外は元気なんだがこまったものだ。
セイコーマートで簡単に昼食を済ませて、さっさと続きの走りに入る。三国からは、再び海沿いのルートに戻った。積丹半島の西側と違った表情とは言え、岩と海のオンパレード(死語?)だ。そろそろ海沿いの道というのも飽き気味でお腹いっぱいになってきた。ここからは車も多く道も狭い。西側の広くて車の少ない道が懐かしく思えてくる。狭いトンネルやガードレール際の走りで車を交わしながら、ペースを乱されつつ進んでいく。路面もガタが多くあまり良くない。これから小樽、札幌に向けてどんどん車が多くなっていくのだろうか。そんな気がすると旅の終わりが近いことを実感する。
時々あらわれる不思議な形の岩を見ながら流していく。そして、積丹を1周する上で気になっているトンネルに来た。トンネルの前に犬が遠吠えしているような形の岩と、防災祈念公園というのがある。古平から余市へ抜ける2200mある豊浜トンネルだ。前に崩落事故で多くの犠牲者が出た時のことを思い出すトンネルである。祈りを捧げ、安全に走れる積丹半島一周ルートとしてくれた努力に感謝する。 |

積丹 野塚キャンプ場
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積丹岬
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余市 ろうそく岩
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余市 えびす岩・大黒岩
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ここから4つほどトンネルをくぐる。車も多く本当に緊張感の絶えないトンネルである。余市の市街地へ向けて、100mUPの峠にトライする。もう楽しい積丹半島は終わった。あとはゴールへと向かって走り抜くということだけだ。満身創痍で峠を登っていく。頂上のトンネルを緊張して抜ける。そろそろ上ってトンネルをくぐる前に休まないと、集中力が保てない。しかも、曇ってきたのでテンションも下がる。
峠を越えて坂を下って余市の市街地へたどり着いた。何はともあれ道の駅で休憩したい。道の駅の名前も大胆。スペースアップルよいち 少しやりすぎ感のある名前に期待する。本当に大胆だった。道の駅は宇宙科学記念館になっていてスペースシャトルのモデルも展示してある。余市は宇宙飛行士の毛利衛の出身地ということで、それにちなんだ施設のようだ。宇宙食や宇宙グッズなども売られている。 |

道の駅・スペースアップルよいち
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テンションを上げるために、日本縦断でも立ち寄ったニッカウヰスキー余市工場の見学も行く。当時は道の駅はなかったが道の駅の隣なのだ。公園のような工場内を散歩するように見学する。建物も昔ながらの風情を残していて、工場自体が雰囲気がよい。作り方などの説明を団体客に混じってガイドさんから聞きながら回っていく。原酒の試飲コーナーで試飲をする。喉にかーっと来るほどの濃さと、強い香り。さすがといったところだ。そして見学ツアーの最後は試飲コーナーとなっている。以前に、日本縦断で立ち寄った時は昼にもかかわらず飲みまくった。コップが置いてあって好きなだけ注いで飲んでという形で種類も多数あったので、3フィンガーのストレート(チェイサーもなし)でガンガン飲みまくってベロンベロンに酔って峠を登る若気の至りがあったが、今では小さいプラスチックのコップにちょっとだけ入っている。種類もさほどない。俺みたいなヤツが出てこないように大人の対応(笑)となっている。ということで、俺も大人の試飲で答える。
あとは小樽へ向けて22km頑張って走る。余市からは国道5号線ということもあって札幌へ向かう車で交通量も一気に増えた。ちょっとした渋滞気味の車と同じぐらいのスピードで流していくが、市街地まであと8kmというところから上り坂が始まった。最後の最後に苦戦を強いられる。もう足は残っていない。ややグロッキーに近い状態で坂を上っていく。最後の力を振り絞って峠を越えてトンネルを抜ける。交通量が半端じゃなく多いので集中力を保って下っていく。トンネルが下りで本当に良かった。そう実感する。トンネルを抜けてとりあえず小樽駅へ向かう。
まず小樽駅で情報収集だ。公園をいくつか探してテントを張る場所を見つけないといけない。昔はフェリーターミナルの近くの公園がキャンプ場のようになっていたが、結構厳しくキャンプ禁止と書いてある。小樽や札幌は最近ではサイクリストやライダーの締め出し傾向にあるので仕方がない。3つほど公園を見つけて回ってみる。駅の裏側の公園へまず向かってみたが、向かっていく途中からして坂がきついので却下。基本的に坂の下方面へ向かう。小樽の街は海から坂を上るような形で街ができているのだ。運河のあたりから1つ見つけて、雨もしのげそうな屋根も見つけた。明るいうちにテントを張ると追い出される可能性もあるし、張りっぱなしで風呂や買い出しに行くのは少し危ない雰囲気を感じたので候補地としてキープして、風呂に行く。すると本格的に雨が降ってきた。さっさと温泉から出て、段取りをする。
先ほど見つけた公園に行ってみると屋根の下は学生に取られた。俺の糸はここで切れた。もういいや金払ってホテルにでも泊まろう。しかし、どのホテルも満室。繁忙期もぼちぼち過ぎているのに、こんなに八方ふさがりな状況もどうしたものかと思ってしまう。今日の宿は諦めた。小樽駅前の軒先で野宿決定だ。途方に暮れていると、ランドナー乗りのおじさん(って俺もだけど)が話しかけてきた。彼も野宿で回っていて今日は小樽駅で野宿のようだ。茨城の人で、笠間や霞ヶ浦で見たことのあるレーサージャージを着ていて親しみを感じてしまう。
寝床はそこそこに夕飯を食いに出かける。最近は良い物を食べ過ぎの感はあるが、こんな状態の日ぐらい飲まないとやってられないということで、地元の食が美味しそうな居酒屋を探す。何となくオーラを感じる店も見つかった。カウンターに腰掛けて、北海道ならではの魚貝類や野菜のメニューを頼んでビールを飲む。ある意味特異な格好をしている俺に女将さんやカウンターに座った老夫婦の注目は集まった。話も盛り上がった。こういうハードな旅をしながらも社会生活をそれなりにやって…という立場になると違和感なく飲みながら話せるようになったと思う。さらに旅という格好の話題は当然ある。こんな店が近所にあったら絶対に隠れ家にするのだが…と思うが悲しいかな旅先である。味も雰囲気も良く、最近
自信がついてきた俺の美味い店を探す嗅覚に狂いはなかったようだ。
駅に戻って、ランドナー乗りのおじさん(って俺もだが)と話して、眠りにつく。眠る…。眠る…。眠れない。蚊が多くて足から手から刺されまくる。虫除けスプレーを振ってもスプレーの振れない顔の辺りに集まってくる。蚊取り線香では燃え尽きてしまうので、コンビニに行って電池式ベープを豪華に2つ買って頭と足の方に置いて眠りについた。何で食う寝るに困らない程度に収入もあって趣味でやってる旅なのに、こんな一泊をしなければならないのやら…。 |


ニッカウヰスキー余市工場
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ベタですが、夕暮れの小樽運河
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小樽の隠れ家的な 居酒屋
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11日目 |
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小樽→札幌 |
45.71 km |
2006/08/19 |
あまり眠れないまま、朝は早くも目覚めさせられる。始発の前には起きて片づけるのが駅寝のマナー。蓄積疲労とハードな野宿で体からは疲れのオーラがみなぎっている。ランドナー乗りのおじさん(って俺もだけど)を見送って、俺も出発に向けて片づける。テントとシュラフは降ろしていないので、マットをストラップで止めて、細々した物をサイドバッグへ突っ込むだけで片づいた。すると、酔っぱらったおじさんが話しかけてきた。ぶっちゃけ何を話しているのか分からないが、適当に相づちを打って対応してその場をやり過ごす。
面倒な対応を終えて、駅の待合室で朝食のゆり根どら焼きを食いながら日記を書く。すると、また酔っぱらいはやってきた。とうとう面倒になってきたので、小樽駅からは出ることにした。朝の運河を見て北一硝子のあたりへ行く。開店前の店の軒先で座って日記の続きを書く。するとポツポツと雨が降ってきた。何だか踏んだり蹴ったりな状況なので、日記は札幌まで持ち越しにして出かけることにした。このボリュームなら飛行機と高速バスの中で書いても家に帰るまでには書き終わりそうだから、割り切ろう。
オルゴール館の前から交差点を渡ろうとすると、5人ほどのアジア系のサイクリストたちが来た。ソウルから釜山 そして渡って 福岡から札幌まで自走している韓国人たちだった。片言の日本語で会話を交わして、互いに札幌ゴールということで健闘を誓って出発。小樽から札幌の間には1つだけ峠がある。小樽を出ると上り坂が始まった。最後の山場といえば山場だが、意外と体は余裕があった。昨日の小樽市内の最後の坂と比べると状態はいい。しばらく見ることもないだろう日本海を最後に見送って峠を下っていく。万感の思いを込めて勢いよく攻めるように下った。
下ってしばらく走ると、ついに札幌市に突入。都会的な2車線+2車線で建物も建ち並ぶ道となった。やはり札幌は都会だ。余力もあり最後の力を振り絞って力強く走っていく。周りの車に目を配りながら札幌の中心地を目指す。あと10kmほどと言ったところだろう。ついに札幌市中央区に突入。通りの番号で残りの距離をカウントダウンできる所まで来た。札幌市内はとおりの名前が縦と横で座標のように付けられていて、北1条西2丁目などのようになっている。 |

ハードな一泊…。小樽駅前。
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豪華駅弁 北海手綱
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ゆり根どら焼き
少しもっちりした白餡が美味
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気になるゴール地点をどこにしたかというと、これも最近の北海道の汚い事情がある。最近は札幌駅はサイクリストやライダーのようないわゆる「貧乏くさい旅人」の締め出しが厳しく市民の放置自転車なんてごまんとあるのに自転車を置いて情報収集をしようとするとすぐに警官が駆け寄ってきて追い出す。駅前の広いところで押して歩いているだけで、そこは自転車は進入禁止だと文句を言ってくる。この際
ハッキリ言うが 一般観光客との差別を感じる日本で唯一の場所だ。駅舎もきれいになりすぎて、良くも悪くも特徴がない。ここで
さりげなく札幌市の行政への批判ですが、我々みたいな北海道が好きでわざわざ来るような旅人に見放されたら、札幌以外に人がいなくなるだろう。いろんな意味で今の北海道って観光客を選別するほど余裕のある状態にないと思うんですけどね?
自転車やバイクの旅=貧乏で金を落とさない とでも思っているのでしょうか。サラリーマンの娯楽でやってるので、飲食街や宿にいっぱい金払って観光してますけどね。行く気になれば海外の方が安いですし。民間の店などは努力していると思うが、行政が足を引っ張っていると思いますね。今までの俺の旅でゴールは港か駅だったが、札幌駅だけはゴール地点にするには気分が全く盛り上がらない。「どうした?
札幌」という意味もこめて、今年のゴール地点は札幌時計台とした。 |
時計台の住所は北1条西2丁目。ほぼ中心に近いところである。西X丁目の数字が徐々に減っていく。とうとう駅へ向かう大通りを過ぎた。あと1本。最後の交差点を左折すると時計台はあらわれた。今年の完走に人目をはばからず大きくガッツポーズ。今年も短いような長いような、そして濃い旅が無事に完走という結果に終わった。何度迎えてもこの瞬間は気持ちがいいものだ。しばらく写真を撮ったり、フレームのトップチューブに缶を当てて乾杯したりで完走した喜びを満喫した。 そんな喜びでテンションが上がったまま昼食へ行く。夜は打ち上げでしっかり飲みたいので昼は軽めにということで、大通公園のジャガバターと焼きとうきびだ。露店のおばちゃんは人柄が良く楽しいのだが、味としては北海道を旅してきた俺にしてみるとイマイチ。自炊のキタアカリとか味来の方が美味しかった。それだけ腹いや舌が肥えたということだろう。
大通公園の芝生で横になりながらケータイでホテルの予約を入れてみる。しかし、探せども探せども満室。低価格から高額まで全てことごとく満室。昨日の小樽とは言い何かがおかしい。うかうかしてると今夜も野宿になってしまう。今は昔のように北大でキャンプできるほど緩くもない。慌てて札幌駅の観光案内所へ向かう。警備員の目をくぐって怒られるのを覚悟で自転車を駅前に止めてポールにカギでくくりつけた。そうでもしないと宿泊の段取りすらできない。観光案内所の係員は親切の塊のようなおばちゃんだった。ホテルを片っ端から当たって電話をかけてくれた。キャンセル狙いだ。今日は世界バスケとロックフェスで札幌から小樽ぐらいまで宿という宿はいっぱいのようだ。ようやく事情が読めた。あまり何件も電話かけてダメ元で探してもらうのも悪いので、おばさんが「ここなら行けるはず」と言っていたカプセルホテルにまず連絡してもらって、ここを確保。これで宿確保は終了。心から感謝である。何故か笑顔でおばさんと握手をしているお調子者の俺がいた。2連続アーバン野宿を回避できた。そして駅の前に出てみると、街灯のテレビで高校野球の準決勝を放映していた。駒大苫小牧が3年連続決勝進出したのを見送って札幌駅を後にした。すすきのへ行って、今夜の打ち上げの予定の店の場所をチェックして、コインランドリーへ洗濯をしに行く。 |

ゴール 札幌時計台
青森から736kmを完走
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札幌大通り公園とテレビ塔
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洗濯物を放り込んで洗濯機を回しながら、打ち上げの予定の寿司屋に予約を入れた。無事、予約も取れて今夜は怖い物はない。カプセルホテルにチェックインして、風呂に入って少しのんびりしてから打ち上げに出かけた。 打ち上げのお店は すすきのにある、鮨処いちい ネット上で知り合った方のお店である。ここまでの北海道魚介類の旅(?)の集大成とも言えるような海の幸を、暖かい人柄の大将が握る鮨で味わえる。あまりのおいしさに酒も進む。ただ、魚を自分で適当にさばいて食べるだけとは、当然ながら味は格段に違う。いろいろと楽しめて、満足できる旅の打ち上げとなった。
今年の旅というのは、走りの不調さは隠せないものの、ベテランらしくプランニングからリカバリーまでできて、そこそこの落としどころを見つけて楽しくない日など無いレベルまで持って行けた。今年の結果は、まずまず満足できるものと思える。発展するとしたら、来年は、走りを取り戻そう。走りが取り戻せれば、さらに楽しむ幅が広がるはずだ。距離も稼げれば見れる物も増えるはず。長い旅の1日1日が無事であることが、努力の成果だし、その濃い1日1日の中身には満足である。楽しみ尽くす走り
これは次回の旅でも大事にしていこう。 |
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12日目 |
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札幌市内 |
7.85 km |
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札幌−千歳線→新千歳空港 |
2006/08/20 |
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新千歳→羽田 |
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羽田空港→宇都宮駅 |
昨夜の余韻を残しつつカプセルホテルで寝る。寝れない。自分の下の段に、ボブサップのような外人さんが大いびきをかいて寝ていて、自分の枠は部屋の端でエアコンが行き届かずむさ苦しい。泊まった部屋がハズレだった…。今朝も猛烈に疲れを残して宿を後にした。
まずは郵便局へ行き、段ボールを3個買って、荷物を全て段ボールに放り込む。リアキャリアやアウターキャリアもここにねじ込む。曲がらないように周りの荷物で固めて箱を閉める。3個の段ボールが満杯になるほどの荷物を送り出したら、自転車は軽くなった。さっきまで大量の荷物を積んでいて ある意味では 旅や生活を意識する自転車だったのものが、素のランドナーに戻る。この姿に祭のあとのような粋を感じる。慣れない軽さにふらついてしまうのも祭のあとの余韻。
次はおみやげを買いに行く。二条市場を回りながら、カニやメロンなどを物色。まあベタだが北海道らしいものを送って、次は狸小路へ向かう。狸小路は、かなり大きい商店街で、大型店もどんどん出店する札幌にあって活気がある。そして、狸小路も含めて札幌は地味にお祭りをやっている日のようだ。そして札幌のもう一つの祭がある。今日は高校野球決勝
3連覇をかけて 駒大苫小牧 vs 早稲田実業が行われる。そこら中に街頭テレビが用意されて観戦応援態勢が整っている。そんな熱い予感を感じながら店を探す。昨日までで魚介類はお腹いっぱいなので、今日は野菜がいい。ジャガイモやアスパラなんかあれば最高だ。チェーン店っぽいが、チロリン村の表のジャガイモの看板に魅せられて入った。ジャガイモを使ったデミグラスソースのパスタとジャガバターを頼んだ。ジャガイモづくしでいきたい。どっちもジャガイモのホクホク感があって美味しい。チェーン店とは言え侮りがたし。それが北海道だ。 狸小路にあるおみやげもの屋さんに寄る。北海道のお土産を広くあつかう観光客向けの店だ。もちろん発送もしてくれる。ここで会社向けのお土産やお菓子を買って自宅へと送る。店の表では高校野球の決勝が既に始まっていて、もう4回まで来ている。早稲田実業の斎藤、駒大苫小牧の田中の投げ合いでテンポ良く進んでいる。 |


荷物をおろして送りだす
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札幌 狸小路商店街
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狸小路を後にして、札幌駅へ向かう。もうすべきことは終わったので自転車をバラしてから去年と同様に札幌駅で見ることにしよう。
少し寂しい感覚を胸に札幌駅へと向かう。テレビがあるところは札幌市民が集まっている状態だ。キャリアもない状態の自転車なので、さっさとバラしてリアのエンドに金具も付けて袋に収めて作業は終了。改札の前のテレビに人が集まっていた。俺も固唾をのんで見守る。 見始めた次の回に駒大苫小牧が先制点。このまま行けるかと思ったが早稲田実業もすかさず1点を取り返す。そして延長戦。いつ決まるのか全く読めない試合展開。正直、あるところで決めてくれないと俺の飛行機の時間が来てしまう。19:30発の飛行機なので余裕はあるが、不安にもなってしまう。そして15回の表に駒大苫小牧はリードを奪えず、今日は15回裏の早稲田実業がサヨナラ勝ちしない限りは明日の再試合となった。駒大苫小牧の優勝は今日はない。というところで、千歳空港へと移動する。さっさと電車の切符を買って電車に乗り込む。15回裏まで見てから行くと、この客が一斉に電車に乗る可能性があるので良い判断だった。 |

高校野球 決勝を
見守る札幌市民
(札幌駅)
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寂しく札幌の街を見送り、電車は空港へと向かっていく。40分ほどで空港に到着した。電車を降りて搭乗手続きに向かう。セキュリティチェックも通して自転車も預けて、身軽な格好で空港内のお土産屋さんを物色し、夕飯に行く。千歳空港のお土産の充実ぶりには目を見張るものがある。最後は豚丼で夕食として、ビールで流し込んだ。それでも時間があったので飛行機を待つ間に日記を書く。はかどらないままに飛行機に乗る時間が訪れた。飛行機に乗り込んでも日記を書き続ける。何げに溜め込んでしまったのを後悔する。
あっという間に羽田に着陸態勢に入った。高度が下がるときに耳が痛くなるのが俺の持病だが、意外と大丈夫で安心。羽田に降りた時点で21:00。飛行機が遅れたので高速バスに乗り遅れて、ここから1時間半の待ち時間だ。22:40のバスで帰って、宇都宮駅に到着予定は0:55。明日は仕事だというのに、なかなかハードだ。バスを待ちながら、まだ日記を書き続ける。今日の分のみを残したところでバスに乗り込む。自転車の積み込みは全面的に自分でやって固定してバスは動き出した。首都高を抜けたころに、やっと全てを書き終えた。ここからは寝ておく。
夜中1:00やっと宇都宮駅に到着。自転車を組むのが面倒なのでタクシーに乗って家へと帰って旅は終わった。今回も始まりから終わりまで休みの期間をフル活用して充実の旅となった。 |
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