旅記録
2006 GW 琵琶湖 六甲山 淡路島
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0日目 宇都宮−東北新幹線→東京−東海道新幹線→京都
−東海道本線→大津
2006/04/28
 今年もGWが迫ってきた。Blogで旅のおもしろさを実況しながら、たまり切ったストレスを全て吐き捨てて走る。そんなテーマのもと走ろうと思う。そして徹夜での準備をして仕事をして出発する。やけに混んでる道路がうっとうしいがPRELUDEで裏道をガンガン攻めながら帰る。既に玄関に準備していた荷物をランドナーに積み込んで出発。この時点で18:15。乗ろうとしてる新幹線は19:30がリミット。今日中に滋賀県の大津に行くにはこれが最終である。
 新幹線のホームへとあがり、やまびこに乗り込む。早速、弁当をつまみにビールを開ける。つらかった1〜4月 頑張った俺、そしてGWの旅の前途を祝して乾杯。ビールは進む。こののどごしがたまらない。そして東京で新幹線を乗り換え。俺が手で縫ったばかりの、サイドバッグの蓋はもろくもちぎれ始めた。やはり俺の裁縫能力は低い。東海道新幹線に乗り換えて、京都へ向かう。1月に新しく買ったケータイでBlogを見ながら、メールしまくりながら、コメントしまくりながら進むと、電池の消耗が驚くほど早い。さっそく、のぞみ700系のコンセント付きの席で充電しながらの活動となってしまう。
 充電も不十分なまま、京都に到着。大量の荷物を抱えて東海道本線の上りに乗り込み、2駅戻って大津へ向かう。通勤ラッシュで混んでる車内で冷たい目線を浴びながら電車にゆられて大津駅に到着。
 県庁所在地とは思えないほど素朴な駅を降りて、自転車を組む。このときから、ケータイでBLOGを更新しながらの作業である。1時に組み終わり、荷物を積んで琵琶湖の湖畔の公園へと走り出す。1kmほどのところに公園がありそうなので、そこでキャンプである。漆黒の闇に琵琶湖の静かな湖面。テントをバサバサと張って眠りについた。

大津駅前 組み立て完了!
寝に行くぜー


1日目 大津→近江八幡 69.77km
2006/04/29
 やや曇った空と静かな琵琶湖。驚くほど釣り人が多い中、レイクビューの俺の部屋(ていうかテント)で目が覚めた。ゆったりとテントを畳んで自転車に積み込んで出発。
 瀬田の唐橋ぐらいまで走ってから朝飯にしよう。ゆっくりと力強く自転車は動き出して旅が始まった。まったりと琵琶湖沿いの公園道を流していく。護岸工事が万全でビルも見えて都会的な雰囲気だ。スタートのウォーミングアップとしては、ちょうどいい感じの気楽な道が続いていく。釣り人も多く、のんびりした雰囲気ながらも向こうに広さを感じる。そんな琵琶湖の眺めや雰囲気を楽しむ。20分ほど走って、琵琶湖の南側が川として狭まったところで、橋が見えてきた。その向こうにはカヌーの練習をしている大学生らしき人たちもたくさんいる。カヌーツーリングも楽しそうだ。いつかトライしてみたい。泳げないけど。
 何となく風情は良い物のイメージしていたほど歴史的建造物という感じでもないコンクリートの橋である。そのまま通り過ぎたが、地図上では最初の橋が瀬田の唐橋と書いてある。「えっ まさか!?」と振り返って 橋の上の看板を見ると確かに瀬田の唐橋のようだ。
 一度、川から離れてセブンイレブンで朝食を軽く食べてから、橋を渡る。確かに風情はそれなりにはある。しかし、それなりでしかない。無理矢理にでも満喫しながら渡って写真を撮る。やはり、日本三名橋ということで山口県岩国市の錦帯橋と比較してしまう。車がバンバン通るから補強しなければならないのは致し方ないが、こういう名橋の周りは演出して欲しいものである。少し残念。

大津市 琵琶湖なぎさ公園


瀬田の唐橋とランドナー

 瀬田の唐橋から折り返して、琵琶湖の東岸を北上していく。つまり逆時計回りで1週するねらいである。しばらくは大津の都会じみた道を走っていたが、しばらくいくと湖と湿原だけを眺められて、歩道も平らで広い快走ルートに出た。さざなみ街道と呼ばれているようだ。そこら中に休憩スポットもある。カメラを片手に走りながらバシバシ写真を撮りながら気持ちよく走っていく。緑色の草原と湿原、青い湖面、青い空、青い自転車。こんな気持ちのいいルートはそうそうない。存分に満喫しながら、のんびりと走っていく。
 そんな気持ちよさの中、道の駅 草津で休憩。去年、長袖長ズボンで走ってクソ暑かった反省を生かして今年はスリークオーターカーゴパンツで快適、上はTシャツと袖をまくれるアンダーウェアのみ。今年もそれで充分な気温である。そして暑さゆえソフトクリームに惹かれる。もちろん狙いは御当地ソフトクリームである。草津での御当地ソフトは、あおばなソフト のようである。ツユクサと呼ばれている植物のようで、染料などに使われている。全くクセのない味わいで微妙に草の香りがするソフトクリームで元気が出てきた。

道の駅 草津 あおばなソフト

 続きのルートも元気に走っていく。相変わらず続いていく草原と湖の眺め。向こうに島が見えたりで変化も多い。とにかく開放感の感じられる広い湖である。そして波は静かで穏やかな湖面である。どこまでも続くサイクリングロードをとことん楽しんで走る。
 やはり、初日ということで体のキレがイマイチである。今日のゴール予定地にしていた近江八幡からは、湖沿いから浮気して少し東の内陸へと入っていく。その向きの走りは思いっきり向かい風のようで苦戦してしまう。近江八幡の水郷めぐりの船着き場で休憩して、近江八幡の街中へと向かっていく。すぐに見えてきた あきんどの里 で昼食と情報収集を兼ねて休憩する。手ごろな価格で近江牛か琵琶湖の魚料理が食べれないかと思っていた俺のハートをがっちり掴んだのは、近江牛。あきんどの里の中にある 千里庵 の焼き肉定食だ。近江牛の濃い牛の味わいが口に広がる。そりゃ霜降りで箸でも切れるような肉かと言えばそうでもないけど、牛肉の旨さを感じるには十分すぎるものだった。
 昼飯を食べて情報収集をして午後の遊びの作戦を、自転車の横に座りながら考えていると、おばあさん達が声をかけてきた。「旅人というテーマで写真を撮らせてください」俺はヨン様なみの微笑みで「ええ 構いませんよ」と言いながら、笑顔を作る。立派なカメラを持ったお婆さんやお爺さんがいっぱい来て写真を撮っていく。インパクトの大きい自転車、インパクトの大きい?俺の写真を撮りながら話に花が咲く。カメラに情熱を注ぐ年寄り達にパワーを感じて嬉しくなってしまう。

琵琶湖の眺め 近江八幡
日本で唯一の有人湖上島 沖島


近江牛 焼肉定食

 すっかり元気をもらって、八幡の街中を散策だ。ゆったりと古い町並みの間を流れる八幡堀が最高に雰囲気がいい。こういう水郷の街というのに弱い。そんな町並みの向こうに、八幡宮がある。大量につるされた鯉のぼりが壮観だが、なんだかめざしか干物みたいな気分である。旅のはじめの方は大きい神社に行くという定番になりつつある行動に、今回の旅の無事、そして良い旅になることを祈る。神なんて信じない俺がね。
 しばらく近江商人の町並みを見物し、旧家などを見てまわる。少し作ったような感じは無きにしもあらずという感じはするが、いわゆる貧乏くさかったりする古い家ではなく、近江商人が豊かだったのが分かるような感じの家で、ある意味では近代的だったりそういう雰囲気すらある。遊び心を少し感じる旧家だった。
 ということで、今夜の宿というかキャンプだの買い出しだの風呂に行くため、近江八幡の駅前へと向かう。八幡の観光地から3km程度離れている。駅前で情報収集してみると、風呂は八幡堀の近くにあるようなので、またそっちへと戻りながら寝床にする公園を探してみる。途中によさげな場所は何カ所か見つけた。一応、キープってことで。八幡堀の近くの銭湯で2日ぶりの風呂に入ってサッパリとする。風呂から上がったら公園にテントを張りに行く。さっさと隅にテントを張ったら町内会長らしき人が「火は使わないように」と注意しに来た。今夜は自炊しないので、問題ない。
 チャリステレオが不調だがだましだまし走っているのだが、ちょっとの衝撃で止まるわリモコンは水吸ってて ほとんど動かないわで 電池残量表示も満充電だろうと0のままだわで我慢できず、駅前へと買いにでかける。荷物は全てテントにぶちこんで走り出す。軽い自転車が心地よい。近江八幡自体は大きな街ではないのだが、何とか駅の向こうに、みどり電機を見つけたので、そこで買ってしまう。最新型のPanasonicのMP3 CDプレイヤーだ。これで快適なツーリングを取り戻す。しかし同時に買った電池からケータイを充電するキットが、痛いことにauのW32Tに未対応ということで役に立たないことに。1日で完全に電池が切れてしまった。
 帰り道のそば屋で夕食を食いテントに戻ろうとしたら雨が降ってきた。早くもパーフェクトの夢は潰えた。ボツボツと音のするテントの中で憂鬱な気持ちで眠りについた。

八幡堀 渋くて良い感じ 水郷の街


近江八幡の街並み



   出発(滋賀県大津市)から 69.77 km

2日目 近江八幡→五個荘→彦根→木之本 80.99km
2006/04/30
 暑いほどの日差しの中でテントを畳む。昨日の雨が続かなくてよかった。出かけてすぐのコンビニのトイレで電源を使いながらBlogとメールをチェックし、au W32T対応の充電器を検索し、コンビニで朝飯と充電器を買って出発。順調に充電しているようで安心だ。
 最後までルート選びに迷ったが、湖沿いは少し浮気して内陸を走ることにした。そして出発早々の寄り道である。幻の城といわれている安土城址に立ち寄る。歴史の教科書を見て一発で惚れた城だけに想いはひとしおである。しかし、そこへ上る石段のきつさもひとしおである。一段一段の高さも高い。息あがりながら汗かきながら上っていく。700段もある石段というか山を登っていくが、今日は天気は良いものの空気は澄んでいなく霞んでいるので眺めはイマイチである。秀吉の別邸や信長の墓など、歴史に弱い俺ですら名前を知っているような武将の跡地がある。そんなつらい山を登り切ると、城の石垣跡にたどりついた。もちろん城自体は跡形もないが、こんな山の上に 豪華絢爛な城が建っていて、あっという間に焼き落とされたと思うと複雑な心境でもある。歴史ロマンを感じたあとはヒザが大爆笑する下りである。自転車の下りは最高だが歩きの下りは筋肉を使うので消耗するだけである。予想通りヒザが大爆笑したまま下りきってきた。
 自転車に乗って次は五個荘の近江商人の町並みを目指して走る。平地で無風だが真夏のような日差しと暑さに炙られながら、走る。相変わらずキレのない体、気温、日差し、体を流れる汗に、どんどん消耗する。古い町並みをということで内陸に浮気したことを少しだけ後悔してしまう。安土城から10kmあまりを走り、五個荘に着いた。しかし古い町並みはどこにあるのかイマイチよく分からない。ツーリングマップの縮尺の大きいざっぱな地図を頼りに探してみる。
 諦めかけたその時に それらしきものを発見。立派な寺とか家が並ぶ。涼しげな風情のある水路に鯉も泳ぐ。町並みの雰囲気と規模でいうと昨日の近江八幡より大きくてやらせチックでなく本格的な感じである。小京都って感じの町並みに寄ってみて良かった。そう思える内容であった。
 昼食をとれそうな店がなかったので、引き続き内陸を走って彦根を目指す。国道8号線で車から風をもらいながら暑さにもだえながらも快調に飛ばしていく。楽しい走りとはかけはなれたルートだが、距離を稼ぐには車の流れも多く道の大きい幹線国道はちょうどいい。

安土城跡への石段


安土城 天守閣跡


五個荘の街並み

 彦根駅の観光案内所で地元の地図と鮒寿司の情報を集める。陽気なおばさんに店を教えてもらいオススメ観光ルートを案内してもらって出発。気さくな観光案内所というのはありがたいものである。まずは城下町へ向かう。城の南側の通りに古い町並みを再現した「キャッスルロード」と呼ばれている通りがある。ここで土産も昼飯も手に入りそうな雰囲気である。
 そして、すぐに店は見つかった。鮒寿司を扱いつつ奥で食事もできる「きむら」に立ち寄る。メニューに「鮒寿司」というのはなかったので、店頭の鮒寿司を買って皿に盛りつけてもらう。酒のつまみのような雰囲気の鮒寿司だけでは飯にならないので、鮎の塩焼き定食も一緒に頼む。気になる鮒寿司の味だが、言われているほど臭いとは俺は思わなかった。まだ伊豆大島で食べたムロアジのくさやの方がインパクトは大きい。少し酸味のある身とホロホロと崩れる卵の部分。ただ、発酵しきった御飯の部分は正直 そのまま食べるのはつらい。やはり日本酒か何かをキュッとやりながら頂きたい逸品である。鮒の部分は俺は好きだ。  店を出て城下町を城の方へと動き出したら、ふと目にとまったお茶屋さん 政所園があった。お茶に目がとまったわけではない。店の表の「源三郎ソフトクリーム」の幟とほおばっている抹茶ソフトクリームが気になったのだ。次の瞬間 そこに自転車を止めている俺が居た。俺の美食に対する嗅覚が働いたような感じである。1個400円と少し高いが、色が濃厚で美味しそうな抹茶ソフトである。顔を近づけるだけでお茶の香りがぷんぷんする。そして濃厚な抹茶の苦みと甘味が広がる。間違いなく日本一美味しい抹茶ソフトクリームである。さすがお茶の老舗の抹茶ソフトである。 絶好調な2日目の観光である。次は彦根城に入る。大手門の前に自転車を置いて歩いていく。安土城ほどの山ではなかったので、少し安心しながら上を目指していく。黒い天守閣と金の飾りが鮮やかである。国宝に指定されるほど古い城なのだが、鮮やかさを感じてしまう。天守閣を後ろに見ながら山を下りると、庭園がある。渋いわびさびと明るさが同居した感じの、風情のある庭園がいい。庭の向こうには立派な天守閣が見える。こんな取り合わせのいい庭園を楽しんだら自転車へと戻る。

琵琶湖名産 鮒寿司


彦根 政所園 源三郎ソフト(抹茶)


彦根城 天守閣

 木之本まで40km近く残して14:30。今夜の宿を木之本にするか、少し手前の道の駅付近でゲリラキャンプするか迷いながら琵琶湖沿いの道へ出発。内陸より開放感があって気持ちのいい景色である。やっぱり湖沿いは良い。琵琶湖の南側を眺めると水平線が見えるほどの広さを感じる。淡々と走っていると長浜あたりで雨が降ってきた。すぐそばに見えた公園のあずまやに避難してカッパを着る。BBQをしていた家族と一緒に雨宿りをして、あまり会話も盛り上がらずに出発。せっかくなので旧長浜駅を見て、長浜城を軽く見たところで今日3つ目の城だ。雨なのであまり楽しむ余裕もなく木之本を目指していく。長浜市を抜けたあたりで雨がやんだ。雨雲の間から差す太陽光線と薄暗い湖面を眺めながら車の少ない湖沿いの道を進んでいく。左に湿原と湖、ひたすら走っていくという雰囲気である。
 宿泊候補地にもしていた道の駅 湖北みずどりステーションに到着。すぐそこに尾上温泉というのもあるようだが日帰り湯はなさそうだ。少し休憩して湖を眺めたら出発。ここは木之本へ行くしかないようだ。明日の距離も長いし ここに泊まるメリットは無さそうである。そろそろ疲れてきた体にムチを打って残り10km弱の木之本を目指す。

今日 3つ目の城、長浜城

 満身創痍という雰囲気で湖から山を一つ隔てた道を走り、暗くなりかけた木之本に到着。11年前に静岡→山陰→福岡の旅で通った懐かしい木之本の街である。駅前もあまり変化がない。せいぜいコンビニが増えたぐらいのもんだろう。確か駅の前に温泉があったはずだ。勘だけを頼りに探したらあっさりと見つかる。開店時間だけを確認して次は寝床を探す。木之本で11年前に泊まった時は雪が降り始めていて日も沈みかけていたので、小学校の体育館の軒先に泊まった。忘れもしない大雪の初ソロキャンプである。11年経った今なら経験を積んでほどよい寝床が見つかるか。全体的に坂になっている木之本の街を東へと上がっていく。スプリンクラーのある石畳の木之本稲荷の参道を上っていく。あんなに疲れていたのが信じられないほど走りは力強い。いいことだ。結局、学校の近くと言うことにはなってしまったが、公民館の裏の広場を見つけた。この街でゲリラキャンプするには、これが精一杯である。
 寝床は寝る寸前にテントを張ることにして、風呂と飯に出かける。少し気分に余裕があるので木之本地蔵尊に寄ってみる。まあ普通の大きい神社である。旅の無事を祈って、地蔵尊の前の商店で菊水飴を買う。木之本の少し山奥の余呉で作られている麦芽と砂糖だけで作られる水飴だ。これからの糖分補給には自然な甘さがいいかもしれない。駅前に下って風呂に入る。岩風呂で疲れを洗い流す。駅前の小さな焼肉屋で夕食とビールを頂いて、また寝床へと戻る。街灯で走行記録を書いて、Blogのチェックをしてテントを張った。公民館は遅くまでGWの祭か何かの打ち合わせをしているようで不夜城という感じであった。追い出されないことだけを願いながら眠る。

琵琶湖沿いのサイクリングロード


木之本地蔵尊



   出発(滋賀県大津市)から 150.76 km

3日目 木之本→つづら尾→今津→大津 113.49km
2006/05/01
 今日は距離も長く坂もある。ある意味で勝負日でもある。しかも明日は有馬温泉にたどり着かないと宿を予約しているのがフイになってしまう。そういう現実的な事情もあり気合いも入っているので早く目が覚めた。昨夜は遅くまで明かりのついていた公民館は人の居る気配もない。追い出されることもなく朝を迎えて一安心である。
 ということで、昨日の水飴をおめざに食べてみる。水飴の食べ方なんて心得てないので苦戦する。へらに巻き付けるようにして、口に運ぶ。麦芽の香りと甘すぎない甘さがさっと口に溶ける。決してしつこくない。これが水飴というものなのかと少し感動。荷物の中に収めてテントを畳んで出発。

滋賀県 余呉の名産 菊水飴

  国道8号沿いのコンビニで朝食を食べてから、また琵琶湖の北岸へと向かう。入り江のような地形になった琵琶湖は静かな湖面をたたえる。微妙に霞みがかった湖面と山並みを眺めながら、車の少ない湖沿いの道を進んでいく。ひたすら広さを感じていた昨日までの琵琶湖と違い複雑な地形と静かな湖面との取り合わせだ。途中から、つづら尾の方へと上る道があるはずだ。湖沿いの道が終わり、国道8号線に再合流して離れると上り坂が始まった。結構な傾斜の坂が続いている。あっという間に100m上ってしまった感じで琵琶湖を見下ろすような様相になってきた。途中に展望台なんかもあるが、展望台より道沿いの方が眺めがいい。容赦なく止まって写真を撮る。これが自転車の特権だろう。散ったばかりの遅咲きの桜並木の中を気持ちよく上っていく。体のキレの無さ以上に楽しさが来る。 そんな坂の途中で休憩していると、茶色の体の動物がガサガサと右側の山から下りてきた。ニホンザルだ。しかも群れだ。前の方にもいっぱいいる。斜面の木の上から注意深く俺を見つめている猿もいれば、堂々と道路を渡っている猿もいる。親子なんてのもいる。とどまっていると囲まれてしまいそうなので、出発。猿たちに見送られながら上っていく。つづら尾の山の尾根に上りきると右にも左にも湖が見えるようになってきた。琵琶湖に突き出た半島なので両方とも琵琶湖だ。北の端の方では琵琶湖も水が澄んでいるようだ。真っ青な湖面を眺めながら楽しく走っていく。
 つづら尾の展望台に到着。まず琵琶湖の最大の山場は越えた。さっき追い抜かれたサイクリストと話す。琵琶湖一周しているロードや空荷のMTBやクロスバイクを何台も見かける。サイクリストのメッカになりつつあるようだ。その関西のサイクリスト達の気持ちはよく分かる。こんな楽しいコースが200kmも続いていれば走りたくもなるだろう。

琵琶湖の北の方
静かな湖面に半島が映る


つづら尾への道から眺める琵琶湖

 登った分を楽しまずに居られない下りだ。前を走るバイクをぶち抜くぐらいの走りで下りきる。湖面に向かって落ちていくような下りが楽しい。静かで広い湖面を眺めながら、まったりと走っていく。店も自販機も家もない湖沿いの道を楽しむ。大自然の湖という感じである。残念ながら散ってしまった桜並木に桜の花を想像しながら海津大崎へと向かっていく。
 海津大崎にはかろうじて牡丹桜が残っていた。ソメイヨシノはさすがに散ってしまっているが、牡丹桜はピークを迎えていた。青い湖、青い空、ピンクの花のコントラストが鮮やかだ。そんな春を満喫したら、そろそろお腹も空いてきた。マキノの湖沿いの浜は今度は大自然というより海水浴場のような雰囲気のリゾート地である。
 そんな湖沿いを走っていると、ようやく昼飯を食えそうな店を見つけた。やぶれかぶれな個性的なたたずまいの「望雁(もうがん)」に寄ってみる。食事らしい食事はビーフカレーしかないようなので、それを頼む。(後で調べて分かったのだが)近江牛を使った自家製ビーフカレー、とろりとして肉のダシが出ていて 美味しいカレーだ。どうもこの辺では有名なカレー屋だったようだ。自家製のアイスコーヒーも美味しく疲れを癒やされる。
 再び出かけると、猛暑と向かい風となってきた。国道161号を走れば多少はショートカットなどもできるが、あえて琵琶湖沿いギリギリばかりをねらって走る。湖岸は湿原になっていて花が咲いていて、青い空に照らされた湖面は向かい風に波立っている。南へ走れば走るほど気温が上がって風が強くなっているような気にさえさせられる。

琵琶湖 海津大崎 ボタン桜


マキノ 望雁(もーがん)のカレー

 道の駅 しんあさひ風車村に立ち寄るも見所なく、すぐに出る。大きい風車やちょっとした花畑はあるものの強風と猛暑で何もする気になれなかったというのが正直なところだろうか。通りすがりのサイクリストと追い越し追い越されの走りを続けながら、向かい風にもだえ苦しむ。風が強くなればなるほど経験の差か俺の方が優位に進み始めてきた。どう見ても民間人いや一般人の人も走っている。本当に団塊Jr.世代を中心に自転車がはやっているのを実感する。
 白髭神社で向かい風に耐えきれず休憩。自転車を立てておくのも難しいほど風は強い。車がバンバン通る国道161号線を渡って湖の中にそびえ立つ鳥居の写真を撮る。鳥居の向こうは白波が立つほど風が強い。体にムチを入れるかのように白髭神社を出発。ちなみに神社の名前だが、俺の髭に白髪が交じり始めたこととは関係ない。ここからは国道沿いなので車から多少は風をもらいながら向かい風に耐える。今日は距離も長い上に、300m程度の峠も越えているので、向かい風は勘弁して欲しかった。
 しかも国道161号線はアップダウンも結構多い。平らな湖面より少し西を走るのだが、ようしゃなく上り下りを繰り返している。車から風をもらう取り分よりアップダウンの損失の方が多いような気がしてくる。そこで意を決して湖よりのマイナールートへと移る。すると車の居ない道の容赦ない向かい風が俺に襲いかかる。しかも途中で道が切れてまた国道に引き戻されたりと不完全燃焼が続く。とにかく走りははかどらない。向かい風にもアップダウンにも苦しめられ、エスケープは裏目に出てしまった。体力もよけいに消耗しただけであった。時間も徐々におしてきたが、残りの距離はいっこうに減らない。

琵琶湖 西岸
湿原と道と琵琶湖が広がる


白髭神社 プチ厳島神社@琵琶湖

 琵琶湖大橋まであと5km程度のところでアクシデントが発生。老人がケガをして道ばたでうずくまっている。30代ぐらいの夫婦が介抱しているようだが、どうも人足が必要そうだ。もちろんファーストエイドも持っているので手当をする。夫婦に老人の家を探してもらいつつ後続の車を反対車線へと誘導する。何とか老人の家族の人が来てくれた。老人がこの家だと言った家は違っていて、その家の人が正しい家の人を呼んできてくれた。簡単に言えば痴呆である。車通りも多く危ない道を一人で出歩いて転倒してしまったようである。流れの多い国道の車を1度止めて渡り家へと送っていく。何とか事なきを得た。
 日没までに回りきれるかあやしくなるほど時間に追われ始めてきた。もちろん体の疲労もピークに達してきた。今日も満身創痍という状態である。そして17:30にして、浜大津まで15kmを残す苦境。一度、コンビニで休憩をして走り出す。もう元気はない。とぼとぼとペダルを漕いでいく。向かい風も容赦ない。車は多いが道は狭い。緊張感ある走りが続いていく。ようやく湖の向こうに大津の街が見えてきた。しかし、まだまだ遠いようにしか俺には見えない。
 18:30頃、やっと浜大津に着いた。そして、最後の力を振り絞って琵琶湖一周のスタート地点である、なぎさ公園へと向かう。琵琶湖に突き出た城郭のようなものが見えてきた。そして、琵琶湖一周を完走! 拳を突き上げて喜びをあらわにする。今までの実績からして240km程度の琵琶湖一周ルートなどたいしたことはないのだが、最後の110kmを向かい風にするという試練を与えられてしまったが、何とか耐え抜いた。その喜びは大きい。やはり自転車というのは素晴らしい。しばらく夕暮れの湖で黄昏れる。
 気を取り直して、野暮用をこなしに出かける。浜大津駅の交番へ向かったが出払っている。ふと年明けに買ったケータイにEZNAVIというのが付いてることを思い出した。コインランドリーも銭湯も探せそうだ。しかし電池は残りわずか。探してる最中に電池は切れた。しかも見つけた1軒の銭湯は定休日。もう1軒探さなければならないがケータイの電池は切れたまま。単3オキシライド電池を買って電源投入して探してみる。

琵琶湖 なぎさ公園 夕暮れ
琵琶湖1周のスタート&ゴール地点

 無事、開いてる銭湯を見つけて風呂に入る。さっさと上がって、コインランドリーに洗濯物を入れてコインランドリーの前に自転車を置いて飲みに出かける。
 琵琶湖一周にとりあえず乾杯だ。ものすごく長くてきついルートに感じた。しかし、湖沿いの楽しさ、歴史を感じる町並み、大自然いろんなものを満喫できた。その一つ一つの思い出が濃い。これが自転車の醍醐味だろう。ワカサギや赤こんにゃくなど名物をつまみに滋賀県の地酒を飲む。
 コインランドリーで洗濯物を乾かして、初日に泊まったなぎさ公園に行きテントを張って眠りにつく。


   出発(滋賀県大津市)から 264.25 km

4日目 大津→京都→宝塚→有馬温泉 80.48km
2006/05/02
 熱かった琵琶湖からステージを六甲山へと移す。今日は移動日だから景色とか天気はあまり求めない。と思っていると朝から雨である。憂鬱だなぁとテントにこもっていると老人が集まり始めた。パークゴルフ大会が俺のテントの周りで繰り広げられている。慌てて出てみると、そこは大勢のお年寄りでごった返していた。俺のテントも障害物としてコースの途中になっているのか 一応さけられているのか分からないが、みんながパコーンとボールを打ってるのと俺のテントはすぐそばだ。そこは、俺のキャラなのか 妙に話しかけられる。どこから走っててこれからどこまで走るのかなどなど。嬉しいやら恥ずかしいやら困ったやらでテントを畳んで冷静に準備をして、みんなに見送られながら出発。相変わらず、お年寄りウケはいい俺であった。何にせよ、一般人に可愛がられるサイクルツーリストでありたいと思っているので、いいことだ。
 朝っぱらから、逢坂の関のきつい坂を迎える。昨日の満身創痍状態もあって疲れはどっぷりと残っている。逢坂は大学時代の日本縦断でも結構苦戦した坂だったが、今年も苦戦する。何とか越えて下っていくと京都府に突入。さらば滋賀県。昨日とうってかわって今朝は寒い。下り坂で本当に体が冷えてしまう。持ってきていたウィンドブレーカーを着て走る。
 そして坂はもう1発きた。東山のトンネルだ。山科から小さい峠のような形で真っ直ぐと登っていく。昨日までの疲れもあって足はロクに動かない。何とか峠を越えてトンネルへ突入。国道1号線なので交通量も排ガスもハンパじゃない。息苦しく車の熱で暑苦しいトンネルを通り東山の方へと下っていく。車道で車の流れに乗って走っていく。右に清水寺を見ながら勢いよく京都市内へと突入。体に火が付かないのでVAAMを探すことコンビニ4軒 すっかり疲れてしまう。VAAMが入ったら体に火が付いたのか走りがのってきた。東寺の五重の塔を門の外から軽く見て、国道171号線へと入っていく。

俺の寝床がパークゴルフ場に…。


京都 東寺 五重塔
一応京都らしく。

 ここでアクシデント発生。歩道に倒れてるおじさんを見つけてしまった。貧血でよろめいて倒れてしまったようだ。ケガはしていないし大丈夫だというので、そのまま見送ってまた走り出す。ケガとか事故とか2日連続というのも ちょっとイヤだ。次は俺の番とならないように気をつけよう。
 国道171号といえば日本縦断の時に走ったルートで、かなり絶好調にグイグイ走っていった覚えがある。滋賀県の草津で子供の自損を俺のせいにされた怒りに任せて力強く走っていたものだ。しかし、11年という年月は俺を衰えさせたか、そんな元気はなく微妙に登ったり下ったりする道に苦戦する。車から風をもらって平地は好調なのだが、のってくれば信号に引っかかる各駅停車状態が続く。高槻の回転寿司 蔵 で昼食。一応、無添加で105円というのが売りのようである。味も105円の割にはそこそこいい。そして食べた後の皿は席の前の穴に放り込んで自動的にカウントされるシステムである。席が皿でいっぱいにならないのがいい。
 池田まで、またある意味つまらないルートを走って、ここからは慎重にルートを選んで国道176号のバイパスをねらう。少しでも距離が少ないルートで車が多くて風をもらえるところを選んでいきたい。ダイハツの前を抜けて中国道に沿う高速道路のようなバイパスを走っていく。一応、自動車専用道ではないようだが慎重に力強く走る。あっという間に宝塚にたどり着いた。宝塚歌劇団で有名な劇場の前も今回は華麗にスルーして、有馬温泉を目指す。有馬温泉の坂の手前 おそらく最後と思われるコンビニで休憩し、1.5LペットボトルのVOLVICを買って、最後のヒルクライムに備える。ここから400m程度上って標高500mの有馬温泉に行き着くようだ。結構ハードな坂が予想される。さて行こうかと出てすぐに、またもアクシデント発生。結構きれいな日産エルグランド(インテリジェントキー付)にのった奥さんが俺の前を走る自転車を轢いてしまった。交差点で止まりかけだったので大事には至らなかったが、すりむいているようなので俺の絆創膏を出そうとしたら、ドアポケットから出てきて貼った。この流れ そろそろ何とかしてくれ。
 宝塚から有馬温泉への道は予想通りハードな上り坂だ。昨日みたいにクソ暑いわけではないので、多少は何とかなりそうだが、筋肉疲労だけはどうにもならない。何度も足を地に着きながら、徐々に上っていく。上れども上れども終わりが見えてこない。結構な急な坂とカーブが続いていくが、足にムチを打つようにして上っていく。じわーっと上がってくる乳酸系の疲れ。1日の最後に持ってくるのはつらいものがある。朝の雨がうそのように晴れてきたし、明日の六甲山ヒルクライムまで天気がもてば良いのだが。
 すっかり疲れ切った状態で、明日の六甲山への分岐にたどり着く。上りはじめの直前にセブンイレブンがある絶好のロケーションだ。そのままあと3kmあまりの有馬温泉を目指して走っていく。もうそんなに上らないかと思っていたら、まだまだ上っている。こんなことならセブンイレブンでちゃんと休憩すればよかったと後悔しながら最後の力をふりしぼって上っていく。有馬温泉の入り口が見えてきた。
 芦有道路の入り口まで来たところで、EZNAVIで予約していたホテル メープル有馬 の場所を調べる。どうやら近いようで全体的には有馬温泉街の坂の上の方になるようだ。通り過ぎないように慎重に下っていく。そして左にやばいぐらいきれいなホテルが見えてきた。俺みたいな人種が泊まる場所ではないのは分かるが ここだ。屋内駐車場に自転車を預けて荷物を全て台車に積んで部屋へとあげる。部屋に入ったらすぐに風呂へ向かう。露天風呂がないのだけは残念なところだが、有馬温泉の湯に癒やされる。
 キレイで広い宿をいったん置いて夕飯を食べに出かける。有馬温泉の温泉街を歩いて下っていく。ほんと自転車で出かけなくて良かったと思うほどの坂を下る。少し近代的な雰囲気の温泉街で、俺のすきなひなびた感じではない。大きいホテルが建ち並ぶ。下りきるとお土産屋さんで蒸したての温泉まんじゅうと、名物の炭酸煎餅を売っていた。その場で温泉まんじゅうを楽しむ。熱々なのがいい。あとあとの糖分補給のために炭酸煎餅も買い込む。試食ではプレーンと生姜クリームのがツボにはまりました。美味い!ほのかに広がる刺激的な香りがいいですね。そして香ばしい。
 有馬温泉口の駅前の居酒屋で夕食とビールを飲んで、また温泉街をホテルへと戻っていく。歩いて下ってきた通りの一本山側に渋い感じの路地があったので、そこを上っていく。
 ホテルで久々にケータイやデジカメを充電してテレビを見ながら眠りについた。

有馬温泉へのヒルクライム…。


有馬温泉の温泉まんじゅう。
熱々でうまー。


有馬温泉街



   出発(滋賀県大津市)から 344.73 km

5日目 有馬温泉→六甲山頂→神戸→明石 66.41km
2006/05/03
 気持ちよく目が覚めた。ここまで毎日シュラフだっただけに、やっぱり良いホテルだと寝心地が違う。ちょっと豪華な朝ご飯を食べる。鮭の照り焼きに梅干しに温泉卵に煮物にみそ汁と普段の俺ではとてもじゃないが作れないような、いや作ってるうちに昼になりそうなメニューがずらっと並ぶ。御飯もおかわりしまくって、しっかり栄養をとる。今日はこの旅最大の山場といえる六甲山のヒルクライムだ。身軽さはハナっから無いのでエネルギー勝負に出るという作戦だ。
 部屋に戻って荷物をまとめて出発。フロントで台車を借りて自転車へと運び出す。駐車場でパッキングしているとロードレースとかにも参戦してる夫婦から励まされ、超が付くほどの絶好天の中、出発。暑すぎず寒すぎず天気も良い。最高のヒルクライム日和である。朝っぱらから昨日の夕方に苦しめられたアップダウンを耐えていく。まだまだ先は長い。
 分岐のところのセブンイレブンで水とチョコを買ってヒルクライムを本格的に開始。力強く上っていきたいところだが、容赦ない傾斜が俺に襲いかかる。ゆうに10%を越える坂がどこまでも続く。体のキレが史上最低の今年の俺には酷な道である。壁のような坂を耐えながら何度も足を地に着きながらも上っていく。今日のルートは有馬温泉から南へ進んで峠を1本越えて南の斜面に入り、そこから西へ動きながら山頂を目指す形である。まず1本目の峠にさんざん苦しめられている俺。まだヒルクライムは始まってもいないのに早くもヘトヘトである。

メープル有馬 朝食

 これでもう十分だと思うほどの峠を越えて、道は容赦ない傾斜とカーブで下り始めた。これから上るのに下ってしまう自虐的な道にへこむ。もったいねぇから下りたくない。そんな気分の下り坂だ。しかし、眼下には大阪方面の大都会の絶景が広がっている。大阪湾も一望できる。しばらく見入ってしまう。今日はこんな景色がどこまでも続くのだろうか。そんな期待感だけは充分に感じられる風景である。そして吹っ切るように元気よく下っていく。  結構、楽しく速く下ったあとで分岐がきた。分岐を左に曲がれば下って神戸へ行ける。右に曲がればまだ地獄の上り坂を越えて、行ける先はまた神戸。今回ばかりは気持ちが少し揺れたが、心を鬼にして右に行く。俺のポリシーは「諦めて引き返さない」「押して歩かない」だ。ここで左に行くと、この旅は一生の悔いになりそうだ。一度、右へ曲げて上り始めた自転車は引き返すことは許されない。それが俺の選んだ道だ。この分岐からは親子3人のハイカーをちぎっては息が上がって足が止まった間に追いつかれというのの繰り返しで標高を稼いでいく。荷物と体が重い上、脚力もさほどないので上がっていかない。
 そんな坂でも新緑の間を流れる風と照りつける太陽、真っ青な抜けるような空が気持ち良い。きっとこれを上りきると、さっきの景色なんて比較にならないような絶景が広がっているだろう。もちろん坂を越える達成感も味わえるだろう。きつい苦しい坂ではあるものの、止まっては走って止まっては走ってのペースと気持ちは安定してきた。芦有ドライブウェイの宝殿ゲートの前で本格的に休憩。親子ハイカーが本格休憩に入ろうとしたので俺もそれにつられて休んでみたという感じである。  ここでリフレッシュした俺は、また力強く上っていく。ここからはカーブを曲がるたびに右にも左にも絶景が広がる尾根づたいの道だ。南側は神戸の絶景、東側は大阪の絶景、北側は宝塚や有馬や三田を見下ろせる。何で真っ昼間に来てるんだ俺というツッコミは別にしても都会を見下ろす眺めは素晴らしい。尾根づたいということは、そろそろ山頂も近いはずだ。見下ろした地上の感触からして標高700m〜800mぐらいは上がったように見える。もう山頂も近い。ちぎっては追いつかれのペースだった親子を完全に引き離した。俺のペースは着実に上がってきた。
 そして最後はゆるい坂とカーブを曲がって、突如現れたトンネルを抜けると山頂の茶屋が見えてきた。いよいよヒルクライムも終わりだ。渾身のガッツポーズで茶屋の前にたどり着いた。最大の山場を上りきった満足感と達成感。見下ろす下界の絶景、これこそヒルクライムの醍醐味である。ほどよい疲れの中、喜びをかみしめた。まだまだやれる。絶不調な体ながらも、よくここまで走れたものだ。周りのハイカーやロードで上ってきた人たちからも祝福の声をもらう。
 茶屋で昼飯を食いながら、午後の作戦を考える。午前中に登りきれたペースもなかなか良い。まずは、茶屋から歩いてすぐの山頂を目指そう。そして、下りながら牧場を見て神戸に下ったら、明石へ向かう。そんな感じで考えてみる。時間も余裕はある。体力もまだ残っている。さっきのハイカー親子も上ってきた。お互いに労をねぎらい、俺は乾杯用のジュースを持って山の上を目指す。ここからは15%をゆうに越えるパワーリフティングのような上り方をしないと上れない坂が続く。距離は短いので最後のご愛敬だ。全身の力を振り絞ってペダルに注ぎ込む。踏み足に引き足に存分に力をかけて上る。しかし、すぐに力尽きる。止まってはまた漕いで上る。
 そんな作業を繰り返していると、ふっと背中を押される感触を得た。さっきとは別にハイカーの家族全員が俺の背中を押してくれている。「思わず押してあげたくなったから」と。たぶん足を止めたら押してもらっても上がれないと思うが、全員の力を結集して上がっていく。少し楽と言うか嬉しい気持ちだ。そして全員の力で六甲山の山頂を制覇! 標高931mを上りきった。心からありがとう。

六甲山へと上る道。
新緑が気持ちいい


結構な急坂を上る六甲山


六甲山山頂から 大阪方面の眺め


六甲山山頂。標高 931m

 山頂からの眺めはまさにパノラマだった。向こうは和歌山まで、西は明石海峡まで大阪湾と大阪平野の眺めが広がる。ジュースを開けてフレームのトップチューブに乾杯。上りきった喜びと眺めをかみしめる。しばらく眺めた後で下っていく。フルブレーキをかけても止まれないほどの急な下り坂。たくさんのハイカーを間違って轢いてしまうような事があってはならない。握力を全てつぎ込んでブレーキをかけて、ゆっくりと下る。ケツを下げて前転しないように気をつけながら下る。下りまで苦労するような坂だったのだ。
 茶屋を出て、しばらく尾根づたいの緩いアップダウンを楽しみながら、下界の景色を楽しみながら走っていく。そして突如、本気の下りが始まった。上りを苦しんだ分、下りを満喫したい。上半身でバランスを取りながら本気で下っていく。遅いミニバンは道を空けてくれてしまうほどの攻めをしながら下っていく。ただ、時々ハイカーが歩いていて、たまに横断してるのもいるのでブラインドコーナーは本気が出せない。前が見える範囲だけは本気で攻める。右から左へとGがかかってグイグイと曲がる時の快感。限界に近いスピードでカーブに進入し力強くブレーキをかけて倒してコーナーを加速しながら抜ける。熱いダウンヒルである。
 たまに渋滞していてふんづまってしまうところだけは不満が残るがおおむね空いているところでは楽しめたのでよかった。そして下りすぎて牧場の入り口は通り過ぎた。もういいやとばかり、どんどん下っていく。必死で上った坂を惜しげもなくリセットしていく自虐的な快感を味わう。そして楽しい楽しい下りも終わりで国道428号線に合流。単調な道が続くのかと思ったら、これもかなり熱い下りが続く。車道の真ん中で車の流れに完全について行きながら上半身で体重移動をしながらコーナーをこなしていく。坂が終わったのは神戸の市街地に入ったところだった。完全に下りを満喫してしまった。
 汗で汚れてしまったサングラスをコンビニで洗って、西日の中の西移動に備える。今日はみどりの日か何かのせいで街宣車が多くてうるさい。そんな街宣車と距離を置くためにも休憩を入れたいところだ。国道28号線を西へと移動する。ここからは平らで真っ直ぐで車が多く西の太陽に向かって走る正直いえば退屈でつらいルートである。さっきまでの刺激的なルートとは違う感じである。
 国道2号線に合流して日本縦断で昔走ったルートを懐かしみながら西へ移動する。須磨あたりから大阪湾を左に見ながら走る。そして前には大きな明石海峡大橋がそびえ立つ。西日にシルエットぽくなっている明石海峡大橋と明日から走る対岸の淡路島に思いを馳せる。渋滞を縫うように走り、明石海峡大橋手前の公園で休憩。というより落ち着いて写真を撮って眺めたい。夕方の静かな海と西日と明石海峡大橋の組み合わせが何とも言えず良い風情を醸し出している。いよいよ明石海峡大橋の下をくぐって明石へ向かうすぐ手前の舞子で、もっと良さそうな写真が撮れそうだったので、ここでまた停車。写真を撮って眺めて黄昏れて慌ただしく出て行く。いい加減に明石にたどり着かないとやばい。
 少し飛ばし気味に国道2号線を西へ行く。ふと左側にマニアックな自転車屋さんが見つかった。ちょうどチェーンオイルが切れてキュラキュラと音を立て始めていたので注したかった。スプレー式ではないチェーンオイルがなかったので、ちょうどいいところで買い込めた。そして道路には東経135度の標識と明石の日本標準時を表す天文館が。日本縦断で来たときは天文台の時計は5:46で止まっていた。そう、阪神大震災による破損の影響だ。今は時計は動いていて5:51を差している。これで写真を撮って偶然5:46とならなくてよかったと少し思いながら後にする。すると俺と同じく淡路島に渡ろうとしている学生サイクリストに追いついた。いろいろと話しながら明石の駅を目指す。
 明石の駅へと曲がる俺、フェリーターミナルへと曲がる学生は別れた。俺は駅に行き今日の宿と風呂とコインランドリーの調査だ。駅前ではいい歳したサイクリストが2人居た。思わず話し込みつつ俺と同じく明石に泊まろうとしている人の相談に乗ってやりつつ俺の寝床も検討する。

夕暮れの明石海峡大橋@舞子公園


明石天文台 日本標準時

 俺は軽く明石公園を視察して、夜中のゲリラキャンプなら何とかなるかな と思いながら、宿としてキープ。時間が結構遅いので、これ以上探す気にはなれない。銭湯で風呂に入り、コインランドリーに洗濯物をつっこんで夕食を食いに行く。どこに行っても満員か閉店。明石の夜は早い。そして観光シーズンかつ帰省シーズンで混雑している。何とか路地裏にアットホームな居酒屋を見つけた。若はサイクリストだったので話は盛り上がってしまった。酒も美味い。そして次々とタコ料理が出てくる。明石のタコは本当にうまい。ぷりぷりしていて、味も濃い。歯ごたえは鮮やかだが、柔らかい。筋張ったタコではない。タコというのがこんなに美味いものだと思ったのは初めてだった。そして締めは、鯛飯だ。濃厚なダシと柔らかい身を満喫して食べ尽くす。
 すっかり心もお腹もいっぱいになったが、時間は結構遅い。コインランドリーの洗濯物を乾燥する時間がなくなってしまった。一度 持って帰って明日の朝にでも乾燥機かければいいかということで、そのまま持って行き、明石公園の隅にテントを張って眠りについた。


   出発(滋賀県大津市)から 411.14 km

6日目 明石−たこフェリー→淡路島・岩屋
2006/05/04 明石→岩屋→洲本 40.52km
 コインランドリーの開店は9時なので、それまでは多少のんびりと片づけていた。しかし、予想通りといえば予想通り 係員に注意されて撤収。最終日も明石に来るが、さすがに明石城である明石公園はまずいので、ちゃんとホテルを取るか他の公園にしよう。そう決めてコインランドリーへと出かけた。乾燥機をかけながら待ち、乾燥が終わった洗濯物を畳んでフェリーターミナルへ向かう。
 港には、ものすごい数の車とバイクが。明石海峡大橋よりフェリーの方が安いからか人でごった返している。連休というものをナメていた自分に後悔。もともと今日はガツガツ走って鳴門のすぐ手前まえで行こうと思っていたので気持ちに焦りが出てきた。とは言っても、フェリー3本分の1時間半待ち。午前中に渡れるか渡れないか そんな勝負である。サイクルステレオでミスチルを流しながら待ち続ける。もはやこれもご愛敬だ。3本待ちかと思いきや、意外と思い切ってバイク達を載せていく。そして2本目は俺の5台前で終わった…かと思ったが、番号札を見せて「自転車ダメ?」とダメもとで聞いてみると「行ってよし」が出た。よしゃ!と船に乗り込む。
 そして出航。デッキから見送る明石の港。また3日後に帰ってこよう。そして船は青い海を疾走し、明石海峡大橋へと近づいていく。近くで見ると本当に迫力のある橋だ。世界一の吊り橋と言うだけのことはある。そして船は橋の下をくぐる。この瞬間はなかなか興奮するものがある。割とあっという間に淡路島の岩屋へ到着。なぜかガッツポーズしながら船から岩屋へ上陸。フェリーから島に渡る快感というのは何にも代え難いものがある。
 サザンオールスターズを流しながら、淡路島を時計回りに回っていく。まずは東側を南下する。左に海を見ながら歌いながら走っていく。海の眺めが本当に気持ち良い。日差しと青い空と青い海。この景色ならサザンでしょう。勝手にシンドバットでしょう。まずは昼飯だ。少し走ったところの鯛おどる館と寿司屋の並びに立ち寄る。鯛おどる館で昼飯かと思ったが食事処はなく、生ものの蒲鉾や練り物ばかり扱っていた。もちろん片っ端から試食をしてから、隣の寿司屋の方へ行く。とは言え、昼から寿司屋のカウンターでお好みで握ってもら…いたい気持ちは山々だが、穴子丼で我慢する。コクがあって香ばしい穴子の甘味にノックアウトされてしまいそうな昼食だ。
 今日の朝の時点では気持ちに多少の焦りがあったが、フェリーで待たされたおかげか冷静になった。ここまで自炊すらしていないし、何となく余裕がない。これだけあれこれ楽しんでるのに余裕がないというのも変だが、焦りとかガツガツ走ろうって気持ちがあること自体がおかしい。あと3日と輪行日あわせれば0.5日もある。その3日で160kmの島を一周すればいいのだ。何もあせる必要なんて無い。あせること自体が馬鹿馬鹿しくなるような、のんびりした海岸線の景色と日差しと気持ちいい潮風。サイクリングを楽しむ他のサイクリスト達。

明石港 淡路行きフェリーターミナル
バイクが長蛇の列に…。


船上からの明石海峡大橋


明石海峡大橋をくぐるフェリーから

 少し日差しに炙られながら南に走り道の駅に立ち寄る。琵琶の葉茶を飲みながら足湯に足を浸かりながら、今日の作戦を立てる。ビワの葉茶が苦手な味だ…。旅先御当地のグルメではずれを引く。これも旅の御一興である。
 そして俺の心を焦らせているのは、渦潮の時間なのだが、明後日の朝8:10に発生するようだ。いつもより少し早く走り始めれば見れそうな時間である。ということで、今日と明日で南の端まで行って3日目で岩屋へ戻って明石へ渡れば良い。そんな計画が頭に展開された。今日は安息日で洲本までの30kmぐらいで終わってしまおう。その30kmはのんびりとサザンでも聴きながら走ろう。そして洲本に着いたら食材を買い集めて自炊をしよう。淡路牛と淡路タマネギでソテーして、タコぶつを買ってタコ飯を作ろう。そんな気楽なプランができあがってきた。
 気が楽になった俺はアップダウンが多少あっても何とも思わなくなってきた。青い海と緑の山と白い砂浜や岩の多い海岸を楽しみながら走っていく。海無し県の俺の鬱憤を晴らすかのような気持ちの良い海の眺め。少し南国チックな植物も見られる。ソテツの並木なんか見てると宮崎か鹿児島にでも来たような気分になる。去年のGWを思い出すものがある。時には海だけが広がる景色、時にはのんびりした漁村という感じの雰囲気。とにかく変化の多い景色が俺を楽しませる。 そして15:00には洲本に到着。今日はここで終わり。大浜公園へ行き、今日のキャンプ場所として検討してみる。ぱっと見、料理に使えそうな水道が見あたらない。今日は意地でも自炊したいのだ。料理したくてしょうがない。淡路の美味い食材を俺の手でプロデュースしたいのだが舞台が整わない。しかたなく公園を後にしようとすると、さっき道の駅で会った親子と再会。彼らはここで一泊するようだ。俺は、料理が出来るように水道のある公園を探して走り回ることにした。まずは高速バスターミナルへ行って情報収集。どうやら洲本市内に2つか3つぐらい公園がありそうだ。1つはジャスコの隣。まずはそこを目指す。行ってみると、割ときれいな芝生、水道完備、広々としているが、丘の裏にテントを張ればさほど目立たずに寝れそうだ。

淡路島東岸
南へと向かう海岸線沿いの道


南国ムード満点の淡路の海岸沿い

 少しバスターミナル側に戻って、買い出しをするために名産品のありそうな淡路ごちそう館御食国へと入る。淡路オレンジやイカナゴの釘煮やタマネギなど名産品を取りそろえている。ここでは淡路オレンジを買っていく。ジャスコを覗いて見るが、名産品らしきものは見られない。売ってるタマネギも淡路産ではない。タコも淡路産ではない。淡路牛は見あたらない。仕方がないので米と調味料だけ買って店を後にした。ビールは温くなるので、後でまた来る。商店街を流して行き着いた先の魚屋で美味そうな茹でタコを1匹見つけたので、ついつい調子に乗って1匹買ってしまった。結構なボリュームである。ということで淡路牛は見送り。タコ飯とタコと淡路タマネギのサラダということに。次にお婆さんが細々とやってる地元の八百屋へ。美味しそうな新タマネギはあった。2個で70円という破格の安さ。これだけしか買い物してないのにサービスで新キャベツを一玉もらってしまった。どうやって食おう…。途方にくれてしまう。
 嬉しいやら困ったやらの気持ちで風呂に入りに行く。温泉なら1000円ぐらいで入れるようだが、安くて近くて庶民の味方 銭湯がいい。何となく雰囲気も良いし満足なお風呂だった。再びジャスコへ行き、ビールとマヨネーズを買う。野菜とタコを和えるしか食べ方が浮かばない。八百屋の看板娘。のオススメはなんと言っても生で食べることだと。そのオススメの料理法に従おうではないか。
 公園の水道で米を研いで、水を吸わせている間にタコをさばく。小さい包丁でバサバサと足を切って米を入れてるコッフェルへと投入する。タコの味を殺さない程度に塩を振って飯を炊き始める。その間に、タコの残りと野菜を裁いて和えたい。タコ飯のコッフェルからは良いにおいが立ちこめてきた。良い感じのタコ飯になってくれ。それだけを願う。素材は間違いない。タコをさばきながらつまみ食いすると、これがハンパじゃなく美味い。昨日のタコの再来だ。さすがとしか言いようがない。
 タコをつまみ食いしながらさばいて、キャベツも3分の1玉ほど、タマネギも1玉 これをマヨネーズで和える。素材は確かなのでマヨネーズだらけにならないように薄く衣をまとわせる程度に和える。そして、淡路島の晩餐は完成した。今日は2品だ。淡路タコの蛸飯、淡路タコと新タマネギと春キャベツの島マヨネーズ和え。御飯のアテはイカナゴの釘煮。そして一番搾りを700mlほど。まずはビールをグビグビっと一口。タコとタマネギとキャベツを絡めるように取って一口。それぞれの素材の旨味は強い。でも喧嘩せず協調する。そしてマヨネーズに全く負けない強いしっかりした味と歯ごたえ。もうたまらない。そして蛸飯。鮮やかなピンク色に染まった御飯。これぞ蛸飯の醍醐味だ。タコのダシはしっかり出て御飯に味を付けているが、タコ自身も強い味わいは残っている。柔らかく煮えたタコはうまい。御飯はやや塩が足りなかったがタコの味が効いてて美味い。どれだけ食べても飽きないタコと野菜。海と大地の恵みに感謝。
 淡々と片づけて眠りについた。

淡路の新タマネギとキャベツと明石タコ
春サラダマヨネーズ風味


明石産タコのタコ飯


淡路名物 いかなごの釘煮



   出発(滋賀県大津市)から 451.66 km

7日目 洲本→水仙郷→南淡路・福良 55.04km
2006/05/05
 今日の目標は淡路島の南の端まで走ることで、明日の朝8:10の渦潮に備えたい。テントを片づけて出発する。出発早々の洲本の温泉街を抜けると、今日も気持ちのいいシーサイドロードが続いている。しばらく走ると、沖の方に島のようなものが見えてきた。ちょうど天橋立のような砂嘴が見えているようだ。きれいな砂浜と松の林があるようだ。由良の港がその地形を生かして作られている。
 港を通り過ぎると、生石鼻の展望台へと上がる道が見えてきた。上りはきついところだが寄り道してみる。今日は峠の連続を覚悟していたが、1個増えたところで…となぜか強気な俺である。そんな強気とは裏腹に坂はなかなかパンチの効いた傾斜である。標高にして200m近く上っているだろうか。昨日の安息日が効いて足は回復しているだけに、まだ何とか助かっているという状況である。何かの宗教のマイクロバスとアルファードに追い抜かれたあとで、頂上に着いた。思わずガッツポーズが出るほど長い坂だった。そして記念写真を撮っている何かの宗教の集団の視線は俺に集まった。そして山頂からの眺めは なかなかすごい。戸田の海岸か天橋立を思い出すような、きれいな砂嘴が見える。その向こうに紀伊半島も見える。そんな景色を楽しんでいると、奈良から来たという女子大生2人と外人さんのグループも車で上がってきた。俺の自転車を見て驚いていた。
由良の海岸を眺める。
生石鼻展望台

 少し南の展望台からは水平線が見えるほどの太平洋が広がる。やや風は強くて過ごしにくいが、淡路オレンジを食べながら眺める。少し汁気のあるハッサクという感じである。苦い柑橘類は苦手だった俺にしては食える。オトナになったということか? これでもか!というほど攻めながら坂を下る。傾斜もカーブもどぎついので怖い。しかし快感。やはり上りがきつかった分 楽しまないと損である。
 生石鼻を越えたら、次は容赦なく立川水仙郷の300mUPが控える。時々、海を眺める山の上りを耐える。2連発はきついものがある。何度も足が止まってしまうが、少しずつ上っていく。道も狭く車に追い越されるたびに止まらざるを得ない状況が続く。しかも、どこまでも続く結構長い坂でもある。切り通しのようなところを過ぎると上り坂は終わって、下り始めた。探偵ナイトスクープの桂小枝の「パラダイス」で紹介された、あやしい公園があって立ち寄ってみたが、お婆さんの対応が悪すぎて何をしていいのか不明なので、寄り道は終了。
 駐車場でパンを食べて下る。ここも容赦なく攻めて下る。バイクを1台追い越すほどの走りである。そして道は平らで山側は急な斜面、海はどこまでも青く広く輝いている快走ルートが続く。海無し県の俺の海不足な心をどこまでも満たしてくれる雰囲気である。しかも海も流れがある海域だからか、きれいである。そんな景色をしばらく楽しみながら流していく。BGMは2日連続でサザンだ。晴れた今日に感謝。
 ふと、右側に「モンキーセンター」が見えてきたので休憩がてら寄ってみる。水仙郷でパンを食べてきてしまったのを後悔するほど、まともな飯屋があった。自転車を置いて休憩しながらタマネギ煎餅を試食して、モンキーグッズを見ていると、ふとモンキーセンターに行ってみたくなった。ということで入場券を買って観光開始。餌付けはされているものの、ここの猿は野生のもののようだ。坂道を2本やっつけてきた俺の脚には重くのしかかる坂道と階段の遊歩道を歩いて上がると、小屋と群れた猿たちが見えてきた。親子ざるや働き盛りという感じのオスざるや、ちょっと素直じゃなさげな猿たちがいる。小屋のなかから網ごしに餌付けもできるようだ。俺もピーナツを1袋買って餌付けしてみる。なんだか動物とは思えないほど人間的な動きでえさをねだる。小猿と手をにぎりあうような感じでえさを与えたりで、なかなかかわいげもある。すっかり魅せられてしまった。資料館なども見物して戻った。

淡路島 水仙郷を下ったあたりの海岸


淡路モンキーセンターの野生猿たち
小屋の中からピーナツをもらっている

 自転車に戻ると、続きの走りに出発だ。まだまだ気持ちの良い道が続く。もちろん徹底的にシーサイド。左側に沼島も見えてきた。今日は天気がいいので全ての景色がクッキリとしている。沼島のわきを過ぎると前に四国も見えてきた。本州以外の何かが見えたりすると遠くまで来たなぁと実感してしまう。この辺からぎらぎらした海沿いの平らな道は終わって、上り坂というかアップダウンが始まる。海を見下ろすという感じの景色となっていく。もちろん坂はきつく重く俺にのしかかる。しかも、傾斜も容赦なしという感じである。上り坂に入ると1回追い抜いて俺の後ろに居たサイクリスト親子も追い上げてきた。荷物無いと強い。しかし傾斜がきつくなると押して歩き始めたようだ。俺はどんなに重くても押して歩かない そんなポリシーを持って上っていく。頂上寸前で一度抜かれたが下りで鬼のダウンヒルを見せて追い越す。
南淡路 海岸を見下ろす プチ峠

 吹上浜への下りは、気持ちのよくなるような緑の鮮やかなタマネギ畑が続く。収穫の真っ最中でタマネギの香りが漂ってくる。生のタマネギの香りでも美味しそうなオーラを感じる。まだ1個残ってる淡路タマネギはもちろん今夜の夕食に使うつもりだ。そんなにおいのするタマネギ畑を抜けると、何ともう1発厳しい上り坂が控えている。平らでなーなーで済まそうという気がみじんも感じられない容赦ない傾斜が続く。そろそろ売り切れ御免という状況の俺の足に堪える。それでも振り返ればタマネギ畑と海の何となくのんびりした島らしい景色が広がり目を楽しませる。こういう雰囲気は好きだ。
 そんな前向きな気持ちを持って坂を越えて、福良の街へ向かって下っていく。もう終わりだろうと言いたいところだが、淡路の南の方はアップダウンがかなり多そうな予感がしてきた。明日の鳴門海峡までの道は苦戦を強いられそうである。静かな入り江と街と港という風情の福良の海岸線を走り港に到着。ここで情報収集、休憩、足湯だ。鳴門海峡を観光する船乗り場で土産物を物色し、近くの国民休暇村のキャンプ場の情報を集める。ついでに予約を取る。寝床はこれで確保である。足湯で疲れを癒やす。今日は走りがハードだったので十分に足だけでも温泉に浸からせて疲れを抜きたい。とにかく足の湯治に集中する。自転車の後の足湯とビールは気持ちいい。
 福良の街のスーパーで買い物をする。地元の食品だけで夕食を組み立てる。美味しそうな乾燥ヒジキと地元の白身魚で作った丸天、淡路産の豚肉 これで、昨日買っておいた淡路タマネギと新キャベツと豚肉は炒め物を作る。火を通したときのタマネギの甘味を楽しみたい。乾燥ヒジキと丸天でヒジキ御飯を作ってみたい。買い物袋を荷物に結んでキャンプ場へ向かう。そして、またまた上り坂出現である。キャンプ場へ行くには、国民休暇村のフロントで受付をしてサイトに入るのである。結構パンチの効いた坂が続く丘の上に国民休暇村はあった。淡路島の立体的な自然に苛められている俺… それを楽しむマゾな俺… 泣きそうな顔で国民休暇村にたどり着く。
 チェックインして風呂の時間を聞いてビックリ。オートキャンプ場の人は19:00以降と言われた。こっちも金を払って宿泊している客なのに何でそんな線引きをされなければならないのか理解に苦しむ。風呂入ってサッパリしてから飯とビールと行きたいのに 遅すぎる。リモコンで開けるゲートを開けてサイトへと自転車で向かう。明日、この道を帰るのかと思うとうんざりするような壁みたいな坂を下って行く。サイトの受付でチェックインしてテントを張る。今日は風が強いので、しっかりペグも打って固定する。
 食材と火器とコッフェルを持って炊事場の方へ持って行き、炊事場にまとめて置いてから風呂に入りに行く。歩いて急な坂と近道の階段を上っていき、国民宿舎で風呂に入る。国民宿舎の風呂はさすがにキレイで体を洗い流して、露天風呂を楽しむ。露天風呂からはライトアップされた鳴門大橋が見えている。カメラを持ってきて写真を撮りたい景色である。しかし、こんなロマンティックな眺めを見ている中で車の列が四国から関西へと向かって来るのが多い。連休も終わりが近いことを実感する光景である。美しくもブルーな気持ちにもなる。走り自体は明日が最後。もう満足できた。1月から4月は正直言って社会人人生で最も苦しい季節となった。それをGWの旅でリフレッシュしたいというコンセプトもあって始まった旅。これだけリフレッシュすればまた夏まで頑張れるかな… そんな気持ちにもなってきた。
 少しセンチな気持ちで炊事場へと歩いて戻って料理を始める。今日は風が強くて火力が保てないので何とかかまどの中に入れてはじめる。ヒジキ御飯の作り方というかヒジキの扱い方がよく分からないので、まず米を研いだ。そしてヒジキと丸天を切ったものとジャコを入れる。そのまま火にかける。飯が炊ける間に丸天の残りをつまみながら、国民宿舎で買った地ビールを飲む。のどごしとこくが気持ちいい。やはり自転車→温泉→ビールこれは王道である。飯を炊いてる間にタマネギとキャベツを切る。御飯が炊けたところで、野菜炒めの開始である。フライパンを火にかけて豚肉とタマネギを炒める。タマネギはしっかり火を通して甘味を引き出す。そしてキャベツはしんなり感としゃっきり感の間ぐらいで止める。自炊では最後の晩餐を始める。ヒジキ御飯は、ヒジキの旨味はたっぷり出てる。だが失敗だ。ヒジキが水を吸うことを計算に入れて無くて御飯に芯がありまくる。素材の旨さにフォローしてもらった形で満足。ヒジキは水を吸わせてから始めないとダメだったのですね。野菜炒めは、史上最高とも言える味が出た。狙いどおりタマネギの甘味と香りが出た。すっかり満足して晩餐は終わった。
 強い風にテントごと揺らされながら眠りについた

最後の(野外)晩餐にまず乾杯


淡路産ひじきの炊き込み御飯
(水加減を大失敗)


淡路新タマネギと新キャベツと
豚肉のスタミナ炒め



   出発(滋賀県大津市)から 506.70 km

8日目 南淡路・福良→鳴門岬→一宮→岩屋→明石 84.17km
2006/05/06 淡路島・岩屋−たこフェリー→明石
 気合いは充分。さくっと目が覚めた。残りの炭酸煎餅と淡路島コーヒー牛乳で軽い朝食を済ませて、さっさとパッキングをして7時には出発。7kmだから1時間もあれば楽勝だろう。いきなりどぎつい坂を上ってリモコンを返しに行き、そのまま下って県道へ合流。昨日よりも周期の短いアップダウンが続いている。少し南国ムードの田舎道という感じであるが、アップダウンは容赦ない。坂を上って下るたびに鳴門橋が見えている。そして見るからに早く白波立っている潮の流れもある。これは渦潮が期待できそうな感じである。いくつも続くアップダウンの波を越えて、ようやく高速道路も見えてきた。最後の最後もハンパじゃない坂が続いて上っていく。
 7:40には鳴門海峡の展望台に到着。橋の間を川のように流れる鳴門海峡。真っ白で大きな吊り橋、とにかく渦潮の出現を待つ。風が強くて寒いけど待つ。待つ。…待つ。そうこうしているうちに8:10だ。流れの速い潮が見えるが渦は見えない。10年前の春は時間が関係あるなんていう知識はなくて静かな時間帯に来て半日待ちと言われてあきらめた。今年は大潮こそ逃したものの時間はバッチリ合わせた。しかし見えない。さんざん風に吹かれながらも眺め続けるがどの海面を見渡しても渦はない。やはり大潮でないとダメなのだろうか。8:30まで眺めて諦めた。
 朝食が足りなかったので展望台のレストランでコーヒーとトーストを食べながら海面を眺めるが、見える気配はない。鳴門大橋のキャットウォークを眺める展望台に行って少し眺めたら出発した。次は大潮の日に時間を合わせてトライしたい。またも鳴門の海は俺にほほえまなかった。ただ、ハンパじゃない潮の流れが見れたのは貴重な体験だったかもしれない。出発早々、容赦ないアップダウンが続く。まだ2つも3つもある。もう足は昨日で売り切れなので、あまりすごい坂が続いても困ってしまう。
 朝から吹き荒れている強風だが、一応 追い風として働いてくれているので、アップダウンの連続である南淡路を過ぎると走りは楽になってきた。白い砂浜と澄んだ海の海岸線が続いている。風も楽にしてくれている。最終日は楽ができそうな雰囲気である。時々、道が内陸に入るときはよけいな上り坂があるものの、気持ちよく走っていく。寄り道するには風が強すぎてイヤになってしまうので、慶野松原は通過する。

潮の流れは速い。でも渦は無い。


大鳴門橋のキャットウォーク
(作業用通路)


大鳴門橋と鳴門海峡の眺め
(もちろん淡路島から)

 不思議な地形の明神崎で少し休憩しサングラスを洗って顔を洗う。シーサイドサイクリングの醍醐味とも言えるような平らな道できれいな海を眺めるルートが続く。風にも押されて昼には一宮までたどり着いた。今日こそ食いたい淡路牛ということで、店を探して走っていると肉屋直営の焼肉屋を見つけた。そこに決定である。広い座敷にぽつんと俺一人。焼肉というのは集団で行かないとお金ばかりがかかってしまうものだが、容赦なく頼む。タンと霜降りサーロインステーキとカルビ。タンは歯ごたえが心地よく濃厚な味が広がる。そして他は口にとろけるほど美味い。淡路牛の旨さを神髄まで味わえた。焼肉屋のおかみさんに見送られて、残りの道へと出発。
 泣いても笑ってもあと半日。そんな寂しさを象徴するかのように空は曇ってきて、運悪く風は右からの横風となってきた。しかも強い。海の眺めも徐々に道から遠い感じになってきて退屈さも感じられる道になってきた。15kmほど走ったところの、野島断層保存館に立ち寄る。ここは阪神淡路大震災の震源地ともなった活断層である。1m近くも大きくずれた地面が数100mも続いている。自然のエネルギーのすごさを感じるのと同時に、この程度のずれで神戸で大災害をもたらすほどの事が起こること自体が驚きでもある。震度7の揺れを体験できる施設などもあり並んで体験してみる。とても立っていられないほどの揺れであるが、意外と揺れのスピードが遅いというイメージでもある。その代わり震幅はかなり大きい。震災の1年半後の夏に日本縦断で神戸を通過したときの神戸の人たちの親切さが忘れられない。震災から復興しようとして真剣なのを感じた。地震への備えの足りない俺の生活などなど、いろいろと考えさせられてしまう記念館である。しんみりした気分をビワソフトクリームで流して、また走り出す。

淡路牛の焼肉が楽しめる 和牛亭で。
この味はもはや 言葉はいらない。


阪神淡路大震災の震源 野島断層

 もう道は単調そのものである。風も横だったり追い風だったりで安定せず苦しめられる。空は曇り。もうゴールまで走るだけのラストスパートである。最後の1mまで油断せずに走りきりたい。ペダル一踏みごとに現実へと引き戻されるゴールへのカウントダウン。淡路島一周完走、'06GWツーリング完走の栄光への一踏み。カーブを徐々に右へと曲がると、とうとう明石海峡大橋が見えてきた。対岸には明石の街も見えてきた。
 明石海峡大橋の下の道の駅あわじで休憩して写真を撮ってからフェリーターミナルへの最後の1kmを走る。そして、フェリーターミナルへ到着。ここで淡路島一周の完走、'06GWツーリングの完走を決めた。今年の1戦目のツーリングは無事走り終えた。人目をはばからずガッツポーズを決めた。帰りのフェリーも2本待ちということで、バイクの列に混じって待つ。ジュースを1本買ってフレームのトップチューブに乾杯。飲み干した。そして帰りはタコのペインティングの施された「たこフェリー」が当たった。喜びと寂しさをかみしめてフェリーに乗り込む。もちろんデッキで淡路島を見送る。明石海峡大橋を眺める。フェリーが明石の港に入るまでデッキでこの旅を振り返った。
 明石に到着すると、一番に出ていく。パラパラと雨が降り始めてきた。屋根のある公園を探して走り回る。一応、屋根の代わりに分厚い藤棚がある公園は見つけた。大蔵海岸の公園も考えたが警察も見回っているし、自転車止めもあるし、キャンプ禁止とわざわざ書いてあるのでやめた。雨もひどくなってきそうだしテントとか送ってしまいたいので畳んだり広げたりも面倒。打ち上げで飲むなどなどを考えたら、ホテルに泊まることにした。明石駅に戻ってホテルを探したら本気で雨が降ってきた。予約の電話を入れたらあっさり取れたので向かう。ホテルで荷物を部屋に入れてチェックインして自転車は屋根の下に置いて鍵をかけた。

淡路島から見る明石海峡大橋
道の駅 あわじ


淡路島 岩屋フェリーターミナルにて
'06 GW ツーリング 完走!

 ホテルでシャワーを浴びて明石の街へと出発。打ち上げなので華やかに寿司と行きたい。当然ながらお祝いモードである。魚の棚(うおんたな)商店街の入り口にある 寿司屋へ。やや混んで居たがカウンターに何とか一人分の席があった。快く迎え入れてくれたので、ここに決めた。明石のタコぶつと明石の天然鯛のお造りを楽しみながら、まずはビールで乾杯。この旅の締めである。タコの歯ごたえ香り味 どれをとっても素晴らしい。そして鯛も淡泊でさっぱりして身が締まって味が濃い。やっぱり明石の天然ものは違う。明石の魚介類はどれも本当にうまい。鯛とタコと穴子と他の白身や光り物など楽しんだ。そしてお土産に天然鯛のヒレをヒレ酒用としてもらった。若とも意気投合してすっかり楽しい打ち上げとなった。酒も進んだ。
 ほろ酔い加減でホテルに帰って、最後の夜の眠りについた。大満足の打ち上げであった。

明石-淡路島岩屋のタコフェリー
帰りは見事 これに乗れました!



   出発(滋賀県大津市)から 590.87 km

9日目 明石−東海道本線・新快速→新大阪
−東海道新幹線→東京−東北新幹線→宇都宮
2006/05/06
 久々に見るテレビは日曜であった。サンデーモーニングで関口宏の派手なスーツを見て、ホテルをチェックアウトする。土砂降りの雨の中でコインランドリーと郵便局へと向かう。まずは洗濯物を洗って乾かす。その間にブランチを食べに魚の棚へ出かける。それにしても魚の棚商店街というのは、古き良き商店街という感じで地方色もあり、ものすごく雰囲気が良く活気のあるアーケード街だ。活気のない時間帯しか通らなかったので気付かなかったが、好きな場所になりそうだ。
 明石焼きの「きむら」は3月の結婚式で来たので、もう一つ行列がある店「○こ磯」へと出かける。ものすごく愛想の悪い店員にイラッと来たが、注文。何の断りもなく相席にさせられる。ダメとは言うつもりはないが、せめて客に断るのが礼儀だろう。忙しさでイライラしているのか、俺の元にドンッと音を立てて明石焼きをめんどくさそうに置いていく。味は、ハッキリ言って ナンバーワンの「きむら」には及ばない。所詮2位以下でしかない。レジで「お前 接客態度考え直した方がいいぞ」と言って ちょうど700円をたたき付けて店を後にした。そんなイライラを引きずって魚の棚商店街を出ると仕入れに行こうとしていた昨日の寿司屋の若と会った。一応リセットしてもらえたような気がする。
 コインランドリーへ戻って洗濯物をサイドバッグに詰め込んで、土砂降りの雨の中を郵便局へと向かう。自転車から荷物を下ろして郵パック国際サイズの箱3個にキッチリと詰め込んで発送する。郵便局のお姉さん達が訝しげに見守る中の作業に少し快感を覚える。
 魚の棚商店街で自転車を押して歩きながら駅へと向かいつつ土産を買う。やはり、いかなごの釘煮は外せない。そして明石のタコわさ。気の良い露店のおばちゃんに乗せられるようにの2点を買って、駅へ。スターバックスコーヒーでコーヒーを飲む外国人のお姉ちゃんに見守られながら自転車をばらして輪行袋へとねじ込む。しかし、輪行袋も限界が来ているのかチャックがちゃんと閉まらない。もう厳しいものがるのかもしれない。お疲れ様 俺の輪行袋。今回だけは何とか宇都宮まで耐えてくれ と願う。
 明石駅の中で一応会社の連中への土産を買って、新大阪方面の新快速へ乗る。雨の明石の街を走り出していく。さらば楽しかった明石、俺のGW。新大阪はあっという間に着いた。東海道新幹線へと乗り換える。新幹線の中で、今までの日記を全てまとめて書く。いかに余裕が無くて今まで書いていなかったかを表すかのように空白だった。しかし、俺の記憶は鮮明だったので、いくらでも書き出せる。むしろ整理されていて良いかもしれない。
 東京で東北新幹線へと乗り換えて、宇都宮へ到着。駅の前で自転車を組み霧雨の中を家へと急ぐ。俺の旅、GWは大満足のうちに幕を閉じた。次は夏の旅だ。そして、今回の旅の途中でお世話になった全ての人、BlogやHPにメッセージをくれた皆様に ありがとう。

明石の魚の棚(うおんたな) 商店街
なかなか雰囲気がよくて活気もある。


明石焼き 一応ね。


そして明石駅から撤収。



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