0日目 |
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宇都宮 −東北新幹線やまびこ→ 仙台 −東北新幹線はやて→
八戸 −特急つがる→ 青森 |
2008/08/08 |
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青森市内 |
すっかり定番化した段取りだ。荷物を先に青森のホテルに送り込む。ホテル自体も去年のゴール後に泊まった駅の真ん前にある東横イン。連休前の最終日は自転車で会社へ行く。仕事を終えて駅へ急ぐ。後輩に仕事で捕まってすんなり帰れないあたりが俺の仕事の年輪といったところだろう。
駅前に到着し、チャリをばらして袋へ詰め込む。もはや慣れたものだ。既に買ってあるチケットを握りしめてホームへ向かい、ピーナツとビールを買う。仙台へ行く新幹線に乗り込んで席に着いたらビールを開ける。連休前の忙しさをビールでのどの奥に流し込む。連休の初日 旅路の1杯目のビールほど美味いビールは他にあるだろうか。宇都宮を出て那須塩原にたどり着く前に1本空けてしまうほどのハイペースは去年と同じである。 仙台にたどり着いたら、遅い夕食を摂りに行く。仕事でもたついて、狙いより1本遅い列車だったので仙台駅のレストランは調理時間も考えるとリスキーである。今年は弁当で済ませることにした。仙台でメシと言えば牛タンでしょう。ひもを引いたら熱源から熱が出るタイプの弁当を探したが見つからず、牛飯となる。デザートのずんだ餅も買ってホームへ戻る。待合室で熱々の弁当を満喫して、さっさと食べて新幹線を待つ。 |
はやてに乗り換えたら、盛岡をあっという間に過ぎて八戸へとたどり着く。降りるときのポールポジションを狙って早めにデッキへと移動する。このあたりの動きも慣れたものである。八戸に着いて、すぐに在来線のホームへと駆け下りる。7分と余裕のある乗り換えではあるが少し急いで行く。満席になるほど混むわけでも無いので、座れない心配も無く気楽ではある。
特急つがるは青森へ向けて走り出した。これでたどり着いたも同然である。終点の青森まで一時の仮眠を取る。まだ夜中にやるべき事は山ほどある。人気のない浅虫温泉街を電車が通り過ぎると、青森市内へと差し掛かってきた。青森駅へ降り立つと急ぎ足で帰って行く青森市民に取り残されるように自転車持ちの俺は置いて行かれる。
のんびりと駅から出て閉められる駅舎の前で自転車を組み立てる。眠くて集中力も上がらない。何とか1時間ほどかけて組み上がり、ホテルへと向かう。と言っても押して歩いてもすぐに着く目の前にある。ホテルの前に自転車を停めて、チェックインしたのは夜中の2時。ホテルに送っておいた段ボール3箱を受け取って部屋へ行き、夜中のうちに開梱する。サイドバッグとザックに詰め直して眠りについた。今年は大きな波乱も無く旅は始まろうとしている。 |
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1日目 |
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青森 −東日本フェリー・高速フェリー ナッチャンRera → 函館 |
2008/08/09 |
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函館 −東日本フェリー ばあゆ → 大間 |
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青森市内、函館市内、大間町内 |
19.35 km |
朝から天気もよく旅初日としては順調すぎる。8時にはホテルのロビーに出て荷物を出して積み始める。チャリにキャリアを付けてパッキングして出発。アウガ新鮮市場に行く時間はありそうだ。ホテルをチェックアウトして市場へ行く。まずは、朝食がてら本マグロ丼を食う。去年も来たが、すごく美味い。独特のくせもなく、それでいて鮪の旨みは濃い。朝飯に大満足した後は、実家に青森の海の幸を送るべく市場を回る。やはり青森と言えばホタテと大間の鮪だろう。いくつか詰め合わせにして実家へ送る。
割と忙しく市場を後にして、フェリーターミナルへと向かう。一昨年は夜中で道に迷うのが嫌だったので国道経由で標識に沿ってターミナルへ向かったが、今回は昼間なので近くて楽しそうなベイブリッジを渡って行く。青森駅と青森港を見下ろしながら気持ちよく高い場所を越える橋を通って港へ向かう。確かに近かった。
今回の旅は下北半島の最北端からスタートするという目的と青森-函館間に就航した新型の高速フェリー ナッチャンRera/World(現在は廃止)に乗りたいという目的があり、函館に渡ってから下北半島の最北端の大間に渡りたかったのだ。
今までのフェリーターミナルとは別に高速フェリー専用のターミナルが作られていた。ターミナルの前には従来のフェリーとは全く異なる雰囲気の流線型の船が停まっている。乗船口はかなり幅が広い。走りに振ったような見た目だが、並んでいる車の台数はかなり多いしトラックも並んでいる。中は2階建て以上の車両甲板があるようだ。高速道路のゲートのような機械に印刷してきたチケットのバーコードを照合させるとチケットが発行される。そして車の列に並んで乗船を待つ。この時が暑く眠い。しかも自転車は乗船順序が最後らしい。
チケットをフロントバッグの上にクリップで留めたまま船に乗り込んで、甲板へと上がっていく。真新しい船の中はフェリーとは思えないような明るく近代的な内装で、エスカレーターまであるし、ガラス張りのスペースの中に売店とカフェがある。展望デッキにも出られるようだ。今まで5時間近くかかっていた青函ルートをわずか2時間半で走り抜けるフェリーだけに外の景色が気になるので出てみる。旅の始めに港を出るフェリーのデッキに立つのは意外と好きだ。ものすごい水しぶきを船の後ろに吹きながら船は動き出した。巨大なフェリーでありながらも高速で移動するだけのことはある一見の価値有りの水しぶきだ。
港を出て加速を始めるとしぶきの吹き上げ方は、さらに増してきた。今日は天気も良いので八甲田山までよく見渡せて気持ちが良い。進行方向を覗くと北海道も見えるし、右には下北半島、左には津軽半島がくっきりと見える。青森から函館までの航路でずっと海を見ていると長すぎて飽きてしまいそうだが、さっさと走り抜けてくれるので飽きない。これから行こうとしている下北半島の仏ヶ浦と大間と佐井の街も見渡せる。去年走った津軽半島の眺めも懐かしい。そして、久々に渡る北海道…。途中ですれ違う兄弟船のナッチャンWorldも見れる。天気の良いデッキは心地よい。
カフェテリアでコーヒーを買って、さて座席に…と思ったが全船指定席であることを思い出した。チケットはチャリの所だ。取りに行けないため座席には座れない。残り1時間ぐらいの船旅なのでデッキに出てしまうことにした。フェリーとは思えないキビキビした走りで北海道がグングン近づいてくる。ついに函館の湾内に入った。着岸寸前になったら一番下の車両甲板に降りていく。甲板から見えるしぶきが圧巻である。
そして着岸し北海道へ上陸。2年ぶりの北海道である。しかしながら、北海道の旅はせず函館港の近くで買い出しと昼飯だけである。港の周りだけでもスーパーやコンビニはありそうだが、探すのに苦戦する。苦戦した分だけメシを喰う時間が無くなってくる。何とかスーパーを見つけて米や非常食やガスを買い込む。続いてコンビニを探す。せっかくなら、北海道のオアシス・セイコーマートに行きたいところだが見つからず諦めてセブンイレブンへ。弁当を買って店の前で食うが風が強く全てひっくり返る悲劇。荷物の上に弁当を広げていたので荷物も汚れて飯も台無し。また買い直して食事を摂る。忙しい食事となってしまった。
大間行きのフェリーの乗船手続きを済ませてフェリーへと乗り込んでいく。昔と変わらず小さな古い感じの船だ。さっきのナッチャンReraとは打って変わって、いかにもフェリーらしい振動と錆びた船体になってきた。フェリーらしい振動に揺られながら船は再び津軽海峡を渡り始めた。津軽海峡を往復するフェリーに乗る何とも豪華な旅の幕開けだが、走ったことあるルートの移動距離も時間も金で買いたいところだ。フェリーらしくゆっくりと海面を進むフェリーの上でブログを更新しつつ海を眺めつつ下北半島へと向かっていく。
そして、大間港へ着岸した。でこぼこのゲートブリッジを降りて、フェリーターミナルで情報収集でもしようかと思ったが何も得られる情報が無く、まずは大間崎へと向かう。日本縦断で来た頃と、あまり雰囲気は変わらない。今回は宿泊もするし風呂も入るので情報収集が重要だ。あまりのんびりもしていられない。ツーリングマップルで見る限りでは風呂もありそうだし、あとは寝床だけだ。そんなことを気にしつつ岬へと走っていく。岬と港は1km程度なのですぐにたどり着いた。
今回は日本縦断というわけでもないので、端っこにたどり着く達成感のような喜びは無い。至って事務的なテンションで最北端到達証明書を買い、岬で記念写真を撮る。もう年齢的な問題か旅してる女性を捕まえて北という人文字を作るとかそういうテンションもない。それでも日本縦断以来12年ぶりの到達を少し喜んだ。
岬のすぐそばにテントサイトがあり、水道もトイレもしっかりある。買い物もすぐそばでできる。草地にテントを張って、買い出しと風呂に出かける。風呂の場所もイマイチはっきりとは確認できていないので、手探りで走り始める。道に表示が出ているので、それに従って走っていく。走りつつ見つけた店で夕食の食材を買い込む。鮪の刺身とホタテの刺身を買い込んだ。これが今日の夕食のお楽しみだ。そんな楽しみを背負いながら大間の街を駆け抜けていると山車が道に多く出ている。今日は祭りのようだ。風呂への道を迷ったついでに山車の写真を撮りまくって遊んでいく。
すると、地元のおじさんが話しかけてくれて、「せっかくだから神様を見ていけ」ということで宴会をやっている家へ上がらせていただき、神様を拝ませて頂いた。そして、そのまま食事も頂いてしまう。年が親子ほど違うし、方言もきついので会話に苦しんだが楽しく美味しく時間が過ぎていく。何しろ大間の本マグロが皿一杯に盛られている。こんな光景は銀座で何万円積んでも体験できないだろう。しかも、ハンパじゃなく美味しい。
そして山車は動き出そうとしていた。電気がつかない修理を手伝いつつ俺も祭りに参加する流れになってきた。海の神様の祭りだからか船の形をした山車を曳いて歩いて、何軒かの家の前でお囃子をする。あまりに何と歌っているのか分からないが、最後の方は見よう見まねで俺も参加していく。だんだん気分も乗ってきた。山車を押しながらビールも進む。途中では、誘ってくれたおじさん(実は稲荷丸の総長)の自宅にも上がらせて頂いて、会話を楽しみつつ、また祭りは続く。3日ある祭りのうちの2日目の今日をすっかり満喫し、打ち上げにも参加させて頂けた。初日から充実いやそれ以上の形で旅は始まり、大間の人たちからたくさんの元気を頂いた。久しぶりにくすぶっていた自分が燃える感覚を得た。
ここまで、完全に祭りに参加させて頂けて、心底満足して祭りを後にしてテントへと戻っていく。やや、酔っぱらいつつ満天の星空の下で眠りについた。この場を借りて、祭りを楽しませて頂きました大間町の皆様、稲荷丸の皆様へ心から感謝を申し上げます。 |

アウガ新鮮市場 マグロ丼
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青森ベイブリッジを渡る
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フェリーとは思えないしぶき
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後方デッキの様子
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ナッチャンWorld
(ナッチャンReraと同型)
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ナッチャンReraの船内
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上陸後、大間港にて
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本州最北端・大間崎
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本マグロの刺身、三平汁、もずく酢
どれも 美味です。
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稲荷丸の神様
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稲荷丸 (夕方頃の様子)
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山車の列が出てくる所
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家の前でのお囃子
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すれ違い時の「喧嘩」
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稲荷丸の中では若者がお囃子を演奏 |

灯りのついた稲荷丸 |
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2日目 |
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大間 → 仏ヶ浦 → 脇野沢 |
81.46 km |
2008/08/10 |
昨夜もらった元気ですっきりと目覚めた。そして空は晴天。昨夜、買ったが食いそびれたマグロの刺身とホタテの刺身とパンという全く合わない組み合わせを朝食にする。冷蔵庫にも入れれずに一晩おいてしまったがワサビを多めにして食えば問題ないだろう。やはり、美味い。関東で食うマグロって何なんだろうというほど味が濃い。ホタテも甘みがいっぱいで美味しい。パンとは全く合わないのを気にせず食いまくる。
割と早めの8時には出発し、昨日の祭りの余韻が漂う街を駆け抜けて走り出す。行った人の噂では相当きついルートであり、地図で見る限りもアップダウンはハンパじゃなく多い。600m近く上る峠も終盤に控える。やはり半島というのは、そういう厳しさがあるものだ。しかしながら、そんな思いとは裏腹に序盤は佐井までは比較的穏やかな道が続いていく。海沿いの田園を眺めつつ南へと進んでいく。道も穏やかで俺の走りも好調に始まった。
しかし、佐井の市街地を過ぎると道は一気に厳しさを増してきた。大きな岩に向かって急な上り坂が続く。気温もグングン上がって来て真夏の東北らしい熱気が漂ってきた。最近は東北や北海道だからといって決して涼しくなどないのだ。願掛け岩の展望台まで登り切った。標高は50m程度だが、坂はかなり厳しい。展望台で休憩し、キャンプ場で水をくんでボトルを満杯にして再び走り出す。下り坂に差し掛かる途中で振り返ると大きな一枚岩が見える。岩の麓の海は青く澄み切っていて岩も迫力があり絶景だ。休憩した直後だというのに写真を撮りまくる。
峠を2つぐらい越えたところで福浦の港にでる。澄み切った港の海面が岩に囲まれている。何とも言えない雰囲気を醸し出している。人里離れた山奥にぽつりとある海岸という感じで雰囲気は秘境だ。そろそろ11時過ぎという時間帯である。心配しなければならないのが昼飯のタイミングだ。先々はハードなコースになりそうなので、非常食とか考えると手持ちのパンはあまり手を出したくない。ちょうど坂を上り始める手前に定食屋が2軒あった。のぼりには海鮮丼などと書いてあるので少し期待できそうな感じの店である。
店に入って席について、前の人の注文を聞いていると、ウニもアワビも今日は獲れていない。もしかして海鮮丼の店に入って海系は何も食えない!?と思ったが、刺身定食は食えそうだ。それを頼むことにした。意外にすぐに運ばれてきた。厚めに切ったブリとイカの刺身がついている。地元の海で獲れた海藻もある。やはり海沿いの飯はこうありたいものだ。ブリもイカも新鮮で美味しい。昼時になると次々と客が入ってくる。何げに人気のある店だ。このルート自体がすれ違う車も追い越される車もまばらな割には健闘と思える。
元気をもらって、仏ヶ浦のアップダウンへ挑む。このあたりから坂も本格的な傾斜とカーブが続く。完全に山岳コースという感じで、俺自身もヒルクライムと同じような感じで走り出す。海は全く見えないワインディングが続いていく。暑さ、傾斜、初日でキレが無い体… 色んな要素に苦しめられながら仏ヶ浦を目指して進んでいく。一山越えて下り坂が始まる。下りきると展望台を兼ねた駐車スペースがあるので立ち寄ってみる。上から仏ヶ浦の岩と海岸線を見渡せる。白い岩と青い海… 何とも不思議な風景である。暑さでヘロヘロになる俺を察したかのようにアイスを売ってる爺さんが居る。林檎シャーベットで体を冷やしつつ、しばらく景色を眺める。
国道から右折して、さらに急な坂を下っていく。もはやブレーキをかけても止まれる雰囲気の無い傾斜。後で上って道に戻ることを考えると心底ブルーである。トライアル用なので大きな音のするリアブレーキをキーキー鳴らしながら仏ヶ浦の駐車場へ下っていく。駐車場に自転車を置いて、歩道を下っていく。海岸線まで下れるようだ。結構な急斜面の歩道を下っていくと海に出る。売店もあり仏ヶ浦を巡る遊覧船の受付と乗り場もあり、このルートで福浦とここだけじゃないかと思える「人が居るエリア」である。どう見積もっても走行時間に余裕がないし、仏ヶ浦から脇野沢まできつい峠が1本あるので、歩いて海岸の岩を眺めていく。白くて大きな岩が並んでいる光景は圧巻である。歩いて見て回るだけでも存分に楽しめる。なぜこんな地形が出来てしまったのかは本当に不思議なものである。 |

大間産 本マグロの刺身(朝食)
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大間から佐井へ向かう海岸線
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佐井の海岸線
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佐井・願掛け岩
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佐井・願掛け岩
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仏ヶ浦の海岸線を見下ろす
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昼食 ブリの刺身とイカの刺身
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仏ヶ浦
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仏ヶ浦
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観光を終えて階段を上っていき駐車場へ戻る。自転車に跨って坂を上り始める。先ほど下りすら苦戦した急坂をin-1速で全力で踏み込んで上っていく。この荷物の重さと俺の体重で傾斜は壁のような感じである。国道に戻ったら、再び上り坂が始まる。いよいよ今日の最大の山場へ挑んでいく。どれぐらいのボリュームか読めないところだが、日没までには下りきりたい。予想通りと言えば予想通りの長い坂を上っていく。ある意味では計算通りに残しておいた体力で踏ん張っていく。
数少ない対向車から声をかけられた。「この先の坂はえらいぞ」と言われた。とは言っても引き返したところで楽でも無いし、お礼を言ってそのまま走り続ける。車自体は地元ではなく長野の松本ナンバー。おそらく旅慣れた感じのドライバーだろう。それでも大変だと知らせてくれるというのは、どれだけの坂がこの先に待っているのだろうか… かなり不安になりながらも走っていく。地元の人が地元の坂をこの坂を凄いと言ってるのと訳が違う。
確かに、言われるとおり坂は長い。俺の想定より遙かに長い。仏ヶ浦で水をくんで来るのを忘れたのが痛恨。ボトルの底が見えつつある。15時を回ってもまだまだ続く熱気に体力を奪われながら坂を上っていく。俺が地図上で峠かと思っていた場所を過ぎても、まだまだ上っていく。カーブも傾斜も大した事は無いのだが、やたら長い。
川内湖方面と脇野沢方面の分岐が峠かと思っていたが、まだまだ続くようだ。しかも傾斜も徐々にきつくなっているような感じすらある。ボトルの水も残りが少ないし、脚に力も入らなくなってきた。手持ちのチョコで糖分を補給して上っていくが、脚に力がみなぎって来ない。ここは走りきってしまわないと、今日はどこにも泊まれない。ひたすら長い山道が続いていくのみである。佐井から脇野沢までは民家もほとんどなく人気もない秘境が続いているのだ。
そして、厳しい上り坂もようやく終わりが見えてきた。ただ、日も傾き始めている。何とか日没を迎える前に下り坂に差し掛かった。東北の気候だからか日が傾くと気温も一気に下がってきた。夕陽に照らされる海と山々を眺めつつ気持ちよく下っていく。傾斜もさほど急ではないのでチャリのコントロールも取りやすい。体が疲れて集中力は落ちているはずなので慎重に下っていく。
下り坂の途中の道の駅わきのさわで一度チャリを止めてみる。脇野沢野猿公苑に立ち寄ってみるか、このあたりでビバークしてしまうか考える。風呂もすぐそばにある。ただ、買い出しができそうな店はない。風呂だけ入って脇野沢の街に下った方がいいような気がする。しかし、薄暗くなってきてるし寝床探しも…などと考えていたが道の駅がアブだらけで諦める決め手となった。まずは道の駅の向かい側にある脇野沢温泉で風呂に入っていく。露天風呂が無いが昨夜は風呂に入りそびれた分、今日は思いっきり湯船に浸かる。 |

仏ヶ浦-脇野沢の峠からの眺め
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仏ヶ浦-脇野沢の峠
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陸奥湾へ沈む夕陽
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風呂から出る頃には周囲はすっかり暗くなっている。このあたりの道は灯りも何も無いので本当に真っ暗だ。久々のナイトランに緊張しつつも少しワクワクしながら下っていく。5kmも残っていない道のりで道もまっすぐな下り坂なので気楽ではある。湯上がりの体を夜風に当てながら気持ちよく下っていく。この涼しさが暑かった今日1日をさましてくれる。
脇野沢の街に降りてみると祭りで賑わっていた。昨夜のような立派な山車がある祭りではなく、よさこいを踊っているだけだが、この雰囲気が楽しい。そんな祭りの喧噪を抜けて海沿いの公園に寝床を探す。草むらの多い愛宕山公園に寄ってみる。やや通りから目立つしトイレも見あたらない。気が向かないが、選択肢もそんなに無さそうなので公園の中にチャリで乗り入れてみる。もう真っ暗なので草に脚を取られまくる。そしてチェーンがローギアの内側に墜ちてしまう。最近、リアのスプロケットとスポークの間にチェーンが落ちる症状がたまに起こる。しかも直すのが面倒だ。手を油まみれにしてイライラしつつ修理する。公園から見下ろすと、もう1個広場と公園が見あたったので、そっちに行って見る。広場の方がテントは張りやすそうだ。管理棟があるので早めに出ていく必要はありそうだ。
寝床を見つけたところで、自炊も面倒だし祭りだし町中の方で外食にて夕食にする。祭りで賑わう街を自転車で駆け抜けてみたが露店がイマイチなのだ。食えそうな露店があまりない。1軒見つけた居酒屋 兼 定食屋で夕飯にする。まずはビールを…と思ったが、料理の出が遅くビールがやたら進んでしまう。後から来た客と話が盛り上がって夕食から飲み会へと変わってしまった。観光情報や色んな話をしつつ夜は更けていく。
すっかり酔っぱらって店を後にして、公園へ行ってテントを張って眠りについた。 |
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3日目 |
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脇野沢 → むつ → 恐山 → 薬研温泉 |
77.44 km |
2008/08/11 |
脚にはしっかり疲労を残して目が覚めた。今日も決して楽ではない恐山のヒルクライムを控えて気も脚も重い。楽しみではあるが、疲労は隠せないと言ったところだろう。ずっしりと重たい感じの脚で脇野沢の街を駆け抜けていく。なぜか後ろからホーンを鳴らしてくる軽自動車が居た。一瞬いらっとしたが、昨夜の居酒屋で一緒に飲んでいた人だった。狭い街だなぁと思いつつも挨拶をして俺は旅路へと走り出す。
下北半島の南側の海に面した道路は日当たりが良く暑い。右に明るい陸奥湾を眺めながら、アップダウンが少ない海岸沿いの道を走っていく。疲労が隠せず走りにキレがない。調子が悪いなりに淡々と走っていくという感じである。南側の海に面してるだけあって日差しもハンパじゃなくなってきた。暑さに炙られながら東へと進んでいく。20kmほど進んだところで疲れも暑さもピークに達してきたので、川内の町中で日陰を探して休憩しつつ、ストレッチだ。昨日の疲れが残りまくる脚を伸ばす。
川内から東は静かな漁村が続く道を淡々と走っていく。ときどき右に見える海を楽しみながら走っていくと、昼前にはむつ市街地に近いところまで来た。一昨日の函館以来120kmぶりのコンビニで休憩する。非常食や糖分補給食も買っていく。 |
久々に家も店も建ち並ぶむつ市の大湊まで来て大湊線の終点である大湊駅にたどり着く。大湊駅で情報収集をしつつ、この辺で昼食も食いたいし、夕食の買い出しもしたい。まずは駅前の小さなラーメン屋で昼食を済ませる。店のすぐ隣の野菜直売所で野菜を買う。肉などの生鮮食品は、まだ灼熱の昼間に走って傷むので買えない。青森って、あまり知られていないが野菜は美味しいのだ。ニンニクとアスパラは青森産が絶品だ。これを買ってサイドバッグに入れる。サービスでトマトを2個もらった。つぶれそうなほど熟しているので、その場で食べて店を後にする。
大湊から恐山に向けてヒルクライムが始まった。灼熱の真夏の日差しを背中に浴びて炙られながら、厳しい坂を上っていく。道自体は広くて走りやすいが、初っぱなから傾斜は厳しい。県道に合流すると交通量も一気に増してきた。そして道ばたには「○○丁」と恐山に向けてカウントダウンする石碑が建ち並ぶ。10の位が赤い布で見えないので、進捗は結局のところよく分からない。ただ、日本縦断の時にこのルートを下った記憶があるので、距離はさほど無い認識だ。そんなに下りでチャリのコントロールに苦戦した記憶もないし大したボリュームを見込んでいなかったのだ。しかし、上れど上れど恐山にはたどり着かない。こんなに長かったかなぁと首をかしげながら上る。恐山のヒルクライムも県道合流すると木陰を走っていけるので、夏の暑さには苦しまなくなってきた。やや涼しい森の中で坂に耐えていく。10の位が見えない石碑のカウントダウンで、今度こそ10の位の無いカウントダウンだろ! と思いながら進むが頂上はまだだ。
そして、やっと峠にたどり着いた。峠には大量のわき水が湧いている。恐山冷水との名のごとく冷たく気持ちの良い水だ。ボトルに汲んで、恐山の境内に向かって急な坂を下っていく。ハンパじゃなく急だ。チャリのコントロールも難しくなるほどの傾斜と急カーブが続く。坂を下りきると、湖が見えて湖の向こうに山が見える。この状況になれば湖畔にある境内までは平らなので安心である。
駐車場に自転車を置いて境内へ行く。まずは、名物の霊場アイスを食う。バナナシャーベットで柔らかい感じの甘さのシャーベットだ。霊場でアイスで青森だというのにバナナ味
なんとも不思議な雰囲気を楽しみつつ体を冷やす。日本縦断でも来たことのある境内を歩いて回る。やはり、ごつごつした硫黄の岩と湖とカラカラと回る風車が気味の悪い雰囲気を醸し出す。この雰囲気に霊が集まりそうな気配は感じずにいられない。写真を撮ると何か映ってしまいそうな不安はある。天国ではなく地獄っぽい雰囲気である。ただ、この場所は天気が悪い方が不気味な雰囲気が出そうだが、日本縦断の時に続いて今回もこれ以上無いほどの快晴。不自然なほどきれいな砂浜で宇曾利山湖を眺めて、恐山を後にする。宇曾利山湖から流れ出す川は三途の川と名前が付いており赤い橋が架かっている。これは自然にできた地形であるのだが、何もかもが現世と極楽浄土の境目という雰囲気を作る要素となっている。 |

恐山へのカウントダウン
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恐山冷水
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恐山名物・霊場アイス |

霊場アイス(バナナ味)
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恐山の境内
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恐山 宇曾利山湖
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宇曾利山湖から流れる三途の川
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恐山の山門
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ここから薬研温泉までは少しのヒルクライムと下りだけだ。そろそろ傾き始めている太陽に炙られつつ坂を上っていく。深い森から時々 宇曾利山湖を見下ろしつつ走っていく。しかし、この坂が意外と長い。こんなにあったかと思うほどのボリュームがある。さらにアブとか小バエが顔の周りにたかってくる。いつまでも終わらない坂と集まる虫にいらつきつつ進んでいく。昨日の疲れも、さっきの上り坂の疲れもしっかり残って売り切れ状態の脚にムチを入れるように進んでいく。しかし、乱されるペースと終わらない坂にいらついたので、せめて虫ぐらいは追い払うべくサイドバッグにぶら下げた電気式ベープを足下で炊きつつ、ハンドルには蚊取り線香をカラビナでぶら下げて点火する。しかも両端からで煙り倍増モードだ。蚊取り線香が功を奏して顔の周りに集まる小バエは減った。足下にたかってくるアブには相変わらず苦しむ。フロントバッグの上に載せた虫除けスプレーを直噴して追い払う。
坂道に苦戦しまくって、やっと頂上にたどり着いた。そこから急な坂を下って薬研温泉へと向かっていく。このルートは大したのぼり返しは無いと記憶しているので、もう気楽なものだ。この下り坂も結構な長さだ。日本縦断をしたときは19歳。俺の人生で最も体力的に充実してた歳であるものの、日本縦断でここに来た日は函館からフェリーで大間に渡って昼の3時頃に薬研温泉を通過して恐山に行ってむつまで行ったことを考えると、当時の俺の体力って恐るべきモノだ。これだけのボリュームの坂を何とも思わずに、軽々と越えて行ったことを思うと、今の俺というのは順調に体力も落ちて老け込んでいるものだと実感する。 |

ランドナー 虫除けスペシャル
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そんなことを思いつつ、コントロールに苦戦するほどの傾斜とカーブと格闘して薬研温泉へと向かう。薬研温泉方面と大畑に下る道の分岐まで来た。もう着いたも同然だ。薬研温泉方面に曲がると1kmも行かないうちにキャンプ場への案内看板が見えてきた。ダートを下って橋を渡るとサイトが見えてきた。受付を済ませてテントを張る。ライダーが集まってるあたりではファミリー系の間のスペースにさくっと張る。
テントを張ったら荷物の載せてないチャリで風呂へと向かう。薬研温泉は混浴露天風呂があるので、そこを楽しみに行く。と言っても、洗い場もない露天風呂だと汗だくの俺の体は汚いので、有料でも洗い場のある風呂に行きたいところでもある。そんなことを思いながら温泉街を走っていくが、日帰り入浴付きの旅館のようなものは見つからない。そして人里離れた山奥という雰囲気になってきたときに、かっぱの湯
というのが見えてきた。 |
チャリを置いて階段を下りると脱衣所と露天風呂が一つある。先客は誰もいない。掛け流しのお湯は透明で青っぽい感じだが、底には何か落ち葉やら黒いモノが見える。
脱衣所で服をぬごうとするとアブが飛んでくる。タオルで追い払いながら服をぬいで風呂に入るとお湯の表面にアブの死体が大量に浮いている。生きたままお湯に墜ちたヤツももがいている。お湯から露出している体の部分にはアブが大量に飛んでくる。落ち着いて風呂に入れる雰囲気ではない。お湯に潜って頭のあたりも一通りお湯を浴びたところで、面倒になって風呂から出た。こりゃ無理だ。体を拭いてる間もアブが大量に飛んでくる。体を拭くのもそこそこに服を着て出る。不完全燃焼といった感じの入浴だ。 |

薬研温泉・かっぱの湯
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何だかやるせない感じの心境でキャンプ場へと戻っていく。途中の店でビールを買っていく。肉系のものがあればラッキーだったのだが、そういうものは売っていなかった。キャンプ場に戻ったら、キャンプ場に併設されているコインランドリーに洗濯物を入れて洗濯しつつ、夕食の準備を始める。まずは、ご飯を炊きつつ野菜を切る。ご飯を蒸らしている間にアスパラとニンニクをマヨネーズを油代わりにして炒める。おかずが足りないので、ジャガイモを塩ゆでしつつビールを飲みつつアスパラ・ニンニク炒めを食う。そこにご飯も参戦だ。肉分が一切無く野菜だけのヘルシー?な食事は進んでいく。日が完全に沈むとそこには満天の星空が広がっている。しばらく地面で仰向けになって空を見上げる。
食器を洗い終えて、衣類の乾燥を待ちつつ日記を書く。初っぱなは去年のように何かもが思い通りにいかない苦しい感じは無く、体力的に厳しいものの穏やかに過ぎていったような感じさえある。洗濯物の乾燥が終わったところで眠りについた。 |

青森産のアスパラとニンニク炒め
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茹でて食べるだけで美味いアスパラ
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4日目 |
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薬研温泉 → 尻屋崎 → 六カ所 |
116.57 km |
2008/08/12 |
すっきりと目覚めてテントを撤収。昨日買っておいたパンを食って出発する。仏ヶ浦から脇野沢の峠、恐山のヒルクライムと筋肉疲労はがっつりとたまっている。重い足取りではあるが、薬研温泉から大畑までは下り坂がつづく。好調とはほど遠い足の具合にはありがたい。大畑まで下って国道沿いに南下、尻屋崎の突端に向けて進んでいく。メインの通りから外れるので迷いやすい気もするし、地図で見ても曲がる目印がどこにあるのか不安である。
ややアップダウンの多い畑の中を抜ける農道を気持ちよく走っていく。少し高台になった農道から海を見下ろしつつ、岬へと向かっていくまっすぐな道である。いくつかの坂を越えていくと県道に合流し坂を下り始めた。やはり、昨日までのハードな坂道の疲れが抜けていないためキレが感じられない。坂はとりあえず終わって平らになった道を進むと、疲れの隠しきれない俺を誘い込むように道の駅が右側に見えてきた。当然のように休憩する。東通村の特産であるブルーベリーを使ったソフトクリームと、クエン酸が豊富にありそうで酸味の強そうなまるめろのジュースで栄養を補給する。酸味と甘みがある補給で疲れが少しだけでも取れたような気がする。
その元気で尻屋崎を目指して進んでいく。残すところ20km弱というところで海沿いのため平地で気楽な走りになってきた。ただ、日差しは相変わらず厳しく俺に照りつけてくる。右に風力発電の白い風車を見ながら進んでいく。原子力関連の施設もあり電力系の施設の多い街だけに不思議な感じを受ける。一度、岬の先端へ行ってから、この辺に戻ってきて続きの走りがあるので昼食を取る店も探しつつ進んでいく。すると海鮮料理の美味しそうな店が見つかった。何とか岬で馬たちと戯れたら、ここまで戻ってこよう。
岬の先端近くに田舎にしては大規模な工場があり、その工業地帯を抜けると牧草地が広がり始めてきた。岬の寒立馬(かんだちめ)を夜間に轢かないよう保護するためか時間制限ゲートがある。ゲートのスイッチを押して岬の道へと入っていく。牧場と何頭かの馬…を見て岬の方へ近づいていく。左に海が見え、正面には岬と灯台が見えてきた。そんな最果てを思わせる端っこらしい雰囲気を味わいつつ写真を撮って進んでいく。灯台の根本には30頭近い数の馬の群れと観光客が見えてきた。
岬の駐車場で自転車を置いて馬と戯れに歩く。やや太い脚とずんぐりむっくりとした巨大な馬、寒い吹雪の中で耐えてる寒立馬のイメージだったが顔はおとなしく鋭さがない。夏だから気が抜けているのか、そんな雰囲気すら感じる。それでも体はでかいので何かの拍子に走り始めたりすると迫力は満点である。中には芝生でゴロリと寝転がっていて一瞬死んでる?と勘違いしてしまう子もいる。おっぱいを飲んでる子馬も居て、全体的にのんびりとした時間がそこに流れている。しばらく馬と戯れて、岬で灯台を見ていく。 |

ブルーベリーソフトクリーム
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まるめろじゅうす
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尻屋崎へ向かう道
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尻屋崎灯台
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一応は岬をぐるりと一周していく。灯台を過ぎると静かな海とやや霧の立ちこめる海岸線だ。回ったことを後悔するほどの坂とわずかばかりの住宅地を抜けて元のゲートに回ってきた。ここまで来たら、あとは昼食予定地として狙いを定めた海鮮料理屋へ向かうのみだ。行きが軽い向かい風だったので戻りは軽い追い風で気持ちよく進んでいく。空腹の俺の状況を察してか店には早々とたどり着いた。
漁師丼ということで頼んでみる。せいぜい1200円程度のセットなのに1匹分のアワビとウニとイクラも付いてくる。新鮮な魚で彩られた丼は、かなり美味い。満足した昼食である。
先ほどの風車のあたりから左折して下北半島の東海岸沿いを下っていく。軽く一山越えて真っ直ぐな道に入る。交通量も少なく道も広い。そして森が広がっている。時々は湿原と森を見下ろす感じで気持ちがいい。微妙にアップダウンしながらも風向きも追い風気味で気持ちの良い走りが続く。ほどよく北風で涼しく走れていく。名もない広域農道ながらも、こんなに気持ちの良い道も珍しい。自然が多く走りやすい。
あっという間に走りきって国道に合流する。ここからはアップダウンが多くなってきた。しかし、今日の俺はなぜか体にキレが徐々に出てきているのだ。積極的に海沿いというわけでもなく先ほどの農道ほど眺めもない退屈な国道ではあるが、今日は六ヶ所村までたどり着かないと風呂にすら入れない。昨日まではハードな峠越えばかりだったというのに距離は無謀にも多い。焦ることはなく六ヶ所村を目指して無心に走っていく。
そんな無心の走りを続けていると、徐々に天気も悪くなってきた。雨が降りそうな雰囲気はないが北国の夏らしい薄い霧が立ちこめてきた。だから真夏の暑さからは解放されているので走りがはかどるという面もある。テールランプを点滅させながら、進んでいく。休憩がてら東京電力が運営するトントゥビレッジで原子力発電について見学していく。建物は立派だが知識はせいぜい俺が持ってる程度のもので見所は薄かった。そして、南下を続けて今日の走行距離が100kmを超えた。なおも体はキレ続ける。むしろ100kmを超えてキレが増してきた。久々に強い自分の走りが戻ってきた感じすらする。手応え十分である。
今夜の宿の狙いは六ヶ所村の総合運動公園である。そのすぐ近くに温泉もある。しかし、そこに行く前に買い出しをしておきたい。一度、六ヶ所村の市街地へと向かう。寂れた街が国道沿いにあって唯一とも思われる小さなコンビニでレトルトの食品やベーコンを買い込む。そして沼沿いの道を運動公園に向けて走ろうと動く。しかし、ど田舎と思っていた六ヶ所村が思わぬレベルで都会なのだ。きれいな市内道路、大きいスーパーや店が建ち並ぶ。そして原子力関係の研究所で働いてると思われるインテリっぽい人たち。これが原子力施設で潤う街か! スーパーで買い物をする。今日はちゃんと自炊できそうだ。
サプライズ満点な六ヶ所村を抜けていく。運動公園では日没後ならゲリラ的にテントも張れそうなスペースを見つけた。続いてすぐ近くの温泉へ行く。温泉の向こうは下り坂になっていて雲も晴れている。やや夕日が見え気味な感じである。こんな太陽が見えれば明日は晴れそうだ。六カ所温泉は「日本一 深い」と記してある。ちゃんと露天風呂もあるし、足は着くほど湯船は浅い。日本一深いのはボーリングの深さのことのようだ。
日が暮れかかって霧も立ちこめる運動公園のベンチで飯を炊く。その間に野菜を刻む。今日はラム肉で焼肉とする。昨日までに買っておいたアスパラやニンニクもある。ラム肉と買ってきたキャベツとも合わせて体に優しくスタミナが付く焼肉を満喫する。大きめのキャンプ用フライパンでジュージューと焼いて頬張る。片付けて洗い物を済ませてテントで眠りについた。今日は走行距離115km 社会人になってからのツーリングでは2番目となる走行距離を達成した。 |

豪華! 津軽海峡 漁師丼
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下北半島東側 広域農道
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六カ所温泉 日本一深い温泉
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夕食のラム焼肉
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5日目 |
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六カ所 → 小川原湖 → 三沢 → 八戸 |
81.87 km |
2008/08/13 |
昨日感じた手応え以上に筋肉痛が残っている。今日は八戸まで走るだけで距離は50km強と少ない予定だ。道もおそらく平地が中心。安息日としての位置づけだ。六ヶ所村のインテリな感じの街を抜けて、また田舎道を爆走していく。今日も日差しが厳しく暑い。そして南へと走っていくので真っ正面から日差しを受ける。昨日の涼しさとは打って変わって暑さが襲いかかるのだ。
あまりアップダウンはない道を進んでいき、小川原湖の北端あたりまできた。湖沿いに走っていこうかと思っていたが道からは湖が見えない。広い湿原は眺めごたえがあるものの湖が見えないと何だか物足りない。少し小高い丘にあがって走り続けるものの湖は見えない。そして道の駅にたどり着いた。ここで昼食にする。鰻丼を主食にし、東通村のブルーベリーを使ったヨーグルトでデザートにする。ヨーグルトはずっしりとボリュームもありブルーベリーの味と香りが濃くて美味しい。
休憩を終えたら南へと走り出す。またも湖は見えない。そして、最後まで見えないまま湖沿いと思われるルートは終わった。そして俺の足の疲れも隠しきれない感じになってきたところで三沢の航空科学館へ立ち寄る。初の太平洋無着陸横断に成功したミスビードル号をはじめとして数々の飛行機やヘリコプターが展示してある立派な展示館だ。三沢の砂浜から飛び立った飛行機は意外に大きい。そりゃ太平洋横断ともなれば国際線なみの距離なので大きさもあるだろう。YS-11が機体ごと展示してありコックピットもみれる。これは感激だ。建物の外には戦闘機がたくさん展示してあり、ほとんどはコックピットに乗り込める。しかし、筋肉痛でヨボヨボの爺さんみたいな俺は乗り込むことができないのだ。それでも見て十分に楽しめる。人は空に憧れる。空を飛ぼうと思えばチケットを買えば飛行機に乗れる時代だ。でも、自分の思うままに飛んでみたいという夢は捨てきれないものである。そんな感覚すらこの科学館で思い出したのだ。 |

小川原湖畔の道と湿原
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鰻丼
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道の駅 小川原湖
たべるヨーグルト
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三沢航空科学館
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ミスビードル号
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YS-11のコックピット
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航空自衛隊 戦闘機
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航空科学館に大満足して八戸を目指す。ちょっとのアップダウンすら俺の脚にはこたえる。国道を走り抜いて八戸市内へと下っていく坂を下る。バイパスを気持ちよく走り抜いて八戸の市街地へたどり着いた。
まずは八食センターへ寄ってみる。実家に何か美味しいものでも送るか、友達にも送るべく物色する。市場なので新鮮な魚が並ぶ。カニやイカやマグロや旬のホタテ、その他の魚がずらりと並んで壮観だ。市場の中には使用料が有料ながら買った魚を炉端焼きにするためのスペースも併設されている。今夜の晩酌はここにしようかとも思ったが19時までしか営業していないし、酒も売ってなさそうだ。実家には青森から送ったものと代わり映えしなさそうなので何も送らないことにして、友達にはせんべい汁とリンゴジュースを大量に送った。子供が多いので楽しんでもらえるだろう。
八戸市内でテントを張れそうな公園を探す。市街地に近いところで見つけた。順調なスタートである。ケータイで銭湯を探して、これも見つかる。まずは風呂に入っておく。銭湯で脚の疲れを入念に取る。また、自転車に乗り込んで八戸の街中へと走り出す。八戸には屋台村があるようなので、そこを目指していく。提灯が並ぶ
みろく横丁 というところが見つかった。入り口に自転車を置いて屋台を回って居心地の良さそうなところを探してみる。どれも魅力的で迷ってしまうものがある。寿司屋ではなく炉端焼きっぽい雰囲気のところを見つけて引き込まれるように席に着く。先客と話しながらビールを飲む。夏の開放的な感じの屋台街は気持ちのいいものだ。その雰囲気と会話と八戸の海の幸に酒が進む。その後も店にくる客や店の主とも会話が弾む。自分の親に近い年齢の夫婦とも話しが弾んで、最後にせんべい汁でしめて店をあとにした。店の主には俺の自転車にも興味を持ってもらえて、のちにブログにコメントもいただけた。この場を借りて感謝申し上げます。
ほろ酔いで目を付けておいた公園に戻りテントを張って眠りについた。明日の天気は雨のようで少し不安である。 |

八食センター
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八戸みろく横丁
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八戸郷土料理 せんべい汁 |
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6日目 |
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八戸 → 種差海岸 → 久慈 |
76.14 km |
2008/08/14 |
夜中は一雨も降ることなく過ぎていった。やや飲み過ぎて二日酔い感のある中でテントをたたんで撤収する。人通りは割と多い公園なので早めの撤収をしないと目立ってしまう。何事もなかったかのようにテントを片付けて八戸の街へ走り出すと雨が降ってきた。何とかコンビニの軒先に逃げ込んで雨対策をする。ついでに朝食のパンを買う。パン屋が併設されたコンビニなので焼きたてなのだ。
お腹を満たしてゴアかっぱを着て走り出したら雨はやむ。降ったりやんだりを繰り返す今日の走りになるのだろうか。またかっぱを脱いで走る。八戸の市街地を抜けて海沿いの港っぽいところを走り抜けていく。そんな港を抜けると、蕪島にたどり着く。陸続きの小さな島ウミネコの生息地になっている。ウミネコを神の使いとして祀っている神社が島にあるのだ。ウミネコも確かにいっぱいいるし見応えがありそうなので寄り道をしていく。そこら中にウロウロと歩き回ったり飛んだりで住み心地の良い島なのかと察する雰囲気がある。猫みたいな声を上げながら多くのウミネコが飛び交う光景と自然は見応えがある。筋肉痛の脚をひきずりつつ石段を登って神社に立ち寄る。そこら中にウミネコを表すものがあり、糞をもらうと記念の証明書をもらえるようにもなっている。幸か不幸か俺にはウンが着くことはなかった。 |
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蕪島 神社
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少し面白い神社を抜けて、南下していくとアップダウンも次第に多くなってきた。三陸海岸へ向けて坂が多くなっていく流れである。いくつかの坂を越えると本格的に雨も降ってきて種差海岸にたどり着く。本来は芝生の広がる広々とした海岸線が楽しめるのだが、霧が濃い上に雨も降っておりいまいちな感じである。一応は自転車を止めて歩いてみるが楽しさは薄い。
ここはスルー気味に抜けて国道へと戻る。しかし、国道へ戻る道がわかりにくい。坂を上れど上れど道を走っても国道に戻れない。着実にその方向を向いているし、他に向かうところのない道なので間違えようのない。結構な厳しい坂を登り切って田園地帯を抜けてやっと国道にたどり着いた。そして、ちょうど昼だしそこにコンビニもある。俺自身も全身がずぶ濡れ状態だ。雨自体も降ったりやんだりという感じではなく、降り続いている。コンビニ弁当を頬張って腹を満たして冷え切ったぬれたカッパを着て走り出す。
国道45号線沿いに南下して久慈を目指して走りたい。今日は天気も悪いしキャンプはせず宿を取りたい。そして洗濯戦略としても、久慈から先は宮古までコインランドリーはなさそうなので、久慈で洗濯をしておきたい。やるべきことは盛りだくさん、天気は最悪、道は厳しいアップダウン… なかなか先が思いやられる。雨足は時間を追うごとに厳しくなり、国道45号もハンパなくアップダウンが多い。三陸海岸の洗礼を全身で受けながら南へと走り続けていく。体のキレは昨日の安息日もあったおかげか戻っているので坂道への対処は悪くない。
海が全く見えない国道45号線で坂道と雨に耐えながら南下し、ついに青森県を抜けて岩手県に突入した。昔は旅の間に10個もの都道府県を駆け抜けるのも珍しくもなかったが、今年は青森、岩手の2県のみである。狭いエリアでじっくりと走り旅をするスタイルになってきてから1回の旅で2県か3県というパターンが定番になってきたようだ。岩手県に入っても坂道の具合は相変わらずである。
久慈に近づくにつれて、雨は少しずつ減ってきた。久慈にたどり着くまでの最後と思われる峠を越えるときに、ちょうど雨もやんだ。なかなか迫力のある下り坂で楽しみたいところだが昨年のトラウマからも抜け出せないし、路面もウェットなので無茶はできない。カッパは飛ばされる可能性もあるので脱がずに下り坂に入る。慎重かつ大胆に坂を攻めていく。一応は海に一番近い道ではあるが、結構な高さまで上っていたようだ。
久慈市内へと下りついて、まだ時間帯としては15時ぐらいなので遊びに行く時間はありそうだ。市街地へと向かう前に海沿いに左折してみる。三陸の壮絶なアップダウンを越えることもなく行けそうな水族館がある。しかも名前が「もぐらんぴあ」ということでなぜか地下に水族館があるようなのだ。面白いコンセプトが気になる。しかしながら、海沿いは風が強く水族館へ向かう道は向かい風である。耐えながら2kmほど走るとたどり着いた。
早速入ってみる。連休が始まったからか客は多い。地下に石油備蓄基地を作っているからコンセプトが「地下」ということになっているようだ。展示物は見応え十分なほどに多い。魚の種類も淡水魚から海水魚まで豊富で暗い空間の中でライトアップされていて楽しめる。意外と良い寄り道になった。
すっかり雨もやんで路面も乾きつつある道を進んで久慈市街地へと向かっていく。久慈駅前は意外と栄えている。観光案内所で宿を探すとあっさりと見つかり、ついでにコインランドリーも探していく。料理に使うご当地塩も購入し、宿へ向かう。まずは濡れてる荷物を解体して部屋に持ち込んで干す。充電すべきものは充電を開始する。濡れた服を脱いで風呂に入る。まずは、風呂で体もさっぱりして濡れた服も着替えてしまいたい。
濡れた服を汚れ物袋にいれてコインランドリーへと持って行く。街はお盆の迎え火で家の前で火をおこす人たちがいっぱいいる。街にぽつぽつと火が出てる様子は何とも風情がある。コインランドリーの洗濯機に放り込んで洗濯を開始したところで、スーパーに行って買いだしをする。明日の朝食と非常食、おやつの南部せんべいを買い込んで宿へ戻る。
荷物を置いて再びコインランドリーへ行き、洗濯機から乾燥機へ洗濯物を移して、夕食に行く。街の中に雰囲気の良い店は何軒かある。こぎれいな居酒屋へ行き、また三陸の海の幸を満喫する。ホヤ酢に近海ものマグロにウニ… 三陸の海の味は深く美味い。すっかり満足してコインランドリーに荷物を引き取りに行き、宿へ戻る。オリンピックのダイジェストを見つつ、居酒屋で一人考えていた9月の結婚式の余興プロジェクトの腹案をみんなに配信して眠りについた。 |

種差海岸 霧と雨でイマイチ
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地上部分はこぢんまりしている
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もぐらんぴあ 入り口
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もぐらぴあ トンネル水槽
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久慈 近海マグロの刺身とホヤ酢
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久慈 ウミタナゴの塩焼き |
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7日目 |
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久慈 → 野田 → 田野畑・北山崎 → 岩泉 |
98.82 km |
2008/08/15 |
朝っぱらから宿主から宗教関係の冊子を渡されて若干困りながらも宿を出発した。天気はイマイチだが空は明るい。まずは、久慈市内から小袖海岸の方に走り出す。海沿いの激しいアップダウンも覚悟して向かっていく。険しい崖の下に続く道。荒れてはいないがスッキリとした青ではない海沿いに色んな形の岩が続く。複雑な地形の海岸線に沿って狭い道が続き鋭いカーブがつづく。走り甲斐のある道だが、写真の撮り甲斐もある。かなり楽しんで海岸線を走り抜けていく。
海女小屋を越えると道は内陸へと入っていく。また気が重くなるような坂を越えないといけない。道も狭いし坂も容赦ない傾斜である。国道から外れると三陸のアップダウンは容赦ないのだ。海沿いの道とは思えないような深い山を登っていく。海岸沿いのアップダウンの多い道というよりは本格的な山岳ロードのような雰囲気である。坂に苦戦しながら上っていく。三陸に入って2日目だというのに早くも疲労がたまってきた感がある。
苦戦した坂を越えたら急な下り坂が始まる。道も狭いし傾斜も容赦ない。フルブレーキングでも止まりきれないほどの加速が始まる。カーブの向こうに軽トラックが見えてきた。かなり早めに見つけてブレーキをかけて対処する。操るのも精一杯な坂を下りきって海岸線に再び出る。海は入り江で穏やかである。広い感じのしない三陸の海を左に見ながら、下りすら疲れる坂を終えた余韻を落ち着かせながら流していく。
ひとまずは国道45号線に復帰して野田の道の駅で休憩だ。休憩しつつ御当地ソフトクリームを満喫する。野田は東北では珍しく古くから製塩していた歴史もあり、菊の産地でもある。これらをコラボした のだ塩ソフトクリームである。少し塩気のあるところが、糖分と塩分を消費している俺の体にありがたい。疲れていると美味しいと感じるものだろうか。塩味と甘みのコラボは食欲を増してしまうものがある。
国道から外れた道と比べたら本当に楽だと感じてしまう国道45号線だが、アップダウンはきっちりと多い。三陸の壮絶さが俺の感覚を麻痺させている。海沿いに出たり、山岳ルートのような内陸に入ったり変化に富んだ道を満喫しながら走り抜けていく。それにしても三陸に入ってから国道が低地に降りてくるたびに標識が出る。「津波注意」と書いてある。注意しろと言われても注意のしようがないような気はするが、慣れない標識に怖さも感じる。そんな怖さを覚えて走る昼に突然けたたましい役場のサイレンが鳴り響いた。もしかして津波!? という焦りが出た。どうやら終戦の日ということで黙祷を行う合図のサイレンだったようだ。
一安心したところで、普代駅で休憩する。ホームに止まっているローカル線を見て旅情を感じつつ涼しい日陰で体を休める。昼食には少し早いし、北山崎に向けて走り始める。もう一山頑張ってみようといったところだ。ここからは国道から外れる。険しい崖が続くルートで当然ながら道は崖の上へと上がっていく。海岸線からは容赦ない坂が始まった。崖沿いが山だからか天気が不安定で霧が立ちこめたり急に晴れたりを繰り返している。刻一刻と状況が変わる空と坂に苦しめられつつ上っていく。上る前に昼飯を食えば良かったと後悔するほど道のりは長い。なかなかたどり着けない北山崎に向かいつつ坂を登り切って高原のようなところに出た。 |

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久慈市 小袖海岸 つりがね洞
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道の駅・野田 塩べこ
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のだ塩ソフトクリーム
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まずは黒崎で眺めを楽しもうと寄り道をしてみるが、岬の展望台への道がわかりにくくキャンプ場の周りをさまよう。面倒になってスルーして再び北山崎へと向かう道を走り出す。坂を登り切ってしまうと軽いアップダウンが続く高原のような道路が続く。空は晴れ上がってきた。ほどなく北山崎へと曲がる分岐にたどり着いた。左折してすぐに岬の駐車場に着いた。連休まっただ中ということもあり車は大量にとまっている。まずは、腹が減ったし、店もいっぱいあるので昼食にする。やはり三陸で飯を食うとしたら、あるのであれば海鮮丼なんかが目に付く。三陸のウニとイクラをふんだんに使った荒磯丼とワカメと昆布の刺身で昼食にする。やはり、魚介類の旨さはハンパじゃない。ウニがとろけるような味わいでたまらない。しゃきしゃきして味の濃いワカメや昆布も美味しい。
お腹いっぱいになったところで北山崎を眺めるべく展望台へ向かう。きれいに整備された公園、見やすく崖に飛び出た展望台から眺めると、断崖絶壁がずっと南へ続いている。その地形は変化と迫力がある。遠くの方は霧が立ちこめているが、それだけに距離とスケールを感じる。海も青く鮮やかで岩と木々の緑と空と海の青と霧の白のコントラストが良い。見てるうちに霧の状況が刻々と変わっていくと崖の見た目も変わってくる。
迫力をしばらく満喫したところで、田野畑ミルクのソフトクリームが気になって糖分補給。少し食いすぎの感があるが、このあとの壮絶な道のりに備えて良い補給となった。田野畑村産の濃厚なミルクの味が美味い。また高原のような道を走り抜けていく。一度、海沿いへと下る。どうせまた上るのは分かっているので下り坂が全然嬉しくないのだ。そして、霧も濃くなってきた。北山崎から眺めていた南の方は霧が消えなかったので、このあたりは天気がよくないのだろう。天気の変化の大きさに戸惑いつつ進んでいく。 そして、また上り坂が始まる。国道45号線に戻るのだが、道路は内陸を通っているので標高は高そうだ。さらに、県道が通行止めのため林道を上っていくようだ。また急な坂道が続いていく。今日は既に何個目の峠を越えるのだろうか。まだ峠は3本程度は残っていそうなので踏ん張りすぎず体力を温存しつつ上っていく。谷底を上っていく道の上に赤い大きな橋がかかっている。ものすごい高い位置にある。もしかして、あんなところまで上るのか? その予感は的中した。狭い林道のような道をグイグイと上っていく。
やっと橋のたもとまで登り切って国道45号線に復帰した。次は鵜の巣断崖へと向かう。また国道45号線は軽く一山越えようとしている。鵜の巣断崖へ向けて道は下り始める。このルートをあとで戻るので、この先で上る道を下るブルーな気分である。険しい崖の上にしてはなだらかな牧場のわきを鵜の巣断崖へと下っていく。断崖に近づくと霧が徐々に濃くなってきた。駐車場に自転車を置いて断崖へと歩いていく。断崖に出ると完全に霧で視界が消えた。眺めは何もないが波の音だけが下の方から聞こえてくる。また松林の中を歩いて駐車場へと戻る。 |

荒磯丼
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こんぶの刺身
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北山崎の眺め
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田野畑村のミルク ソフトクリーム
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北山崎から下る道
晴天と霧が印象的
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この谷底から上ってきた。
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さっき気持ちよく下ってきた坂道を上っていく。もう6個か7個ぐらい峠を越えてる俺の脚は限界に近くなってきた。距離もすでに70kmを越えている。国道45号線を少し北上しながら坂を上り、県道に入って内陸へ進む。目的地は竜泉洞のある岩泉で、まだ15kmほど残っているし、地図で見ても明らかに一山越える。峠を登り始めると雨が降ってきた。天気に変化がありすぎて雨からも逃げ切れない。しばらく雨の中で峠を登っていく。道は広くて走りやすく傾斜は他の所と比べればリーズナブルに思えてくる。やや薄暗くなってくる道を少しずつ上っていく。
やっと峠と思われるトンネルを抜けた。トンネルを抜けると雨もやんで気持ちよく下れる。峠を下りきると国道455号線に合流して道の駅とキャンプ場があるのだ。もう少しでキャンプできる場所にたどり着く。そのモチベーションで久しぶりに吹っ切れた気分で坂を下っていく。
坂を下りきって国道455号線に合流する。2kmほど国道を流すと道の駅に着いた。店は全て閉まっている。道の駅の隣にあるキャンプ場へ向かう。雰囲気はオートキャンプ場である。管理棟へ行ってみると驚きの高額料金、しかもシャワーも風呂もない。ここに泊まるメリットが全く無いし今日は壮絶な坂との格闘もあり雨にも打たれている。体を洗いたい気持ちは強い。しかもホテルより高いキャンプ料金。
完全に日は沈んで一気に暗くなってきたが、あと10km先の竜泉洞前のキャンプ場へと向かうしかないようだ。久々のナイトランになった。しかも山深く道は暗い。後ろから来る車に気をつけながら進んでいく。道はさらに上りつつもアップダウンしていく。ナイトランは精神的にきついが、進行は良い。走り自体は90kmを越えているとは思えないほどの快調ぶりで、何とか竜泉洞へと曲がる分岐にたどり着く。
奇跡的に営業している一軒の商店で野菜を買い込み、少しは今夜の夕食が食えるものになった。しかしながら、主食はレトルトのカレーしかない。これも仕方ないだろう。また一踏ん張り、竜泉洞への坂を上っていく。本当に真っ暗な道で明かりは俺のチャリのライトとたまにある街灯だけだ。時刻は既に19時を回っている。竜泉洞を過ぎて、やっとキャンプ場に着いた。一安心した感じである。
受付を済ませてサイトにテントを張る。キャンプ場にコインシャワーもあるので、荷物から着替えとシャンプーを出して風呂に入ろうとしたら雨が降ってきた。小雨ではなく本格的な雨だ。屋根付きで明かり付きの炊事場があるので、そこに自転車も止めて自炊道具も食材も置く。隣のテントのカップルも、炊事場に移ってきた。疲れてる俺は愛想を見せる体力もなく淡々と作業をこなして、シャワーを浴びる。何とか汗臭さを洗い流して、ご飯を炊く。疲れ切った俺、ビールを入手することもない夜、雨が降りしきる… 何となく暗い夜となってしまう。ご飯に続いてレトルトのハヤシライスソースを温める。せいぜい、野田塩をキュウリに付けて食うぐらいのあがきしか見せれない晩餐。大して美味さも感じられないほどの疲れで夕食を終える。
雨音が響くテントの中で疲れた体を休めて眠りについた。今日は久々に壮絶な走りだったと思える。この激アップダウンの中で、よく走り抜いたものだ。我ながらそう思う。 |
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8日目 |
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岩泉・龍泉洞 → 田老 → 宮古 |
77.29 km |
2008/08/16 |
朝には雨もあがった。しかしながら濡れたテントを片付けるめんどくささはある。昨夜はテンションが低すぎて何も会話しなかったが、チャリ旅をしている二人組とも朝から話しつつテントを片付ける。竜泉洞が開園する8:30にはキャンプ場をあとにした。夜中の早い時間で雨があがったからか路面は乾いている。今日も空はスッキリと晴れていない。やや寒いぐらいの涼しさの中で竜泉洞へ行く。キャンプ場から2分もかからない至近距離にある。
入場券を買って洞内へと向かう。その前にウィンドブレーカーを着ておく。予想通りで洞内を進んでいくと徐々に気温が下がってきたようだ。さらさらと水が流れる音のする鍾乳洞である。見回すと色んな形の鍾乳石がある。色んな鍾乳洞を今まで見てきたものだが、ここもなかなか見応えのある規模である。ライトアップされて浮かび上がった丸みを帯びた白い鍾乳石を見るたびに、想像も付かない時間をかけて成長してきたスケールとか時間を感じる。奥に進むと足下には地底湖ができている。地震の影響か濁りが見えるものの、奥の方まで見える青い湖面がそこにある。色は青と緑が混じったような感じで神秘的である。地底にこんな湖があるのは不思議である。ただ、広さは目の前にはなく地中深くでは相当な距離まで繋がっているようだ。
寒さにやや震えつつ洞内を進んで出口へと向かっていく。多少は階段があるものの、歩きやすい洞窟である。洞窟を出て向かい側にある竜泉洞科学館の方も見に行ってみる。科学館と銘打ってあるものの、これも洞窟である。なぜかこっちは科学館展示ならまだしも洞内も撮影禁止となっている。減るもんじゃあるまいしと思いながらも洞窟の奥深さを満喫していく。
見学を一通り終えたところで、竜泉洞の水で淹れたコーヒーと五平餅で朝食にし、竜泉洞のわき水をボトルに汲んで出発する。川沿いにゆったりと海へと下っていく。山深い谷に沿った川を下っていく。こんな感じで激しくアップダウンすることもなく峠を越えることもなく走る区間は久しぶりのような気がする。小気味よく飛ばして小本に下りきって国道45号線に合流した。また南へ向かいながらアップダウンに耐える道が始まろうとしている。今日は空が曇っていて日差しが無い分だけ気楽に走れる。 |

竜泉洞の洞内
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竜泉洞の地底湖
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竜泉洞の銘水
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朝食の五平餅
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竜泉洞の銘水で淹れたコーヒー
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しかし天候が良ければ脚が売り切れということで、襲いかかる長い上り坂に脚は疲労いっぱいで踏むたびに脚全体に怠さと痛みが走る。道の駅たろうのあたりが頂上と思われる峠を登っていく。単純な上り坂ではなく徐々に上りつつアップダウンしてる地形が泣ける。小さめの峠を3つほど越えるような感じで捗らない走りではあるが、たろうの道の駅に昼前にたどり着いた。早速、昼飯を食おうと思ったが意外とコンテンツが充実していない感じの道の駅で地場産品っぽい弁当もないし、売店にもない、あまり魅力的なレストランもない。田老の町まで下るのも考えたが、三陸の町は都市規模が読めないところもあり、昼食を先延ばしにすると食いっぱぐれる恐れもあるため得策でもない。焼きおにぎりと蕎麦で昼食を済ませる。不思議なことに旅の空に出ていると、こんなものでも美味しく感じてしまう魔力がある。 |
峠を下ると田老の町にたどり着く。意外と町が栄えていて店も多かったので驚く。こんなことなら道の駅はスルーしてここまで来れば良かったと思ってしまう。津波を防止するための高い防波堤もあり、津波被害の凄まじさと構えを感じる。
また田老から一山越えて宮古を目指す。売り切れ気味の脚には過酷な上り坂が続いていく。連休中で交通量も多く、あまりマイペースにも上れず、トンネルも続くので緊張感のある走りが続いていく。宮古市の市街地手前に浄土ヶ浜があるので、そこに立ち寄りたい。そこに向かうための国道ではない道があるので、分岐を見つけて曲がりたいところである。しかしながら、海岸線にでれるはずの道は見つからず最も市街地寄りから浄土ヶ浜へと曲がる道に出た。
国道から浄土ヶ浜へ向かう道は容赦なく上っていく。相変わらず三陸は国道から外れると道は情け容赦無しである。しばらく進むと橋の上に出る。橋の上から見下ろす浄土ヶ浜へ繋がる海岸線は見事である。自転車を置いてしばらく眺めていく。橋の上から箱庭のような海岸線の写真を撮っていく。
脚がとまったところに岩手県立水産科学館という、やや堅い感じの水族館がある。北海道の函館で北洋漁業博物館に行った時は意外と楽しかったので、ここでも立ち寄ってみる。岩手近海での漁をメインとして水産業についての展示がある。特設コーナーには宮古近海で捕れる魚介類の展示もある。俺の目には生け簀に入ってる魚介類に見えてしまう。
やや混み気味の駐車場と道を通り抜けて徐々に下っていき、浄土ヶ浜へ降りれるドライブインと駐車場に到着した。これ以上を自転車で下るのは無理なようだ。道はあるのだが指定車のみの通行となっている。近道となっている売店を通り抜けた先にある階段を駆け下りていく。降り立つと白い岩が続く海岸線がある。遊歩道を歩いていくと、浄土ヶ浜に出た。白い岩と上に生える松の緑、やや曇り気味で青さに欠ける海だが透明度は高い。南紀の橋杭岩などを思わせる造形が見事である。複雑な形の岩と海が美しい。いかんせん人が多すぎて大自然の感動… というのは、やや薄い。 売店に宮古市観光協会があったので本州最東端 到達証明書を買う。うっかりしたことに到達日の印は今日ということで押されてしまった。実際にたどり着くのが明日なのだが…。浄土ヶ浜をあとにして駐車場へと戻っていく。駐車場に来るまで楽しく自転車で下ってきた道を戻る。もちろん激しい上り坂である。売り切れた脚をいじめつつ上へと上っていく。 |

浄土ヶ浜の近辺の海岸線
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岩手県立水産科学館の中
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浄土ヶ浜の岩と海
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また厳しい坂を越えて国道45号線に戻る。5kmほど走ると宮古の市街地へと下り付いた。まずは、宮古の道の駅へと向かう。泊まろうとしている場所は店などなさそうな感じなので買い出しは宮古の市街地で済ませたい。道の駅なら地場産品は期待できそうである。店の中は、かなり充実している。新鮮な魚介類にしても乾物などにしても何でも手に入りそうだ。一般的な食料品は無いが地場産品系は良い。イメージもふくらみそうなラインナップである。刺身を2品買い、味噌汁なんかにも使えそうな乾燥メカブを買う。荷物の上にくくりつけて宮古の市街地方面に向かう。味噌汁に使う豆腐や明日の朝食は今夜のキャンプ予定地でもある宮古郊外の津軽石へ向かう途中で買っていきたい。
宮古の市街地を通り抜けて、津軽石方面に向かっていくと、徐々に店も減って寂れてきた。一度、市街地へ引き返す。駅前に行って商店で、明日の朝食にするおにぎりと味噌汁に入れる豆腐を買っていく。コンビニでカセットコンロ用のガスも買っていく。東北に来てから積極的に自炊をしているので既に2本使い切ってしまっていたのだ。買うべきものは全て手に入れてキャンプ予定地へと向かう。やや薄暗くなってきたので先を急ぎたい。まだ8kmほど距離がありそうだ。市街地を抜けると道は深く食い込んだ入り江となってる宮古湾に沿った道となってきた。入り江の奥まで行って対岸側に渡ったところにキャンプ場はあり、その近辺に温泉もあるのだ。
遠くに温泉の明かりも見えてきた。一気にペースも上がる。まずは温泉の場所を確認した。隣にコンビニもあった。入り江と川を渡って対岸へと行く。運動公園内にキャンプ場がありそうな地図表記となっている。まずは運動公園内に乗り入れてみる。入り口はチェーンをかけられていて車両は既に入れなくなっている。公園内に人影は全く無い。結構な広さの園内を探すとキャンプ場と思われる炊事場は見つかった。しかし、水道は止められている。最悪の場合は温泉が簡易的な宿にもなっているので泊まる場所に困ることは無いのだが、自炊の食材を全て買い込んでるだけに困ってしまう。陸上のトラックに入り込めば水道があったので、その近くの木の下の芝にテントを張る。荷物を放り込んで、風呂へ向かう。
すっかり暗くなった道を戻って風呂へ向かい、広々として露天風呂まである立派な温泉で疲れを取る。何だかんだで今日もハードな走りだったように思える。三陸に入って3日目だが、アップダウンは想像を超えるものがある。脚の疲れをしっかりと落とすように湯船の中で筋肉をほぐす。
テントに戻って夕食を作る。まずは飯を炊き、その間に魚をさばいて刺身にする。近海物のカジキとカレイだが、どちらも歯ごたえも味も良い。脂ものっていて美味しい。ビールが進んで仕方ない。ご飯が炊けて蒸らし段階に入ったところで、味噌汁を作る。お湯を沸かしてちぎったメカブを入れて豆腐と味噌を入れる。メカブのヌルヌル感と良い出汁が出て美味い。しかしメカブはもっと細かく切らないと、ぬるぬるした大きな塊が食いにくい。飯を食ってる最中にポツポツと雨が降ってきて、片付けを急がされた感があるが満足な晩餐だった。 |

買い出しを終えて
荷物を背負うランドナー
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カジキとアブラカレイの刺身
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メカブの味噌汁
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9日目 |
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宮古 → 本州最東端・とどヶ崎 → 山田 |
51.79 km |
2008/08/17 |
昨夜の雨は大降りになることはなく止んだ。今日は早めに起きて出発したいのだ。空は晴れていた。テントの前でおにぎりを頬張って朝食にする。空荷の自転車でゴミを捨てつつコンビニに電池を買いに行く。キャンプ場としては閉鎖されていてゴミも処分できず、これを持って走りたくないのだ。
テントを片付けて7時にはキャンプ場をあとにする。今日はレーサーパンツを穿いて走り重視で行く。波が無く鏡のように輝く宮古湾と朝焼けを眺めつつ重茂半島を走り始める。また国道から外れるし、今日の最初の目的地はなんと言っても重茂半島の東の先端の岬にある本州最東端・とど(魚へんに毛)が崎である。
平らで見た目には変化が多い海岸線と静かな入り江を眺めて楽しめる宮古湾沿いを7kmほど走ると、道は内陸へと入っていく。まずは一つ目の峠へと登り始める。道も狭く深い森の中を上っていく道である。地図上でも200m以上は標高を稼ぐ峠であり、本格的とも言える。疲れが残る俺の足ではきつい。そして国道から外れた三陸の秘境は坂道も容赦無いのだ。広葉樹の森が続く森の峠を登っていく。道自体は気持ちが良いけど、疲れのたまる足と傾斜は厳しい。
やっと峠を越えると壮絶な傾斜の下り坂が襲いかかる。俺の体重と荷物を合わせると自転車のコントロールに苦戦してしまう。厳しい傾斜の途中にあるカーブ、道幅も狭く何があっても不思議ではない。強めのブレーキを常にかけながら進んでいく。下りきったところで自販機があったので一度休憩して筋肉を伸ばす。登りも下りも気を抜けないところで、疲れがたまってしまう。
そして二つ目の峠に立ち向かう。1つ目ほどの上り坂の迫力は無いがダラダラと長く感じる。深い森を抜けて進んでいく。やっと岬へ向かうための遊歩道の入り口がある姉吉へと曲がる分岐に来た。また容赦無い下り坂が続いていく。岬に到達したあとで上り直すことを考えるとホントにブルーな下り坂である。森と何軒かの民家の前を慎重に通り過ぎて坂がなくなった。坂の途中でキャンプ場の受付をしている民家があり、下りきったところにキャンプ場がある。ここは本州で最も東にあたるキャンプ場だろう。本州最東端で朝日を見たりするには、ちょうど良い拠点である。しかし、買い出しは宮古でしていかないと店は一切ない秘境だ。
港の前に自転車を置いて行く。既に3台の自転車と1台のバイクが置いてあり、岬へ向かっている人がいるようだ。目立つ看板の脇の細い遊歩道を歩いて向かっていく。頑張ればMTBなどでも行けるという噂はあるが、そんな無理をしてもしょうがないし、いきなり鋭い傾斜で上っていく道なので、歩いていく。虫除けのスプレーを腕と足に噴いて、撮影用の三脚を持って行く。岬で人と会う可能性は低いので写真が撮れるように準備する必要があるのだ。山深い遊歩道からは崖下の海とリアス式海岸が時折 見える。岬までの残りの距離も示してあり進捗もわかりやすい。最初の傾斜が急だった以外は、そんなに傾斜も厳しくない。ただ、真夏と言うこともありアブがブンブン襲ってくるのでタオルで振り払いながら進んでいく。虫除けスプレーや蚊取り線香を持ってきても良かったかもしれない。 1時間弱ほど歩くと、いよいよ岬へ一気に抜けそうな雰囲気になってきた。もう残す距離もわずかだろう。そして森の視界が開けて海岸の岩の上に出た。そこには「本州最東端の碑」と書いた石碑がある。ついに、最もたどり着くのが大変とも言われている本州の端を制した。周りは海が広がるパノラマと険しい岩、白い灯台と青い空と海。端っこというのは気持ちの良いものであり特別なものである。
灯台のあたりに居た大学生のチャリダーたちがこっちにやってきた。学生のサイクリング部で三陸を走るのもなかなか珍しいものだ。何しろ若いので元気も良い。一緒に写真を撮ったりしながら旅について語り合い、俺は灯台へ彼らは帰りの道へと歩いていく。海に突き出た岬の灯台は白く高くそびえ立っている。やはり岬とか端っこには灯台は欠かせない。
俺も遊歩道を歩いて自転車へと戻っていく。またアブをタオルで追い払いつつ歩いていく。こんな秘境だと言うのにすれ違う人の数は意外と多い。自転車へと下りきって、買っておいたパンを昼食に食って旅立つ。キャンプ場を少し偵察して行く。トイレなどの設備はちゃんとしていて、この岬を目指す人は朝日が見える時間帯を狙って、姉吉キャンプ場を拠点に行動しても良いだろう。 |
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朝食の鮭とおにぎり
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朝の宮古湾
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とどが崎へ向かう道
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姉吉漁港
自転車で行けるのはここまで
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ここから遊歩道へ入っていく
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険しくはないシングルトラックが続いていく
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とどが崎
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本州最東端の碑
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先ほど、コントロールに苦しみつつも下ってきた坂を上っていく。一番軽いギアで踏み込まないと上っていかないほどの壮絶な坂である。チェーンがちぎれるのではないかと思うほどの踏み込みで登り切って、また山田の方へと向かっていく。一度海に向かって下っていく。相変わらず急な下り坂である。
下りきって民家が何軒かあるのを見送ると再び上り坂が始まった。地図によると標高390mもある峠へ向かっているようだ。たしかに道の狭さも傾斜も容赦無い感じである。とっくに売り切れてる俺の足では過酷すぎる坂がどこまでも続く。そして山深く海沿いであることすら忘れてしまうような道である。久々に本当の意味で限界を感じてきた。そして、走りは捗らないままに、時間だけが過ぎて行く。レーサーパンツまで穿いているが走りは伸び悩み、今日の目標地点としていた釜石は遠くに感じてしまう。
山深い峠を登り切ると、やっと海が見えてきた。そして、また深い山の中を下っていく。谷底に何軒かの民家があり通り過ぎたら、再び急な坂が始まる。自分の経験から地図を見てアップダウンの峠の数を読めるのが救いで、3つの峠のうちの2つめだと思いながら上っていける。ただのアップダウンというよりは峠が連続しているような地形で、海岸沿いではなく山岳コースと言った様相である。疲れた足には標高200m程度とも書かれている峠ですらこたえてしまってどうしようもない。
また峠を下って山田までの最後と思われる峠を登り始めた。ここは上りながらも海が木の陰から見える。右は山深く左は海、そんな感じであるが、眼下は木が生い茂っているものの断崖絶壁といった感じの地形だ。そして、上るほどに山深くなり海は見えなくなる。体力なんてとっくに使い果たしたところで、やっと登り切った。おそらく3つめの峠を越えて山田に下れば当分は激アップダウンの連続は落ち着くだろう。地図を見る限りでの希望的観測である。 |
また壮絶な下り坂が始まる。重さを帯びた自転車はコントロールが難しい。減り始めたブレーキシューのセッティングを再びやらないとベストなブレーキ状態とは言えない。何とかコントロールして下りきり、海沿いの穏やかな道を走り始める。山田湾の養殖いかだを見つつ平らな道を流していく。平地だからと言って踏み込んで飛ばしていく元気は残っていない。
穏やかで深く食い込んだ入り江である山田湾は養殖が盛んで独特の雰囲気がある。それを楽しみながら湾沿いの道を進んでいく。そんな漁村で思わぬ一山があったが、何とか越えて再び国道45号線に合流した。県道や名もない道はアップダウンが激しすぎるが、国道に合流するとなぜか落ち着くのだ。それでも国道45号線は、国道という部類の中ではアップダウンの数はダントツで多いと思われる。慣れというか感覚の麻痺は恐ろしい。
国道から湾の眺めを楽しみつつ山田の市街地を抜けて船越半島に差し掛かる。道の駅があるので、そこで休憩だ。疲れ切った体に栄養補給で、名物のワカメソフトを食う。正直、微妙な味だ。既に夕方の4時で、体力的には売り切れ、釜石まで25km近く残っている。釜石自体も風呂や寝床を確保できるか未知数で、夕方の遅い時間から探すことは免れない。目標は未達だが山田なら温泉もキャンプ場も目の前にある。買い出しも道の駅で可能。ふと、釜石へ急いでいる自分が昨年の男鹿半島で事故にあった自分の精神状態と重なった。俺の迷いは払拭されて、山田での宿泊を決定した。
そうと決まればテンションは上がってきた。夕食の食材を買い込む。道の駅で魚介類もそこそこ充実していて地元名物のうどんもある。昨日買ったメカブでうどんを作って、キュウリと筋子をつまみにして飲むというプランができあがった。キュウリも東北ならではか太くて珍しい品種のものがあるのだ。
買い物を済ませて船越半島へと入る。まずは入り口にある鯨と海の科学館へ寄り道して見学していく。マッコウクジラの標本や鯨に関する展示がある。閉館間際だったが、受付のお姉さんは融通の利く人で快く入場させてもらえた。広々としたレイアウトに大きな鯨の模型があり、なかなか見応えのある科学館だった。
アメニティは充実している割に無料で、管理しているようで大ざっぱなキャンプ場でテントを張る。海辺なので工夫すれば海を見ながら飯も食える。テントを張って、ブレーキをメンテする。フロントはシューを交換してトーイン調整をする。リアはさほど減っていないようなのでワイヤーの調整をする。握った感じでは、だいぶブレーキ力が改善されそうだ。
そして風呂に入りに行く。歩いても行けるところに温泉がある。疲れを癒してビールを買ってキャンプ場へ戻る。すっかり暗くなったが、まずはメカブを水で戻して、うどんを茹でる。茹でながら筋子とアカモクでビールを飲む。筋子も小さなパックが無くて買いすぎた感があったが食うタイミングの分散化で飽きを防ぐ。秋田のギバサにも似てるネバネバ系の海藻であるアカモクは美味しい。そして、ゆであがったうどんのお湯を捨てに炊事場へ行く。慎重にお湯を捨てて水でシャッキリと仕上げる。普通のキャンパーはまず持たないと思われる特大コッフェルで茹でると美味いのだ。そしてマスターしきった水切りをやって、うどんは完成した。メカブを入れてヌルヌルに仕上げて食う。晩酌の締めとしては最高のうどんとなった。稲庭うどんにも似た細くて薄い食感が気持ち良い。
久々の星空を見ながら夜は更けていって、眠りについた。疲れたし、目標だった釜石まで行けなかったが、本州最東端も制したし、俺の体力で走りきり良い判断をできた自分は褒めたいと思う。 |

山田湾の眺め
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道の駅やまだ わかめソフト
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鯨と海の科学館 館内
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マッコウクジラ 実物大模型
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三陸産のアカモク |

岩手産小麦粉と
三陸沖海洋深層水で打ったうどん |
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10日目 |
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山田 → 釜石 → 笛吹峠 → 遠野 |
70.15 km |
2008/08/18 |
壮絶な昨日の走りの疲れは足に残るが、天気はスッキリと晴れた。昨日より一層鮮やかな山田湾が見える。岩手の名産なのか、うどんのような生地をあんこで和えた あずきばっとう を朝食にする。冬場は暖めてお汁粉のようにして食べるし、夏は冷えたままでも良いようだ。もちろん暖めるのは面倒なので、そのままコッフェルに開けて食べる。こういう形のほうとうも良いと思ってしまうものがある。2パックセットだったアカモクの2パック目も昨夜に続いて食べて元気が出て来たような気がする。
片付けてキャンプ場をあとにした。今日でひとまずは三陸の海岸線の走りは終わりとなるが有終の美を飾るような鮮やかな海の眺めが良い。国道45号線を釜石へと向けて南下していく。時々は海を左に眺めつつ行きたいところだが、交通量が多く油断はできない。展望台やドライブインはいっぱいあるので積極的な寄り道で景色を満喫していく。今回の旅の日程では仙台までは走りきれないが、三陸の北半分を完走という快挙を祝うような景色を満喫する。俺の足に優しくアップダウンも少ない。12kmあまりの楽しすぎる海岸線を走り抜けるのはあっという間であった。
少しずつ日本一周をしているサイクルツーリストと出会った。宮古から午前中だけで、ここまで来てしまっている。とどが崎も回っているというので驚きの体力である。俺も生涯現役を目指すのであれば、もっと鍛えないといかんと実感してしまうものがある。そして浪坂海岸を越えると現実は襲いかかる。海から一度半島をまたぐように内陸へ入ると坂は上り始めた。小さな峠ですら俺の足に止めを刺すには十分すぎる。すぐに足が止まってしまう。 |

あずきばっとう(冷)
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快晴の山田湾の眺め
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浪坂海岸の眺め
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四十八坂海岸の眺め
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峠を何とか越えて緩い下り坂を抜けていくつものトンネルを抜けていく。あと5kmほどで三陸を離れて一山越えて遠野へ向かう県道に曲がる。コンビニを見かけたので昼食を買い込む。大したものは持たずランチパックを2つほど持つだけだ。俺の感では、この先は店がなさそうなのだ。長いトンネルをいくつか抜けたら遠野へ向かう県道35号線への分岐に差し掛かった。長くもきつくも楽しく自分をへたらせて鍛えてきた三陸の道もひとまずは終わりである。もちろん、ここから南半分も近いうちに走っておきたい。最もハードな海岸線へのチャレンジと三陸の地に拍手で別れを告げて右折していく。
とたんに車の数がぐっと減る。川沿いを快適に徐々に上っていく峠だ。遠野に向けて標高820mの笛吹峠を越えなければならない。最後にして最大の山場だろう。今回の旅で名もない峠はたくさん越えてきたが、標高はきっちりと820mもあるので本格的にヒルクライムである。俺の足にそんな体力は残っていないが、体にムチを打って上っていかないと三陸から帰ってくることはできないし完走は果たせないのだ。
そんな気合いと疲れに対する不安とは裏腹に快調に川沿いを走り抜けていく。この先で傾斜は厳しくなるのはわかりきっているので、温存しながらじっくりと行く。体力を使いすぎないことを心がける。ちょっとした集落と地場産品を扱ってる店を覗いたが、本格的に自炊しないと食べれそうもない野菜しか無かったのでスルーしていく。今夜は雨が降るようなので遠野はおそらく宿を使うだろうと思われるので、食材はこれ以上は買えない。進むに従って傾斜も厳しくなってきて、俺の足の疲労もずしっと響き始めた。最後の力を振り絞って上っていく。この峠ではアブなどに邪魔されることもなく、俺自身を表現しながら上っていけるようでありがたい。
ひとまずは上り坂の途中でチェーンの脱着所があったので、自転車を置いて昼飯にする。買っておいたランチパックを食って栄養補給をする。水を飲みきらないよう気をつけつつ、はふはふしてノドに詰まりそうなパンを詰め込んで、足の筋肉をストレッチして続きの坂に備えていく。そして、何か意を決したように上り始める。休んだ直後こそは調子が良かった。しかし、1割ほどを残したところで傾斜はますます厳しくなってくる。一応は川沿いだった道もついに川を離れて、ひたすら山頂へ向けて上っていく鋭いワインディングの様相を呈してきた。地図上では先は短いが俺の足は既に限界に達している。踏み込むたびに膝に違和感を覚える。今回のコース選択は仕事都合で仙台までは走れそうもないということで内陸への山越えを入れた形だったのだが、これ以上も三陸のアップダウンを走っていたら膝は壊れていたかもしれない。そんな悲鳴を膝から感じる。膝をいたわりつつも必要以上に慣れない力を使わないように気をつけながら上っていく。走りは捗らず、なかなか峠にはたどり着かない。
おそらく最後と思われるカーブを越えたら傾斜は緩くなって、右カーブとちょっとした分岐が見えてきた。そのカーブまで走り抜くと「遠野市」の看板が。やっと笛吹峠を制した。ひとまずは足をしっかり休ませつつ峠を登り切った余韻を満喫する。足や上半身の筋肉をしっかりストレッチして疲れを回復させる。遠野物語で伝説になっている峠のようだが学のない俺には分からない。 |

さらば三陸。遠野への分岐
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笛吹峠へ向かう川沿いの快走路
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笛吹峠 (820m)
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そして、下り坂に入る。三陸の海岸線のような容赦無い傾斜ではなく、コントロールしやすいカーブと傾斜である。加えて昨日の夕方に整備し直しておいたブレーキがよく利く。ブレーキは本当に重要である。思い切ったスピードとコントロールで気持ちよく下っていける。そして傾斜も緩くなって道も真っ直ぐになって、山奥から田園風景と変わってきたころに、遠野でとりあえずは有名どころのカッパ淵へと曲がる分岐に差し掛かった。
分岐を曲がると気持ちの良い田園風景をゆっくりと下りつつも、向こうに北上山地を眺めながら進んでいける。やや崩れかけてる天気に不安を感じつつも遠野の里を楽しんで走る。道の左にカッパとかミッキーマウスのような人形が大量に飾ってある場所があり、気になって写真を撮っていると、ちょうど近くにカッパ淵への案内看板があった。表口ではなさそうだが川沿いに歩いていけばたどり着けそうな感じである。自転車を置いて歩いていく。田んぼの中を曲がりくねる小さな川、味のある古い農家… 遠野の里風景を満喫しつつ歩いていくと、ガイドブックなどで見覚えのある岸が見えてきた。カッパを釣ることもできるようだが、正直なところで川が小さすぎて雰囲気がない。無理矢理でも風情を感じて、すぐそばの常堅寺を見てみる。カッパのように頭の上に皿がある狛犬などもあり、遠野らしさがあふれている。
有名どころを楽しんだところで、自転車へと戻っていく。自転車にまたがって近所の観光スポットである伝承園へ行く。時間帯としては、これが今日では最後になりそうだ。入場料を払って敷地に入ると、遠野の曲がり家が見て楽しめる。大きな日本家屋に馬を飼うためのスペースがありL字型に曲がっているのが特徴である。板倉と呼ばれている大きな蔵なども見て古き良き遠野の里と家を満喫する。遠野って何が良いかということを聞かれると難しいものがあるが、こういう古き里を残しているところだろう。古い建物が建ち並ぶ遠野伝承園の庭は心地よい。
伝承園をあとにして市街地へと向かっていく。屋根の下でしのげるキャンピングスポットとコインランドリーを探す必要がありそうだ。遠野駅で情報を集めてみたが、結構それらは遠い。それに明日の朝になっても止みそうもない雨で、雨足は強そうである。思い切って宿を取ってしまうことにした。明日も雨なら遠野市内を観光するのも、何だかイマイチなので雨の中で一気に盛岡を目指して旅を完了としてしまう方向で決意が固まった。
ホテルを予約してチェックインする。まずはシャワーを浴びてサッパリしてから、汚れ物を持ってコインランドリーへ行って洗濯する。洗濯しながら溜まりに溜まった日記を書いてしまう。何とか3日分を書き上げて明日以降の盛岡での執筆に賭けるしかない。遠野市内にある居酒屋で夕食を食う。驚きは山深い割に海産物は新鮮で、野菜類が美味いのだ。ぷりぷりした枝豆が特に美味い。酒が進んでしょうがない夕食を満喫して、ホテルへと戻った。充電したり色々しつつ最終日に備えて眠りについた。 |

遠野の里 風景
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謎の人形達
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古民家とカッパ淵の川
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カッパ淵
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11日目 |
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遠野 → 花巻 → 盛岡 |
71.54 km |
2008/08/19 |
朝からしっかりと土砂降りの雨が降りしきる。気は重いが本日完走という決意を胸に準備をする。荷物が濡れないように防水をしっかりチェックし出発する。当初は早池峰山麓あたりを抜けていく計画だったが、国道396号で盛岡を一気に目指すことにした。天気は安定しないようだし旅を終えて楽になってしまおう、そんな気持ちだった。
まずはバイパスで軽いアップダウンを終えて、道の駅・遠野風の丘に寄る。朝飯はまだ食べていないので、ここで朝食にする。当然ながら売店ウォッチングと試食は欠かさない。驚きは枝豆の漬け物だ。昨夜の居酒屋で俺を魅了した味、漬け物にしても豆のぷりぷり感は保たれていて味がさらに濃厚になるのだ。枝豆を漬けるのは珍しいが美味しい。おにぎりと蕎麦で朝食を済ませる。味噌の焼きおにぎりが素朴な味で美味しい。テラスは雨だが、田園風景の眺めも気持ちの良い道の駅である。
また盛岡へと少し進んだところで観光だ。今日は三陸ほどではないがアップダウンはそこそこ多そうな道ではある。体力が心配だし休み休み行けばいいだろう。登坂車線も整備された峠を登ると途中に南部曲がり家・千葉家がある。足も限界近くてキレがないので、観光に立ち寄る。会社からやたら留守電が入っていてイヤな予感がする。雨をしのぎながら電話をかける。思わぬ長電話となったが体を休めるにはちょうど良い。昨日見てきた曲がり家よりだいぶ大きな家で中も手つかずで残しているという感じがある。馬を飼うための檻も、さすがに立派である。庭園を歩きながら古い家の眺めと見下ろす遠野の里の眺めを楽しんでいく。
雨で観光もそこそこだったが、今度は晴れの中でしっかり観光すべく、再び来たい地である。 |

雨の遠野駅前をスタートする。
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道の駅・遠野 風の丘 テラスの眺め
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山沿いに走っていく国道396号線は気持ちよくワインディングしながら進んでいくが、アップダウンは多い。疲れの残る俺の足には過酷な道でもあり、海沿いと違って坂の上り下りが地図上からは読み取りにくい。峠に続く峠を越えていくと少しずつ景色が山地から田園へと変わっていく。牧場や田園を見下ろしながら下って、また上る。雨が降ったり止んだりを繰り返す天気の中で天気も景色も変化に富んだ道を走っていく。徐々に楽しくもなってきたコースである。
盛岡まで40kmあまり残した状況で昼食にする。ちょうど、ジンギスカンの店があったのだ。遠野あたりは牧羊が盛んで羊肉は名物になっているようだ。せっかくなので、羊のジンギスカンを満喫していこう。雨でずぶ濡れの体だが店に入り、ジンギスカンと飯を頼む。1人でジュージューと肉を焼いている。周りは怪訝そうに見ているがマイペースに焼いていく。そして一切れ目を口にする。肉の味が軽やかで美味しい。臭みもなくラムの独特の味わいが良い。あっという間に平らげた。火を消してまったりしたところで出発した。
相変わらずアップダウンの多い道は続いていくが盛岡へ近づくにつれて振幅は減っているような感覚がある。大迫で寄り道して食べたワインソフトクリームを皮切りに、デザートロードになっている国道396号線だ。川沿いの扇状地だからか果物栽培が盛んで色んな種類の果物やそれにちなんだソフトクリーム屋が立ち並んでいる。そんな変化と美食に富んだ道を満喫していく。
紫波の道の駅まで行くと雨も完全にあがった。盛岡まで残り20kmあまりだ。カッパを完全にたたんで走り出す。気分的には晴れモードの走りになってきた。予報は90%の降水確率を誇るが見事に晴れに跳ね返した。そして、左に北上川を見つつ交通量も増えてきた。ちょっとした峠を登っていく。頂上に看板が見えてきた。「盛岡市」と書いてある。峠を越えて渾身のガッツポーズで盛岡市に突入した。完走もいよいよ見えてきた。残りは12kmほどだろう。
峠を下ると交通量は多く市街地へ向かう道の様相となってきたが、平地である。北上川沿いを気持ちよく走れる。だんだんバイパスっぽい感じにもなってきてスピードも上がる。ラストスパートする元気すら出て来た。やはり最終日は体を使い果たしていても勢いが出てくるものだ。国道から離れて川沿いで盛岡へ向かっていく。徐々に天気も悪くなってきたので、早々と完走を決めてしまいたい。
何度か盛岡市内に来ている俺にとっては見覚えのある景色となってきた。もう盛岡駅は近い。盛岡の市街地を抜けて駅へと距離を縮めていく。そして、駅前にたどり着いて今年のツーリングも完走を果たした。喜びが隠せない俺をクスクスと笑う人たちの目線が気になるが、この喜びをかみしめる。駅をバックに完走写真を撮っていると高校生に話しかけられる。絶好調のままにコーラとフレームで乾杯をする。今年は何かと墜ち気味の俺だったが燃え上がらせるためにあえて厳しいコースを選んだ。そして完走をきっかけに前に進みたかったのだ。もくろみは当たったような気がする。そんな良い予感を持って旅を終えることができた。そして、次は南三陸を走り抜け、さらなる旅路へ自分を誘いたい。
今日明日と連泊するホテルも順調に見つかり、もう気楽なものだ。屋根の下に自転車をおけることも分かっているので、全ての段取りが終わったようなものだ。ホテルへ行き、チェックインをする。シャワーを浴びて夕食を兼ねて1人打ち上げに向けて街へ繰り出す。良さそうな店を見つけて入る。釣り好きの店主であることが分かるような雰囲気の店である。ビールで乾きを癒して旅の完走の喜びをかみしめている。美味しい魚と酒に酔いながら1人旅路の幸せを満喫した。そして、シメにじゃじゃ麺を食べに行く。盛岡で食べるのは実は初めてであるが、なかなか美味しい。
すっかり満腹・満足である。旅の終了の喜びをかみしめて眠りについた。 |
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ジンギスカン(よねたや)
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大迫 ワインソフト
(ミルク工房 ボン・ディア)
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盛岡市 突入!!
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12日目 |
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盛岡市内 |
2008/08/20 |
休みはもう2日残っているので、盛岡に連泊していく。会社の同僚も東北の盛岡近辺を車で旅しているので夜には合流して飲みにでも行きたい。まずは昼間はヒマなうちに日記でも書いてしまいたい。ホテルを出て、駅前のコーヒーショップの中で日記を書く。まだ4日分ほど残っている。やはり日々の旅の中で毎日書くのは至難の業である。冷たいコーヒーを飲みつつ、手が疲れてしまうほどの勢いで日記を書いていく。集中して書いてるうちに、残り1日というところで昼になった。カップの中のコーヒーも氷もとっくに空だし昼飯を食いに出かける。 |
昨日のじゃじゃ麺に続いて、冷麺といきたいところだ。盛岡の麺といえば、わんこそば・冷麺・じゃじゃ麺というところだが、わんこそばについては、さすがに今日やる元気はない。かつては19歳で150杯という記録を持っているが今の胃と思い切りでは厳しいだろう。今度あとさき考えずにやってみたい気もする。駅の地下にある老舗の三千里で食べてみる。意外と混んでもなく席に通された。お好みでキムチを入れて辛さを決めるわけだが、まずはストレートな状態で食べてみる。わずかに利いたあっさりとした塩味とこしの強くよく冷えた麺が気持ちよく美味しい。やはり辛さは必要だとキムチを入れてさらに楽しむ。この食感と冷たさが気持ち良い。辛さとスイカの甘さもなぜか合う。満足だったと言いたいところだが店員の対応が最悪なのだ。客の目の前で喧嘩してる店員、食べてる横で乱暴にヤカンを置く、昼食時の繁忙時に床掃除。どうなってるんだ。味が良いだけに残念だ。 |

三千里の冷麺
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日記は帰りの新幹線で書けそうなので、盛岡市内を歩いてみることにした。雨が降ったり止んだりで不安定な天候の中だが、晴れで安定した感がある。盛岡の街中を抜けて盛岡城跡に行く。広々とした公園と石垣の上に立つと軽く市内を眺められる。自然がいっぱいで気持ちの良い公園である。
まだ時間はあるので街中を歩いて、今日の飲み屋を探して何軒か目に付く店を決めた。ホテルに戻ってまったりと過ごして夕方を待つ。自転車で疲れている足は重く、連絡待ちという状況に。やっと連絡が来たので再び盛岡城の方へ歩いていく。相手は親子3人と合流して目を付けていた店に入って飲む。旅の話にぶっちゃけた仕事話に家族の話に盛り上がった。子供は2歳なのだが、枝豆やつまみにしてるおかずに おにぎりに大喜びだった。昨日の店より楽しく飲めて、人数が多い分だけ美味しいものも種類が頼めたので事実上の打ち上げとなった。 |

どんこの唐揚げ 他
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13日目 |
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盛岡 −東北新幹線やまびこ→ 宇都宮 |
2008/08/21 |
昨夜の楽しい余韻とは裏腹に大雨が降りしきる朝である。ホテルの目の前に小さな郵便局があった。段ボールを3箱買ってホテルの駐車場で雨をしのぎながら梱包する。リアキャリアなども外して手際よく箱に詰めていく。もう、慣れたものである。ずぶ濡れになりそうになりながら、道を渡って郵便局へ段ボールを運び込む。伝票を書いて発送する。
自転車を押して歩いて傘をさしていく。駅の軒先で自転車をばらす。これも慣れたもので手際よく進めていく。そして、あっさりときれいに袋に収まった。一段落したところで昼食にする。地元の郷土料理なども含むバイキングで食を楽しむ。最後まで地場産品を欠かさずに食う食事を済ませる。駅の中で土産物を探す。上司に贈るのは決定打が無く今回は見送りにした。会社には旅の間の糖分補給にいっぱい使った南部せんべいが良いだろう。しかし、店が多い割に決め手に欠けていた。東北らしい色白できれいなお姉さんが目の前で焼いてるせんべい屋がある。この雰囲気で店を決めた。焼きたてをもらって食べてみると本当に香ばしくて美味しい。色々と買い込んでも大して高くないのが嬉しい。海鮮系も豆系もゴマ系も何でもあるのも楽しい。
土産にも満足して、いよいよ駅のホームへと向かう。この時間経過が俺を現実へと引き戻していく。しかし、俺の気持ちは次の旅へ向いていた。今回は満足して、どこに行くか分からないが、また旅路へと帰ってきたい。そんな気持ちで新幹線へと乗り込む。ホームで書いていた日記の続きを新幹線で書き終えた。
やがて列車は宇都宮へとたどり着く。駅前で自転車を組んで家に帰る。この流れも順調そのもの。家に帰り着いて、旅は終わった。やりきった気持ちも大きいし、次以降への期待度も大きい。難しく厳しいコースを我ながらよく走りきったものだ。そんな満足感に満たされた。 |

試食もできてお茶も出してくれる
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焼きたての南部せんべいを味わえる
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