0日目 |
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宇都宮 −東北本線→ 上野 −京浜東北線→ 東京
−東海道・山陽新幹線→ 広島 −山陽本線→ 宮島口 |
2009/04/25 |
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宮島口 ←→ 宮島 |
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宮島口 → 岩国 |
25.77 km |
今年はいつもと違う旅の始まりを迎えようとしていた。極度の燃え尽き症候群によるモチベーション低下、親の病気がきっかけで帰省を交えたコース設定。当初は志摩半島と南紀の熊野古道をもくろんでいたが2週間前に計画を変更した。闘病生活の開始直後、何とか元気付けたり重要なタイミングと俺は見たのだ。
福岡に帰省した次の週末には荷物をまとめて岩国のホテルに発送する。その辺りは手慣れたものだ。最終日の仕事を終えて家に帰り、徹夜で明け方の始発で出るつもりでいたが眠りに落ちた。夜中の12時には目が覚めて準備と洗濯を終えた。戸締まりをして出かける頃には雨が降っていた。ゴアも送ってしまったので雨具はない。駅まで飛ばせば5分強の道のりを飛ばしていく。
びしょ濡れになる前に駅に到着した。軒先で自転車をばらそうとすると雨脚が強くなってきた。順調に作業は進むかと思われたが、ハンドルが抜けない!
中でさび付いてしまっているようだ。力を入れてみたが回る気配がない。これ以上やるとホイールが曲がる感じがしたので断念して前輪を外す。しかし、空気を抜かないと外れない設計なので空気を抜く。天気が良ければ宮島から岩国まで走ろうと思っていたのだが、インフレータは荷物と一緒に岩国に送ったので空気を抜くと乗れないのだ。前輪を外してばらして輪行袋に入れると、いつもよりパッツンパッツンな収まり具合になってしまった。収まったところでタクシーに乗ってインフレータを自宅に取りに行く。結局、2本持って走るという悲惨な状態になってしまうのだ。 |
何とか事なきを得たところで切符を買おうとしたが早朝すぎて新幹線の切符は売っていないのだ。まずは東京までの乗車券を買った。改札を抜けてホームへ向かう。電車に乗り込んで東京へと向かっていく。鈍行でのんびりと都市圏へと向かう。徐々に人は増えていくが混み合うほどではない。上野で降りて山手線に乗り換える。都内では輪行袋が本当に邪魔がられて一部の客にはにらまれる。
そして東京で新幹線へ乗り換える。自動券売機で何故かクレジットカードが使えなかったので窓口に並ぶ。切符一枚買うのすらトロくさいおばさんに待たされているうちに、広島行き のぞみの発車時刻が迫ってくる。本気で焦る。広島まで自由席 と最低限の指示でカードをばしっと渡して買う。ホームへ急いで向かって、残り2分で朝食の弁当も買って乗り込んだ。ひとまず無事に広島へ向かう算段は整った。春の味覚を弁当で満喫したら眠気が出てきた。一眠りして広島へ向かっていく。
目の覚めたときには岡山を過ぎていた。降りる準備をボチボチしつつ、乗っている。そして広島に向けて減速が始まった。降りるポールポジションを確保してドアの前に立つ。すっと降りて階段を駆け下りる。残念ながら宮島へ向かう快速は1本逃したが、さほど待たなくても来るようだ。普通電車に乗り込んで宮島へと向かっていく。太田川沿いや五日市や廿日市など昔に住んでて見覚えのある景色と変わり果てた街を楽しみつつ向かっていく。宮島口に降り立って、精算機で精算してホームを出る。
旅の出発地に立った喜びもあるが、まずは穴子飯の上野に歩いて行き、整理券をもらう。1時間待ちと言われたので自転車を組みつつ待つにはちょうど良い。組み付けは順調だ。フォークを抜いていない分だけ、楽でもある。組み付けて空気を入れる。そこがもっとも面倒だ。ホイールを組み付けないと空気を入れれないというところで、バルブに力を入れれない。4.5気圧以上はほしいところだが、4気圧で我慢。
上野に行ってみるが俺の番はまだ来ていないようだ。店の前のポールに自転車をワイヤー錠で固定し、店の中で待つ。店のたたずまいも老舗で雰囲気が良い。存在感がある。そして美味しそうなオーラが漂っている。自転車を組む前に整理券をもらっておいた判断が正解だと思うほど混み合ってきた。そして整理券をもらってから待つこと1時間。相席ながらやっと席に着けた。
もちろん頼むのは穴子飯の特上。一番美味しいところを頼んでおかないと意味が無い。待ちと注文内容は想定されているからか出てくるのは早い。それはうれしいことだ。穴子の骨を入れて出た出汁で炊いた飯の上に穴子が並んでいる。こんがりと香ばしく焼けた穴子は柔らかく甘味もあって美味しい。穴子の純粋な味を満喫できる。美味さに喜びを隠せないままに平らげた。店が混んでいるので、食べ終わった一服の休憩もせず店を後にした。
慌ただしく宮島口のフェリー乗り場へ行く。午前中までの雨もあり空は曇っているが海は穏やかである。沖に浮かぶ牡蠣の養殖筏と静かな海と小さな島々… 瀬戸内海らしさ満点の海を眺めつつ小さなフェリーは対岸の厳島へと進んでいく。5分ほどで着岸して上陸だ。
島へ渡り、予想はしていたが走るルートは無い。ほぼ押して歩く感じのルートが続く。厳島神社近辺へ歩くにも遠くもない。荷物もなく軽い自転車を押して歩きつつ参道の散策を楽しむ。時々、すり寄ってくる鹿たちと戯れる独特の雰囲気が楽しい。やがて海岸と鳥居が見えてきた。今は思いっきり引き潮なので鳥居と神社の床下が海に浸る神々しい雰囲気は楽しめない。ただ、鳥居の根本まで歩いて行けそうなほどの干潟が見えている。SPDが錆びるリスクはあるが歩いて行きたいところだ。また参道を歩くと、もみじ饅頭や焼き牡蠣の店が建ち並ぶ。誘惑に負けないよう耐えて耐えて耐えて耐えきれず、美味しそうな香りを漂わせてカワイイ店員さんが売ってる揚げもみじ饅頭を購入。棒に刺さったもみじ饅頭に衣を付けて天ぷらっぽく仕上げてある。揚げたてで暖かくさくさくした衣と柔らかい生地と暖かいあんこ これが美味しい。この不健康さがたまらない。人間というのは本能で不健康なモノを求めて楽しむ唯一の動物であることを実感する。巨大しゃもじや広島カープの選手達のサイン入りしゃもじを観て楽しみつつ参道を進むと、再び海のところに出て干潟に降りる階段がある。そこで自転車と鳥居で写真を撮っていると鹿が本格的に寄ってきた。お茶目で俺の持ってる紙を喰おうとするのを避けて自転車を押して歩いて行く。カワイイものであるが、少し怖い。
厳島神社の海の回廊の入り口で自転車を置いて中へと入っていく。海水が全く浸っていないので雰囲気だけは微妙だが、潮の香りが漂う神々しく真っ赤な回廊を歩いて行く。床下には海水が来ていることを想像しながら観るしか雰囲気を楽しむ方法はないだろう。親父の病気がよくなるようお守りを買い、祈りを捧げる。旅の初日に大きい神社にお参りして旅の無事を願うことは定番化してきたのだが、旅の無事以外の事を願う初日のお参りは史上初かもしれない。回廊は屋根もなく海に突き出て真っ直ぐに鳥居を眺めるところがある。おそらく何らかの神事が行われる場所なんだろう。海は引き潮で鳥居まで海岸の地面は見えている。やはり満潮の時にも来てみたいものだ。俺は子供の頃に広島にいたので何度も観ているのだが、大人になって改めて来てみると感じ方がずいぶん違うモノだ。
海の回廊を歩いて抜けて、しばらく海沿いを歩いてみる。回廊ごしに観る五重塔と博物館を見学して、干潟に出てみた。水たまりをよけつつ歩く。潮干狩りをしている人たちを横目に鳥居の根本まで行ってみる。沖にあっても見栄えがするだけのことはあり、近くで見ると大きい。見上げるぐらいの鳥居と足下は干潟があって不思議な感覚すらある。
干潟を抜けて岸に上がる。午前中の雨でできた水たまりをわざと歩いて、クリートに付いた塩分を落として、次は五重塔へと上っていく。五重塔自体が山の中腹にあって石段を登っていくのだ。これを上ると厳島神社が一望できそうで期待できる。まだ疲労の無い足でさくさくと上っていくと、豊国神社の千畳閣がある。広々とした社屋には立ち入りもできて厳島神社と五重塔を眺められる。気持ちの良い空間がそこに広がっている。真っ赤な五重塔を間近に観て、また石段を下っていく。
自転車を押して参道を歩いてフェリー乗り場へと向かっていく。宮島観光にも満足した。やや暗くなってきた曇り空に不安を感じつつも気持ちは岩国へと向かっていた。子供の頃に何度も来た宮島ではあるものの、このような旅モードになってからは対岸の宮島口は通ったことがあるが渡ったことは無かったし、これでサイクルツーリングで日本三景を全て回ったことにもなるし、満足である。
フェリーに乗って宮島口に戻り、岩国へ向けて走り出す。25kmあまりの道のりだし荷物は無いので走ること自体は何の懸案もない。雨さえ降らなければ良いと願うばかりではあるが、予報では快方に向かうことになっている。国道2号線の多い交通量と狭い車道脇を快調に走っていく。大きい車は多いので注意が必要だが順調に進んでいく。大竹を抜けて、岩国に入った。夕方の4時には岩国駅前にたどり着いた。ヤマダ電機で充電器を買って、ホテルへと向かう。駅から近いところで予約しておいたし迷わず見つけられた。
ホテルにチェックインして、荷物を部屋で開梱する。よく見ると忘れ物が多い。100円ショップに買い出ししにいかなければならないリストを洗い出しつつ、サイドバッグとザックに詰め込んでいく。作業が済んできたところでキャリアをチャリに取り付けた。そして岩国市内へ買い出しと夕食に出かける。よくよくブレーキを見るとワイヤーの端もほつれてる。カンチブレーキのアーチワイヤを探したが店にはない。だましだまし行くしか無いようだ。ブレーキだけは生き死にを分ける可能性もあるパーツなので気をつけたいところだ。
夕食に居酒屋でも行こうかと思ったが、今年は不況による収入減のため予算は抑えたい。安そうな回転寿司で済ませることにした。しかし、海沿いの街なら期待はできるだろう。生ビールで旅の始まりに乾杯し、寿司を食う。しかしながら、ネタもしゃりもラインナップもイマイチな感じである。食事運は昼間に使い果たした感がある。何とも思い通りにいかないところが嫌な予感はするが、食事を終えてホテルに戻り眠りについた。 |

イレギュラーな輪行形態
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宮島口 穴子飯 うえの
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うえの 穴子飯
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宮島の参道
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巨大しゃもじ
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揚げもみじ饅頭
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厳島神社
鳥居とランドナーを物色する鹿
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厳島神社 海の回廊
やっぱ満潮じゃないと雰囲気が・・・
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海から見た鳥居
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1日目 |
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岩国 → 六日市 → 津和野 |
90.86 km |
2009/04/26 |
今日は津和野まで走り抜きたい。そうするだけで明日以降の展開が本当に楽になるのだ。レーサータイツを穿いて本気モードの服装である。
昨日から始まっている旅だが、荷物をパッキングしてフ装備の姿になると本格的にスタートという感じがして気が引き締まる。ていうか、朝から寒さで体が締まる感じである。空はすっきり晴れている。予報では日本海側に向かうと崩れるようだが、予報を覆すだけの晴れ男ぶりを発揮するか見物だ。順調に向かい風の中で岩国市内を北上し錦帯橋を目指す。途中のコンビニで朝食を食い、錦帯橋に到着した。
ここに来たのも子供の頃から通算すると10回を越えるかもしれないし、旅モードで来るのも2回目。見慣れた景色ではあるが何度見ても見事な橋である。木で作られたアーチが連なり、その下を清流がサラサラと流れている。自転車を置いて写真撮影を楽しみつつ景色を見ていく。通行料を箱に入れて橋を渡っていく。太鼓型のアーチを駆け上って駆け下りてを繰り返すたびに響く木の柔らかい足音が心地よい。そして見下ろす川の流れは澄み切っている。
橋を渡った先でも川と橋の下の構造を見て楽しみ、白蛇が見れるところにいってみたが、まだ開いていない。しかたなく橋を戻って自転車へと戻る。まだ飽きない錦帯橋を眺めて北へと向かう。 日が当たって暑くなってきたかと思えば風が吹いて寒かったりで体温の調整に戸惑う。そして足は全く温まらない。風は強く向かい風気味である。道が蛇行しているので向きによって風向きが二転三転する走りにくいコンディションである。錦川沿いの流れの向きが瀬戸内海に向かうか日本海に向かうかを分ける分水嶺に向けて徐々に上っていく。急な傾斜や不要なアップダウンは無いので大きく苦戦する傾斜ではないが、寒さと風が走りを阻害している。
決して楽はさせてもらえない走りではあるが、左に見えるローカル線と錦川の清流の景色は走りの楽しさを満喫させてくれる。川を渡すように鯉のぼりが出ていたりする。風にゆられて元気に泳いでいる。向かい風の強さをうかがえるものである。さらに、空が曇り始めてきた。
午前中の到達目標地点であった錦の道の駅には何とか午前中にたどり着けるペースであるが、雨も降ってきたし強烈な風も吹き始めてきた。竹藪が大きく揺れるほどの強風を道の駅から見つつげんなりするしかない。そして出ようとすると雨が止んで空が急に晴れてきた。ここからは峠に登る。峠にレストランがあるようなので、そこでの昼食を目標に走り始める。すると、再び雨が降り始めてきた。霧雨と向かい風とキレが出ない体に疲れは隠せない。緩いはずの坂道がきついものに感じてしまう。いつまで経っても峠にたどり着けない苛立ちもある。 緩いはずの峠にたどり着くと個性的な山賊風の外観の食事処はある。混んでるようだが、当分は店もなさそうだし、ここで昼食だ。冷え切った体で雨具を脱いで自転車に洗濯ばさみで固定して、雨で濡れきったタオルで顔を拭いて店に入る。広すぎてどこに行けば席に通してもらえるのか分からないが、意味もなく待ってると店員に通された。
名物料理となってる山賊焼きと山賊おにぎりを頼んでみる。囲炉裏と明かりのある店内を満喫しつつ、鶏のもも肉を丸ごと焼いたモノが出てきた。言わなきゃ良いのにメニューにはブロイラーと書いてある。旅モード・空腹モードの俺なら地鶏と思って食べたのだが、炭火で焼いてタレが利いてる鶏肉はうまい。大きな山賊おにぎりで炭水化物を補給できて多少は元気が戻ってきた。 |

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岩国 錦帯橋
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錦側の清流と鯉のぼり
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山賊茶屋 店内
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鶏の山賊焼き
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山賊おにぎり
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そして店の外は相変わらずの寒さだが雨は止んでいた。そのまま峠を下りはじめると、再び雨が降ってきた。今度は霧雨などではなく本格的に冷たい大粒の雨である。岩国で買った帽子の上にフードをかぶせて洗濯ばさみで留めて本格的なレインランとなる。指先も足先も冷えまくる。もちろん向かい風も続いている。下り坂だというのにスピードは上がらない。峠を越えて徐々に下っていくはずの道も大雨に打たれて苦戦が続く。全体的には良いペース配分で来ているものの、体力的に自信はない。
雨の中で六日市を抜けて、川沿いに蛇行する道を北上していく。目標は津和野だが、最低限ここまで来ておきたいと思っていた柿の木までは楽勝でたどり着けそうだ。あとは峠を越えてまで津和野にトライするか、柿の木で大事をとって泊まるかの差だけである。柿の木の温泉を通り過ぎて、8km近く走って道の駅にたどり着いた。
気を利かせてかストーブを焚いているので暖を取る。同じようにバイクの集団も暖を取っていた。どっちかというと俺の方が寒さの影響は深刻でつま先もびしょ濡れ、グローブもびしょ濡れ末端が冷え切って感覚がなくなった。片足を揚げてストーブにかざして体温を回復させていく。それを片足ずつ交互に繰り返すのだが、これは脚力が必要な作業である。サイクリストの誇る脚力だから成せる業だろう。そうして暖を取ってる間に雨は止んだ。
多少は回復してきたし、現時点で4時。20km弱で200mUP程度の峠1本ならトライできそうな甘い見込みに乗って津和野を目指す。今度は国道ではなく町道であり林道を抜けていくルートなので一気に車は居なくなる。追い越す車もすれ違う車もない深い山へと入っていく。だんだん傾斜も厳しくなってきた。遠慮無くインナーのLowを使って上っていく。そして雨も再び降ってきた。気温も徐々に下がっているようだ。糖分を補給したりストレッチしたりしつつ体を元気付けて上っていくしかない。道だけは広く整備されているものの、結構なボリュームの峠に感じられた。やはり疲労も隠せないのだろう。
全く目印も何もない峠を越えると道は下りはじめた。路面は完全なウェットコンディションなので注意が必要である。下りは道も狭くカーブはヘアピンが続く。傾斜も急だ。コントロールできるスピードを維持して下っていく。下り坂の途中から見える津和野の盆地の眺めも止まって楽しみつつ下り切ると、津和野にたどり着いた。明日以降の展開が一気に楽になるし、明日は津和野で午前中いっぱいぐらいは観光する余裕も出来た。一安心したところで、温泉も併設されてる道の駅を目指す。下りきったら雨も止んだ。
津和野の街を抜けている比較的落ち着いたところで44,444kmを達成した。メーターの写真を撮って、また走る。街から少しはずれたところだが道の駅にたどり着いた。あまりオススメはできないが、公園が併設されているのでゲリラキャンプも出来そうだ。水道もあるので料理もできる。食材は道の駅内で買えそうだ。温泉もある。今日は無事に終わろうとしていた。
まずは、食材を物色する。イノシシの肉が美味しそうだ。焼肉と味噌仕立てでイノシシ鍋なんかも体が温まりそうだ。地元のネギと椎茸もある。買い出しは無事に終わることができた。日が沈むと寒さが増してきたので、風呂に入る。とにかく体を温めたい。温泉で本当に体が温まり疲れが回復する。こんなに寒さに苦しむツーリングというのも久しぶりな感じである。
風呂を満喫して、道の駅内の公園に移動して食事の準備をする。まずは無洗米に水を入れて火にかけて御飯を炊く。蒸らし段階まで来たら、長ネギを切って椎茸の石づきを切ってフライパンに火を入れてイノシシ肉を焼く。さて食べるか! というところで、フォークもスプーンも無いことに気づいた。手で喰うには熱すぎる。火を一度止めて、道の駅の売店へ行ってみる。レストランもあるので最悪は割り箸をもらうか…と思ったら、売店に箸が売られていた。フクロウが上に乗ってるデザインの土産っぽい箸が手に入った。気を取り直して飯だ。塩こしょうで食べるだけでも十分に美味しい。脂身もくどくないし、肉の味も濃い。ネギや椎茸ともよく合う。イノシシ汁を作ろうかと思ったが、焼肉だけで肉は全て食べきってしまった。醤油とレモン汁でポン酢も作って変化もあったので、御飯も進むし満足だ。ビールや酒は抜きでも十分に楽しい晩餐となった。
完全に真っ暗なので道の駅が閉店後にテントを張って眠りについた。それにしても寒い。今までのGWは暑いイメージばかりだったので夏用シュラフしか持ってきていない。フリースを着込んでシュラフの中に潜り込んで眠りについた。寒さや雨など色んなことと戦って無事に走り抜いた初日にまずは満足しよう。 |

道の駅かきのきむら 暖を取る
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津和野へ下る峠
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津和野盆地の眺め
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積算距離 44,444km 達成
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地物の猪、ネギ、椎茸
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いのしし焼肉 |

御飯を炊いてるところ |
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2日目 |
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津和野 → 萩 |
78.14 km |
2009/04/27 |
今日も相変わらず寒い。雨は完全に止んで空は晴れているが、気温だけは上がらない。寒さに震えつつもテントを片付けて、パッキング完了ギリギリまでフリースを脱げない。フリースは最後にパッキングするザックに入れているのだが、その配置の考え方も絶妙だ。荷物がまとまったところで津和野の街の方へ出て行く。昨日の峠を今ごろ越えたりすることを考えると、昨日のうちにたどり着いておいたアドバンテージは大きい。
森鴎外の記念館に立ち寄って見学して行く。生い立ちや生家に残る品が転じしてあった。あまり教養の無い俺なので感想はそのぐらいのもので、殿町通りの方へと向かっていく。川を渡ると堀のある古い家と塀が並ぶ通りに出た。観光客が多いが、晴れた白壁と堀に泳ぐ鯉と石畳の道が良い雰囲気を出している。雰囲気を楽しみながら走り抜けると、教会がある。幼稚園と併設されており、立派な教会をバックに無邪気に遊ぶ子供達の雰囲気が教会に見守られているような感じがして微笑ましい。
教会の向かい側にある喫茶店でコーヒーとケーキで遅めの軽い朝食にする。抹茶とクリームのロールケーキで少し元気を得た。殿町通りから相変わらず景観を守った街並みが続く本町通りを抜けていく。水のきれいな街ならではという感じで造り酒屋や古い醤油の店があったりで雰囲気が良い。そんな通りを楽しく走り抜けてたどり着いた津和野駅の前には蒸気機関車D51が置いてある。迫力もあり今にも走り出しそうなリアリティである。コックピットに立ち入ることも出来る。昔ならではのアナログの集合体の機械っぽさが力強さを感じさせてくれるものだ。津和野駅でSLの到着時刻を調べたら昼過ぎなので待てる時間ではない。また殿町通りの方に戻って堀とか壁とか写真を撮りまくった。
続いて、山の中腹にある太皷谷稲成神社に寄り道だ。殿町通りの出口に見えている参道を入っていき、駐車場あたりに自転車を置いて山を登っていく。それほどの高さはないので苦労はない。赤い鳥居が並ぶ参道を上り、途中の売店でお供え物の油揚げとロウソクを買ってまた歩く。日本五大稲荷というだけのことはあって社屋も3つに分かれて真っ赤な大きい神社がある。油揚げとロウソクを備えて火を付けて手を合わせる。山の中腹まで登ると津和野の川沿いの里が見下ろせて気持ちが良い。春の山里ののどかさが漂っている。 また参道を下って自転車へと戻る。殿町通りから1本入った道に行き昼食だ。あと、糖分補給用に津和野銘菓の源氏巻きも買っておきたい。おばさんが一人で営業してる源氏巻きの店で買ってみる。試食までさせてくれて、おまけで切り端もくれた。正直、切れ端だけで十分かと思うほどのボリュームとなったが嬉しいものである。源氏巻きの店と斜め向かいのお店で昼食にする。津和野郷土料理の”うずめ飯”は逃さず押さえたい。頼んでみると御飯がぽんと載って三つ葉とワサビが載ってるただけに見える深めの皿に出汁が張ってある飯が出た。これをかき混ぜると御飯のそこに埋めてある具が出てくる。野菜やキノコや高野豆腐だけでヘルシーな具だが、お茶漬けよりは具が滋味あふれる感じで美味しい。山菜や川魚の甘露煮や蕎麦もついてきて、どれも結構美味しい。 |

津和野カトリック教会
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津和野カトリック教会 内部
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津和野 沙羅の木
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津和野の象徴 殿町通りの堀
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津和野駅前 D51
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津和野の街並み
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太皷谷稲成神社から見下ろす津和野
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太皷谷稲成神社の境内
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津和野郷土料理 うずめ飯
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津和野の蕎麦
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すっかり午前中は休みきったので、午後からはきっちり萩まで走りたい。慌てるつもりは無いが道の駅で魚を買えるようなので、営業時間内での萩到着を目指したい。泊まるところは'96年の山陰ツーリングで泊まった公園もあるし、中央公園というのも見つけたので何とかなるだろう。道の駅を抜けていくと道は徐々に上りはじめてきた。何げに今回のツーリングでの最高地点となる峠を越えていかなければならない。山深い感じではないが、傾斜は意外とあり、決して緩い道ではない。川沿い、田んぼ沿いの道を徐々に上っていく。気温も暖かいような寒いような微妙なコンディションであるが、昨日ほど振り回されず日が当たってコンスタンスに暖められる感覚がある。
少し苦戦したものの何とか馬草峠を越えて島根県から山口県に突入した。峠を気持ちよく下っていく。車通りもまばらで道も広く快適だ。傾斜もさほど厳しくないしカーブも緩い。安定した下りを楽しみ国道へ合流した。ほぼ平地の道を走って道の駅を目指していく。 |
道の駅うり坊の郷で休憩だ。さっきもらった源氏巻きの切れ端を食べて糖分を補給する。甘すぎず美味しい。チョコやクリームよりあんこの甘さというのは疲れた体には利く。ここから県道を通って萩を目指す。残りは50km弱というところ。午後だけで十分に走りきれるボリュームだろう。下り基調となるのは容易に想像付くがアップダウンは相変わらず多そうな予感がする。走り出しは順調に下りだったが、やはり上り坂が幾重にもつながる。徐々に下りだし風もないし苦戦はしないが、登り返しが楽にはならない。下りの勢いだけで上れるレベルではないのでギアを落として踏み込む必要があるので負担がのしかかる。 細かい峠は4つほど続いたところで、道の駅で休憩だ。しかし、建物とか屋根だけは立派なのだが店も開いてないしスタンプもないし買い出しもできない。ストレッチだけして道の駅を後にして残り20km弱の萩を目指す。そこからはアップダウンもなく徐々に下っていく。そして海に出るところで傾斜はまして一気に下りはじめた。やや西に傾きかけた日をまぶしく見ながら萩の街へと下っていく。 |

源氏巻き切れ端と ほんの土産
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下りきったは良いが萩の街の形は異形な感じなので、どっちに進めばよいのか野生の勘でも分からない。国道262号にぶつかったところで、やっと進むべき方向が見えてきた。3kmほど走ると魚を買おうと思っていた道の駅にたどり着いた。漁港に併設されていて魚も豊富で、ついでに野菜も豊富に売っている。メニューを考えながら買い物してると発散しそうだ。少し脂身の多い白身を買った。刺身と醤油と酒で漬けにして御飯にかけて茶漬け風にしたい。フグも安く売っている。これも買っていく。味噌汁にしたら良い出汁が出そうだ。それに併せて醤油も萩の地元産のものを買う。ネギも新鮮でしっかりしたのが手に入った。豆腐も地元産の美味しそうなものが見つかった。
収穫の多い買い物を終えて寝床と風呂を探す。寝床は3つほど候補がありキャンプ場が萩城に出来ていたのだが現在は閉鎖と言われているが使えれば使ってしまいたい。萩城に向かう海岸を走っていった。キャンプ場にたどり着いたが背の高い雑草が茂っていて、トイレも水が留めてあるし炊事場も無い。これなら、もう少しマシな公園はありそうだ。'96のツーリングで泊まった公園は健在だ。ここは有力候補地として押さえておく。しかしケータイで探しても近所に風呂がない。
萩の古い街並みを楽しみつつ抜けて、次の候補地として中央公園を探しつつスーパーを探す。市街地により近いので銭湯は近そうだ。あとコインランドリーも必要だ。茶漬けに乗せるワサビと海苔と酒が無いのだ。スーパーを見つけて直後に中央公園も発見。泊まるに不自由はしなさそうだ。
そこから風呂を探すが意外と無いのだ。峠を下って萩に降りてきたところにある萩本陣温泉しか見あたらない。すっかり暗くなってしまったが、温泉へと向かって走り出す。松陰神社の先から左折して急な坂を上って温泉へ行く。こぎれいなホテルの温泉に浸って気持ちよくなる。
また中央公園へと向かう。久々の萩ではあったが寝床や風呂に苦戦するのは計算外だった。公園についたら御飯に水を張って炊き始める。その間にメジを切って刺身にできる状態にしつつビールを飲む。切り終えたら小コッフェルにメジの身と醤油と酒を入れて味を調える。このまま20分ほど放置して魚と汁が融合するのを待つ。ゴマとネギを入れてかき混ぜる。これが馴染んだら、熱々の御飯にかける。少し火が通るので旨みが増す。鯛やカワハギなどの白身魚でやったら美味しかったのだが、こういうブリっぽく脂の強い魚でやっても合うのは新発見だ。メジ茶漬けは一気に平らげてしまうほどの美味さである。漬けにした酒の残りで晩酌は続く。シメに入るべくコッフェルに水を張って湧かす。買ってきたフグを入れて煮込んでいく。徐々に良い香りが漂ってきた。味噌を入れて味を付けていく。豆腐とネギも入れる。体も温まるしシメとしても最高なフグの味噌汁である。
明日は長門までの30kmほどしか走らないので洗濯は明日に回そう。そう思うほどに夜は遅くなってしまった。相変わらず寒さが続く夜に苦戦する。GWって暖かいイメージしかないだけに戸惑いが続く。そして夜中には雷雨が降りしきる。思い通りにいかないものである。 |

萩産メジの刺身
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メジを漬けにしたところ
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御飯にぶっかけて
海苔とワサビも乗せて完成
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萩産ふく(ナメタフグ)の味噌汁
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3日目 |
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萩 → 長門 |
38.64 km |
2009/04/28 |
濡れたテントをバサバサと降って水を落として乾かしつつ片付ける。今日の目的地である長門市にはコインランドリーは見つからないため萩で洗濯していく。まずはコインランドリーへ行って洗濯機を回す。その間に途中まで日記を書いて、軽く買い出しを済ませておく。乾燥機まで終わったところでコインランドリーを後にする。
萩市内はスルーしてしまおうかと思ったが、せっかくなので観光していく。まずは明倫学校だ。明治の頃に作られた古くからの学校で貫禄ある。立派な建物である。学校として運営中なので門から覗くぐらいしか観光できないのが残念だが、古い学校を保存して現役で使うというのは活気と貫禄があって良い。そのまま城下町のあたりを走り回る。古い土壁の街並みが続く。塀の上には夏みかんが見えている。これが萩の街の特徴である。何枚写真を撮っても飽きないような景色が続く。所々でなまこ壁の倉が残っていたりで風情がある。
俺が'96年に来たころには無かった萩博物館にも寄ってみる。広々とした博物館で自然や歴史について展示してあるのだ。展示内容も大画面での映像などもある。幕末の歴史は苦手なところもあるので、そこの復習からになるので深くみて行かなかったが、学があれば見応えは十分だろう。
博物館まで見たところで昼前になった。長門までは人里離れた海岸線を走り抜けようと思っているので昼食を取るところはなさそうだ。ここは萩市内で昼食を食ってから出るしかないようだ。海岸沿いの道のレストランを見つけたので寄ってみる。和食中心の最近の食生活に洋食だ。ハンバーグカレーセットと絞りたての夏みかんジュースを楽しむ。カレーと新鮮な甘酸っぱいジュースに元気をもらった。芸能人のサインも多く置いてある店で、この辺りじゃ有名なのだろうか。 |

明倫学校
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萩の街並み
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萩の街並み 土壁
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萩の街並み なまこ壁
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カフェ海岸通り
ハンバーグカレー
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夏みかんジュース
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国道でも有料道路でもない海沿いの細い道へと走り出していく。アップダウンもハンパ無く多いだろう。そんな覚悟はしている。予想を裏切らず初っぱなから厳しい坂が始まった。道も1.5車線と狭い。山陰本線を縫うように走り海岸線に出たり山を越えたりが続く。めったに車も来ないので快適な走りが楽しめる。萩から長門へと進むにつれて傾斜も振幅も増してきた。山深い道と海沿いを楽しんだと思ったら鉄道を渡る。時々2両編成ぐらいの電車が通り過ぎていく。ある意味では変化が多い道を楽しんで通り抜けて国道に合流した。長門まで10kmも残らなくなった。この時点で15:00前なので仙崎から船に乗るのも可能だろうし、長門市で寝床を探すのも楽にできそうだ。
仙崎の港にたどり着いた。'96の旅では雨で海が荒れていて引き返してきたため青海島は観れなかったが、今日は天気が良い。いけるだろう。…と意気込んで切符売り場に来てみたら今日も強風のため近場までしか出航しないようだ。天気が悪くても出すだけ出して引き返してきた時代と比べると慎重なものだ。結局、あきらめた。同じ観光地で2連敗というのも俺にしては珍しいモノだ。渦潮が見えない鳴門海峡とここぐらいだろうか。船に乗れない代わりに港で買い出しをしてみようと思ったが鮮魚は一切無い。夏みかんソフトクリームを頬張るぐらいだ。正直、寒いが。
仙崎といえば金子みすゞが有名なのだ。記念館に行ってみるものの定休日…。どうも観光が不発の一日のようだ。仙崎で泊まれそうな場所もないので長門市の方へ向かう。今日は風も強く寒い。ここ最近の寒さで体に疲れがたまってきてキャンプもつらい。出来そうな公園は見つかったが、'96と同じホテルに泊まることにした。駅の真ん前という立地で値段も安い。ただ、風呂は共同で建物自体も古い。自転車から荷物を下ろして部屋に入れる。自転車にはカギをかけて、明日の朝食の買い出しがてら線路の向こうに歩道橋で渡っていく。ショッピングセンターがあって買い出しは可能だ。しかし、ラインナップが悲しいほどに貧弱だ。
部屋に荷物を置いて、夕飯に出かける。最近は長門市は焼鳥がイチオシのようだ。確かに焼鳥屋が軒を連ねている。適当な店に入ってみた。最近は疲れ気味なので肉で力を付けたいところだ。ビールも進むし、鶏も美味しい。途中からは焼酎になって、魚の塩焼きやみりん干しにも手を出す。日本海沿いなので、当然のように魚は美味しい。酒と肴と焼鳥に満足して店を後にした。飲みにも行ってキャンプせず宿に泊まって少しは体力が回復してくれるだろうか。それより、旅が始まってから続いてる寒さと風の強さを何とかして欲しいモノだ。これがコンディションを狂わせているように感じる。 |

萩から長門へ向かう海岸道路
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仙崎の港
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夏みかんソフトクリーム
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長門市の焼鳥
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鰯のみりん干し
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長門市の焼鳥
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鯖の塩焼き
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4日目 |
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長門 → 千畳敷 → 川尻岬 → 長門・油谷 |
56.09 km |
2009/04/29 |
天気予報によると気温は今日辺りから上がってくるようだ。確かに朝の外の空気が少し違う。天気はもちろん晴れ。風はない。ようやく本調子になってくるかと期待度が上がる。部屋の中で朝食をとって出発する。今日は海沿いの山岳ルートという感じとなってしまいそうだ。油谷半島の方に出ていこうと思っているのだ。
長門市を出て国道を西へ向かう。昨日は安息日だったのに体のキレは全くといっても良いほどない。真っ直ぐ駆け抜けても面白くないので千畳敷や川尻岬へトライしたい。海沿いが終わって半島が見えてきたところで右折だ。半島に入って海沿いが続いたあとで、順調に一山目を迎える。温泉から坂を上って峠を1個越える。下りきると田園地帯が続いている。道路上の案内に従って千畳敷へ向かう。ネットで調べると千畳敷には風力発電用の風車があるはずだが、山頂の方に見えている。目標地点が見えると気楽なのと萎えるのと両方の感情があるのだ。標高はさほどないので気楽に考えてしまう。
本格的な坂道が始まった。傾斜も結構厳しい。ただ、振り返ると眺めは結構いい。気温もそこそこ高く体が冷えなくて良い。登りはじめるとコンディションが良いことに気づく。ようやく自分らしさが戻りつつあるような気がしてきた。坂の途中でストレッチしてまた千畳敷へと上っていく。午前中にはたどり着きたいところだ。頂上が近付くにつれて坂の傾斜はシャレにならないレベルになってきた。壁のような坂でウェイトリフティングのような力の込め方で上っていく。10%は確実に越えて13〜15%近くあるのではないかと思われる。それでも押して歩かず乗って上ることにだけはこだわった。
途中で広い公園と池があったので休憩だ。千畳敷と思われるところはすぐ目の前と言うところまで来た。この辺りから傾斜はゆるんできた。徐々に上りつつ右に海を見るようになってきた。小さな島がいくつも見えて、真っ青な海と空が心地よい。そんな海に向かって風を受けるように白い風車が立ち並んでいる。上ってきた甲斐を十分に感じられる気持ちの良い眺めだ。青海島あたりから島が並んでる様子は一見は瀬戸内海のような感じがするが、日本海らしいスケールの大きさがある。
登り切ると、そんな眺めを見下ろせるような草原が広がっている。山頂はキャンプ場にもなっているのだ。当初は、ここでの一泊も考えたが風呂もシャワーもないので見送りにしたのだ。夕方に日本海へ沈む夕日を見て、漁り火を見下ろして…なんていうキャンプも良いだろう。ただ、買い出しとか風呂とか車で行けたら快適だろうけど、これだけの坂を上るとなると自転車では快適さは無いかもしれないだろう。(体力次第だが) しばらく田舎を走ることになりそうだし、千畳敷の眺めを楽しんで散歩したところで、11時半。少し早いが昼食としてしまう。山頂だというのにしゃれた感じのレストランが1軒ある。オープンテラス席もあるし窓からは眺めも楽しめる。天然酵母パンの香ばしいに香りも漂っているし、何げに美味しそうだ。長門鶏のローストチキンセットを頼んでみた。パンは味も濃厚で歯ごたえもしっかりして美味しい。鶏もこんがり焼けてハーブも利いてて美味しい。オシャレな雰囲気と味に大満足である。 |

千畳敷への急な上り坂
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千畳敷付近
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千畳敷からの眺め
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千畳敷山頂のレストラン
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長門鶏のローストチキン
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天然酵母パン
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草地で寝転がって休んでから出発する。観光客の子供に手を振りながらサービス精神旺盛なハイテンションなサイクリストとして出てみた。しかし、いきなりとんでもない傾斜の下り坂が俺に襲いかかる。フルブレーキングしても止まれないほどの坂だ。ワイヤーの端がほつれていることは頭にあるので恐怖感すらある。このコントロールできないぶりは秋田での事故を思い出すほどだ。とにかく精神を落ち着けて早め早めに強いブレーキを入れていく。そしてT字路で県道に合流する。傾斜がゆるんだところで強くブレーキを引いて突っ込まないように注意する。
県道に出ても容赦ない下りで海に降りていく流れは一緒だ。カーブも急で坂も前に落ちるような傾斜だ。眼下には真っ青な日本海と漁港が見える。千畳敷から海までの下りが終わると、再び道は丘の上へと登りはじめる。この油谷半島ではアップダウンにまだまだ苦しめられそうな感じである。地図を見たときから予想はしていたが、予想を超える規模で来そうだ。2つほど山を越えたら竜宮の潮吹きにたどり着いた。海が荒れてると岩の隙間から潮が噴くようだが、海は穏やかすぎて全くそんな気配はない。しばらく様子を見て小さくでも潮を噴かないか期待してみたが全くない。
竜宮の潮吹きを後にすると、また上り坂が始まった。ここからは上った坂から棚田と海を見下ろせるルートが続く。まだ代掻きが終わってないから水は張られていないが、これから田植えが進んで水が張られると壮観な眺めになりそうだ。左側通行だというのに右寄りに走ってでも棚田を見下ろしてしまう。道自体は山沿いにアップダウンするものの上ったきり降りてこないので少し楽ができる。幾重にもつながる田んぼとそれを縫うように私道があり軽トラが上り下りしている。棚田スポットというのは今まではスルーしていたが、山や険しい海岸に生きる人の英知を見れるスポットである。棚田が一番よく見渡せそうな高台にちょうど自販機もゴミ箱もあったので休憩だ。農家の親子と話しながら水分を補給する。
坂を下りきった時点で15:00。今日は調子も良いし天気も良く暖かい。油谷のキャンプ場を目指して終わっても良いが思い切って川尻岬の方へ向かうことにした。ここからまた急な坂が始まる。坂の途中からは棚田と青い海と砂浜を見下ろせる。なかなか壮観な景色である。油谷半島の棚田が関わる景色と日本海の色が気持ちいい。疲れを忘れさせる…というほどの威力はないが、きついだけの坂と違って楽しみがある。
結構長い坂を上り終えると川尻岬に向けて下りはじめる。岬の寸前まで来ると下り坂が一気に急になってきた。チャリのコントロールに苦しむほどの傾斜だ。下りだけで精一杯だが、あとで再び上ることを考えると気が重い。坂を下りきるとキャンプ場が見えてきた。キャンプ場の向こうに岬がある。さっきの上り坂と急に暑くなった気温でテンションが低い。岬の展望台まで歩いて行く。今回は三脚も持って行く。一応は本州最西北端ということで”端っこ”なので自分も写れる写真が欲しいのだ。せっかくなので遊歩道を歩いて灯台の方に行ってみる。展望台より本州最西北端を極めたいのだ。険しい岩場を歩いて途中からは急な登山道を歩く。そろそろ売り切れが迫る足には大きな負担で登り切ると白い灯台があった。木が茂ってるので眺めはさほど広がってない。蚊に刺され初めて来たので引き返す。展望台で写真を撮って休憩する。 |
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油谷半島の棚田
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川尻岬へ向かう上り坂
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川尻岬 灯台
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本州最西北端 川尻岬
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川尻岬の眺め
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川尻岬から眺める海岸線
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さっき下ってきた急な坂を上って行く。売り切れが来てる足には疲れが響き渡る。やめときゃ良かったと思うほどの坂を引き返していく。登り切るとまた下る。何度も登り返しを繰り返しつつ南へと戻っていく。道も細かく分かりづらいが何とか迷わずに進んだ。途中で楊貴妃の里に寄ってみた。一応は観光地のようだ。坂を下り始めると、その先で子供が歩いてるのが見えたので強くブレーキをかける。なぜか子供にやたら好かれて親とも話が盛り上がってしまう。サービス精神旺盛にバイバイと手を振りながら駐車場に自転車を置いて楊貴妃の里へと入っていく。何故ここで楊貴妃?という謎もあるが、ここは楊貴妃含めて何かを供養している寺のようだ。楊貴妃像と赤や黄色の派手な中国風の建物がある。雰囲気と油谷湾を軽く眺める見た目が良い。
楊貴妃の里を過ぎてもアップダウンはまだまだ続く。油谷までの残り10kmあまりが遠く感じる。おそらく最後と思われる坂を上るころには日が傾きかけてきた。坂を下って半島から戻り国道へ合流する。一つ心配事はキャンプ場と温泉があるのは知っているが買い出しできそうな場所がないのだ。油谷半島に入ってからここまで商店やスーパーは一軒もない。国道沿いも駅とかあるわけではないので買えそうもない。途中で見かけた温泉は日帰り入浴が出来るかどうかは不明だが後でケータイで調べてみよう。そして、キャンプ場へたどり着いた。受付をしたいがシャッターが閉まっている。テントが二張りだけ見える。キャンプすること自体は問題なさそうだ。蛇口はロックしているが捻るためのバルブは管理人からライダー達に渡しているようだ。ライダーさんにも「それ使ってください」と言ってもらえている。受付は今日は出来そうもないのでひとまずはテントを張った。
買い出しできるわけでもないから夕飯は手持ちのレトルトカレーになりそうだし、風呂はさっきの温泉で入れそうなのでのんびりすることにした。ちょうど海に面していて小さな島越しに海に沈む夕日が見れそうだ。海岸でのんびり過ごしつつ沈む太陽を見守る。静かで鏡のような油谷湾と島のシルエット、その向こうにゆっくりと沈む真っ赤な夕日。幻想的な景色に気分は癒される。低予算で旅をしなければならないことと、体にキレがないことと色んな現実を忘れさせる。
沈む夕日を見送ったらテントから着替えと入浴セットを出して風呂に入りに行く。すっかり暗くなってしまった。ライトとリフレクタを点灯させて1km弱ほど走る。露天風呂が無いのが残念だが油谷湾を眺められるホテルの風呂で温泉を満喫する。夕日の時間に風呂から眺めたらさらに良さそうだ。入浴を済ませてホテルの売店を物色してると乾燥ワカメに味付けをしたふりかけを見つけた。ビールもあった。仙崎の蒲鉾もあった。これで夕飯のメニューがレトルトカレーから一歩進化した。真っ暗な道をキャンプ場に戻った。
まずは御飯を炊く。炊き込み御飯っぽくなるようにワカメを先に米に入れる。炊いてる間に蒲鉾を食いながらビールを飲む。さすがに魚が新鮮だからか蒲鉾は純粋な味で美味しい。御飯が炊きあがった。何だこりゃってほどにワカメがぐにゅぐにゅしている。水加減として少し多かったし先にワカメを入れたのが失敗だったようだ。でも味としては食える味だ。ワカメをぱらぱらと追加して入れて御飯を平らげた。
やっと暖かくなってきた今日、坂が多いわりによく走り切れたものだと思う。少しだけ軌道に乗り始めてきたと思うが、今年の旅は短いため残りは少ない。仕方のないことだとは思うが残りも充実していきたいものだ。寒さが少しゆるんだテントで眠りについた。 |

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楊貴妃の里
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油谷伊上オートキャンプ場から見る
油谷湾の夕日
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長門仙崎の蒲鉾で晩酌
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できあがりを待つコッフェル
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できあがったワカメ飯
ちょっと水気が多すぎた
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5日目 |
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長門・油谷 → 角島 → 川棚温泉 |
59.05 km |
2009/04/30 |
5/1に福岡に帰る予定なのでゴールは明日でも良い。今日は角島または川棚温泉あたりで一泊として、明日にでも門司にたどり着けば十分だろう。本州最西端も明日とする感じで予定を決める。キャンプ料金を支払って、のんびりと10時頃に出発する。角島までの道は向かい風ではあるものの、ほぼ平地。午前中には角島大橋を渡れそうだ。
阿川から国道から外れて数kmほど走る。少し丘を越えるような坂を抜けたあとで海沿いを走ると橋が見えてきた。遠浅の薄い青い海にかかるなめらかに伸びる長い橋が壮観である。展望台から橋を眺める。駐車場もあり橋を眺めるのを十分楽しめる。しばらく海と橋の眺めを満喫しながら、気持ちも体も休める。そして、橋を渡り始める。海に真っ直ぐ伸びていく道が気持ちいい。途中では非常駐車帯もあり眺めを楽しみつつ止まることもできる。けたたましくサイレンを鳴らしながら救急車と消防車が通過していったところに穏やかならぬ予感を感じて、俺も島へ上陸した。島側にも展望台があるので、橋と海の写真を再び撮る。
まずは牧崎を目指して走り出した。島の真ん中を貫く県道を軽くアップダウンをしながら進んでいく。牧崎に行くために、どこから曲がればよいのか分からない。そのまま気がつくと通り過ぎていたようだ。立ち寄れれば帰りにでも寄りたいが、どこで曲がるか手がかりすら掴めないまま走り抜けてしまった。
角島灯台にたどり着く前にドライブインが見えてきた。売店やレストランも多いし駐車場も広い。そこに立ち寄って昼食とする。結構、混んでいる。レストランは結構高いし、安いところも入ってみたが挨拶もされないし注文も取りに来ない。待たされた後で、俺より後に来た人の注文を取り始めた。居心地も悪いし無言で店を後にした。店の外のイカ焼きとイカ焼きそばの店で若いがたいの良い兄ちゃんが頑張っていたので、そこで昼食にした。イカ焼きも焼きそばも作りたてだ。イカも今朝取れたばかりのものとのことで、柔らかいし身も厚みがあり美味しい。そんな新鮮なイカが活きた焼きそばも美味しい。 |

油谷伊上オートキャンプ場
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角島大橋の眺め
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角島大橋の上の眺め
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角島大橋(角島側から)
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角島のイカ焼き屋
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イカ焼きそば イカが肉厚で美味い
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角島の イカ焼き
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昼食を満喫して、また角島灯台の方へ走り出す。緩やかな丘を越えると岬にたどり着いた。キャンプ場もすぐそばで海に突き出た岬と灯台の眺めが気持ちいい。これなら、夕日とかも見えそうだし角島で一泊しても良いかと思ってしまうほどである。灯台を見学しに行く。真っ白ではなく表面は御影石のタイル張りになっている。そのタイル張りからレトロな雰囲気が漂っている。角島灯台も中に入れるので入って階段を上っていく。思えば色んな灯台に来たものだが、灯台の螺旋階段の目が回る感じと上るボリュームはどこもきつい。灯台を登り切ると、吹いてる風と高さで若干 怖い。ただ一歩上に上っただけあって海岸線と海の眺めは心地よい。景色を楽しんだところで、急な階段というか梯子を下りて目が回りそうになりながら螺旋階段を下りていく。隣の博物館も見物していく。
灯台の見物を終えたら島から出るべく出発だ。泊まりたい気持ちもあるが、明日は楽勝で本州最西端を制して旅を終えたいところなので、先を目指すことにする。川棚温泉も名前だけはよく聞く温泉なので今夜の宿として行っておきたいところだ。そんな想いもあり、帰りも牧崎へ行く道が分からずスルーして島から一気に坂を駆け下りて角島大橋へと行く。帰りも同じく気持ちの良い橋だ。少し坂を上って海に向かって一気に下る感覚が帰りは満喫できる。非常駐車帯で写真を撮って、また本土へと戻る。
角島を後にして南下していく。ここまでの日本海沿いのルートは福井あたりから西へと向かう形で進んでいたのだが、ここからは南へと下る。本州の西の果てが近いことを実感する。国道に合流すると道幅は狭く車も多い緊張感ある海沿いの道が続く。ただ、アップダウンも少なく開放的な道が津波敷あたりでは続いている。いったん内陸に入るようなところがあっても坂は大したことが無いのがありがたい。 気持ちの良い響灘を走っていたが、衝撃吸収材が弱いからか足の裏が痛くなってきた。現状ではゲルパッドとソールを敷いているが順番を逆にしてみた。ゲルパッドが直接足の裏に当たるようにして痛みを減らしてみる。しかし、それを試すこともなく川棚温泉駅にたどり着いた。フィーリングを感じられるのは明日だろうか。情報収集を軽くやって温泉街へと向かう。 |

角島灯台とランドナー
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角島灯台
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不安要素としては野宿できそうな公園がないというところだ。コンビニに立ち寄って地元地図を見たがリフレッシュパークがあり得るかどうかというところだろう。コンビニの裏には地元の産物を取り扱う公共系の店があり軒先が広い。普通の野宿なら、最悪はここでも良いかと思う。ただ、駐車場を挟んで向かい側のテントの下でおじさんが見張っている…ように見えた。しかし、話しかけてきたのでよくよく話を聞いてみると、このおじさんもサイクルツーリストである。であれば閉店後なら泊まってしまって問題ないかと思われる。一緒にビバークしてしまうことにした。そうと決まれば温泉も近いし気楽だ。色々と話をする。 |
俺は温泉に入りに行く。テレビでいっぱいCMしてるお多福で風呂と瓦そばを楽しみたい。かなり豪華な温泉で露天風呂だけでも何種類もある。疲れが完全に取れそうな感じである。風呂を満喫したら飯だ。お多福で頼んでみるのは当然ながら瓦そば。驚くほどのボリュームだ。瓦の上でぱりっと焼けた蕎麦をつゆにつけて食べる。温かく香ばしい蕎麦というのは珍しいし美味しい。
寝床に戻ってきて、またおじさんと話が弾みつつ俺の続けてきた旅ということについて語る。そして、軒の下にテントを張って眠りについた。 |

川棚温泉 瓦そば
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6日目 |
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川棚温泉 → 本州最西端・毘沙ノ鼻 → 下関
−関門トンネル人道→ 門司港 |
50.27 km |
2009/05/01 |
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門司港 −鹿児島本線→ 博多 |
日本一周という壮絶な走りだからか朝の早いおじさんと共に目覚める。準備をしながらノウハウやら旅に対する想いや人生観を語る。親父と同い年で熱い人間。色んな事が俺の頭に重なってくる。闘病生活に入った俺の親父、俺の30年後に思い描く元気な定年後… 親子ほどに歳が違うが新たなことにチャレンジし先に夢を持ち、息子ほどの歳の俺から真摯に何でも学ぼうとする姿勢 俺にとって刺激となる出会いであった。力強い握手をして川棚駅前の交差点を別れた。彼は北へ日本一周の旅へと向かい、俺は今日でひとまずは終わる最終日の目的地 門司へと向かった。その旅路と人生に華があることを願いつつ、それぞれの道を走り出した。
コンビニで朝食を食って、まずは本州最西端の毘沙ノ鼻を目指していく。昨日の走りが楽だったからか体にはキレが出てきた。快調に南下し峠を一つ越えて吉母まで来た。ここから国道から外れて岬を目指していく。本州最西端へ向かう標識とか看板は充実してるので道に迷う感じもない。地図で見ても一山という感じの毘沙ノ鼻は予定通りに海沿いから急な坂を上り始めた。坂の先には岬とゴミ処理場があるからか大型車の通行が多い。時々、峠の下の方からディーゼルのエンジン音が鳴り響きトラックがあがってくる。そのたびに足を止めるためペースが乱れる。傾斜もハンパじゃない。
坂を登り切るとゴミ処理場のゲートが見えてきた。ゲートの中に入って坂を下って処理場の奥に行くと突端が見えるようだが、いちいち入るのも面倒なほどの雰囲気なので、その先の展望台までにする。もう一頑張りだけ坂を上ると公園がある。公園内の遊歩道を走ると展望台にたどり着いた。そこには看板と灯台を模したモニュメントがあり、本州最西端と書いてある。ついにここまで来た。本土に続き、昨年の夏の本州最東端に続いて、本州の四端を制したことになる。走れる四端は全て制したので、残すところは日本の西と南のみで、フェリーで渡るだけの道のりである。そんな達成感と満足感を味わいながら岬からの眺めを楽しみ、フレームと乾杯だ。 |

日本一周中のおじさんと俺ののチャリ
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本州最西端
毘沙ノ鼻
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本州最西端 到達証明書
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喜びをかみしめて本州最西端を後にして急な坂を下っていく。カーブも急だしトラックも多いので気をつけて走りたいところだ。下りきったら国道に合流する。あとは下関へ行き関門海峡をトンネルで渡れば今年のGWの旅は完走となる。海岸沿いギリギリの道を南下していく。日本海も下関までくれば穏やかなものなのか波は全くといってもいいほどない。そして少し住宅街や街中へと道がシフトしてきた。あと10kmほどで下関の駅となってきた。終わりが徐々に見えてきた。昼前には下関にたどり着けるだろう。やや交通量も多くなってきた下関市街地を走っていく。
そして、タワーなども見えてきて、いよいよ下関駅というところまで来た。鉄道の高架をくぐって駅前にたどり着いた。自転車を置いて昼食と情報収集に回る。あと本州最西端到達証明書も手に入れたい。観光案内所の姉ちゃんにサングラスの焼け跡を笑われつつも何とか購入した。大丸のレストランで回転寿司に行く。下関の海の幸を居酒屋以外で味わうにはこれが一番良いだろう。さすがにデパートの回転寿司とあって値段も高い。だが、鯨やフグなど下関ならではの海の幸が満喫できて美味しい。
昼食を終えて昼過ぎ。まだ時間はあるので、前々から行ってみたかった火の山公園へ向かう。国道2号線を走って火の山公園へ向かう有料道路に行く。せっかくなので自転車で上ってみたくなったのだ。結構、急な坂が海から始まる。グイグイ踏まないとあがっていかないほどの傾斜を耐える。そして無料のはずの道路の料金所の手前に「自転車通行禁止」と書いてある。無視して突っ切ろうにもゲートに係員は居る。諦めるしかなさそうだ。ていうか、上る手前に書けと言いたい。知ってれば最初から上る気はないのに。
下ってきて、ロープウェイ乗り場へ向かった。遊歩道を歩いて上っても良いが既に心は折れた。歴史は古いのであろうレトロな感じのロープウェイ乗り場へ行きロープウェイを待つ。何度も見て見慣れた関門橋も山から見ると見事である。山頂の展望台でしばらく関門海峡を眺める。行き交う船と海峡を挟んだ両側に広がる街。九州に帰ってくるにも、九州を出るにも、ここが玄関口。そんな間に流れる船たち。大昔にはここで決闘や源平合戦の最後の戦闘も行われたわけで、本州の西の果てとあって今も昔も特別な場所であることを実感する。 |

火の山公園ロープウェイ
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関門海峡の眺め(火の山公園から)
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壇ノ浦からの関門橋
(対岸は九州)
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関門トンネル人道の入口
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この料金箱にお金を入れて
エレベータで下って渡る
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山口・福岡県境(トンネルのほぼ真ん中)
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門司側から見る関門海峡
潮の流れが急に速くなってきた
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景色を満喫したところで、重い腰を上げて旅を〆にいきます。ロープウェイで壇ノ浦へと下ります。ロープウェイからも開放的な関門海峡を満喫し、自転車に乗り込む。乗り場から壇ノ浦へ下って大砲などを見物し、トンネルへ入っていく。20円を料金箱に入れてエレベーターで地下に下る。エレベーターを下りたところでスタンプを押して、トンネル内を九州へと向かう。建前上は走行禁止で押して歩くことになっている。下りは押して歩いていたが、このウェイトの自転車を押すのもつらいものがある。下りきったところで福岡県に突入だ。県境で写真を撮り、この旅の最後の境目を越えていく。登りを押して歩くといい加減つらいので、乗ってみた。どうせスピードが出るわけでもないし人もまばらだ。すると、しっかり坑内放送で怒られた。昔は登りも下りも乗っていたと思うが煩い世の中になったものである。
そして門司側へあがっていく。またエレベーターに乗って地上へ出る。地上へ出ると海の流れがすごい速さになっていた。そんな流れる潮を見て、夕暮れに染まり始めた関門海峡を楽しむ。今度こそ、旅は終了へと向かう。ゴールにしようとしている門司港駅へ向かっていく。門司の街中を抜けていく。レトロな建物や近代的な建物が建ち並び道は4車線。そんな都会じみたところを走り、最後の角を右折。海へ向かって走った先で左側に駅が見えてきた。
門司港駅前の広場にたどり着いて、この旅の完走を果たした。距離こそ398kmと史上最短に近いほど短いが内容や抱えている事情は深かった。何はともあれ旅に出れて完走の喜びを味わえたことは本当に大きい。レトロな雰囲気の門司港駅、駅前の広場の噴水で遊ぶ子供達をぼんやり見ながら喜びに浸る。フレームと乾杯をして今年のGWの旅も終わる。
自転車をばらし始めた。行きと同じでフォークを抜かないスタイルで輪行する。前輪と後輪を外し、泥よけを外す。キャリアも外してとりあえずは博多に持って帰る。荷物が全てまとまったところで待合室にひとまずは置く。終電の時間を調べても、まだまだ余裕はあるようだ。すっかり暗くなった門司港の街で夕飯を食べて帰ることにした。最近、門司港の名物となってきた焼きカレーが食いたい。駅の真ん前に少しオシャレで開放的な店がある。そこに決めて入ってみる。もちろん焼きカレー、そして労を自らねぎらうべくビール。一人で乾杯し、ビールを飲みながらカレーを待つ。少し時間がかかったが、カレーとチーズと卵をオーブンで焼き上げた焼きカレーが出てきた。カレーのコクと香ばしさが増して、焦げて溶けたチーズが絡んで本当に美味い。それを卵が柔らかく包み込む。後入れのスパイスも利いて美味しい。これはもっと全国的な流行になりそうな予感すらする。
夕飯を食い終えて店を出ると、駅はライトアップされていた。ライトアップされたレトロな門司港駅は幻想的な雰囲気を漂わせている。写真におさめていく。大量の荷物を持って電車に乗り込んでいく。ツーリング直後で体にキレがあるからか、荷物が軽く感じられる。俺もまだまだ捨てたもんじゃない。電車は走り出す。今回は旅の輪行モードというよりは帰省モードという雰囲気が俺の中で強い。気分は既に旅から抜け出していた。
小倉や門司で人の出入りは多くなったが混んでは居ない。日記を書いていると、あっという間に博多に着いた。工事中で混んでる博多駅内を歩いてタクシー乗り場へ行く。組んで走る元気は残っていない。実家にたどり着いて、今年の旅はひとまず終わった。 |

この旅のGoal 門司港駅前
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この旅の完走を祝してフレームと乾杯
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門司港 完走の祝杯
今日も暑かったのでビールがうまい
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門司港名物 焼きカレー
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ライトアップされた門司港駅 レトロな雰囲気と柔らかい明かり |
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7日目 |
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博多南 −博多南線→ 博多 −東海道山陽新幹線→ 東京
−東北新幹線→ 宇都宮 |
2009/05/06 |
しばらくは旅を離れて”帰省”という時間を過ごす。そんなGWも終わろうとしていた。徹夜でカラオケしたり無茶もしたが、福岡を離れて俺の戦う場所へ帰っていく。いつしか実家に帰るのではなく実家から帰るというようになった。今回のGWに、できるだけの親孝行はしてきたし、あとはお互いに闘うのみである。色んな決意や想いをもって新幹線に乗り込んで東へ向かう。日記を書こうと思ったら家にペンを忘れてきたので諦めた。Uターンラッシュも終わりかけているからか列車は混雑している様子もない。
親からもらった弁当で夕食を済ませて、淡々と新幹線を乗り継いでいく。東北新幹線に乗り込んで宇都宮へ戻る。駅前で自転車を組み立てて、乗って帰る。旅の終わりはあっさりと淡々と過ぎていく。そして宇都宮の我が家へ戻り、旅は完全に終わった。何かが変わろうとしている2009年という年の旅。短くも慌ただしくも終わりを告げた。 |
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