旅記録
2014 GW 四国
旅記録 目次に戻る
HOMEに戻る
地図を表示 (新しいウィンドウへ)


0日目 宇都宮 −東北本線→ 上野 −京浜東北線→ 東京
−東海道・山陽新幹線→ 岡山 −特急 南風→ 丸亀
2014/04/26 丸亀 → 坂出 → 高松 15.72 km
 年々、ツーリングの前の仕事の激しさが増している。今年ほどハードな始まりは無いと昨年の夏に思ったが、それを上回る。12月にランドナーを盗まれて仕方なくフルモデルチェンジを兼ねて新作した。納車もGW寸前までずれ込んだ。土曜日から休みだが、水曜日に深夜残業をして静岡まで運転し、木曜日に受け取って静岡から戻り、金曜日は深夜残業をして土曜日に出発となる。
 全く調整できていない自転車、体、気持ち。すべてが疲弊した状態で連休を迎えた。納車されて車で持ち帰って輪行袋に収めて、シャワーを浴びて汚れ物を洗濯して乾燥し、明け方のタクシーで駅へ向かう。自転車を組み立てて自走して再び分解する時間もなく、新型車のため輪行のやり方も新しいので手間取りそうなのだ。すっかり、いつも通りの流れになった鈍行の始発に乗り込みグリーン車で上野に向かいながら爆睡する。爆睡しすぎて上野で降りようとしたらドアが閉まった。2両歩かないと降りられなくなってしまう。
 京浜東北線に乗り換えて東京駅へ。新幹線の切符売り場はすでに行列ができている。何とか並んで丸亀までの乗車券と特急券を買う。まだ連休の混雑から辛うじて逃げ切れてる博多行きの新幹線に乗り込んだ。寝過ごしに気をつけつつ眠りにつく。新大阪を過ぎたあたりで慎重に眠り、岡山に降り立った。
 岡山で在来線へ乗り換えるためホームへ降りていく。しばらく待っていると四国へ渡る特急列車はホームへ滑り込んできた。なんとアンパンマンのペイントがされている。隣のホームもアンパンマントロッコ号だ。写真撮影をしている家族たちを見つつ列車に乗り込むと、またアンパンマン柄の特急が来た。そんなに本数がないはずのアンパンマン列車を3つも同時に見る幸運。どこかで運を使い果たしているのだろうか。特急は瀬戸大橋を渡り四国へとたどり着く。橋を渡り終えて、連結されている特急うずしおを切り離して丸亀へ向かう。
 昼には丸亀に到着した。駅前で自転車を組み立てる。今までより手間が増えた構造の自転車に苦戦しつつ組み上がった。ぴかぴかの新車が気持ちいい。地元のおじさんともその思いを共有しつつ完成した自転車に乗り込む。新車のスムーズな走りを楽しみながら、商店街をゆっくりと流していく。まずは、昼飯だ。香川県に来たらうどんは食わないと始まらない。コンビニより多いうどん屋にすぐにたどり着けない。もっとセルフ感のある簡素な店を求めたが、少し品のあるうどん屋に入る。麺の食感も味もよく具に負けないうまさがある。付け合わせのおでんも美味しい。香川県での食生活は順調に始まった。
 スピーカーの電池や1.5Lの水など買いたいものはいっぱいある。うどん屋の正面にあるドンキホーテに行ってみたが目的は達成しない。走り出すとサドルのねじが緩んでいることが発覚した。店でポジション調整したときに締め込みが甘かったか。ポジションを合わせて締め込む。過去にねじが壊れたこともあるのでオーバートルクには慎重だ。
 最近は何故かはまっている城を見るべく丸亀城へ向かう。城の広場を回っているとSPDのクリートが緩いことに気づいた。漕いでてもすぐ外れるのだ。荷重調整のねじを締めつつ様子を見る。締め具合が決まったところで急な坂を上って城へと上がってみる。26HEにしてローギアードな設定にしたからか、出来てない体でも上れている。頂上の広いところに自転車をおいて天守閣の方へ歩いて行く。
 途中から見える讃岐富士や瀬戸内海に瀬戸大橋の眺めがいい。ものすごく美しい弧を描いた立派な石垣。その上にちょこっと乗ってる小さな天守閣が趣ある景色だ。天守閣へと上がって景色を楽しむ。
 今度はブレーキを確認しながら急な坂を下って来る。ツーリングの前に全く試せない日程というのは厳しいもので、一つ一つの調整やデバッグが油断できないものである。

高知行き特急南風


アンパンマントロッコ号


松山行 しおかぜ
岡山駅 アンパンマンの特急たち


丸亀駅前
新型ランドナーで旅が始まる


絶品 丸亀のうどん


うどんに合う おでん


立派な石垣と小さな城 丸亀城


丸亀城からの讃岐富士の眺め

 丸亀城が出たら坂出の瀬戸大橋記念館へ向かう。頭上を駆け抜けていく列車を見つつ向かい風に耐えて海へと向かっていく道が物々しい。記念館までたどり着くと、疲れがどっと出てきたので橋を眺めながら休憩する。少し体力が回復したところで、閉館が迫ってきた記念館を慌ててみる。建設技術に特化した展示はエンジニアの心に響く。模型やビデオで組み立てる手順を細かく説明している。
 見物を終えると、すっかり夕方だ。まだ高松まで30km近く残っているので、少し焦りも出てきた。坂出から高松までは川や入り江に船の出入りがあるからかアップダウンが激しい。海沿いを越えて五色台の脇を抜ける峠の手前まで来た。そんなに大きい峠では無いが今日の最大の山場である。やっぱり初日ということもあって走りに勢いは無い。寝不足でかったるい体で坂を上りつつ振り返ると、夕暮れに染まる瀬戸大橋と瀬戸内海が見えてきた。隠れた絶景だろう。時々、後ろを見ながら坂を上って峠を越えた。すっかり暗くなってきた峠を下って高松市へ入る。
 高松の市街地へ向かう道はすでに夜の様相である。徐々に都会になっていく道を走って19時半に高松駅前に着いた。喜びもそこそこに商店街へ向かう。水や米や非常食など買っておきたい物がいっぱいある。スーパーは見つけたが目的の物がことごとく揃わない。仕方なく店を出たところで自転車のチェーンが外れて困ってる親子が居たので自転車を直してホテルへ向かう。



瀬戸大橋記念公園からの瀬戸大橋

 ホテルはすぐに見つかった。自転車を裏の目立たないところに置かせてもらって部屋へ荷物を運び入れる。俺の荷物の段ボールを指さして英語で何か言ってくる中国人を相手にしたが英語は通じていないようだ。荷物の開梱を済ませてバッグにまとめてシャワーを浴びて夕飯に出かける。居酒屋で魚と骨付き鶏を楽しんで、酔っ払ってホテルへ戻る。さすがに疲れは隠せず気を失うように記憶もないままに眠りについた。

高松名物 骨付き鶏


瀬戸大橋の向こうへ沈む夕日



   出発(香川県丸亀市)から 15.72 km

1日目 高松 → 四国最北端 竹居岬 → 讃岐津田 41.34 km
2014/04/27 讃岐津田 -高徳線→ 高松
高松 -特急うずしお→ 志度 -高徳線→ 讃岐津田 
 まずは荷物を1Fにすべて下ろして自転車にキャリアを取り付ける。構造が大幅に違うので水平に取り付いているかが不安である。感触を確かめながら1個ずつ丁寧にパッキングを進めていく。すっかり遅くなったが出発する。新車で迎えた2014年からの旅の始まりである。昨日から始まっているのは事実だが荷物を積むと、より一層に旅の感覚が強くなる。低くなった重心で順調に東へと進めていくが、まだ朝食を食っていない。やはり、うどんは外せない。気になる点がもう1つあり、サドルが低い。踏み込んだときに膝が余っている感覚がある。
 見つけたうどん屋でサドルのポジションを3mmほど上げてねじを締める。サドルの高さをカメラで写真に残しておく。先々、下がってきたらわかるようにしたいのだ。セルフ式の香川県らしいうどん屋でのうどんはなめらかで腰もあって旨い。満足して、また東へと向かう。屋島を越えたところで左に曲がり北へ向かう。少しの坂でへばってしまうイマイチっぷりを実感しながら車通りが少なくなった県道を走っていく。ここで次の不具合が発生である。今回からSIS(Shift Index System)が無くなりフリーの動きをしているレバーで変速しているが、ローに引いたはずのギアが徐々にトップ側へ解放されて落ちていく。レバーの操作荷重を調整できるネジがあるので締める。締めると荷重が重くなり手で操作しないと動かなくなる。当然、それが理想の姿である。しかし、しばらく走っていると、またネジが緩み始めてギアがトップに落ちるようになってきた。仕方なく増し締めして走る。4回ほど繰り返しつつ走っていると固定された。不安なレバーである。
 ようやく不穏な動きが落ち着いたところで、アップダウンのある海沿いの道を走り抜けたら竹居観音へ曲がる看板が見えてきた。コンクリートの急な坂を下っていくと、海へと突き当たる。突き当たりに最北端を示す門のようなモニュメントがある。旅の1日目でさほど苦労してないので感動と呼べる感動はないが、四国最北端 竹居岬に着いた。静かで浅い瀬戸内海と島々と向こう側の本州も見えているので最北端感はなく、ここは通過点に過ぎない。そう考えるしか無い端っこである。岸壁に自転車を立てかけて竹居観音を見に行く。海に面した崖に橋がかけてあり、崖の中をくりぬいて寺が建っている。波に洗われる崖と薄暗い寺が厳かな雰囲気である。
 辺鄙で人気の少ない最北端を後にするには急な坂を上り直す。前輪が浮くほどの傾斜なので新しい自転車のポテンシャルを試すには良い感じだが、押して歩くことはなく登り切った。その後もアップダウンの多い半島を走って行く。途中でまたサドルが下がってきていることに気づいた。5mmほど上げて思い切って増し締めをしてみる。アップダウンを走っていて気になることが出てきた。下り坂で27km/h程度になると前輪がぶれる。手の力を抜いても勝手に曲がることは無いがバランスの悪い状態は何かの拍子に大崩れする恐れがあるので何とかしたい。荷物を少し後ろに寄せたり色々と考えてみるが改善しない。荷物が無くてもこんな挙動をするのか気にはなるが試せない。昨日、坂出から高松に行く時に坂道を下った時には、こんな挙動をしていた記憶は無い。荷物を積んだときならではの事象だろう。
 そこが気になって海沿いの道を楽しめた感じは無いまま国道に合流した。すでに14時過ぎと遅いが道の駅で昼食にする。オリーブを食べさせたハマチの漬け丼を食べる。脂がのっているがあっさりして美味しい。丁寧にストレッチをして走り出す。
 国道沿いを走っていると車から風をもらって速度が25km/hほどに達した。すると前輪がぶれる挙動をみせ始めた。今度は空気圧をチェックしてみる。従来の650-38Aや700×35Cだと1mmも凹まないほどの空気圧であるが、26×1.25のシュワルベマラソン(タイヤ)を手で押してみると2〜3mmはへこむ。サドルバッグからエアゲージを取り出して気圧を見ると2.5気圧程度しか入っていない。どうしても気圧を測るときに少し空気が抜ける。インフレータを取り出して空気を入れようと思ったら、先端に締めてあるネジとゴムキャップがない。要は全く使えない。

四国最北端 竹居岬




竹居観音


フル装備の初日
新車ならではトラブル多発


道の駅 源平の里むれ
オリーブはまちの漬け丼

 ここで大きい決断をする。次のJRの駅まで走って自転車を置いたまま高松に戻って自転車屋で買うしかない。リム打ちや極度の左右ぶれに気をつけながら次の駅である讃岐津田に向けて走って行く。坂道を登り切って下りは特に慎重に走る。津田の街の中で駅に到着した。
 列車の時間を見ると50分ほど待ち時間がある。駅のすぐ近くにあるスーパーで買い出しを済ませる。米とガスを買い込む。その気になれば自炊もできる状態となった。駅でダラダラしながら列車を待ち続ける。特急うずしおを何本か見送って、やっと鈍行が来た。乗り込んで高松に向かう。まだ、そんなに走っていないので短い。1時間もかからずに高松に着いた。この時点で18時過ぎで、すでに暗い。昨日見つけてた自転車屋に行く。使い勝手を考えるとホースが付いていて地面に立てて使えるインフレータが良い。エアゲージも内蔵されている豪華仕様で今まで使っていたのと全く同じにはならず大型化してしまった。愛想の良い店員さんに頼んで、その場でフレンチバルブ対応に先端を返してもらう。空気を入れられることもその場で確認してもらって安心だ。
 高松駅へ戻る途中でうどんを食べて、帰りは特急うずしおで志度に行く。普通列車に乗り換える。真っ暗になった21時に讃岐津田へ戻ってきた。まずは駅前で空気を入れてみる。エアゲージ付きのフロアタイプのインフレータは便利だ。もう少し小さければ言うこと無しだが、5気圧程度まで入れると安心感が出てきた。タイヤを手で押しても1mmも凹まないところまで持ち直した。後輪も同じく空気を補充する。やはり2.5気圧程度しか入っていなかった。5気圧まで入れて作業を終えた。インフレータはフロントバッグには収まらずサイドバッグのポケットに入れても、まだはみ出る。小型のフロアポンプが発売されたから壊れてた物に変えたのだが、また大型ポンプに逆戻りだ。20年近くやっていても、こんなトラブルがついて回る。情けないような気持ちである。

自立式でゲージも付いている
インフレーター


特急うずしお 徳島行き

 真っ暗で車通りの少ない国道を走って津田松原の方へ向かう。ツーリングマップルで見る限りでは温泉もあるし公園もありそうだ。まずは公園の入り口は見つけた。何はともあれ風呂が先だ。早く行かないと閉まってしまう可能性もある。温泉もすぐに見つけたが、22時までは開いているので入れる。温泉で風呂に入ると一安心である。入浴を済ませたら夜風が涼しい津田松原の中を走り抜ける。砂に足を取られそうな路面だが先代の700Cより26HEは走りやすい。小径化した安心感は大きい。
 松原を抜けると屋根の下にテントを張って自転車を置けそうな場所も見つけた。2カ所のうち1カ所はバイク乗りの人がすでにいたので、誰もいない方を使う。さっさとテントを張って眠りにつく… はずが、バイクの連中が夜中に大声で騒いでいる。人も徐々に増えてきた。バイクの空ぶかしにテントの中からでも分かるほどの火柱がある火遊びでうるさくて疲れていても寝れない。連中がいなくなってようやく眠りについた。


   出発(香川県丸亀市)から 57.06 km

2日目 讃岐津田 → 讃岐白鳥 → 徳島 57.37 km
2014/04/28
 朝からどんよりと曇っている。予報では今日と明日は雨だ。3回目の正直で鳴門の渦潮を見ようかと思ったが、面倒なので徳島まで直行することにした。昨日のうちに買って置いた稀少糖のカステラを食べて出発する。曇っているので暑くもなく快適に走れる。昨日充填した空気圧で圧倒的に軽くなってきた。ちょっと速度を上げてみたが前輪のぶれは少なくなったように思える。走り自体は昨日までよりマシになったものの相変わらずキレがない。少しずつ持ち直していくしか無いだろう。
 自転車のデバッグは昨日までで終わったからか今日は変な動きは全く無い。前輪のぶれもサドルの下がりもギアの勝手な動きもすべて見られない。ようやく走りに集中できる状態になってきたように思える。昨日までの走りながらに何が起きるのかを観察する不安感はきつい。新車は新車で色々とあるものだ。
 何とか普通の走りができる状態になったところで白鳥まで走り、ここで休憩しつつ寄り道だ。日本人なら行っておくべき山があるようなので立ち寄る。国道から離れて海岸の方へ向かう。どこにあるのか迷っていると大きな神社に着いた。神社の境内から山へ登るアタックルートがあるようだ。海岸の松林と砂地を歩いて山頂を目指して歩く。しばらく登山道を歩くと、最後の一踏ん張りでまっすぐと山頂へ続く道が現れた。最後の力を込めて登る。標高  mの御山の頂を制した。日本一低い山の山頂だ。上から見ても坂道感が全く無い。松原の中に石碑が1つあるだけだ。何をもって山というのだろうか? そこから考えてしまうような山である。神社で登頂証明書も買って、また走り出す。

津田松原


御山(みやま)の山岳信仰の象徴
登山口 白鳥神社


御山(みやま)へアタックする登山道


山頂から見下ろす登山道


御山の山頂 標高 約3600mm


登山証明書

 元々は昨日の宿泊予定地だった引田まで走った時点で正午近い時間帯になっている。新車ならではのトラブルに巻き込まれて、インフレータの異常にも昨日のうちに気付いて我ながら良い判断をしたのが不幸中の幸いというところだが、初っぱなから出遅れて厳しい状態に追い込まれている。鳴門の渦潮をショートカットすれば徳島までの走行は大丈夫だろうけど順調では無いスタートに喜びは無かった。
 引田の古い町並みを見て少し早めの昼食にでもしようと思ったら通り過ぎてしまったようだ。そのまま走り抜けてしまおうと思ったら、道沿いに三宝糖のばいこう堂が見えてきた。美味しんぼにも出たことがある和三盆の老舗である。やたらきれいでオシャレな和菓子屋さんで休憩しつつ糖分補給アイテムになりそうな物がないか見に行く。昼食前の時間帯であるが和三盆のアイスが気になった。せっかくなので1つ食べていく。店の中には試食用のテーブルもあってお茶も出してくれる。アイスは和三盆がサラサラと溶けていく爽やかでさりげなく甘さの残る味が何ともいえない。
 また東へと走り、海沿いの道に出たところで県境を迎える。その手前で昼食にする。香川県最後の食事はやはりうどんだ。セルフの造りで海沿いのプレハブで食べる。曇っているが海を見ながらのうどんが美味い。香川はどこでうどんを食べてもレベルが高い。それを実感する一杯である。今までのツーリング歴からして四国は未だにまともに走るのは2回目と不足気味なので、また四国を走って香川に来たいものだ。

和三宝アイス


最後の讃岐うどん

 国道を挟んで向かい側のコンビニでトイレを済ませて走り出す。すぐに小さい坂を越えて県境を越えて徳島県へ突入した。海沿いの道は平らで走りやすい。相変わらずどんより曇った鮮やかさがない空と海を見ながら走りはまずまずの調子である。道沿いにある海産物の店を見つつ休憩したりでマイペースに進めていけるコースである。休憩を終えると、ちょっとした峠が始まる。先が思いやられるほど走りは捗らない。やたら長く感じる4車線の国道に煽られるような坂を登っていく。
 坂を越えると路面は濡れている。とうとう雨に降られてしまうのか… そんな不安を感じながら下り坂へ入っていく。ここで懸案の下り坂を検証する。空気圧を上げたおかげでぶれは減ったが無くなったわけではない。色々と試しながらの走りなので下りは至って慎重に進める。下りきると徳島市まで続くと思われるバイパスになった。交通量もどっと増えてきた。車から風をもらいつつ快走は続く。しかしポツポツと雨が体を打つ冷たさを感じ始めている。このままレインウェアを着ないで済む程度の雨のまま逃げ切りたい。
 吉野川の橋を越えて、いよいよ徳島の市街地へ突入すると雨が大粒になってきた。あと少しなんだが…と思ったが耐えきれずレインウェアを羽織る。この時点で今日の負けが決定だ。あと30分早ければ逃げ切れたのに… という変な悔しさの中で徳島駅に着いた。まずはケータイでホテルを探して予約する。宿は狙い通りに屋根の下に自転車が保管できそうな東横インが確保できた。観光案内所で情報収集しようと思ったら駅ビル内には無い。周りをぱっと見ても見つからない。仕方ないのでケータイで検索してみるとロータリー内にある。いちいち土砂降りの雨の中を歩いて聞きに行かないといけない。仕方なく歩いて行き阿波踊り会館などのパンフレットを入手した。夜の公演もあるので、安心して観光できそうだ。
 まずは土砂降りになった雨の中でホテルへ向かう。自転車を置いてチェックインする。先々の日数を考えて今日は洗濯をしておきたいのだが、ホテル内にコインランドリーはあった。まず着替えて汚れ物を洗濯しつつ部屋に戻りシャワーを浴びる。洗濯が終わったところで乾燥機に移して部屋で日記を書きつつまつ。20時からの公演に向けて19時30分に乾燥が終わりそうなペースだ。ギリギリだがテンポよくこなしていけば間に合うだろう。乾燥を終えて圧縮袋に収納してサイドバッグに入れて自転車で阿波踊り会館へ向かう。
 ちょうど雨は止んでいて快適に走れて辿り着いた。ホテルからは近く5分程度の距離だったので時間は十分にある。会館の中の展示系は17時で終わっていて見れず、チケットを買って待っているだけになった。ここ数年のサイクルツーリングで阿寒湖でアイヌの踊りを見たときも、今回の阿波踊りも雨だ。俺の旅に「踊り」が絡むと雨が降るというジンクスになりつつある。よくないことだ。そして公演は始まった。喋ってる方の緊張感が伝わるどこか素人的な和やかな説明の後で踊りは始まる。女踊りは艶やかに男踊りは低く構えて雄壮だ。男踊りをしている小柄な女性がまた格好いい。素早く力強い動きは迫力さえも感じる。こういう会館で定番なのが、前で一緒に踊ってみましょうということだが、俺も真っ先に出た。積極的すぎる雰囲気が災いしたか何故か目立つからか外国人と俺がピックアップされて記念品はもらえたが一言喋る展開となった。
 阿波踊りを終えたら阿波尾鶏だ。自転車でホテルに戻って自転車を止めて歩いて駅の方へ行く。やや、ざっくりした雰囲気の焼き鳥屋でビールと焼き鳥を楽しむ。肉の味が濃厚で歯ごたえも程よく美味しい。四国の鶏肉はこれからの旅で魚に続いて楽しみになりそうだ。〆の徳島ラーメンも濃厚だがさっぱりとして美味しい。明日は今回の旅で最大の山場を迎える。80km以上の道を走り切らない限りは風呂にも宿にもありつけない辺鄙なルートに入り、しかも降水確率100%の雨。試練の日に向けて鋭気を養う夜となった。

阿波踊り会館の阿波踊り


徳島ラーメン



   出発(香川県丸亀市)から 114.43 km

3日目 徳島 → 四国最西端 蒲生田岬 → 日和佐 90.65 km
2014/04/29
 朝からしっかり雨が降っている。予報通りであり仕方がないところだろう。グズグズしていても先がきつくなるだけなので、意を決して部屋を出た。自転車置き場で短パンからレーサータイツに履き替えて出発する。朝からレインウェアを着込んで走る厳しい天気だ。途中のコンビニで朝食を済ませていく。降りしきる雨に濡れた路面に注意しつつ、最初の目的地 日本人なら行っておくべき山へ向かう。
 徳島市郊外で今日のルートの通り道にその山はある。人は何故山に登るのか? そこに山があるからだ。バカと煙は高いところが好きとも言う。俺はバカだから高いところは好きだ。きついと分かっていてもあえて数多くの山岳ルートを制してきた。今回は趣が違う。あわや通り過ぎそうになる登山口に辿り着いた。登山口は赤い鳥居がある。神が宿る山だろうか。鳥居の脇の石碑に自転車を立てかけて登山道を歩く。降りしきる雨が登山を厳しくする。足下は固まっているが濡れている。滑落しないよう慎重に一歩ずつ踏みしめて行く。そして弁天山の頂に立った。日本一低い自然の山からの眺めは周りの木に隠れて何も見えない。10段ほどの階段を降りて下山も無事に終えた。わずか2分ほどの登山だった。
自然の山では日本一低い
弁天山

 登山での体力消耗はほぼ無いまま続きの走りに向かった。国道に合流して南下しつつ徐々に東へ向かっていく。土砂降りの雨と強烈な南東の風に煽られる。向かい風と横風で振り回されそうな状態だ。雨粒が痛いほどに降り吹き付けてくる。目を開けてられないほどだ。今日の目的地は四国最東端の蒲生田岬(かもだみさき)だが、東風は向かい風である。試練のコンディションの中を歯を食いしばって進めていく。ほかに何も考えることは無く走りに集中していく。途中の道の駅でもスタンプ収集以外は実質何もしていない。特に左側(東)が開放的な場所は車道に放り出されそうな突風が吹き荒れる。自転車を左に倒して踏ん張りながら低いギアでグイグイと踏み込みながら進んでいく。1cmか2cmほど水がたまっている地面は走りを邪魔する。通り過ぎる車が吹き上げた飛沫で自分の姿が見えなくなってないか不安でもある。
 10時半には国道から蒲生田岬へと曲がる分岐が近づいてきた。おそらく最後と思われるコンビニで昼食のランチパックを買い込む。昼食を食べる店があれば、そこで食べれば良いが無い場合は持っているランチパックに頼るしか無い。一気に辺鄙になってきた山道に入っていく。地図を見る限りでアップダウンが多いのは容易に想像が付く。まずは峠を1本越える。高低差は100m程度と思われる。先は長いので無理せずインナーを使って行こうと思ったらチェーンが内側に落ちた。どうも一気にインナーに落とすと駄目なようだ。手は黒い油にまみれながらチェーンを戻した。落ちないように可動範囲を決める手段もあるが、今は操作でカバーするのが良いだろう。峠のトンネルを抜けて下りきると2つめの峠が始まった。これを越えると海沿いに戻った。最後と思われる集落には店も何もない。これを越えると海沿いの道を岬に向かうだけの一本道だ。
 ここに来て雨は止んで風も止まった。さっそくアップダウンが始まるが高低差はさほど無い。意外と最後まで楽?という淡い期待を持たせる。鉛色の空の下で海や入り江の美しさは感じられず、淡々と走って行くだけの道が続く。岬に近づけば近づくほどアップダウンの幅が大きくなり、体力的に削られる。雨も降ってきた。何の目印もないし地図上に距離も書かれていないので地図上でどこまで走ったのか分からないまま無心に走って行く。足も頻繁に止まるが終わらないような長い道に耐えていく。今までの「端っこ」の中でもっともコンディションが悪い状態だろう。20km程度の道を2時間近くかかって進み、やっと蒲生田温泉に辿り着いた。温泉で飯は食えるが、坂の上にある。坂の下の駐車場でランチパックを食うことにした。簡単な昼食を済ませた。出発しようとしたら雨が再び強く降り風が吹き荒れてきた。あと1km程度だが苦戦する。人が全く居ない道を東へ進む。そして岬と思われる駐車場とトイレに辿り着いた。
 トイレの軒先に自転車を置いて岬へと歩いて行くしかないようだ。海は荒れている。岬へ行く遊歩道の入り口は鉄の扉でふさがれている。開ければ行けるようなので開ける。扉のすぐそばに「四国最東端 かもだ岬」と書かれた石碑がある。まだ東へ歩けそうなので遊歩道を歩く。すぐそこまで荒波が押し寄せていて音もずずーんと重低音だ。波にのまれたら誰にも気付かれず流されそうだ。そんな恐怖感の中を一人で歩いて行く。遊歩道の先の階段を上って灯台へ行く。灯台は強風が吹き荒れて写真を撮るだけでも一苦労だ。荒々しい海をさっと眺めて灯台を後にする。また荒波が押し寄せる海岸線を歩いて駐車場へ戻る。写真だけさっと撮って鉄の扉を閉めた。
 戻り道は強い追い風に煽られて走って行く。さっき昼食を食べた唯一の雨宿りができる東屋でストレッチをして休憩をする。先はまだ長いがここでの休憩は大きな意味を持つ。行きに2時間かかった道を帰りは1時間弱で走り抜けた。追い風もあるが最東端を制した安心感と達成感が気持ちのどこかにあるからだろう。あとは日和佐まで走りきるしか無い。30km弱の距離が残っている。
 海沿いの道を終えて峠道に入る前に休憩していく。東からの追い風に力をもらいつつ国道までまっすぐと戻る道へ進んでいく。進むほどに道が狭くなってくる。トラック1台も走れないほどの道を徐々に上っていく。インナーギアを使うこと無くセンターだけでグイグイと登っていく。足を止めて休むことも無く自分でも信じられないペースで登っていく。岩と岩の間の暗い峠に着いた時に、ようやく新型ランドナーとの人馬一体感を感じられて満足感が出てきた。登坂が楽にできるようにして小径化で走破性を高めた狙いは当たった。
 さて峠を下って国道に合流して日和佐に下れば終わりかな…と油断したら、また上り坂が始まった。今度は3ナンバーの車が走れるか微妙なほどの道になってきた。俺は正しい道を走っているのかすら疑問になってくる。まさか坂を登り切ったら行き止まりじゃないだろうな?と疑いながら走るが、県道番号を書いた看板が時々出てきて安心させてくれている。2つめの峠もインナーを使うこと無くセンターだけで登り切った。そろそろ疲れが隠せない状態になって国道へと合流した。思ったより長い峠道だったが、人馬一体でよくここまで来たものだと自ら感心する。



四国最東端 蒲生田(かもだ)岬


蒲生田岬 灯台


阿南市 県道200号線の峠

 濃い霧が立ちこめる国道のバス停で休憩しつつ糖分を補給する。そして下り坂に入った。前輪のぶれは気にならないレベルに収まってきた。ようやく自転車も本調子が出てきたようだ。傾斜自体は急では無いからスピードは乗らない。お遍路さんもぼちぼち見かけるようになってきたので、慎重に下っていく。それに越したことは無いだろう。
 坂を下りきると薬王寺の前を過ぎて日和佐の道の駅に辿り着いた。最大の山場となる今日を走りきった安心感で力が抜ける。達成感も強いし、ようやく本当の意味での相棒になった自転車に信頼も生まれた。日和佐の道の駅の軒先はお遍路さんやサイクルツーリストですでにごった返していた。俺はちゃんとテントを持っているので公園を探すことにした。公園は見つけたものの管理事務所もあってガードは堅そうだ。しかも行く途中で強い風も吹いていて面倒になってきた。道の駅で野宿する方が楽だろう。ホテルでも良いが今日は自炊をしたい気分でもある。スーパーでハマチとメジロと鳴門金時を買っていく。レシピも置いてくれていたのでサツマイモの炊き込みご飯に決定だ。
 道の駅に戻り屋根の下のスペースで濡れた荷物を自転車から降ろして干しながら、お遍路さんとサイクリストのグループと話す。自転車に鍵をかけて薬王寺の隣の温泉へ行く。今日はハードだったし雨で体は冷えているので温泉は生き返る。今後の糖分補給に使えそうなべっこう飴を買って道の駅に戻る。鳴門金時を切って米にまぜて塩で軽く味をつけて炊く。飯を炊きながら刺身でビールを飲む。新鮮な魚は美味くてビールが進む。4日目の夜にして、やっと料理が出来て旅が始まった気分である。そして飯の方は順調に吹きこぼして弱火で炊いて振動が止まった。時間帯は遅いが良い炊け具合だ。鳴門金時のほのかな甘さがご飯全体に伝わり塩気が絶妙に味を引き締める。鳴門金時の甘さも引き立つ。なんと言っても香りが良い。ここ最近はツーリングでの炊き込みご飯がマイブームになっているが、今回は素材の味が良く出ている。
 鳴門金時のサツマイモご飯を半分はおにぎりにしてコッフェルを洗って片付ける。雨に洗われた空気でくっきり見えるライトアップされた薬王寺が美しい。この時点で気がつけば23時半。どうも走りに余裕が無く時間が遅くなりがちで、これがペースを悪化させてしまう。よくない傾向に不安を感じつつ、今日の走りに満足して眠りにつく。
 
鳴門金時 ほくほくで美味い


鳴門金時の炊き込みご飯



   出発(香川県丸亀市)から 205.08 km

4日目 日和佐 → 南阿波サンライン → 宍喰温泉 47.44 km
 2014/04/30
 昨日とはうって変わってスッキリと晴れた空だ。早寝早起きのお遍路さんたちは早々に撤収して俺だけが残った形となった。干してる荷物を片付けて、昨夜作っておいたおにぎりを食べて撤収する。このあたりのエリアは泊まれる場所の配置がよろしくなく、距離を思いっきり走るか40km程度でとどめるかのどっちかしか選択肢がない。今日は南阿波サンラインのアップダウンと海を楽しんで40kmそこそこのところにある宍喰温泉で終了予定なので気楽なものだ。
 アカウミガメが産卵しに来る大浜海岸の方へ行き、ウミガメ博物館へ寄っていく。小さい博物館ではあるが、地元のウミガメ保護の歴史とウミガメの生態について詳しく展示されている。育ててるウミガメも見れて楽しめる。ウミガメを知るというのも良いが、ウミガメ保護活動を多く取り上げているのが良い。道の駅へ戻りスダチソフトを食べる。酸味と甘みが良い。コンビニで昼食のランチパックを買って出発する。
 国道から分岐して南阿波サンラインへと入っていく。当然、覚悟しているが上り坂が始まる。海は全く見えない森の中で少しずつ坂が始まる。大きく曲がるワインディングを登る。昨日の疲れは残っているが、無理をしても仕方ないのでインナーに落として気楽に行くが、意外とペースよく走れている。坂を登り切ったトンネルを抜けると、やっと海が見えてきた。景色を楽しんで写真を撮りつつのんびり進んで第1展望台まで辿り着いた。
 売店と軽食はあるが雰囲気が悪いのでスルーして景色を眺めつつ足をストレッチする。昨日の疲れはあるものの走り自体は上り坂の割に悪くは無い。新型ランドナーのポテンシャルも十分に感じられる。広々した海と複雑な地形を楽しめる景色と走りの手応えに満足して、続きに入る。ここからは海への見通しがよく、時々は景色の良い場所が現れる。そのたびに写真を撮ったり休憩したり楽しみながら走って行く。来て正解だった南阿波サンラインは楽しい。
 第1展望台を過ぎるとアップダウンしながら徐々に下っていく。いくつかの撮影スポットを過ぎて第3展望台まで来たところで昼飯にする。第1展望台の売店以外は店も自販機もないルートで、地べたに座ってランチパックを頬張るのみの昼飯となった。このルートは自転車の旅人が多く、途中で追い越されたロード乗りもいれば旅の人もいる。身軽な荷物で四国を回っている夫婦と話して出発するも、早速の上り坂で置いて行かれる。最後の展望台でもロードで旅している人に追い越された。ここからは下り坂で、自転車の挙動を見ながら徐々に速度を上げていく。課題だった27km/hあたりの共振現象は出なくなってきた。53.9km/hまで速度を上げて強いブレーキを入れてみるが、ぶれたり暴れたりという挙動もなく安定して減速できている。

第23番札所 薬王寺


日和佐うみがめ博物館のアカウミガメ


道の駅 日和佐 すだちソフト

南阿波サンライン アップダウンとワインディング 海の眺めが気持ち良い

 南阿波サンラインを走り抜けて牟岐まで来たところでスーパーで休憩にする。さっき追い越されたロードの旅人とも話す。身軽なロードで四国一周とのことだが、頑張ればGWの期間でも十分に一周回れてしまうようで社会人サイクリストには人気の場所になっているようだ。そういう旅の仕方もあるものでストイックだが面白そうだ。
 牟岐から南に向かう国道はアップダウンをトンネルで処理しているので緊張感はあるが走りは捗る。海はちらっとしか見えないが南阿波サンラインで楽しんだので走りに集中する。意外なほどに早いペースで海南まで来た。ここからは宿をどこに確保するかを考えるところだが、まだ10kmぐらいは走れそうだ。出来れば今日は洗濯をしておきたい。ここで洗濯できれば、最終日までは考える必要がないため気が楽である。ネットで調べる限りでは海南の6km先の宍喰温泉にコインランドリーがありそうという情報はある。風呂はきっちり温泉で楽しめるし最適な場所だろう。もっと頑張って高知県突入した甲浦まで行ってもキャンプ場とコインシャワーはあるがコインランドリーの有無は不明だ。今の状況からすると宍喰温泉が良さそうには見える。
 そんなことを考えながら走っていると宍喰温泉の道の駅に着いた。道の駅に併設された産直は既に終了していた。売店で夕飯になりそうな物を探したが見つからない。徳島あたりから気になっていた ぶどう饅頭を買ってみる。単なるあんこ餅を串に通したものだが小豆の色がブドウの色をしている。素朴な味で美味しい。道の駅には地元出身のジャンボ尾崎の展示がある。道の駅を出て寝床とコインランドリーを探す。寝床はすぐ近くに発見した。雨が降ってもしのげる東屋と水道もトイレもある。コインランドリーは苦戦する。ケータイで探した場所にそれはない。さんざん走り回って探したが、どうやら閉店しているようだ。今は昔と違ってスマートフォンを使ってインターネットの地図で風呂でも公園でも探せる便利な時代だがコインランドリーを正確に検索するツールは意外とない。
 洗濯は諦めて買い物をする。スーパーの鮮魚コーナーには美味しそうな切り身の魚がいっぱいある。無料で刺身にしてもらえるようなので、ヒラマサとアジを買っていく。グレのあらも安く売っていた。漬け丼にしてあら汁を作れば完璧だろう。もう暗くなって誰も居ないテントを張って荷物を放り込んで風呂に入りに行く。スーパーで魚をさばいてもらっていたので夕飯はさっさと進んでいく。まずはご飯を炊く。その間にヒラマサを漬けにして、アジを食べる。日和佐で買ったスダチ汁を醤油に混ぜてポン酢にしたものとよく合う。ヒラマサの漬けをご飯に乗せて食べると歯ごたえも味も良い。そうしてる間にグレのあら汁も出来てきた。良いだしが出て頭に付いた身が美味しい。徳島県は今夜で最後となるが、魚が好きな海無し県民の俺を満足させる夕飯となった。

徳島銘菓 ぶどう饅頭
見た目は葡萄だが小豆の色


ヒラマサとアジの刺身
魚屋に裁いてもらうと楽


ヒラマサ茶漬け


グレのあら汁



   出発(香川県丸亀市)から 252.52 km

5日目 宍喰温泉 → 室戸 → 室戸岬スカイライン 47.78 km
2014/05/01
 今日は朝から天気は良い。テントを畳んでコンビニに寄ってから出発する。外海に面して波が出るからコンビニも道の駅もサーファーが多い。天気の良い海沿いの道で室戸岬までまっすぐ走って行く日なので楽しみでもある。朝からいきなり少し坂を登る。トンネルを抜けると高知県に突入した。徳島県は行き急いでいた1996年春以来なので18年ぶりだったが内容の濃い旅となったし、いろいろな事に感謝したい。坂道を下ると、白浜の海水浴場に辿り着いた。かなりきれいな海岸沿いにキャンプ場まであるしコインシャワーもある。温泉は無いものの、宿はここでも良かったかと思うほどだ。キャンプ場に売店もあり地元の魚や野菜もある。ここで地元名産のキンカンを使ったソフトクリームを食べてみる。柑橘系の爽やかな甘酸っぱさが良い。
 東洋町は少しアップダウンはあるものの車も少なく時々は海が見えて気持ちの良い走りが続く。しかも今日は追い風気味でペースも捗る。東洋町を抜けると平らな道を快走できる。砂利と岩の浜に高めの波が押し寄せるまっすぐな海岸線が続いていく。太平洋に突き出た室戸岬の方に向かうと海は広々として見える。走りのヘタレっぷりをカバーしてくれる強い追い風に乗って距離をぐんぐん稼いで室戸岬まで10kmほどで室戸市内へショートカットする分岐まで5km程度を残すところに大きな夫婦岩があり、そこで昼食にする。海沿いなので刺身定食しか目に入らない。これから一頑張りして山の上まで走るので鋭気を養いたい。
 夫婦岩の前を過ぎるとすぐに分岐が来た。右へ曲がるとまず室戸市街地へ向けて上り坂が始まる。この後下ってから登ることを考えると何だかもったいない気分で、体力の無駄遣いにしか思えない。運動公園を抜けてこれから行く室戸スカイラインの途中に合流すると無駄な下りは回避できそうな雰囲気だが、室戸の市街地で夕飯の買い出しをしておかないといけないので下るしかない。全くうれしくない坂を登り切って下る。室戸スカイラインに登る前に1.5Lペットボトルの水は満タンにしておきたいので、見つけた公園に寄って水を入れる。ここで入念にストレッチをしつつ休憩する。

高知県東洋町産
きんかんソフトクリーム


サーフスポットになっている海岸線


室戸岬へ向かう海岸線
外海に面してるから波は高い


夫婦岩


 スーパーで買い物をする。地物の野菜もあるし魚もある。今日はブリが美味しそうなので照り焼きに挑戦する。今まで持ったこともないミリンと日本酒を買っていく。ご飯も一手間でグリーンピースが旬なので豆ご飯にしたくなる。一昨日の炊き込みご飯の成功体験が俺をそうさせる。キャンプで炊き込みご飯 これは定番化しそうな予感である。真っ赤に熟したミニトマトも買い込む。これで充実の夕飯が見えてきた。100円で買っておいた保冷バッグに魚を入れて氷も袋詰めにして水漏れしないよう二重にしてサイドバッグに詰め込む。
 あとは坂を登るだけだ。一度西側の海沿いに出て室戸スカイラインへと入っていく。いきなり傾斜はきつい。全体で標高200mか300m程度なので登り切れないことは無いと思うがわくわくするような不安感が襲いかかる。やはり峠道は油断が出来ない物である。徐々に室戸の街は遠く低く見下ろすようになってきた。しばらくは景色の楽しめない森の中を登っていく。目の前を渡っていくトカゲが今日は多い。運動公園からのアクセスがあるからかストイックにジョギングしているランナーが多く追い越されたりすれ違ったりを繰り返す。途中で運動公園から合流してくる道があった。室戸の東側に買い出しできる店があればこっちから来たいところだった。意外と長く終わらないスカイラインに疲れが出てきた。それでも標高はたいしたことないので16時には広い駐車場と展望台に着いた。傾きかけた太陽に照らされた土佐湾と下界の眺めが気持ちいい。その場で座り込んで走りきった喜びをかみしめた。
 坂を下ってキャンプ場に行こうかと思ったら登り始めた。さっきのは頂上ではなかったのだ。残念なぬか喜びの俺にムチを打ちながら坂を登っていく。正直、頂上の割に眺めとしては室戸岬の先端側は見えてないし大したことないなと思っていたので本当の頂上からの眺めに期待したいところである。さほど長くない坂を登って、これは頂上だろうと思える充実の駐車場に辿り着いた。駐車場にいっぱいいた猫に驚きつつも展望台への階段を上がっていく。岬の先端は崖の下だから見渡せない物の遠い海まで広く見渡せる展望台が気持ち良い。厳しい坂を登ってきた甲斐が十分にあった。いよいよ日も傾いてきたのでキャンプ場へ急ぎたいところだ。
 展望台を降りて走り出すと、やはり下り坂が始まった。山頂近くに夕陽ヶ丘キャンプ場があり、そこが今夜の宿なので見落とさずに辿り着きたい。大胆かつ慎重に下っていく。そこそこ下り坂を楽しんだところで分岐に来た。キャンプ場の方へ曲がると、ぐんぐん下っていく。明日これを登るはずだが、調子よく下っている。明日のことを考えると、これ以上は下ってほしくないと思うばかりだ。潰れた国民宿舎のゲートの前を通り過ぎてキャンプ場に辿り着いた。既にテントがいくつも張られていて活気があるが、ライダーばかりだ。今時としては珍しい光景に思える。
 受付を済ませてテントを張る。夕日が迫ってきているので急ぎたい。さっさとテントを張って展望台の場所を確認する。サイトからは歩いて2分もかからない距離だ。展望台に一度上って眺めていると、なぜか俺の写真を撮っている人がいる。夕日まで時間はありそうなので、一度テントに戻って色々と準備をする。風呂セットや着替えを取り出し、調理道具入りのサイドバッグを前室に置いてマットとシュラフをテントの中に広げる。準備も終わったところで再び展望台へ行く。ちょうど良いタイミングで来たが、太陽の位置が真っ正面では無いので見えるのは展望台のほんの一角だけである。しばらくすると隣のテントの男女ライダーも来た。3人で夕日を見るが見える場所が1人分のスペースしかなく交代で見る。意気投合して夕日が沈むのを見送り、テントへ戻る。

室戸スカイライン 展望台からの眺め


室戸岬
夕陽ヶ丘キャンプ場からの夕日

 外国人サイクリストが到着して俺のテントのすぐそばにテントを張ろうとしている。英語しか喋れなさそうだが、俺のヘッドランプを使うか聞いてみたが特に必要無かったようだ。シャワーを浴びてさっぱりしたところで炊事場で夕飯にする。まずはブリに塩をかけて放置する。米をといで塩とグリーンピースを入れる。豆に水を吸われるのか出てくるのか分からないが水を追加する。炊いている間に照り焼きのたれを作る。酒とミリンと醤油を混ぜる。砂糖が必要だが持っていない。和三盆を使うのはもったいないので、みろく飴を溶かしてみる。常温では溶けずご飯が炊けるのを待って火で暖める。少しずつ溶けるが捗らない。砕いてから入れれば良かったか… たれを作ってる間に身から汁が出たブリをゆすいで放置する。キッチンペーパーで拭くのが本来の調理法だがさすがに持っていない。フライパンにごま油を広げてブリを焼く。焼き目が付いたところでたれをかける。フライパンを傾けてブリの身に焼けたたれをかける。ブリが焼けたらご飯も蒸らしが終わり夕飯が始まった。グリーンピースの香りが移ったご飯は最高に美味く塩気も良い感じだ。ブリもうまみが濃くて味も決まって美味しい。ハチミツ飴を砂糖の代わりにしたのもコクを出すのに効いたのかもしれない。
 料理酒の代わりに使った酒の残りを飲んでいると、隣のテントのフランス人が向かい側に来た。片言の英語で話をしながら飯と酒が進む。すると、さっき夕日を見たライダーも合流してきた。酔っ払いが集まって話は盛り上がった。北海道などではライダー付き合いを避けてる感はあったが、春の四国に来る玄人は楽しい。水場を挟んだ向こう側の夫婦に写真を撮ってもらったりしているうちに意気投合し、4人で酒を飲み始めた。夫婦はこのフランス人と話をしたかったのだが英語が全くしゃべれずどうしようと悩んでいたのだが、俺が通訳となって話は盛り上がる。ここ数年は外資系や海外拠点と一緒に仕事をしているので英語力は少し上達した感じはあったのだが意外と侮れないものである。12時になると突然消灯されて真っ暗になり撤収する。
 走りにもコミュニケーションにも満足してテントに戻ると、室戸岬からの星空はまぶしいほどに星がくっきりとたくさん見えている。  

完熟ミニトマト


室戸産天然ブリの照り焼き


グリーンピースご飯



   出発(香川県丸亀市)から 300.30 km

6日目 室戸スカイライン → 室戸岬 → 安芸 63.23 km
2014/05/02
 昨夜の余韻に浸りつつ疲れも残して朝を迎えた。ライダーやフランス人サイクリストを見送って俺も出発する。昨日下ってきた坂を登るのが鬱陶しい…と思ってたが、そんなに苦労せずに室戸スカイラインに再合流した。ここは気合いの下りなので注意していく。人馬一体感が増してきた新型ランドナーを操ってコーナリングを気持ちよくこなしていく。
 下りの途中で室戸岬灯台と最御崎寺(ほつみさきじ)があり寄っていく。灯台は岬に下る途中の山腹にあるので下りきってしまうと、再び登ってくることになる。自転車を置いて灯台の方へ歩いて行く。程なくして灯台に辿り着くと、そこも海を見渡せる気持ちよさがある。灯台もずいぶん巡ったものだが、ここは残念ながら灯台の中には入れない。背は低いが灯具の大きさから重要な拠点になっているのが分かる灯台である。
 八十八カ所巡りには興味があまりなかった俺だが、最御崎寺に寄っていく。薬王寺から78kmと遠いし薬王寺も軽く見たので見ておきたい。厳かで大きな寺である。八十八カ所の寺はみんなこんな感じなのだろうか。ほぼ四国一周して高野山に行くルートとなるが、巡ってみるのも良いかもしれない。見通しの良い下りのワインディングを下って海沿いに戻った。安芸の方に向かう旅だが、まずは室戸岬の先端へ向かう。平らに削られては隆起する地形だから海沿いは平らである。このあたりの地形の成り立ちは南海トラフの隆起から来ていて室戸ジオパークとして指定されている。少し歩いて室戸岬の地面から突き出た岩や海を眺めていく。
 階段で2Fまで上がるだけの展望台で岬を見たりするが、どうも眺めが楽しみづらい。そうしてるうちに朝ご飯がまだなので腹が減ってきた。さらに東側へ進んでみたが店がない。途中にある御厨人窟に立ち寄ってみる。洞窟の中に寺がある。このあたりは弘法大師ゆかりの地が多い。さらに進んでリゾートホテルで食事をしようと思ったら始まっていない。ここで引き返して岬の西側へ戻る。室戸の漁港にある海の駅とろむに立ち寄って昼飯に近い朝飯にする。地元の名産と言えば金目鯛や鰹だ。ここは鰹たたき体験もできるぐらいなので焼きたての物を期待して金目鯛の煮付けと鰹のたたきで迷った末に鰹のたたきを選んだ。しかし、出てきたのは作り置き… 選択外しにがっかりである。一品追加してみたウツボの唐揚げは淡泊な味が香ばしくなって美味しい。

室戸岬灯台
広い海の水平線が見渡せる


第24番札所
最御崎寺(ほつみさきじ)の境内


室戸スカイラインの下り坂


意外となだらかな室戸岬


御厨人窟(みくろうどう)


ウツボの唐揚げ


鰹のたたき

 今日は洗濯をしなければならないが、この先のコインランドリーの見通しが立っていない。室戸の市街地に一軒見つけていたが、ここで連泊というわけにもいかない。仕方なくスルーして、この先にあると信じて進むしか無い。その後は海沿いに高知方面へ走って行く。南海トラフの隆起で作られた海岸段丘は平らな段が連なるような地形で海沿いにアップダウンは全くといっても良いほどなく快適な走りが続く。道の駅キラメッセ室戸へ立ち寄る。産直で夕飯の食材を探してみたが、良い物は見つからない。鯨館が併設されていて捕鯨のことなどが展示されていた。方法や歴史や生態が分かって面白い。
 また平らな道の快調な走りは続いていく。左に見える海の広さが気持ち良いが、よく言えば快適だが悪く言えば単調でもある。14時半に奈半利まで来た。朝と昼を兼ねたような食事しかしてないので休憩したいところである。奈半利は古い町並みなんかもあるようだ。そこで古民家のカフェを見つけて立ち寄る。話し好きのお婆さんと話をしながら倉を見せてもらう。ずっしりと貫禄のある古い民家と倉は見応えがある。そこで若いサイクリストも来て3人で話が盛り上がってしまった。結局、1時間ほど休憩をして走り出す。高知までの行程に余裕があるので、さほど焦る気持ちはなく走って行く。

奈半利の蔵とカフェ

 ここで奈半利の駅に寄って情報収集をする。今日の最大の懸案は洗濯だ。今日は確実に洗わないと着替えが尽きる。奈半利には無さそうだから行こうかと思ったらラジエターから白煙吹いてるボロいホンダライフに水を入れているおばさんがいる。見かねて様子を見ていたが、どうも冷却系が壊れているようだが水漏れはしていない。メーターの水温計が下がるところまで見て俺も出て行く。
 少し走ったところに道の駅がありスタンプを押して手作りっぽいプリンを食べながらケータイでコインランドリーを探す。最大限走ったところにある日帰り温泉の中にもありそうだが、遅いゲリラキャンプになる上に洗濯までしてたら食事を作る時間も無さそうだ。距離は短いが安芸市内に1軒ありそうだ。安芸なら買い物は当然できるし公園もありそうだ。市内に温泉もある。今夜の宿の方向性は決まった。
 安芸のすぐ手前の道の駅 大山に立ち寄って買い物を試みたが、ここでも当たりは無い。疲れが出てきた背中の筋肉を休ませるべく仰向けでベンチの上で休憩して、また走り出す。距離は短いので気楽ではあるが、頭は宿のことと洗濯のことでいっぱいである。一見浮き世離れしている自転車の旅にも現実は存在する。土佐くろしお鉄道と並走しながら安芸駅を目指す。久々に都会じみた景色の中に入っていく。走っていると、さっきカフェで話したロード乗りと再会する。こんな俺でも人に追いつくってことがあるのかと意外なばかりだ。
 まずは安芸駅に行き情報収集を試みる。ケータイで探しているコインランドリー情報と駅前にある地図の情報を照らし合わせる。公園もいくつかは地図上で見つけた。温泉は海沿いにありそうだ。駅の中に産直があるが、ほぼすべてが売り切れだ。ここでも買い物は捗らない。とりあえず海へ向かいながらコインランドリーを探しつつ公園を探す。一つ見つけた公園は泊まりづらそうなので、頭の片隅には置いても優先度は下げる。海沿いに出ると温泉は見つけた。まずは営業時間を確認する。20時までなので時間に注意は必要だ。西側の球場の方へ向かってみるがコインランドリーが見つからない。その近くのはずだが、それ以上の詳しい情報はない。コインランドリーと同系列のクリーニング店がスーパーに併設されていたので店員に聞いてみる。身振り手振りを入れて丁寧に教えてもらえた。何とか見つけられそうだ。すっかり日が暮れてるが何とかコインランドリーを発見した。場所を確保できたところで宿の公園も国道沿いに決めて、温泉へ向かう。
 さっさと風呂を済ませて、洗濯へ向かう。コインランドリーですべての衣類を洗いながらスーパーへ買い物へ行く。今日は魚介では無く野菜を食べたい。フルーツトマトとナスが美味しそうだ。ここに土佐ジローなど鶏肉を合わせてトマトソースのパスタなんかを作ってみたいが鶏肉は売り切れだ。四万十産の美味しそうな豚バラ肉は見つかったので、これでいく。
 コインランドリーへ戻り洗濯してる間に店内の地べたに座って日記を書く。ドアもない開けっぴろげの倉庫みたいなコインランドリーが妙に居心地は良い。乾燥もしてる間に日記は書き進んでいく。すべてが終わった時点で21時45分。今夜も動きが遅い。
 公園に移動してテントを張って夕飯を作る。まずはナスを切って豚肉と一緒に焼く。単純に塩だけで焼いて食べてみると、それだけでも美味くてビールが進む。トマトも1つかじってみるが甘酸っぱくて美味しい。そうしてる間にトマトを切って下ごしらえは済んだ。オリーブオイルでニンニクを揚げ焼きにして香りを引き出す。続いてフライパンに豚肉とナスを加える。ナスが焼けたらナスを取り出してトマトを入れる。贅沢にフルーツトマトを6個も使う。トマトが崩れて汁になっていくようビールを加える。ソースが出来たところでコッフェルでお湯を沸かしてパスタをゆでる。パスタがゆで上がったところでソースと絡めて、最後に生のトマトを刻んだ物をソースに加える。煮詰めたトマトとフレッシュなトマトの味を合わせた。イタリアンパセリかバジルかパルメザンチーズでもあれば完璧だが、そこまで準備はない。トマトの力強い味とまろやかなナスの味がよく合う。豚肉の味に負けない強さもある。安芸産の野菜ですべてを揃えた大地の味のパスタは美味い。
 フライパンでお湯を沸かして油分を洗い落として片付けているが、妙に体がだるいし寒気もする。今夜は寒いのかと思ったが、どうも風邪を引いたようだ。高知まで一気に走れなくもないが、ここに来ての風邪はしんどいし面倒だ。一筋縄にいかせてもらえない旅である。

豚肉とナスをトマトで煮込む


トマトソースにフレッシュトマトも追加
安芸産フルーツトマトたっぷりの
ナスと豚肉のトマトソース



   出発(香川県丸亀市)から 363.53 km

7日目 安芸 → 龍河洞 → 土佐山田 → 桂浜 67.87 km
2014/05/03
 風邪っぽいだるさの中で準備する。準備ができて自転車にまたがれば風邪という感覚は忘れていられるようだ。安芸駅へ行き、朝飯を食う。本当はしらす丼でも食べたかったがお好み焼きを食う。昨日買っておいた名産のビワもデザートにする。これも素朴な甘さで美味しい。
 まずは、安芸の見所の一つである野良時計に向かう。その途中の車両基地に阪神タイガースペイントの列車が1両あった。できるだけ近づいてフェンス越しに写真を撮っていく。野良時計は期待していた割に小さな時計で自転車込みで写真を撮っていると次の観光客が来てどけてくれと言うので面倒になって後にした。
 ちょっと足が止まると体調の悪さが際立つ。海沿いの国道ではあるが車道からは海が見えない。並走する自転車道もあるので、そっちへ行くことにした。意外と捗らない自転車道だが松林の向こうに見える海は楽しめる。ちょっとした坂を登って見下ろす浜が壮大で美しい。GWということもあり、そこら中で何かのイベントをやっていて人が多い。自転車道も家族連れの人が多く追い越すのもすれ違うのも多い。
 楽しんだような楽しめなかったような自転車道から国道に戻り軽く坂を登って下ると道の駅やすに着いた。駐車場の混み具合も半端ではなく売店やレストランもごった返している。規模は大きく楽しめそうな道の駅ではあるが、風邪で食欲はなくテンションは上がらずスタンプだけを押して休憩して通り過ぎたいところだ。芝生の上で体を休めて走り出す。やはり風邪で本調子では無いのがきつい。
 夜須の道の駅を出てすぐのところにある赤岡まで来たら絵金蔵へ立ち寄る。絵金という名前ではあるが金は使っていなくて絵師金蔵の略で絵金と呼ばれている。本物は祭りの時のみ見れるが絵金蔵には展示されていなくてレプリカばかりではあるが展示の造りは凝っている。絵自体は真っ赤な絵の具で血が生々しく描かれていて残酷なタッチの絵が多い。ろうそく型のライトで不気味に照らされている。魔除けのために血の赤を表現しているが不気味という感想が先走る。

安芸産 ビワ


安芸市 野良時計


自転車道から琴ヶ浜の眺め

 絵金蔵を後にして次は龍河洞を目指して走って行く。ここで海沿いを離れて一度内陸へと入っていく。徐々に山を登っていく道に入るのかと覚悟をする。今日は風が強く龍河洞へ向かう道は向かい風が吹き荒れる。体調もイマイチだし苦戦しそうで面倒でもあるが、このまま真っ直ぐ高知に向かってしまうと、あっという間に旅は終わってしまう。それほどにゴールは近い。龍河洞へ向かおうとしたら途中に四国自動車博物館というのがあったので立ち寄ってみる。何だかお高い雰囲気の博物館だが入ってみると、2000GTやフェラーリやランボルギーニなどスポーツカーがずらりと並んでいる。車が好きなおじさんにはたまらない。意外と本物を見たこと無いLEXUS LFAも置いてある。展示は充実していて見応えはある博物館だ。
なかなか充実。四国自動車博物館

 向かい風で上り坂という面倒なコンディションの中を龍河洞へ向かっていく。山の中腹にあるようだったので予想通りである。真っ直ぐ伸びる峠を登っていく。さすがに走りにキレがなく思い通りに行かない。頂上のトンネルを越えて下っていく。龍河洞へ向かう分岐を右に曲がると、また上り坂が始まった。そろそろ15時にもなってきて開園時間が気になってきた。今日の最後の力をふりしぼって登って龍河洞の駐車場に着いた。
 観光地的な店が並ぶ通りを歩いて抜けてエスカレーターで洞窟の入口へ入る。何とも都会的だ。入場料を払って入っていく。洞内は上り坂と上り階段が多く疲れ気味の足にはしんどい見物が続く。さすがに大きい洞窟で中には広い場所もある。所々にいろんな形に例えた鍾乳石もあるが、いちいちフェンスと蛍光灯がある。もう少し自然のままで見せてほしいと思うばかりだ。中腰で階段を上るしんどさに耐えながら洞内の見学を進めていく。なかなかの長さで楽しい。中にはコウモリが見れたりもする。出口の近くには弥生時代の洞内遺跡もある。
 なかなか見応え十分な長い鍾乳洞を出てくると、次は博物館で洞内の自然や造りを見て、珍鳥館へ。ここに来たら絶対に見ておきたい尾長鶏を見る。閉館ギリギリに間に合って入ってみる。尾が切れてしまうとかで可愛そうなほど狭いケースに拘束されている。何とも複雑な気持ちで鳥を見る。ほかにも大軍鶏などもあって時々大きな鳴き声を上げている。そんな珍鳥館を出たら17時。今夜の宿の事を考えつつ、売店でアイスクリンを買う。さっぱりとシンプルなアイスが美味しい。
 すぐ近くの温泉と公園に決まりそうだ。ただ、買い物する場所が近くにはない。体調もイマイチなので早めに終わらせてしまいたい。温泉と公園は難なく見つけた。ただ、スーパーは土佐山田駅の近くまで坂を登るからか遠い。いつまで経っても着かない。1時間弱ほど走ってスーパーに辿り着いた。野菜と牛肉を買う。牛丼を自作しようという魂胆だ。風呂は諦めてでも、もうちょっと近くの公園が無いかと探してみた。1時間近い道のりを戻るのも何だかもったいない。いくつか見つけた候補地を回ってみたが泊まれそうもない。
 もうすっかり暗くなった20時という時間だが、土佐山田駅前から桂浜まで進めることにした。20kmほどだが走る。明日の午前中いっぱい寝て楽に終えようという作戦に頭を切り換える。大きいヘッドライトを2つ付けてリフレクタランプを点滅させて走り出す。昼間に吹き荒れていた風は止んで快調なペースで走って行く。ここ最近のへたれ走りではなく力強く自転車を進めて南へ向かう。海の近くの道まで10kmほどあったが30分もかけずに走りきった。桂浜に向けて海沿いに走る道はそこそこアップダウンもしているが物ともせずにグイグイ走って行く。追い越される車に気をつけながらペースを落とさずに走る。
 この道も30分程度で走りきって桂浜の浦戸大橋の手前のキャンプ場に入った。少し道に迷ったが見つけてしまえばわかりやすい。さすがのGWということで混んでいる。自転車の人やバイクの人がごった返している。
 隙間にテントを張る場所を見つけて張る。テントを張り終えたら夕飯にする。まずは米を炊く。その間にタマネギを切ってスナップエンドウの筋を取って野菜を準備する。蒸らしを終えたら肉とタマネギを焼く。余るほどいっぱいあるので半分は野菜炒めで食べる。炒めたスナップエンドウを一度よけておいて牛丼の具を作る。焼いた肉とタマネギに醤油とミリンをかけて水で薄めて煮る。ミリンさえあればフライパンで簡単に作れてしまう。できあがったらご飯に乗せて、彩りのスナップエンドウものせる。四万十牛の肉は旨みが濃くて軟らかい。何だか手作りの割に高級な牛丼になった。専門店に負けない味となった。途中からは徳島で買ったスダチ汁を入れて味を締める。変化があって良い。
 23時に夕飯を終えて、あとは残ったガスを燃やし尽くして缶を捨てれる状態にする。これがなかなか燃え尽きず0時まで待たされる。体調もどんどん悪くなって悪寒が出始めた。本格的に風邪を引いたようだ。フリースを着込んでシュラフに入ってしっかり暖を取って眠りにつく。

龍河洞


尾長鶏 このケージが…


高知銘菓 アイスクリン


高知産 旬の新タマネギと
スナップエンドウの野菜炒め

高知 四万十牛産 黒毛和牛の牛丼



   出発(香川県丸亀市)から 431.40 km

8日目 桂浜 → 高知 47.37 km
2014/05/04
 朝になっても体調はイマイチだ。天気は良いが出かける気が全く起きない。テントを張った場所は木陰なので蒸されることも無く昼前まで寝続ける。頭痛とだるさを少しでも解消できれば良いのだがそんな気配は無い。距離にして10km程度しか無い最終日なので、体調が悪くても完走に差し障る事はない。ただ、今日はホテルが軒並み満室で宿も確定できない状態という不安もつきまとっている。
 昼からテントを片付けて出発する。浦戸大橋を越える前に朝と昼を兼ねた飯にする。わらや期待権は観光客でごった返している。鰹のたたきを食べるだけでも並ぶのだろうか…と思ったらレストランは意外と空席がある。待たされるわけでもなさそうだ。席に着いたら鰹のたたきも普通に頼めた。焼きたてというわけでもないが、そんなに長い時間作り置きというわけでも無さそうで、歯ごたえはもちっとして美味しい。
 昼ご飯を終えたら桂浜へ向かって走って行く。渡船というのもあるようだが、浦戸大橋を越えてみる。高さ50mぐらいまでのしんどい上り坂が続く。体は本調子じゃないしGWで道は混んでいるし狭い。追い越していく車とのペースも合わず狭さで止まらされてペースが乱れて面倒な走りが続く。狭い道ですり抜けるのは嫌なので車の真後ろで待って下る。
 浦戸大橋の坂を下りきって桂浜の方へ曲がっていく。相変わらず観光客の車で大渋滞だ。まずは坂本龍馬記念館へ行く。歴史に疎い俺でも知っている歴史上の偉人を知ろうと思う。過去に来たことはありそうだが、今は龍馬直筆の手紙が展示されているようだ。どんなことを書いているのか読んでいる俺の前に割り込んで見る観光客が多い。もう面倒になってきたので大して見ることもなく後にした。
 ここに自転車を置いたまま浜辺の方へ遊歩道を歩いて降りていく。龍頭岬の脇を抜けて浜へ降りてみる。観光客は多いし、どこか人工的な桂浜という印象である。最近、旅先で立ち寄るのにはまっている水族館へ寄る。手作り感がある小さな水族館が少し楽しい。ここも野寒布岬の水族館のように魚の食べ方を積極的に触れている。調理法に味に釣り方まで書いてある。水族館でいうとタブーかと思うのだが、そんなことは関係ないようだ。
 夕方なのでショーは既に終わっているが、イルカが遊んでいる。飼育係が遊ばせているのでジャンプ力も楽しめるしボールを蹴り飛ばすキック力も楽しめる。一通り楽しんだら水族館を後にして坂本龍馬像の方へ歩いて行く。正面は逆行だし混んでる。そこで来た人しか楽しめない後ろ姿も写真に収めて自転車の方へ戻っていく。
 あとは高知駅前まで走るだけだ。ほぼ平地で10kmほどしか無い。体調が悪い俺でも楽に走り抜けるだろう。既に高知市内なので完走の喜びは薄いが、淡々と市街地へと北上していく。途中の銀行によってお金を下ろそうとしたらGWのため受け付けられず、向かい側のコンビニで下ろす。銀行より便利なコンビニATM もはや銀行なんて役に立たない物となっている。今夜は宿が取れる可能性が低いので宿代を使うことがあるかどうか微妙だが何とか飲みに行く現金を手に入れた。徐々に都会化していく道を北上しはりまや橋を過ぎて駅へ向かっていく。
 薄暗くなってきた19時過ぎに高知駅前に到着した。今年の旅は多忙を極めた仕事と盗難から始まった新車の立ち上げからスタートし、新車ならではのトラブルが相次いで、インフレータのチェックが甘いというミスもあった厳しい始まりであり、最大の山場は土砂降りの雨で迎え、最後は風邪を引いて宿も取れないゴールとなった。走り自体はまあまあ見せ場はあったし、旅路での出会いも多く実りある旅であった。コンセプトをきっちり決めて作った新型ランドナーでの最初の旅は良い形で完走できた事は喜ばしい。
 喜びをかみしめても現実は厳しい。観光案内所に行って駄目元で宿を当たってみたが全部満室だ。高知に何度も来ている人に観光案内所やネットでは見つからないホテルを聞いてみる。そこに向かってみたがホテルは見つけきれなかった。そして雨がぽつぽつと降り始めてきた。諦めてサウナの方へ行く。駐輪場は地下にきちんと整備されていて盗難やいたずらの心配は少ない。ここに自転車を置いて着替えと風呂セットを持ってサウナへ上がる。まずは風呂を済ませてさっぱりして、一度出る。ホテルならチェックインしたまま出かけられるがサウナの仮眠室の場合はそうも行かないのだ。
 ようやく打ち上げだ。ぱっと見で雰囲気の良さそうな店のカウンターに入りビールを飲む。完走のビールほど美味いビールはそうそうないだろう。鰹の塩たたきやフルーツトマトや刺身など高知の美食を存分に楽しむ。塩だけのシンプルな暖かい鰹のたたきは美味い。すっかりほろ酔いで打ち上げを終えた。またサウナに戻り仮眠室へ行く。暑くて寝苦しい。サウナとかカプセルホテルはどうも寝心地が悪くて嫌いだ。何度も目が覚めるイマイチな眠りで最後の夜を過ごす。

かつお船タウン
鰹のたたき


混みまくってる浦戸大橋を渡る


桂浜の海岸線


坂本龍馬像
行った人しか見れない後ろ姿


打ち上げ
高知の鰹 塩たたき



   出発(香川県丸亀市)から 449.28 km

9日目 高知市内 5.51 km
2014/05/05 高知 -特急 南風→岡山-東海道・山陽新幹線→東京
-東北新幹線→宇都宮
 イマイチな寝心地で早く目覚めて出かける。朝っぱらかしっかり雨が降っている。まずは駅へ行く。駅の中にあるパン屋でパンを買い駅前で食べる。四国に居る間に何回も飲んだミニッツメイド ゆずハチミツ味のキャンペーンで露店が出ている。帰りにまとめ買いするのにちょうど良い。飯を食べ終えたらアンパンマンの路面電車の写真を撮って、駅の近くにある郵便局へ行って自転車以外の荷物を送る。ゆうパックの最大サイズの段ボールを3箱買って荷物を詰め込む。雨が降ってて軒先の限られたスペースしか使えず捗らない。やや外しにくくなったリアキャリアを段ボールに詰めるが、700Cから26HEで全体的に高さが減ったので収まりは良くなった。いつも通りに最低限の荷物を残して発送を終えた。
 相変わらず降り続ける雨の中で高知城へ向かいつつ商店街の奥にある観光地のひろめ市場へ行く。実家に鰹のたたきを送ろうと思ったが、混み方が半端じゃない。一応入ってみるが、ごった返している。市場の近くの魚屋では表でわら焼きしていたりで、こっちの方が風情もある。すぐその場で食べれる。まずは鰹のたたきとウツボのたたきを食べていく。この店はたれにもこだわっているし、焼きたての鰹のたたきは味は濃厚で臭みもなく美味しい。もちっとした歯ごたえもある。その場で焼いた鰹を、すぐに真空パックにしてもらって実家に発送する。ひろめ市場で食べて送るより正解だったと思える選択だ。

アンパンマンの路面電車


高知で買い物と言えば、
ひろめ市場


ひろめ市場で買って食べてで楽しめるが
混み方が半端じゃない


ひろめ市場近くの魚屋
その場でわら焼き 鰹のたたき


焼きたての鰹のたたき


ウツボのたたき

 これで一段落したところで、高知城へ向かう。ちょうど雨は止んでいる。自転車を大手門の近くに置いて天守閣へと上がっていく。古い天守閣を残してる貴重な城で中は急な階段が続く。何故か最終日の定番となっている城から見下ろす高知市内が気持ち良い。城の見学に満足して降りてくると蓮の花がきれいなお堀を見て城をあとにする。もう高知で過ごせる時間は残りが少ない。途中の祭りを見て、相変わらずがっかりのはりまや橋を見て駅へと向かう。

高知城の天守閣


天守閣から高知市内の眺め


風情が全く無いはりまや橋
元々は赤い木の欄干だったが、
真新しい石造りになった


日本三大がっかり名所の中ではダントツ
新しくかけられた赤い木橋
何というか迷走感がありすぎる。


 駅前で慣れない工程で自転車をバラしていく。外したネジをなくさないように気をつけながら輪行袋へ詰め込んでいく。駅の土産屋で土産を買っていく。8本も買い込んでしまったミニッツメイドが重くて仕方ない。切符を買ってホームへ向かうと旅も終わりを迎えたという寂しさがある。阪神タイガース柄の土佐くろしお鉄道の写真を撮って特急へと乗り込む。鉄道オタクの人がうるさい列車は岡山へ向けて走り出す。途中の山深いところを抜けていくと来年以降の旅への意欲が増してくる。今度は四国の山の中を抜けるようなコースを走ってみたいものである。岡山に近づくと人が徐々に混んできた。有休を取ってGWを1日後ろに外すだけで人混みは収まって楽なのだが、今年の忙しさではそうもいかない。
 岡山で乗り換える。GWまっただ中ではあるが何とか最終の新幹線には乗りたい。何とか1本を見送った2本目で乗り込めた。席にも無事に座れて、あとは東京へ向かうだけだ。岡山で買ったまつり寿司を夕飯に食べつつ書き残した日記を埋めていく。今のペースなら東京に着く前に終わりそうなところまで来た。
 東京からは東北新幹線に乗り込み宇都宮へと向かう。ここまで来ると現実へ引き戻される気持ちになる。そして宇都宮駅に到着した。駅前で自転車を組み立てる。残念ながら養生を強化したもののフレームに早速傷が付いてしまう。ほんのわずかに養生されていない場所が守り切れないし慣れない輪行形態がそうさせてしまう。夜の宇都宮市内を走って自宅へ辿り着いて今年のGWの旅は終わった。

土佐くろしお鉄道
阪神タイガースのキャンプ地・安芸へ
向かうタイガースペイントの列車


高知-高松を走る特急・南風



   出発(香川県丸亀市)から 454.79 km


旅記録 目次に戻る
HOMEに戻る
地図を表示 (新しいウィンドウへ)