0日目 |
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宇都宮 -東北新幹線→ 仙台 → 新青森 -特急スーパー白鳥→ 函館 |
2015/08/07 |
湯の川温泉-函館市電→函館駅前 / 松風町 -函館市電→湯の川温泉 |
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函館市内 |
9.64 km |
1995年から始めた自転車旅は今年で20年目となる。何か大きな変化を起こしたいと思いつつも妙案が浮かばないまま夏を迎えた。やはり、いつも通りが良いのだろう。スタートは函館の湯の川温泉に宿を押さえた。函館なら新幹線と特急の乗り継ぎで辿り着けるので飛行機は予約していない。GWに16連休取ったので夏休みは特に有休を繋げること無く久しぶりにノーマルの日数での夏休みとなった。1ヶ月や2ヶ月は平気で走り続けた学生時代と比べたら社会人の夏は短い。短期間で濃厚な旅をするというのが社会人旅の醍醐味と思っていたが、俺も仕事で中堅の域に達したら2週間程度の休みを作るのは容易になってきたので旅自体の間延び感は否めない。久しぶりに限られた期間でびしっと締まる旅というのも良いだろう。
準備は着々と進んだが、徹夜明けの出発となった。始発の新幹線を目指して用事をこなして自宅を出発する。宇都宮駅前で自転車をばらすと蒸し暑さに汗だくになりそうだ。函館までの特急券を買いに自動券売機に向かったが指定席は満席だった。前日にやっておかなかったことを後悔するが、新青森までの立ち乗りは我慢するとして、函館までの特急で体力を温存する作戦を狙おう。まずは仙台までほぼ各駅停車の新幹線で北上する。ここでわずかに眠れたが乗り過ごすと函館到着が遅くなるので仙台で起きれなくなるリスクを考えると寝れない。 |
仙台駅のホームに降りたら、はやぶさへ乗り換える。全車指定席だがホームは立ち乗り狙いも含めて混んでいる。これは壮絶な立ち乗りになりそうだ。その予感は的中した。仙台に着いた列車は既に満席でホームにいる人は、ほぼ全員が立ち乗りである。まだ平日なので観光客もビジネス客も入り交じっていて厳しい混み具合だ。何とかドア近くの通路に自転車をねじ込んで俺自身も乗り込む。人も多いので真っ直ぐ立ってられるスペースもなく自分の輪行袋に壁ドン(※2015年時点での解釈)したままの体勢で北へ向けて走り出した。野宿でもOKなほど寝心地にこだわらない俺でも寝れない。盛岡で俺の立ってる側のドアが開いたので一度降りないと乗客が降りれない。また乗り込んでも混み具合は変わらない。盛岡からは各駅に止まるので駅名に旅情も感じるが、九州新幹線の駅以上に寂れている。七戸十和田や八戸に着くと、また東北を旅したくなってきた。来年は北東北も良さそうだ。八甲田山、十和田湖、白神山地…
魅力的なコンテンツはいっぱいある。
厳しい体勢のまま新青森へ着いた。今日はまだねぶた祭り期間なので混み具合が半端ではない。新青森から青森に向かう客が多すぎるし、本数が少ない上に特急も青森までは普通乗車券だけで乗れるとあって押し寄せている。その上で大きな荷物を持っている俺はどこまでも不利だ。列車が来ると気合いが入る。とにかく突っ込むしかない。座るのは諦めて通路に自転車を置くところに全力集中だ。ものすごく混んでいる中をキャリーバッグを転がして隣の車両に無理矢理行こうとする観光客に突き飛ばされて怒鳴り返す。どうも中国かどこか海外の人っぽく、それでも行こうとするので10kgぐらいはありそうなみっちろとした重さのキャリーバッグを頭上まで持ち上げて人混みの向こうに下ろす。そこまでしても青森で降りていくわけで、一駅ぐらいじっとしてろと言いたい。
青森を通り過ぎると人は少し減ったが依然として満席状態で通路も場所の取り合いになっている。東北新幹線にしても特急白鳥にしても青森は人が押し寄せる時期の容量が少なすぎる。地べたに座ったまま北上していく。そして、いつもの盛り上がり感がないまま青函トンネルへと入った。鉄道トンネルの中では珍しく照明が付いてるのでほかのトンネルとは見分けが付く。やはり旅は計画的にして指定席ぐらい押さえた方が快適なのは間違いないようだ。青函トンネルを抜けて木古内に着くと降りる人はないが乗り込んで来る人もいる。やけに揺れる列車で函館に到着した。もうすっかり疲れ切った。ここまで厳しい輪行もなかなか久しぶりである。 |

今は役目を終えた特急スーパー白鳥
(新青森〜函館)
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札幌行きスーパー北斗
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函館駅前から出発
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今日は雨こそ降ってないが天気はイマイチなので、蒸し暑かった宇都宮とは対照的に寒いぐらいである。函館駅前で自転車を組み立てて、昼飯にする。函館も自転車だけで4回目なので過ごし方の勝手もだいたい分かっている。朝市の方へ行って昼飯を探すが終わっている店が多い。何とか観光客向けの店で海鮮丼にありつけた。やはり海鮮丼とイカそうめんは函館に来たら外せない。 昼飯に満足したところで実家に送る鮭とか北海道の海産物を探そうと思ったが朝市が終わっているので苦戦する。朝市以外の市場もほかにあるようなので後でそっちに向かうのが良いだろう。その前にせっかくなので観光をしていく。赤煉瓦とか教会は行ったことあるので、摩周丸を見に行く。今は廃止になったJRの青函連絡船が保存してある。今でも津軽海峡を渡るフェリーは何本も運航されて活気はあるが、連絡船という呼び名と国鉄・JRの持たせる雰囲気に洞爺丸事故の悲劇で古い船体に哀愁を感じる。
船内を見学しているとカーペット席があって休憩できるスペースがあった。眠気に耐えきれず仮眠を取る。10分ほど気を失ったように眠っていたら見学の子供たちの声で目が覚めた。危ない。泊まってしまうところだった。外の風を浴びて函館港を操縦席から眺めて摩周丸を後にする。 |

海鮮丼
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イカそうめん
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摩周丸から見る函館市内
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青函連絡船 摩周丸
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市場に立ち寄りつつ宿である湯の川温泉へ向かう。時間帯が悪かったか市場は閉まってる店が多い。その中に鮭や海産物を売ってる店を見つけた。立派な鮭があったので選んで実家へと発送した。滅多に帰らず親不孝の罪滅ぼしなのか、旅先で探して送るのが好きなのか定番になっている。ここ数年の旅は寂れたところばかり走っているのでスタート地点やゴール地点の都市部から送ることが多く、旅の途中で良い物を見つけたら買って発送伝票を勢いで書くかつてのコンセプトと少し変わりつつある。
海を見ながら東へと走って湯の川温泉へと向かって行く。前回はトラピスチヌ修道院に行く途中で通過しただけだが、今回は温泉旅館に泊まれるのが楽しみだ。そして温泉街へとたどり着いた。今夜の宿は大きく立派な観光ホテルだ。何というかビジネスホテルでも予約する感覚でネットで予約したのに想像しているのと雰囲気がまるで違う。贅沢な気分だが素泊まりにするのももったいない。
段ボール3つ分もの荷物をフロントで受け取って台車で転がして部屋へと運ぶ。体力は限界に近くて眠いが開梱作業を進める。まずは明るいうちにキャリア取り付けを済ませたい。今回の26HE用のキャリアは作業性があまりよくないので明るいうちにこなしておきたい。暗い中でねじを落として見つからなくなるのも致命的だし朝の出発前にやるのも慌ただしくて嫌なのだ。リアキャリアを取り付けようとすると、どうもダボのねじ山がなめているようだ。とどめを刺さないように気をつけて取り付けを完了した。 ここから先の洗濯地点の目処が立たないので函館で1枚ながらも洗っておきたいのだが、温泉街にコインランドリーは無いようだ。北海道は冬場に洗濯物を干せないはずなのでニーズは確実にあると思うのだが、ほかの地方よりもコインランドリーは少ない。だんだん面倒になってきたので、ぎりぎりになる枚数で江差まで行くしかないようだ。意外と元気なまま荷物の開梱と整理が終わった。 |

はこだて自由市場
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はこだて自由市場
北海道らしい海鮮ラインナップ
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まずは温泉だ。屋上の露天風呂だ。津軽海峡と函館空港を見下ろせるロケーションがすばらしいし、頭は涼しく体は温かく露天風呂を満喫していく。今年のGWも平戸の温泉から始まったが温泉で始まる旅は贅沢で楽しい物だ。これからのスタンダードにしても良いだろう。初日の宿を予約して、そこに荷物を送って輪行を身軽に済ませるという技を数年前から駆使しているが宿もビジネスホテルでは無く温泉旅館というのが乙だ。
体力限界を忘れたのか乗り越えたのか夕飯を食いに出かける。温泉街に店があまり見当たらなかったので、函館の市街地まで市電に乗っていく。路面電車のノスタルジーを味わいながら市街地へ向かう。どうも駅前より夜の店が栄えてる場所がありそうだが通り過ぎていく。駅の近くも居酒屋はいっぱいある。街にぶらさがっている赤提灯が気分を盛り上げる。目をつけた1店は早じまいで入れなかったが2軒目で落ち着いた。炉端焼きで鮭のハラスやほっけを焼く。北海道の魚介は本当に美味しい。
初日に鋭気を養って大満足だが体力は限界を超えていた。帰りの市電がやたら遅く待っているだけで眠りそうだ。なぜか遅れまくっている。やっと来た市電に乗り込むと頭の中にスクリーンセーバーが流れてシャットダウンに入って意識は落ちた。はっと目が覚めると湯の川温泉の一駅前だった。慌てて準備をして降りる。ふらふらとホテルまで歩いて帰る。何とか部屋に戻って眠りについた。 |

旅開始の乾杯
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ほっけの干物
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1日目 |
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函館 → 恵山 |
53.77 km |
2015/08/08 |
やはり俺も年なのか疲れは隠せないまま初日を迎えた。あまり食欲もないが、せっかくの温泉旅館の朝食バイキングなので体に鞭を打ち食べに行く。朝食終了時間ぎりぎりだけど何とか行くと、おかずが半端じゃなくうまい。鮭にしても佃煮にしても野菜にしても素材の良さがどうしても出てしまうのが北海道だ。自転車に荷物を積み込んで場違いなほどきれいなホテルを出発する。
早速のちょっとしたアップダウンが体に応えるが、これが今時の俺の初日の感覚だろう。空港へ曲がる分岐を過ぎると道は海沿いになってきた。やや天気の悪い津軽海峡を右に眺めながら自転車を進めていく。途中の鉄道跡で写真を撮ったり、本州と北海道が最短になってる岬に立ち寄ったりで小さいながらも見所は多い。再び道が少し内陸に入るとアップダウンも増えてきた。それ以上に俺の眠気の方が深刻だ。ペダルを漕ぎながら居眠りしてしまいそうなほど眠い。ちょうど右側にセイコーマートが見えてきたところで休憩にする。眠気覚ましのコーヒーを1杯買ったが、仮眠する。本当に眠いときに10分寝るだけで効果が絶大なのは何度も経験している。輪行の前後に訪れる深刻な寝不足も克服なり解決法を考えないと事故に至るのも時間の問題だろう。
田舎とは言えコンビニの軒先で仮眠というのは目立つのか小さな子供が怪訝そうに俺を見ている。じーっと見ているので手を振ったら喜んでくれた。そうでもしないと、ただの変なおじさんになってしまう。 |

ホテルの中庭
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湯の川温泉から出発
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体力が回復して元気を取り戻したところで再び走り出す。北海道らしい緩いアップダウンを繰り返しながら東へと向かうと道の駅にたどり着く。今日の宿泊予定地でもあり休憩ポイントとしても重要だ。いっそテントを張って荷物を下ろして行っても良いのだが、せっかくのヒルクライムなのでフル装備でトライしてみたい。どうせ夕方までに帰って来れないのでキャンプ場のチェックインだけ済ませておく。食事できる店も2軒ほど周りにあるしコンビニもある。便利なキャンプ地だが道の駅はこぢんまりとしている。
道の駅の近くの食事処で昼食にする。数量限定の定食は品切れなので、ちゃんぽんにする。やや寒い今日なので熱い汁物も美味しく感じるし、たっぷりの野菜が美味しい。食には満足したところで、道の駅でご当地サイダーにトライする。昆布サイダーということで昆布出汁が利いたサイダーだ。これは… やっぱり無理矢理 昆布を合わせてきたのは失敗だろう。
口の中に昆布出汁とサイダーの甘さが混じった変な感触を残して恵山へと向かって走って行く。距離はそんなにないが、300mほどの上り坂が待っている。前半の山場が早速初日に訪れる。しかし、天気がイマイチで上ってしまうと霧に隠れて何も見えないのでは…という危惧がある。とは言え行くと決めてここに来た恵山だ。漁村を過ぎると上り坂が始まった。緩い坂で始まったと思ったら、漁村を抜けて民家が無くなると傾斜が容赦なくなってきた。途中に温泉宿が2軒あって日帰り入浴もできる。下りの途中で風呂に入ることになるだろう。温泉を過ぎると傾斜はますます厳しくなってきた。深い森の中を上っていると恵山の山頂付近の雲が徐々に晴れてきた。上り坂で苦戦しながら時間かけていれば雲が晴れたすっきりした恵山で観光できるのではと期待していく。ツーリング中の晴れ男っぷりも、ここ最近はなりをひそめていたが、ここに来て本領発揮である。 クライマックスは14%の斜度をグイグイ上る直登だ。恵山で観光する人しか来ないため、この容赦ない感じが良い。それでも26HEランドナーで今 自転車として選べる最低のギア比だから、こんなにたるんでいる俺でも十分に踏んでいける。展望台まで登り切ると山頂付近は完全に晴れてきて、青空も見えてきた。森の上に突き出た岩がむき出しの火山が印象的な眺めである。南を見下ろすと津軽海峡の青い海が見えている。その向こうの本州はさすがに霧が出て見えない。なかなかの絶景ポイントである。 |

戸井の鉄道跡
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昼飯のちゃんぽん
暖かいメニューが欲しくなる気温
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昆布サイダー
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恵山への上り坂
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斜度を見て驚くのも久しぶりな14%
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展望台から見下ろす上ってきた道
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展望台から恵山山頂の眺め
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展望台から少し奥に下ると駐車場があったので自転車を置いてトレッキングをする。俺以外の観光客は誰もいない。手つかずの自然と火山の荒涼とした眺めが少しの恐怖感と緊張感を俺にもたらす。登山道を歩いて辿り着ける展望台も距離は遠くないようなので向かってみる。しかしながら、どっちに歩けばよいのか分かりづらいガイドロープと案内看板で途中からは本格的に方向が分からず、明らかに入ってはいけなさそうな噴煙が出てるエリアに突き当たる。アドベンチャーレースとか本格的に登山をやってる人で複数人なら行けるかもしれないが、俺みたいな素人で一人で時間帯も下手すると日没して真っ暗にもなりかねないので無理はしない。それでも恵山の荒涼とした景色が楽しめる。
今度は山沿いを歩いて岬を見下ろす展望台を目指す。手つかずの原っぱと荒涼とした岩と噴煙… 生の世界と死の世界が境界線を持って両立している自然の絶景はすばらしい。それが傾いた太陽に照らされて黄昏色に輝いている。神秘的な自然だ。展望台から噴火湾の方を眺めると、そっちは少し霧が出ていて海に向かってフェイドアウトしている岬が幻想的である。トレッキングも歩く方向が変わると雰囲気が変わる。左に岩山を見て正面には原野を見ていく。日没が迫る焦りを少し忘れさせてくれるような景色である。
もう下り坂だし日没で寒いぐらいの涼しさだから水の消費は無いが持っている水がそこをついた。しかし補給する場所はない。展望台まで上ったところでメットをかぶってブレーキをチェックして下る。14%の下り坂はさすがにコントロールが大変である。事故ると本当にここは誰も来ない場所なので慎重に行く。北海道にしては珍しいヘアピンカーブが連続するワインディングである。楽しみつつ慎重に進んでいく。途中で鹿の親子が飛び出してきた。久々に生物と会った。道東なら鹿はそこら中にいるが道南だと見かけることも少ないのでうれしい。1台の車とちょうどゲートですれ違う。ちょうど閉門時間だったようだ。 |

硫黄と火山ガスの山頂
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見下ろす草原
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西日に照らされる恵山
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草原から見上げる恵山
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恵山から見下ろす恵山岬
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途中の温泉に立ち寄って日帰り入浴していく。上り坂とトレッキングで汗かいた体をきれいにしたいところだ。酸性が強いので石けんが使えないという噂の温泉がどんなもんか楽しみである。しかし、今年から新規導入した頭も体も洗える炭シャンプーはきちんと泡立って洗えた。なかなか優秀である。湯船とカランがあるだけのシンプルな温泉だがお湯を楽しんでいく。疲れ気味の初日だが、温泉で生き返る。
風呂から出ると既に真っ暗となっていた。荷物をまとめて続きの坂を下る。この辺からは民家もあるので道は明かりがあるので安心だ。海に突き当たったら道の駅へと向かう。距離はたいしたことないが初日からナイトランというのもキツい。ここら辺で唯一
買い物が出来るローソンに寄ってみたが生鮮食品は無い。自炊は出来ないようだ。ローソンの隣の食事処に立ち寄っていく。学生と思われるサイクリストも食事しているが、なぜか上から目線の店主に色々言われている。ほかに選択肢もないので、ここで生ビールと蒸籠飯にする。鮭とイクラの蒸籠飯がやたら美味い。たこの唐揚げをつまみにビールを飲みつつ飯も進む。
夕飯に満足して道の駅の隣のキャンプ場へ戻ってテントを張る。ほかにテントはいっぱい張られているので、ある意味では安心感はあるが外海に面しているので波の音は大きく少し怖い。それでも一番海に近い列でテントを張って真っ暗で何も見えないがオーシャンビューとする。まずまずの初日に手応えを感じて疲れ切って眠りについた。 |

夕日に照らされる恵山
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鮭といくらの蒸籠飯
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2日目 |
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恵山 → 南かやべ → 鹿部 |
54.41 km |
2015/08/09 |
朝から濃い霧が立ちこめている。これが北海道の海沿いであり夏だ。結露しまくるテントを降って水滴を飛ばして片付ける。パッキングを終えて炊事場で水を満タンにしてコンビニへ行く。ここで朝食を済ませて出発する。どのぐらいの標高まで行くのかは読めないが恵山の西側と北側を回る峠越えが朝の一発目に待ち構える。霧の後の蒸れた感覚としめった路面を感じながらジリジリと緩い傾斜で森の中を上る北海道らしい峠を楽しんでいく。傾斜は緩いので体力はさほど削られること無く峠を越えた。下り側はまあまあきつい傾斜で下る。しかも登り側以上に路面が濡れているので慎重に行く。下れば下るほど霧も濃くなってきた。
海沿いの道に突き当たったところで海沿いを北に進んでいく。霧は出ているが視界が失われるほどではないので助かる。それでもテールライトは1日中点滅させっぱなしである。車のリアフォグライトほどの威力はないものの後続車が気づく確率は上げておきたい。海沿いの道は岬が出ていればトンネルで処理するので平地で快適に進んでいける。尾札部と言われてる地域で道南随一の昆布の産地である。干している昆布の香りが漂っている。昆布漁師の家の敷地には昆布を干すための小屋があり、つるすようにして大量に干されている。玉砂利の海岸線に干してある昆布も北海道らしい風情だが、こういうのも北海道らしさを感じて楽しい。 |

道の駅 なとわ・えさんキャンプ場
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尾札部の昆布
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昆布から漂う磯の香りを楽しみながら走り、道の駅 南かやべに立ち寄るために一度 坂を上っていく。ほどよくしんどい坂を上り終えて森から海を見下ろすような道を走ると道の駅にたどり着いた。昼飯を食べたい気持ちを一度抑えて道の駅に併設されてる博物館へ入っていく。貴重な中空土偶が見れるのだ。寒冷地の昔の暮らしを見るのも興味深い。しかし、プロのカメラマンと思われる人が独占していて見づらい状況なのが残念だ。博物館を見終えたら昼飯にしようと思ったら軒並み売り切れだ。連休中なんだからいっぱい仕入れとけよと言いたくなるが仕方ない。この先、昼飯を食べれる場所がしばらくないので、ここで食べられる最大限の糖分ということでソフトクリームを食べていく。栗の味と香りが良い。
坂を下って再び海沿いの道に出ると、漁村ではあるが飯を食うところは無い。俺の予感は悪い方向にきっちり当たってしまう。腹減ったなーと思いながら昆布の香りにまみれて走って行く。昼飯にはありつけないまま今日の目的地になる可能性の高い鹿部に入った。鹿部町に入ってすぐの滝を見つつ携帯で情報収集するが、この道沿いで鹿部、砂原、森いずれも風呂はなさそうだ。鹿部での宿泊を視野に入れつつ鹿部の市街地へと向かって行く。温泉街に入る手前で間欠泉と地元の魚介を売ってる売店があったので、立ち寄っていく。
直売の裏に自転車を隠して鍵をかけて間欠泉を観光する。20分に1回ほど吹いているということだが、ちょうど吹いた直後だったようだ。次に吹け上がるまで足湯にでも浸かることにする。今日は寒いので体は冷え切ってるが、足湯は暖かく生き返る。かき集めたパンフなどの情報を見ても温泉は鹿部にしかないようだ。足湯で癒やされると走る意欲は徐々に削がれていく。15時なのでもう一っ走りは十分にできる時間帯だが、もういいやって気分にもなってくる。そして間欠泉から音がし始めたので慌てて足湯から出てカメラを構えるべく準備したが噴射の時間に間に合わない。仕方なく次の噴射を待ち構えることにする。勢いのすごさを楽しむ前に写真を撮るために慌てたので感動は半減してしまった。痛恨のミスだ。次はじっくり落ち着いて噴射を楽しんでいく。自然の力だけでここまで吹き上がるのだから驚異だ。 間欠泉を楽しんだら、直売所で夕飯のおかずを買う。鹿部はたらこが名産なので一パック買う。冷凍されているので、夕方まで走ったとしても保冷バッグに入れてれば鮮度は問題ないし今日は寒いぐらいなので鮮度が下がることはあり得ない。砂原に温泉があると思われる看板を発見したのでネットで調べてみると閉館されている。もう鹿部で良いだろう。鹿部町を流れる川沿いに公園が整備されていて、少し川沿いに上ると広い公園もありそうだ。宿はほぼ間違いなくそこだろう。川沿いの道を徐々に上ると候補地は何カ所か見つかった。登り切ると広い東屋と水道もトイレもあるアメニティが完璧の公園が見つかった。決定だ。 |

道の駅 南かやべ 縄文ソフト栗ーム
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渡島半島の海岸線
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吹き上がる鹿部温泉 間欠泉
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また市街地へと下って次は風呂に向かいつつスーパーを見つける。ここで野菜を買う。たらこのスパゲティと野菜スティックだけで行こうかと思ったが、鹿部産の鮭も美味しそうだ。ホイル焼きにすることにした。買い物を終えたら温泉旅館の日帰り入浴へ行く。連休中と言うこともあって駐車場は混んでいる。景気よく満室なら良いことだ。冷え切った体にしみいるような暖かい温泉で癒やされる。なかなか抜けない疲れと今日の冷えに温泉は助かる。
完璧に癒やされた状態で、公園へと戻る。まだ明るいがテントを張って夕飯の準備をする。水道で野菜を洗ってパスタ用の水をくむ。広いテーブルの上でお湯を沸かす。その間にフライパンへもやしを敷き詰めて鮭の切り身を並べる。豪快で大きな切り身がアウトドア的であり北海道的でもある。まずはパスタをゆでながら、たらこを徹底的に濃くしたマヨネーズで野菜をかじる。磯の香りと野菜のさわやかさが絶妙だ。ここまで贅沢に濃くしたディップサラダはそうそう無いだろう。ゆであがったパスタにも濃厚に和える。余らせても冷蔵庫はないので贅沢にいくしかない。パスタとたらこしか無いのに、なんでこんなに美味いのか! 北海道の奥深さを満喫する。続いて蒸し焼きの鮭からも良い香りが漂ってきた。ふわっとした身と濃厚な旨みがたまらない。北海道らしい自炊の晩餐を心から楽しめた。 |

鹿部産のたらこ
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たらこたっぷりのディップサラダ
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鹿部産 鮭のホイル焼き
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たらこのスパゲッティー
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3日目 |
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鹿部 → 砂原 → 森 → 大沼 |
79.05 km |
2015/08/10 |
今日も朝から天気は冴えない。濃い霧が漂っている。また濡れたテントから水滴を飛ばす作業から朝は始まる。テントを畳んで公園を後にする。セイコマで朝食を食べて走り出す。本当は砂原の半島を回って森町まで昨日のうちに行っておきたかったが、風呂都合でかなわなかったので、早めの朝に出て距離を稼ぎたい。霧が立ちこめて地面は湿り気味で気分的に冴えないまま海が見渡せない海岸の道を走っていく。本当は右には噴火湾、左には駒ヶ岳という絶景の道なのだろうが、霧にどちらも隠れている。
走りとしてはかなり好調で、あっという間に25km走って砂原の砂崎のあたりまで来た。途中でダートへ入っていくはずなのだが道案内の看板が途中で途絶えている。どう考えても通り過ぎてそうなので携帯で調べる。スマートフォンもツーリングシーンでは活躍の機会が多い。やはり通り過ぎていたので戻る。
これだと思われる分岐を曲がると途中からダートになった。このまま進めば砂崎の灯台にたどり着くだろう。湿地帯の中に広がる砂浜が押し固められたような道でタイヤに跳ね上げられた砂がホイールや泥よけやフレームに当たる音が聞こえる。サンダルの足下にも砂粒が当たっている感覚は分かる。灯台の近くまで来ると急に砂が柔らかく深くなった。グイグイ踏んでみたが、スタックして動けない。手で押しても動かないほどにタイヤは砂に食い込んだ。一度、引き上げて手で押して灯台近くのフェンスに立てかけた。霧に包まれる砂の原と湿原と海に白と黒の横縞の灯台が映える。天気がよければ駒ヶ岳が湿原の向こうに見えるのだが、霧に包まれる景色も神秘的である。 灯台を見終わると足下が砂まみれでペダリングできる状態では無い。とにかく足の洗える水道が望まれる。国道に戻る途中に公園を見つけた。ここの水道で足を洗うことにする。しかし、水はチョロチョロとしか出ない。もっとじゃーっと洗い流したいのだが…。仕方なくチョロチョロの水で少しずつ足とサンダルを洗い流す。砂なので流れては行く。不可能では無い。
足下がすっきりするのと同時に空が徐々に晴れてきた。大沼に行くまでに晴れて駒ヶ岳が見えれば最高なのだが、そんなに世の中は甘くないかと思いながらも期待しながら進んでいく。道の駅つど〜る・プラザ・さわらまで来ると駒ヶ岳が本格的に見えてきた。気分も盛り上がってきた。展望台がある道の駅なので、地元産のトマトジュースを買って展望台へ上がる。ガラス窓から海と駒ヶ岳を見ながら休憩していく。曇りや霧の北海道も幻想的であるが、やはり旅は晴れが良い。それも暑いぐらいの晴れで真夏の日差しに炙られながら走る方が良い。
道の駅を出発するときには自分の影が映るほど日向が出てきた。徐々に気温が上がってきた。夏旅らしい天気になってきた。こうなってくると走りは気持ちが良い。ペースもぐんぐん上がっていく。ちょうど昼に森町へ到着した。市街地へ行くか道の駅へ行くか迷うところだが、道の駅へ向かう。大沼へ向かう途中にあるし、目当てのイカ飯も森駅前でなくても道の駅にもあるだろう。
道の駅に着いたら自転車を隠して休憩する。まずは昼飯だ。マイペースな感じの食事処でイカめしにする。濃厚な汁ともちもちの米に旨みたっぷりのイカがたまらない。昼飯を満喫して公園で休憩したら出発する。ここから大沼までは上り坂だ。若い時は平地のように上っていったが今だとそうも行かないだろう。苦戦を予想する。北海道らしいジリジリと長い上り坂が続く。この程度の上り坂に何を苦戦してるんだと思わないことがポイントである。 |

美味いセイコマのポテサラ
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砂崎へと向かう道
砂が固まったダートが湿原を貫く
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スタックして動けなくなった跡・・・
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湿原にぽつんと立つ砂崎灯台
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森のいか飯
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意外と何とかなってる上り坂を楽しみつつ大沼へ向かうと、駒ヶ岳は完全に姿を現している。曇りではあるが雲は高い。国道から道道へと曲がって大沼公園と入っていく。観光地然としてる大沼ではあるが、人影の少ない沼だと雄大さは楽しめる。沼越しに見る駒ヶ岳が美しい。景色を楽しんで撮影をしまくって大沼公園駅にたどり着く。ここはさすがに観光地なので観光客も多いし大学生のサイクリストも多い。情報収集だけにとどめて湖一周を走りたいところだ。今日はどこに泊まるかはまだ迷っているところだ。湖を一周回ってさらに遠くの山の上のキャンプ場まで行ければ理想的なところである。ただ、それは昨日のうちに森まで走り切れていた前提なので、ほぼ無理だろう。
考えつつ森に包まれる大沼を見ながら走って行く。アップダウンは緩く、時々は湖を眺めるような場所もある。夕方になって観光船も走っていないので静かな湖面を楽しめる。半周ほど回ったところに大沼キャンプ場がある。近くに温泉もあるしサイトは無料だ。立ち寄って様子を見ると泊まりたくなってきた。キャンプ場の向かい側のカフェはギャラリーになっていて大沼の自然を撮った写真が展示してある。これが見所ある写真である。大沼以外も通い詰めてよく観察してないと撮れないような写真が多くて見応えが非常にある。というか旅人として自然を愛する者として胸にぐっと来る写真がある。
色々あったこのキャンプ場を今夜の宿に決めた。ただ、時間はまだ早いので湖を走りきってからまた来ることにした。続きの走りに入っていく。後半になってくるとアップダウンも増えてきたし、レンタサイクルで走っている人も少なくなってきた。人通りの少ない静かな湖を見ていると駒ヶ岳の活動でできた自然の偉大さを感じる。岩の間を歩いて抜けると願いが叶うと言われている神社に立ち寄る。確かに、願いが叶うのでは無いかと思うほど蚊が多い。短時間だと思って虫除けを怠った俺の体には数カ所 激しいかゆみが襲いかかる。
神社を通り過ぎて湖を回ると湖越しのリゾート地が見える。もう淡々とこなすだけの走りになってきた。大沼公園まで戻ってきたところで夕飯の買い出しをする。スーパーのようなものは見当たらないが、地元の肉屋さんが作ってるジンギスカンに惹かれた。ジンギスカンを買って酒屋で地ビールと虫除けスプレーを買う。大沼団子の店で朝飯用にお団子も買う。これで整った。再び湖沿いの道を走ってキャンプ場へ向かう。さっき大沼越しの駒ヶ岳を眺めた場所は駒ヶ岳の中腹に雲がたなびいて、さらに神秘的な景色に変わっていた。複雑だが広がりのある雄大な稜線と緑豊かな麓にたなびく雲が美しい。2周目に入らないと見れない景色なので、この宿の選択は正解である。
キャンプ場に着いたら、テントを張る。もう日没は迫っているので少し急ぎたい。トイレのある建物に自転車を立てかけて荷物をほどいていく。まずはテントを張って蚊取り線香を焚く。夕焼けに照らされる大沼が美しい。夕暮れの静かな湖は雰囲気が良いし、夕日に照らされる独特の色が慌ただしい気持ちすら抑えてくれるような気がする。 |

まずは小沼から楽しむ
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展望所からの大沼と駒ヶ岳
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大沼駒ヶ岳神社
岩の間を抜けると御利益のあるパワースポット
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湿地帯もある
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たなびく雲の上に頭を突き出す駒ヶ岳
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夕暮れの大沼
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しばし現実を忘れたがテントに荷物を放り込む。着替えを取り出してお風呂セットを取り出して温泉へと出かける。空荷のランドナーはフラフラしてしまう。駅前の道をずっと行けば温泉に着くようだが、道は徐々に山深くなってくる。そしてダートになった。坂を下り始める。うっそうとした森の中を下っていくと、本当にこの先に温泉があるのか?という不安に駆られる。しかも立ち止まると自転車のライトに虫が集まってきてしまうほど山深い。携帯電話のナビで見ても正しい道を進んでいるようだ。だとすると、そもそもこの先にある温泉って今でも営業してるのか?という不安も出てくる。
坂を下りきると分岐に出た。いよいよどこに行けば温泉なのか分からない。そこに1軒の家が建っていて家主がちょうど車で帰ってきた。車から降りてきた家主さんに話かける。少し驚いたようだが、この先に温泉あるよと教えてもらえた。そうと分かれば行くだけだ。しばらく行くと温泉旅館の明かりが見えてきた。この安心感はほかに無いだろう。
温泉で体の汚れを洗い流しながら、どうせ帰りに汗かきそうだよなと思う。まあ今日の臭みを洗い流してからの追加だから+2になるか+1になるかの差はあるか… などと思いながら温泉に浸かって疲れも癒やしていく。 |
入浴を終えて現実に戻る。真っ暗な道を上っていく。大沼から下って温泉に来たので帰りは当然ながらダートの上り坂だ。空荷だからか暗くて傾斜が見えないからか戻れるかの不安の方が多いからか傾斜のきつさを忘れながらグイグイ上っていく。さすがに疲れて足を着いて止まると目の前にキタキツネが出てきて逃げていった。夜の森を走ると夜行性のキツネとは遭遇する。
そしてダートから舗装路へ戻り駅前を通り過ぎてキャンプ場へ戻って安堵の気持ちと表情に戻った。なかなか刺激的な風呂となった。テントに戻ったら夕飯だ。ご飯を炊きながら大沼の地ビールを飲み、佃煮をつまみにする。今日もなにげにハードな一日だったのでビールが美味しい。ご飯が炊けたらフライパンでジンギスカンを焼く。ビニール袋で量り売りしてる大雑把な売り方で、大雑把な俺は袋から直接フライパンに放り込む大雑把な焼き方をする。つけダレが美味しいのでラム肉の旨みが出ている。ますますビールが進む。しかし、大雑把すぎて肉を取り分けるフォークが袋を突き破ってしまった。底から汁がこぼれている。慌ててコッフェルのふたの上に袋をのせて汁の流出を食い止める。気づくのが早かったので被害は最小限で済んだ。地元精肉店のジンギスカン なんだか旅情を感じる夕飯で満足する。 |

大沼の地ビール
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お肉屋さんのジンギスカン
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4日目 |
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大沼 → 北斗 → 中山峠 → 厚沢部 → 江差 |
84.45 km |
2015/08/11 |
昨日もタフな走りだったが今日も明日もタフだ。80km以上あるし峠も越える。しかも洗濯しないと着る物もないのに調べた限りでは目的地の江差市街地から10km近く郊外にコインランドリーがある。洗濯したあとで走る必要があるのでナイトランは必須だろう。道路の向かいのギャラリーがゴミの処分もしてくれているので、ゴミを出しに行く。ビールの瓶は洗ってあるし、ジンギスカンのビニールと朝飯の団子の箱だけだ。ゴミを捨てたついでにギャラリーがもう1つあったので見ていく。今度は大沼の自然に特化した写真が展示してある。これもより深く観察していておもしろい。
今日はすっきり晴れた空の下で出発する。晴れた湖沿いは昨日の曇り以上に気持ちが良い。大沼公園の手前で小沼の方へ曲がっていく。駅の直前ぐらいでフロントキャリアから異音が鳴っているのに気づいた。コンビニに止まってねじをチェックする。1本締まっていないのを発見して締め直す。これで音は止まった。ついでにコンビニのトイレでサングラスを洗っていく。これで目の紫外線対策と眩惑対策も万全だ。国道に戻る途中で線路に向かってカメラを構えた人たちが多い。何を待っているのだろうか。その列車を見ること無く国道に戻り、トンネルを抜けていく。トンネルは徐々に下っていく。函館へと道は下っていく。どうせこの後で江差に向けて峠越えなので正直、あまり標高を下げて欲しくない気分である。しかし、4車線で一気に函館へ向かう国道は気持ちよく下ってしまう。 |

大沼の朝 今日も霧が立ちこめる
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大沼団子 3種盛り合わせ
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スピードも乗ってきたところで、左側に今日の目的地ラッピことラッキーピエロ峠下総本店が見えてきた。少し早めの昼食のために寄っていく。早くも列が出来はじめていたので急いで自転車を施錠して列に並ぶ。ぶっ飛んだ外観と内装に圧倒され、メニューの豊富さに圧倒されて何から手をつければ良いのか分からないまま列が注文カウンターに進んでいく。カウンターで注文して支払って、席を確保したあとでどこに座ったかを申告するシステムなのだ。独特だ。俺のチョイスはご当地のハンバーガーとした。少し時間はかかったが手作り感のあるスペシャル生ベーコンエッグバーガーが俺の元に来た。内装も外装もふざけてるが、味は美味しい。そしてボリュームがある。北海道らしい心を感じる店だ。テレビ東京の経済番組で見たし、昨日
森から大沼に向かう途中に一店舗あったので気にはなっていたのだが、立ち寄って正解だった。函館に来たらラッピ(ラッキーピエロ) これは外せない。 楽しかったラッピを後にして、次は江差に向かいつつ途中の渡島大野駅を目指す。今は函館本線の一介の小さな駅だ。同じ駅には新幹線が乗り入れて新函館北斗という駅に変わる。せっかくなので建設中の駅を見ていきたい。俺は旅が好きだから鉄道も好きなのだ。何もない田畑の真ん中の道を向かうと向こうに新幹線の高架が見える。右の奥には駅舎と思われる建物も見える。 |

ラッピことラッキーピエロ峠下本店
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大きい建物と遊具がある |

スペシャル生ベーコンエッグバーガー
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ポテトもごろごろと大きめでボリューミー
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駅舎はほぼ完成している。ただ、お盆だから工事も休みだし新幹線に乗る客は当然いないので空いている。ついでにトイレに行きたいので駅の中に入ってみる。今は単なる渡島大野駅なのでトイレは無かった。試験車両が来たりとか刺激的な展開はないので何も見れない駅だった。開業が楽しみではある。仕方ないので最寄りのコンビニを目指す。1kmほどであるようだ。コンビニに向かっているとにわか雨がざっと降ってきた。ちょうどコンビニに着いたので雨宿りとなった。トイレから出ると雨も止んでウェットな路面と強い日差しでまぶしい。
ここから江差に向けて峠を越える。覚悟はしているが渡島半島を横断するような峠なので上り坂の長さが半端じゃない。50km近くかけて峠越えなのだが、初っぱなからジリジリと上っていく。今日は真夏の日差しに炙られながらのタフなヒルクライムが続く。函館から江差までの最短ルートだが車は少ない。ひたすら長い坂を集中して上っていくだけだ。雑念が起きようがないほどに何もない。進捗が分かるようなランドマークもない。
途中にある路側帯で自転車を止めて足をストレッチする。ここ最近、恵山、大沼と上り坂に向き合ってきたので調子は悪くない。インナーギアを使わずにセンターだけで回していけるのも26HE化の効果が出ている。しんどいながらも気持ちよく坂を上っていく。しつこいほどに長い坂もようやく頂上のトンネルで終わりが来たようだ。中山峠と書いてある。あとは江差まで下るだけだが、時間は既に16時になろうとしている。ぎりぎりで日没までに海までは行けると思うが、洗濯して市街地へ向かうことを考えると、思わしくない進捗である。さらに明後日は瀬棚から再び渡島半島を横断する峠を越えて長万部へ行って、今の強気な計画だとさらに40km走って豊浦を目指そうとしている。それでもその次の日に洞爺湖の遊びボリュームで調整するだけの保険を打ってる状態だが、先のことを考えると楽では無い。
トンネルを越えたらメットをかぶって下り坂に備える。気持ちよく緩い下り坂でスピードを乗せていく。北海道の峠は登りも長いが下りも長い。30や40kmも続く下り坂も珍しくない。カーブも傾斜も緩いのでコントロールもしやすい。気持ちよく進んでいく。とは言っても、上り坂で飲み尽くしたペットボトルの水が気にかかっていた。途中にオートキャンプ場があるので水をくませてもらうか、店があれば天然水を買って詰めていくか選択肢はいくつか考えつつ進んでいく。オートキャンプ場は道からさらに谷を下るので却下した。また上ってくるのは嫌だ。途中の商店前で休憩したついでに店の外の水道を頼んで使わせてもらった。1.5Lのペットボトルを水で満タンにして500mlのポカリスエットも買ったので一気にエンプティーからフルになった。ガス欠寸前にガソリンスタンドで満タンにする快感がある。
相変わらずスピードに乗った下りで江差の手前の道の駅にたどり着いた。もう閉店寸前なのだがジャガイモとコロッケを買う。男爵の原産地ということで逃せないだろう。このコロッケが感動的に美味い。純粋なジャガイモの香りと食感がたまらない。シンプルなコロッケが最高に良い。小腹も満たしたところで、あと10km弱の道を一気に走る。もう太陽は黄昏色になっている。なんとしても海に沈む夕日は見ておきたい。それが日本海の旅の醍醐味だ。 |

新幹線開業前の新函館北斗(渡島大野)駅
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中山峠
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厚沢部産の男爵を使ったコロッケ
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江差から眺める日本海の夕日
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日本海沿いの道にようやく出た。まだ日没まで余裕はありそうだ。1枚入れ忘れていたパンツをコンビニで買おうと思っていたが、なんとお気に入りのシマムラがあった。急いで立ち寄ってパンツを1枚買う。その先にコインランドリーを発見し営業時間を確認する。風呂に入ってから来ても十分に間に合う時間まで営業しているようだ。コインランドリーを頂上とする坂を1本上って下ると集落に出た。この辺に温泉があるはずなので、一度立ち寄る。ちょうど夕日が沈みそうだ。空き地を通り抜けて海岸に出るとちょうど沈んだ。楽しむ余裕は無かった。
携帯で調べると、もう1つ坂を越えたところに繁治郎温泉があるようだ。もううんざりだが行くしか無い。これが車道側は登坂車線があるほどの坂でしんどい。ヘトヘトになりながら坂を越えて下ると左に温泉が見えてきた。もしかして泊まれないかと思ったが泊まれないようだ。宿は未定だ。まずは風呂に入る。ここで着替えた時点で衣類はすべて使い果たした。道南はコインランドリーが少ないのでギリギリのツーリングが強いられるし枚数が必要になる。今日も走りはハードだったが温泉に癒やされる。
本当は嫌いだが入浴後なのに洗濯するために来た道を戻る。厳しい坂を1本越えていく。ここは夜間だと車のスピードがかなり乗ってそうなので歩道を進んでいく。対向車にパッシングされるがかまわず進む。道は街灯が全くなくて真っ暗だ。自分のライトだけが頼りの走りが続く。路面をよく見ながら慎重に進む。フル装備の歩道なので段差や縁石にぶつかるだけでも自転車が致命傷を負うこともある。
やっとコインランドリーに戻ってきた。まずは洗濯物を洗濯機に入れる。乾燥機はフル稼働状態だ。俺の洗濯物を乾燥する時間と営業時間を気にすると、さっさと取りに来てくれないと困る。まずは洗濯しながら、店の表で日記を書く。店内は乾燥機の熱が換気されてないくて暑くて居てられない。洗濯が終わったときにちょうど乾燥した洗濯物を取りに来た人がいたので何とかつながった。乾燥を終えたらやっと安心した。やはり手元に1枚もなくなる洗濯計画は困る。道南地区にもっとコインランドリーを作って欲しい。そう願うばかりである。函館 湯ノ川、鹿部、松前、福島、砂原、森、長万部、江差市街地、瀬棚 このぐらいは市街地に1つずつ欲しいところである。
洗濯物が片付いたが夕飯はまだだ。そもそも今日はどこに泊まるかという問題が未だに残っている。今時点で江差の北にいるが、このまま瀬棚方面に向かうか今の場所の近くで野宿を検討するかというところだが、江差から現在地点の日本海沿いの走行履歴が残らないままになりそうだ。ここは江差の市街地へ向かうしかないだろう。江差なら1カ所は寝床の目処はついている。心を鬼にしてさっきの坂をまた走っていく。そして明日も走るのだ。真っ暗な海沿いの道を江差の市街地へと向かって行く。 |
やっと市街地へとさしかかってきた。もう夜の22時を回っている時間なので、安心感が半端ではない。ちょうど今日まで江差は姥神大神宮渡御祭のようだ。そういえば前に江差から奥尻島に渡った時も祭りの真っ最中だった覚えがある。それと同じ祭りだ。ちょうど姥神大神宮で祈祷しているところを見られた。ここの神社を中心にした祭りなので荘厳な儀式が行われている。つかの間だが祭りを楽しめたのは江差の市街地まで来た甲斐があったというものだ。寝床は鴎島の浜辺で良いだろう。駐車場で野宿してる人もいっぱい居るしテントを張るスペースはある。 一安心したところでコンビニに行き、お祭りらしいメニューで晩酌にする。露店で買って祭りの空気感の中で食べるのが理想だが、焼き鳥とお好み焼きを買って温めてもらう。もちろんビールも飲む。SAPPORO CLASSICで乾杯だ。一人で祭りを楽しむように夕飯を食べる。すっかり満足したところで鴎島の方にテントを張りに行く。車1台分が空いてたので、そこにテントを張る。おじいさん同士が飲んでる声が若干うるさいが、これもまた思い出だろう。日にちも変わった0時過ぎにやっと落ち着いた。祭りのお囃子はこの時間まで響き渡っていた。思い出した。あのときもそれで寝れなかったものだ。 |

江差・姥神大神宮渡御祭
(えさし・うばがみだいじんぐうとぎょさい)
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5日目 |
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江差 → 熊石 → 尾花岬 → 北檜山 → 瀬棚 |
95.08 km |
2015/08/12 |
さすがに疲れの隠せない朝を迎えた。だが、今日は90km近く走る。しかも地図上に距離を書かれていないマイナーなルートを走るので正確な走行距離がいくつになるのかは計算上では分からない。せっかくの江差なのでにしん蕎麦を食べたいと思って携帯で調べてみると文化財にも指定されている横山家でにしん蕎麦が食べられる。しかも朝も早くから営業している。わくわくしながらテントを片付けて出かける。
横山家を見学できるが、まずはにしん蕎麦だ。濃厚な身欠きニシンののった蕎麦が美味しい。寒い地方だからか出汁はしっかりしてるし、蕎麦の味もそれに負けてないし、ニシンの風味がよく合う。ニシン御殿の史跡になってる旧家でにしん蕎麦を食べる贅沢は無いだろう。家の見学料は別料金だが見ていく。海に向かって続いてる蔵などは見応えがある。家主の説明員は説明が長くて熱いが何となく楽しい。そこに旅の醍醐味を感じる。 すっかり満足して家を出ると、親と同じぐらいの年齢の夫婦が話かけてきた。どちらから話しかけたというわけでもないが、話が盛り上がった。旦那さんが60過ぎて自転車を始めたとのことだが、俺の体を見てさすがベテランは筋肉の付き方が違うとべた褒めしてくれたが、本場のサイクリストはもっと細い。なんだか江差の観光が楽しくなってきたので、江差追分の資料館も見ていく。90km近く走らないといけない現実と貧弱な体力を完全に忘れている。江差の文化を楽しんだらもう11時だ。まだ出発してないってどういうことだよと自分にツッコミを入れながら出発すると、さきほどの夫婦とまたすれ違う。旅の出会いの楽しさを満喫する。 |

車中泊のキャンピングカーやSUVに
混じってテントで一泊
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江差 開陽丸
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江差 横山家のにしんそば
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旧家の風情を満喫しながら食べる
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蔵も残っている
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横山家の玄関
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海まで続く にしん番屋
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祭りの山車を撤収作業
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ようやく俺にもスイッチが入った。昨夜苦戦した坂もサクサクと越えていく。瀬棚に向けてぐんぐんペースが上がっていく。天気もよく熱い夏の走りが来た。これぐらい気温が高い方が俺の体は調子が良い。暑いのは苦手なはずなのだが自転車に乗っているときは話が別である。道自体は地形をトンネルで交わしたりしてくれているのでアップダウンは想像より少ない。それでも、いくつかは坂に遭遇するが意外と調子よくこなしていく。展望台から見る複雑な地形の日本海は美しく厳しい。この日本海の景色は何度見ても好きだ。それを見るための坂道に苦しみ眺めを楽しみ落ちるように下る… それを繰り返す喜びが日本海にはある。
走りは思ったより調子が良い。出発の遅さをカバーできるだけのポテンシャルを自ら感じている。今日ほど手応えを感じる走りはGWも含めて初めてのような気がする。今日は何があろうと尾花岬を抜けて瀬棚まで行く。そういう強い気持ちが前に出ている。複雑な岩が続く地形だが、人影がまばらな道を走る。
少し遅めの昼食をセイコマで済ませていく。午後も夕方に近づくと疲れは見えてきたが、足は気持ちよく動いている。子熊が親熊に餌をねだっているような岩を通り過ぎて、道の駅に立ち寄る。今日は暑いのでアイスは欠かせない。糖分補給と体温下げるために立ち寄る。しかし西に向いてる道の駅に日陰は無く余計に暑いだけのようだ。店員さんに「涼しい場所がなくてごめんなさいね」と謝られてしまうと苦笑いするしかない。道の駅の近くのコンビニに立ち寄って水を補給する。ここはセイコマで売られている京極の天然水をボトルに詰め替える。水でも勝負に出る。 瀬棚へショートカットする国道と北海道最西端 尾花岬へ回る道道の分岐に出たが迷わず尾花岬の方へ向かう。この道道は瀬棚に向かっているが何kmあるのか分からない。目測で距離を測るしかない。アップダウンも前半は容赦ない。このペースで最後まで続いてたら瀬棚に着く頃にはぶっ倒れるかもしれないというレベルである。しかし、詰め替えた天然水が美味くて俺の体にとって救いになっている。ミネラルウォーターは侮れない。しばらく進むと集落がなくなり自然だけの景色になってきた。沖には奥尻島が見えていて、その向こうに太陽が見える。徐々に西日が傾いてきている。
手つかずの海岸線だが、道路に見慣れない物が転がっている。何かと思ったらマムシがいた。ツーリングでの野生動物目撃コレクションに1つ追加された。ハブを見てないので初の毒蛇目撃ということになる。ここからは長いトンネルが何本も続く。おかげで坂を上らずに済む。というより北海道を一周する道路の中で知床を除いて最も開発が遅かった秘境ルートなのでトンネルでも掘らないと道が作れないのだろう。3kmもあるトンネルだが途中で追い越す車もすれ違う車もいない孤独な走りが続く。それでもスピードは乗るので好調な走りが続く。
トンネルを抜けて豪快な岩山を見ながら走る海岸線に出ると、右に太田神社が見えてきた。日本一険しい神社で有名だ。急な階段が初っぱなから山の上に向かって続いていく。この先は鎖につかまりながら歩く岩山の上に本殿があるらしい。知床に次ぐ北海道の秘境だけに納得の地形だ。集落を抜けると、また長いトンネルを抜けていく。このトンネルの出口から少し戻ったところが北海道最西端(島嶼を除く)の尾花岬だ。岬に到達することはできないので感動はしづらいが、トンネルを抜けた時点で北海道を通る公道としては最西端となった。ここで大きな喜びが押し寄せた。これで北海道の四端をすべて自転車で自走したことになる。端っこはサイクリストにとって大きな達成感を得られる場所である。歩いて行くと危険そうだがトンネルの入口の山の斜面を少し登って海を眺める。岬までの遊歩道とか整備してくれると良いのだが秘境ゆえに厳しいのだろう。
ここで頭は北海道最西端到達祝賀会モードから日没ナイトラン現実走行モードへと切り替わる。地図でぱっと見た限りでは20〜25km程度は海岸沿いの道が残っている。まともに泊まって温泉に入ろうと思えば瀬棚まで行く必要もあるだろう。明日はあわよくば長万部を越えて静狩峠も越えて豊浦を目指して洞爺湖と山場のオロフレ峠に向けて貯金を作りたいとも考えている。気持ちは少し焦り始めている。気持ちよく追い風の中で平地の海岸沿いの道を通っていく。相変わらずトンネルが多いが車は少ない。単調で安全な走りがどこまでも続く。 |

日本海側の海岸線
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Honda CR-Vに曳かれる山車
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親子熊岩
親子の熊のような岩
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せたな産ブルーベリーのアイス
猛暑の今日は欠かせない
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尾花岬へ向かう道
徐々に秘境っぽくなっていく
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日本一危険と言われる太田神社
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自転車で行ける北海道最西端
尾花岬付近(太田トンネル出口)
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この崖沿いに北海道最西端 尾花岬がある
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単調な道を抜けて集落を抜けると少し上り坂も出てきた。岩で作られた複雑な海岸を傾いた太陽が黄昏色に照らす。これがゴール寸前なら、ほっこりするような美しい景色と感じられるのだが、いかんせん残りの距離は長い。今日は走りは絶好調だが、距離が長く距離が読めないのだ。江差で遊びすぎて出発が遅れなければ、かなり良い時間帯に瀬棚まで走り切れているかもしれないし、秘境に入る前に買ったミネラルウォーターの水道水と違う自然な甘みと体に染みいる水の感覚も俺の走る前に打った布石が効いている。
少し高台に上るとちょうど西の海に夕日が見えてきた。あと15km近く残しての夕日眺望というのが何とも残念な感じである。沖に浮かぶ二つの岩の間に差し込む夕日の筋が何ともいえない造形だ。正面は瀬棚の街や山が見えている。なかなかの絶景である。この際割り切って夕日を楽しんで行くことにする。しばらく自転車を駐めて海を眺めていく。気分的にこれでよしとなったところで続きの走りに入っていく。高台を下ると海水浴場がありテントがいくつも張られている。ここでキャンプしても良いような気はするが、明日の走りを考えると距離を稼いでおきたい。北海道の海水浴場ならではの光景でもある。 海沿いから少し内陸に入ってもアップダウンが増すこともなく草原の中を気持ちよく走って行く。とにかく調子は良いので疲労感は感じていない。ペースが落ちることもなくグングン走って行く。巡航速度が久しぶりに30km/hを越えて自分の風切り音も聞こえる。しかし無情にも太陽は徐々に沈んで暗くなっていく。真っ暗になると道に迷ったりするので視界があるうちに国道までは辿り着いておきたい。ようやく国道も近づいて来た頃、目の前をキツネのような動物が横切り俺と同じ方向に走りながら逃げていく。まだ色が分かる時間帯だがグレーの体と白いしっぽだ。一般的なキタキツネの色では無い。しかし犬ではない。何だろう? と首をかしげながら自転車を駐めて写真を撮ろうとしてカメラをウェストバッグから取り出すと草原の茂みへと逃げ込んでしまった。(後で調べると日高の方には突然変異でこんな色になったキタキツネが生息しているようだが、瀬棚付近では情報はない。) |

瀬棚から見る夕日
気持ちは焦るが見事。
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瀬棚の海岸線
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キツネを見送ってしばらく走ると、すっかり真っ暗になった国道へ合流した。安心はしたがまだ4Kmほど走る必要がある。車は少ないので助かるし、左右のダブルで付けたヘッドライトが頼もしい。すっかり真っ暗になった国道をしばらく走ったら瀬棚のセイコーマートに辿り着いた。もう温泉も近い。公園は港の近くか運動公園もあるし、最悪は丘を登ればキャンプ場はある。丘を登る元気はないので公園で済ませたいところだ。買い出しする場所は時間が時間だけあってコンビニしかないようだ。手間をかけずにフライパンで焼くだけのジンギスカンを買っていく。米を炊く手間も省いて最後はジンギスカンの汁にうどんを入れて焼きうどん風にまとめて終わる作戦だ。夕飯の買い出しを終えて安心したところで、コンビニの表で遊んでる子供たちを見守りつつケータイで情報収集して温泉へ向かう。
コンビニの表にいた子供たちも温泉へ向かっていたので表で自転車に鍵をかけていたら追いついてきた。何となく今日は人との出会いが比較的多い1日ではある。温泉で一安心したら運動公園を目指す。何とか人目に付きにくいスペースを見つけた。テントを張る前に夕飯を作る。野球場のスタンドへ上る階段に腰掛けてジンギスカンを焼く。フライパンでジューと音を立てて美味しそうで香ばしい香りが立ち上る。コンビニのジンギスカンだというのにやたら美味しい。それが北海道だ。最後は袋から開けただけのうどんをフライパンに入れて、うどんが汁を吸いつつ火が通れば完成だ。手間のかかる料理も楽しいが、こうも遅い時間と連日のナイトランだと簡単で美味しいところを狙いたいところだ。
飯とビールで満足してテントを張ったところで疲れがどっと出てきた。ベンチの上に寝転がって空を見ていると満天の星空だ。流れ星も6つほど見ることができる。最近、キャンプの夜に余裕がないのも課題で、こういう気付きも珍しいものになってきたのだ。疲れ切った体をテントへ放り込むように入って眠りについた。 |

意外と美味しいセイコーマートのジンギスカン
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そのまま うどんを入れる手軽な〆
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6日目 |
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瀬棚 → 北檜山 → 美利河峠 → 長万部 |
67.76 km |
2015/08/13 |
隠しきれないほどの疲れが朝から襲いかかる。とても長万部の先の静狩峠越えの90kmなんて走れる気がしない。とりあえずテントを片付けて出発だ。まずは瀬棚港へ行きスタンプを押す。奥尻島と瀬棚を結ぶ船は1日1往復しか出てないので静かな港である。ここにもきれいな公園はあった。しかもオーシャンビューだしアメニティもしっかりしている。明るいうちに探さないとダメだ。
もう定番になってきたセイコーマートホットシェフで朝飯を済ませて走って行く。今日も昨日に続いて天気が良い。暑いぐらいだ。真夏の太陽にジリジリと炙られながら自転車を徐々に東へ走らせる。道は徐々に上っていく北海道らしい峠だ。北斗から江差に抜けた中山峠のような厳しさがあるのだろうか。まずは温泉で資金調達する。ATMで旅の資金を手元に得た。これで終了まで持つだろう。着々と完走への準備を整えていくことで安心感を得ていく。ここを過ぎると右には清流を遠くに眺めつつ徐々に上る気持ちよさはある。しかし疲労と暑さではかどらない。 |
途中のコンビニで休憩していく。本格的にバテてきた。お寺の入口とあって墓参りの人が何人も通っていく中で草地の日陰で休憩する。ガラナとカップ氷を買う。キンキンに氷で冷やしながらガラナをのどに流し込む。氷の粒をかじって体温を下げる。たった250円だが暑い北海道にはこれが欠かせない。ようやく気分が復活したが、まだ美利河峠を越えていないのに正午になってしまった。これは長万部の先は絶望的である。あっさりと諦めた。焦りは良い結果を生まないし慎重さを消してしまう。洞爺湖で遊ぶ時間が減るのだが、これは仕方ないだろう。また来れば良いだけのことだ。 ここからも徐々に上る坂が続くが道がよく整備されている。悪く言えば退屈でよく言えば快適だ。このタイプの峠は終わりそうで終わらないという感覚があって俺はあまり好きでは無い。やっぱり急な坂をぐいぐいっと上っていく本州に多い峠の方が好きだ。終わりそうで終わらないしつこい坂を上ってやっとダムの手前まで来た。
ここでちょうど食事処があったので昼食休憩にする。何となくこの先に食べるところが無い予感がしたのだ。1台の車で先客はいた。お座敷席にいくと小さい子供2人連れた家族が食事をしようとしていた。男の子の方が走り回っていて子供たちも俺が気になるのか話しかけてきた。窓から見える木の方を指さしてクワガタ!と言っている。俺の視力では見えてないのか本当にいないのかは不明だ。驚くほどなついてしまって俺も親も困った表情をしつつも子煩悩の俺はまんざらでもない。座りなさいを赤ちゃん言葉で「おっちゃんしなさい」って言うたびに振り向いてしまう俺はおっちゃんだ。料理は出てきた。一品一品 手が込んでいて美味しい。確かに美味しいが今の俺には上品すぎる。もうちょっとガッツリいきたいのだがチビチビと食べながらも味にも全体的な量にも満足する。
店の表には猫の群れがいて子供たちも猫に夢中になっている。ほほえましく見ながら俺も出発の準備をする。親たちは代金を支払っている間、ちょっとした子守状態だ。勝手にどこかに行くでもなく悪いことや危ないことをするでもないので片手間でも十分だ。ここからは少し上ったら下り坂に入るのでサングラスをかけてヘルメットをかぶると、子供たちは「おじさん かっこいい!」と言い始めたので満面の笑みでバイバイをして車を見送り俺も出発する。 |

美利河峠への緩く長い上り坂
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美利河峠 日本料理わたなべのランチ
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デザートのアイスもありがたい
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ダムを越えても少し上って美利河峠を越えた。ここからは気持ちの良い長万部への下り坂が始まる。長万部側の方が短くて急な峠なので下る方としては楽しい。道も広々として舗装もきれいなので走りは良い。26HEで得た低重心なランドナーを操るのを楽しんで味わいながらワインディングを攻めていく。ずっしりと安定してしっかり効くブレーキでコントロールはしやすい。あっという間に海へと下りきってしまう。
海沿いを北上していく。走行距離がもう少しで55,555kmを迎えようとしている。国道5号線なので交通量は多いが道は広いので安心して走って行ける。右に海を見ながら快適な走りが続く。しばらく走るとドライブインが建ち並ぶ道になってきた。バブルの跡という感じでやたら派手で溶け込まない建物が並んでいて見事につぶれて寂れている。廃墟感がすごい。風呂やトイレを度外視すれば野宿もできそうな軒先もある。そして、走行距離が55,555kmに迫った頃、長万部の市街地へと入っていく。徐々に長万部駅への距離を詰めていく。
少し先に見えてきた線路沿いの道でその瞬間を迎えた。サイクルコンピュータの積算距離に5が並んだ。初代ランドナーからの通算走行距離55,555kmだ。走る喜び、旅をする喜び、楽しい走りも苦しい走りも共にして、今は新型ランドナーを開発する喜びまで味わっている。55,555kmというポイントはもちろんゴールでは無い。通過点でありスタートである。距離とともに歴史を積み上げていきたい。そして、今日の目的地を下方修正した長万部駅に辿り着いた。体力的に無理してナイトランすれば目標の豊浦にも行けないこともないが、ここは止まることにする。 |

積算走行距離 55,555km達成
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55555km達成地点
(長万部駅前)
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長万部駅で情報収集をする。もしかして無いかと思ってコインランドリーが無いか聞いてみたら無いようだ。長万部みたいな旅の拠点には作って欲しいところだ。宿はキャンプ場があるようなので決定だ。スーパーは何軒かあるので見に行くとして、温泉も日帰り入浴できる温泉宿が何軒かある。一応、コインランドリーがあるという宿に行くとして買い出しをする。スーパーに行くと、道南の海産物が充実していた。奥尻産のウニが売られていたので、ここはウニ丼するしかないだろう。刺身にする魚も買っていく。温泉宿に行き風呂に入るが洗濯乾燥機は1台しかなく既に2人待ってる状態だ。諦めるしか無い。せっかくの温泉だが日焼け跡が痛くて腕は湯船に入れない。
長万部は旅の拠点だからかサイクリストもライダーも多い。古き良き北海道の旅を思い出すようだ。少し内陸に入ったキャンプ場を目指していく。湯上がりの体に当たる夕方の風が涼しくて心地よい。かなり混んでるキャンプ場で何とかテントを張る場所を見つけた。ちょうど隣のファミリーキャンプが撤収したので炊事場に近い一等地のテーブルと椅子を確保した。サイドバッグを置いて、まずは米を研ぐ。今日はウニ丼なので炊飯に失敗するのは許されない。慎重に準備を進める。米に水を吸わせながら枝豆をゆでる。ここで使いかけのガスを完全に使い果たしたいのだが、タイミング良く枝豆をゆでる途中で使い切った。枝豆でビールを飲みながら、新しいガスで米を完璧な段取りと安定してコントロールされた火力で炊きあげた。失敗する要素がどこにも見当たらない。蒸らしてる間に枝豆と刺身でビールを飲み、最後にウニをご飯の上に散らす。ご飯が見えないような状態まで埋めた。飯ノールックウニ丼 これこそ北海道だ。ほわっととろけるウニの甘みと磯の香りがたまらない。やはり、奥尻島のウニは絶品だ。完璧に炊きあげた飯と完璧な相性を見せている。ようやく北海道で念願のウニ丼を作れるほど余裕のある夕飯となって満足である。
大学のサイクリング部が多いキャンプ場で食器を洗いながら彼らを見ていると1年生の時に1回だけやって部活としての旅を思い出したが、やはり俺には向いてない旅のスタイルだと思うばかりだ。 |

アブラコ(アイナメ)の刺身と
マコガレイの昆布締め
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砂原産の枝豆
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奥尻島産のウニ
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日本海の集大成 うに丼
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7日目 |
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長万部 → 静狩峠 → 豊浦 → 洞爺湖一周 → 洞爺湖温泉 |
95.07 km |
2015/08/14 |
昨日の安息日が効いたのか体の疲れは見えない。テントを片付けてキャンプ場を出ようとするが本来は有料のキャンプ場だが受付をできていないので料金を払っていない。ちゃんと維持して欲しいので管理棟のポストに料金をメモ用紙に包んで入れていく。
今日の朝飯は決まっている。まずは長万部駅前へと向かう。せっかくなので、長万部名物の蟹飯を食べていく。駅弁としても売られているが駅の向かい側に本店がある。そこの軒先にテーブルと椅子があるのでほかの観光客と相席で食べていく。カニの新鮮さというよりは弁当に最適化したほろっとした食感が美味しい。豪華な朝飯がうれしい。コンビニでコーヒーを飲んでストレッチしていると地元の人に話しかけられる。静狩峠はかなりキツいと言っているが、若い時に走ったことはあって印象に残ってないほどのものだ。今だとどうだろうと思うばかりだ。
眠気がようやく覚めた状態で東へと向かっていく。しばらく平らな海沿いを走ると目の前に山道が見えてきた。張り切って上っていく。キツいという感覚は少ないが、このルートは室蘭、登別、苫小牧あたりを目指す一本道で車が多いので走りにくい。車の量にペースを乱されながらも何とか静狩峠を登っていく。立ち小便のついでに振り返ると長万部の方の平原や海岸を見下ろせる。やや霧が出ているせいでくっきりした景色よりは絶景と思える。一本目の峠を越えてもアップダウンは多い。海沿いの道だが海はほとんど見えず山岳路という雰囲気すらある。傾斜は緩いので苦戦することはない。この旅で唯一の雨と言える霧雨が体に当たる。レインウェアを着るほどの天気では無いが湿り気を帯びてくる。
アップダウンがしんどくなってきて下りきったところで休憩する。石に立てかけた自転車を伝って珍客が自転車に乗り込んできた。オスの大きなクワガタだ。北海道を走っていると大きなクワガタを昼間でも見かけることが多い。野生なので動きも速いし、あごに挟まれたら痛さは半端ではなさそうだ。ここで昼飯にしようかとも思ったがスルーしていく。また立ちこめてきた濃い霧の中で坂を上っていく。道の狭さ、車の多さ、自分への発見性の悪さへの不安… ここを走るしんどさはそういう要素から来る。峠を越えて下りつつ海側を見下ろしてみる。この辺りに秘境駅で有名な小幌駅が見下ろせるかと思ったが見えない。もしかして駅に行く道が無いかとも期待したが、やはり国道からのアクセスは発見できない。おそらく豊浦へ向けて最後の1本と思われる峠をまた登っていく。昨日の下方修正前の目的地には未だに辿り着いてないわけで、今になって考えてみたら絶対に無理だ。かなりのアップダウンを越えないと豊浦へは辿り着かないし、途中には宿泊できるところもない。
とにかく緊張感のある峠を越えて豊浦に辿り着く。上り坂の途中にある道の駅へと入っていく。連休中と言うこともあって人でごった返している。何とか弁当のホタテ飯を買って昼飯にする。やや風の強い屋外のデッキだと弁当箱が風に飛ばされそうだ。昼飯も油断できない。それでも甘辛く煮詰めたホタテがたっぷりの飯は美味い。ボクサーの内藤大助の展示を見たらデザートでイチゴのソフトクリームを食べていく。この辺りは夏場にイチゴが旬を迎えるようだ。真夏のイチゴと北海道のミルク味がするソフトクリームはありがたい。
補給を終えて走り出す。道の駅から続く上り坂を越えて下りきったところに分岐がある。長いトンネルを2本抜けると洞爺湖畔に出る道がある。洞爺湖への近道なので行ってみる。苦手な上り坂のトンネルだが道は広いので走りやすい。ふらつきと路面と後続車に気をつけながら緊張の登りが続く。トンネルを1本抜けると高速道路のICがある。息を整えて2本目のトンネルに入るが、こっちは平らである。 |

長万部駅前 かなや本店
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長万部駅弁 かに飯
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静狩峠への上り坂
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静狩峠の珍客
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道の駅 豊浦 いちごソフト
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道の駅 豊浦 内藤大助関連
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道の駅 豊浦 ほたて飯
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トンネルを抜けると湖畔を回る道に突き当たった。時計回りか逆時計回りかで迷うところだが、逆時計回りに行く。左側通行でイン側になるので湖に近い方を走れる。左に湖を見ながら走っていくと、洞爺湖温泉へ出る。まずは洞爺湖ネイチャーセンターを探す。せっかくなので洞爺湖や昭和新山や有珠山の火山活動についての博物館を見ておきたい。ここも室戸岬や島原半島と同じでジオパークに認定されている。大きな建物で有珠山や洞爺湖の火山活動や生態系が見れて、有珠山の噴火被害の大きさを物語る展示も見応えがあった。
すっかり遅くなってしまった。16時というところだが一周44kmの洞爺湖を今から回るか… 今の予定だと1周して8kmほど進んだ場所にあるキャンプ場を目指すことになる。今日もナイトランは確実か。少し気合いを入れて温泉街の店や風呂をリサーチしつつ走り出す。ちょうど右に昭和新山が見えてきたので、写真を撮って進んでいく。今日のキャンプ予定地に着いた。キャンプ場自体も丘の上で買い出しのセイコーマートや風呂は坂の下だ。宿としては却下と言わざるを得ない。湖畔でキャンプしてる人はいっぱい居たので寝床はどうにでもなりそうだ。そんな現実があった中で姪っ子がLINE動画でお土産をおねだりしてきた。ストイックな旅をしているつもりはないが、そういえば店とか探していなかった。登別から苫小牧の道沿いか苫小牧ならあるだろうか。 洞爺湖温泉と国道へのアプローチの間を抜けると、車の数は一気に減った。午前中までの霧とは打って変わって快晴となった空を映す洞爺湖は沖に島が浮かんでいて圧倒的な美しさがある。静かで青く輝く湖面を左に見ながら気持ちよく湖を回っていく。途中で何度か立ち止まって写真を撮ったり眺めたりしながら楽しんで行く。
しかし、徐々に日は傾いてきた。洞爺湖一周を開始した時間からして、こうなるのは目に見えている。だが、ペースは決して悪くは無い。中途半端に半周回ったところで一泊となると明日は洞爺湖半周+洞爺湖から峠へのアプローチ+峠となってしまうので体力と到達できるかが心配になってくる。気楽な湖一周のはずだが緊張感とか義務感はある走りとなるので油断はできない。3分の2ほど回るとキャンプ場や買い出しのポイントもあって泊まれるし、時間はもう18時になろうとしている。セイコーマートとつぶれたスーパーが並んでるところで休憩し、一度仰向けになって腰の疲れを取る。客の出入りも多いし、なんだか柄が悪い。 やはり、もう一頑張りして明日の走行距離を減らすべく走り出す。カーブが多くて狭いし山の陰で薄暗い道だが湖面に近く気持ちよく走って行ける。また徐々に暗くなる焦りもあるが、平地ばかりなので何とかなるだろう。あと10km弱と思われる道を走っていくと、一周を開始した分岐に辿り着いた。無事に走りきった洞爺湖1周に達成感を感じる。あとは温泉街で寝床を探せば今日の段取りは完了だ。広い芝生が湖畔に続いてるので日没後に張って朝早く出て行けば何とかなりそうだ。あまり遠くなりすぎない場所で見つけて、温泉へ行く。やたら大きな温泉ホテルで入浴を済ませる。湖畔では盆踊りをやっているようだが、行ってる余裕はない。温泉街の商店で夕飯の買い出しを済ませる。 |

洞爺湖ビジターセンター
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有珠山の脅威
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昭和新山
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洞爺湖に浮かぶ島を沖に眺める
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湖沿いの道は快走
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快走路がどこまでも続く
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西日に照らされて輝く洞爺湖
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洞爺湖一周の終盤 夕暮れが迫る
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狙いを付けていた公園へ行く。テーブルの上に調理道具を広げて夏野菜を切っていく。今日は夏野菜のトマトパスタにする。…野菜を切ってる途中で人が押し寄せてきた。みんな湖の方を見ている。もしかしてと思ったら、花火が打ち上がるようだ。沖にはライトアップされた遊覧船がいる。船から見てちょうど良いように選んで花火の打ち上げポイントが決まっているようで連続性はない。どーんどどーん と打ち上がると、次の花火まで妙に間が空く。田舎の花火大会だとよくあることで微笑ましい。それでも旅先で見る花火大会は夏をしっかり味わってこなせた気分がして良い。
花火が終わったら料理に戻る。剥いてあるニンニクが臭みを出し始めているので、比較的状態の良い物を選んで刻む。オリーブオイルでしっかり火を入れて香りを出してからズッキーニとナスを入れていく。ソーセージも入れてからフレッシュトマトを入れる。これでしばらく煮込んでソースを作ったらパスタを茹でる。連日のナイトラン、花火大会ですっかり遅くなった夕飯を満喫する。明日は泣いても笑っても勝負日だ。標高930mのオロフレ峠を越えて登別に向かう。登り始めたら登り切るしか無い峠だ。さっっと峠に向かえるように準備をして眠りについた。 |
ライトアップされた遊覧船と打ち上げ花火
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夏野菜のパスタ
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8日目 |
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洞爺湖温泉 → オロフレ峠 → 登別 → 虎杖浜 |
63.18 km |
2015/08/15 |
夜から朝にかけて雨が降ったが、朝の早い時間に目覚めた。防水が効いたのかグランドシートが効いたのか張った場所が良かったのかは不明だが浸水は免れた。まだしばらくはこのテントと付き合っていけるのだろうか。濡れてるテントから水滴を払って片付けていく。朝の7時前に出発する。湖畔の遊歩道から湖を見ると水鳥の群れが泳いで、その向こうには雲がたなびく羊蹄山が見えている。朝の時点で雨が降ると峠の景色なんて絶望的だろうと思っていたが、山頂付近に雲がないような天気なら希望が持てるだろうか。山の形と良い雲をたなびかせる姿は蝦夷富士と呼ばれるほどの山としての格の高さを感じる姿である。
セイコーマートで朝食を食べて湖畔の温泉街を抜けて、湖畔を走り抜けていく。昨日以上のスムーズさとペースで走り抜けて、国道へ行く分岐を曲がる。坂を下った先にもセイコーマートがあったので買い物をしてトイレを借りていく。おそらく峠の途中にはないので思い残すことがないように準備をしていく。峠に行く前に下り坂が続いていく。峠の入口まで長い。ようやく峠の入口に来た時には、そこそこ疲れている状態だ。メーターを見ると既に15kmを走っている。意外と遠かったようだ。
峠に登る前にストレッチをしていく。一気に車がいなくなった峠道を上っていく。泣いても笑っても進むしか無いのだが、調子は決して良くない。いつも通りのへたれぶりを披露しながら坂を上る。今日は天気がイマイチで寒いので体が温まらない代わりに水は消費しない。途中で唯一の給水ポイントと思われるキャンプ場に立ち寄って休憩していく。冬場だとスキー場のようでロッジは合宿所になっている。女子大生だらけの合宿所の前で休憩して缶コーヒーで眠気を覚ましていく。 かなり厳しい傾斜だがインナーのローギアをしっかり使って、じっくり上っていくしかない。最悪は日没までに登り切れればカルルス温泉か登別温泉に下るだけだ。シンプルに上って下るだけの峠なら朝から走っているので時間の心配は無いだろう… と気楽にいくしかない。朝から峠に臨めるようにコースを組むのも登り切るためのノウハウの一つでもある。坂を上れば上るほど展望は開けてきた。振り返ると洞爺湖の方まで見渡せる。決してクッキリした景色では無く霧の中でうっすらした眺めである。それでも明け方に雨が降っていたことを考えると上出来だ。写真を撮ったりして楽しみながら上っていくと、谷を渡りながらワインディングになる橋の上に出る。この橋からの眺めが豪快ですばらしい。この先の絶景が本当に楽しみである。 |

洞爺湖温泉を出発
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水鳥が泳ぐ洞爺湖と羊蹄山
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オロフレ峠の上り坂
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しかし、絶景を見下ろすのはこれが最後かと思うほど上れば上るほど霧がどんどん濃くなってきた。しまいには目の前の視界すらなくなった。100m先が見えるかどうかというところまで濃くなってきた。そしてオロフレ峠で山頂以外では最大のビューポイントである展望台に着いた。見事に何も見えない。ちょうど居合わせた初代ロードスターも残念そうに駐車場を後にした。展望台からしばらく上ったところで林道への分岐に着いた。ここで昼飯にする。誰も来ない閉鎖された林道なので危険もない。昼飯を食べられる店などは無いので手持ちのランチパックをほおばる。ピーナツクリームの甘さで栄養をチャージしたら、また上っていく。ここからは傾斜がどんどん急になってくる。そして霧も深くなってくる。雲仙の仁田峠以上に足がやられた感覚でヘトヘトになりながら自転車を走らせていく。地図上も道にもランドマークや目印がないのでないので進捗はわかりにくい。
真っ直ぐな急登と急カーブがどこまでも続く。北海道では数少ない峠をグイグイ上っていく。上り坂が苦手だが好きな俺には登り甲斐のある道である。ヘトヘトになりながら坂を楽しんで戦っていく。ようやく傾斜が一段落して霧が少し薄くなってきたところで、道道から峠の展望台へ曲がる分岐に辿り着いた。もう着いたようなものだと一安心する。するとすれ違いの軽トラのおじさんに話しかけられる。「朝、下の方で見かけたよ!」と言われて「1日かかっちゃいました」と苦笑いするしかない。
峠へ向かう分岐を曲がると霧が徐々に濃くなってきた。どう考えても上り坂のはずなのだが足取りは軽い。下ってるかと錯覚するほどペースは良い。ギアもフロントはインナーからセンターに切り替わった。傾斜の感覚すら目では分からなくなるほどの霧になってきた。ラストスパートに近い走りで進んでいくと道が広い駐車場に出た。駐車場の外側をぐるっと回ると右にオロフレ峠と書いた看板がやっと見えた。一応は展望台だが下界の眺めは全くない。一応は峠を越えたということで大喜びしたいところだが、峠を表す看板も景色もないので感動が半減してしまう。体力的な面でいうと、本当に登り切れて良かった。これだけ厳しい930mの峠を越えると自信も付く。
峠のベンチで休憩していると、何台か車が来るが景色が全くないので引き返していく。俺もすごすごと峠を後にする。緩やかな道を道道に向かって下っていく。峠から離れると少しずつ霧が晴れてくる。道道から下界を見下ろすと、わずかに洞爺湖が見えている。今日の天気だとこの眺めが限界だろうか。この頃、峠での天気運には恵まれていないのは残念なところだ。 下り坂に入るのでメットをかぶり、ブレーキをチェックする。上ってきた道を上回るような厳しい傾斜と鋭く曲がるカーブが続く。自転車をコントロールする上半身が疲れるほどである。26HEで低重心化したランドナーは高い次元で下り坂を進んでいける。標高が下がれば下がるほど霧が晴れて路面も乾いてくる。そうなると調子は上がる。今回の旅で唯一とも言えるようなアドレナリンがわき出すような気持ち良い下り坂を満喫する。 |

少しずつ下界の眺めが開けたが
天気はイマイチ
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カーブする橋の上から見下ろす眺め
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道道でのピーク 霧が立ちこめる
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標高930m オロフレ峠
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今日の宿の第一候補であるカルルス温泉に辿り着く。一度、駐車場に自転車を置いて情報収集だ。とにかく坂の途中にある温泉だし、温泉街も急な坂を下った先なので余計な動きは自転車ではしたくない。目を付けていた公園は閉鎖されて荒れ放題だ。ほかに公園は無い。温泉は確実にあるが宿が確実では無いのでカルルス温泉はスルーしていく。
一度、登り返したら再び鋭い下り坂が始まる。ウィンドブレーカーを着ていても寒いほどの下り坂を耐えていく。登別温泉が近づいても傾斜は緩むこと無く容赦ない下り坂が続く。もしかしたら泊まれるかもしれない温泉街を抜けていくが、野宿する場所はどこにもない。宿はどこも満室なので通り抜けていくしか無い。真っ直ぐな坂の向こうに牧場の草原と丘が見渡せる気持ちの良い下り坂を真っ直ぐと走り抜け、登別温泉への分岐を通り過ぎて進んでいく。もう下りきった登別駅前かその先の虎杖浜を目指すしか無い。
下りきる途中にある わかさいもに立ち寄っていく。建物がやたら立派で北海道出身の小日向文世がCMにも出ていて気になる味ではある。昼飯はランチパックしか食べてないので、おやつは助かる。ここで疲れを取ってもう一頑張りだ。登別駅前に下って寝床を探すとありそうだが、風呂は虎杖浜温泉まで行かないとなさそうだ。ケータイで探すと風呂の近くに公園はありそうだ。今日はガスの残りを使い果たす必要もあるので自炊は必須である。国道沿いのスーパーで夕飯の食材を買う。ガスを積極的に使うメニューということで焼肉にする。最後はお湯を沸かしてフライパンをお湯で洗えばガスは使い果たせるという狙いだ。魚介でも良かったのだがガスの使用量をコントロールしづらいので諦めることにした。 薄暗くなってきた国道を苫小牧方面へ向かって行く。4車線と広々した道で緩い坂を越えて下ると虎杖浜温泉が見えてきた。道沿いに日帰り入浴の温泉がいくつかある。全体的にジャンクな雰囲気がある。一つ目を付けた温泉があり営業時間をチェックする。大丈夫そうなので公園を探すと、途中で盆踊りが見えた。寝床予定地が盆踊りの会場だと必然的に終わるまではテントも夕飯もNGだ。恐る恐る確認したら違うようで、近くにすぐに見つかった。 |

まっすぐな下り坂
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登別温泉をスルー
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わかさいも
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まずは温泉だ。入浴を済ませたら盆踊りを見に行く。虎杖浜越後踊りと書いてあるのだが、なぜ越後なんだろう。地元の小さな盆踊りなので乱入はしづらいので少し見たら公園へ向かう。テントを張る前にフライパンで焼肉を焼き始める。最大の山場を完走した喜びをビールでのどに流し込む。おそらく明日にはパンパンの筋肉痛になる足のためにラム肉のタンパク質を補給する。ラム肉のたれとよく合って美味しい。北海道の定番焼肉を存分に満喫する。すべての肉を焼き終えてもガスは少し余る。フライパンに水を張って強火でわかす。良いタイミングでガスストーブからプスッと音がして火が消えた。缶切りで穴を空けておく。お湯でフライパンを洗えたので油も落ちて効率的だ。
明日は苫小牧まで平地を40km走るだけの比較的楽な最終日だ。油断はしないが、のんびりした走りを楽しめるだろう。今日の疲れを癒やすように眠りについた。 |

虎杖浜 越後踊り
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ラム肉の焼肉
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9日目 |
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虎杖浜 → 白老 → 苫小牧 |
45.22 km |
2015/08/16 |
さすがに昨日の疲れは隠せない朝を迎えた。足は筋肉痛でずっしり重い。思えば95km走行と峠の2連発なのでハードな日程が続いた。そんな中で今日を安息日にする戦略は絶妙である。霧でテントも濡れてるし最終日の撤収は濡れたままでやるのは嫌なので晴れて日が当たるまでのんびりする。のんびり具合も度が過ぎるとトイレに行きたくなってきた。テントを張ったままコンビニへ自転車で行く。コンビニの隣は海産物の産直がある。姪っ子のおねだりに答えるにはここしかない。コンビニで朝食を買ってテントに戻る。
テントの前で朝食を食べて、やっと荷物を片付ける。フライシートを公園の遊具で干してテントをひっくり返してボトムの水を乾かす。そうしてる間にダラダラと荷物を片付けて自転車にパッキングしていく。日が出てきてテントが乾いたらテントを片付ける。11時頃になってやっと撤収が完了した。産直でイクラや鮭や大きなホッケや白老牛のハンバーグを選んで弟のところに送る。レジで見た金額に驚いたが、まあ良いだろう。これが終わると、もう正午になろうとしている。何というだらけた出発だろう。本気で走れば2時間強ぐらいで辿り着けそうなので問題はないのだが微妙だ。
すっきりした天気の中を苫小牧に向けて走り出す。まず第1目的地は白老のポロトコタンだ。アイヌ文化の展示は何度見ても好きなのだ。疲れがあった朝だが自転車で走っていると吹き飛んで勢いを取り戻した。海岸4車線は風も追い風だし追い越してくる車からも風をもらえる。対向車線側に産直とレストランがあって屋根に大きなヒグマの像が乗っている。走りながらカメラを取り出して写真を撮る。この豪快さが北海道らしい。 走りは快適で13時には白老駅に到着した。昼飯にしたいところで、白老というと最近は白老牛を使ったハンバーガーがご当地グルメになっているようだ。せっかくなので肉屋さんのハンバーガーが美味しそうなので牛の里という店に目を付けた。ポロトコタンのアイヌ古式舞踊の前に昼飯を済ませられそうなので、まずは牛の里だ。駅から5分ほど走ると到着した。牛の里は観光客でまあまあ混んでいた。精肉店と焼肉屋が一体になった店で白老牛バーガーにも参加している店だ。ここで気が変わった。焼肉屋に突撃だ。肉の赤身の旨みと脂の甘さと軽さがある美味しい肉だ。塩コショウだけでレアに焼き上げて楽しむ。すっかり満足して店を後にする。 |

虎杖浜の産地直売
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海産物や白老牛が充実
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爆買い
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巨大なヒグマ
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白老牛の精肉店・焼肉店・バーガー屋
牛の里
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白老牛 最上級のステーキ
大満足の味わい
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白老ポロトコタンに入って、まずは古式舞踊を見に行く。前回 来た時は行き急いでいたので古式舞踊は見ないで園内を歩いて終わった。声の出し方は阿寒湖のアイヌコタン古式舞踊と似ているが動きは地域ごとに違いがありそうだ。こっちはアイヌの古民家内のステージで踊るので雰囲気は阿寒湖のものより良い。園内や博物館までしっかり見て行く。博物館はアイヌ民族の出生から葬儀までの一生を展示してあって興味深い。ゴールまでおそらく最後の寄り道と思われるポロトコタンを満喫していく。 白老を出たらラストスパートとも言える走りが始まる。道路は相変わらずの4車線で右には海を見ながらの晴れた空の下で快走する。だんだん水産加工の工場が増えて家や店も増えてきて苫小牧の市街地に近づいてきた。車が多くなってきたので慎重に行く。ストップ&Goが増えてきて進まなくなってきたが日没に追い込まれることも無く苫小牧駅へと近づいていく。裏口かと思うほど活気が見られないところだが苫小牧駅へと到着した。今年も完走を果たした。20周年記念となった今回の旅は、いつも通りだと思えるほどのベテランぶりと旅の楽しみは新しく味わえた。
駅の観光案内所で情報収集してからホテルへ向かう。ホテル内の温泉で疲れを落とした。ここで衣類はすべて使い果たした。汚れ物のまま発送してもダメではないが、コインランドリーへ行く。ついでに臭くなってるサンダルも靴用ランドリーで洗う。サンダルが洗い終わるまでは裸足でベンチに座って日記を書く。今回は遅れ日数もさほどなく順調だ。すべての洗濯物の乾燥まで終わると、続きの走りがあるわけでもないのにリフレッシュした気分だ。自転車をホテルの駐輪場に置いて、飲みに出かける。居酒屋2軒目で店内に入れたが明日から平日ということで空いている。カウンターに座って苫小牧の魚介類と酒で旅の最後を締めくくった。
余力は十分残したままホテルに戻り、残りの日記を書いて眠りについた。 |

コタンコルクルの像が迎えてくれる
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アイヌの古式舞踊
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今年も完走 苫小牧駅前
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20年目の旅 完走を祝し乾杯
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八角とホッキ貝の刺身
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ホッキ貝とアスパラの天ぷら
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10日目 |
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苫小牧 → 千歳 → 新千歳空港 |
44.65 km |
2015/08/17 |
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新千歳 -ANA→ 羽田 |
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東京国際空港第2ターミナル -京急→ 品川 -京浜東北線→ 大宮 |
順調に終盤を迎えた旅は今日で最終日だ。ホテルを出て港の市場へ向かう。買う物は無いのだが見ておきたい。市場は意外と広くて鮮魚店も食事処も充実している。魚介系と野菜系で場所は分かれている。見て歩くだけでも楽しい。朝飯にホッキ焼きそばを食べる。ペペロンチーノ風にした焼きそばにホッキを焼いた身がのっている。ペペロンチーノのニンニクや唐辛子とホッキの甘みと磯の香りが合う。付け合わせのカレーソースをかけると、さらに香りが引き立ってこれもホッキの身とよく合う。ホッキ貝の奥深さを感じる。
敷地内に ほっき貝資料館というのもあるので見ていく。手作り感があるゆるい資料館だ。取り方や生態のほかにホッキ貝を使ったオモチャで子供が遊ぶようになっている。たまたま居合わせた親子の子供が貝合わせを楽しんでいた。貝の外形では無く内側を見て合わせるのがプロっぽくておもしろい。キャンピングカーで釧路から来たそうで俺とは波長が合いそうな親子だ。 市場を一通り楽しんだらフェリーターミナルの近くにあるヤマト運輸の営業所へ行き荷物を発送する。今まで知っていたヤマトの最大サイズより大きい段ボールがあったので4個買ってみたら1個余るほどの容量だ。箱が大きいので荷物は余裕で収まった。3箱を送りきって軽くなった自転車に乗ろうとしていたらライトのポジションに興味を持った営業マンが居たので話し込んだ。正直、このライトのマウントは強度がイマイチだ。 |

市場の食堂でホッキやきそば
ペペロンチーノ風の塩焼きそばから
カレーソースで味を変える
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市場の隅にあるホッキ貝資料館
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とにかく雰囲気がユルいホッキ貝資料館
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意外と熱中する貝合わせ
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せっかくなのでフェリーターミナルにも立ち寄ってみる。バイクや車で旅する人だと苫小牧のフェリーターミナルは北海道の玄関口にもなっている場所だが、俺は初めて訪れる。さすがに大きく立派で、ちょうど太平洋フェリーが2隻入港していた。大型のフェリーが2隻並んでいる姿は壮観だ。それを眺めながら、昼飯にする。展望レストランで 今回は諦めかけていたホッキカレーを食べる。シーフードカレーよりもホッキの香りが立って本当に美味しい。ホッキ貝の出汁や身はカレーやペペロンチーノなど味や香りの強い物と組み合わせても負けないものだ。昼飯を終えたらフェリーターミナルの展示室を見ていく。港の運営や作りなど興味深い。
フェリーターミナルを出たら、いよいよ新千歳空港に向けて走り出すが、飛行機は遅い時間にしたので寄り道は十分できるのだ。フル装備の大学生にちぎられる無装備の俺という年の差と失態を見せつつ走ると道の駅ウトナイ湖に着いた。上から見ると北海道の形をしているのだが高いところから見下ろせる展望台がない。市街地の近くにある湖なのに広々として白鳥がゆったりと泳いでいる。周辺の森も自然が豊かだ。ネイチャーセンターなどに立ち寄るも今日はすべて休館している。
次は千歳市を目指す。徐々に新千歳空港に近づいてるからか上を飛んでいる飛行機の高さが低くなってくる。苫小牧〜新千歳空港〜札幌を結ぶ道は広々と整備されていて自転車でもスピードは乗ってくる。新千歳空港への分岐を通り過ぎたいところだが、交差点がすべて立体交差なので自転車だとスルーもしづらい。何とか通り過ぎて千歳の市街地を通り、道の駅に到着した。 ここ最近の旅ではまっている水族館に立ち寄りたかったのだ。遡上してくる鮭を含めた千歳川の自然を展示していある。ここも地方色が強く、北海道の淡水魚を中心に飼育している。きれいだし規模が大きくて見応えがある。なんだかんだと忙しい最終日で少し疲れてきたので道の駅で休憩する。体の疲れが取れたら、もう帰るだけだ。新千歳空港に向けて走りだそう。もう今回の旅で思い残すことは無い。 |

苫小牧港 フェリーターミナル
長距離フェリーが2隻入ってきた
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ホッキカレー
意外とカレーとも合う。
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ウトナイ湖
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鮭メインの千歳水族館
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鮭が泳ぐ迫力の水槽
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支笏湖の湖底を再現
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千歳川を直接見れる
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さっき来た道を新千歳空港へ向けて戻っていく。立体交差を渡りづらいので、心を鬼にして4車線で中央分離帯付きの幹線道路を横断していく。今までさんざん来てるのに輪行でしか来てないが新千歳空港は自走で行くところでは無いな… と心から思うばかりだ。空港周辺まで来れば歩道が広いので淡々と走って行く。
新千歳空港の前に来たら輪行袋を広げてさっさと自転車を仕舞っていく。さばさばした気持ちで淡々と仕事をこなしていく。今日もきれいに収まり輪行は順調に進んでいく。1つだけ困りごとがあるとしたら虫除けスプレーだ。これが手荷物も持ち込みもダメなのかが気になる。まあ没収するならすれば良いのだが、チェックで文句言われるのが面倒だ。圧力が規定値以下だからか分からないが虫除けスプレーは無事に通過できた。自転車とフロントバッグを合計19kgで預けて身軽になった状態で土産を買いに行く。新千歳空港の土産売り場はかなり充実している。北海道の地方空港から飛行機に乗るぐらいなら電車で来てから新千歳から乗った方が良いと思うほどの差がある。
空港内の寿司屋で夕飯にする。明日が健康診断なので禁酒なのだ。そしてこの食事を最後に基本は飲食禁止だ。思い残すことは無く搭乗口へと向かう。もう5年も北海道が続いたので来年は東北か信州あたりに舞台を移してみよう… はたまた日高山脈とかマニアックなところを探索するか… 帰り際だというのに次の旅のことを考えるほど前向きな終わり方である。飛行機を待ち飛行機に乗ってる間に日記を書き進める。残り1日というところまで追い込んだので何とか書き切れそうだ。
しかし、到着便がずるずると遅れていつまで経っても飛ばない。遅れて乗り込んで飛び立った。そして遅れて羽田に到着した。夏の終わりとは言え蒸し暑い羽田空港と遅れに少し苛立ちが隠せない。調べると高速バスの最終も行ったし、新幹線はおろか鈍行の最終すら間に合わない時間帯となった。乗り捨てできるレンタカーとかいろんな手段を探ったがそんなに都合の良い物はないようだ。大宮辺りで宿泊して会社に行くしかない。ケータイから予約して何とか宿は確保した。 |
京急に乗って品川へ向かう。品川で京浜東北線に乗り換える。席も確保して座って順調に大宮へ行くものと思っていたら、線路内人立ち入りとかで止まってしまった。川口駅から動けないまま時間だけが過ぎていく。もう眠い。体力も限界だ。空腹も限界だ。夜の1時になっても大宮に到着しない。痴漢の隠語という説もあるし、本当に線路に入ってるという説もあるが迷惑な話だ。2時半になってやっと大宮駅に到着した。気持ちは分からんでもないが駅員にぶち切れてる客がいる。自転車以外の荷物をコインロッカーに入れて輪行袋をぶら下げてホテルまで歩く。これも遠い。3時前になってやっと到着した。
6時頃に起きて始発で宇都宮へ行って自宅へ帰ってシャワーを浴びて髭を剃って車で会社に向かって健康診断の10時までには行かないといけない。タイトな日程である。逆算すると2時間ほどしか寝れない。夜7時に夕飯を食べて以来 飲食は明日の健康診断まで禁止。空腹も地獄だ。もう、倒れそうだ。 |

まさかの大宮止まりで、もう1泊
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11日目 |
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大宮 -東北新幹線→ 宇都宮 |
2015/08/18 |
さすがに5時半には起きれないが6時に目覚めた。そのままホテルを後にした。眠った気は全くしない。蒸し暑い朝の大宮の街を歩いて駅へ向かう。俺以外は通勤するビジネスマンだ。こう見えて俺も通勤している最中のビジネスマンだが服装や風貌は遊んでる人のままである。ようやく新幹線に乗り込みツーリングと通勤を兼ねた状態の輪行で宇都宮へ向かう。やっと宇都宮に戻れるという安心の方が大きい。 |
新幹線はあっという間に宇都宮へ辿り着いた。宇都宮駅のホームは大宮や東京から新幹線通勤している人でごった返している。できれば知り合いには会いたくないシチュエーションである。そそくさとホームから改札を出てタクシー乗り場へ向かう。組み立てて走ってる暇はない。家の前の路地は朝の通勤時間帯は実質 一方通行なので大回りしてもらって自宅に辿り着く。輪行袋はとりあえず車のリアシート下に置く。チップアップして広くなるVEZELのパッケージングだと積み込みは楽でさくっと入る。やっと自宅の鍵を開けて帰り着くと朝の8時だ。シャワー浴びて髭を剃って会社に行けばギリギリで健康診断に間に合いそうだ。バリウムを飲んでゲップを我慢させられたまま逆さづりにされて下剤を飲まされることを考えると憂鬱だ。さらに明日は鈴鹿へ出張だ。
史上最大級に刺激的な旅の終わりを迎えて、達成感とか何とかより完全に現実に引き戻されたまま帰ってきた印象である。 |

大宮駅を出発
通勤とツーリングを兼ねてる状態
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