0日目 |
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宇都宮 −東北新幹線→ 東京 −山手線→ 品川 −京急→ 大鳥居 |
2018/04/25 |
仕事の大きな〆とともにGWを迎えることとなった。今回は前々から温めていたプランを実行に移す旅であるが、離島を渡り歩くコースなのでスケジュールの守り切りが何より重要になってくる。荷物をまとめて1泊目のホテルへ送っておく段取りも完璧に済ませて、今回は九州に向けての新幹線を見越した早朝移動ではない。前日のうちに羽田空港近くに宿を抑えている。
仕事を終えて自宅へ戻り、悠々と洗濯と戸締りを済ませて出かけていく。宇都宮駅で自転車をばらしてモバイルSuicaで新幹線へと乗り込んでいく。早めに取ったGWなので、まだ客に浮ついた雰囲気はなくビジネスライクな空気が流れている。ただし、俺を除く。慣れた段取りで東京駅へ降り立ち、山手線で品川へ行く。通勤客も一段落したような混み具合で比較的快適に歩を進めていく。品川からの京急も京急蒲田までは混んでいるが、羽田へ向かうにつれて徐々に空いていく。大鳥居駅に降りて、これも慣れた動きで駅前の東横インへチェックインする。シャワーを浴びて目覚まし時計をセットして眠りにつく。朝は早い起床が必要だが、何とかなるだろう。 |
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0日目 |
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大鳥居 → 羽田空港 第二ターミナル |
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羽田 -ANA→ 福岡 |
2018/04/26 |
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福岡空港-地下鉄→博多-鹿児島本線・長崎本線 特急みどり→有田
-松浦鉄道→ 伊万里 |
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伊万里市内 |
12.40 km |
寝坊することもなくきっちり朝は起きてホテルが出してくれる無料のシャトルバスで空港へ行く。バスの中で見えるテレビではTOKIOの問題が常に流れている状態である。羽田空港に着いたら、さっさと自転車を預けて搭乗口へ向かう。とにかく飛行機を待つ時間でも睡眠時間を稼いでおきたいところである。
福岡行きの飛行機でもとにかく睡眠時間を稼ぐ作戦に出る。機内サービスも受けずリクライニングも倒さず眠ることに集中する。だいぶ取り返した睡眠時間でスッキリして福岡に到着する。福岡は故郷ではあるが完全にスルーしていく。まずは地下鉄に乗って博多駅を目指す。移動しながら電車を調べる。ルートは2つある。地下鉄の延長でJR唐津線に乗って唐津まで行って玄界灘沿いのJR筑肥線で伊万里を目指すパターンと、博多から長崎本線の特急に乗って有田まで行って松浦鉄道で伊万里を目指すパターンがある。ちょうど時間的には特急との接続がよさそうなので、有田経由が早そうだ。
博多に着く前に判断したので、博多で地下鉄を降りて特急券を買う。ホームに駆け上がって、佐世保行きの特急みどりを待つ間にホームにあるラーメン屋でラーメンを食べていく。今回の旅では博多には4回来る予定だが、いずれも忙しくなって時間がない予感はしている。今回の乗り換えも忙しいがラーメンはきっちり満喫していく。
特急みどりに乗り込んだら、あまり油断はできず景色を見ながら有田を目指していく。懐かしい景色を窓の外に見ながら進んでいき、有田へ到着する。こうして景色を見ていると有明海沿いの佐賀県や嬉野温泉なんかもコースとしては魅力的である。いつかプランに入れてコースを組みたいところだ。GWの有田といえば陶器市で活気に溢れるのだが、その直前とあって静かなものである。平日の真昼間とあって人影もまばらな松浦鉄道へ乗り換えて伊万里へ向かう。里山の風景を見ながらのんびりした雰囲気で進んでいく松浦鉄道を満喫するも距離は近いので、すぐに伊万里へと到着した。 駅前に降り立って自転車を組み立てる。予約したホテルも場所が把握できてるので気楽なものである。慣れた手つきで自転車を組み立てたら、荷物や防寒着をコインロッカーに入れていく。インターネットで探した伊万里牛ハンバーグが楽しめる店へ直行する。何軒か候補がありそうだが、時間が遅くランチタイムが終わっているところもある。店を見つけて自転車を置いて遅い昼ご飯を楽しむ。かなりオシャレな盛り付けに、肉のうまみが全開のハンバーグを満喫する。 |

特急みどり
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松浦鉄道
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風の丘 店の雰囲気
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前菜からおしゃれ
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メインディッシュのハンバーグ
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デザートまでおしゃれに
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ここからは少し気を引き締めて走ることにする。今回もせっかくなので窯元巡りをしてみたい。伊万里駅から大川内山へと向かう。荷物は空っぽとは言え、地名に山と付いてるだけあって気合を入れる。田園風景を見ながら徐々に坂を上っていく。気合を入れるほどでもない坂道が続く。向こうに見える山の形は独特だが、その山を登る手前で駐車場がある。ここからは、ものすごい急な坂が始まるが自転車で登る必要はなさそうだ。
駐車場に自転車を置いて、大川内山の窯元の街を歩き始める。シューズの底が減ってきたからか、クリートがコンクリートやアスファルトに当たってカチカチ鳴る事象が目立ち始めてきた。よくよく見てるとつま先の靴底がはがれ始めている。2010年から使って8年なので、さすがに寿命だろう。今回は気に入ったものがあれば買おうというぐらいのところで、買うために来たというわけでもない。伊万里は基本的に磁器なので色や形などデザイン自由度も高く選び方にも困ってしまうところがある。クラシックなものもあれば、モダンなものもある。作品の幅が広いと選びづらくなってくるものだ。
決め手に欠けるまま窯元の通りを登り切ってしまった。登り切ってからは窯元の街を通って戻るか、公園を戻るかになるが、窯元を戻る方が楽しそうではある。頂上にあたるギャラリーと喫茶店で休憩していく。伊万里の器を使ったコーヒーを飲んでいく。この時点で一定の満足感を得てしまったので、特に何も買うことなく下っていく。
大河内山の公園でしばらく休んだら市街地へと戻っていく。そんなに激しく上ったわけではないが、気持ちよく下っていける。前に野宿した公園などを懐かしく振り返りつつ駅前へと戻ってきた。ホテルの場所が確認できたところで、駅のアンテナショップで買い出しをする。なんとも惹かれる米を見つけた。伊万里の里山で作った米で、JALのファーストクラスの機内食に使われている。ご当地のカレーや塩なども買い込んで、次にスーパーへ行く。調味料などを買って必要な買い物が一通り終わった。 買い物を終えて、ホテルにチェックインしに行く。段ボール3箱を部屋に上げて開梱する。ここも慣れた手つきでこなしていく。サイドバッグ、ザック、フロントバッグに荷物を分配し終えたところで、シャワーを浴びる。
この時点で夜の9時。やや疲れもあるので、ホテルのすぐ近くの居酒屋で夕飯にする。このあたりの魚や野菜や伊万里牛を満喫できる。伊万里の海と山の恵みで英気を養って明日からの旅に備える。 |

大川内山
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窯元の街
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伊万里焼カップでコーヒー
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巨大な鹿威し
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伊万里牛 レモンステーキ |
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1日目 |
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伊万里 → 波戸岬 → 呼子 → 唐津 |
78.15 km |
2018/04/27 |
朝は早めに目覚めて、荷物を自転車のところに運んでいく。ネジの組み合わせを工夫して取り付けやすくなったリアキャリアをさくっと付けてサイドのキャリアもテンポよく付けていく。そこに荷物を積み終えて、出発が遅くなりがちな初日にして9時前には準備が終わった。ホテルの朝食を食べて、段ボールをフロントに渡して出発する。意外とフロントとしては段ボールは重宝しているとのことだった。
全くできてない体に苦しみつつ、伊万里を出発し町から半島の海沿いの道へと入っていく。玄界灘に面しているが、入り組んだ地形なので波は無いに等しいぐらいに穏やかだ。造船所なども作られているやや工業的な地形を見ながらの走りは、海無し県の自分には非日常だが、やや物足りない。
しかし、造船所を過ぎて島に面し始めると、道は一気に険しさを増してきた。リアス式の地形で海沿いなので地図で見るだけでもアップダウンの多さは予想できるところだが、その予想を全く裏切らない道が始まる。その丘を登っていくと下界には棚田や海とその向こうのいろは島が見下ろせる。田植えが始まろうとしている里山は春の旅らしく気持ちが良いものだ。
やや暑いぐらいの日差しを浴びながら半島を北上していき、アップダウンもいくつかこなしていくと地図上でショートカットできる裏道を見つけた。アップダウンを1個節約して下りにまとめられそうな普段なら信用しない美味しい話である。道は川沿いに下るように見えるので行ってみると、思ったほど路面も悪くなく川沿いに快適に下り、30分ぐらいかかると見ていたルートを10分で下った。
一度 海沿いに出ると平坦な道を進み、温泉施設で昼飯にする。せっかくなので魚三昧である。魚の煮付けと刺身が美味しい。海を見ながら豪華な昼飯を満喫したら、疲れがどっと出てくる。だが、まだまだ先は長く気は抜けない。 |

伊万里のホテルを出発
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ビワ畑越しにリアス式海岸を見下ろす
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代掻きを終えた田んぼを見守る木
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棚田を見下ろす景色
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海と島々を眺める
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海鮮の昼ご飯
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産直で買い物をして走り出す。だんだんアップダウンによる疲労がたまってきた感はあるが、昼飯後の方が坂道は厳しい印象でもある。坂を上り詰める手前で休憩していく。あまりに暑いので自家製のアイスで体を冷ましていく。ここで売っている幸運のオブジェを薦められたが、なんだか怪しいというか、結局は気の持ちようなのでスルーしていく。
坂を上り詰めたところにある展望台から浜野浦の棚田を見下ろす。海の方まで段々が続いていて自然と融合した造形美は感動する。季節による違いなども楽しめるものだろうと思うと期待が高まる部分もある。ちょうど西の海に面しているので、夕日の時間になると棚田と海と夕日が撮れるからかカメラマンが押しかけている。
日が暮れるまで見て行ったら、この後の行動プランが大変なことになるので出発する。浜野浦から坂を下ると、波戸岬へ向かう手前の道の駅で情報収集と買い出しと休憩をしていく。道の駅は立派だが買い出しに値するものはなく、休憩だけしたらスルーしていく。 岬までは片道6km程度と近いので気楽に走り出す。名護屋城跡を見つつ寄り道はせず岬へと向かう。日が暮れる前には行って戻ってきたいので少し焦りもある。アップダウンは伊万里から浜野浦までの道ほどではないが、向かい風が強くなってきた。ちょっとしたリゾートになっているのか広々と整備された道と浮ついた雰囲気になってきた。最後に岬へとぐっと下って17時半には岬の駐車場にたどり着く。 |

暑い初日をすっきり冷やすアイス
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圧巻 浜野浦の棚田
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駐車場に自転車を置いて岬の先端へ向けて歩いて行く。広々とした芝生が広がる平坦な岬で周りの海も静かなものである。岬から斜めに突き出た地形にモニュメントがおいてある。「本土最北西端
波戸岬」とのことで、離島を除いた本土で最も北西の端に立ったことになる。これまで本土の四隅は自転車で走り抜いたのだが、新たな足跡をここに残したことになる。過去には本州最北西端
川尻岬も制している。残すは日本最北西端のみである。これは今回の旅で対馬へ行って制覇する予定である。本土十六極制覇も目前に控えた今だからこそ、斜めの端もしっかり制しておきたいところである。自転車の旅で重視している「端っこ」の歴史はいよいよ大詰めになってきた。日本の隅々まで自分の足で旅をしているという喜びを感じる一場面であることは間違いない。
またさらに歩くと灯台や神社が見えてくる。海の神様に今回の旅の無事を祈って、自転車へと戻る。すると、カヌーで釣りをしてきたおじさんと話が盛り上がってしまう。そのまま波戸岬から夕日を見て、出発する。すっかり遅くなってしまった。あとは呼子まで8kmほど走って風呂に入って海沿いの公園あたりでテントを張るだけなので、日が暮れて少しナイトランになっても大きな問題でも無い。 依然としてアップダウンが多い道を走り、頼れる2個のライトで前を照らして走ると呼子に着いた。しかし、朝市で有名な街だけあって夜の活気は全くない。店は一軒も開いてない。やや複雑な地形で風呂への道を迷う。そこでの時間ロスが致命的で入館時間を過ぎてしまった。呼子での風呂の見通しがなくなった。体力的にもきついが精神的にも心が折れたような状況である。 |

本土最北西端 波戸岬
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マイナーだが本土の端っこ
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波戸岬 灯台
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波戸岬からの夕日
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唯一開いていたスーパーの前でスマホを見ながら行動を考える。元々の計画では呼子で一泊して、明日の朝は20kmほど走って唐津港まで行ってフェリーで壱岐に渡る予定だ。風呂にも入れない、店も開いてないので美味しい物もない、自炊できる保証が無いから自炊前提で買い物できない。もはや呼子に泊まる価値がないことに気づく。ネットで調べると、呼子から唐津までは100m程度の峠が1本あるのみで比較的平坦ということが分かった。今すでに20時半だが、行ってしまおう そういう強いメッセージが頭をよぎった。そう決まったらスーパーの総菜で夕飯を済ませる。その間にスマホで唐津市内のホテルを予約する。
20時45分という時間帯だが、呼子を出発して唐津を目指す。頼れるダブルライトで前を照らし、なぜか無性に聞きたくなったユーミンをサイクルステレオシステムで再生しながら走って行く。ナイトランは不思議と雑念がないので走りが捗る。上り坂も力強く走って行き峠らしきところに出る。俺の勢いが出てきた。体力は落ちてきているが、なんだかんだ言ってピンチには強い。コンディションが悪い日、とんでもない時間に残業してナイトランしている日
そういう日の方が調子が良い。 |
そんな俺の話の腰を折るようにトラブル発生だ。左側のライトが突然消えた。ライトを2個つけているのは明るさだけではなくフェールセーフの意味も込めているので1個になると不安だ。電池切れが原因かと推測して電池を交換しようとしたら、普段は外れないところがパカーンと外れて軽い音を発した。発光部分だけが本体から飛び出てしまう。振動で落ちるレベルの弱さになっている。慌ててテープで補強して左右の両方が光る状態に修復する。
七ツ釜から本格的に下っていく。暗い夜道の下りというのは怖いところではあるが、頼れるライトと雑念のない集中力でこなしていく。下りきって海沿いの平坦路に出たときに安心して大きくガッツポーズが出る。あとは、淡々と唐津まで走るだけだ。距離にして15km弱ぐらいはありそうだが、ペースが非常に良い。危なげなく力強い走りで遠くに見える唐津の明かりまでの距離が縮んでいく。
調子よく走り、やっと半島から唐津市に入った。ここからが逆に長く感じる。車の数も多くなってきた。疲労の限界を感じたところで、ちょうどJRの駅があったので休憩していく。もう22時を過ぎている。残業どころか深夜残業に入る。JRで1駅分なのに、やたらと遠く感じる。ホテルを見つけたが、一度通り過ぎて唐津駅を目指す。これもやたら遠くに感じたが、なんとか唐津駅に到着した。
初日を無事に走りきる重要さは知っているが、よりによって初日から計画外の90km越え タフな1日になった。唐津駅からホテルへ移動しチェックインできたら安心した。風呂に入って汚れを落とし、部屋でスマホを見ているとフェリーの時刻表で気づいた。11時頃のフェリーに乗る予定で明日の午前に走ろうと思ってたが、9時前にもフェリーがある。それに乗る前提で行動することにした。のんびり寝るというプランはそこで崩れた。力尽きて眠りにつく。 |

ナイトランの末、唐津駅到着
さすがに疲れた。
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松ぼっくりのゴジラ
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2日目 |
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唐津市内
壱岐・印通寺→原の辻→はらほげ地蔵→芦辺→勝本 |
37.24 km |
2018/04/28 |
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唐津東 -フェリー→ 壱岐 印通寺 |
昨日の疲れは全く隠せない。全身が疲れ切ったまま目が覚めた。ホテルで朝飯を済ませて出発する。唐津と言えば唐津城と虹ノ松原が名所だが、どちらも何度も行ったので唐津城だけ近くで見て敷地には入らずスルーしていく作戦にする。少し福岡側に戻って川の橋の上から唐津城を眺めていく。優雅な水城の姿を満喫して、港へと急ぐ。
途中のコンビニで一応は買い物を済ませておく。壱岐に渡っても店はあると思うが、慎重に進める。料理用にカセットコンロ用ガスを買うのが必須のミッションだ。港に着くと釣り具を持った人たちが並んでるぐらいで、特にフェリー自体は混んでいない。安心して乗船手続きを済ませて乗り込む。一応は計画に対して貯金側になったので、島を満喫したいところだ。静かな玄界灘をフェリーは進んでいく。
今日も暑いほどの日差しを浴びながらフェリーは壱岐へと到着する。島の東側を走って行くプランにすると買い物できる場所が少なそうだ。港のすぐそばに鮮魚の直売店があったので立ち寄っていく。ヒラマサとヤリイカが美味しそうだ。今日は天気が良いので、新調したサングラスをかけて気持ちよくスタートしていく。
少し走ると長崎県で一番広いと言われている平野に出る。その向こうには縄文式の竪穴住居や物見櫓が見えてくる。壱岐は歴史が残っている島なので、そういうのを見るのも楽しみの一つである。駐車場へ自転車を置いて遺跡を見ていく。二毛作の麦畑の真ん中に遺跡として集落が建っている景色はリアルで見応えがある。続いて一支ノ国博物館を見に行く。原の辻遺跡から結構な坂を上らされる。へとへとになりながら博物館に入る。壱岐の海や農業の歴史がまとまっていて、非常に見応えがある博物館だ。最後はムービーの上映とスクリーンの向こうに今の原の辻遺跡が見下ろせる。演出と景色の両方が本当に見事である。 |

朝の唐津城
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壱岐に向けてフェリーへ乗船
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海から見る唐津城
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壱岐 印通寺港
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買い換えたばかりのサングラス
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原の辻遺跡 竪穴式住居
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原の辻遺跡
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博物館から海方面を眺める
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博物館から原の辻遺跡を眺める
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博物館を満喫して少し腹が減ってきたと思ったらテープで補強してたライトから異音が鳴り始めた。また補強しようとしたら、ちょうど麦焼酎の酒蔵の前だ。せっかくなので酒蔵見学をしていく。説明も商売も上手な女将さんから見せてもらい、少し試飲もできる。水も麦もすべて壱岐の大地からの物で作った焼酎は本当に美味しい。ここで1本買っていく。旅の間は焼酎で晩酌となるだろう。女将さんは驚いたことに酒は飲めないのに説明が非常に上手く焼酎への愛情を感じる。
海沿いに東へと進んでいく。基本的にはのどかで地形も穏やかな島に感じる。はらほげ地蔵の手前にある店で昼飯にする。壱岐のうにをふんだんに使ったウニ丼が名物だ。もちろん昼飯はウニ丼にする。濃厚でとろけるようなウニの味がご飯に広がり絶品だ。島の海の幸は本当に新鮮そのもので美味しい。ウニから感じられる壱岐の豊かさを味わって店を後にする。
すぐ近くに、はらほげ地蔵達が立っている。お腹がえぐれていて、そこにも小銭などお供え物が入っている。満潮になると胸ぐらいまで海に浸かるのだが、干潮なので地蔵のすぐそばまで見に行ける。干潮の間に見ると何のこともない地蔵だが、なぜここに立ったのかなど不思議は多い。そのまま、はらほげ地蔵の方へ突き出た岬を戻りながら進んでいく。穏やかな地形を楽しみながら進んでいく。 |

壱岐の華 酒蔵
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熟成中の樽
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試飲コーナー
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今が旬 壱岐のウニ丼
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満潮時は海に浸かるお地蔵様
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はらほげ地蔵
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港のそばのスーパーで買い出しを済ませたら、今日のキャンプ地を目指して北上する。海岸沿いだとトレースする距離が長いので内陸を進む。内陸の方も穏やかな里山を見ながら、ゆっくりと上っていくような地形で壱岐の走りやすさをここでも楽しめる。しかし、終盤に来て徐々に坂が急になってくる。それでも離島にしてはマイルドなものだ。最北端に向けて、突然ものすごく急な坂を下り始める。最後だけが切り立った地形になっているようだ。明日は同じ道を上っていかなければならないので、そう考えると下りを全く楽しめない。
坂を下りると、ちょっとした街になっている。明日の朝は朝市も楽しめそうだ。この街に温泉が1軒あると勘違いして降りてきたのだが、どうも俺の勘違いのようだ。キャンプ場へ向かう途中のコンビニでビールを買って、キャンプ場へと走って行く。豪快な崖が見えるので強烈な坂を上らされるかと思ったら意外と単調な道を進み、最後だけ坂を軽く越えて海岸とキャンプ場に着く。
まずはテントを張る場所を探す。ちょうどテーブルと椅子が近くにある平らなサイトを見つける。ここに荷物を下ろしてテントを張ることに決めて、歩いて海岸の方へ行く。岬の陰に入った入り江なので無理かと思ったら、西側には海に沈む夕日を楽しめる。シャワーはあるようだがGWは閉鎖か…と海側にある管理所を見ると思ってしまうが、キャンプ場側にあった。水ではあるがシャワーを浴びれそうだ。テントを張ったらシャワーを浴びる。これからの旅を考えると水シャワーだけで入浴を済ませられるようにしていきたい。段々慣れてきた水シャワーで体を洗い流してさっぱりする。
なんとか風呂無しのピンチを逃れたところで、夕飯を作る。まずは自慢のJALファーストクラス米を炊く。JALのビジネスまでなら乗ったことはあるが、機内では寝るか仕事するかのどっちかで機内食を食べないので、ファーストで機内食を食えるシチュエーションが全く想像できない。米を炊きながら、ヒラマサの刺身とヤリイカの刺身を作る。九州の甘めの醤油で新鮮な魚の味を満喫する。ビールと麦焼酎が進んでしまう。ヒラマサの半分は醤油と焼酎で漬けにしてゴマをあえる。ご飯が炊きあがったら、まずはご飯だけを頬張る。甘さもあって米粒の張りがあって確かに美味しい米だ。シンプルに食べたくなってくるものだ。魚と米と壱岐の焼酎でこれまで3日間の旅の足跡を食で表現する喜びを満喫する。1日目の疲れを引きずりまくっての壱岐の旅 前半は満足のうちに終わった。 |

壱岐の北端 串山からの夕日
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伊万里 深山米
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順調な炊きあがり
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ヒラスとヤリイカの刺身
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ヒラスの漬け丼
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3日目 |
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勝本→風土記の丘→郷ノ浦
福岡市内 |
25.77 km |
2018/04/29 |
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壱岐・郷ノ浦 -フェリー→ 博多
博多 -フェリー→ 対馬・比田勝 |
壱岐の西側をぐるっと回ろうかと思ったが調べてみると、真ん中を行くのも面白そうだ。まずはテントを片付けてパッキングして出発する。街へ戻る途中にイルカパークがある。入り江に生け簀を作ってイルカを飼育している。まだショーとかやる時間では無いが、イルカの体調チェックと餌やりをしている様子を見ながらイルカに癒やされる。ちょっとしたアクションも最前列の良いところで見れて満足である。
街の朝市に期待したが、規模が小さく残念ながら買う物も見当たらない。朝市の近くの食事処でウニ丼定食で朝ご飯にする。朝から豪華すぎる。たっぷり乗ったウニは今が旬の生ウニ これを食わずに壱岐は語れない。イカもヒラマサの刺身も歯ごたえがあり新鮮だ。サザエもこりこりとして磯の香りが漂う。付け合わせの豆腐も豆の香りが濃く美味しい。壱岐の美食がここに集約したようなものである。 遅めの朝飯を終えて走り出すが、昨日下ってきた激坂を上りで満喫できるのだ。登り始める前からインナーギア確定なので、まずはギアを入れておく。あっという間に壁みたいな坂になって、ペダルは回らない。一番軽いギアでグイグイ踏み込みながら上がっていく。さすがに、とんでもない坂だと思いながら少し休んでは動いてを繰り返して越えていく。昨日の穏やかな道とは対照的に今日はアップダウンの激しさに翻弄される。 |

飼育員とイルカ
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入り江を活用した生け簀
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見事なスタンディング
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超豪華 海鮮朝ご飯
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泣く子も黙るウニ丼
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ヒラス、鯛、イカの刺身
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ヤリイカの酢味噌和え
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絶品 さざえの刺身
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何本かアップダウンを耐えて走って行くと、風土記の丘へ着く。ここで休憩しつつ歴史探索をしていく。壱岐の古い生活を再現した家や展示を楽しんで行く。ここの見学が終わったところで、本格的に疲れが出てきた。1時間近く休憩した後に出発し、郷ノ浦港を目指しつつ寺社仏閣を訪ね歩くことにする。アップダウンする道から左に逸れて住吉神社へ立ち寄る。壱岐で最も大きい神社で小さな池や夫婦楠が見事だ。歴史の長さと島で崇拝されているのが伝わってくる。最近ではパワースポットと呼んでいるようだが、俺にもパワーが宿ったような気がしないこともない。もう少し進むと、壱岐で最初にできた一宮である天手長尾(あまたながお)神社がある。麓に自転車置いて丘へ登る道を歩いて行く。坂道を登り切ると、そんなに大きくない神社がある。階段からも来れるようなので、見下ろすとのどかな里山を見渡せる。石段を降りて麓へ戻り、改めて石段から見上げると厳かな雰囲気である。
もう郷ノ浦もすぐ側まで来た。産直でアイスを買う。ゆず味の酸っぱいアイスで体を冷ます。今日は暑くきつい道が続いているので、そういうさっぱりして冷たいのが欲しくなる。ドラッグストアも向かい側にあったので、頭痛薬と鼻に貼るとイビキが押さえられるグッズを買っていく。今日の夜は対馬へのフェリーなので準備をしていく。
港へ下ったものの時間はまだある。近くの風呂へ行くことにする。坂を上ったところではあるが温泉がある。最後の一頑張りで坂道を上っていく。地形の厳しさを満喫しながら風呂へと行く。荷物から着替えと入浴セットを出して温泉に入る。地元のおじさんやロードで回ってる人と話しつつ湯上がりに休憩して港へと向かう。さすがに洗濯する時間まではとれなさそうだ。途中の洋菓子店からオーラを感じたのでお菓子を買うために立ち寄る。人の良い店主と話しながら買い物をして港へ行く。とりあえずは壱岐に思い残すことは無い。西側の海岸線とか走りたい場所を残した状態で島を後にするのが良いだろう。わざと残しておいた宿題は次に来る理由になるのだから。 |

古い家を再現 風土記の丘
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風土記の丘
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住吉神社 夫婦楠
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壱岐一の宮 天手長男神社
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住吉神社 夫婦楠
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天手長男(あまたながお)神社の鳥居
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壱岐特産 ゆずシャーベット
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フェリーを待っているとバイクで旅をしているライダーさんと話が盛り上がる。俺のこの先の流れを説明すると、タフな旅に驚いていた。フェリーへと乗り込む。博多港へ向かうフェリーの中で日記を書いていると、ふと夕日が見えてきた。デッキに出て夕日の写真を撮りまくる。昨日に続いて玄界灘の夕日を満喫する。やがて日は完全に沈み、今度は博多の夜景を見ながら港へと入っていく。地元ながら福岡の夜景は見事で福岡ドームやタワーに街の明かりが見えて活気を感じる。
船はいよいよ博多港へ戻ってきた。ターミナルは大都会の様相である。というか、こんな都会にフェリーというアンマッチがなんともいえない。ターミナルで対馬へ行くフェリーの手続き時間を確認しておく。夕方のうちに風呂へ入っておいていたのが正解と思えるほど忙しそうだ。20時に博多へ着いたが、21時から乗船手続き開始、22時には乗船しなければならない。もう一方で、博多港近くで洗濯と乾燥を済ませつつ夕飯も食いたい。まずは、コインランドリーへ行き洗濯をするしかない。港からは近いが、やけに混んでいる。とにかく洗濯して、夕飯を食べようにもゆっくり食べる時間はない上に意外と店が開いてない。さらにコインランドリーに入れる小銭が無いので急いで近所のローソンで夕飯を買う。九州らしくチキン南蛮を買ったのが唯一俺が見せた地産地消への意地である。乾燥機へ洗濯物を移そうにも、終わった洗濯物を取りに来ないのが3つもある。俺の洗濯前から乾燥機に入ってる衣類を容赦なく取り出して乾燥機へ突っ込む。そのまま乗船手続きをしにターミナルへ歩いて戻る。対馬へのアクセスは2カ所あって島の北部にある比田勝(ひたかつ)と厳原(いずはら)がある。北の方はプロかマニアしかいないのか空いている。そんなに困ることも無く手続きを済ませた。コインランドリーへ戻って乾燥した衣類を圧縮してサイドバッグへ詰め込む。
忙しい博多の夜を無事に終えてフェリーへと乗り込む。このターミナルから色んなところへ航路があるので、わくわくする感じもある。フェリーの中はトラックとバイクと俺しかいない印象だ。さっさと上がってコンセントの真ん前をゲットしたが争うほど人もいない。というか分けられた部屋の一つは俺だけになった。イビキもできるし、思いっきり屁をこいても誰にも迷惑がかからない。大の字で広々と眠れそうだ。比田勝への上陸は朝が早いので、とにかく早く眠りにつく。 |

フェリーに乗船し壱岐を後にする
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近くの島を巡るフェリーみしま
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和ドレーヌ
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玄界灘の夕日
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慌ただしい博多の夜 コインランドリー
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4日目 |
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対馬・比田勝→韓国展望所→竿崎 日本最北西端
→ 海神神社→豊玉 |
90.37 km |
2018/04/30 |
朝の4時に港へ着く。俺もそれに併せて起床する。4時に着岸して降りたあと、7時まではゲートが開かないので4時に降りないともったいない。寝不足は感じながら、車両甲板へと降りていく。自転車に乗って対馬へ上陸する。すぐに走り出すかというと、そうでもなくフェリーターミナルで情報収集していく。まだ真っ暗な比田勝の入り江沿いを走り街へと向かう。まだ真っ暗な街は人の気配が全く無く店も開いていない。静かな街と韓国へ渡る国際ターミナルの前を通り過ぎて徐々に家もなくなってくる。
ここでトラブル発生だ。メーターの液晶がいきなり薄い表示になってきた。電池切れだ。最近はコイン型リチウム電池が宅急便などで送れないので予備を持ち合わせていない。さっきの気配だと比田勝の街でも、この時間でCR2032を売ってるようには見えない。スマホで今の積算距離や周長設定値をメモっておく。ふと考えた時に俺の車のスマートキーの電池はCR2032だ。開発担当なので知り尽くしている。車の方は電池警告は出ていないので、電池はほとんど減っていないはず。車の鍵から電池を取り出してメーターの物と入れ替える。車の鍵は全く動かない。かなりの放電深度まで使い切ったようだ。メーターは無事に動き出した。これまた操作方法の分かりづらいCATEYE独特のペアリング作業をやって機能が復活だ。走ってみるとやたら速度の数値が低いと思ったらmileになっていたという問題はあったが、無事に復旧できた。最近の輸送品目の過剰な厳しさは何とかならないものだろうか。メーカーが保証する梱包形態はOKにしても問題ないはずだ。 |

対馬 比田勝港へ着いたフェリー
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まさかのメーター電池切れ
車の鍵からCR2032を調達。
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メーターに振り回されているうちに明るくなってきた。地図で見ても険しい対馬らしく海に面した崖は険しく迫力はあるが、今日も天気が良いので入り江の波はなく地形を反射している。予想通りに壱岐以上に激しいアップダウンが始まりそうだ。それでも要所にはトンネルを掘って走りやすくしている印象でもある。所々にツシマヤマネコに注意という標識がありワクワクする。あわよくば野生のツシマヤマネコを見たいものだが、ロードキルには遭わないで欲しい。
しばらく森の中を走ると韓国が見える展望台へ曲がる分岐に来た。今日は天気は良いが春らしく霞んだ空気なので期待は薄い。ものすごく上るのかと想像したが穏やかな道で展望台まで行ける。韓国を意識した建物から向こうを見るが、予想通りに霞んで釜山は見えない。それでも満開のヒトツバタコの花たちとリアス式海岸の海を見下ろす景色は見事である。
まだまだ朝の雰囲気の中で対馬の西側の道を南下していく。海を全く見ることの無い森の中を貫く激しいアップダウンを耐えながら走って行く。この調子で厳原まで続くと、かなりタフな走りになるだろう。
今回の旅の大きな達成ポイントになる竿崎へ向かう分岐に出る。分岐から先が10km以上あるので往復で20km以上も走るタフな寄り道である。川に沿ってしばらく下っていくと右側に馬を飼っている広場が見えた。おそらく対州馬(たいしゅうば)と思われるが戻り道でも来るのでいったんスルーしていく。平らな道を下りきると激しい上り坂が始まる。竿崎には日本最北西端があり、そこにツシマヤマネコも保護されているのが見れる。到達証明書も手に入れられる。絶対に立ち寄らないといけないポイントなので、必死に山を登っていく。とんでもなく厳しい山を標高200m近くまで登った後に、激しく下っていく。当然、戻りは激しく上るわけなので憂鬱な下りである。少し下ったところで野生生物保護センターにたどり着く。 |

ツシマヤマネコ注意。
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韓国展望台
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ヒトツバタゴが咲く岬
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ヒトツバタゴの花
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遠くを眺めるが霞んで釜山は見えず
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まずはツシマヤマネコを見に行く。元々が夜行性だからか切り株の上にちょこんと座ったまま動かない。ぱっと見は単なる猫との違いが分からないが、独特のブチブチ模様とかおでこの模様は普通の猫とは違う。貴重なツシマヤマネコの生態とか対馬の自然史を学べる。大陸と日本の両方の遺伝子を持った固有種の多い島を旅できるのは野生生物大好きな俺としては感動的でもある。
ものすごく強くなった風の中を竿崎へ歩いていく。霧も出てきた。丘を登って岬へとたどり着く。そこにあるモニュメントには 「日本最北西端 竿崎」と書かれている。ついにやった。到達することがなかなか大変な日本の端っこをしっかり自分の足で踏みしめ、間の道も自らの足で走り続けてきた。その感動や達成感はほかに得られることはない。長い旅で紡いできたものと、たどり着くのが大変な端っこであることとで喜びは大きい。
身につけた自信とともに旅を続けていく。野生生物保護センターで日本最北西端 到達証明書をもらう。先ほど下ってきた道を上って行く。登り返す距離は短いが濃厚な坂である。登り切ると下りが始まるが、これも傾斜もカーブもきつく下るだけでもタフな坂である。坂を下りきって、来た道を国道に向かって戻っていく。途中でスルーした対州馬を見ていく。少しずんぐりした印象を受ける馬である。俺に気づいてこっちへ回ってきたりで可愛さもある。馬を見ながらほっこりしていると、スズメバチが一匹襲いかかってきた。俺の周りで8の字を描いて回っている。1匹だからおとなしくしてれば離れていきそうだが、少しずつ距離を離す。スズメバチがいなくなったところで、俺も出発する。 |

野生生物保護センター
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ツシマヤマネコ
夜行性なので昼間は寝てる
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竿崎灯台
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竿崎からの海の眺め
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日本最北西端 竿崎
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日本最北西端の碑
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対州馬
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小柄で可愛い馬
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国道へ戻って続きを走って行く。脇道だけでなく本道もアップダウンが徐々に険しくなってきた。家も店もない森の中をひたすら走っていく。森の中に木で作られたミツバチの巣箱や椎茸栽培の原木があるが、それ以外は何も見当たらない。海を見ることが無い深い森の中を走って、山を2つほど越えたところの集落へ立ち寄る。飯を食える店はないがスーパーはある。ここで昼飯にする。お総菜もイマイチなので、カップ麺のちゃんぽんと野菜にする。ついでに夕飯で食べる北対馬とんちゃん焼きも冷凍パックで買っていく。店のポットでお湯を注いで、店の外の地べたに座ってちゃんぽんをすする。ぎりぎりで長崎県らしい食事をしていく。空腹と旅の空で思った以上に美味しい。さっきは下り坂ですら緊張感を保てなかったので、ここでしっかり休憩をしていく。
島で唯一の温泉がある集落だがスルーして、国道から6kmほど外れた海神(かいじん)神社へ向かう。静かな入り江を見ながら、しばらく平らな道を走ったかと思うと予想通りに激しい坂道が襲いかかってくる。リアス式海岸を有する島の地形上仕方がないものだろう。その事情を理解しつつ、今日何本目だか忘れるほどの坂道を上り峠を越えていく。海側へ下りきると不思議な建物と海岸が見えてくる。戻り側でじっくり見るとしてスルーしていく。公園があったのでペットボトルに水を汲んでいく。今日は1.5Lでは収まらないほど消費が多い。この辺では海の神様が重要視されているのであろう海神神社へお参りしていく。石段を登ると本殿が見えてくる。歴史の古さから厳かな雰囲気が来る。海沿いでありながらも木に囲まれた雰囲気がいい。先ほどスルーした藻小屋とヤクマを見ていく。海の石を積み上げた家と碑があり、不思議な感覚である。 |

かろうじて長崎県を味わう
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旅の空の下で食うインスタント麺も乙
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海神神社の本殿
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立派なヒトツバタゴの木と本殿
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海神神社 正面から見る厳かさ
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海岸に建つヤクマ
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海沿いに建てられた石積みの藻小屋
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藻小屋
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今日の宿をこのあたりにしてしまうか迷ったが、朝早くから動いてることもあって時間は遅くない。朝4時から走っているので夕方5時の時点で行動時間13時間というハードな状況ではあるが、まだ行ける。明日も厳原までアップダウンが多いのは予想できるし、厳原からのフェリーに間に合わないと日程が崩れるので、先へ進むことにする。海神神社から戻ってくる道で、左に物音を感じた。ちょうど鹿の尻の白い毛が見えた。顔や胴体部分は木に隠れて見えず尻だけだが、これも対馬の固有種でツシマジカだ。もう1頭見れることを期待しながら走って行きたい。
国道に戻って走ると、次の集落まで山が2つか3つと予想していく。一度は海沿いの入り江を回って海沿いを上ったが、途中からは内陸の森の道ばかりになってくる。段々と日が暮れて暗くなってくると、少し怖さも出てくる。体力の限界も来そうなものだが、我ながら踏ん張れている。時折、山の方から藪が揺れる音がするが、音を出す野生動物の正体は見えない。せっかく日暮れ後まで走るなら、ツシマヤマネコを見たいという気持ちになる。だが、なかなか見ることは無く進んでいく。
集落が見えたところで今夜の寝床を探す。スーパーで買い物をして飲み物で糖分を補給して、もう一頑張り走って行く。真っ暗な坂道を越えて和多都美(わだつみ)神社の方へ向かっていく。真っ暗な道でたどり着いたキャンプ場はしっかり閉鎖されている。あきらめて別の野宿場所を探して、何とか目をつけた場所に落ち着いた。行動時間16時間で激アップダウンの95km。かなりタフな1日の走りは終わった。コッフェルで飯を炊いて、次にフライパンで北対馬とんちゃん焼きを焼く。タレのしみこんだ肉とキャベツでジュージュー焼くと良い香りがする。甘みの効いた甘辛さがたまらなく美味い。疲れ切った体に染み渡る郷土料理だ。B級グルメにも出てくる一品だが、ここで自分で作るとひと味違う。味は濃いが飽きることなく完食し、とにかく力尽きるよう眠りについた。 |

対馬でよく見かけるミツバチの巣箱
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夕暮れ迫る山中の道
ツシマヤマネコとの遭遇を期待するが、
見かけたのはツシマジカ1頭の尻のみ
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北対馬名物 とんちゃん |
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5日目 |
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豊玉→万関橋→厳原
福岡市内 |
44.67 km |
2018/05/01 |
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対馬・厳原 -フェリー→ 博多
博多 -フェリー→ 中通島・青方 |
朝は早く起きて山に登る前提で構えていたが、体力的について行かない。早起きだけは無事にできたので出発だけ早めて、港のある厳原(いずはら)に早く着いて安心する作戦に出る。
昨日は真っ暗で何も見えなかった和多都美神社へお参りしていく。海から続いてる鳥居や海とつながった境内の池が印象的な神社である。朝の誰もいない時間帯の眺めは神秘的でもある。お参りを終えて国道へと戻っていく。
昨日よりはアップダウンが少し緩んだようにも思えるが、疲労度と寝不足が続いている。上がらないペースの中で何とか走って行く。すぐにへとへとになりながらも、ここからが俺の強みのような気もするが朝は俺の弱みでもある。とにかく、危ない状態にならないようコントロールしたいものだ。力尽きてふらつくとか、そういうのだけは防ぎながらも前に進むしか無いだろう。 |

和多都美神社
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本殿
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静かな入り江に鳥居
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海とつながった池の中に鳥居
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海の中まで続く鳥居
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日陰で休憩できる場所があれば ぶっ倒れて回復するというのを繰り返しながら南へと進んでいく。対馬は北と南で島が別れていて、万関橋でつながれている。10時頃には万関橋までたどり着く。橋から海峡を見ていると韓国人の観光客が大型バスで押しかけている。逆に日本の観光客は少ない。俺の自転車と俺を見て何か言ってる人が多いが何を言われているのかよく分からない。海峡の眺め以上に気をとられるものがある。
南の方に入るとアップダウンはだいぶ緩んだ。厳原まで6kmほどのところで休憩していく。大きめのショッピングセンターで飲み物を買って日陰で涼んでいく。あと6kmでフェリーまで3時間。もうたどり着いたようなもんだろう。ただGWで乗船客が混んでて満員になるのも帰れなくなるトリガではあるので早めにたどり着くに越したことは無い。
回復した体力でグイグイ力強く走って行き、あっという間に厳原へ到着する。まずはフェリーターミナルに行き、乗船手続き開始時間を調べる。昼飯を食べて戻ってくる時間を決める。厳原の街を自転車で流して昼飯を食べる場所を探す。ショッピングモール内のレストランが一番良さそうだ。名物の対州そばとろくべえを頼んでみる。対州そばは少し柔らかさと穏やかな香りを感じる。ろくべえはサツマイモで作られているが、それは感じられずふわふわモチモチした食感と魚介の出汁がよく合う一品だ。ガイドブックには必ず載ってるレベルの対馬名物はコンプリートして一安心である。 |

万関橋
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万関橋からの海峡の眺め
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対州そば
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ろくべえ
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昼飯を終えたら乗船手続きをしに行く。とにかく早い物勝ちなので切符は手に入れたい。ほぼ一番というポジションで切符を手に入れて、また1時間後に乗船なので観光に行く。歩きだと大変だが自転車だとさっと出かけられる。港の近くにある寺 万松院(ばんしょういん)へ行く。昔も今も対馬は国境なので統治した歴代当主は丁重に祀られている。そういう雰囲気を感じる境内である。石段を登るとお墓にも行けるが、今の俺の体力では無理なので、それはあきらめる。
港の近くのアンテナショップで対馬のお土産を買い込んで、厳原港のフェリーターミナルへ向かう。すでに車はいっぱい並んでいる。自転車や二輪は脇のコンテナ近くで待つことになってるので、そっちへと入っていく。対馬の良いところも悪いところも両方とも見たように思える。日本でありながら韓国の方が観光客が多い事情も何かおかしく、だからと言って普通の人が来る魅力があるかというと訴求できていないようにも思える。あと、とにかく何もなく金を落としていくシステムが無いに等しい。ただただ対馬は良かったと誰にでも勧め難いところもあり、それでも旅で来てみたくなるマニアックな魅力がある場所でもある。そこは魅力を小さな島で訴求し切れてる壱岐と対照的にも思えた。自転車での旅としては山もあり海もあり寺社仏閣もあり野生生物は固有種の宝庫… 自分で見つける見所は多い場所である。
フェリーに乗り込むと、出発の雰囲気になってくる。対馬のごく一部は満喫したが、まだ走っていないエリアもあるし見ていない景色もある。宿題はしっかり残して島を後にする。フェリーでの移動中はひたすら日記を書き綴っていく。途中で壱岐にも立ち寄る船は玄界灘を気持ちよく走って行く。基本的には一昨日の船と同じだが今日は夕日は見えない。 博多に近づくと雨が降ってきた。天気は崩れると天気予報で言っていたが、その通りになってしまった。船から下りて博多港に着く。フェリーターミナルで今度は五島列島行きのフェリーの手続きを調べる。出港は23時と遅いので余裕はあるだろう。しかも予約をしている。手続き開始が21時からなので、まずは近くの温泉に行く。港のすぐそばに温泉があるのは有り難い。続いてコインランドリーに洗濯物を持って行く。俺が一昨日に出した洗濯物はまだかごに入れっぱなしだ。どういう民度なんだろう。洗濯を開始したところで乗船手続きに並ぶ。窓口は2つあるが1つの窓口に馬鹿みたいに長い列ができている。何のために並んでるのかよく分からないが、見てるとスタッフのさばきがとにかく遅くて全然進まない。時々空いてるほうから手続きを済ませていく客がいる。俺の前に並んでる人はキャンセルをしに来たようだが、進まない列に並んでいる。話した限り「どう考えても、空いてる列に行けば良いような内容ですよね」と薦めてみたら、さくっと手続きが終わったようだ。また次の人と「進まないですよね 何なんですかね」という話をして、ダメ元で空いてる方に行ってみたら俺の前の人は手続きが終わった。俺も手続きをしてみる。とにかく早くターミナルに車を持ってこいと言ってくる。俺も社会で揉まれている人間なので呆れて「早くって何時までですか?」と質問すると答えになって無く、「とにかく早く 今すぐ」の一点張りだ。窓口の手続きがくっそ遅いくせに客だけ急かす意味が分からない。
コインランドリーでの乾燥が終わらないと自転車を持って来れないので、無視して終わるまで持ってこないことにした。結果、それで十分である。ターミナルの対応がだいぶお粗末なフェリーに思えるが、予約は必須だと思われる。自転車を預けて船に乗り込んで寝床を確保した。今回も朝はものすごく早いので、できるだけ早く寝る。 |

万松院の山門
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お墓へ向かう石段
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万松院
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対馬を撤収。@厳原港
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釜山へ向かう高速船
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6日目 |
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中通島・青方→有川→頭ヶ島→有川→青砂ヶ浦→浦桑 |
53.63 km |
2018/05/02 |
朝の3時半に目を覚ます。五島列島へのフェリー万葉は島を順番に巡っていくので、降り遅れたら取り返しがつかない。目的地の中通島 青方には3時55分に着く。この夜間航行&早朝到着のフェリー連発が俺の体力を根本から奪っていく。最近の俺の旅で寝不足はパフォーマンスへの影響が本当に大きい。初日の深夜残業からの朝フェリー、対馬への渡航と早朝から夜間の16時間走行、今回の夜間航行ととにかく寝る時間を封じられた無謀な日程が続いている。
中通島の青方に降り立つと路面は濡れている。雨が今時点ではやんでいるが完全に今は夜だ。フェリーターミナルで休憩しつつ博多港で買っておいた朝飯を食べる。コーヒーで眠気も覚ます。ちょうど雨も土砂降りで降ってきたので今は身動きを取りたくない。少し明るくなってきた5時頃から動き始める。
海沿いを走って青方の市街地へ向かっていると、入り江の向かい側に大曽教会が見えてきた。レンガ造りの建物に白い像が見えている。まずは立ち寄りに行く。麓に自転車を置いて階段を上って教会を見ていく。ものすごく古くて風格はあるが、これは単なる遺跡ではなく地元の人に愛されているのが伝わるぐらいきれいにしてある。これが天草や長崎や五島列島の教会群だ。同じような印象は平戸や天草でも感じたが、五島も同じである。
大曽教会を後にして走っていると、今度は漁港で競りをやっているのが見えてきた。そこに大型バスで乗り付けた観光客も見学している。俺も見学しようとしたらちょうど終わってしまった。青方から坂道を一本越えて中通島で一番栄えている有川の方へ向かう。通勤する車なのか、離島の割に交通量が多く坂道で踏ん張りきれずにいると迷惑をかけている感覚になる。有川へ行く途中の道も交通量は多い上に狭い。島にしては珍しいと思いつつ走って行く。
一応、今日の宿は有川あたりに決めたいとは思っているが、風呂と寝床のめどは立っていない。まずは蛤浜へ行ってみる。駐車場に自転車を置いて砂浜を歩いてみると、静かな入り江に透明感の高い海にエメラルドグリーンからのグラデーションが見事に見える。晴れてる日だけ見えがちだが、今日は曇ってて雨なのにきれいな海に驚く。蛤浜で野宿できそうな雰囲気ではあるがシャワーは夏しか開いてない。キャンプ場もあるのだが、これも夏だけだ。長崎県はGWの旅に苦戦しがちである。同じ資源をGWにも生かせばいいのに、生かされない。 |

博多から五島へ渡るフェリー太古
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大曽教会
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青方漁港の競り
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有川の蛤浜
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静かな入り江と透明な海
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有川はこの島では一番の都会なのか店も飲食店もそろっている。有川港の鯨賓館を見学していく。このあたりは捕鯨で栄えていた場所と言うことで、今でも捕鯨にまつわるものが多い。鯨や島の歴史を堪能してから東へ向かう。目的地は東の端にある頭ヶ島(かしらがしま)を目指す。
最初の上り坂で体に異変を感じる。朝からあまり調子は良くなかったが、腹痛が起きている。何か悪い物に当たった時のような感覚と腹筋の筋肉痛の感覚が入り交じっている。一度休憩していく。今回の旅はフェリーのスケジュールを守らないと1日単位で遅れる旅なので、日程上は1日の余裕を持たせている。余裕があれば長崎から野母崎までを往復するのを最終日としようとしていたが、その1日は島で使うことにして中通島か福江島で少しペースダウンすることを決意した。
車はほとんど来ない静かな道で左は海と複雑な島の地形を楽しめる。アップダウンも多く距離も15km近く東に突き出る。上り坂を2本ほどこなすと腹痛は少し治まってきた。晴れてれば海の色も最高なのだろうけど、それでも離島らしい豪快な景色を満喫していく。12時前には半島を走り終えて、頭ヶ島へ渡る。流れの速い海峡を見下ろす橋の眺めがいい。頭ヶ島に入ると急な坂を上り始める。目的地の頭ヶ島教会までは峠1本といったところだろう。段々と調子が上がってきたので気持ちよく上って行く。雨に打たれて体を冷ましながら発熱と冷却の絶妙なバランスが成り立つと調子が良い。途中でキジのつがいを見かけると西日本の旅であることを実感する。
坂を上りきると、下界に頭ヶ島教会が見えてきた。これを下らないといけない。すなわち帰りはまた上らなきゃいけない。そう思うと気分が萎えるところだ。ため息をつきつつも見下ろすだけでオーラを感じる教会にワクワクする気持ちが入り交じりながら進んでいく。坂を下る手前に警備員がいて強制的に坂を下らない直進で空港へ行くよう指示された。とにかく指示には従うしかないようだ。平らな尾根伝いに走ると空港の駐車場やロータリーが見えてきた。上五島空港にたどり着く。空港からシャトルバスが出ていてそれに乗って教会へ行くようなルールになっている。土砂降りの雨でずぶ濡れの俺だが暖かくスタッフに迎えられる。雨に打たれないスタッフ用の階段下に自転車を置いて、シャトルバスの時間まで頭ヶ島教会の写真や展示を見ていく。ついでに昼飯でもと思ったが、飯を食える場所はないようだ。
バスに乗るとテクニカルな運転で先ほど見下ろした坂を下っていく。体力はそんなに無いが坂道は好きだ。どうせなら思いっきり下って上りたいと思えるような道をバスは下っていく。下りきるとバスを降りる。数人の観光客は俺より先に歩いて行ったが、のんびりと見て歩く。島の突端で海に面した谷底に位置する教会は隠れキリシタンの象徴のような場所だ。古くからあると思われる石垣と石造りの教会とそれを囲む山に海。美しさと厳しさの両方を感じられる。雨に濡れた石がコントラストを濃くしているようにも見える。厳かさに感動を覚える。石垣の中に祀られたマリア様の像もまた雰囲気が良い。 |

鯨のオブジェが並ぶ有川港
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有川港 鯨賓館
鯨と横綱 佐田の山を展示
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中通島の東へ向かう道
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石造りが美しい頭ヶ島教会
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石垣の中にマリア様
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石垣の上に石造りの教会
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頭ヶ島教会前の海
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上五島空港 跡地
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バスで上五島空港へ戻る。空港でシャトルバスの運営をしていると思ったが、空港はすでに閉鎖されて跡地になっているようだ。ここでお土産売り場のお菓子を買って頭ヶ島を後にする。来た道を戻るだけなのでコースの具合は知り尽くしているし追い風なので調子よく戻っていく。戻る途中に食事をする場所は無いので有川まで戻るしかない。
1時間ほどで有川まで戻ったら15時になっている。念願の五島うどんを食べようと思ったら既に店は開いていない。まさかの五島に来て五島うどん無しか。仕方なくコンビニで弁当を買う。九州らしくポプラであることが救いだろう。ご飯は炊きたてを盛り付けてもらう。強い風に弁当を飛ばされそうになりながら飯を済ませて、夕飯に向けてうどんを買っていく。生麺や乾麺もある。味付けするための粉末出汁も売っている。同じ店に鯨の肉も売っている。どうやら上五島らしい夕飯になりそうだ。 買い物を終えて、もうひとっ走り教会巡りをする。有川から北に上がる。寝床の算段もしつつ買い出しできる店などもチェックしながら進んでいく。北に向かう道は徐々に上って行く。これも予想通りだが、なかなかの長さの道が続く。島の東側を走って行く道は住宅地で交通量も多い。1回下ったと思ったら、今度は急な上り坂が始まる。なかなか楽をさせてくれない島だと思いながら坂道を越える。目的地の教会に向けては、島の西側へ向けて坂を下る。帰り道を考えたら下って欲しくないが仕方ない。 |

海峡に架かる赤い橋
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流れの速い海峡
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島の西側の海沿いを走ると、向こうに青砂ヶ浦教会が見えてきた。赤煉瓦が渋い雰囲気を出している。教会までの坂をグイグイ上って教会にたどり着く。建物の雰囲気の良さだけでなく、きれいに清掃してあって花も植えてあり現役の教会であることを実感させられる。お祈りが始まると立ち入り禁止になるのだが、地元の方々の計らいで見させてもらえる。儀式が始まると、一番後ろの席に座って見様見真似で進めていく。途中でスタンプを押して抜け出すのは失礼なほど厳かな雰囲気である。地元の大人も子供も年寄りもみんな信心深く儀式に参加している。1時間近く見入っていると深い感動が胸をつく。涙が出そうにもなる。これまで隠れキリシタンの歴史やそれを表す教会をいくつも巡っているので、その貴重さが分かる。ロザリオの儀式を終えたら、スタンプを押して教会を後にする。
もうすっかり暗くなってしまった道を戻っていく。厳しい坂をグイグイ上って島の西側から東側へ戻る。日が暮れてきてナイトランのモードに入ると走りが捗る。帰りは比較的楽に走って、浦桑まで戻ってくる。目をつけておいた公園に宿は決定にする。今日は風呂に入れる場所がどこにもなさそうだ。
スーパーで買い出しをして公園で夕飯を作る。特大コッフェルでお湯を沸かしつつ、鯨の刺身でビールを飲む。赤身と鹿の子と顎の下にあるウネスの3カ所を買っていたが良い感じに解凍されている。鯨の刺身は九州の甘い醤油とよく合う。臭みは全く無いし脂身もしつこくなく美味い。沸いたお湯に五島うどんの半生麺を入れてゆでる。吹きこぼれに気をつけつつ茹で上げたら、沸いたまま麺をすくい上げて麺つゆへ投入する。一応、本場の地獄炊きを意識した作り方にする。温かい麺とあご出汁のきいたつゆが合う。やっと五島らしい食を得られて喜びと安心が来た。やや強い風の中でテントを張って眠りにつく。 |

青砂が浦教会
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鯨の刺身
赤身と顎の下ウネスと鹿の子
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念願の五島うどん
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7日目 |
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浦桑→真手ノ浦→高井旅→奈良尾
福江島・福江 → 岐宿 → 魚津ヶ崎 |
45.78 km |
2018/05/03 |
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中通島・奈良尾 -フェリー→ 福江島・福江 |
風でバタバタするテントと日差しで目が覚める。夜中もそうだったが風の影響で寒い。天気が急に回復してくれれば風も強くなる。これは良い傾向だし、予報より前倒しで晴れてくれれば最高の展開だ。テントを片付けていると空は完全に晴れてきた。公園から見えるアパートに止まっているEVが気になるところだが、走ってるうちにどこの物か分かるだろう。今、流行りつつあるEVのシェアリングだろうか。
パッキングを終えて、コンビニで朝飯を食べて出発する。青方に向けて坂を上って港の方へ戻っていく。天気が良くなった状態で大曽教会にも行こうと思ったが、奈良尾への到着時間が重要になってくるのでスルーして行く。中通島の西側の海岸を進んでいくとリアス式の海岸が続くがきれいに岸沿いをトレースして思いの外アップダウンは少なく快適な道が続く。青方から南に進んでいくと海の透明度が増してくる。底まで見通せる海の向こうには小さな島が浮かんでいる。
海を楽しみつつ左に見えてきた教会へ寄っていく。真手浦天主堂は白く新しい教会で昨日までの歴史のある教会とは対照的だ。朝から地元の人が掃除したり花の手入れをしたり、ここも大事にされている教会である。また海沿いの道に戻って走って行くと静かで透明な入り江と対岸は島があり新緑の緑が海際に映えている。エメラルドグリーンから深みのある青になり、また新緑の森が見えてくる。そんな景色を楽しみながら南下していくと走りは捗る。そろそろ疲れがたまっている俺の足には捗る走りは有り難い。 |

雨から一変しからっと晴れた朝
風がやや強い
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真手浦天主堂
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エメラルドグリーンの透明な海
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島に囲まれた入り江は静か
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新緑とエメラルドグリーンの海
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静かな海を見ながら走る
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楽しんで走っていると中ノ浦教会にたどり着く。入り江沿いに走った奥に白基調の教会が見える。これも静かで美しい入り江とのコントラストが美しい。中は椿の花とステンドグラスがデザインされている。今まで見た教会の中では可愛いデザインの教会といえる。木の茂みに囲まれたマリア様の像も印象的である。ここも教会に対する地元の愛情を感じる場所である。
ここから上り坂が始まる。一応、地名には白魚峠ということで峠とつけられている。名前に峠と付いてるだけで気合いは入るが、時間的に3時間ほど残されているので何とかなるだろうという安心感はある。上るほどに湾を見下ろす景色と新緑がきれいになってくる。視界から島の西側の海が消えて鬱蒼とした森の中を走って行くと白魚峠を越える。 |

中ノ浦教会と海
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森の中のような雰囲気とマリア様
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可愛い印象の教会
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白魚峠への上り坂から海を見る
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下界が遠ざかる。新緑と海が心地よい。
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峠を越えて奈良尾へ下るだけだとばかり勢いづけて行くと、急ブレーキかけて止まりたくなるぐらいの景色が左に見えてきた。高井旅の海岸に見える海は度肝を抜かれるほど美しい。白砂の海岸線にグラデーションのエメラルドグリーンが映える。五島列島の海の凄さを感じさせるものがある。
興奮して写真を撮りまくってから奈良尾へ向かうが、また上り坂が始まる。距離は5kmもないので不安はないが、疲れがたまっているのと上り坂があるという頭がないので走りが捗らない。これも何とか越えると急な坂を奈良尾へ向けて下っていく。下界に街と港が見えてきた。もう大丈夫だろう。坂を下りきると住宅地がある。そろそろ昼飯にしたいので店を探しつつだが、ほぼない。港近くに飲食店が2軒あるだけだ。目だけつけておいて港へ行く。
港に着いた時点で安心する。これで何とか福江島までのスケジュールが完全に保たれたわけで、最後に長崎へ行くフェリーに間に合うよう福江島内で走るだけとなった。すべての日程を福江島に使えるので走りのペースは余裕が増した。フェリーターミナルで乗船手続き開始時間を確認して、土産屋を物色していく。そろそろ加齢臭が漂い始める年頃なので椿油と炭の石けんが気になって買っていく。すると気をよくした店員さんがサンプルの石けんのかけらを買った石けんの倍以上もくれた。ただ、港には飯を食う場所はないので出るしか無い。
港から来た道を戻るほかにはトンネルを抜けて奈良尾の市街地へ出る手がある。トンネルを抜けていくと商店街のような物は見えてきた。ただ、商店街と言っても商店と民家が並んでいて飲食店はない。ネットで調べながら行っても、その場所に店が無いし開いている気配も無い。道に迷っていると飯よりも見所が先に出てきてしまう。奈良尾神社の鳥居が見えて、その奥に立派な木が立っている。自転車を置いて観光だ。道にまたがるように広がったアコウの木の根の間を歩いて抜けていく。なんと樹齢650年のご神木だ。無数に広がる根っことその上にも広がる無数の立派な枝が印象的だ。神社を守るような姿に見える。 お参りを終えたら港の方へ戻る。港の向こうの飲食店2軒しか飯を食える場所がなさそうだ。何でもありそうな定食系の店が2軒だが1軒には五島うどんという文字が目に付いた。決定だ。今日は暑い中だが、熱々の五島うどんをすすらなければならない。丸っこい断面とあごの薄味の出汁が効いている。しゃきっとした食感を想像したが、意外と柔らかくもっちりした麺はつゆが絡んで美味しい。 |

高井旅の海岸
透明度がすごい。
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もうすぐ奈良尾
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奈良尾神社 あこうの木
樹齢650年のご神木
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守られる印象
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ど迫力 あこうの巨木
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奈良尾神社
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五島うどん
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うどんに満足したらフェリーに乗る手続きをする。もう後は次の島に向かうだけだ。車両の方の入り口の前で待っていると船が来た。島を巡るフェリーの乗り降りは忙しく、中通島に来る車が押し寄せてくる。それが終わるとバイクや自転車から乗り込んでいく。行き先を伝えると乗せる場所を案内されてフェリー内のでこぼこのデッキを走る。一番上のデッキへと上がっていって中通島を見送る体勢で出発を待つ。タフな島旅も次の島が最後と思うと少し寂しい気持ちにもなってくる。もっと途中の島で余裕を持って旅できないかと思ってしまうところもある。でも一方で、もっとアグレッシブに島を回って未踏の場所を次々と楽しみたいと思うところもある。両立させようとするとサラリーマンでは厳しいのかもしれない。定年後にゆっくりと時間をかけて楽しむとかそういうタイプの旅が合うのかもしれない。島旅のあり方というのを、まだ正しくは見つけられていないと感じている。それもまた課題であり、島に宿題を残してまた来る理由を確保するというのもありだろう。
フェリーが出航すると座席で日記を書き綴る。今回はフェリー移動が多いので日記を書くペースは比較的順調ではある。洗濯も福岡でしているので、コインランドリーを毎度のように探す手間もなく余裕を持っていられる。そのおかげか洗濯中に書く日記も捗る。福江島まではあっという間に着いた。いよいよ最後の島ということでテンションは上がる。 島に上陸したら、まずはターミナルで情報収集をする。長崎へ行くフェリーの時間を再確認し、周辺の観光情報や地図を手に入れる。2時間15分で20kmを走らないと風呂に間に合わない。途中で、五島牛を売っている産直もある。俺のコースが決まった。 |

奈良尾港からフェリーに乗って福江島へ
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福江港へ入港
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道を定めたら急いで走りたいところだが、雨が降ってきた。ちょうどコンビニだったので切らしそうな状態になってるガス缶を1本買ってレインウェアを着て走り出す。すると5分で雨はやんで暑くなってきた。脱いだレインウェアを荷物にくくって集中して走って行く。徐々に坂を上っていく。目的地に向けては100m弱の峠を越える地形になっている。順調に進んで産直に着いた。急いで牛肉を買っていく。夕方ではあったが品切れでもなく順調に手に入れる。付け合わせの野菜も手に入れて、サイドバッグの中にある保冷バッグに肉を詰めていく。保冷バッグを使うと収まりが悪いという課題はあるが、何とかサイドバッグに食材を収めて走り出す。
順調に峠になってるトンネルへ向かう。トンネルを抜けると下り坂が始まる。この時点で17時半。あと1時間で風呂までおよそ10kmを走らないといけない。下り坂だし余裕はあるだろうか。ペースを緩めること無く下り坂を気持ちよく走っていく。徐々に日が暮れ始めている道は車も少なく快適に走れる。坂を下りきって海沿いに出ると、アップダウンが始まる。ここに来ての上り坂はしんどい。3本ほど走った交差点にあるコンビニの前を曲がると商店や酒屋が続く。キャンプ場も風呂も近い場所ではありながら、結構な便利さがうれしい。ここに来て風呂の正確な場所が分からず道に迷う。大きく動いてしまう前にスマホのナビで道を調べて慎重に行く。手戻りは最低限にしながら進む。フロントバッグの上にスマホを置いて音声でナビをしながら風呂へ向かう。 |
18時半ぎりぎりのタイミングで岐宿(きしゅく)の温泉にたどり着いた。受付に一言言って時間をもらって風呂道具を取り出す。昨日は風呂を逃しているので今日は必死だったのだが、一安心である。ここに来ての温泉も有り難い。体を洗っていると、隣に座っているおじさんに話しかけられる。2日ぶりの風呂をギリギリで確保できてテンションは上がっているので話は盛り上がる。一安心して風呂から上がると日が暮れて暗くなってきた。途中で見つけた酒屋でビールを買う。ビニール袋を片手にぶら下げてキャンプ場へ向かう。バックパッカーの男女を追い越しながら海岸へと向かう。おそらく無事にキャンプ場への道に入っただろう。
すっかり暗くなった海を見下ろす丘にはテントがちらほら見えてきた。キャンプ場に着いて一安心と言いたいところだが、風がとんでもなく強い。草地の端にはステージがあり屋根もある。ゲリラキャンプならここにテントを張ってしまいたいところだが、キャンプ場でそれはまずい。ステージに自転車を立てかけてテントを下ろして張る。まずはグランドシートを広げて四隅にペグを打ち込む。風上からうまく広げて地面に安定させる。次にテントを張るがポールを通して膨らんだあたりからは風力と腕力と体重の勝負になってきた。テントの端をしっかりつかんで回しながらフライシートも固定していく。張っておいたグランドシートに合わせて着地させてペグで固定していく。
何とかテントを張り終えたところでテント内の四隅に荷物を入れて飛ばされないようだめ押しをする。ここまでやってもテントが飛ばされそうな不安を抱えながら、夕飯の準備をする。サイトから階段で海寄りの炊事場で夕飯を作る。まずは米を炊く。米を炊きながらビールを飲み、米が炊き終わったらいよいよ満を持して肉の焼きに入る。十分に熱したフライパンに下味をつけた五島牛リブロースを乗せる。焼きすぎにも気をつけて、塩も壱岐の天然塩と素材にはこだわる。キャンプ中の料理の勘はさえて絶妙の焼き加減を実現する。中はレアで暖かく焼き上げる。脂はしつこくなく肉は柔らかくうま味が広がる。キャンプ自炊最高額のステーキはかつてない満足感である。安く売ってた切り落としの部分はタマネギと醤油とみりんと酒で牛丼の具にする。これもご飯にかけると最高級の牛丼が完成する。味付けも絶妙に決まり、荷物の中で場所を取っていたタマネギも1つ片付いて満足である。 |

五島牛リブロース
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塩こしょうだけでシンプルに焼いた
五島牛のステーキ
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五島牛の切り落としの牛丼
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8日目 |
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魚津ヶ崎→白良ヶ浜→頓泊→大瀬崎→玉之浦 |
54.40 km |
2018/05/04 |
夜中はテントがバタバタしたが、朝は風がマシにはなっている。最後の島に無事に着いて予備日も出来た精神的余裕もあり、たまっている疲れもあり朝は遅く目が覚める。昨日は暗かったので気づかなかったが、晴れた昼間に見ると青い海と磯と向こうの半島も見えて絶景が広がっている。テントを片付けて出発しようとすると、既に10時になっている。受付に代金を払って出発する。この辺りはいつも風が強いが、これでもマシな方だという。海に浮かぶ孤島は自然環境が厳しいことを実感する。
島を一周する道に入り、逆時計回りに福江島を回っていく。本来のセオリーは逆回りではあるが港から風呂までのルートとか寝床とか色んな事情を考えて致し方ないところがある。振幅の少なめなアップダウンをこなしていると、ストイックな走りをしているロードと何度もすれ違う。6月のレースに向けて練習中の人たちが多いようだ。こっちは気が抜けきってる状態なので刺激は受けるが真似をしようとは思えない。そんな駄目サイクリストモードで走っていると、右に白良ヶ浜(しらがはま)の公園が見えてきた。道の駅も近いし、きれいな海も見れそうで楽しみだ。
なかなか海が見えてくることがないまま、道の駅に到着する。とにかく自転車を置いて、団体客で混んでるレストランを横目に展望台へ上がる。そんなに高さが無くて眺められないが、河口と海の景色にして水がとんでもなくきれいで底の白砂が透けて見えている。道から少し離れて浜に行く方がよさそうだ。河口から海に広がる遠浅の海岸を間近で楽しむ。上五島に続いて、福江島の海もかなり魅せる海である。
島の北西にある半島はスルーして西側を南下していく。アップダウンが出てきたが、追い風に乗って快適に走る。何本か丘を越えると、目の前にとんでもなくきれいな海が広がる。これも思わず立ち止まってしまう。円弧で広がる真白な砂浜にグラデーションになっている遠浅の海は見事である。夏になると海水浴場なのだろうけど、今の時期は海を眺める人がいても泳ぐ人はいない。海の家から海に向かって砂の中を歩いていくのも気持ちがいい。波打ち際に行ってみても、どこまでも続く透明な海が美しい。自然の造形に見入ってしまう。
次の海岸へ曲がってみる。これは入り江沿いに少し進むのだが、さっき以上に沖まで遠浅の入り江が続いていて、入り江の海全体が透明だ。こんなのは今まで見たことが無い。オフシーズンの海水浴場なので客は誰もいなくて俺一人で楽しめる。入り江が河口になっていて1km近い距離は遠浅の透明な海が続いている。この凄さは見入ったまま休憩モードに入ってしまうものである。五島の海の凄みを感じて、圧倒されてしまうものがある。 |

魚津が崎キャンプ場
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白良ヶ浜 どこまでも遠浅の白い砂
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高浜海岸
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気持ちの良い海岸と道
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高浜の波打ち際から
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頓泊海岸 こちらも遠浅
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見たことも無い色の海
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河口にきれいな砂が堆積し
遠浅の美しい海岸が形成される
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また南に向けて走っていく。途中の温泉地があるので、そこで昼飯をイメージする。時間的にはやや遅めにはなってきた。島旅も長くなってきたのでアップダウンに慣れてきた感はあり、多少のしんどさは感じながらも丘を越えると入り江の向こうに集落が見えてきた。入り江沿いにトレースする道を進むと温泉に着いた。足湯はあるが混んでいる。本当はこのあたりで泊まりたいのだが寝られる場所がどこにもない。キャンプ場まで走ると結構な距離がある。自転車を置いて昼飯を食えそうな店を探したが、1軒見つけたところは既に閉店しほかにはどこもない。仕方なく商店でパンを買って手持ちの蒲鉾をおかずに食べるしかない。殺風景な建物の裏で立ち食いするしかない。こういうのが長崎の島々の駄目なところで、温泉に入ったらついでにご飯を食べたい そういう欲求に答えるだけのシステムが無い。島にお金を落としていくシステムが整っていないと言われがちだが、まさにその通りである。
温泉で何も得られる物がなく、また南へと走っていく。対岸は無人島と思われる小さな島々が浮かんでいる。波も立っていない大きな川ぐらいのイメージの海峡を見ながら進んでいく。こういうのが五島の海の景色の一部でもある。さほど坂に苦しむこともなく玉之浦へ曲がる分岐へたどり着く。これを玉之浦の半島側へ曲がる道へ進んでいく。少し坂を上ったものの、比較的平坦な道を進んでいく。右に静かな湾を眺めながらカーブを気持ちよく曲がる走りが続く。
右に大きな公園が見えてきた。今日のキャンプ予定地だ。今日は西に突き出た大瀬崎から夕日を見ようと思っているが、現時点で16時。良い時間帯である。標高200m近い上り坂を越える岬なのでフル装備でもギリギリ行けるかもしれないところだが、キャンプ場に荷物を置いていきたい。公園へ曲がってみる。テントサイトを見つけた。炊事場の隅に荷物を下ろしていく。必要最低限だけをフロントバッグに詰めていく。この時点で16時30分。日没が18時30分と予想すると悪くない。
身軽になった自転車で快調に走っていき、いよいよ大瀬崎への上り坂に入る。覚悟はしていたが本格的な峠の上り坂である。鋭く曲がるワインディングの坂をグイグイ上っていく。荷物がないので足が止まることはほぼ無いまま進んでいく。ギアもインナーを使う必要もなくセンターだけで行ける。荷物を置いていったのは正解だったようだ。徐々に視界が開けてくると下界の眺めが本当に見事である。福江島の南の海岸線を遠くまで見渡せる。気持ちに余裕が出てきたので写真を撮ったりしながら走っていると山頂の駐車場にたどり着いた。この時点で17時過ぎ。夕日は余裕で見えるだろう。
奇跡的に繋がるスマホで日没時間を調べると、なんと今日は19時5分だ。驚くほど日没が遅い。1時間半以上も待つ必要がありそうだ。展望台をウロウロして大瀬崎の方を眺める。まだまだ太陽は赤くなく海から一筋の光としてこっちへ広がっている。沖の方まで遮る雲がないので夕日は期待できそうだ。
ただ、日没まであまりに暇だし、風が強いので寒い。荷物を下ろした時に痛恨のミスで防寒着やウィンドブレーカーは置いてきてしまった。段々と寒さとの戦いになってきた。寒いからといって降りてしまうのはもったいないので我慢していると、18時半になってようやく赤い太陽が海の方に見えるようになってきた。写真を撮りまくりつつ太陽が沈むのを待つ。この待ち時間を考えると、荷物を下に置いてくるというインチキをしたのを後悔する。全部を連れてきてもおそらく間に合っただろう。そして、ようやく太陽が海に接する手前まで来た。回りの客と一緒に歓声をあげながら太陽を見る。海に突き出る大瀬崎の灯台と向こうの雄大な海に沈んでいく太陽は本当に美しい。最後に水平線の向こうに沈みきるまで夕日の雄大な眺めを楽しんで行く。 |

海沿いから山深い道へ入る
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島越しに広い海
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島に囲まれた静かな海
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大瀬崎から東側を見下ろす
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大瀬崎
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大瀬崎の向こう 西ノ海へ沈む夕日
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岬に建つ 大瀬崎灯台
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雄大な夕日
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すっかり満足したところで、回りの客とも意気投合してしまい俺の出発は応援を持って見送られた。日が沈むと俺には現実が待っている。明るい内に峠を下りきってしまいたい。山の向こう側に日が沈んだので俺の居る側は日陰で日没後に暗くなるのは早い。どんどん暗くなっていくが頼れる2つのヘッドライトとテールライトを点灯させて、冷静にカーブを見ながらトレースしていく。きっちりスピードも出してメリハリのある下りを終えて海沿いの道に戻る。一度、玉之浦の街の方へ向かってみる。今日は買い出しが何も出来ていないので夕飯はレトルトカレーになりそうだ。それも悪くはないのだが、買い出しか何か美味しいものかを期待していく。しかし街には開いている店は無く玉之浦教会まで行ったところで引き返す。
暗い道を走って公園へ戻る。テントサイトの上にテントを張ってペグは打たず荷物をテント内に放り込む。明日まで天気は良いようなので心配もないだろう。夕飯は米とご当地レトルトカレーになりそうだ。まずは米を炊いて、次にカレーを温める。伊万里で買ってきたご当地カレーが2つあるので順番に試す。まずは問題作だ。伊万里梨カレーだ。伊万里の名産である梨をカレーに入れている。こっちは当たりかハズレか読めない一品なので、先に行く。フルーティーな甘さが多少は入っているが言われないと梨とは気づけない。甘さと辛さのバランスが良い美味しいカレーだ。次に伊万里牛黒カレーだ。牛肉のうま味やコクが効いてて美味しい。がつがつと平らげた。 食器を片付けつつ空を見ると星がとんでもないことになっている。天の川と思われる星雲も見えている。草が生えていないところで仰向けになり、誰もいない公園でMISIA 星空のライヴを聴きながらしばらく星を眺める。今までも何回かは星空の凄いところを経験したが、ここのは一か二を争うような凄さがある。今日は雲一つない空なので空の隅から隅まで小さな星で埋め尽くされている。こんな贅沢な星空はなかなか無いだろう。今日はとんでもなくきれいな海に魅了されたと思ったら、圧倒的なスケールで夕日、圧倒的に凄い星空と福江島の大自然を満喫できている。素晴らしい一日に感謝して、眠りについた。 |

玉之浦教会
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ご当地カレー
伊万里牛黒カレーと伊万里梨カレー
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伊万里梨カレー
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伊万里牛 黒カレー
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9日目 |
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玉之浦→大宝寺→富江 |
35.47 km |
2018/05/05 |
今日も目覚めは遅い。もう疲れを隠せない状態になってきている。朝から頭痛もあり、バファリンを飲んで準備を進める。天気が良く暑い朝にダラダラと撤収する。福江まで50kmほどだが、今日と明日で2日使えるので緊張感も薄い。今日の内に福江まで行って、のんびりするかとも思っていたが、走りへのモチベーションは上がらない。
公園の前にある井持浦教会(ルルド)へ寄っていく。これも古い歴史を感じるレンガ造りの白い目地が鮮やかな教会だ。積まれた岩の中のマリア様も印象的だ。日本で最初のルルドということで日本のキリシタンとしては重要な拠点となっている。だが、ルルドが何なのかは俺には分からない。島の歴史ある教会を楽しむことだけが俺にできることである。
昨日来た道を戻って島一周の道へ戻り、また南の海の方へ道を下る。集落の中を走っていると大寶寺へたどり着く。この辺りは教会一色でありながら仏教の寺は珍しくも感じる。見慣れた日本の風景なのに、どこか新鮮に感じてしまうものがある。西の高野山とも言われる寺は立派な本堂があり、周りも見所が多い。子宝や子供の成長には由緒あるお寺で弘法大師が赤ん坊を抱いている像はほかでは見たことがないものである。
今まで全く知らなかったが、寺の本堂内に貼ってあった厄年表を見て気づいた。俺、今 数え年で42歳の昭和52年生まれ。本厄年だ…。 |

井持浦のルルド
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岩の中にマリア様
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大寶寺のお参りと見学を終えたら、島一周の道を走りに戻る。ここから厳しい上り坂が始まる。地図を見るだけでも厳しそうなアップダウンは想像していたので気合いは入っていた。熱い日差しに炙られながらも坂を上る。1本目の坂を越えて下ると、集落を渡るように鯉のぼりが吊ってあり気持ちよさそうにGWの青空の下を泳いでいる。地元のお母さん達と話をしながら鯉のぼりを眺めていく。ここからさらに厳しい上り坂が始まる。凄く高いところに道路らしきものが見えた。まさか、あそこまで上るとか言わないよねと思っていたが、どうもそこを目指して道が延びているようにしか思えない。遠くには昨日上った大瀬崎の山が見えてきたが、どうも俺が今いる場所の方が標高が高く大瀬崎の山を見下ろしているようにも見える。
最後のあたりはトレーニング要素がないのにインナーギアを使わずセンターだけで上りきった。26HEランドナーのポテンシャルを生かし切った形となった。長く厳しかった峠を下りきると、富江に向けてゆっくり走る。15時を過ぎて昼飯を食べるところがなかったが、ようやくコンビニのポプラがあった。ここで弁当を買って新聞コーナーを見て驚いた。今朝の朝刊の一面は長崎・天草の教会群が世界遺産に正式決定となっていた。教会群を巡る旅をしている今に快挙といえる瞬間に立ち会えるのは大きな喜びである。俺が何をしたわけでもないが、凄く大きな達成感が胸に突き上げてくる。潜伏キリシタンという独特の歴史に導かれた独特の文化であり、それが今でも地域の住民たちに信仰され大事にされている。これこそ文化遺産として相応しい。前にも長崎や天草や平戸の教会群に行って世界遺産になって然るべきと思っていたが、ようやく本当に世界遺産になる。今回の旅で立ち寄った頭ノ島教会、青砂が浦教会も対象となっている。
遅い昼飯を食べ終えた時点で16時。この先をどうするか思案する。15kmほど走って空港近くの温泉で入浴し、5km進んで福江の市街地まで走ることはできなくもない。ほぼゴールってことになるし、残業すれば十分に可能な距離である。体力的にも問題はないだろう。今いる富江にも温泉とキャンプ場がある。言うまでも無く富江に泊まると楽だ。明日の午前で福江港まで走ることも楽勝だろう。富江まででストップだといくら何でも今日走ってなさ過ぎとも思える。だが、今は働き方改革が叫ばれている時代である。自転車の旅も残業ばかりするのではなく働き方改革ということで、富江に一泊することを決定する。
そうと決まると張り切る。まず、温泉の営業時間を確認する。結構、遅くまで営業しているので安心だ。富江の町で買い出しをする。スーパーで野菜と魚を買う。魚は向かい側の鮮魚店からスーパーにサテライトしているので、地魚である。買い物の袋を下げたまま海沿いにキャンプ場を目指すが漁村で道に迷う。複雑に入り組んだ道を走って何とかキャンプ場へ到着した。チェックインしたらテントを張る。予報では明日は雨と言っているので、炊事場に近いサイトを選んでテントを張る。ペグをしっかり打って荷物を入れる。 キャンプ場を出発して先ほどの温泉へ向かう。身軽になった自転車で海沿いを走っていると、溶岩が流れた跡と漁をするために積まれた岩でできた磯だまりと、その向こうに鬼岳が見える絶景が現れる。わざと磯だまりを作って満潮時に来た魚が迷い込む仕組みだ。大昔からある漁場なので景色として溶け込んでいる。磯だまりの鏡のような水面に山が映り見事な景色になっている。温泉で疲れと2日分の汚れを落として、キャンプ場へ戻る。 |

アップダウンが多い海岸線
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遠くを見渡す海の眺め
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集落の上に鯉のぼり
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遠くに大瀬崎が見渡せる
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溶岩の磯と潮だまり
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鏡のような潮だまりに山が映る
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複雑な形になってるのは
伝統漁法の すけ漁
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複雑な形と鏡のような磯だまり
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スーパーで買ってきたオガネとイシダイで刺身と漬けを作る。これも手慣れたものだ。オガネという魚がいくらネットで調べても出てこない。何かの地方名と思うのだが、分からない。きちんとロックアイスも買ってきて、壱岐で買ってきた焼酎を飲みながら、魚の美味さも楽しむ。その間にイシダイの刺身を半分漬けにしてご飯も炊く。最後のキャンプを心から楽しむ。焼酎と醤油で漬けにしたイシダイと伊万里の米は海と大地の味が融合した美食になっている。絶海の孤島である福江島なので星を楽しめるかと思ったら空は雲に覆われているので星は全く無い。昨日の夜のうちに星空を満喫したのは正解だったようだ。
最後はガスを使い果たすまでお湯を沸かして、ガス缶に穴を2つ開けて中を水で埋めてガスを完全に出し切る。これも旅の終わりに必ずやるルーティンになっている。旅の途中で買い集めて持ち運んできた酒やガスがなくなって食材も片付いて荷物が少しだけ軽くなると旅の終わりが近づいているのを実感し寂しくもなる。だが、予想通りにハードだった島旅で、もう1つ島を回れるかというと厳しい物もある。キャンプ最後の夜も片付けを終える。 |

壱岐の麦焼酎 嘉助 (かすけ)
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イシダイとオガネの刺身
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イシダイの茶漬け
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10日目 |
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富江 → 香珠子 → 福江
長崎市内 |
26.57 km |
2018/05/06 |
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福江島・福江 -フェリー→ 長崎 |
寝ている間に大粒の雨が降ってきてテントに雨音が響く。朝になっても雨はやむことが無い。雨が小降りになった隙を狙ってテントを片付ける。最終日が雨だと帰ったらすぐに荷物を干さないとカビが生えてしまうのでいろいろと神経を使う。ウェストバッグの中も防水をしっかりして雨に備えていく。
雨が加速する前に出発する。まず目に付いたサンゴ資料館に寄っていく。宝石サンゴを売りつつ資料館もやっている。深海の宝石サンゴはこの辺りでも獲れるようだ。驚くのがサンゴの樹齢である。1万年を越えるものが当たり前のようにあり、それを加工して宝飾品を作っているのだ。薄いピンクや白の淡い色のサンゴで不思議な形を作られているものに見入ってしまう。完全に冷やかしの客に暖かくしてくれるサンゴ資料館を跡にする。 |

雨が降る朝の撤収
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サンゴ資料館
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深海で20000年かけて育ったサンゴ
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出る頃には雨も本降りに戻っている。今日はそういう日なのだろう。しばらく走っていると地元の車のおじさんに話しかけられる。2日前に福江のどこかの木の下で話したと言っているのだが、どうも場所の記憶が無い。福江は急いで通り過ぎたので思い出を作る余裕など無かったはずである。よくよく思い出してみると、岐宿の温泉の洗い場だ。俺を覚えていてくれたのは非常に嬉しい。気持ちよく分かれて走って行くと、トンネルの出口でまた待ってくれている。富江で買ってきてくれたお菓子を持っている。わざわざ俺のために買ってきてくれていた。ありがたく受け取っていく。旅人以外に可愛がられる旅人でありたいと思っているので、うれしいものである。
さっきのおじさんに教えてもらった観光地に立ち寄っていく。椿が海岸沿いに並んでいて海に降りれる。だが、今日は大荒れの海なので降りることはできないが、お土産屋さんに寄っていく。椿油のグッズをいっぱい売っている。色んな体験はできるようだが全て予約制で何も予約していないので、出来ることは無い。買い物をした後で昼飯にしようと思ったら、なんと完全予約制だ。仕方なくソフトクリームだけ食べていく。糖分は補給できたが体が冷えた。一周道路に戻り、大浜に下る。
大浜から鬼岳をぐるっと回る手もあったが、福江港にショートカットする道を選ぶ。少し上り坂があるが何とか越えていき、徐々に家も増えて車通りも増えてくる福江市街に進む。下り基調の道を進んでいき、ついに福江港に戻ってきた。当初の計画から1日遅れではあるが、今年の旅の完走が決まった瞬間である。佐賀、壱岐、対馬、五島列島と厳しい地形とスケジュールの島旅を無事に終えた喜びは大きい。自転車を置いて情報収集をする。高速船だと欠航のリスクがあるが、フェリーは大丈夫そうだ。 |
乗船手続き開始までは時間が十分にあるので、まずは昼飯を食いに行く。港の真ん前の食堂が美味しそうなので寄っていく。肉うどん定食が美味しそうだ。うどんはもちろん五島うどん、肉も米も全て五島のものだ。付け合わせのアジのみりん干しがとんでもなく美味い。全部があまりに美味くて箸が止まらない。ふわっともちっしたうどん、豊かな牛肉とあごだしの味、米粒に甘みのあるご飯、身の味がしっかり濃くみりんとの相性が抜群のアジ。小さな食堂なのだが、あまりの美味さに驚いてしまう。
まだ降り続く雨の中を商店街へ向かう。実家と目に入れても痛くない姪っ子&ツインズのところに五島の美食を送るための店を探す。冷凍のアオリイカや蒲鉾など五島の名産品を詰め合わせて発送する。店員さんと話が盛り上がった。話題は世界遺産のことだが、意外にも五島で一番大きな福江島には世界遺産認定された教会が無く、全てほかの島の教会のことだそうで実感は特に沸かないとのことだ。五島うどんも上五島の名産で福江島の人はあまり口にしないということで、五島列島と一言に言っても島ごとに文化や特色は違うものであることを改めて知る。その違いを知るほど時間もかけてないし人と話せていないと痛感するものがある。
最後に1時間ほどで資料館を見ていく。ずぶ濡れなので玄関先まで自転車を入れさせてもらえた。福江の城跡にある博物館で見所は非常に多いが時間が押してきたので駆け足で見学していく。五島のお祭りや漁業や文化などを展示している。
五島ですべきことは全て終えて福江港へ戻る。さらに雨脚を増した状態ではあるが乗船手続きを済ませる。外でフェリーへの乗船を待たされている間も大粒の雨が打ち付ける。車で待つ人は良いが、こっちは生身の人間である。ほかの島から来て長崎を目指すフェリーへの乗り込みは慌ただしい。まず福江島に降りてくる人を待って次に乗り込む。なかなかの慌ただしさの中で滑りやすいデッキに気をつけながらフェリーへと走り込んでいく。
自転車を置いたら船室のカーペットに陣取る。雨の福江港をデッキから見送ったら早々と船室へ戻る。港から出ると船は激しく揺れている。こういうときはカーペットに寝転がって船の揺れに自分を同化させるのが良い。寝転んで日記を書きながら長崎へ向かっていく。4時間以上は掛かるので気長に耐えながらすごしていく。揺れが収まったと思ったら長崎の湾へと入ってきた。周りには長崎の街の明かりが見えている。こうなると安心感が出てくる。 |

絶品 肉うどんとアジのみりん干し
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土砂降りの雨の中、フェリーへ
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福江島を後にする
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フェリーは長崎へ着岸し、開いたゲートブリッジから長崎へ降り立った。後は陸路で帰るだけなので、船の欠航とか乗り遅れとか色んな心配事が全て終わった。相変わらず降り続く雨の中で今夜予約していたホテルを探す。曲がる場所に迷いつつ長崎市内を走り、ホテルに着いた。チェックインすると自転車は従業員通用口の中に入れさせてもらえた。従業員以外は入って来れないよう施錠されているし雨にも当たらないし安心できる。洗濯物だけサイドバッグから取り出し、フロントバッグからは充電器と風呂グッズを取り出していく。部屋で着替えてからホテル内のコインランドリーに汚れ物を入れて洗濯を開始する。その間に風呂に入る。
乾燥している間にホテルから歩いて飲みに行く。GW最終日とあって客はまばらである。地元の魚や野菜を使った炉端焼きメインの店を見つけた。俺の食に関する勘が働いて、魚料理も野菜料理も本当に美味しい。タフな旅の最後を締めるのにふさわしい店だ。すっかり満足する。
ふらふら歩いて街を散策し、ホテルへと戻る。乾燥した衣類を持って部屋へ上がり、力尽きて眠りにつく。 |

旅の終わりの一杯 |
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11日目 |
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長崎市内 |
5.06 km |
2018/05/07 |
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長崎 -長崎本線・鹿児島本線 特急かもめ→ 博多
-東海道・山陽新幹線→ 東京 -東北新幹線→ 宇都宮 |
最終日も天気は冴えない。ヤマトの営業所を見つけたが店の前が狭い。梱包している最中に雨が降ってきた。雑居ビルの入り口の狭いところで梱包していると邪魔になるが仕方ない。バタバタしながら梱包を済ませて発送する。昨日はさっさと通り過ぎたフェリーターミナルへ再び向かう。フェリーターミナルでウェストバッグをあさるとスマホがないことに気づく。どうやら発送してしまったようだ。慌ててヤマトの営業所へ戻り、荷物を開けさせてもらう。何とか見つけて、またフェリーターミナルへ行く。思ったほど見所もなくスタンプなどもなく、今日は長崎でやれることが尽きたので、長崎駅へ行く。
自転車をばらして輪行袋に入れ、フレームと構造物を鍵で止めたら、昼飯を食べに行く。最後は駅にある回転寿司にする。長崎や五島の海の幸をちょっとずつ楽しめる贅沢な昼飯を終える。土産を探すと、今は福砂屋のカステラがカラフルなキューブ型の箱で小分けにされている。これは良いとばかり買っていく。長崎で出来ることは全て終わった。 |

特急かもめに乗って撤収
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輪行袋を持って特急かもめのホームに向かう。長崎は突き当たりになっている駅なのでホームは階段なしで行ける。電車に乗り込み、デッキの手すりにストラップを絡めて倒れ防止をして座席に行く。日記を書き綴りながら電車に揺られて博多へ向かう。長旅なので気長に書いていく。博多に降り立つ。一応、俺の故郷ではあるが4回目の素通りである。新幹線のホームへ移動し東京行きのぞみに乗り換える。最後部の席で自転車を置いて安心できる状態になる。日記の続きを無心に書き綴り、東京へ着く。最後は東北新幹線に乗り換えて宇都宮へ向かう。もう、完全に現実に引き戻される時間である。
宇都宮に着いたらタクシーに乗って輪行袋ごと自宅へ帰る。自宅で輪行袋のまま自転車を構造物に施錠して2018GWの旅は終わりを告げた。 |
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