旅記録

2005 夏 北海道(道央)
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0日目 宇都宮 −東北新幹線→ 東京 −山手線→ 浜松町
−モノレール→ 羽田空港第2ターミナル
2005/08/06 羽田 −ANA→ 千歳
新千歳空港 −千歳線→ 南千歳 −根室本線 特急おおぞら → 釧路
 忙しすぎて、2日前の夜中に佐川急便の営業所に持ち込みで荷物を釧路へ送る。今回は初日は釧路のホテル泊にしたので荷物の引き取りもそこにして、チャリだけ持って行くことにしたのである。週末まで仕事をこなして、連休に突入。準備も完了して行くだけとなっている状態で眠りこけてしまった…。
 目が覚めるとすでに6時。高速バスは1時間半前に旅立っている。あわててタクシーを呼んでばらしてある自転車も積んで出発。新幹線に飛び乗ったが、8:50のフライトまで時間がない。どう急いでも8:40着となりそうだ。10分前で搭乗手続きは受け付けてくれないはずだし、ほぼアウトだ。不幸中の幸いでチケットは予約だけで買っていない。東京、浜松町と熱い乗り換えをこなして羽田に着いた頃には8:40。チケット購入に走ったが既に駄目。次以降の千歳行きか釧路行きを探してみる。釧路行きは夕方しかない。釧路空港から釧路市内のホテルをナイトランするのはいやだ。ここは千歳行きを探すことにした。9:30のフライトなら空席があった。それで飛ぶ。
 俺としたことが…。という感はあるが、何とかつながりそうだ。千歳を降りたらすぐに電車に乗って特急おおぞらで釧路に行けそうなタイミングである。某シビ○○の開発に追い込まれていたせいで、いつものように株主優待券を買わなかったのが吉とでた。おかげで新幹線代に飛行機代に特急代と大幅に予算オーバーしている。飛行機に乗り込み、眠りにつく。…目が覚めると千歳への着陸体勢に入っていた。天気も絶好調。俺も快眠。
 降りて荷物を待っていると、予想通り会社から着信と留守電が入っている。やはり、今年はストレスも限界、業務もすっきり終わらずで休みに突入という感じである。ストレスのせいでテンションもあがらないというのも困ったものだ。みどりの窓口で行列を待ってみるが、いっこうに進まない。切符ぐらいさっさと買え!といつも思ってしまうが、快速がすぐ出て行こうとしているので自販機に行く。結局 自販機でも特急券は購入できた。ギリギリ発車前に乗り込んで、南千歳へ。ここで特急おおぞらを待つ。学生っぽいサイクリストがいっぱいいる。結構 混んでいる。というのは席に座れないのは我慢できるが、自転車を積めないという事態は避けたい。特急おおぞらを待つ間に、カニとイクラと鮭のいかにも北海道らしい駅弁を買い準備完了。
 そして おおぞらはホームへやってきた。まず載せてみるが、1個の通路に3台という状態だ。乗ってしまえばこっちのもんだが、となりの出入り口やラゲッジスペースを検討してみる。すると車掌が「ここに置くな」と怒ってきた。それ以前に俺らは特急料金を払ってる「客」である。当然逆ギレする。「じゃあどうしろというんですか」「危ないから置くな」の一点張り。次に検札に来たときに「客に対するものの言い方もしらんのか」とくってかかる。近年の北海道というのは節々に「乗せてやってる」「迎え入れてやってる」「泊めてやってる」という風潮が見られて気に入らない。俺みたいな旅人に見放されたら観光以外に何も産業がない北海道は終わりだと思うが。ろくに冷房も効いていない。客が座ってるシートに手をつきながら歩いてる馬鹿車掌。史上最低の乗り心地の特急にゆられて釧路に到着。まあ、飛行機乗り遅れとかそういう事態が無い限りは二度と乗ることはないと思うが。
 釧路駅でチャリを組み立ててみるが、部品紛失の危機にも遭い、フレームにも若干傷が入った。少し考える必要がありそうだ。ちょうどこれから輪行して出発しようとしている中学生ぐらいの子を手伝いつつ、俺のチャリも組み立て終える。荷物は何もなく自転車のみで釧路上陸となったので、何かもの足りない非日常でない旅の始まりである。今日は釧路市内はお祭りのようだ。少しワクワクしながら釧路の街を走りホテルへ行く。荷物3点のうち1点はまだ届いていないようだ。羽田空港の検査で引っかかったのは、スプレー缶と言っていたが、カセットコンロのガスは無事とどいている。よりによってチェーンにかけるオイルが問題だったようだ。何かずれてるような気がするが仕方ない。ていうか油モノはそれしかもってきていないので痛い。雨でも降られたら困ってしまう。同時多発テロ以来、荷物へのよけいなチェックがうざったい。困ったので佐川急便に電話して荷物の位置を問い合わせる。折り返し電話すると言ってきたので、待っている間に和商市場に行って実家にカニを送るため出かける。上物の毛蟹を実家に送り、俺も北海道の地の物に思いを馳せながら市場を見物。
 いったんホテルに戻って、また佐川急便に電話する。折り返し電話すると言っていた担当者は退社していた。少し怒り気味にもう1回調べろと言う。今度は10分後に電話が来た。まだ羽田に荷物はあったが、夜の便で千歳へ飛ぶようだ。釧路着は明日未明と言ってる。最悪は夕方着か? となると、1日丸ごと無駄になる。いい加減にしろ佐川急便。
 とりあえず、不安を抱えつつも大学時代の友人と釧路の街に飲みに行く。火照ってしまうほどの火力の炭火で炉端焼きを楽しむ。とにかく暑い。かなり大きなメンメやタラバガニの足などを焼きながら酒が進んでしまう。出発から絶好調と言わざるを得ないほどうまい。やはり北海道の食は素晴らしい。この先も楽しみである。祭りで盛り上がる釧路の街を歩き、山本リンダのLiveを見ながらホテルに帰る。荷物の不安と波乱の幕開けの旅に不安を感じながら眠りにつく。

釧路市内にて炉端焼き
(タラバガニ、めんめ、秋刀魚、鮭)


1日目 釧路 → 白糠 → 浦幌 78.42 km
2005/08/07
 よほど疲れているのか、ずいぶん寝てしまった。不安な目覚めである。まだ荷物はこない。もう1回佐川急便に電話してみる。一応、釧路の営業所には着いたようだ。あとは市内での配達の時間帯によるようだ。11時には来るとのこと。午後出発は確定か? ホテルの前で荷物を積み込んでみるが、やはり後ろのテントとザックが積まれていない状況なので迫力に欠ける。近所の人やホテルの人と話ながら時間をつぶしつつ、行動を考える。そして10:15に佐川急便のトラックが来た。段ボールを1個抱えている。俺の荷物だ。早速開梱してチャリに積み込む。テント・シュラフ、ザックをリアキャリアの上に鎮座し、ついに完成型となった。やはり、チェーンオイルは抜かれていた。どこかで556でも買って誤魔化すしかないようだ。ようやく、出発だ。気合いも入る。
やっと完成。釧路出発!
 大学時代の友人と一緒に和商市場へ行き、ブランチにする。今日は気合いを入れて勝手丼といく。時子、タラコ、北海道産鯨、今が旬の生サンマ、たらばの足、ホタテ、ばふんうに、ときしらず、ときこ、ボタンエビ・・・これでもかと乗せていく。値段は敢えて言わないが北海道満載の超豪華勝手丼はかくして完成した。味が混ざらないように気をつけながら食べる。何でもかんでも下品に乗せていてコンセプトが分からないなどと批判される方もいるだろうが、食べてみれば納得の北海道の海の味だ。夏まで内陸海無しの栃木で頑張ってよかった、そう思わせる味だ。
釧路・和商名物名物 勝手丼
(ぐっさんは左側)
 そして、俺の旅が始まった。スピーカーノイズ対策も万全、メーターレイアウト修正も完璧。走りもまあまあ好調。さい先良いスタートだ。太平洋を眺めながら、西へ南へと向かっていく。広くまっすぐな道、高い木が生えていないなだらかな丘、広がる太平洋、時折左側に見える湿原と小さな沼の数々、牧場と牛の群れ、北海道らしい景色を流しながら、進んでいく。
 音別で国道38号から離れて、厚内や昆布刈石展望台を目指して徹底的に海沿いをいって、ダートも少し走ってみたいと思っていた俺の意欲を打ち消すかのように通行止めになっていた。

馬主来(パシクル)沼とランドナー
 仕方なく国道38号をそのまま進んで少し内陸に入りつつ、小さい峠を登っていく。初日にしては頑張ったもので足に疲労を感じ始めてきた。たいした峠でも無いが、結構こたえてしまっている自分がいる。この調子では長節湖まで走るのはきつそうだ。内心、風呂も入れない長節湖のキャンプ場まで無理して走るぐらいなら、浦幌の町中のキャンプ場を狙った方がいいかと思い始めてきた。チャリ旅をする以上、風呂の無い日などあってはならない。そんなことでは一般人に可愛がられるサイクリストになることはできない。計画時点から頭を悩ませていたところだが、思わぬ通行止めによる迂回で解決してしまった。距離としては20km近く計画より借金を残す結果となった。
 やや寂しげな浦幌の街で買い出しをして、銭湯も見つけて、すぐ近くの森林公園でキャンプできることも確認。何か北海道らしいもので旨い晩餐をプロデュースしようということで、5個で100円の男爵を買ってきた。今日の目玉は北海道産男爵の塩ゆで マヨネーズ和えである。テントを張って食材をテントの中にぶち込んで、蚊取り線香でテント周りを武装して風呂へ行く。初日から不安になるほど疲れた体に不安を覚える。やはり出発直前の嵐のような忙しい日々と寄る年波に勝てなくなっているのだろうか。しかし、今年は16日あるから、少しずつでも体の調子を取り戻して、毒された俺の心を浄化して感受性を取り戻していきたい。まだまだ気持ちは前向きで、体のケアでカバーするのみだ。
 テントに戻って、夕食を作る。先週点火したばかりのストーブは絶好調。パスタを茹でて、ソースに火を通して麺をそこに投入。そして沸騰した塩水にジャガイモをぶち込んでいく。そういえば、今日は一般人と全く話をしていない。これではいかん。明日からは「一般人にかわいがられるサイクリスト」を目指して頑張ろう。そう心に決めて眠りについた。


   出発(北海道釧路市)から 78.42 km

2日目 浦幌 → 広尾 → えりも 百人浜 115.66 km
2005/08/08
 久々の早寝早起きで、すっきりと目が覚めた。朝飯は浦幌のセブンイレブンで食うことにして、さっさと片づける。パッキングもチャリの調子も上々だが、俺の足だけがさえない。昨日の疲れを引きずっている。やや寒い朝の浦幌の街を走り、セブンイレブンへ。スヌーピーのポイントが付いてる商品を選んで、朝飯とした。ホントは北海道のオレンジ色のオアシス・セイコーマートに行きたいところだが、仕方がない。糖分もしっかり補給し、水を買って、スヌーピーの点数シールを集めて今日の走りを開始だ。
 相変わらず、足は重くさえない。トレーニング不足は否定できない。しかし今は鍛えるつもりで走ればいい。調子が悪いなりに今までも結果を出してきたし、計画上は多少の不調は見越したものとなってる。焦りもなく強気な自分である。自転車に跨っていれば強い気持ちをもてる。
 そして、相変わらずどこまでも続く牧場の中の国道。そんな単調なコースに少しだけ異変が。セブンイレブンのトラックがハザードランプを点滅させて停車している。左の路肩には横転している軽自動車が。一応、エンジンは止まっているし、燃料などが漏れてる様子もない。運転手がはい出してきた。のぞき込んでみると同乗者は居ない。一応は、カーメーカーで応急救護などの心得もあるので面倒を見ようかと思ったが、セブンイレブンのトラックは既に警察も救急も呼んでいた。ていうかぶつかった相手が無事かぐらい確かめて付き添えよと言いたくなるが、被害者は元気そうだったので、ここは先に進むことにする。軽自動車が、対向車線に飛び出したがオフセット衝突で吹っ飛ばされて横転したと事故の痕跡から見える。悪く言えば自業自得だ。
 さらに進んでいく。今日はとにかく景色は単調だ。湿原か牧場か牧草地か畑。共通して言えること「だだっ広い」である。音楽をならしながら走ると、左に白と黒の立派な鳥が見えた。そのオーラすら感じる堂々とした姿を見て思わず音楽を止めてチャリを止めてしばらく観察する。
 これは間違いなくタンチョウだ。釧路湿原とか有名どころならまだしも、こんな無名な場所で見かけるというのも運がよすぎるのか、鳥の種類を勘違いしているのか分からないがラッキーであることは間違いない(よくよく調べるとやはりタンチョウのようだ)。すごく感動して胸がワクワクした状態で、だだっ広い荒野を走っていく。またタンチョウ居ないかな そんな期待を胸に走っていると、また2羽居た。こちらはつがいのようだ。猛スピードで駆け抜けていくライダー達、チャリダーのスピードだし、心に余裕があるから見れた感動的な瞬間である。夢中で何かを食べているタンチョウ達は俺の姿には気付かず写真を撮られ放題である。その姿は堂々としているようにも感じる。'02 夏の北海道・釧路湿原の達古武でつがいを見かけて以来、2回目の野生の鶴目撃というラッキーな状況である。
野生のタンチョウ

 その後は、予想外に多いアップダウンや向かい風や冴えない俺の体に苦しみながら、進めていく。調子悪いなりに結果を出しているのだろうか、午前だけで60kmを走り抜いた。百人浜を目標とすると残りの距離は結構あるが、いけるペースである。そろそろお昼がほしくなる時間帯だが、浦幌の朝食以来60km近く店らしい店もない。自販機も電源OFFのものがいくつかあっただけだ。久々にホクレンのスタンドと数軒の民家がある集落に出た。商店を見ると食品はほとんど扱っていない。さらにコンビニ目指して走るか!?と思ったところで蕎麦屋を見つけた。迷わず昼食だ。これをスルーしたら何km 店がないか予想も付かない。蕎麦と豚丼のセットでお腹を満たして、歩いて旅している人と話をして出発。ピースサインで追い越していく。
 そして昼食から相も変わらず牧場と湿原の中を15km走って、久々に海が見えた広尾の街でやっとセイコーマートに巡り会う。とりあえず休憩だ。買い出しだ。朝飯から75kmぶりのコンビニである。ナウマン国道ことR336 侮れない。地図で見る限りは百人浜の手前まで30kmは店はおろか民家すら無さそうな道路である。ここは晩飯の食材も買っておかないと飢える。そう直感した。北海道では店があるうちに買い出しはしておけというのが鉄則だ。とくに旅が始まったばかりで食い物のストックがない今の時期は重要である。
 黄金を敷き詰めるほどの金がかかったという海沿いの黄金道路を襟裳岬へと走っていく。今日は天気が良いので気持ちがいい海岸道路という雰囲気である。多少、天気が悪くて海が荒れてる方が険しい景色にあうのかもしれないが、好天の黄金道路も乙な物だ。海沿いに出てから、ますます向かい風がきつく吹き付けるようになってきた。足の疲労も結構きている。どこまでも断続的に続く洞門の中を走っている時だけは風を受けない分加速してパワーを稼ぐ。そして洞門を出ると俺に吹き付ける風で減速して耐える。そんな流れが30km近くも続く。今日の走行距離が100kmを越えると、一皮むけた俺が出てきた。向かい風も大してこたえなくなってきた。さっきまで疲労や冴えない体と戦っていた俺が嘘のように走りが冴えてきた。そして最後に黄金道路を振り返る展望台を越えて黄金道路は終わった。
えりも 黄金道路

 景色も一気に開放的なものとなってきた。百人浜の雄大な眺めと眺めの向こうの襟裳岬を見ながら悠々と走っていく。開放感、複雑で滑らかな地形、まっすぐな道、あまり人も車も居ない風景、なんとなく独り占めしたような気にさえなる。釧路から200kmあまり耐えるばかりの走りだったが、やっとここまで来たという感覚になってしまうほどの景色だ。「北海道の端っこ」が近いそんな実感がわいてくる。
 襟裳岬まであと8km弱というところで、キャンプ場の方へ向かった。百人浜キャンプ場で受付を済ませて、どう見ても無さそうだが一応買い出しスポットを聞いてみる。片道7kmほど戻ったところにありそうなことを言っていたが、もう疲れ切っているので買い出しは諦めた。「うわぁ遠いなぁ」とへこんでいると、女性ライダーが「何か買ってきてあげましょうか?」と聞いてきた。まさか「ビール500mlを2本」だなどと嗜好品を頼むのもナンなので丁重にお断りして、テントを張りに行く。ライダーが固まっているところに張ってもいいのだが、やはり一般人に可愛がられるサイクリストを目指すため、民間人の大きいテント達の間にひっそりと構える。

えりも 百人浜
コックピットからの映像

 近所の風呂は休業日なので、シャワーを浴びてさっぱりして、汚れ物を洗濯しながら、飯を作る。出発以来2日連続で酒無しで飯という健康的な生活である。飯はうまいが旅の空の下だし、そろそろ飲みたい。飯を終えて、洗濯物の乾燥を待っている間に、外で日記を書きながら空を眺めた。海に突き出た岬だからだろうか、今夜は星が美しい。天の川すらうっすらと見えるぐらいだ。こんな空が北海道に来れば何回か見れるだろう。楽しみである。


   出発(北海道釧路市)から 194.08 km

3日目 えりも 百人浜 → 襟裳岬(えりもみさき) → 三石 86.01 km
2005/08/09
 朝5時から暖機運転でブン回してる馬鹿ライダーのせいで目が覚めた。北海道に来るたびにライダー達のマナーの低下を感じる情けない状況である。駐車場に行って一発殴ってきたくなるほどの機嫌で起きあがり、コッフェルを取り出してパスタを茹でる。即食える朝飯は持っていないので自炊するしかない。襟裳岬の眺めを楽しめ無さそうなほど霧が出ているので出発はのんびりとする。パスタで暖まりながら朝食を食べて、冷たい水でコッフェルを洗って歯を磨いて出発だ。
 すっきりとした天気ではないが、多少は雲が高くなってきた。今日は晴れなさそうだから待つのは無駄だろう。昨日から続いている開放的な道をさらに南へと進んでいく。2組ほどサイクリストの集団を追い越して、やや立ちこめてきた霧と寒さの中で襟裳岬展望台に到着。日本の4隅を制覇した俺だが思わずガッツポーズが出た。何となく「端っこ」というものを制覇した喜びがわいてきた。最後の坂を駆け上り、岬を見渡せる展望台で岬にたどり着いた喜びをかみしめる。  岬の向こうの海はどんよりと霧が立ちこめていてよく見えない。写真を撮れるレベルまで霧が晴れないかと期待してみるが、駄目そうである。諦めて岬の突端まで歩きに行こうとしたら、やや貫禄のあるおじさんに声をかけられた。やや押しの強い西日本っぽい人である。話は非常におもしろい人で、本も出版しているし有名な石庭を作っている人だった。女にはもてなさそうだが、エネルギーを感じるしこの男は大きいことをやりそうだと絶賛された。もう一人 車で旅をしているバレーボールのコーチとも一緒に話しをして、楽しく過ごしてしまった。出版物を紹介しよう。「勇気をくれよ」山本宗石著

襟裳岬に到達!!


襟裳岬 周辺の道

 昼過ぎになって岬を出発。話が長くなりすぎた感はあったが、さほど距離は長くないので心配ない。薄い霧がかかる小高い丘を駆け抜けて、コンビニで昼食を食う。セイコーマートは素晴らしい。そして、そこに休憩に来た道路公団メンテナンスカーがSUBARU FORESTERである。各社の4駆がメンテカーにカラーリングされていて、車が好きな俺にはたまらない。SUVの中ではいちおしのFORESTERだけに思わず写真を撮らせてもらった。働くFORESTERはかっこいい。スマートでタフなSUVで、MTもあればBOXER TURBOもある。クロススポーツかSTIがほしい。FORESTERをおかずに飯を食い、三石に向けて出発する。
 やや天気の悪い中だったが、走ってるうちに天気が徐々に回復してきた。左に雄大な太平洋を見ながらの走りが心地よい。日高の高級昆布をきれいな玉砂利の地面に干している。海岸に3m近くある昆布が広げてある光景がなかなか見事な感じである。夕方前には浦河にたどり着いて、ここで夕食の買い出しをする。地物の鮭と筋子を手に入れた。鮭のホイル焼きと筋子丼に決定だ。買い出しを全て終えてスーパーを出ると、そこは霧に包まれていた。
 霧の中、三石のキャンプ場まで10km走る。走れば走るほど海からの霧は濃くなってきた。そしてキャンプ場のあるはずの道の駅三石にたどり着いた。俺の地図には道の駅と併設のオートキャンプ場と普通のキャンプ場が隣接している。しかし、どこを探しても普通のキャンプ場は見あたらない。そしてオートキャンプ場は全て満杯な上、高い。だからといって他に宿はない。オートキャンプ場の隣の海浜公園を見つけたのでそこにゲリラキャンプとする。まずは日が沈んだあとを狙うため、坂の上の温泉に行き体を温めて、すっかり日のくれた道をもどってキャンプする。
 テントを張る前にまず飯にする。オートキャンプ場で米をといで水をくんで、料理する。まずご飯を炊いて蒸らしてる間に鮭のホイル焼きを作る。これも1996年の日本縦断以来 得意料理というか定番となっている。手慣れた感じでモヤシを敷き詰めて鮭をのせてマヨネーズと塩こしょうをかけてホイルで包み込んで火にかける。それが蒸し上がる間に筋子をばらしてご飯に載せて、まずは筋子丼の完成である。さっそく北海道限定ビールのSAPPORO CLASSICを飲みながら夕食にする。思いもかけぬ豪華な夕食になった。イクラよりやや濃い味わいのある筋子、そして柔らかく旨みの濃い鮭がたまらない。生臭さも感じないのは地物としての強みだろうか。濃い霧、キャンプ場の隣の公園、波の音を聞きながらのサイトにテントを張って眠りについた。

1品目 筋子丼


2品目 鮭のホイル焼き



   出発(北海道釧路市)から 280.09 km

4日目 三石 → 静内 → 新冠(にいかっぷ) → 門別 98.19 km
2005/08/10
 道の駅の売店で朝飯を買って食いながら、今日の作戦を立てる。新冠か静内で馬を見てから昼飯にして、夕方まで門別の海岸沿いかケンタッキーファームキャンプ場まで走っておけば、明日の日高までの走りが楽になるかな などと考えて計画する。若干、寒くて体が動かない。そんな俺の体にムチを打つかのように出発する。
 やや天気の悪い中、海沿いの道を進んでいく。静内町に入ると、いっきに馬の牧場が増えてきた。よく体の引き締まった競走馬達を眺めつつ、本格的なサラブレッドのいる牧場を目指して走っていく。10:30ごろには静内の街中にたどり着いて、牧場を探してみる。せっかくなのでo競走馬を育てる厩舎などを見てみたい。あまり競馬も見ないので、特にどの馬に…というような興味はない。どうやら競走馬のふるさと案内所というところで聞くようだ。とにかく行ってみる。建物に入ると、「何の用ですか?」と聞いてきた。観光客に向かって「何の用ですか?」という質問が理解できない。どの馬を見たいのかというよりそこまで興味のない俺が気に入らないのか態度が悪い。「まずどの馬に興味があるのか決めてもらわないと… 牧場主も見せてくれるかどうかわかりませんし」と全てマイナス思考の案内。要するに「帰れ」と俺に言っているようだ。「ええ、もういいです」と冷たく言い放って、その場を後にした。心の底からむかついた。こうして一人競馬に興味を持つきっかけを得ようとした人間を競馬界は失ったと思ってほしい。
 そのまま静内はスルーして、新冠へ進んで道の駅で昼食にする。新冠の方は静内と違ってサラブレッド銀座と呼ばれている牧場がいっぱい並んでいる場所があって放牧されている。ここで馬を見れそうだ。ナリタブライアン記念館までの片道6kmほどの道を往復すればマニアしか受け入れない静内と違って楽しめそうだ。小高い丘の上から始まるサラブレッド銀座だが、丘の上からの牧場の眺めもなかなか壮観である。牧場の真ん中を駆け抜ける道を進みながら、道側ギリギリを歩いている馬たちの写真を撮る。若干天気が悪いのでうっかりフラッシュが焚かれないように注意しながら写真を撮る。サラブレッド銀座の最後の方にあるナリタブライアン記念館を見学して、引き返した。やはり競馬にあまり興味のない俺には理解しにくいものがあった。
新冠(にいかっぷ) サラブレッド銀座

 ややアップダウンのある海岸沿いの道をさらに走っていると、また晴れてきた。海を見ながら走るルートももうすぐ終わりである。釧路から襟裳を回って350kmあまり続いた海岸道路だったが、思えばあっという間だった気がする。門別で夕食の買い出しをしつつ、公衆電話の電話帳でケンタッキーファームの電話番号を調べて電話してみる。予約はガラガラ、値段も500円。これなら泊まるしかないだろう。まずは買い出しをしてテントを張って中につっこんで、お風呂セットだけもって風呂入りに戻ろう という段取りで決めた。まずは買い出しをする。今日はオヒョウの刺身とホッキ貝の刺身。そして御飯と昆布のふりかけという構成で夕食にする。
 とにかくケンタッキーファームに向かう。しかし、結構アップダウンの多い道が続いていく。片道5kmほど走ったところで見えてきた。キャンプ場は水場が真ん中にあるただの広場である。受付は、リゾート地の坂を上ったところにある。やはりケンタッキーファームという名前は伊達ではない。貧乏旅行の俺は若干浮いてしまっている雰囲気もあるケンタッキーファームの中を走り抜けて受付をする。立派な売店もあってビールも買えそうな雰囲気である。風呂のついでに門別で買おうと思っていたが、どうもここでよさそうだ。
 テントを張って、風呂セットを持って身軽な自転車で門別へ走っていく。そして、風呂に入って汗を流して、すっかり暗くなってしまった道をケンタッキーファームへと戻っていく。身軽になったので、さっき結構きつかったアップダウンもさほどこたえない。ただ、暗いのであまり楽しくもなく若干怖さもある。そんな中、小さいツメで地面をかいてる音が聞こえて、大きな声で犬がほえながら追ってきた。しかも上り坂だ。やばい喰われる。そんな気にすらなる中、渾身のヒルクライムそしてダウンヒル。何とか犬から逃げ切った。犬は好きだが、たまにこういう怖さを味わわせられる。
 テントに戻り、夕食を作る。まずはオヒョウを薄く切って、ホッキ貝をさばく。刺身をつまみながら御飯を炊いてビールを飲む。今日もSAPPORO CLASSICがうまい。結構、とろけるような甘みのあるホッキ貝がおいしい。シシャモを食いそびれたのは残念でならないところだが、満足である。今日 買ってみた昆布のふりかけもかなりうまく、御飯をそれだけで食わせてしまう物がある。やや寒い外で日記を書いて眠りについた。
オヒョウとホッキ貝の刺身



   出発(北海道釧路市)から 378.28 km

5日目 門別 → 平取 → 日高 67.76 km
2005/08/11
 今日はもっとも嫌いなタイプのジリジリ上りとなる。昨日買ってきた朝食を軽く食べてテントを畳んで撤収する。今日も暑くなる…そんな予感というか確信じみたものを感じるほど天気が良い。ケンタッキーファームから日高の方へ向かう道は容赦なく坂が上り始める。体重と荷物の重みが俺にのしかかる。どうせ日高まで上りが続くので、このまま上ってグングン標高を稼ぎたいところだが、沙流川へ向けて一気に下り始めた。北海道にしては珍しいワインディングの下りだ。鋭いコーナーに体が付いていかない情けなさの中で下りきった。
 そして、沙流川沿いのアップダウンしながらのダラダラした上り坂が始まる。まずは平取の二風谷(にぶだに)でアイヌ資料館などを見学しつつ休憩する。昔の文化を楽しみながら、日陰の涼しさを楽しむ。多少の現実逃避で体温を下げて、またジリジリと上っていく。昼を迎えたところで、A-COAPで飯を買って、わずかな木陰にこもって飯を食う。あまりの暑さに食欲すらあまり無い。とにかく今日は暑い。
 道の駅でアイスを買って体温を下げつつ、明日に向けて情報収集する。道の駅から少し坂を下ったところにキャンプ場があるようだ。そして隣に温泉もある。サラサラと流れる沙流川を見ながら川面のそばにあるキャンプ場へと下っていく。買い出しの時は絶対に荷物を外していこうという気持ちになる坂だ。

日高までの上り坂

 昼飯でエネルギーを入れて、また日高へと上っていく。ダラダラした上り坂、ジリジリと照りつける真夏の太陽、結構たまってきた疲労。午後2:30には日勝峠への登り始める道の駅・日高に着いた。ここから日勝峠を越えて清水町まで地図では25kmとある。数字だけ見ると行けてしまいそうだが、どう考えてもおかしい。図を見る限りは40km以上ありそうだ。ツーリングマップルと俺の勘のどちらが正しいのか、道の駅でよくよく情報収集してみると俺の見立ての方が正しい。残り40kmで700mUPを無理すると日没までに下りきれない可能性もあるので、ここで今日の走りを終えることにした。
 受付を済ませたら場所取りだ。炎天下で暑いので日陰をねらう。もちろん、一般人にも可愛がられるサイクルツーリストを目指す俺としてはライダーの群れの近くではなく一般人の多いエリアをねらう。早い時間にキャンプ場入りしておいて正解だったと思えるほど、木の下はライダーの群れやファミリーの大型テントに埋められていく。俺もあわてて場所取りをしてしまう。枝が垂れて良い感じに日陰を作ってくれている大きめの木の下を確保して家を構える。いつものようにテントの周辺に蚊取り線香を炊いてからテントを張って荷物を入れる。
 さっき道の駅から降りてきた坂を再び空荷で上って、買い出しに出かける。道の駅のすぐ隣にA-COAPがあった。何かスタミナが付きそうな物がそろそろ恋しくなってきたところだ。ちょうどいい感じのジンギスカン肉が売っていた。しかも冷凍されている。ビールを一緒に買えばビールも冷やせるので都合が良い。あとは肉に偏りすぎないように生野菜を少し買った。
 そこでふと、携帯用の蚊取り線香ホルダーを売っているのを発見した。北海道の峠は傾斜との戦いもあるが、無数におそってくるアブやブヨなどの虫との戦いもあり、かなり消耗させられペースを乱される。特に荷物も多くスピードが遅く止まりがちなため恰好の餌食にさせられる。走りながら蚊取り線香の煙をまけば虫に襲われにくくなるのではないかと考える。効果に期待したい。
 まだ若干時間があるし、暑いので道の駅の隣の自然博物館を見に行く。日高の山々の自然などが展示されている。それを見る限りでは、日勝峠付近ではいろんな動物に樹海が見れそうだ。遠目にならヒグマも見てみたい。キタキツネも今年はまだ見ていない。あとはナキウサギとか見れたらいいなぁなどと思いを馳せる。
 テントに買い出しの荷物を置いて、風呂へ行く。キャンプ場から200mほど走ったところにホテルがあり日帰り温泉をやっている。今日も露天風呂の温泉を満喫し、さっぱりしたところで、テントへ戻る。風呂で自分を見ると、旅が始まって初めて本格的に日焼けした日だったように思える。それほどまでに今日は暑かった。
 日が傾きかけてきたのでランタンに火をともし、フロントバッグからヘッドランプを取り出して電源を入れてみると光らない。電池を替えてみても光らない。予備の電球に差し替えても光らない。つまり壊れた…。これはショックが大きい。今夜はランタンだけでやり過ごして、明日帯広で買うしかないようだ。とりあえず気を取り直して御飯を炊いて、むらしてる間にジンギスカンをフライパンで焼く。汁が多い上、たまり放題のフライパンなので、焼き肉と言うよりは「ジンギスカン煮込み」と呼ぶべき状態になるが、結構それでもうまい。マトンの少しくせのある味と甘辛い汁とシャキシャキしたモヤシの食感が絶妙だ。もちろんビールともベストマッチ。暖かいうちに御飯にかけると何かの丼という雰囲気すらある。
 明日から続く山岳コースの走りに少し気合いを入れながら、日記を書いて眠りについた。

ジンギスカン煮込み!?



   出発(北海道釧路市)から 446.04 km

6日目 日高 → 日勝峠 → 清水 → 帯広 96.47 km
2005/08/12
 今日も天気が良く暑い。登り切れば眺望だけは楽しみなので耐えて上りたい。そして少し日焼けしてワイルドな俺を目指したい。それはともかくテントを撤収して、道の駅のセイコーマートで朝食を食って出発。最初からダラダラ登り始めるかと思ったが10kmほど平地が続く。時間が経つごと、というか昼に近づくにつれて徐々に気温が上がり、照りつける太陽光線の量も増えてきた。
 10kmほど走ると、徐々に上り始めてきた。このあたりから日照りも半端じゃなくなってきた。腕をまくってTシャツの袖の形に焼け残らないようにする。(いや他にすべきことがあるだろう)。空荷のMTBに追いついてからは、抜きつ抜かれつの展開ではないがちぎっては追いつかれてちぎっては追いつかれての展開になってきた。今日の出発から20kmほどで本格的にヒルクライムが始まった。

ランドナー虫除け仕様
左サイドバッグに蚊取り線香装着

 ヒルクライムが始まったかと思えば、対向車線が事故で渋滞し、途中のトンネルが対面通行になったりで道が混んできた。狭い峠道なので車の波に追い越される間は足を止めるしかない。いやでもふらつくほどの傾斜もあるし、トラックなどの大型車も多いしお盆の観光客の車も多い。とにかくやり過ごして車の流れが止まったところで一気に上っては止まってやりすごして…の繰り返しで頂上を目指していく。そんな渋滞と混乱の中でも冷静かつ力強く汗くさく上っていると、トンネルの壁に積み過ぎのグラスロールをぶつけて、大きいグラスロールを1本脱落してるトラックが居た。こんなのに踏まれたらひとたまりもないと思い怖くなってしまう。確かに過積載でガンガン飛ばしてるグラスロールのトラックは多いので怖い。トンネルやガードの近くではタイミングをずらすように気をつけよう ヨシッ。
 3つほど連続していたトンネルを抜けると、対向車の人が窓を開けて話しかけてきた。一応、情報を言ってあげる。「前の方でトラックがグラスロール落として交互通行になっちゃってます」ということで。その車のリアドアの窓も開いて子供が「頑張れー!」と叫びながら手を振ってきたので、俺も愛想良く手を振ってこたえると、後続の車達もみんな手を振り始めた。心から興奮と喜びがわいてきた。実は結構きついが力強く坂を上りながら、笑顔で手を振った。こんなに感動するできごとも初めてである。応援にこたえて今年も完走を果たしたい。まだまだ現役サイクリストとして頑張りたい。
 そんな夢のような感動的なできごとも渋滞の列の最後尾を過ぎたところで終わり、現実の世界に逆戻りである。傾斜と暑さとさっきの渋滞の中で飲み過ぎたせいで水も底をつきそうだ。当然、北海道の峠なので水分を補給する場所もないし自販機もない。エキノコックス(キツネに寄生する寄生虫)も怖いのでわき水も汲めない。猛暑の中のヒルクライムにして交通事情でペースを乱されたのは痛いところだ。
 もう峠もおおづめかと思われた頃に、右には広葉樹の樹海に包まれた山々が見えてきた。こんな眺めが日勝峠であり日高山脈だろうか。今まで越えた峠の中では山の見た目が鮮やかに感じる。最後の最後に山場が待っていた。傾斜の中でトンネルが続いている。大型車が容赦なく通り抜けていく狭いトンネルを耐えて上っていく。トンネル内は日陰なので炎天下からは脱出できたが、排ガスとこもる熱気にやられつつ、もう水は飲み尽くしたので水分補給はできず上っていく。登りトンネルと言えば、さらにきつい上高地の釜トンネルの経験をもってすれば、あれ以上のもんは無いと思って登り切れてしまう。やはり経験というのは強い。
 トンネルを抜けてカーブをいくつか曲がりつつ、幾分緩くなった傾斜を耐えると日勝峠の看板が見えてきた。今季初の標高1000m越えを達成である。眺めを期待したいところだが峠から向こうには霧がかかっている。日高山脈の東側は曇りのようだ。ここのところランドナーと俺が組むと晴れ男になっている俺にしては天気で外すとは珍しい。逆から上ってきた大学生、俺とちぎりつ追いつかれつの争いをしていた空荷のMTBの大学生と話をしつつ休憩する。  日勝峠の西側は眺めは何も無いので、さっさとトンネルを抜けて帯広側へ向かう。トンネルを抜けても眺めは無かった。濃い霧がかかっている。むしろ、リフレクタやライトを点灯させないと危ないぐらいだ。傾斜も緩くスピードが伸びない。いつもは車と同じぐらいのスピードで下れる自分が車に抜かれまくる。本気で着いていこうとするとアウタートップで結構踏まないと駄目だ。
 下りの途中のドライブインと展望台に立ち寄り、ようやく水分補給ができる。そして昼飯だ。あまりスタミナが付きそうなものや名物じみたものは無いがカレーライスが無難なようだ。すぐに出るし、よほどのことがなければうまいし、何となくスタミナ感もある。
 自販機で買ったお茶のペットボトルを処分したいがゴミ箱がどこにもない。ゴミ回収有料化のため、店では回収しないというスタンスのようだ。ここから先はしばらくこういう対応に悩むことになる。売った以上はゴミ代を払ってでも回収してほしい。それは売った者の責任と思うのだが…。意見が分かれそうなのでこの辺にして、展望台にあがってみたのだが霧でイマイチだった。晴れたら十勝平野の大パノラマが見えるのだろうけど、こればかりはしょうがないようだ。

日勝峠への登り坂 樹海


日勝峠 (標高1023m) 制覇!


日勝峠 下りからの眺め(イマイチ)

 さらに峠を下るが、グダグダになるほど傾斜が緩い。下りの刺激が足りない。登りも昨日からダラダラ長いだけだったし、若干 期待はずれの感は否めない日勝峠だった。清水町に下って、帯広に向かって国道を走る。そのまま真っ直ぐ北にあがった方が明日のコースに直結なのだが、ヘッドランプの買い出しや久々の都会を満喫したいので40kmほど遠回りだが帯広へ行く。単調な牧場とポプラ林の脇を抜けていく国道を走っていく。帯広までの走りは結構快調で、ようやく体が慣れてのってきた感じがする。明日から始まる山岳コースに向けて心強い。
 夕方4時には帯広に到着。釧路から襟裳を回って日高の山脈を越えて、久々に街という感じでうれしくなる。事務的な話だが今日は買い物を確実に2件こなさなければならない。まずは昨夜壊れたヘッドランプ、もう1つは航空便で没収されたチェーンオイルだ。さすが帯広は北海道の中では都会だ。自転車屋もアウトドアショップも簡単に見つかった。
 まずはアウトドアショップでヘッドランプを探してみる。いつの間にか時代進化してコンパクト化して寿命も大幅にアップしているようだ。白色LEDの採用で光りも白くなって消費電力も大幅に減っているようだ。思わず楽しんで買い物してしまい、かなり小さいのを選んだ。体積にして1/4ぐらいになった。
 続いて、チェーンオイルだ。またスプレー式を買ったら帰りに没収されてしまうのではなどと考えてしまう。どうしようかと思い悩みつつ店に行ってみると、同じ油でスポイト式のもあった。これなら飛行機で没収されることもない。店主は自転車に食いついてきた。珍しいオーダー車なので写真を撮らせてくれと言ってきた。あわてて荷ヒモに挟まってるタオルなどをきれいにおさめて写真撮影に備えてから撮ってもらう。こういう経験もなかなか無いものでとまどうやら照れるやらである。作った甲斐は十分にあった新型ランドナーであった。
 用事は済んだので宿を探す。天気は良いが、久々の都会で飲みにも行きたいので駅のすぐ近くにあるライダーハウスにする。そして明日からは本格的に山岳コースになるので今日は洗濯もしないといけない。結構、忙しい夜だ。ライダーハウスはあっさり確保できた。先客も気さくなライダーばかりで雰囲気が良い。しかもライダーは宇都宮の人だったりする。某H社のバイクだが社員では無さそうでほっとした。原チャリで回ってる若い人も居たりでなかなか楽しい夜になりそうだ。
 まずは無数にある銭湯に迷いながらも何とか見つけて風呂に入って峠の汗を洗い流して、ライダーハウスから歩いていけるコインランドリーに行って洗濯物をセットする。洗いながら飲みにでかける。
 野菜と肉とチーズとワインのような内陸北海道を味わえるコースが望ましいのだが、イマイチそういう店にありつけない。さんざん探し回って居酒屋に入ってみたが失敗という感じである。
 飲みの帰りにコインランドリーへ行って乾燥機に入れて、コインランドリーの中にあった漫画を読みながら待つ。「海猿」は意外と面白かった。それ以上に、パニックになる。乾燥機のパワーが強すぎる。ユニクロとは言え、合繊の短パンは縮んだ。そして、軽く乾燥して取り出す予定だったTシャツも縮んだ。これはさすがにへこんだ。
 飲みも乾燥も失敗に終わったが、宿は話で盛り上がった。宇都宮人とか原付ライダーと俺で旅論議とか飛行機でバイクを輸送してしまうテクなど…。まあチャリダーなのでそういう事情は浮いているが旅を愛する心は共通である。盛り上がって眠りについた。長い一日だった。


   出発(北海道釧路市)から 542.51 km

7日目 帯広 → 鹿追 → 然別湖 → 幌鹿峠 → 糠平 87.68 km
2005/08/13
 楽しくも若干寝苦しい夜を終えて、微妙に天気の悪い帯広を出発する。昨夜飲み過ぎたせいか体が若干重い。しかも今日は北海道にしては蒸し暑い。出発はライダーハウスの人たちとあわせてしまったので朝が早い。久々にセイコーマート以外のコンビニということでセブンイレブンで朝食を買ってスヌーピーのポイントシールを日記帳にストックして今日の走りを始める。
 まずは帯広市から北へ向かっていく。帯広の街中を抜けると、すぐに畑と牧場ばかりの単調な景色になってきた。鹿追までごくわずかに上っていく道、なぜ冴えない体に苦戦しながら走っていく。途中、白樺並木を眺める道で休憩して現実逃避と気分転換をしたいところだが、無駄な距離を走ってまでという天気でもないのでスルー。それでも妙に雰囲気はいい。
 鹿追の道の駅で本当にくたばりそうになりながら、この絶不調状態を乗り切るべく栄養の火種となる糖分を補給する。少しは走りが回復するようにできる限りストレッチしておく。久々に俺の中に焦りに近い感情が芽生えてきたのも事実であり、鹿追からのコースで俺が目標としているのは800m近く上る峠も含む。

白樺並木

 とにかく気分転換をして再出発してみたが、相変わらず走りは全くさえない。確かに道は徐々に上っているので楽ではないが、ギアを今まで以上に落とさないとチャリが進んでいかない。やや曇っていて無風で蒸し暑さもある。必要以上に大汗をかいている。
 冴えない体との戦いに耐えながら走り、然別湖への登り始め寸前のレストランで昼食休憩とする。サービスで出してくれたアイスコーヒーがありがたい。店の主人と話をしていると、然別湖の上の方のキャンプ場は熊出没で今年は閉鎖など物騒な話が多い。ていうか、ここ数年の北海道は熊が出すぎであるように思える。話を聞けば聞くほどコースはきつそうな雰囲気でもある。
 多少は元気をもらって、復調のきっかけを昼食休憩に得て走り出す。店を出て少し走るとすぐに上り坂は始まった。北海道らしく真っ直ぐな道がぐーんと空に向かって上っていく感じの峠だ。通る車やバイクや自転車の数もまばらで、ハードMの峠好きの俺にはちょっと気持ちいい峠ですらある。しかし、顔の近くにたかってくる小蝿との戦いになってきた。必殺蚊取り線香サイドバッグをやってみるが顔の近くまで煙がこないので効果がない。アブ対策なら狙われるのは足なので足下で燻煙すれば効果ありだったのだが、今回のケースは駄目そうだ。そこでフロントバッグのストラップの部分に映して煙が顔の近くまで来るようにした。これで効果が出るはずだ。しばらく走ってみると小蝿はよってこなくなった。
然別湖への真っ直ぐな上り坂

 しかし次の問題は、いっこうにあがらない今日の俺の体調である。とにかく、ねばり強く耐えながら坂を着実にあがっていく。汗の量もいつもの比ではないし、いつもほどペースがあがらないものの、何とか峠近くの展望台らしき場所についた。まずは飼い慣らされてしまった2匹のキツネに出迎えられ、その向こうに広がる景色は大展望…と言いたいところだが、今日も若干ガスっていてすっきりした眺めではない。それでも十勝の平野を多少は見渡せる眺めなので満足はできる。上ってきた甲斐は十分に感じられる景色である。
 あまりに汗だくで気持ち悪いので、展望台のトイレで全面的に着替えた。さっぱりと乾いた服につつまれて、峠の風に吹かれて気持ちよくなってきた。そして、新型フォルツァ(Hondaスマートカードキー付)のライダーが話しかけてきた。老後に旅をして回っている少し優雅さも感じる人である。俺も年をとっても何らかの形で旅をしていたい、そして旅をする体力と精神を養っていたいと思う憧れの姿である。

然別湖への道 途中の展望台
十勝平野の眺め(あんまり無い)

 続きの残りわずかな上り坂を耐えて、峠を越えると然別湖へ向けて下り始めた。この後また上るとは知ってるので、あまり下らないでほしい複雑な気分だが、きれいに整備されたワインディングの下り坂が楽しい。あっという間に下りきって然別湖の湖畔に着いた。少し澄み切った湖面。なぜか晴れてきた空、湖に駆け下りる山の斜面は原生林かと思うほどのきれいな広葉樹の森。明るい水色と青と緑のコントラストが美しい。森と湖というベストマッチな景色を楽しむ。
 湖畔の森と湖沿いを抜ける道をさらに北上していく。レイクサイドの道というのは本当に気持ちが良くて、サイクリングの醍醐味が満点である。初心者がサイクリングを始めるときは湖沿いからデビューしてみると楽しみが味わえるはずだ。

然別湖 対岸の森も澄んだ湖も美しい

 しかし、そんな楽しいだけの走りもあっという間に終わりだ。湖の北の端のキャンプ場で水を汲んで、また峠道を上っていく。さっきの峠より標高が高い。実は今日最大の山場はこれからなのである。やや傾きかけた太陽を浴びて、然別湖をあとにして上り坂にトライしていく。徐々に傾斜もきつくなっていく。北海道にしては珍しいきつくカーブしたワインディングが続いていく。終わりそうで終わらない峠にいらだちと疲れを感じながら上っていき、夕方5:00前に何とか幌鹿峠に到着。北海道なのに今年2回目の標高1000m越えに満足感と達成感をおぼえた。
 そして、ハードなワインディングを糠平湖へ向けて下っていく。今日、幌鹿峠を制して下りきっておけば明日は三国峠に集中できる。たとえば然別湖で一泊という展開になると、幌鹿峠+三国峠というどぎついパターンになるので、それだけは回避できてとりあえずほっとした感じである。ほっとするのもつかの間、結構タフな下りが続いていく。カーブもきつく傾斜もきつい。そして長い。

幌鹿峠 踏破!!

 ぼちぼち、糠平への分岐も見えてきた。道を間違えて下りすぎて上り直す展開だけは避けるため、慎重にルートをチェックしながらキャンプ場を目指す。温泉街を抜けたところにキャンプ場がありそうだが、買い出しと風呂探しと観光案内所での情報収集のために寄り道する。まず情報収集だ。キャンプ場の位置を確認して風呂の場所を聞いてみると、温泉街なので何軒か日帰り入浴やってるところはあるようだ。そつなくこなして、夕食の買い出しだ。昨日・今日とヒルクライムでウェイトトレーニング状態の走りなのでタンパク質ということで肉が食べたい。となるとジンギスカンが無難なようだ。今日もジンギスカン煮込みということになった。明日の朝飯のパンも買って、キャンプ場へ行く。
 もうお盆の時期だからか、かなり混雑している。俺のテントを張る場所を探すのも一苦労だ。湖のほとりの立地でうっそうとした森のそばなので蚊が多い。トイレへ行く通路のわきという、下痢でもしてないとあまり恵まれた立地とは言えない場所に家を構えて、荷物をテントに放り込んで風呂に行く。事前チェックで露天風呂付きのところへ行く。こじんまりしていて客は俺しかおらず独占状態で露天風呂を満喫する。やはりのぼせやすい俺には足湯か露天風呂が心地よい。吹き抜ける涼しい風に北海道の夏も終わりが近いことを少し感じる露天風呂であった。
 テントに戻って、御飯を炊きながら仕込みをして、ジンギスカンを炒め…いや煮込んみながらビールを飲む。もはや北海道ツーリングの勝利の方程式になりつつある夕食メニューを満喫しながら、今日の走りを振り返りながら明日の走りに思いを馳せる。前々からあこがれていた三国峠への登りが楽しみだ。まずはスタミナを付けて英気を養い、眠りについた。


   出発(北海道釧路市)から 630.19 km

8日目 糠平 → 三国峠 → 層雲峡 69.86 km
2005/08/14
 昨日までの疲労が結構残るかと思われたが、そうでもなく三国峠を迎え撃つには不足はない。蜂と格闘しながらパッキングしてペットボトルに水を汲んで、出発。いきなり三国峠へのハードな上り坂が始まるかと思いきや、昨日下ってきた温泉街を抜けると平地に近い緩い坂が続いている。昨日までは然別湖への上り坂の手前のこの程度の坂でも苦しんでいたのだが、今日は調子が良いようだ。どのみち、峠の手前まで行けば本格的な上り坂があるはずなので、今ぐらいは楽させてもらいたい気持ちである。
 しかも、今日は確実に日焼けするほど天気が良い。これは三国峠からの眺めもきっと凄いと思われる。天気が良いうちに登り切って眺めを満喫したい焦りに近い気持ちも沸いてくる。時々樹海の向こうに見える山々の稜線が美しく登りの中でも写真を撮りたくなるようなのもある。

三国峠 おっぱい山

 今日は昨日までと違う種類の黄色くて丸っこいアブが襲ってくる。かなりしつこく付きまとってくるし、顔にも来る。かなり集中力とペースを乱される。休憩なんてしようものならあっという間に4〜5匹のアブに囲まれて追い回される。足に止まってくるが刺された感覚はない。茶色っぽいブヨほど痛みは伴わない。確か日高の自然館で見た限りでは外来種のようだ。今日もフロントバッグ蚊取り線香で顔の周りだけは煙を立たせて追い払う作戦に出る。…が、外来種の変なアブには全く通用せず煙の中でも容赦なく顔に寄ってくる。ペースを乱されながらも手でアブを追い払いながら、徐々に上っていく。距離も長いし標高ももちろん北海道最高所なので気長に頑張るしかない。景色だけは俺の心を後押ししてくれて盛り上げてくれる。
 下手すると昼飯スポットになるかもしれないと予測していた峠の途中の喫茶店で休憩する。どうせなら自家製ケーキとアイスコーヒーといきたいところだ。スイーツの似合わない無骨でがさつな俺だが木イチゴのムースとアイスコーヒーを「うわっにあわねぇ」と思いつつ頼む。昼食には若干早いのでスイーツでいく。物が出てくる前に喫茶店の店主と友人なのだろうか話が盛り上がって偶然に3家族が10年ぶりに再会できたとかで写真を頼まれてしまった。一応、客だが快く引き受けてあげる。しかも自転車に荷物満載で上ってきている俺なので、ややモテ状態となってしまった。自然な甘みと酸っぱさがおいしい木イチゴのムースとほろ苦いアイスコーヒーを頂いて、水を汲ませてもらって出発。
 自転車に戻ると、アブがたかっていたが追い払って走り出す。標高が上がってくると虫が減ってきた。ヤン車のシーマにクラクションの嵐を浴びて中指を立てたり、女性ライダーに挨拶されて励まされたり心温まる人間的交流をしつつ坂を上り、ついに標高1000mの看板が出てきた。相変わらず樹林帯が続いているので見下ろす眺めはないが、あと200mほど上ると頂上のはずなので先は長くない。
 そして、樹林帯が一旦終わって陸橋へ曲がるカーブを抜けると眼下に大パノラマが…。樹海がかなり広い範囲に広がっていて、その向こうに見える山々。自然の雄大さに心を打たれた。人力でここまであがってきた俺だからだろうか、感受性が強いからだろうか、胸にこみ上げてくるものがある。当然ながら自転車を止めて、陸橋から身を乗り出して景色に見入ったまま固まってしまった。写真を何枚も撮りながら、少し角度が変わったらまた止まって眺めるという感じで、このあたり1kmを進むのに30分近くかけてしまう。もはや時間はかけれるだけかけたい。
 ツーリングマップルの写真に出てくる陸橋を見下ろす景色もまた一興である。人工物と大パノラマのコラボもいい。景色を満喫し、ここまで上ってきた喜びを胸に残りを登り切り、ついに三国峠のドライブインに到着。北海道最高地点をこの瞬間に制覇した。言葉にならない言葉を叫びながら拳を空に突き上げているとライダーや観光客から拍手を浴び、「すげぇ…」という感嘆の声が漏れる。やはり峠にはドラマがある。

三国峠 樹海の眺め


北海道最高地点 三国峠 制覇!

 しばらく景色を楽しんだ後で少し遅くなってしまった昼食とする。ドライブインでカレーなどもあったし、何げに手作りっぽくておいしそう。出てきたカレーは空腹効果もあるのかもしれないが、結構おいしかった。何となくガッツリ飯が食えて疲れも癒された。先があるので腹6分目ぐらいにしておく。またしばらく景色を楽しんだ後で、上ってきた道のりを惜しむように下り坂に向けて三国峠トンネルへ突入。交通量が多いので気をつけていきたいところだ。
 トンネルを抜けると本格的な下り坂が始まった。この下りのために上っているのだというのは半分は本当であろう。そのまま今日の目的地の層雲峡キャンプ場まで下りだけだ〜!と調子に乗っていたが、途中で上り坂が出てきた。俺の方も完全に油断していたので結構こたえる。しかも、もう15:00になるというのに、これから三国峠に登る人もいる。まあ層雲峡の時点で標高700m近くあるので上れないボリュームでもないが、どうせなら1日かけてじっくり遊んだ方が楽しい峠なのにもったいない。
 とはいえ下り基調なので楽勝である。大雪ダムでトイレがてら休憩してまた下る。結構な傾斜のある層雲峡までの道を進んでいき、路肩の標高がどんどん減っていく。
 そしてまずは大函に立ち寄る。西日に照らされた層雲峡の岩と清流が見えてきた。数々の岩と峡谷を見慣れている俺に大函の感動は薄かった。というより、他のことに気を取られていた感がある。大函のジャガバターがなぜか北海道で一番おいしいような気がするのだ。今回で大函に来るのは3回目だ。小学生時代に家族旅行で1回バスツアーで来てガイドさんにご馳走してもらった。その味が忘れられず大学院時代に1回来た時に食べてみた。どちらも冷たい雨が降りしきる天気だったから、いずれも暖かいジャガイモが旨く感じたのだろうか。やはり、今回もおいしく感じる。こんな言い方では済まない。ほんとおいしい。
大函のジャガバター
 すっかり満腹気味でさらに下っていく。長い銀河トンネルを抜けて、ハイキングしている客を数組追い越して、銀河の滝・流星の滝へ行く。これも晴れて眺めるのも精神的に余裕をもって眺めるのも初めてである。落差も水量も流れる軌跡も美しい2本の滝が見える。滝壺は川の向こうなので迫力には欠けるものがあるが、遠くから眺めて美しい滝である。二つ一気に写真が撮れるアングルがないものかと思っていると、双瀑台なる展望台への登り口を見つけた。もちろん上ってみる。結構、急な階段を歩くが、3日連続の標高1000mを越える走りの疲れからか冴えない。一歩一歩が足にじーんと響く。子連れのファミリーと抜きつ抜かれつのスピードでしかあがっていけない。10分ほど歩くと、展望台があり滝が二つ見えてきた。滝はしっかりカメラに収まる。高いところまで見やすい。確かに絶好のビューポイントである。
銀河の滝・流星の滝
双瀑台からの眺め
 一通り層雲峡を見物したら、キャンプに向かう。道路の右側に入り口があった。結構、急な坂を上ってサイトに着いてみると、大学生の合宿らしき人たちが大量に居た。多少、距離を置いてテントを張りたいので、挨拶をしながら通過するも挨拶を返すやつもいない。残念ながら最近の大学サイクリング部にありがちな姿なので特に気にせず、少し奥のテントの隣あたりに張った。あまり人が居ないところに張るのも寂しいし居心地悪そうなサイトだ。そして虫も多い。まあ無料だから仕方がないといえば仕方がない。
 テントに荷物を入れて、風呂セットだけもって層雲峡温泉へいく。久々に来たが温泉街はかなりきれいになっていた。セイコーマートもできている。夕食は自炊にしようかと思ったが、今日は軽く外食してテントではワインでも飲むことにしよう。そういうプランが頭に描かれた。高い山の無い北海道にして1000m級の峠を3つ連続で制した喜びを祝うべきだ。まずは、懐かしの黒岳の湯へ行く。今日はキャンプ場の他にもう一組合宿中のサイクリング部が居るのか、混んでいる。こちらは挨拶もできれば小話もできる大学生だ。まあピンキリだ。今回は晴れているので露天風呂から虹が見えるような事はなかったが、さすがに以前ほどの感動はない。
 温泉街でラーメンを食べて、セイコーマートでワインとチーズを買ってキャンプ場へ戻る。すっかり薄暗くなった道を戻り、最後の上り坂を踏ん張って登り切ってテントに戻る。大学生達は騒ぎ始めていた。そして何組かハイカーも増えていた。俺のテントの隣人は外国人のカップルだった。東洋系の女性と西洋系の男性という組み合わせだ。あわてて英語で挨拶して、調理器具をテントから取り出した。まずはつまみとしてウィンナーを茹でる。そしてチーズを切る。ワインを開けようとするが、ワインオープナーがどこにもない。確かに入れてきた記憶もない。酒を愛する俺としたことが…。隣のカップルに頼んだら立派なワインオープナーが出てきた。ありがたくその場で開けさせてもらい、一杯ご馳走させてもらう。
 あまり邪魔してもあれなので、自分のテントの前で一人ワインを飲み、眠りについた。

層雲峡キャンプ場での晩酌



   出発(北海道釧路市)から 700.05 km

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