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0日目 |
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宇都宮 −東北新幹線→ 仙台 |
2009/08/07 |
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仙台市内 |
3.28 km |
今年ほどに自転車から離れた年は無いだろうと思うほどに全く乗らない状態で夏はやってきた。そして不況にして貧乏暇なしな俺は有休がたまり放題で夏休みは16連休。かつて16連休と言えばサラリーマンになってから初の1000km越えも果たした2005年を思い出す。
ただ計画は距離も少なめで開始する。出発地も仙台で輪行でたどり着くのも楽だ。会社から一度家に帰ってから、出発だ。雨も降っているし自転車で通勤してまで急ぐ必要もないのだ。雨の出発というのは嫌な予感が漂うし、梅雨明けの遅い今年の異常な天候に悩まされそうだが何とか良い旅にしたいものだ。GWに続く雨の出発で、気分的に重いが自転車で宇都宮駅へ行く。
駅前で自転車を順調にばらしていく。相変わらずステムがフォークから抜けないが、GWと同様に輪行していく。ビールを持って新幹線に乗り込み仙台へと向かう。やはり、旅に出る時の一杯のビールが世界で一番美味いと思う。那須塩原にたどり着く前に飲み干してしまった。
仙台は近いため、あっという間に辿り着いた。降りたらまずは牛タンを食いに行く。駅の中の店に行ったが閉店。仕方なく雨が降りしきる仙台の街で探すしか無さそうだ。駅の軒先で自転車を組み立てる。
雨もちょうど上がったところで、仙台の街を駆け抜け宿泊予定のホテルの前を通り過ぎて、牛タンを食える店を探す。アーケード街に入るところに店を見つけた。何となく美味そうなオーラが漂っている店だ。実は有名店でもある利休だった。カウンターで牛タン定食と改めてビールを飲む。街は七夕祭りで盛り上がりも見せている。楽しい雰囲気の中で牛タン焼きは出てきた。厚みのあるジューシーで歯ごたえも心地よい牛タンが美味い。焼き肉のタン塩と違って食べ応えが十分にあって満足である。麦ご飯とも合う。
牛タンとビールに満足して、仙台の街を抜けて七夕の飾りを楽しんでいく。雨で屋外の飾りはビニールで被水保護してしまって残念だが、アーケードの中は華やかな飾り付けがきれいである。しばし、現実を忘れて七夕を満喫する。
ホテルにチェックインする。屋内の駐車場にチャリを置かせてもらいシャッターも閉めてもらえて安心である。荷物を受け取って部屋へ上がる。段ボール箱3つ分の大量の荷物を部屋で開梱してバッグへ詰め込んでいく。初っぱなから雨になりそうなので、防水対策はしっかりしてシャワーを浴びて眠りについた。 |

仙台 利休の牛タン
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仙台 七夕祭り
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1日目 |
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仙台 → 川崎 → 遠刈田(とおがった)温泉 |
47.86 km |
2009/08/08 |
よく眠って朝を迎えた。今日は朝からしっかり雨も降ってるが、走行距離としては蔵王の入り口の遠刈田温泉までと短い。台車を借りて荷物を部屋から下に下ろして、自転車へパッキングしていく。そうしている間に雨も一旦は上がった。ホテルをチェックアウトして仙台市内で買い物をする。食事に最低限必要な装備など現地での買い出しが必要な物から順にそろえていく。まだ祭りの余韻は残っており店の前には祭りの露店も出ている。露店のお好み焼きとずんだ餅を食べて出発だ。ずんだ餅は枝豆のさわやかな香りが利いてて美味しい。これから東北の枝豆の魅力を味わい続けることになる第1歩となりそうな予感がしてくる味だ。
濡れた路面をまず南へと走っていく。幹線国道ではないので走りは快適だ。蔵王の途中にあたる川崎へ向かう分岐に迷いつつも何とか走りは軌道に乗ってきた。徐々に登り始める道を走っていくと、路面も乾き始めて来た。特に悩むこともなく順調に進めていく。東北道のインターを越えて川崎へ向かい始めると湿度の高さもあり蒸し暑く感じ始めてきた。
川崎に入ると雨は降っていないが、路面は濡れている。先ほどまでの蒸し暑さは抜けて涼しくなってきた。走りやすい気温というよりは、やや体が冷えてしまう気温である。川崎の街を抜けると上り坂が始まった。蔵王へのアタックではないが遠刈田温泉までに小さな峠が一つあるようだ。上り坂の最中で小雨もぱらついてきた。さらにアブも俺に寄ってくる。東北らしい道になってきた。今年からは東北の峠に生息するアブ対策を入れたのだ。一つはリアルに作り込まれたアブの天敵オニヤンマの模型、もう一つは下野のアブ寄らずだ。アブ寄らずは結構 高額な虫除けなので、まずはオニヤンマで場をしのいでみる。サイドバッグにぶら下げてアブに見せつける。一定の効果はあるが、死角に入れば来るしイマイチだ。そんなことを思ってる内に峠は終わった。
濡れた路面でブレーキをあまり減らさず、それでも慎重に下っていく。下りきると、蔵王エコーラインへと続く国道とぶつかった。少し登れば遠刈田温泉にたどり着けるはずだ。2kmほどジリジリと登り始めている道を進むと温泉街が見えてきた。泊まるところもネットでも'95年の記憶でもあるので安心だ。
神の湯の位置を覚えてから、遠刈田こけし館へ行く。学生時代にも行ったような覚えはあるが、当時は集団で行ったし東北地方の受け止め方も当時とは違う感じがしているので改めて東北の文化に触れてみたいと思ったのだ。客は少ないが、その分だけ落ち着いた雰囲気である。東北地方全体に広がっているし、種類も色々ある。作り方なども改めて見ると精密な職人芸で木工の温かみもある。デジカメ用にこけし付きのストラップを買って出て行った。
キャンプ場に向かう途中で、お菓子を持ち歩いて売ってる女性に声かけられたので、明日の朝食になるスイートポテトなどを買い集めた。そして、蔵王の方に向かって少し登ってテントを張りにキャンプ場を兼ねてる公園に行ってみる。しかしながら霧が出てるが、しのぐ場所もない。道路を挟んで向かい側のグランドの隅にある屋根付きベンチの方が使い勝手も良さそうなので、日没後のゲリラキャンプとすることにした。
また坂を下りて遠刈田温泉の街に行く。足湯も併設されてる憩いの場ともなってる神の湯で風呂に入る。露天風呂が無いのが残念なところだが、天井も高く木の香りも漂う温泉で心地よい。風呂から上がったら、アイスと夕飯だ。肉屋が直営してる焼肉兼定食屋に行く。トンカツとビールで夕飯を満喫だ。ジューシーで旨いトンカツとビールで疲れを癒して行く。
また坂を登る頃には日が暮れて暗くなっている。グランドの隅にテントを張って屋根の下に自転車を置いて深い霧が立ちこめてきた夜に眠りについた。1日目の無事な完走を喜び、明日の蔵王へのヒルクライムに向けて決意を新たにした。 |

仙台を出発! ライブラリーホテルにて
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仙台名物 ずんだ餅
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サイドバッグに付けた
オニヤンマ先生(模型)
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遠刈田こけし館
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遠刈田温泉 神の湯
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遠刈田温泉
肉のワタナベのトンカツ |
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2日目 |
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遠刈田温泉 → 蔵王・刈田峠 → 上山温泉 |
54.80 km |
2009/08/09 |
あえてケータイのアラーム機能で早起きをする。まだ暗い早朝の5時に目覚める。暗いのは夜明け前だからというわけではないようだ。走る気も失せてしまうほどの濃い霧が立ちこめている。まずはテントの中でスイートポテトを朝食に食う。霧の中でテントをたたむ。チャリへと荷物を積み込んでいると明るくなってきた。
まだ薄暗い蔵王エコーラインを徐々に登り始めていく。エコーラインの実質の入り口となっている鳥居まで来たところで、ホテルがあったのでトイレを借りる。ここから刈田峠まで長い戦いになりそうである。最初から順調に厳しい坂が続いていく。霧で体が冷える中で少しずつ登っていく。体にはしっかり力も入っており、動きは悪くない。これで気温と天気が良ければ絶好調じゃないかと思うほどの走りで登っていく。
しかしながら、登れば登るほど天気は悪化していく一方だ。こんな状況なら1日でも延ばしても問題は無いほどに計画上は余裕あったが、梅雨明けをしていない東北地方は待っても快方に向かう気配がないのだ。やや無理して登っている感じで、雨に打たれて霧に冷やされながら登っていく。森は深いし霧も濃いのでリアのリフレクタライトを点滅させて後ろから来る車に自分を見せつけていく。この時期にしては天気が天気なので車の数は少なくて助かる。
走り始めが早朝だったからか10時頃には微妙に腹が減ってくる。だんだん脚が停まる回数が増えてきた。序盤からしっかり厳しい傾斜で登らされる道に参りつつも、何とか
みやぎ蔵王高原ホテルまで辿り着いた。この時点で標高は1100mを超えたようだ。標高200mから1600mまでの1400mを登るうちの900mを登ったことになる。ホテルの前に自転車を止めるとホテルマンがホテルのロビーで休憩させてくれた。ペットボトルに天然水を入れてもらい、アクエリアスを買い換えて、しばし雑談しながら休憩をして体力を回復した。建物の中に入って体が少し温まったのも助かる。天気が良ければ蔵王の山頂も海も見えて、夜になれば星も見れるというこの地に再び来たいものだ。今度は車でいいけど。
多少は元気をもらって、続きの道へと走り出す。ここから100mほどは回復した体力で快調に登っていく。ホテルで言われたように後半戦に入ってからは傾斜が緩くなってきたような気すらする。蔵王寺まで登り切ると木々が一気に背の低いものばかりになって景色が開けてきた。時折、霧がすかっと晴れて山頂まで見える。蔵王寺でお参りをすべく休憩していく。ついでに景色の写真を撮っていく。すると、再び濃い霧が我々を包み込む。しばらくするといきなり晴れる… そんな不安定な天気に巻き込まれて余計に疲れを感じざるを得ない。
それでも時折訪れる晴れ間に見える蔵王の山と低い木が続く森は美しく、その景色に目を持って行かれて楽しめる。昼前にして標高は1200mを越えたし、少し気は楽になってきたからだろうか、余裕が出てきた。駒草平から背後に見下ろす眺めも前方の山頂方面の眺めも高山らしい迫力が出てきた。天気が悪いヒルクライムにして、これだけの景色が楽しめてしまう自分の天気運に喜んでしまう。写真を撮りながら登る余裕を持って、駒草平に辿り着いた。
山頂まで行かないと何も無いと思って非常食のパンなども持っていたが、ドライブインがあり昼食も食えそうだ。まずは雨を除けるように軒先にチャリを置く。昼食の前に霧が晴れてるすきに展望台へ行く。深い谷の向こうの切り立った崖と滝が見えて、さらに向こうには蔵王の山頂が見えている。かなりの絶景である。そんな絶景を楽しめるのも束の間で、また濃い霧が立ちこめてきた。昼食を食いに歩いて戻る。
腹にたまりそうな物も良いが、寒さもあって暖かい汁物が欲しくなる。蕎麦で体を温めつつ昼飯を食う。冷えた体と空腹…
そんな中で食う蕎麦はホントに生き返る思いである。体を温めたのもすぐにリセットしそうな強風の中を出発である。しかも、駒草平から再び急な傾斜が俺をいたぶるのだ。しばらくは右に左にとハイマツの中をワインディングしながら登っていく。前半戦を思い出すほどの強い傾斜に耐えて、再び降り出した雨と霧と強い風…
悪条件も重なって極限状態の戦いになってきた感がある。ここからは霧が晴れることもなく雨が止むこともなく激しいコンディションが続く。駒草平の時点で1300m近くまで登ってるはずなので、刈田峠は遠くは無いはず…
そう思いつつペダルを何とか回していく。休憩とか昼食でゆっくりしすぎた感があり、時間もやや押してきた。日没までには下りきりたいと思っているが、今日は天気が悪いので暗くなるのが早そうだ。そんな不安を持ちつつペダルを踏み込む足の調子は悪くない。
そして、目の前にそびえていた山の壁は徐々に無くなってきた。霧の向こうに右左へと分かれる道が見えてきた。分岐まで最後の力を振り絞って登っていく。分岐のところにバス停があり「刈田峠」と書いてある。自動車専用道の蔵王ハイラインへ向かう道は右だがエコーラインが続く左側の道は下り坂が目の前から始まっている。登り切った喜びはあるが、右の道が登ってるのでそちらへ向かう。蔵王ハイラインは自転車通行禁止なので、入り口まで行ってそれを峠としよう。また力を振り絞って登っていく。そして、蔵王ハイラインの料金所前まで来た。これだけ体が出来ていない年だというのに、この難関を越えた喜びを満喫し噛みしめる。寒さと天気と残りの道があるのに登れないところから気持ちは萎えるが、達成感は深い。
また霧の中を走り出す。少し山形県側に下ったところにリフト乗り場があって、リフトに乗ればお釜の展望台まで行けるようだ。霧の中を少しずつ下るつもりで居たが、山形県側も傾斜がきつくスピードが乗りがちである。スリップとコースアウトに気をつけて、後方の車の気配にも気をつける。なかなか気を抜けない下りが続くが、SWISSSTOPのブレーキが従来のSHIMANOより強く効くので安心感を与えてくれる。霧の中で駐車場と建物を見つけたので立ち寄る。そこがリフト乗り場だろう。リフトに乗る客はほとんど居ないため、無人のリフトが延々と動いている。係員にもお釜はおそらく見えないと言われても、行ってみる。時間は少し余裕があったので問題ない。ずぶ濡れの手で財布を取り出してお金を払ってリフトへ乗り込む。前後で視界に入るところでは無人のリフトへ乗って山を登っていく。斜面の途中で山形県に突入したようだ。リフトは尾根の上で折り返しており、ここで降りる。
霧が立ちこめる遊歩道を歩いて展望台へと向かっていく。整備された道が終わると、濃い霧の中で山の斜面をお釜に向かって下っていくしかないのだが、進む方向も戻る道も見えない。かろうじて見えるロープに沿って下っていく。そのロープの先端が直角なロープに突き当たる。ここが展望台だろう。天気が良ければお釜が見渡せるはずなのだ。粘り強く見ていると、少しだけ霧が減った。すると、濃い霧の向こうにうっすらと緑の湖面が見えてきた。かろうじて見えたお釜を少しだけ楽しんだ。寒いし眺めもこれが限界っぽいので、俺は戻っていく。驚いたことにすれ違う人が多い。 |

蔵王エコーライン アタック開始
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蔵王エコーライン 駒草平付近から
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蔵王エコーライン 駒草平付近から
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蔵王 駒草平 不帰滝
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蔵王 刈田峠 (1600m)
自転車で行ける限界地点
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蔵王 山頂へ向かうリフト(県境)
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蔵王山頂 お釜
(かろうじて湖面の色が…)
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玉こんにゃく
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また無人のリフトへ乗ってくだっていく。降りてきたところで、熱々の玉こんにゃくを食って消化の良すぎて腹持ちの悪かった蕎麦の穴埋めをして体を温める。雨の降りしきる道を意を決して走り出した。下り坂は厳しく鋭く曲がっているし傾斜も急だ。雨も降りしきるし霧で視界も悪い。もちろん路面は浮くほどのウェットコンディションで水が流れている感じである。決して下りを満喫するといえる状況には無く、ある意味では命がけにも思えてしまう走りである。
標高が徐々に下がってくると視界だけは開けてきた。霧が薄くなってきたのだ。降りしきる雨の中を慎重に下っていく。それにしても変えておいたSWISSSTOPのブレーキがホントに力強く効く。今まではブレーキを引きっぱなしにしても減速しきれなかった感じであるが、しっかり走ってコーナー進入前にブレーキを入れて、ファーストアウトしても問題ない。しかも、極端にゴムが減った感じはしない。
頼れるブレーキに満足しつつ下りを進んでいくと、蔵王温泉へと曲がる分岐を過ぎた。ここにキャンプ場があるので泊まっても良いのだが、風呂もないし、どうせ大雨のままだ。スルーして上山温泉を目指していく。登りも長かったが下りも長い。これだけのボリュームの下り坂だと手も腰も首も疲れ切ってしまいそうだ。坊平を過ぎると傾斜も緩くなって雨も小降りになってくれた。ウェット路面の緊張感だけはあるが、だいぶ楽になってきた。明るい時間帯に上山温泉にたどり着けそうである。
坂を下りきって上山温泉に辿り着くと路面も乾いてきて雨もやんだ。下界はそれほど雨は降っていなかったようだ。まずは、かみのやま温泉駅へと向かう。新幹線の駅だし情報収集が出来そうである。温泉に困ることはないとは思うので、まずは公園を探したい。何カ所か候補地を探しつつ、自分の体を少し乾かす。ただ、天気予報では雨なので屋根の下で雨をしのげる候補地が欲しい。蚊が多いし公園内で築山を自転車で登るので面倒そうな感じではあったが何とか見つけた。この辺の一発で見つけられる勘は経験から来る物だろう。
寝床を見つけたところで、温泉へ行く。レトロな銭湯のような建物だが、源泉は当然ながら温泉である。追加料金を払って休憩室を借りつつ、蔵王を乗り越えて一回り逞しく感じられる脚と心地よい疲れをまとった体を温泉で温めて疲れを取る。休憩室でゴロゴロしつつ夕飯を食いに行く店を探す。上山は蕎麦か冷やしラーメンが美味しいようだ。明日も天気は悪いし山形までの20km程度しか走らない安足日にする予定で、そこで蕎麦にして今日は冷やしラーメンにトライしてみよう。 |
早速、店に入って冷やしラーメンを頼んでみる。普通のラーメンよりは麺を茹でてから冷やす手間の分だけ時間がかかるようだ。見た目はラーメンそのものだが、汁は全く脂が浮いていない。あっさりしたチャーシューとトマトとキュウリが乗っている。初めて味わうものだが、これは美味しい。冷やし中華のような酸っぱさもなく、普通に冷たいラーメンスープである。サラダ感覚の具材がこのスープと麺と合う。もちろん、さっぱりした感じの味ではある。
飯を食ったら買い出しをして公園へ向かう。公園へ行く途中で雨が降ってきた。テントを張るまでは逃げ切りたかったが、急いで向かう。築山のてっぺんにある東屋の中に張ってしまう。面積的にはギリギリだったが何とか収まった。いつまで続くか不安な雨の連続はあるものの、第1の山場である蔵王を乗り越えた安心感と達成感を胸にしまって眠りについた。 |

山形上山の冷やしラーメン
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3日目 |
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上山温泉 → 山形 |
20.50 km |
2009/08/10 |
朝からがっつりと雨が降りしきる。元気よく天気が良ければ最上川沿いに100km近く遠回りして山形を目指そうかと思っていたが、この天気と疲れ具合じゃやる気は失せてしまう。昼頃までダラダラと屋根の下で過ごす。昨夜手に入れておいた上山にある蕎麦屋さんマップやら持ってきたるるぶでも見ながら、のんびりと過ごして時間を潰す。というより出かける気力が失せてしまうといったところだろう。 |
昼前から荷物を片付けてチャリに積み込む。軒先での作業で背中だけが濡れる気持ち悪さに耐えながら作業を進めて、正午には積み込みが終わった。蕎麦屋マップで昼飯を食う店を決めて出かける。気持ちが萎えるほどの雨の中で上山の街を走っていく。
お目当ての蕎麦屋の前に自転車を置いて、レインウェアを着たまま店に入る。店の外には軒先らしきものもないので脱げないのだ。店内で脱いで席に着いた。ひとまずは、この店の看板メニューっぽい板蕎麦を頼んでみる。他の人が頼んでいる物を見る限りでは板蕎麦は結構なボリュームではあるが、蕎麦好きだから問題なく食べ切れてしまうだろう。そして、俺の前に板蕎麦が運ばれてきた。付け合わせの天ぷらも来た。まずは蕎麦から味わってみる。香りも喉ごしもこしも十分で本当に美味い。やはり山形は長野に次いで蕎麦どころと呼ばれるだけのことはある。そして天ぷらのアスパラなどの野菜が甘み十分でうまい。実質では山形県初日に当たる今日にして、ここからの山形の食の奥深さを予感せざるを得ない内容である。 また土砂降りの雨の中を山形市内に向けて出発だ。店を出るのに腰も腹も重いが、この温泉街にして割と人気のある店のようで、おひとりさまが長居をするのはよろしくない。上山城をチラ見して見物して、走り出す。山形までは幹線国道から1本外れたバイパスで走っていきたい。雨が土砂降りだと交通量の多い幹線国道は避けたいのだ。車たちが巻き上げた飛沫が汚いし視界から俺が消えると危険だ。 |

上山温泉 板そば
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雨の中、上山城をチラ見…
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しかし、そんな俺の気遣いは仇となり、昨日の走りで足は疲れ切っているのにアップダウンがやたら多い。上山から山形まで続く盆地を見下ろし気味に走れるルートとなっている。車は少なくて道も広くて走りやすいから我慢するしかないだろう。上山からは隣町にあたる山形にはあっという間に着いてしまう。山形市内に入ると雨はいったん止んだようだ。レインウェアを脱いで荷物のゴムに挟んで市街地へと走っていく。20km弱という超楽勝ルートにして今日の走りは終わりが見えてしまった。あまり気が向かないがゲリラキャンプできそうな公園を横目に探しつつ走っていると駅に辿り着いた。そして、またポツポツと雨が降ってきた。
駅前にひとまずは自転車を置いて、駅の中で情報収集をする。風呂やコインランドリーの場所は聞けた。しかしながら公園を探すのも面倒になってきた。予報でも夜中は雨だし、今もポツポツと降ったり止んだりを繰り返す不安定な天気である。駅から見える安いホテルに電話を入れて予約を取ってしまった。何となく、この悪い流れをリセットしたいのである。宿に泊まる、洗濯をする… とにかく変化を持たせたい。ホテルが予約できて安心したところで洗濯と風呂だ。
駅の裏口側へ自転車を走らせて、まずはコインランドリーと温泉の場所を確認する。コインランドリーと温泉は歩いて行けそうな距離である。時間の節約をするために、温泉が入ってる公共施設のトイレで全身を着替える。着替えて出た汚れ物をサイドバッグに詰めて自転車ごとコインランドリーへ行く。オーナーのじいさんと話しつつ洗濯物を洗濯機に放り込んでいく。ここは靴を洗えるランドリーもあるので風呂から上がったら雨にまみれて異臭を放ち始めてるSPDサンダルも洗おう… まずは洗濯物を入れて自転車をコインランドリーに置いたまま風呂へ向かう。公共福祉施設の中にある温泉だから派手さは全くなく露天風呂なんて決してないが、こぎれいで広いし温泉だし気持ちが良い。雨で冷えた体を湯で温めて回復した。
コインランドリーに歩いて戻って、洗濯の終わった洗濯物を乾燥機へ移し、履いていたサンダルをシューズ用のランドリーに突っ込んで、ベンチに座って日記を書き進める。今回はロングランなので時々は書かないと最終日などにまとめて書き上げられるボリュームではないのだ。そうしてるうちに乾燥もサンダルの洗濯も終わった。なんと言ってもサンダルは洗い立てが気持ち良い。 |
コインランドリーをあとにして公営の自転車置き場に自転車を置きに行く。ホテルには駐輪場が無いようだ。雨が降りそうだし盗まれても困るし屋根付きでロックできる場所に置きたい。自転車を無事に置いたら最低限の荷物と部屋干ししたいウェストバッグだけは確実に持ってホテルへ向かう。駅の真ん前だし料金も3,980円で朝食まで付いて来る。設備もきれいだ。チェックインを済ませて部屋へ向かうエレベータの中で衝撃の事実を知った。ホテルにコインランドリーもあったのだ…。まあサンダルの脱臭・消毒いや洗濯が出来たので無駄足でも良しとしよう。
部屋に入って荷物を干すべくハンガーに掛けたら、飲みに出かける。市内をうろついてるときから目を付けていた山形の郷土料理と地酒が充実してる雰囲気の美味しいオーラが漂っていて俺の美食の嗅覚に訴える店は見つけていたのだ。迷いもなく地下への階段を下りていく。おひとりさまの席は十分に確保できる時間帯でカウンターは空いていた。豚の形をした昔ながらの蚊取り線香が目の前にあり夏らしさを満喫できる席で、まずはビールと山形名産のだだちゃ豆で乾杯である。長い旅ではあるが、まずは最大の山場である蔵王を越えたことを歓びの1杯で飲み込んだ。その後も山形の美食と美酒に酔いつつ楽しみながら、隣の席の自動車業界の老夫婦と会話が盛り上がる。最後は山形の郷土料理だし飯で締めて、最大の山場を越えた歓びを自ら祝って店をあとにして眠りについた。 |

蚊取り線香入れとビール
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真夏が旬 岩ガキ
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芋煮とだし飯
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4日目 |
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山形 → 山寺 → 天童 → 東根 → 尾花沢 |
62.24 km |
2009/08/11 |
意外と二日酔いしていない朝は早く目覚めた。しかし、テレビでは衝撃のニュースが流れていた。俺にとって第2の故郷とも呼べる静岡が大地震に直撃されていた。俺は静岡の海沿いにも住んでいたので、大学の近くの津波も心配である。マスコミは朝からそのニュースで持ちきりであったが、静岡市民は意外と冷静で被害も殆ど出ていない。阪神の時も朝にはたいしたことないように報道されていただけに気になるが、静岡在住のメンバーたちともメールは繋がるし無事は確認できたので一安心ではある。
すっかり目が覚めてしまったので、7時には朝食へ行く。おにぎりと豚汁が食べ放題でお代わり自由とあってエネルギーが必要なチャリダーの朝食としては助かる。ていうか、普通のビジネスホテルより遙かに安いし駅の真ん前という最高の立地で朝食まで食い放題… どこまでも有り難いホテルである。おにぎりを頬張りながら見る山形市内は雨…。これで開幕4連敗かと思うと気が重い。サイクルツーリングでは晴天率9割近い俺としたことが何故か東北地方だけは相性が悪いのだ。
やや気が重い状態でホテルをあとにした。駐輪場から自転車を出して走り出す。雨は止んでいるが湿気を帯びた重い空気と鉛色の空…。全く気持ちの良い状況には無い。やや分かりにくい道を走って山寺を目指す。出来るだけ幹線国道でスリップストリームをもらって楽に走りたいと思い、国道13号線を目指す。国道に入ると車の流れで気持ちよく走れるが路肩は寒冷地特有の轍と狭さに苦しむ。捗らない走りに苦戦しながら山寺への距離は縮まっていく。山形から山寺まで20kmも無いし地図上では平地なのだが、何故か今日は体が乗らない。 |
調子の上がらない自分に腹を立てつつ田舎でも市街地でも無い道を走っていくと、やっと山寺に辿り着いた。山肌を見上げてみると大きな岩と寺社仏閣が見える。これを歩いて登って巡ってみたいと思っていたので、この不思議な状況を下界から楽しんでいく。土産物屋さんの駐車場で自転車を預かってもらえたので、そのまま預けて行く。経験からすると買い物を一つするのは避けられない状況だろう。山寺の登山道を歩く頃には日が出てきて青空も見えてきた。今年の旅で初めて雲じゃない空を見たので歓びは大きい。3連敗してスタートしただけに、これから鬼の晴天率で行きたいものだ。
延々と続く階段と登山道を歩くと、昨日までの雨が蒸発して蒸し暑さでうだりそうな状況である。うっそうと生い茂る杉並木の中の石段を歩いて登っていく。気温もぐんぐん上がってきて汗もかいてきた。俺と同じくだるそうに登っていく大型犬連れの人と抜きつ抜かれつの歩きをしていく。途中で芭蕉の句に出てくる蝉の声が染みいる大きな岩があったりで神秘的な状況にも出会う。こういう場所に来ると必ず思うのだが、昔の人がここに神が住んでいると確信してしまうほどの圧倒的に迫力のある景色に感動だ。岩は雨や風や雪で少しずつ表面を削られて滑らかだが迫力ある造形をあらわにしている。
さらに石段を登っていく。東北地方はこの季節が紫陽花の最盛期だからか満開である。遅梅雨であり盛夏という感じがないので紫陽花も全く違和感が無いと感じてしまうのが悲しいかな…と言った状況である。やはりクソ暑くて晴れが多い方が俺は好きだ。これぞ夏という実感の中で旅をしたいものである。奥まで登り切ると大きな寺がある。振り返るとこじんまりとした山里の眺めが下界に広がっているし、崖の上に並ぶ寺と杉並木と大きな岩が見えて神秘的な景色が楽しめる。自然美、古い時代に作られた寺の伝統美… 色んな物が入り交じった美しさがそおこにはある。
そんな眺めと雰囲気を満喫しながら歩いて、崖に突き出た山寺を象徴するお堂に立つ。今日の蒸し暑さを忘れるような涼しい風がそこには吹く。そして突き出たお堂からの眺めは、さっき以上の迫力を出している。山寺の醍醐味を十分に味わってから、下り始めた。下りはぬかるんだ登山道で滑りそうになり少し怖いところもあるし、足がいっぱいいっぱいのサイクリストとしては膝が大爆笑してしまう心配もある。俺と同じくばて気味の大型犬たちと追い越し合いつつ下っていく。
下りきったところで昼食と行きたい。俺は無類の蕎麦好きだし、山形と言えば蕎麦でしょう。頭は蕎麦でいっぱいだった。そんな中で「だし蕎麦」というメニューを見かけた。昨日のしめに食べた野菜たっぷりのだしと蕎麦のコラボだろうか。そのメニューに惹かれて店に入った。田舎だがお客さんが殺到してテンパってる店は俺を席にも案内してくれないし、席についても注文を取りに来ない。見かねて俺が自分で注文して何とか事が進んでいく。店の2階にある座敷から見下ろす川に気持ちよさを感じつつ蕎麦を待つ。出てくるのは意外と早かった。刻んだキュウリや茄子やミョウガなどの野菜が蕎麦の上に乗っている。昨夜の居酒屋でも実感したが山形の夏野菜はハンパじゃないほど美味しい。甘く香りのある蕎麦と山形の夏野菜が最高に合う。このだし蕎麦は美味しかった。蕎麦を終えたら、体温を下げるために、ずんだソフトを楽しむ。豆の濃い味がしてミルク味のソフトクリームと合ってこれも美味しい。 |

山寺 立石寺の山門
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閑かさや 岩にしみいる 蝉の声
松尾芭蕉・・・の”岩”
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自転車を引き取って、山寺駅の写真を撮ったら、次の目的地を目指す。時間的に余裕はあるので10km先の天童で終わらなくても、もっと行けそうである。まずは将棋の駒について色々と見たいので天童を目指していく。山形から山寺までの道がかったるいのが分かるほどに、ジリジリと山寺から天童へ向けて道が下っていく。ペダルを少し回せばすぐに35km/hぐらいまで加速して強くなったような気になれる。気持ち良い下り坂を走って天童を目指す。
あっという間に天童駅に着いた。将棋の駒に関するものを探そうと思ったら駅に博物館があった。そのまま博物館を見学していくが、何だか妙に分かりにくい。凄い職人芸術によって成り立ってるはずなのだが、その凄さとか難しさがどうも分かりにくい。ただ一つだけ分かったことは「羽生善治」は凄い棋士であるということだけである。遠刈田で買ったデジカメのストラップのこけしがすでに脱落したので将棋の駒形に買い換えた。やはり将棋のルールすら知らない無教養で野生な俺には難しすぎたようだ。
天童の街を出て東根の方へと向かっていく。途中で国道がバイパスになるところで道に迷って、東根の果樹園の中へと入り込む。甘い果物たちの香りに包まれながら道に迷って10km以上も遠回りをしてしまう。山形空港の東側を抜けて北上する予定が、ほぼ半周回って西側を回っている。無駄足ではあったが東根の果樹園の雰囲気を楽しめたので良しとしよう。
国道に戻ったら若い頃の俺を思い出すほどの快走が始まった。ここ数年の間で若い頃から走りが劣化したと実感しているが、原因として体力の低下も否定はしないがルート選びが幹線国道から田舎道にシフトしたこともその要因としてはあるような実感が出てきた。最上川沿いのルートは基本的に少し下り基調であり、車の流れも多くスリップストリームももらって気持ちよく走っていく。雨もすっかり抜けて、すっきり晴れた空と太陽の下を北上していく。
途中で休憩がてら道の駅・むらやまに寄っていく。ひまわりで作った迷路があったりで花も山もきれいな道の駅で楽しい。野菜などの地場産品も豊富に売っている。ここで夕食の食材を買い集めることにした。まずは、露店のスイカをかじって行く。甘くて水分が多くて美味しい。さすがスイカの名産地だ。ここでプラムとか他の果物と枝豆も買う。掛け干しの山形県産コシヒカリも買い込む。これだけで随分リッチな夕飯になりそうだ。俺の気持ちとしては今日は尾花沢のキャンプ場まで走りきってしまって明日は銀山温泉への往復だけという楽々コースにしてしまいたいというのもあり、今日は燃えている。村山から先ほどと同じように快調なペースでぐんぐんと北上していく。尾花沢に入ってもペースは落ちない。キャンプ場へと曲がっていく分岐のところに、MAXVALUもあるので追加の買い出しをしていく。ここはチェーン系大型スーパーにしては地場産品が充実していて地元の美味い物コーナーまである。ここで茄子と豚肉の炒め物を作るための、地元産の茄子と豚肉の細切れを買って行く。
そろそろ疲れもたまってきた時間帯、キャンプ場へ向けて最後の坂でやや苦戦する。たばこと蕎麦の畑の中をヘロヘロになりながら坂を登ると日がぐんぐん傾いてきた。登り坂を終えて蕎麦畑と左側に湖を見つつ坂を下ると、キャンプ場と温泉が直近にあるのが見えた。もう楽勝だ。温泉の営業時間を確認し、ビールを売ってることを確認した。
キャンプ場ではチェックイン時間が遅すぎて、やや怒られつつ何とか宿を確保。広場にバサバサッとテントを張って風呂へ行く。快適な温泉で露天風呂まできっちりある。ビールを買い込んでキャンプ場へ戻る。まずは、山形産コシヒカリを1合分測って研いで水を吸わせておく。先に枝豆を茹でる。飯を炊いてる間には枝豆でビールを飲みたいのだ。塩水でさっと茹でてお湯を切る。ザルとか持ってないけど水を切るのは得意だ。キャンピングざる蕎麦と同じ要領でお湯きりをして、枝豆は完成だ。続いて飯を炊く。せっかくのコシヒカリだし失敗はしたくない。ビールと枝豆を楽しみつつも慎重に米の様子を見ながら炊いていく。焦げる寸前ぎりぎりを見極めてコッフェルをバーナーから外す。続いてフライパンで豚肉を焼いていく。あまり火を通しすぎたくないので茄子も早めに焼き始める。塩と胡椒だけで軽く味を付ける。美味しい食材にあれこれ手を加える必要など無いのだ。それにしても、枝豆にしても茄子にしても御飯にしてもすべてが味が濃厚で美味しい。山形の大地の晩餐は俺を心底満足させてくれる。実質、自炊の晩餐は初めての今夜となったが、料理の腕としては貧弱で内容は適当でもこれだけ美味しければ大満足である。
晴れたし色々楽しめた今日を振り返りつつ、満足の眠りについた。 |

天童の将棋の駒ストラップ
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道の駅 むらやま ひまわりの迷路
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村山産 スイカ
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山形県村山産枝豆の塩ゆで
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山形産コシヒカリ(掛け干し)の飯
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尾花沢産の茄子と豚肉のソテー
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5日目 |
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尾花沢 → 銀山温泉 → 尾花沢 |
41.27 km |
2009/08/12 |
今日はテントを張りっぱなしの連泊で銀山温泉へ向かうことにした。前からずっと行ってみたい温泉地である。入浴セットと最低限の荷物をフロントバッグに詰め込んで、出かける。工事で水を抜いてる湖を横目に見て、たばこや蕎麦などの畑を抜けて県道へ出る。今日も昨日の午後に引き続いて猛暑である。銀山温泉までの道は徐々に上っており体力もほどほどに消耗する。最後に銀山へと登っていく峠道は結構なボリュームで空荷で来たにも関わらずヘトヘトになってる俺に腹が立つところだが、我慢の道が続く。
その道を上りきると銀山温泉の温泉街が見えてきた。まずは1軒のホテルがあり、そこを過ぎると狭くて急な坂に沿ってバス停と蕎麦屋がある。これ以上は車で行けないという箇所に小さな橋があり、川の両側に温泉旅館が建ち並んでいる。レトロで伝統ある建物が並んでいる様子が壮観で、俺の憧れ続けた古風な銀山温泉そのものである。足湯もあり温泉街を眺めつつ楽しめそうだ。
そして押して歩いていた自転車がふと重くなったことに気付いた。なんと前輪がパンクしているじゃないか! そして痛恨のミスをおかしていることに気付いた。インフレータ(携帯空気入れ)をキャンプ場に忘れてきた。じたばたせず冷静に情報収集する。まずはキャンプ場へ取りに行く前提でバスの時刻表を調べる。1時間半後に尾花沢市街地へ向かうのがあるようだ。バルブ形状を仏式から英式に変換するアダプタはあるので街の家からスポーツ用じゃなくても一般的に空気入れを借りられれば何とかなる。まずは借りれそうな人というか自転車自体を持っている人を探す。山奥の急斜面上の小さな温泉街だから自転車など役に立たないため、ほとんどの家では持っていないようだ。もうバスに乗るか…と思った頃にロードレーサーを押して歩いてる若い男性が居た。頼み込んでインフレーターを借りれることになった。チューブ上の穴の位置は分かったが、タイヤからは異物が見つからない。ホントは意地でも探し出して原因となった異物を除去しておきたいのだが見つからないと言うことはすでに抜けたか… チューブを交換して空気を入れて復活した。
パンクが直ったところで自転車を押して温泉街を歩いて、昼食を食えるところを探す。ちょうど温泉街の一番奥の滝のところに蕎麦屋さんが見つかった。また今日も蕎麦かと思ってしまうところだが、全く飽きずに蕎麦である。ざる蕎麦を中心としたセットを頼んでみる。銀山温泉の自然水と氷に蕎麦を浸しているだけの水蕎麦が最高に美味しい。ほんの一口分であるが、こういう一品は蕎麦と水 これが最高に良い物で妥協がないものでないと成立しないのだ。
昼食を終えたら滝と滝の奥にある銀山跡を見に行く。山奥の遊歩道を上っていく。銀山温泉を流れる川の上流へ歩きつつ、ところどころで地下から涼しい風が出ていたり、洞窟があったりで不思議な感じである。上り詰めると銀山公園があり銀鉱跡に入れるようになっている。これが、この地が銀山温泉と呼ばれている所以である。ライトアップされた洞窟を抜けていくと帰り道に繋がっている。また登山道を下って行く。銀山温泉の温泉街を再び歩いて、今度は公衆浴場へと向かう。1軒だけ日帰り入浴のできる風呂があるのだ。露天風呂とか気の利いたものは無いが、熱々で肌もすべすべになり良い湯だ。猛暑の盛夏に熱々の風呂にガッと入る感覚は久しぶりで気持ちがいいものである。
下り坂の風で涼しさが楽しめることを狙いつつ、銀山温泉をあとにして尾花沢の方へと帰って行く。帰りは全体的にも下り基調だし、さっき登ってきた峠道を下れる。広い畑を眺めながら尾花沢の街の方へ向かっていく。お盆だから地元のスーパーや産直はイベントをやっていてスイカ割りやスイカの直売がある。しかし、1人で自転車旅をしている俺にスイカ1個を買って行くことは出来ない。せっかくの地元スーパーはスイカ以外地元の物を取り扱っていない残念ぶりだ。
昨日のMAXVALUへ行く。MAXVALUの隣に100円ショップがあるので、そこでザルを探す。コッフェルとうまい具合にスタッキングできるザルがあれば欲しいのだ。そして100円ショップの前でパンク修理をしている若い人が居た。英式のインフレータを100円ショップで買ったのだがバルブは仏式のため空気が入れられず困っている。さっきはインフレータを持ってるサイクリストに救われたが、今度はバルブ変換アダプタを持ってる俺が救う番である。今日はタイヤ周りに関しては受難の一日のようだ。タイヤの空気を俺が入れたところで、俺は100円ショップに入っていく。狙い通り、俺のコッフェルとサイズを合わせたかと思うほどの径と深さのザルが見つかった。もちろん100円。これで俺のキャンプ中の枝豆ライフもざる蕎麦ライフも快適になりそうだ。MAXVALUで食材として、豆腐、アスパラ、尾花沢産の牛肉(山形牛)の切り落とし、ミョウガ、アカミズを買って行く。おひたしや炒め物や冷や奴の薬味などアイデアは広がるばかりである。
また昨日と同じ坂を越えて行く。さすがに空荷なら楽である。銀山温泉で風呂には入ったものの、ここまで来るのに汗をもう1回かいているし風呂に入りに行く。そしてビールを買って戻ってきた。今日は枝豆は無いが、ミョウガを刻んで冷や奴に載せつつ、まずはお湯を沸かしてアカミズのおひたしを作る。その間に米を吸水させる。この辺の段取りの良さは自炊を極めつつある感じで我ながら鮮やかだと思う。アカミズをめんつゆとすり胡麻で和えて、冷や奴と共にビールのつまみとして楽しむ。今日も失敗しないように米を炊いて、アスパラと牛肉を炒める。まずは牛脂でアスパラを炒めて肉をさっと炒める。塩胡椒以外に余計な味は付けない。こんな簡単に作った夕食がめちゃくちゃ美味い。そこが山形県の奥深さである。
あこがれの銀山温泉と山形の大地に満足して眠りについた。 |

銀山温泉 足湯と温泉街
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銀山温泉街
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銀山温泉 水蕎麦
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白銀の滝
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銀山温泉 銀鉱跡
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老舗旅館の紫陽花と
温泉街が妙に似合う
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尾花沢産 大豆の豆腐と
尾花沢産 ミョウガの冷や奴
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尾花沢牛(山形牛)と
尾花沢産アスパラのソテー
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尾花沢産アカミズの
おひたし胡麻和え
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6日目 |
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尾花沢 → 最上川 → 羽黒山 |
76.79 km |
2009/08/13 |
朝は微妙に空が明るくない。ケータイで予報を見ると今日は雨と言っている。何となくこの予報を覆せそうな自信を取り戻していた俺で気にせず準備をして出発する。昨日快走した下り坂を走って尾花沢市街地へ行き国道へと合流する。どこかのタイミングで国道沿いから最上川沿いの田舎道へとルートを換えたいが迷わないようスタートだけは国道で行く。尾花沢の道の駅を過ぎたあたりから、微妙におでこに水滴が当たるのを感じ始めてきた。
国道から外れて最上川沿いへと道を換えたら本格的な雨粒が降りかかってきた。レインウェアを着て川沿いにある丘を越える。ホントに川沿いの道に出れるか疑問になりそうな細いシングルトラックのような林道を下っていく。雨だし傾斜は急だし恐怖感はあるが、ブレーキがSWSSSTOPになってる分だけコントロールはしやすい。確かに最上川沿いの県道へと出られた。やや水量が多く澄んでるとは言えない茶色い水が流れる最上川を眺めながら県道を北上していく。地図で見たときから狙い通りで、川沿いを素直にトレースしてくれる道はアップダウンこそはするものの、蛇行する最上川の流れを楽しませてくれる。時々登り切ると蛇行する川を上から気持ちよく眺めることもできる。
進めば進むほどに雨が酷くなってきた。本格的な土砂降り雨に巻き込まれながら苦戦していく。最上峡に近くなってくると川沿いの県道は終わって国道に合流した。この時は既に雨が俺を激しく打ち付けるほどの雨で後ろの車から俺の姿が見えるかも気になる状況である。前と路面と右後方を気にしつつ走っていく。なぜか韓国色の強い道の駅へ寄り道するも何も買わず雨宿りにとどめる。そうしてる間に少しだけ雨脚が弱まったので、その隙に走り出した。3km先の船着き場に辿り着いた。
こんな雨で増水してたら観光船は運航してないだろうと思ったら、普通に運行しているようだ。走りが捗らない焦りも無い事は無いが、思い切って寄り道して川下りを楽しんで行くことにした。船に乗る前に昼飯を済ませたいと思って、乗り場のレストランを訪ね歩くと30分後から出港の船に間に合わないからと何も出してくれない。作り置きでよそうだけのカレーですら…。若干 いらつきながら焼きおにぎりで昼食を済ませて船を待った。そして船頭さんの案内で船へと向かう。船頭さんは若い女性である。
雨の降りしきる中で川下りの船は出航する。若い庄内弁の船頭さんのガイドと雨でも船に乗ってるハードな状況を楽しみつつ川を下る。船自体はビニールの屋根がかぶってるので乗ってれば雨に打たれっぱなしと言うわけではないものの、ビニールを開けて外を見ようとすると雨が降り込んでくる。最上川は「五月雨を 集めて早し 最上川」などと言うぐらいなので雨で流量が多いぐらいがちょうど趣があるのかと自分自身に言い聞かせて行くしかないだろう。それでも華のある船頭さんや何故か俺に懐いて来る小さな子供たちと共に川下りは楽しく進んでいく。途中で川の上の店で鮎の塩焼きやだだちゃ豆アイスを買ったり充実の船旅である。最後の白糸の滝を見たところで船旅は終わりだ。自作の俳句を提出して終わる。ちなみに俳句を出すと山形の名産品が抽選で当たるので内容も手は抜けない。雨だと自転車での走り自体は決して楽しいものとは言えないが、こういう寄り道などの楽しみは逃さず拾っていきたいものだ。
川を下りきって船を下りようとすると、パパを差し置いて俺と手を繋いでくる子供が居たり、帰りのバスでワァワァ泣くが俺の隣に来たら大喜びしてくる子供が居たりで何だか不思議な子煩悩独身男になっている。髭も生えてるし結構な強面になってると思うのだが…。何にしても一般人に好かれて可愛がってもらえないと、ただの世捨て人の旅人になって旅の楽しみは半減してしまうので、小さな子供とは言え好かれるのは良いことだ。バスを降りると、船に乗る前以上の土砂降り雨が降りしきり、よりハードな状況に俺を追い込んでいる。
さっき下った川沿いのルートを走りつつ、改めて最上峡の川の眺めを満喫しつつも雨と戦って下って行く。この景色、さっきの船旅の思い出、山形の自然…色んな想いがあり、船に乗る前と違って、この戦いも苦痛ばかりではない。やっと幸福が不幸に勝ちつつあるように思える。雨と戦った川下りも先ほど引き返しのバスに乗った港まで走りきり白糸の旅を再び見て楽しむ。今度は晴れて乗れたら気持ち良いだろう。いつか再び行き急がない旅が出来る日が来たら来てみたい場所である。
また現実に戻り、悪天候で日暮れが早まる中での羽黒山への上り坂が始まる。まずは羽黒山から流れてくる川沿いに徐々に登るルートが始まる。10kmほども続く緩い上り坂と雨に耐えながら登る。寒さと徐々に暗くなる不安感が堪える。真夏の17時だというのに、暗くなってきている。川沿いの道を走りきると、今度はキャンプ場に向けての上り坂が本格的に始まる。高低差200m程度だろうか。川沿いを南下した道から、ぐいっと180度向きを変えて北へ登り始める。
徐々にギアをロー側に落として足が動かせる領域で走る。そして、アブが襲いかかってきた。今度はオニヤンマ先生ではなく、下野のアブ寄らずを俺の足に噴射する。ハッカのすーっとした清涼感が足に広がる。アブも速攻で居なくなり、一匹も足に来なくなってきた。代わりに腕に寄ってきたので腕にもアブ寄らずを振りかける。腕にも清涼感が来て気持ち良い。ちょっとマテ、俺はアブが寄らないこと以外を楽しんでいる感がある。これは危険だ。新たなドーピング剤を手に入れてしまった感じすらする。でもアブに対しては効果抜群である。アブ寄らずで増した集中力と足への清涼感でヒルクライムのペースは上がってきた。相変わらず雨は厳しいのでアブ寄らずが洗い流されてる感じはあるが、いつもだとインナーを使ってしまいがちな俺がセンターギアでぐいぐいと登っている。距離も珍しく70kmを越えているのに坂が絶好調である。
そしてトラブルが発生した。走る・曲がる・止まるに影響する領域ではないので問題視はしないが、アンプ内蔵スピーカーが時々止まるようになってきた。今日の雨は激しすぎてフロントバッグのポケットでは被水が止め切れていないようだ。ぽんぽんと叩くと音が復活したり止まったりの不安定動作を繰り返す。壊れないようにスイッチを切ってみたが音が止まらない…。すべての荷物が水を吸っているし自転車自体の重さも増している感じすらする。やはり防水の考え方を根底から見直した方がいいだろう。バッグが濡れても中身はビニール袋で防いでるからOKと思っていたが、バッグ自体も撥水性を持たせて吸わないようにした方がいいだろう。スピーカーは独立防水が必要だ。
そんなことを考えつつ羽黒山を登っていると、すっかり暗くなって霧も濃くなってきた。キャンプ場らしき入り口と国民休暇村の看板が見えてきた。何とか宿には辿り着いたようだ。まずは国民休暇村でキャンプの受付をする。風呂も国民休暇村の建物の中のものが使えるようだ。ここの風呂情報だけが手に入らなくて不安だったし、今日はこの通りの雨と汗で汚れきって冷え切っていたので安心した。
濃い霧の中をテントサイトに向かうべく走り炊事場にチャリを置いて荷物をほどこうとしたら中高年登山の集団が既に占拠していた。いつもなら面倒に思って避けるところだが今日は手段を選んでる場合ではない。挨拶して荷物をほどこうとしたら酒を勧められた。そのまま飲み始めてしまった。とは言え濡れてるスピーカーなどの荷物を出して炊事場のかまどに置いて干す。出来るだけ荷物をほどいて干す。ビールにつまみにポテトサラダなどいっぱい御馳走になりながら話しが弾む。
降りしきる雨と霧の中で国民休暇村まで風呂に入りに行く。全風呂温泉という快挙を達成したかった今回の旅の中で残念ながら温泉ではないが月山の天然水を沸かした風呂である。それでも何とも贅沢!である。天然水効果か体は温まった。国民休暇村の売店で精進料理なんかに含まれるお麩を買っていく。ここで調達できる食材はこんなもんだろう。御飯と具だくさん野菜残り消費味噌汁が楽しめそうだ。豚汁とかけんちん汁とか贅沢は言えない状況だから仕方ないだろう。
炊事場に戻って御飯を炊く。そして味噌汁もお麩と茄子とミョウガを入れて具だくさんに仕上げる。かりっとしてふわっとするお麩にうま味たっぷりの茄子とつーんと良い香りのするミョウガの組み合わせで美味しい。あとは非常食として買っておいた魚肉ソーセージでもあれば十分だろう。そして飯は銀しゃりと呼べるぐらいの甘みと歯ごたえと香りが利いててホントに美味い。決して豪華な飯ではないが、妙に美味い。これが旅の楽しみである。中高年登山で寝るのが比較的遅い人と話しつつ夕飯を楽しむ。
自然観察用の大きな小屋の中の土間にテントを張って眠りについた。 |

最上川沿いの県道を走る
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蛇行する最上川を象徴する眺め
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船に乗る前に昼食。
鮎の塩焼きと玉こんにゃく |

船に乗る前に昼食。
焼きおにぎり |

最上川の川下り 船旅は始まった…
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水上のコンビニへ寄港
ここは陸からアクセスできない
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焼きたての鮎も売っている。
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船旅のしめ 白糸の滝
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最上峡に沿って走る道
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きざみ荘内麩
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きざみ荘内麩、ミョウガ、茄子の味噌汁
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7日目 |
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羽黒山 → 酒田 → 遊佐 |
59.08 km |
2009/08/14 |
昨夜の悪天候の余韻は残った朝だが撤収する。微妙に霧も出てるし小雨が降る。スピーカーは直っていない感じではある。荷物はおおかた乾いたのでチャリにパッキングしていく。キャンプ場を出る頃には雨だけは何とか止んでいた。
キャンプ場から少しだけ上り坂を耐えたら急な下り坂が始まった。路面は濡れてるし葉っぱも落ちてるので危険だ。カーブも鋭いし慎重に行く。雨が降っているわけではないので、制動力自体は落ちていないのでコントロールに苦しむことは無いのだが、水分が地面からパッドに上がってくると落ちてくる恐れがあり慎重に行くしかないだろう。
坂を下りきると羽黒山の山門に辿り着く。雨もしのげそうな軒先が民族博物館にあるので、そこに自転車を置いて歩きに行く。羽黒山の山頂まで自動車道もあって自転車でも行けるが、あえて杉並木を歩いていくことを選択した。山門を越えると登るかと思いきや石段と杉並木を下り始めた。まさかアップダウンを激しく繰り返しながら登っていく最もハードなパターンのヒルクライム!?とか思ってしまう。それでも雨露を帯びた杉の木と石段と霧が少し立ちこめる様子が神秘的である。俺もこの修行の道を歩いていく。
石段を下りきると橋や滝や神社が見えてきた。ここを過ぎると、羽黒山を象徴するような五重塔がある。うっそうとした杉の中に白木の建物がどっしりと存在感を出して我々を見下ろしている。開放的な場所にないことが余計に神秘的な雰囲気を醸し出す。何かを塗りつけた形跡が見あたらない白木の五重塔は厳しい自然と闘い守られながらここまで来たのだろう。
五重塔からは本格的なヒルクライムである。息が上がるほどの傾斜の石段が続いていく。石段自体は雨のあともあり滑りやすく足が28cmある俺にはピッチも狭く歩きにくい。途中に何カ所かある神社にお参りしつつ登っていくと、庄内平野と日本海が見える場所まで来た。天気も完全に回復して晴れてきた。また青空が見えてきた。登っている間は基本的に杉並木のため眺めは無いが所々に展望台のような開放的な高台はある。そこに来るたびに景色を楽しんで、登っている間は杉並木を満喫し、ただのきついだけの石段ではなくなってきた。
そして、長く続いた石段も終わりが近づいてきた。目に見える向こうは霧が立ちこめる鳥居が見えてきた。このゴールが神秘的で美しい。登り切って月山神社をお参りしていく。この旅では随分 いっぱい寺社仏閣を回ったものだが、大きな山の上にある神々しい神社は御利益がありそうな感じである。博物館などを見物し、池の向こう側から月山神社を見て石段を下り始めた。
下りは登り以上に大変なことが多い。濡れた石段は歩きにくく滑る。傾斜も結構あるので膝が笑いそうだ。何度か滑って尻餅をつきつつ下って行く。登ってきた道と同じ道を下るのは好きではないが、登りとは違う難しさを楽しみながら、見飽きない杉並木と石段を歩いていく。不思議と、それほど苦痛でもない。途中の茶屋で休憩したり、展望台から庄内平野を見下ろしたりして楽しんで下る。帰りも五重塔を楽しんで行く。
山門まで帰ってきたら昼になったので昼食にする。今日は蕎麦ではなく麦きりというものをいただいてみる。食感は稲庭うどんに近いものでモロヘイヤが練り込まれている。モロヘイヤの体に良さげな香りと味が出てツルツルと滑らかでこしがあり美味しい。デザートに柿のジェラートを満喫した。さりげない甘さが俺にはちょうど良くて美味しい。
自転車を置かせてもらった(勝手に置いただけだが)のもあり、出羽三山の修行に関する資料館を見学していく。月山、羽黒山などの山々を登ったり厳しい修行をするようだ。修行とは言え、この杉並木を真冬に歩くというのも驚きである。今回はスルーしてしまったが月山も東北を代表する山だし、いつかヒルクライムして登山してみたい山である。 |

羽黒山の山門
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羽黒山 杉並木
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羽黒山 五重塔
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羽黒山 山頂へ向かう
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羽黒山山頂の鳥居
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羽黒山 月山神社
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庄内柿のジェラート
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麦きり(モロヘイヤ味)
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見学を終えたら現実に戻る。羽黒山と別れを告げて酒田・遊佐の方へと走る。距離にして40km近くある。日が出て晴れてきたら暑くなってきた。羽黒山を下って県道を最上川に向けて走る。庄内平野の田んぼを抜けていく単調な道ではあるが日を隠す物が何もなく田んぼから蒸し暑い風が吹いて暑いのだ。国道に戻ってさあ走るぞと思ったら、サンダルと足がすれてる部分が痛くなってきた。濡れた足で羽黒山を歩いたのが利いたようだ。直接あたらないように絆創膏を貼って走り出す。
国道を海に向けて走っていく。ペースは極端に良くもなく悪くもない。自ら悪くないと思えるなら良いだろう。酒田に行って買い出しをしないといけないものがある。いつの間にか自発光式のリフレクタが脱落して無くなっていたのだ。スピーカーについては雨が乾いたら完全に直ったようだ。不安要素はリフレクタだけである。 |
最上川の南岸を走っていたのを北側に渡って北上するルートに行けば最上川とはお別れかと思っていたら、前輪がふらつき始めた。銀山温泉に続いてパンク発生である。今回の旅はマイナートラブルがちょこちょこと多い。最上川の土手に面した歩道に自転車を寄せて前輪を外して修理する。銀山温泉の時のトゲが見つけきれず再発したのかと思われる。チューブを外してタイヤの内側を見てみるがトゲが見あたらない。いや、無いはずはない。そう思ってネチネチと観察する。今度はタイヤの接地面側を見てみる。チューブの穴があった付近を引っ張ったり曲げたりすると裂け目が少し見えた。ここにトゲがあると確信した。よく見ると小さな金属っぽい堅さのトゲがある。プライヤーでは抜けない。チューブ面側からプラスドライバでトゲを押してみたら接地面側に少し出てきた。それをプライヤで摘んで取り出した。見つけるのも取り出すのも難しいパンクをよくつぶし混んだと我ながら思う。そうしてる間に時間はどんどんロスしている。
あまり慌てることはしないが、明日は鳥海山へのヒルクライムにチャレンジしたいので遊佐ぐらいまで行っておきたい。鳥海山に登る前に時間と体力をロスしたくないものだ。酒田の大きめのショッピングセンターのホームセンターへ寄り道する。とにかくリフレクタの自発光式を手に入れたいのだ。何とかPanasonic製の物を手に入れた。さっそく箱から出して使ってみる。余計な機能が付いてて困った。暗くなると発光、振動があると発光… 頼むから余計な事せずスイッチを入れたら発光してくれと言いたい。すっかり夕方になってしまったが、遊佐に向けて急いで走っていく。夕日に照らされて黄昏色の空に映える鳥海山が美しい。景色の写真を撮ったり夕日の写真を撮ったりする精神的余裕も無いままに遊佐を目指す。
あと直線道路を15kmほどを残したところで日没となった。買ったPanasonicのリフレクタをサイドバッグにぶら下げて走る。暗くなったし揺れるので点滅する。停車すると点滅が止まるのがうっとうしいし、危ないが自ら揺らして点滅させる。観光を頑張りすぎたのとパンクもあってナイトランとなった今日は厳しいものだ。並行する高速道路もないため交通量は多いし大型車も多い。前方の路面と交通と後ろに気をつけながら走っていく。縁石を見落としたりすると危険なため白線より車道側を基本的に走る。後ろに車が来たら白線上ぐらいの位置に避けて走るというのを繰り返す。
夜も19:00を過ぎた頃に、遊佐のキャンプ場に辿り着いた。温泉とキャンプ場が近い立地なので野暮用は一気にカタが付く。何とかチェックインしたもののお盆で混んでるサイトは俺のテントを張る場所を見つけきれない。何とか傾斜地であり人通りも多そうな位置ではあるが見つけてテントを張る。そして明日に備えてブレーキをメンテする。この時点で20時。前輪も後輪も大事を取って新しいブレーキシューを入れておく。蔵王と普通の道と羽黒山とウェットブレーキしすぎて摩耗しているのだ。そして20:40になって風呂に入る。風呂は閉館が21:00なのでギリギリである。
何とか風呂を済ませてビールも調達して夕食を取る。今日は山形県で過ごす最後の夜。俺の中では一つの打ち上げとして位置づけている。だだちゃ豆を塩ゆでする。尾花沢で買っておいたザルが大活躍だ。ざっときれいに水切りできたので豆の味が濃い。極めた枝豆を満喫しつつビールで乾杯する。米はもちろん山形産コシヒカリの銀しゃり、炊き具合は完璧をきわめて、ツルナと豚肉の炒め物を作る。飯もビールも進む。山形の大地、山形の人たちに感謝して山形県の旅で最後の晩餐をしめた。特別な思いで混雑するキャンプ場の炊事場で飯を頬張る俺は怪訝そうな目で見られていた。
そして山形最後の夜は更けて俺は眠りについた。この時点で0:00 キャンプにしてはハードだし明日は早朝からヒルクライムにトライしたいだけに不安なコンディションだ。 |

パンク修理してしまった・・・
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タイヤレバーと憎き金属のトゲ
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庄内産だだちゃ豆の塩ゆで
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ツルナと椎茸の肉野菜炒め
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8日目 |
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遊佐 → 鳥海山・鉾立展望台 → 象潟 |
51.79 km |
2009/08/15 |
朝の5時とか6時には起きて出発したいところだが、体が全くついて来ない。起きた時点で7時、撤収したら8時とずれ込んだ。キャンプ場をあとにした時点で既に日は昇ってかんかん照りとなっている。昨夜のビールの消化もあり水分をどんどん消費していく。鳥海山ブルーラインの入り口に行く坂すらきつい。海からスタートなので標高=高低差となる。今までの経験や実績からすれば、不可能ではないはずのルートだが、状況は明るくない。
それでもブルーラインが始まると、足はしっかり動き始めた。想定通りではあるが傾斜は結構厳しい。無理して体力ばかりを消耗しても仕方ないので、早めにインナーに落としてゆっくり登り続けていく。深い森の中を右に左にとワインディングするルートを上る。イン側は立ちこぎに近い踏み方で力をかけて、1本ずつカーブをこなして標高を上げていく。いつものヒルクライムと同じで気長に戦うしかないのだが、いつもと違うのが水の消費量が多いのだ。登り始める前の初期の水分補給をもっとしっかりやっておけば良かったと後悔するばかりである。やはり、こういう晴れて暑いヒルクライムは水分を多めに持って行くべきだったと悔やんでも、もう水分を補給できそうな場所すらない。ボトルの水を節約しながら登っていくしかない。
標高700m近くになると傾斜も再び厳しくなってきた。一時的にカーブではなく直登形になるのだ。これを耐えて登り切ると森の木々の背が低くなって下界の眺めが開けてきた。庄内平野と日本海の眺めとそこまで下って行く鳥海山の稜線が見下ろせて気持ちが良い。精神的な安らぎをそこに得ながら、どこまでも続く厳しい坂をぐいぐいと登っていく。途中で数人のロードレーサー乗りに追い越され話して情報を入手しながら雑談しながら登っていく。標高800mともなってくると東北地方のような寒冷地だからか木々は低く常に眺望があるような状態になってきた。山肌に生える木は紅葉しているのか赤っぽく色づいている。真夏だというのに不思議な光景である。
やっと残りのワインディングの数も数えられるところまで登ってくると傾斜はますます厳しさを増してきた。傾斜が厳しいのか俺の体力が厳しいのか分からないが気長に進んでいく。カーブから見下ろす秋田県側の海と山形県側の平野を精神的な支えとして登っていく。国民宿舎まで残り1kmあまりというところで手持ちの水も終わりが見えてきた。あと一口分を残して1kmとなった。完全に水に関してはマネージメントに失敗した感じである。大いに反省の余地がありだ。ややグロッキー気味になりながら国民宿舎へと辿り着いた。
まずは水分の補充と昼食だ。自販機で糖分と水分の補給と炭酸による乳酸の分解を狙ってコーラを1本買って飲み干す。缶を潰して荷物に挟み込んで、国民宿舎のレストランへ向かう。閉店間際だし、何故か俺を待たせたままで注文も取らない。閉店間際だというのにお盆を拭いたりして勝手にテンパってるので怒り気味に注文を言って席に座る。とにかく仕事の優先度を真面目に考えてくれ… 焼き肉定食で腹を埋める。ハンパじゃなく腹が減る時間帯まで走っていたので美味い。ボトルには鳥海山の天然水をもらって一気に回復へ向かう。飯を終えたら駐車場の向こうにある展望台へ行く。そこから見下ろす庄内平野と秋田の海岸線は壮観で達成感とかこの景色が見えるところまで頑張って登ってきた満足感がある。そして今までどうしても見えなかった鳥海山の頂も姿を現した。まだヒルクライムは終わりではないし、300m近い高低差を残しているが、歓びで現実を忘れるしかないだろう。国民宿舎で飼っているシカを見物して癒されて、また現実を忘れる。
そして、自転車にまたがれば現実からは逃げれない。あと2kmほどで着く県境を目指して、回復した体で登っていく。食事も取って水分と糖分も取ったのでかなり楽になってきた。景色を楽しみつつ登ることを楽しみ始めて来た。傾斜は10%を越えるのが続いているがペダルはしっかり踏めてるし回せている。それほど大きな苦労は無く県境の看板が見えてきた。山に始まり山に終わった山形県の旅… そんなハードな旅を象徴するように峠に向けてラストスパートし雄叫びと共に渾身のガッツポーズを決めて山形県から秋田県へと峠を越えた。
この峠を越えた歓びを噛みしめつつ、写真を撮ったり余韻に浸った。下から登ってきたロードレーサー乗りが山頂に立ち止まることもなく通過していった。この時点で少し嫌な予感がしてきた。さあヘルメットをかぶってギアをインナーからセンターにして尾根伝いの道を走って秋田県側に下るぞー下りの途中で鉾立展望台で眺めるぞーと思って走り出した。しかし、ロードレーサー乗りが立ち止まらない理由を体のそこから思い知ることになるのだ。ちょっとした登り返しかと思っていたが10%の上り坂が続いていく。急にヘルメットの中が蒸れてきた。ヘルメットは脱ぐ。かぶらなければならないほどのスピードは出ない。当然ながらセンターじゃ踏めるわけがなくインナーに戻す。向こうの方に展望台の建物が見えるが、俺の視線より高い。そう、峠は終わったわけではないのだ。心は完全に折れてペースは一気に落ちた。
気持ちを切り替えて続きの上り坂へと立ち向かう。おそらく、鉾立展望台が頂上だろう。それは間違いないだろう。心は折れたが尾根伝いの上り坂は眺めが良いし開放感あるし走っていて楽しいルートではある。体力が残っていれば。何度も地に足を着きながら鉾立展望台に向けて走っていく。そして、展望台の駐車場を駆け上がり今度こそ鳥海山ブルーラインの最高地点に辿り着いた。続きのルートを見ると地に落ちるような急坂で下ってる。想像以上に厳しいルートだったが、やっと俺自身が旅を続ける理由とか自転車に乗る意味を見い出し直したというかそういう気持ちになってきた。鉾立展望台からの眺めは、これまでの鳥海山ブルーラインの眺めとはひと味違う。秋田県側に続く鳥海高原の風車や海岸線や平野を一望できるし、深い谷の向こうには鳥海山の山頂が見える。下界から見て稜線の美しさに憧れてきた鳥海山の美しさがここに極まっている。下界だけでなく山頂の方の眺めも本当に素晴らしい。
胸にぐっと来るような景色を楽しんでから売店を物色していると、どこかで見たことあるおじさんおばさんが居る。羽黒山のキャンプ場で会った中高年登山の集団である。また話は盛り上がった。存分に可愛がってもらって、俺は鳥海山をあとにする。ブレーキチェックをしてヘルメットをしっかりかぶって、ブレーキングしてチャリをコントロールするのに必要な上半身の筋肉をほぐす。しっかり疲れを取ってから下り坂に飛び込んでいく。秋田の平野に向かって落ちていくような豪快な下り坂と急なワインディングが気持ち良い。慎重ではあるがブレーキがしっかり利くので、スローインファーストアウトして左側車線をはみ出ない範囲でアウトインアウトしながらルートを広く使って安全に下って行く。スピードを攻めるためのアウトインアウトではなく、その方が安定できるから使うのだ。不要な登り返しなどもない気持ち良いだけの下り坂は興奮と楽しさがある。
森林限界より下界に入ってもルートの楽しさは終わらない。登り切った者だけが味わえるご褒美を存分に楽しんでいく。下りきったところでふと振り返ると夕暮れ時の黄昏れた空に映える美しい稜線を持つ鳥海山がそびえ立っている。この地方を何度か旅した時に毎回のように美しさに感動した鳥海山も登って戻って来ると、その想いもひとしおである。
鳥海山ブルーラインを終えて鳥海高原を横断する県道へと合流して海の方へ下って行く。結構な下り坂がまだまだ続く。つまりは鳥海高原へ行こうとすると再び登るルートである。この時点で心の底から萎える。鳥海山を越えてきただけで体力の消耗度合いは激しいので鳥海高原は見送りにして由利本荘を回っていきたくなってきた。そんなことを考えながら坂を下っていると、左側に絶景が広がった。きっと有名な展望スポットでも何でも無いと思うが、広がる田んぼとその向こう側に広がる日本海 これらはみんな海の向こうの夕日に照らされて夕日は海へと沈もうとしている。この美しさに感動して急ブレーキで停車して立ち止まる。 |

鳥海山ブルーラインの坂
山に始まり山に終わった山形県
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結構な傾斜が続いていく
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鳥海山の山肌を見下ろす
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秋田県側 海岸線の眺め
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大平山荘のシカ
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鳥海山ブルーラインのピーク
…と予想していた県境
さらば、山形県!
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鉾立展望台からの眺め
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鳥海山 山頂を望む
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鳥海山ブルーライン
秋田側下り
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鉾立展望台より
鳥海高原を眺める
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鳥海山を見上げる
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日本海へ続く田園と夕日
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そして現実に戻り、にかほ(旧 象潟)へと下って行く。まずは駅で情報収集だ。このにかほで洗濯をしたいのだ。EZ-NAVIで探してみる限りでは見つからない。キャンプ場へ向かう。洗濯は今日か明日にでも出来ればOKなので緊急性は無い。スーパーで夕食の食材を買い込んでキャンプ場へ。チェックインしつつコインランドリーと風呂について聞いてみると風呂は近所に温泉があるので問題ないがコインランドリーは隣町に行かないと無いようだ。
テントを張って荷物を放り込んで風呂へ行きたいところだが、何だかガラの悪そうなキャンパーばかりで居心地が悪い。海沿いはそんなもんだろうか…。すっかり暗くなった海岸沿いの道を走って風呂へ行く。露天風呂などの気の利いたものはないが建物の3階部分が風呂で眺めは相当いい。国道に一度出てコンビニでビールを買ってキャンプ場に戻る。今日は御飯を炊いて、野菜と豚肉で豚汁にしてタンパク質やエネルギーを補給したい。野菜も豚肉も東北は美味しい。酒田の大豆で作った豆腐や納豆も美味しく栄養の補給は完璧だ。
今回の旅の2大難所である鳥海山を制した歓びに浸り眠りについた。 |

夕食の豚汁
山形・秋田産にはこだわりきれず |
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