旅記録

2014 夏 北海道(道北・道東)
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10日目 網走 → 浜小清水原生花園 → 斜里 → ウトロ 86.69 km
2014/08/18
 さて俺は栃木へ飛んで戻るべきなのか、旅を続けても良いのか、連休中の仕事の状況を確認してみたが、どうも俺は居ても居なくても大差はなさそうだ。そのまま旅を続けることが決定である。そうと決まれば荷物をまとめて知床へ向けて走り出す。網走から知床は全く同じコースを過去に走ったこともあるので勝手はしれているが、当時の俺は若い。そして軽い。
 やや酒の残る体で走り始めた。まずは道の駅でスタンプを押していく。浜小清水原生花園の方へ行く。向かっている途中で自転車に異変が起こり始めた。トップから2枚目ぐらいのギアで走っているとガチャッと歯飛びするような動きをしている。だが低速だと再現しないし自転車を止めてペダルを逆転しても再現しない。ある一定トルク駆けてる時だけなので原因が突き止められない。まるで今の仕事のようだ。網走にはサイクルプロショップなどはなさそうだし、仕方なく違和感を残したまま走り続けるしかないようだ。これを理由に打ち切るのも何だかつまらないが、これから修理できる可能性は減っていく一方で釧路まで面倒見れるような自転車屋は無いだろう。悩ましい状態である。
 そうこうしているうちに浜小清水に着いた。かなり観光地化した道の駅と展望台があり感動は薄い。過去に2回来たがいずれも曇りでスッキリしなかったが今回は気持ち良いほどに晴れている。緑の鮮やかさと湖の青が心地良い。花は既に終わっている季節だが、海沿いの草原と湿原と湖という景色が良い。
 また自転車の違和感を味わいながら、単調なまっすぐな道を斜里へ向けて走っていく。おほーつく海は見えないほどに内陸側へ入り込んでいくので牧場や畑や草原の中を進んでいく。今年の旅でも丸1週間は北海道を走り続けているので見慣れた景色になりつつある。チェーンが暴れる事象でもないと退屈な旅になってしまいそうでもある。

浜小清水 原生花園

 相変わらずの違和感の中で斜里の街にたどり着いた。何はともあれ昼飯だ。市街地の方へ曲がって入っていく。斜里駅の前には店が何軒かはあったが少し遅い時間だからか軒並み閉まっていた。まずは斜里駅に行きスタンプを押すと観光案内所があった。ここが知床の玄関口に当たるので案内所は充実していた。今日中にウトロまで辿り着けるのは、ほぼ確実な進捗なので、明日の知床観光船を予約することにした。観光案内所にパンフレットが何枚かある。いくつかの業者でやっているようだ。見比べて勘で選ぶ。その場で電話をして予約を入れたら、予約は確保できた。朝の便で知床岬まで往復する。このツアーの中では一番長いコースになる。
 予約が取れて安心したので、斜里駅の近くの産地直売に立ち寄ってみたが、すぐに昼飯として食えそうなものはなかった。仕方なく…でもないが北海道のオレンジ色のオアシス セイコーマートに頼るしかないだろう。駅から最寄りのセイコマはホットシェフのものだ。弁当のクオリティが高い。腹を満たしたら斜里にある知床の郷土資料館に立ち寄る。探すのに苦戦して何とか見つけたら痛恨の定休日。
 あとは知床へ向けて走って行くだけだ。チェーンが保つことを願いながら進む。知床のエリアに入ってから再起不能状態になると致命的なので不安はぬぐいきれない。仕事で追いかけているとある問題と同じで再現したその瞬間に何が起きたのか見ないことには原因がつかめない。浜小清水からまっすぐ来た国道が大きく左に曲がっているが、直進できる道がある。ツーリングマップルを見るとこの先には展望台がある。時間は押しているが見に行ってみる。まっすぐで急な坂が始まる。息を切らしてペダルを踏み込んで上がっていく。坂の向こうには斜里岳がそびえ立っている。斜里岳の稜線も見事で雄大さと荘厳さを感じる。すっきり晴れた空の下でくっきりした姿を見せている。
 坂を登り切って振り向くと地平線まで目の前を縦に貫くまっすぐな道が見える。心を打たれる絶景である。もちろん、このまっすぐな道を地平線から自分の足で進んできたからこそ味わえる感動である。旅自体も長年続いていると、よほどのことでは大きく驚かないところまで感受性が落ちているが、こんなに大きな感動も久しぶりに感じるものである。
 その喜びをかみしめつつ展望台から続くもう一つの坂を下って上る。この上り坂もまたきつい。坂を登り切ると突き当たりで右に行けば温泉、左に行けば国道に戻って知床の方へ向かう。突き当たりでまた真っ直ぐな道を眺めていく。地平線からの真っ直ぐな道なんて日本でいえば北海道しかないだろうし上から見下ろせる場所は日本でここしか無いと思われる。

山方面の眺めも雄大


坂を上り詰めても
地平線と真っ直ぐな道


展望台からの眺め 地平線まで真っ直ぐな道が続いている。
というか、おそらく地平線から道沿いに走ってきた。

 眺めを楽しんだら現実に戻る。海に向けて急な坂を真っ直ぐと下っていく。上ってくる道も真っ直ぐなら下る道も真っ直ぐ。かなりスピードは乗るが安全に下れるのがうれしい。海沿いの道は幅が狭いし車通りも多い。しかも意外とアップダウンは多い。1999年の夏の旅で同じところに来ているが、こんなに坂を感じた覚えはなかった。それは斜里の近くだけで一つ越えれば海沿いの平らな道が続いている。あとはウトロまでひたすら平らな道で左にオホーツク海を見ながら進んでいくだけである。最後の秘境とも言われている知床に向かう道ではあるがきれいに整備されていて快適に走れるし道幅も広い。徐々に夕暮れに染まるオホーツク海を見ながら、気持ちよく走って行ける。チェーンの問題さえなければ…。歩道も広いし平らで障害物もないし海に落ちる心配もないので再現確認するには最高のコンディションである。チェーンのあたりを覗き込みながらペダルを回していく。確かにスプロケットの上でチェーンがピクッと暴れている。これが違和感の原因だとは思われる。見ても原因はつかめない。明日は連泊で多少時間があるので自転車を浮かせた状態でチェーンを回して原因をつかめるだろうか。
 オシンコシンの滝にたどり着いた。もうウトロは目の前である。真っ白でなしぶきを上げる滝は見事である。写真を撮りまくって、少し休憩して出て行く。オシンコシンの滝からトンネルを抜けてウトロの道の駅にたどり着いた。道の駅で情報収集をしていくが、泊まるところは坂の上の知床国設野営場のみである。
 夕飯の食材を買い出ししようと思ったがA-COOPなどスーパーは見当たらない。土産物屋で売っていた鮭の西京漬けとイカの沖漬けを買っていく。網焼きはできないので、セイコーマートでもやしを買っていく。買い物を済ませて、明日の観光船の待ち合わせ場所を確認したら、暗くなった道をキャンプ場へ上っていく。坂の上に温泉もキャンプ場もあるのだが、これがフル装備で上るとなかなかきつい。何度も足をつきながら徐々に上っていく。
 坂を登り切って温泉街の方へ曲がる。ホテルが建ち並んでいる知床の観光拠点になっている場所である。そこを抜けると日帰り入浴の温泉があった。今の時点で閉店ぎりぎり。慌てて荷物を引っ張り出して風呂に入る。温泉で疲れを落として、キャンプ場へ向かう。すでにテントがいっぱい張られていて平地が埋まっている。キャンプ場は明かりなども少なく自分のライトを使えないと真っ暗である。仕方なく少し傾斜になってるところにテントを張ってペグをしっかり打ち込む。連泊だし予報では明日は雨だ。
 テントを張ったら炊事場に米を研ぎにいく。ついでにイカの沖漬けをパックからコッフェルに空ける。ペットボトルに水をくんでテントへと戻り、夕飯を作る。まずは米を炊いて、その間にフライパンの上にもやしを敷いて鮭の西京漬けをのせる。上からアルミホイルをかぶせておく。米が炊けたらフライパンを火にかける。イカの沖漬けでビールを飲みながらホイル焼きの完成を待つ。新鮮なイカを漬け込んだ豊かな美味しさがたまらず酒は進む。ホイル焼きができたらご飯と合わせて食べる。北海道の海の豊かさが詰まった夕飯である。
 食料管理、熊対策の観点では本当は嫌なのだがゴミ箱が暗くて見つからず、沖漬けの袋や包装をきれいにあらって臭いを落としてテントの中に保管する。食べ残しはないから大丈夫だろう。

オシンコシンの滝


西京漬けの鮭でホイル焼き



   出発(北海道滝川市)から 762.77 km

11日目 ウトロ → 知床五湖 → ウトロ 30.60 km
2014/08/19
 朝起きて、ようやくゴミ箱の場所がわかったのでゴミは捨てる。少し時間があるので自転車を解析する。チェーンの切り繋ぎしたコマが固着している。油をさしてラジオペンチでつまんで動かすと少し動くようになってチェーンが暴れる症状は治まりそうだ。なぜ、そうなってしまうのか原因は不明だが事象は収まりそうだ。
 空荷の自転車で坂を下ってウトロの市街地へ降りていく。待ち合わせ場所に自転車を止めてワイヤーロックで固定して出航を待つ。朝飯を食いそびれたが、買いに行く時間は無いようだ。防寒着を渡されて、いよいよ船に乗り込む。夏だというのに分厚いが、沖に出ると結構寒いらしい。満員の船ではあるが、4人掛けのシートの最後列で海側のシートになった。20人近い乗車定員の中で最高のポジションともいえる。
 船はウトロの港を出ると沖へ進み、知床半島の先へ向けて走り出していく。知床峠への登りが始まったところから世界遺産へと入っていく。1999年時点では世界遺産認定はされていなかったので、世界自然遺産の中へ入っていく感覚というのは初めて味わう。ビジターセンターの近くのフレベの滝を海から見るのも見事だし、遠くにそびえ立つ羅臼岳や斜里岳など知床連山の眺めも見事だ。天気は雨寸前の曇りだが奇跡的に山の稜線がきれいに見えている。ごつごつした大きな岩に鳥が飛び交っている。その中に天然記念物のオジロワシも見える。止まっているということもあり大きさが分かりづらいが貫禄と猛禽類の鋭さを感じる。なんと言ってもガイドの兄さんの野生生物を見つける早さに驚く。
 徐々に先端に向かうにしたがって限られた人間しか立ち入られないエリアになっていく。海から見える大きな岩が並ぶ光景や知床連山がすごい。その中でヒグマなど野生動物が見えないか探すのが楽しみでもある。しかし、そうそう簡単に見つかるものでもない。ガイドさんの知床の自然についての解説は興味深く聞き入る。海に流れ込むカムイワッカの滝が見えてきた。カムイワッカ湯の滝の下流にあたるので、一般人が立ち入れるエリアはここまでとなる。カムイワッカ湯の滝も知床五湖からダートの林道を10km以上も走った先にある秘境で今はシャトルバスか自転車か徒歩でしか立ち入れない領域だ。これでも知床の旅としては前半戦の途中というところであり、いかに大きな秘境なのかが分かる。
 カムイワッカの滝を越えるとルシャの浜まで近づく。鮭や昆布の漁の拠点として漁師だけが立ち入っている番屋があるが、熊が最も出没する場所として海から見る定番になっている。ちょうど山の隙間だからか吹き抜ける風は強く波しぶきが降りかかる。そんな非日常を楽しみつつ浜を見ていると、ガイドさんから案内がかかった。ようやく念願のヒグマが見えた。石がごろごろしている浜で餌を探しているヒグマの親子が見える。遠くから見てると大きさを感じないが、周りの流木や岩と比べたら相当 大きい。目の前にいたらひとたまりもないサイズだろう。ヒグマという名前だけあって体は茶色で輝いている。今までは出来る限り出会いたくない存在であり、そんな存在であることが憎むべき動物だったヒグマは山の主であり、昔の人は神としてあがめたのも分かるような気がしてきた。そんなリスペクトが熊にて芽生えてきた。
 この先は陸から入ってくる人はまずいないような本当の意味での秘境が始まるのだが、漁師の番屋は海沿いに並んでいて仕事している漁師さんもいる。番屋は海からしかアクセスできない地形である。秘境のわりに番屋が並ぶ光景も妙である。海に直接降り注ぐ滝や木が生えていない硫黄山など見ながら進むといよいよ知床岬が前方に見えてきた。先端は平らになっていてぽつんと灯台がある。自分の足でここまで来たわけではなく船で来ただけなのに達成感がある。確かに長い船旅で2時間近くかかってここに来ているが、全く長さを感じないほど変化に富んでいた。登山の上級者は羅臼側から歩いてここまで来る人もいるということなので、いつかはたどりつきたい岬とは思っている。船で来た以上の感動はあるだろう。船なら金さえかければ来れる場所とは思うが、そうそうめったに来れる場所ではないので写真をいっぱい撮って思い出を焼き付ける。
 岬からの戻りは沖の方を快調に飛ばしながら、半島から離れた分だけ知床連山の眺めを楽しみながら戻れる。曇りなのに稜線が見事に見えているのでありがたいことである。途中でイシイルカの群れに遭遇したりで帰りは帰りで楽しみが多い。知床が世界自然遺産に認定された点で海と山の生態系サイクルが見られるというのをあげられており、遡上する鮭とそれを捕食する猛禽類や熊、産卵を終えた死がいが土に帰って…というサイクルばかりが着目されているが海の豊かさも特筆すべき内容である。
 あっという間の3時間の船旅が終わり、ウトロの港へ帰ってくると岸壁の上にオジロワシがいる。天然記念物の野鳥が市街地にまで現れるのが知床の豊かさを象徴しているのだろう。

知床岬へ向かう観光船


オジロワシ


カムイワッカの滝
陸上で行けば、かなり秘境


ルシャの浜にいるヒグマの親子


海から眺める知床連山


海に直接流れるカシユニの滝


地の果て 知床岬


続く断崖絶壁と知床連山


ウトロの港に戻ったら
岸壁にオジロワシが3羽

 楽しすぎる観光船から下りたら、雨がぽつぽつと降り始めていた。まだ時間は昼前なので、昼飯を食べてから知床五湖の方へ上っていけばいいだろう。すぐ近くの食堂で海鮮丼を食べていく。おなかを満たしたら、自転車で知床半島の先端へ向けて走り出す。知床峠へ登る途中のビジターセンターに向けて上り坂が始まる。この坂の途中から世界自然遺産に入っていく。結構、急な上り坂が始まっているが、ギアはセンターのままでぐいぐいと上っていく。26HE化とコンパクトドライブを選択した効果が出ている。意外と力強い走りでビジターセンターまでたどり着いた。ここで情報収集をしていく。1999年に来た時は知床五湖のうち1,2までしか見れなかったが、今はすべて見れるようだ。
 ビジターセンターを出て知床五湖へ向けて走って行く。ビジターセンターからしばらく上り坂が続いて、途中でエゾシカが何頭も現れる。もともと道東はエゾシカもキタキツネも多いエリアだが、知床は特に多いのだろう。ここで一度坂を下り、岩尾別の温泉を通る。下り坂の途中から見る羅臼岳が見事な姿である。立ち止まって見とれてしまうような稜線と大きさである。何度も写真に撮り、後で上るけど下りを楽しむ。坂を下りきると、再び知床五湖に向けての上り坂が始まる。知床は険しい山々なのでアップダウンは激しい。
 山や草原が見えたりで景色を楽しみながら知床五湖へ向かっていく。最後の一踏ん張りと思われる上り坂を上ると駐車場が見えてきた。ここに自転車をおいて、レクチャーを受けた者だけが知床五湖を歩けるようになっている。まずはレクチャーを聞くのだが、1時間近い歩きになりそうなので水を買うとフレーバー付きのものは持ち込み禁止と止められた。だったら、売店で売らないでほしい。水は全く持たずにレクチャーを聞いていく。熊と遭遇しないための注意点と遭遇した場合の注意点が主な内容である。

前方に見る知床連山の稜線


道路に現れたエゾシカの親子


岩尾別への下りから見る
知床連山の稜線

 レクチャールームから一方通行になっているドアを出て湖沿いの遊歩道を歩いて行く。見通しの悪いところで拍手をしたり声を出したりして熊の動きを察する。といっても5人組ぐらいの集団と同時だったので一人きりというわけでもない。念願の知床五湖のうち5湖から順にカウントダウンしていく。湖自体はそんなに大きいものではないが森に囲まれて静かな湖面と映る知床連山の姿が美しい。見る角度で移る姿も変わってくるものである。湖に戯れる鳥もいれば、湖面に浮かぶ島と立ち枯れた木など自然の厳しさも感じられるような光景である。1時間以上も歩くコースなのに時間が過ぎていくのを忘れるようである。ありがたいことに曇りなのに山はきれいに見えているので知床五湖の醍醐味を十分に楽しめた。そして2湖を終えると一方通行の回転式ゲートを抜ける。ここは1湖を眺める展望台だが高架の木道になっていて足下は高圧電線で熊よけをしてある。熊と遭遇しても絶対に危険性がない歩道になっていて、ここを歩く分にはレクチャーを受ける必要は無い。
 高架になってるおかげで眺めがよい。海のほうに見下ろせる草原と湖と山も見れる。高架になって人間と熊を隔離した効果が早速現れた。高架木道を歩いて戻ろうとしたら「ヒグマがいるぞ」という声が聞こえて急いで戻る。草原の方に大きなヒグマが一頭見える。さすがに近づいても来なくて、遠いところだがこうやって熊が見えるのは楽しい。湖の方にはエゾシカも3頭現れていてその光景も木道から見える。湖と知床連山と動物たち… 豊かな自然を心から楽しんで戻ってきた。レクチャールームで熊目撃の報告をしたら、1湖の木道から見る熊はおそらく毎回同じ個体で何度も見られており縄張りにしているようだ。

森から見る静かな湖面


静かな湖面に映る知床連山


山と湖が美しい


浮島のような地形


知床連山が鏡のように


湿原のような場所もある


雄大な羅臼岳


知床連山と1湖


知床1湖の木道で目撃 ヒグマ

 薄暗くなり始めている道をウトロに向けて戻っていく。岩尾別からビジターセンターへの上り坂が踏ん張りどころである。1999年の旅で行ったカムイワッカの湯の滝へ向かう林道は今日は既に閉鎖となっていて警備員がいる。岩尾別に向けて気持ちよく下って坂を上っていると雨が降ってきて強い風も吹き始めてきた。運良く追い風なので風の力も借りつつぐいぐいと強く上っていける。帰り道も行きと同じく何度もエゾシカを目撃する。近寄ってきて逃げもしない。知床以外だと素早く逃げるのだが、知床は数も多いし逃げない。地域で違いがあるのも興味深い。
 ビジターセンターを通り過ぎてウトロへ向けて下るときには雨は大粒になっている。これまで走行中は一度も着なかったレインウェアをついに着る。この旅で初の走行時間帯の雨だ。そういう意味では今年の旅の天気運はすごい。キャンプ中に雨が降りまくったのは変だが走行中はずいぶん運に救われてきた。暗くもなってきたのでライトをつけてリフレクタもつけて坂を下っていく。大きく曲がるワインディングを気持ちよく下る。ウェットの路面だが大胆に走れる。
 坂を下りきってウトロの市街地まで降りてくると真っ暗になっていた。もう19時になっている。セイコマで夕飯の食材を買う。今日は頭の中で既に決まっている。ジンギスカンを買ってもやしとピーマンも買う。ガスが切れそうなので米は炊かない。ジンギスカンの汁で味をつけてうどんを炒める作戦で行く。これらの食材がすべてコンビニで揃うところがセイコマのすごさである。
 昨日は苦戦した坂だが今日は空荷であるということもあって、比較的楽に進んでいく。坂を登り切って昨日とは違うホテルの日帰り入浴に行く。遅い時間まで営業してる温泉がもっとキャンプ場寄りにあったので、そっちにする。テントに食材を置いて自転車をロックして着替えを持って風呂に入る。
 風呂を終えたら、また降ってきた雨の中で炊事場へ急ぐ。炊事場では外国人が音楽を聴きながら酒を飲んでいた。英語で挨拶してジンギスカンを焼き始める。たれの染みたラム肉が柔らかくておいしい。最後はうどんを入れて余ったたれをすべて入れて味付けしながら炒めて汁っぽい焼きうどん風にする。これがなかなか美味い。この場で食器はすべて洗ってゴミはゴミ箱に入れて夕飯を終える。ただ、今日の狙いはガスを使い果たしてガス缶を1本捨てて行くところだったが、微妙に残ってしまった。まあ仕方がないことである。
自炊のジンギスカン



   出発(北海道滝川市)から 793.37 km

12日目 ウトロ → 知床峠 → 羅臼 39.87 km
2014/08/20
 今日はこの旅で最大の山場となる知床峠を迎え撃つ。1999年時点でもそんなに楽ではなかった峠だけに気合いは入る。キャンプ場に2泊しているが未だに料金を払っていない。窓口が開いている時間にキャンプ場にたどり着く、出発できていないのだ。今日も窓口は閉まっているのでメモ用紙をちぎって代金を包んで出発する。知床で重要な拠点なので維持存続はしてほしい。
 坂を下りてウトロの市街地に出てセイコマで朝食を食べていく。昨日も上ったがビジターセンターまでの坂を上り始める。昨日とは違ってフル装備ではあるが、意外と力強く上れている。とは言え、今日の坂道は先が長いので無理は禁物である。ビジターセンターに立ち寄ると大学生の集団が2つほどあった。自転車の周りで荷物が散らかっているのが気になる。休憩しつつ熊を捕獲する罠やフードコンテナなど実物を見ていく。荷物を散らかしていた大学生は安全のために荷物を没収されていた。
 昨日とは違って山が見えない知床峠への上り坂を再び上り始める。ウトロ側は直線的で急な坂道が続いていく。知床の原生林を貫く国道は坂の厳しさもあるが森の美しさもある。知床峠の途中でもヒグマの目撃はあるようなので、周りの気配に気をつけながら上っていく。標高が500mを越えたあたりで霧が立ちこめてきた。徐々に視界がなくなってくる。やっぱり今日は羅臼岳や斜里岳は見えないか… 1999年に上った時の知床峠の絶景は忘れられないものだが今日は再びそれを見ることはなさそうである。霧で何も見えないせいか集中して無の境地で上っていく。
 終盤になってくると少し膝の痛みも出てきた。走りに影響するほどではないし旅自体は先はそんなに長くないものの体の異変には敏感になる。何しろ今日は霧で寒いので体が温まらない。風雨にさらされて筋肉がなく関節でしかない膝は真っ先にストレスを受ける場所でもある。苦痛を感じるほどではないが不安を抱えたままで何とか峠に登りついた。もちろん羅臼岳の視界は全くない。まあ、ここまでずっと天気に恵まれてきたし、知床峠の絶景は過去に見たこともあるので仕方ないかと割り切るしかないだろう。
 せっかくの峠なので知床峠と書かれた石碑で写真を撮ろうとしたら、車を止めたまま写真を撮って、そのまま車をどけずに周りをウロウロしてる邪魔な人がいてイラッとする。邪魔な車がいなくなったところで写真を撮る。風が強いので立てかけた自転車が倒れそうである。おそらく羅臼までないと思われるトイレを済ませて出発しようとしたら、知床峠と書いたバス停をバックに写真を撮ろうとしている人がいたので、「霧で見えないけど駐車場の向こうの方にいい感じの石碑がありますよ」と教えたら喜んで向こうの方に撮りに行ってくれた。一日一善 今日は済んだので、あとは悪い人でいてもいいだろう。

出発前に立ち寄るオロンコ岩


知床峠への上り坂
真っ直ぐな長い坂が特徴的


霧が濃くなってきた峠付近で
エゾシカを目撃


知床峠を越える
天気が悪く視界はゼロ

 北海道屈指のワインディングロードで下る知床峠の羅臼側を下っていく。慣れない新車での本格的なヒルクライムとダウンヒルなので、越えたことでの安心感はあるけど、気は抜けない。下りに入っても向かい風が強くてスピードは伸びない。というかワインディングの進む方向で風の受け方が違うので要注意である。車は少ないので緊張感は少なくて済んでいる。標高が下がってくると霧が抜けて路面も乾いて風もやんだ。いよいよ本気出せる下りである。直線でしっかり漕いでカーブの手前でしっかりブレーキを入れて車体を倒しながら曲がる。道は車がいないことを見て広く使ってアウトインアウトをする。スローインファーストアウトとアウトインアウトを意識しながら大胆かつ慎重に下っていく。途中で羅臼国設キャンプ場がある。ここでテントを張って空荷にしてから羅臼の市街地へ下るか…と思ったが、今日は洗濯もしておいた方がいいと判断したので、そのまま通り抜ける。
 途中で冷え切った体を温めて休ませるためにビジターセンターへ寄っていく。知床の自然についての展示と知床岬方面や羅臼湖や羅臼岳へ行く人に向けた情報があった。夏山シーズンで上る人も多そうだが、手つかずの自然とヒグマなどの生態系がより自然のすごさを物語っている。
 そのまま冷えた体で下りきった羅臼の道の駅で昼食にする。冷え切った体を温めるカニ汁がほしくなる。今年の旅で何回目だろうという海鮮丼と鉄砲汁で昼食にする。14時過ぎと遅い時間帯ではあるが、空腹で冷え切った俺には染み渡る飯である。ついでに夕飯の買い出しもここで済ませようと思ったが、観光地価格で高くて種類も少なかった。

なまらヤン衆丼


冷えた体に鉄砲汁

 一応、小さいながらも市街地があるのでそっちに行ってみる。スーパーに立ち寄ると魚は種類がいくつかあった。見てるだけでアイデアは色々と浮かんできた。既に切り身になっている魚は刺身と漬けにすれば良いし、捌きづらいカジカは潮汁にしたら美味そうだ。オホーツク海の塩は既に持っているので素材の味を生かした料理にしたいところだ。汁物に入れるネギと野菜も買って準備は整った。刺身には北海道でしか見られない山わさびを買い、同じスーパーでおろし金も買っていく。大根おろし用なので目が粗いが何とか摺り下ろせるだろう。
 買い物が一段落したところで着替えて洗濯をしたいところだ。ここで洗濯をすると、ゴールの釧路まで洗濯をする必要がなくなる。逆に今日を逃すと色々と探し回る必要性が出てくる。明日の夜の羅臼でも駄目ではないが、明日はさらに距離を伸ばすかどうか考えてもいるところだ。セイコマのトイレで着替えて、一応 買い物をしていく。羅臼で唯一と思われるコインランドリーは既に大学生サイクリストでごった返していたが、洗濯も終了方向のタイミングで洗濯機の方は空いていた。まずは洗濯機に放り込んで洗濯を開始する。書けずにたまっている日記もここで書き進める。2週間のロングランともなるとため込むと確実に消化できなくなり帰った後の忙しいときに書くことになる。大学生がいなくなってコインランドリー内のベンチが空いたので座っていると、そこらを歩いている野良犬のような風情で入口の前をキタキツネが横切っていった。
 乾燥機を回している最中にまとまった荷物を引き取っていった人がいたが、荷物のそばでセイコマのポイントカードを忘れていったようなので慌てて届けに向かったが本人のものでは無いようである。セイコマにポイントカードがあったというのは初めて知ったし今更ながら作りたくなってきた。
 乾燥が終わると既に辺りは真っ暗になっていた。荷物を整理して再び峠の途中にあるキャンプ場へ向かっていく。1999年にも同じコースをたどっているが、今の方が圧倒的にきつい。こんなに長くてキツかったかなぁと思いながら坂を徐々に上がっていく。羅臼の小さな街と温泉宿があり田舎感は薄い。むしろ、地の果てである知床にしては栄えているようにも思える。坂道にへとへとになって登り切ると、熊ノ湯の明かりが見えてきた。道沿いで左が熊ノ湯、右が国設羅臼野営場である。1999年に来た時は昼間だったし余力も十分に残っていたが、今や真っ暗でヘトヘトである。
 キャンプ場で受付を済ませて人もまばらなキャンプ場でテントを張る。隣のテントは世話好きな旅人でしきりに話しかけてくる。駐車場にはキャンピングカーの人たちもいる。やはり知床の旅の拠点になるキャンプ場とあって人気は高い。テントを張って荷物をテントに放り込んだところで熊ノ湯へ風呂に入りに行く。ちょうど俺と同じタイミングで駐車場で酒盛りしていた年寄りたちも風呂に行く。熊ノ湯の入口で雑談していると、ふらふらしながら上ってくる自転車のライトが見えたので待ってみる。挨拶して俺らの前を通り過ぎようとしていた。国設羅臼野営場でキャンプするつもりがキャンプ場を見落として通り過ぎようとしていた。教えなかったら真夜中の知床峠を越えさせてしまうところだった。
 熊ノ湯は今日は常連が少なくて温度がぬるい。いつもは入れないほど熱くされてしまうようであるが、快適である。シャワーも何もないできなりの湯船からお湯をくんで体を洗う。しばらくお湯につかっていると地元の漁師さんが来て話が盛り上がっていた。どうも今の時期はハモがおいしいそうだ。これは良い情報を得た。明日は何とか手に入れるか食べるかしてみたいところだ。そうこうしているうちに20時も回り腹が減ってきた。
 風呂からあがってキャンプ場へ歩いて戻って夕飯を作る。炊事場で米を研いでカジカをぶつ切りにする。魚も刺身にする。テントの前で飯を炊いていると雨が降ってきた。だましだまししのげる雨量ではなくなってきたので屋根がついてる炊事場へ移動する。ここで飯を炊いて、刺身をつまみにビールを飲む。半分は醤油と酒で漬けにしてごまを和える。残りの野菜を取ってこようと思ったら袋に穴が空いて荒らされた痕跡がある。肉や魚はこっちに持ってきていたが野菜はキツネにやられたようだ。何だよと思いながら、漬けをご飯にかけて食べる。カジカの潮汁も煮えてきたようだ。ぷりっとしながら柔らかい白身が美味しい。骨まで丸ごと煮込んでいるので汁には良い出汁が出ている。ただ、骨についた身をしゃぶらないと食べきれないので、どうしても生ゴミが出てしまう。熊が出没してもおかしくない知床で食べるには不向きなメニューを選んでしまったようだ。できるだけしっかり身をしゃぶり尽くして骨などのカスが散らからないようゴミをまとめる。そこまでしてても我が物顔で人慣れしたキツネが炊事場にも入ってくる。音を出して追い払っても全く逃げない。なかなか手強い。
 片付けを終えてテントに戻ると相変わらずの雨で、さらに強い風まで吹いてきた。1999年は晴れて満天の星空まで見えたのに、今年はキャンプには厳しい天候が続いている。知床の山と海が接する地形というのは厳しい気候をもたらすのだろうか。今日は峠でもキャンプでもやられっぱなしという感じである。

アオゾイとオヒョウの刺身


カジカの潮汁


アオゾイの茶漬け 山わさび和え



   出発(北海道滝川市)から 833.24 km

13日目 羅臼 → 相泊 → 羅臼 → 標津 101.20 km
2014/08/21
 昨夜の天候は激しくタープを立てていたサイトは壊滅状態だった。俺のところは登山用テントということもあり無事だったが落ちてきた葉がテントの上に張り付いていた。水と落ち葉を払ってテントを片付ける。隣のテントの人と話しつつ撤収し昨夜 一緒に温泉に行ったキャンピングカーのキャンパーにも挨拶して出発する。
 今日は前々から行ってみたいと思っていた場所へ向かう。羅臼の市街地へ下ってセイコマで朝飯を食べて知床半島沿いを東へと向かう。道路で行ける東の果てを目指す。アップダウンとどちらかの道で向かい風を覚悟しないといけない場面だが、意外と道は平らで風もない。快調にペースを上げて進んでいく。完全に晴れというわけにはいかないが、曇りの中でも青い空が隙間から見えている。穏やかな海を挟んで向こう側には国後島が見えている。羅臼から相泊までは何もない真っ直ぐな道になってるのかと思ったら、昆布の番屋や干し場が並んでいて、昆布漁師と思われる豪邸が何軒も並んでいる。
 少し単調な道を20km近く走ると、ルサフィールドハウスに着いた。ここは知床岬や岬周辺の山に入っていく人のための情報拠点になっている。相泊(あいどまり)から先は道も何も整備されていない手つかずの自然を歩いて知床岬を目指すフィールドになっている。登山にしても沢登りにしてもあらゆる経験と体力と勘が試される場所である。当然、ヒグマも当たり前に出没する場所である。一度は行ってみたい場所ではあるが、俺にはありとあらゆる物が足りない。今までの自転車だけでは感じられない価値観がそこにはありそうである。歩いて岬へ向かう人、山を登る人、カヌーで行く人… いろんなパターンがあるがすべて最上級の技術と体力が必要である。いろんな失敗例も展示してあり、ヒグマに荒らされたザックやへこまされたヘルメットなども展示してあった。2Fからは双眼鏡で鯨を探すこともできるが、ぱっと見ただけでは見つかることはなかった。
 意外と快適で人気も多い道を片道23kmも進んでいくと、瀬石(せせき)温泉に着いた。海岸に石で作った湯船があるだけで開放的な風呂である。引き潮の時だけ使えて地主に一声かけてから入ってくれとのことだが、今日は羅臼を通り過ぎて標津まで行こうと思っているので湯船に入ることはなく、誰も入っていないので道路から写真を撮って通り過ぎていく。この1km先にも相泊温泉がある。これも海に面した無料温泉で竹竿とビニールの囲いがあるだけのようだ。
 ここを過ぎるといよいよ道路としては突き当たりになる。この先に向かう人に向けた重い内容の注意書きのある看板が立っている。相泊の漁港と駐車場にはカラフトマスの釣りをする釣り客と思われる車が何台も駐まっている。たぶん岬に歩いて行った人の車の台数ではない。この地は日本最東端でも何でもないが、ここまで来ると妙に達成感があるものだ。
 再び、羅臼方面へ戻る。羅臼までで23kmもある。来た道は平らだったので気楽と言えば気楽である。左に国後島を見ながら力強く走っていく。帰りにはルサフィールドハウスでトイレだけ借りて集中して走って行く。1時間強で羅臼までたどり着いた。セイコマで休憩して買い物をし、走行距離を確認した。そのまま羅臼の道の駅へ向かう。

意外と道が広い相泊への道


ルサフィールドハウス
秘境への装備例を示す


知床の最果て セセキ温泉
写真の右下が湯船


知床の最果て 相泊温泉
ブルーシートの中が風呂


道路の終わりはこんな標識



この先は全ての能力を
鍛え上げた者のみが行く

 道の駅の前に自転車を駐めて昼飯を食べに入る。昨日の漁師さんから聞いていたハモがあった。蒲焼きにした丼が美味しそうだ。料理を待っている間に地図を取りに戻る。フロントバッグの上から取って、また店に戻る。午後の走りと目的地を考えるが、比較的 今時点で余裕があるので標津までは行けるだろう。そしてハモ丼は来た。ウナギ以上にぷりっとして歯ごたえがあり、蒲焼きのたれでまとめた淡泊な白身は旨みが濃い。隠れた羅臼名物になりそうだが、底引き網でついでに捕れてしまう副産物のようである。(食べたことないけど)京都で食べるハモより身も大きくて食べ応えがあり、価格も安いので手頃だ。
 昼飯を終えて地図をフロントバッグの上につけて出発しようと思ったら、明らかに何かがない。ステムの上に鎮座しているはずのサイクルコンピュータがない。落ちてるかと思って回りを探したがない。自転車をどけて地面を見てもない。ブラケットから簡単に落ちるような構造ではないので自然に落ちたとも考えにくい。セイコマで走行距離を確認したので、そこからここまでの間である。地面に目をこらしながらセイコマまで戻る。1往復しながら確認したが見当たらない。というか走ってる間に既に無かったら俺でも気づくほど違和感がある。はっきり言うと盗まれたとしか思えない。旅人から物を盗む人間がいるとしたら本当に許せないことである。
 1時間近い捜索による遅延で遅れたが諦めて走り出す。15時過ぎと遅くなってしまったが、まだ50km近い距離を走る。羅臼のセイコマまで来た時点で51kmを走り抜いていたので、今日の走行距離は100km越えとなりそうだ。この旅で最初の100km越えとなるだけにメーターが無いのは嘆かわしい。やや西に傾き始めた太陽に照らされながら知床を後にして標津の方へ向かう。俺の過去の記憶だとこのルートはアップダウンが意外と多い。標高こそ高くないが羅臼峠を登り、アップダウンしながら下っていく。下りきったところのパーキングで自転車を駐めて国後島を眺めているとライダーが来た。同じ北関東の群馬県から来ているライダーに親近感を覚える。一緒に写真を撮って、入念にストレッチをして走って行く。

羅臼の黒ハモ丼


ホタテの味噌汁


沖に見える国後島

 過去の記憶の通りで相変わらずアップダウンが激しい道は続く。平らな区間は短く坂を上ったり下ったりを繰り返して、メーター紛失による遅延の影響をより際立たせる状況である。途中は家も店もまばらで北海道らしい寂しい海沿いの道である。メーターがないので距離的な観点でも進捗が分からず、地図上も途中のランドマークが無いので進捗が分からない。メーターが無い状況が本当に腹立たしい。
 夕方の17時半頃に知床半島の根元にたどり着いた。あとは南へ10kmほど走るだけで今日の目的地に着きそうだ。今日の走りに目処がついて安堵の気持ちが大きい。これで明日以降の計画としては、明日が40km強の安息日、明後日が80kmほどのラストランとなりそうだ。今日が羅臼で終わっていると、100kmオーバー+80kmの連続か、90kmが連続となりそうだ。1日安息日を入れて最終日に釧路までのラストスパートをするだけとなれば何とかなるだろう。少しまったりした走りで標津(しべつ)を目指していく。知床半島の付け根を曲がるとアップダウンもなくなった。
 標津の市街地へ入る直前のセイコマで買い出しと情報収集をする。ケータイでスーパーを検索すると見つからない。どうもセイコマで完了させるしかなさそうだ。今日はラムしゃぶにすることにした。コンビニだが冷凍も生鮮食品もあるのがありがたい。地元の人にも話しかけられて元気が少し戻る。
 テントを張る前に温泉を見つけて風呂を済ませる。そこで売っていた鮭節を買っていく。キャンプ場は受付も閉まっているしテント自体も2つほどしかいない。オートキャンプのスペースにも2つほどである。もうキャンプシーズンは終わっているし世間は平日である。俺もそろそろ今年の旅はお腹いっぱいになりつつある状況で夏の終わりを感じる。テントを張ったら夕飯を作る。まずは飯を炊く。続いて野菜を湯がいて、めんつゆとごまと鮭節を和えてお浸しにする。豆腐を半分は冷や奴にして鮭節と山わさびをのせる。残りはラムしゃぶのお湯に入れる。ラム肉はポン酢でさっぱり食べるとかなり美味しい。今日の夕飯をもってGWに買ってキャンプで使い続けた米1kgが完食、ポン酢も使い切った。ガスも2本残っていたうち1本を使い切った。明日の夕飯でもう1本を使い果たして終わりたい。そろそろ旅の閉め方も考え始めたラストナイトの1日前である。
 おそらく100kmは越えたであろう今日の走りだが、メーター紛失で距離が計算値しか残っていないのが本当に悔しいところである。

ラム肉のしゃぶしゃぶ


冷や奴に鮭節と山わさびを載せる



   出発(北海道滝川市)から 934.44 km

14日目 標津 → 中標津 → 別海・西春別 58.10 km
2014/08/22

ササゲのおひたし
鮭節を入れてコクがアップ


鮭節のおかかご飯


 昨日の走りで意外と体力を削られて、朝飯も昨日作っておいたご飯とお浸しと鮭節で済ませて、ダラダラと出発する。今日はどんなに先を急いでも別海の西春別までしか行けない。それより先は泊まれるところがどこに無く釧路まで一気に行くしかないルートである。西春別まで行っても50km弱なので気楽と言えば気楽である。テントを片付けてキャンプ場を後にした時点で10時とずれ込んだ。
 まずは標津にあるサーモンパークへ向かう。鮭に特化した展示や水族館が見所である。館内は鮭やマスばかりが飼育されている。ここまで徹底している水族館も珍しい。秋になれば遡上してくる鮭を見ることもできる。最近は旅先で水族館を巡るのが楽しみになっていて、水族館の地域性を楽しんでいる。水族館の飼育品種は意外と地域性があるもので、ここも例外では無い。鮭ではない展示物でいうとチョウザメの水槽に手を突っ込んで、チョウザメに甘噛みされるのも楽しめる。大きくてぬめっとした噛まれる感触が気持ち悪くて楽しい。展望台はなぜかプロっぽいカメラで占拠している人が邪魔であまり楽しめなかった。天気がよければ標津の大平原や斜里岳も楽しめるところだが、景色はイマイチである。
 そうこうしているうちに昼前になってきた。サーモンパークの直売で冷凍の真空パックの鮭を買っていく。今日はそんなに暑くもないので、保冷バッグに入れていけば夕飯時までもつだろう。サーモンパーク内のレストランで昼食も済ませていく。生のサーモンにいくらをのせた親子丼を楽しむ。漬けにしてあるサーモンは臭みがなくこくがあって美味しい。もちろんご飯にもよく合う。
 食事も買い出しも済ませて、標津の市街地へ戻る。前から気になっていた標津羊羹を買っていく。浜頓別から知床峠とサロマ湖を除く区間で海沿いを走ってきた旅も終わりである。ここからは内陸を斜めにショートカットして釧路を目指していく。ここからは平原と牧場を貫く雄大な道を進む。右には斜里岳の雄大な姿を見ていけるはずだが、斜里岳は曇りのため見えない。アップダウンもさほど多くなく苦戦する様子もないまま進んでいき、中標津の市街地まで来た。温泉も公園もあるので一泊する作戦も無いことも無いのだが、まだ先へ進むことにする。
 中標津市街のスーパーで野菜を買っていく。今日は買い込んでおいた鮭で三平汁を作ることにした。米は無いのでジャガイモを三平汁に入れて主食にする作戦である。北海道産の野菜と標津の鮭とオホーツクの塩でシンプルにまとめたい。買い出しした野菜がずっしり重いものばかりなので、食材を入れてる右側のサイドバッグがやたら重くなってバランスの悪い状態になってしまった。キャンプは現地を見ないで決めるのはリスキーではあるが、鉄道記念公園という場所で出来るだろう。

標津サーモンパーク


鮭ばかりの水族館になっている


鮭を見た後で、鮭親子丼

 中標津の市街地を抜けてミルクロードの続きを走る。ここからはアップダウンが多くなってきた。なかなかハードな道が続く。と同時に嫌な予感もしてきた。明日は西春別から釧路まで80km強を走るわけだが、このアップダウンに苦しめられるのだろうか。ハードな最終日に不安を感じつつ今日の走りをこなしていく。中標津からは道路の両側に見えるのは牧場ばかりで大酪農地帯となっている。坂道で足を止めて地図をめくっていると30頭近い牛が俺の方を向いて近づいてきた。この注目具合はなかなかプレッシャーもある。一言ご挨拶をしないといけないような雰囲気にもなってきた。 俺を見つめる牛たちを背に走り出し、田舎なのに無駄に立派な立体交差を右に曲がってミルクロードから外れる。ここから5kmほど行くと西春別で公園と温泉がある。しかし、交差点に温泉と宿があるので価格を聞いてみたら5000円と高い。ライダーハウスぐらいの作りと値段を期待したのだが、ホテル並である。そのまま西春別を目指して走って行く。真っ直ぐ伸びた道の向こうには信号機がいくつか並んでいる。かなりの長い距離を見通している。そのまま道を走っていき見えていた最も遠い信号機が西春別だ。そんな先の信号がくっきり見えていた俺の視力が恐ろしい。
 鉄道記念公園に行く道でやや迷ったが何とか見つけた。SLと客車が置いてある。昔の駅をそのまま残していて、大きなバス停もあって雨もしのげる。というか待合室がやたら広い。トイレの水道だが炊事にも使えるだろう。公園の水飲み場はなぜか蛇口がロックされている。地元の中学生や高校生がトレーニングしているのに謎の管理状態である。鉄道記念館は既に閉館していて見ることはできなかった。広さ的にはどこにでもテントを張れそうではあるが、日没後になるだろう。飯を食う場所と寝る場所に概ね目処がついたところで、温泉へ向かう。
 西春別に向かってくる道の途中に温泉はあった。まずは温泉へ行く。真っ黒なお湯の露天風呂で疲れを癒やす。この温泉自体はレストランも宿もやっているのだが今日は自炊準備が出来すぎている。それでも別海の牛乳を使ったソフトクリームを湯上がりに食べていく。濃厚で冷たくて美味しい。

俺に注目する牛たち
なぜかフェンス際に集まってくる


西春別駅跡のSL


湯上がりに別海のソフトクリーム

 薄暗くなってちょうど良い時間帯なので鉄道記念公園へ向かう。待合室の裏の軒先で夕飯を作る。特大コッフェルに水を張ってお湯を沸かす。洗ったジャガイモや野菜を入れて鮭のアラを入れる。身は最後の方にした方が崩れなくて良いだろう。骨を含む鮭のアラを先に入れておけば出汁も出る。オホーツクの塩で味をつけるが素材に勝たない程度に気をつける。サーモンの刺身も良い感じに解凍されているし、今夜も豆腐を半分は三平汁にして半分は冷や奴にする。飲み残していた日本酒と買ってきたビールで晩酌は進む。…と思ったら雨が降ってきた。軒先が浅すぎて雨を防ぎ切れていない。最後までキャンプ中の雨に苦戦が続く。雨に打たれながら夕飯を食べる。山わさびが利いたサーモンも冷や奴も美味しい。三平汁も塩気がちょうどよく鮭の旨みが出汁に出てきている。それが染みたジャガイモがほっくりと崩れて美味しい。ジャガイモが溶けた汁で雨に打たれた体も温まる。これで日本酒も片付いて調味料も片付いた。荷物はだいぶ減った。
 待合室の水道で食器を洗って片付ける。その間に雨足も強くなってきた。そして食器を拭いたりティッシュ代わりにしたりと活躍してきたトイレットペーパーを水たまりに落としてすべて使えなくなった。何もかもがうまく行かない今夜に苛立ちを隠せない。雨は相変わらずなので庇が深い鉄道記念館の軒先に自転車を移して鍵をかける。テントを張るのが面倒なので待合室で寝ることにした。明かりもあってコンセントもあるので日記を書くのにちょうど良い。3日分ほど遅れていた日記も一気に追いついてオンタイムになった。思い通りに行かないような結果として狙い通りの快適さなのか分からない夜は更けていく。

鮭節と山わさびを載せた冷や奴


標津産鮭の刺身と山わさび


鮭とジャガイモの三平汁



   出発(北海道滝川市)から 992.54 km

15日目 別海・西春別 → 釧路 82.70 km
2014/08/23
 もうお腹いっぱいの最終日である。今回の旅の通算距離は今日の前半のうちに1000kmを越えるだろう。16連休をまるまる北海道で走るのも久しぶりで多くの思い出に大満足である。そして朝から雨が降りしきる。天気予報通りではあるが、うっとうしい物である。待合室の寝床を片付けて自転車にパッキングしていく。一通り終わったところで記念館が開館したので見ていく。管理人は気さくで、「今夜は待合室に泊まってたの?」と聞いてくる。まあ こんな快適な待合室があれば旅人が宿泊に使っても不思議では無いだろう。西春別を通った鉄道の現役時代を展示してあった。かつては北海道を網の目のように張り巡らしてあった鉄道も徐々に廃止されて、ずいぶん少なくなってしまった。
 雨の中でレインウェアを着て走り出す。昨日と同じ道をミルクロードに向けて引き返していく。無駄に立派な立体交差を右に曲がって釧路へ向かっていく。すぐに雨はやんだのでレインウェアを脱ぐ。そしてまた走っていると、再び降ってくる。こういうのが鬱陶しい。しかも道は昨日の予想通りに平らな場所が全くないと言っても良いほどアップダウンを延々と繰り返している。コンパクトドライブと26HEで自分自身を除いて登坂性能が上がっているので、まだ何とかなっているが上り坂で体力を削られる。そして足も気持ちも休まる暇が全くない。
鉄道記念館


鉄道記念館の展示

 牧場と何も無い林の間を抜ける丘をアップダウンする道は本当に厳しく最終日の俺の体力を徐々に奪っていく。果たして釧路まで今日中に走りきれるのだろうか… 不安が隠せない状態になってきた。宿だけは昨夜のうちにネットで予約したので、どんなに遅くなっても寝床の不安はないため集中して走って行くだけだろう。アップダウンに苦戦しながら走って行くと、おそらく今日で唯一の店がある場所である中茶安別(なかちゃんべつ)にたどり着いた。セイコマのホットシェフも捨てがたいし、向かい側にラーメン屋もある。今日は雨で体も冷えてるのでラーメンで暖まりたい気分でもある。
 味噌ラーメンで腹を満たすと空が一気に晴れてきた。濡れた路面に反射する日光がまぶしいほどである。フロントバッグに仕舞いっぱなしだったサングラスを取り出して、コンビニのトイレでレンズを洗う。ようやく天気の良い夏旅という雰囲気になってきた。網走からウトロへ向かった日以来なので、ずいぶん久しぶりである。天気と気分が重要である。
 それでも現実は厳しく久々の太陽にジリジリと焼かれながらのアップダウンは予想以上に厳しい。でも雨よりは暑い方が俺は好きだ。今まで35℃を越える気温の中での旅を何度もしてきたので暑いのは問題ない。徐々に体も冴えてきて上り坂を力強く走れるようになってきた。厳しめの計画を立てて臨んだ今年の走りだが、何とか自信を取り戻せるほどの走りが出来てきた。調子は決して悪くない。最終日らしいラストスパートになってきた。
 おそらく最後と思われる峠を越えて釧路町へと下っていく。下り坂の途中でエゾシマリスが路肩から森へと逃げていった。野生動物との出会いは多い今年の旅で新たな出会いがまた一つ刻まれた。根室から西へ向かう国道と合流したところで、再びチェーンが暴れる問題が発生した。待避所に入って見てみると、またチェーンの同じ部分が固着している。油を入れてラジオペンチでぐりぐりと動かしてみると動きが復活した。距離は10km強で基本は平地のみではあるが、最後の1mまで油断しないという心がけを行動に表した。
 油まみれに汚れた手で再び走り出す。手を洗いつつ休憩するため、道路の右側ではあるがセイコマに立ち寄って休憩する。ここで休憩していると、また地元の人に話しかけてもらえた。いい年した旅人だが地元民に愛されつつ旅が出来るというのは本当にすばらしいことである。
 夕日に染まる橋を渡って釧路に向けて走って行く。もうゴールは近い。釧路の市街地という雰囲気になってきたところで、ついに釧路市へ突入した。ここは市町村合併が進んでいないので釧路市の入口は昔ながらの釧路市で好感が持てる。滝川から浜頓別へ上がって釧路まで降りてきた長い旅も、いよいよゴールを迎えようとしている。釧路自体は今回で5度目で何となく見慣れたショッピングセンターが出てきて一気に市街地へと駆け込んだ。
 幣舞橋(ぬさまいばし)から釧路へ向かう一本道に入った。信号一つ越えるごとに釧路駅へと近づいていく。もうすっかり暗くなった19時前に釧路駅へ到着。今年の旅の最大パターンでの距離を走りきった。何をやるにしても自信を持てない昨今で80km〜100kmを走りきらないと達成できない計画を無事に走りきることで一つは自信を持つ根拠を作ることが出来ただろう。今回の旅を走りきった喜びはひときわ大きい。
 喜びをかみしめて現実に戻る。まずは郵便局を探して見つける。以前、送ったことはあるので記憶はうすうすはあったので、すぐに見つかった。郵便局から近いコンビニのトイレで着替えて汚れ物はまとめる。本当は洗濯してから送りたいところだが、自宅に届いてからの洗濯でも良いだろう。
 着替えを済ませたら郵便局へ行く。郵便局で段ボール3箱を買って詰め込んでいく。今回はなぜか収まりが悪くて苦戦する。何とか詰め込んで窓口まで持って行くと、今度は中身の話でもめる。品目にキャンプ用品と書くと荷受けしないだの何だので本当に面倒になっている。ガスをつけていないガスコンロを送るのは安全上駄目だと言ってきたのでさすがに頭にきて食い下がった。電池も危ないから駄目、ガスを使わないスプレーも駄目、ガスがついてないガスコンロ… 毎回 郵便局ともめるようにになってきたが、もはや何だったら送っていいのだろうか。本当の意味で郵政民営化してほしい。ほかの宅配業者を見習ってほしいものだ。
 ホテルにチェックインをしてシャワーを浴びて、釧路の街へ飲みに出かける。今日は2週間の旅の総打ち上げである。前回に釧路へ来た時に行った ろばた に行ってみたら、満席だ。ここは山勘で探していくしか無いだろう。店の名前は「ちゃりんこ」 サイクルツーリストを象徴する店名なら行かない理由が無い。メニューも手書きで一部はおばんざい方式なので期待できそうだ。何はともあれビールで乾杯する。刺身も北海しまえびも美味しい。そして何より絶品は肉じゃがだ。甘辛く汁気が無くなるほどに味を吸わせた肉じゃがはジャガイモの旨さを存分に引き出している。すっかり満足して北海道の美味を味わった。 ふらふらとホテルへ戻って旅の最後をかみしめて眠りについた。

何故か固着するチェーン
(新規投入のMTB-10速用)


いよいよ釧路市に突入!

ゴール 釧路駅に到着


チャリダーのための居酒屋?
ちゃりんこ


絶品の肉じゃが



   出発(北海道滝川市)から 1075.24 km

16日目 釧路市内 2.80 km
釧路 -特急スーパーおおぞら→ 南千歳
-快速エアポート→ 新千歳空港
2014/08/24 新千歳空港 -JAL→ 羽田空港
羽田空港国内線ターミナル -京急→ 品川 -山手線→ 大崎
-山手線→ 東京 -東北新幹線→ 宇都宮
 昨夜のうちに荷物をすべて発送しておいたので、行動的にも時間的にも気分的にも余裕が生まれた。フィッシャーマンズワーフへ行って、土産物を物色する。フィッシャーマンズワーフの港側の外には炉端焼きのテントが建っている。夕方から0時までここで炉端焼きが楽しめるのだ。2年前に行った ろばた のように職人の婆さんが丁寧に焼いて旨みを最大限に引き出した炉端焼きも良いが、こういうのも楽しそうだ。今度 釧路に来たら立ち寄ってみたいところである。
 輪行する前に昼食を済ませたいところである。色々と考えたが和商市場が無難である。今回は夏が旬の花咲ガニを食べておきたい。一匹丸ごと買って食べる。トゲトゲが堅いので食べづらいカニではあるがコツをつかんだ。中国人と思われるお客さんと同じテーブルで相席状態でカニを剥くと、俺の見事な技に見入っているようだ。カニの味は本当に濃厚で身がしっかりしててカニミソの旨みも濃い。すっかりカニくさくなった手で和商市場を後にした。
 もう旅も終わりだろうと釧路駅に行き自転車をばらし始める。慣れた手つきで傷防止のパッドを巻いて輪行袋に詰め込んでいく。今回も安定した輪行形態になった。ここから特急おおぞらで新千歳空港へ向かう。値段も安いし便数も多いし電車で空港まで行けるので便利である。長かった自転車での走りは完全に終わりで輪行袋を持って列車に乗り込む。列車の中で昨日の分と今日の分の日記を書いていたら帯広を抜けて十勝平野やトマムの山々を眺めながら千歳へ向かっていく。現実に戻る方向ではあるが、この絶景の列車は何度乗っても好きである。
 南千歳で降りて快速エアポートに乗り換える。ホームは向かい側で階段越えを回避である。すぐに空港へ向かって行き、新千歳空港に着いた。夕方の飛行機まで時間があるが、自転車を預けてお土産を買う。お土産を買う時は旅の最後の楽しみでもあるので欠かせない。テレビの「ソロモン流」で見たお菓子を買っていく。飛行機に乗り込む前に夕飯も済ませる。鮭とイクラの弁当で満足する。自転車旅だけでも10回目の北海道 走り残していたマニアックな場所も一区切りついてしまった感がある。名の知れた峠はすべて越えたし海岸線もほんの一部を残してすべて走り抜いた。次の旅のステージはどこになるのだろう… 想像も付かないほどに今年は満足感が大きい旅となった。

フィッシャーマンズワーフ
左は炉端焼き


夏が旬 花咲ガニ
トゲが痛くて食べにくいが絶品


特急スーパーおおぞら

 飛行機は新千歳を飛び立って東京へ向かう。あっという間に羽田に降り立った。京急で品川へ行き、品川で山手線へ乗り換える。何を思ったか逆回りに乗ってしまい大崎で慌てて逆方向に乗り直す。電車の中でモバイルSuicaで新幹線の切符購入を済ませる。乗り遅れたら無駄になるが賭けである。そして輪行袋を持って東京駅でダッシュする。無駄の無い動きでショートカットしながら新幹線改札へ向かう。
 何とか最終の新幹線に乗り込んだ。ようやく一安心である。ここまで来ると頭は完全に旅から現実である。夜の東北新幹線最終列車は旅だけでなく出張でも帰りに乗るものである。あっという間に列車は宇都宮にたどり着いた。宇都宮駅前で自転車を組み立てて自宅へと帰っていく。今年も旅は大きな満足感と達成感を残して終わった。


   出発(北海道滝川市)から 1078.04 km

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