旅記録

2015 GW 九州
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0日目 宇都宮 −東北本線・上野東京ライン→ 東京
東海道山陽新幹線→ 博多 -特急みどり→ 佐世保
-松浦鉄道西九州線→ たびら平戸口
2015/04/25 田平町 → 平戸 11.69 km
 今年はGWのカレンダーが良く飛び石を埋めると10連休を越える設定だ。連休の前を埋めるか後ろを埋めるかで色々と事情が変わった結果、両方埋めるという16連休となった。これだけ長いGWは滅多にないし普段行けないような旅先も視野に入るが、急に長い連休が決定しても段取りが出来ないわけで2回分のツーリングを1回にまとめるようなイメージで計画を組み立てた。とはいえ、仕事の状況によっては休みを取り消すリスクはあるので区切りよく引き返せる中間的なゴールと日程を設定する。この辺りの決め方もこなれたものである。
 深夜残業から徹夜出発の去年と比べると、比較的落ち着いた連休前が終わった。夜のうちに新幹線や佐世保までの特急券も買っておく。ゆったりと準備をして大幅に時間が余る。寝てしまうと起きれないし時間を潰しつつ始発の鈍行を待つ。
 夜中の3時過ぎに自宅を出て駅前で自転車をバラす。26HE化したあとの輪行作業にはまだ慣れていないので、やや手間取る。輪行袋のストラップを止めるホックも腐食してちぎれている。そろそろ買い換え時であることに気付くが自転車の凹凸に合わせてストラップを合わせて締め込めばホックがちぎれていても問題は無い。
 鈍行の始発のグリーン車に乗り込む。これなら爆睡できるのだ。しかし、去年までは上野止まりだったのだが今年から東京より西へ直通運転となったため列車自体は熱海行きだ。当然、東京で乗り過ごすと致命的な事態を招く。便利になったのか不便になったのか分からない状態で熟睡はできない。
 東京駅で新幹線に乗り換える。GW初日だとこの時間帯じゃ無いと混むのだが、よくよく考えたら世間はまだGWではない。混み合うという緊張感もなく乗り込んで最後列の席が取れて自転車もシートの後ろにしまい込む。網棚に荷物を載せて、いよいよ本気で眠りに入る。のぞみの主要な停車駅で目が覚めることはあっても熟睡状態は続く。ここで体力を回復できるかどうかが、今の年齢だと明日以降の行動力にも繋がってしまうのだ。若いときは2連続の徹夜で輪行して、その日のうちに80km走ってキャンプなどという荒技も出来たが今ではそんな体力は無い。広島で目が覚めて以降は寝ることは無くツーリングマップルやるるぶを見ながら旅のイメージを高めていく。移動中や旅をする直前に見る地図やガイドブックほど楽しい本が世の中で他にあるだろうか。
 今では山陽新幹線は300km/h運行だから広島まで来れば小倉や博多は近い。あっという間に博多に到着した。実家だが敢えて博多はスルーしていく。博多駅に降り立って、特急みどりが来るホームへ行くが40分ほど待ち時間がある。予想通り宇都宮より暑いGWの博多駅である。ここで昼飯を食べておくか調達しておきたいところである。ふと在来線ホームにラーメン屋を見つけた。順調にいけば最終日は博多に帰ってくる予定だが、本場の豚骨ラーメンは食べておきたい。(地元だが…) 博多駅のホームの立ち食いラーメンだというのになかなか美味しい。
 懐かしい味で満足し特急に乗り込む。懐かしい筑紫野市や大野城市の眺めを楽しみつつ西へ向かっていく。佐賀までしか走ったことは無いので、ここから長崎までの有明海沿いの道もいつかは走ってみたいルートではある。早岐からはバック走行で佐世保に向かい、佐世保に到着した。

博多駅ホームのラーメン屋


駅のホームだが味は美味い


特急みどり 佐世保行き

 鉄道でも自転車でも来たことがあるもののJR最西端ということで色んなところで写真を撮っていく。やはり端っこというのはロマンをくすぐるものがある。今では沖縄のゆいレールが圧倒的な最南端と最西端ではあるが本土の鉄道と繋がっていないので思い入れは薄い。少し佐世保市内や周辺の情報を観光案内所で集める。そして30分待ちの松浦鉄道に乗り換える。小さなローカル線である。
 この辺りは典型的な自動車社会なのかと思いきや、意外と客は多い。通学だけでなく買い物帰りの主婦や親子連れも多い。小佐々の方へと入っていくと、カーブや傾斜の多い険しい地形を走って行く。山間に見える田んぼを眺めながらのんびりはしているが、ディーゼルエンジンのうなる音は熱い。ちょっと運転してみたくなるような感覚ではある。
 そして、日本最西端の駅 たびら平戸口に到着した。ローカル線の旅は十分に楽しめた。駅には最西端と書かれた看板などもいっぱいあり、松浦鉄道のちょっとした拠点にもなってるので駅自体はローカル線にしては大きい。到達証明書なども手に入れて、自転車を組み立てる。大型バスで駅を見に来る団体も居たりで、割と賑わいを見せている。

JR日本最西端 佐世保駅


松浦鉄道 西九州線


日本最西端 たびら平戸口駅ホーム


駅前の様子

 駅を出て坂を下りきると産直がある。ここに立ち寄ってみると、鮮魚も捨てがたいところだが今夜はホテル泊だし荷物の開梱もあるから自炊は有り得ない。トビウオを使って白い雪のようにしたふりかけなど、平戸ならではの物も多い。米も早速 平戸産のかけ干しの物が手に入った。やや重い荷物を持って、平戸大橋の坂を上ろうとしたらブレーキレバーに違和感を感じて緊急停止だ。よく見るとブレーキブラケットのネジの締め込みが甘く力強く握ると向きが回る。慌ててネジを締め直す。右と左のトルクを確認する。
 坂を登り切ると傾いた太陽に照らされた平戸大橋と同じ高さから海峡を見下ろす。逆光なので写真が撮りづらいが九州らしい強い日差しと真っ赤な橋と海と平戸市街の眺めが良い。橋を渡って写真を撮ってから平戸市街地の方へ下る。急で長い坂が続く。覚悟はしていたがアップダウンはかなり多そうである。
 平戸市街に下って観光案内所などに立ち寄るも既に閉まっている。ケータイのナビで宿泊先のホテルを探すと、これも残念ながら激しい坂の上で丘を見上げたところにある。空荷で良かった…と心から思いつつ坂を上がっていく。26HE化したおかげでペダリングは比較的楽である。ランドナーは650Aや26HEなど小径の方が使い勝手は良さそうである。やたら元気と愛想の良い観光ホテルで、こっちが圧倒されそうである。飯抜きの素泊まりというのももったいないようなホテルだ。大量の荷物に申し訳ないと思いつつ、バリアフリーにはなっていないホテル内でフロントのお姉ちゃんに運んでもらって部屋まで案内してもらう。段ボール3箱、自転車で来る おそらく意味不明な客であろう。

田平側から見る平戸大橋
逆光で写真は撮りづらい。


平戸側から見る平戸大橋
真っ赤な橋が印象的

 新幹線でしっかり眠れたおかげで荷物を開梱する体力は十分ある。がさがさと片付けて開梱作業も目処が立った。それでも既に19時を回っている。ホテル内の温泉で入浴を済ませる。露天風呂からは平戸市街が見下ろせて、ザビエル記念聖堂や平戸城がライトアップされていて和洋混在でありながら歴史がある町並みを楽しめる。明日の観光も楽しみである。明日の観光より先に今日の夕飯だが、近くを見下ろす限り全くといって良いほど店の明かりは無い。まさか食べるもの無し?という不安を抱えつつ一度部屋に戻ってウェストバッグに最低限の物を持って出かける。フロントのお姉ちゃんに聞くと店はホテルから少し離れたところにあるとのことなので自転車で出かける。
 先ほど上ってきた坂を下ってオランダ商館の前を抜けて向かっていくと確かに居酒屋は何軒もあった。ここで本能的にときめく店に入ろうかと思ったが、どこも意外と混んでいる。見つけた寿司屋で夕飯とする。これから平戸で何度も実感する商売っ気のない大将だが、ヒラメやアワビや鯛など平戸の地魚を満喫する。寿司でも刺身でも楽しめる。すっかり満喫して、ホテルへと戻っていく。新幹線でしっかり眠れたとは言っても、ほぼ徹夜明けなので部屋に着いたとたんに力尽きた。


   出発(長崎県田平町)から 11.69 km

1日目 平戸市街 → 宮之浦 48.65 km
2015/04/26
 午前中は平戸で観光なので気楽な出発だ。ザビエル記念聖堂、オランダ商館、平戸城このあたりを見て昼飯を食べてから宮之浦へ向けて走り出せば良いだろうし、50km弱の道のりだ。昨日の夜のうちに組み付けておいたキャリアに荷物を積み上げていく。基本はお客様をお見送りするホテルなので、かなり長い作業時間を待つつもりなのかフロントのお姉ちゃんと話しながら積んでいく。この量の荷物が自転車に積まれることが信じられないのか興味津々である。結局、見送りはないまま出発する。
 ホテルから坂を下るとオランダ商館がある。古い港町に真っ白な大きな建物が印象的だ。中に入るとオランダ貿易の時代の物が展示してある。その頃の衣装のような制服の受付もかわいい。オランダ商館を出ると、次は松浦史料博物館に立ち寄る。古い立派な松浦邸を博物館にしたもので、和と洋の入り交じった土地の歴史を感じる。庭園も居心地が良く九州の明るい日差しが差し込んでいる。
 松浦史料博物館を見学したところで、港へと下りて昼飯にする。生け簀と直売所になってるところで作りたての刺身が食べられる店がある。ヒラメ丼とイカ刺しで昼にする。ビールでも欲しくなるところだが今日は走るので飲むわけにはいかない。さばきたての活きイカかパキパキとした心地よい歯ごたえと甘みがたまらない。ヒラメもこりっともちっとした歯ごたえが楽しめる。やはり平戸は魚が美味い。

平戸オランダ商館


平戸 松浦史料博物館


平戸のヒラメ丼


イカの活き作り

 早めの昼飯を終えたら、ザビエル記念聖堂へ向かう。時間的には平戸城まで回る余裕は無さそうだが、平戸には明日戻ってきて一泊するのでそこで行くしかないだろう。商店街から路地に入っていくと寺院と教会の見える道を抜けてザビエル記念聖堂へ向かえる。しかし、自転車を置く場所に苦戦する。狭い道だがギリギリまで壁と茂みに車体をつっこんで止めて歩いて行く。自然に囲まれた石段で左は林で右には墓地と寺がありその向こうに教会が見える。後に何度も目にすることになるが仏教である寺とキリスト教である教会の両方を崇拝する人が多いのは、隠れキリシタンの長崎ならではの光景である。大きくモダンな記念聖堂を見て自転車に戻る。せっかくなのでカスドースを買って行くついでに1個食べていく。コーヒーとよく合うぐらいに甘みが強い。砂糖と卵を練り込んだ生地に砂糖がまぶされている。糖分補給には良い。古い落ち着いた店内でのイートインがまた心地よい。
 平戸市街地に見つけたドラッグストアでカセットコンロのガス1本を買おうとしたが3本セットしかないので諦める。宮之浦に行く途中というか平戸大橋から市街地へ下ってくる道の途中にコンビニがあったので、そこを当てにするしかないようだ。やはり予想通りに動けない体で坂を上ってコンビニに立ち寄っていく。ここでガスを買ってサイドバッグに詰めて走り出す。順調に厳しい坂が続いている。大きな橋を越えてまだまだ上って頂上のディスカウントストアを過ぎて勢いよく下っていく。覚悟はしていたが平戸のアップダウンの洗礼は始まった。

寺院と教会の見える道


ザビエル記念聖堂


蔦屋の店内


蔦屋のカスドース

 坂を海まで下りきることもなく、再び上り坂が始まる。通常、海から離れると上り坂で海に近づくと下り坂と見ておけば良いのだが平戸の地形はそういうわけではないようだ。それでも坂を上る度に対岸の九州や小さな島々が見える景色は見応えはある。まだ景色の楽しさがきつさを上回っている。何度も続いたアップダウンを大きく海沿いに下って一段落すると平戸で唯一の温泉地がある。明日の宿泊地にするか迷っていたが、平戸大橋からここまでの道を考えたら有り得ない。
 つかの間の平地を終えたら再び道は激しく上り始めた。京崎鼻を横切る岬越えなので地図で見ても覚悟はしていたが、かなりボリュームのある坂である。紐まで一山というところだろう。川内峠の方へ向かう林道も何本か公差していて海沿いというよりは山岳路という風情の道が続いていく。京崎鼻を越えてもしつこく続いた坂を越えて下ると紐差の集落に下りた。ここで一服しようと農家のコンビニことコメリに立ち寄った。寄り道しようとしていた紐差の教会はどこにあるのか探っていると戻り側に看板を見つけた。慌てて自転車に乗り紐差の教会に戻る。ここも隠れキリシタンの名残で寺院と教会が隣り合っている。印象的な色と形の建物と地元に親しまれているアットホームな雰囲気に俺の気分も休まる。中の見学は15時で締め切られたので叶わなかった。
 体を休めたところで続きの走りに出る。まだまだ宮之浦まで距離はあるし、この調子でアップダウンが続くとなかなかきつい。平戸高校のあたりがピークと思われる坂を少しずつ上る。傾斜は前半ほど厳しくないが地味に長くて足に来る。山深い平戸島の中では活気のある平戸高校の周りを抜けて坂を下ると津吉へ抜ける分岐まで来た。ここが最後の買い出しポイントなのか宮之浦の方にも買い出しポイントはあるのか不明だが、生鮮食品は調理できないリスクを考えると買えない。また一つ地味に長い上り坂が始まる。ここは明日も逆方向に走るので気になるところである。当初は宮之浦で折り返して15km先の根獅子まで行こうと思っていたので無謀である。

棚田越しに見る海と対岸の田平


紐差教会

 志々岐を越える頃には太陽がだいぶ傾いて色がオレンジになりつつある。まだ厳しいアップダウンが続きそうな最後の岬への道である。10km近い距離で海沿いと内陸を行ったり来たりしている。ちょっとした棚田と名も知らない岩山がそびえ立って夕日に照らされている。人気がほとんどない海沿いのアップダウンを力強く走って行く。まだ余力は多少残っており初日にしてはコンディションは悪くない。内陸への食い込みが最も深い道は海沿いと言うよりは山岳という雰囲気すら漂っている。おそらく最大の山場だろう。上れば上るほどに、「明日も上るんだよね…」という億劫な気持ちが湧いてくる。
 坂を越えて下ると、小さな商店とグランドが見えてきた。もう宮之浦は近いはずだ。ツーリング前にGoogle MapとGoogle EarthとGoogle Street Viewで目を付けていた宿泊地だ。風呂に入れる場所がないので釣り宿になってる民宿にでも駆け込みたいところだが、どうなることか…。グランドから丘を1つ越えると宮之浦の港町が見えてきた。ようやく陸続き(橋で渡れて自走可能)の日本最西端が近づいてきた。
 坂を下って突き当たりに「橋で結ばれた日本最西端のみなとまち」と書かれた看板があった。素朴なものだと想像していたが、本当に素朴だ。一安心したところで目の前の民宿に入ってみるが、素泊まりで良いと言うのに受け入れるのすら面倒で断られた。もう1軒は呼んでも出て来ない。商売っ気のない民宿を後にして港の奥の方まで走って行くと、もう1つ看板が立っていた。どうやらここが本当の最西端でこれより西は崖をへつりしないと行けないようだ。風よけのフェンス越しに海に沈む夕日を見ていく。まだ西には五島列島も見えているし最果てムードがあるようでない。とは言え、自走限界の最西端だけ行き逃していた心残りは晴れて達成感は湧いてきた。
 商売っ気のない宮之浦を後にして、先ほどのグランドに向かって走る。住宅街をのんびり坂で越えて下ると到着。先ほどの商店は既に閉まっていた。買い出しはしそびれたが、小さな店なので料理できるほどの生鮮食品があったとは思えない。グランドの外の港に面したスペースに、さっさとテントを張って荷物を放り込む。風呂は無いが汗臭いので服は着替えたい。誰も見てないので普通にさくさくと着替えていく。体が洗えてないのでべたついてる感じはあるが服は一新したのでひとまずは安心だ。
 このGWからランタンをガス式から電池&LEDに変更した。コンパクトで明るくてガスが不要なため荷物の軽量化にも貢献し、今では発送が厳しいガス残りの管理も楽だ。しかも防水なので突然の雨にも慌てる必要が無い。火を使わないので点灯したまま持ち運んで場所を変えることもできるし、懐中電灯にもなる。冷えるのを待って片付ける必要も無い。LEDが出てきてからアウトドア用品の時代進化は凄い。
 水道で米を研いで小コッフェルにも水を入れる。まずは米を炊く。続いて小コッフェルでレトルトカレーを温める。暖めている間に飛び魚のふりかけ(飛雪)を味わう。最も簡易的な食事だが、飛雪はご飯無しでも美味く、新しいランタンで照らされた食卓で初日の完走と自走限界の東西南北端を制した喜びをかみしめる。カレーが温まったのでご飯にかけて食べる。何のことはない食事だが旅の空の下というのは味を加速してくれる。すっかり満足してコッフェルを洗って片付けて静かな漁港のそばで眠りについた。

自走限界の日本最西端
平戸市宮之浦


港の奥の方にも最西端の看板


宮之浦からの夕日



   出発(長崎県田平町)から 60.34 km

2日目 宮之浦 → 生月島 → 川内峠 → 平戸 60.10 km
2015/04/27
 今日はボリュームのある走りを予定している。昨日は何も買い出しできなかったので朝飯はない。テントを片付けて出発する。昨日はまあまあ苦戦したアップダウンも割と簡単に乗り切った。志々岐を越えてルートで唯一と思われるスーパーに立ち寄る。総菜とおにぎりで朝食にする。スーパーの前のベンチで食べていると何故か地元の年寄りにいっぱい話しかけられた。わざわざ米袋にマジックで地図を書いてまで道案内もしてもらえた。旅の楽しみが徐々に増してきた。
 出発して西側の海沿いへ向かう。海沿いと言いつつも道は海に面しておらず徐々に標高が上がる棚田沿いに上がっていく。狭くて人通りがほとんど無い道を徐々に上っていく。上るほどに道は山深くなり、やがて棚田も無くなった。思った以上に長い峠道を上っていく。途中にさらに海沿いへ出る分岐もあったが最短ルートで根獅子(ねしこ)の海岸を目指していく。やがて道は車1台が通れるかどうかすら怪しい幅になってきた。こういうときに最も不安になるのが、この先は本当に道があるんだよね? まさか、引き返してやり直しとかじゃ無いよね? と問いかける相手も居ないが問いかける。地図と県道番号で見る限りでは間違いは無さそうだ。
 数を覚えてられないほどの峠を越えてようやく山の隙間から海が見えるようになってきた。海に向かって下って一段落すると根獅子の集落に辿り着いた。久々に家が建ってる場所に来た安心感がある。もっと早い時間にここまで来たかったが、もう既に正午になろうとしている。山深いアップダウンに苦戦する一日である。とりあえずは休憩を兼ねて海岸線を見ていく。真っ青に透き通った海とさらっとした真っ白な砂浜は南の島のようである。夕方なら向こうに夕日も見えるわけで絶景の海岸線である。海岸のすぐそばに公園もある。キャンプ禁止と思い切り書いてあるが何とかなりそうなアメニティである。あとは温水シャワーでもあれば完璧なのだが惜しい。
 根獅子に切支丹(キリシタン)資料館があるので見学していく。弾圧時代の物や弾圧が解除された後で隠れてキリスト教を信仰するために表向きに信仰していた仏教が根付いていく様子や根獅子で行われた厳しい殉教などが分かり、歴史が苦手な理系の俺でも興味深い。展示物は多くないが内容は深い。
 根獅子で昼飯を食べることはできなかった。生月島も距離的にはさほど遠くないので、少し遅めの飯でも良いかと思って走り出す。当然のように上り坂から始まる。また海から景色が離れて山岳路になっていく。途中の棚田には水が張られて見事である。海沿いの厳しい地形を棚田にして複雑な形を組み合わせて農業を営むところは機能美のような物を感じる。ちょっとした観光スポットにもなっているし、牛が渡るので注意と書かれた標識もあったりで、のどかで独特な風景である。景色を楽しむ反面で坂には苦戦して一向に生月島大橋に辿り着く気配がない。時々、山の隙間から海と生月島は見えるが遠い。

靄がたなびく山と静かな入り江


急峻な地形にある棚田


根獅子(ねしこ)の浜


平戸はずっと棚田の景色が続く

 やっと坂を下って生月島大橋まで出た。水色のトラスで組まれた橋を渡っていく。船が通れるように高い場所を通している。工事で片側交互通行になってる上に横風が強い。後ろや横に気をつけながら走る緊張感がある。橋を下ると左に道の駅が見えてきた。もう14時を過ぎているが、やっと昼飯だ。…と思ったが、道の駅にレストランは無い。昼食になりそうな総菜なども売っていない。周りに店も見当たらない。生月島大橋と海峡をしばらく見て、産直の方へ行ってみる。あごだしラーメンの店はあるが昼の営業を終えている。他の店は平日だから開いていない。何とも商売っ気のない場所である。結局、アイスを1本食べるだけで昼食は終わった。
 生月島を1周する時間は無さそうだし、予想以上にアップダウンが厳しくてはかどらない。再び橋を渡って平戸島に戻る。橋の時点でまあまあ上ってるし、海沿いを行く道だから下りかな…と期待していたら、がっつりと厳しく上り坂が始まる。しかも前半戦より傾斜もきつい。そろそろ日が傾き始めている時間帯にして苦戦が続くのがきつい。海沿いから山間を抜ける道を越えて今日いくつ目かも覚えてないほどの峠を越えて下る。
 下りきると、平戸市街地まで7kmというところまで来た。このまま平戸市街地に戻ってしまってもダメではないが、生月島を回れずショートカットしてきた罪悪感もあり、もう一頑張りすべく川内峠を目指すことにした。坂を上り始める前にコンビニがあったので休憩していく。平戸島をほぼ一周回ったが平戸大橋近く以来の久しぶりのコンビニである。休憩で気分的に回復したところで人気の少ない川内峠の上り坂へアタックする。
 一日の終盤だし苦戦を強いられるかと思っていたが、コースを読めずに突き当たる坂道と峠だと分かって上る坂道では気分が全く違う物で、その効果もあって走りは捗る。徐々に標高が上がって展望が開けていく。峠が近くなると背の高い木も生えていないので下界がよく見渡せる。夕暮れが迫ってきている平戸島と周りの海の眺めが良い。何とか日没前には峠に辿り着いた。展望台からの海の眺めは気持ちよく平戸島の東と西がよく見える。この時間帯なら西側で草原の向こうに下界と海と島々が見えて、島の向こうの海へと沈む夕日が楽しめる。複雑な地形と真っ赤な夕日が絶景である。もしかしたら下り一辺倒では無く1回ぐらい上るかもしれないが日没を迎えている事に焦りも多少は感じながら景色を楽しんでいく。

生月島大橋を生月島から


川内峠の上り坂


川内峠からの夕日

 真っ暗になる前に下りきってしまおうと日没直後から坂を下り始める。気持ち良いほどの傾斜とカーブが続いて走り甲斐がある。いよいよ景色が街になりつつあるところで、道路の右に大きな影が見えた。イノシシだ。この辺りの畑はイノシシ除けの電線が張ってあるが、大きいイノシシは周りを警戒しながら立ち止まっている。俺も立ち止まって写真を撮ろうとカメラを取り出そうとしたら、逃げていった。旅先でイノシシを見たことは何度もあるが、これは大きい。
 日が沈みきる前に平戸市街地まで下ってきた。一昨日の夜に飲んだ商店街に辿り着いたので、もう今日は一安心だろう。夕飯は目を付けておいた平戸牛の肉屋さんと温泉で大丈夫そうだが、問題は寝床である。いかんせん山が迫っている小さな街で、歴史的建造物も多い場所のため、ちょうど良い公園なども見かけた記憶がない。平戸城の近くの海沿いにありそうなので行ってみる。しかし、それっぽい場所には公園は見当たらない。そこからの俺の決断は早い。市街地のビジネスホテルに目を付けていたので駆け込む。今日はまだGWではないし平日なので宿泊は問題無くできる。ホテルに今日の宿を確保した。
 洗濯するかどうかも迷ったが、佐世保まで枚数がもちそうなのでシャワーだけ浴びて夕飯を食べに行く。ホテルのすぐ近くに平戸牛の焼肉屋は見つけていたのでそこに行く。島の途中で牛を見かけた時点で俺の頭は平戸牛モードになっている。せっかくなので高級なロースなどもいってしまう。柔らかく肉の味もしっかりして美味しい。ビールも進む。長い目で見れば自走限界の日本四極制覇ではあるが、まだ何もこの旅では何も成し遂げていない2日目にして何か大きいことを成し遂げたような一杯がたまらない。すっかり酩酊してホテルに戻り、明日以降の情報収集を充電中の携帯でしつつ眠りについた。

魚だけでなく牛肉も絶品。
最高ランクのステーキ


平戸牛のカルビ、ロースの盛り合わせ




   出発(長崎県田平町)から 120.44 km

3日目 平戸 → 田平 → 神崎鼻 → 佐世保 68.43 km
2015/04/28
 ホテルなのでテントの撤収がなくて楽である。出発準備をして平戸城へ向かう。海と街が見渡せる天守閣を目指して自転車と歩きで上がっていく。敷地はこじんまりとしていて、ほどほどに高さがあり雰囲気は明るいが要塞のような場所である。天守閣見学に入ろうとすると受付がいない。黙って入ってしまうわけにもいかないので周りを探しながら待ってたら戻ってきた。平日で客がほとんどいない前提の状態になっている。天守閣の中は全国のどこの城とも同じように歴史の展示と他の城の展示がメインだ。オランダ貿易の要所でもあり、地形的にも海峡に面しているところなので海上警備の要所になっていた城であることが分かる。平戸大橋の海峡と外海と街が見下ろせて、今では警備というより観光的に心地が良い。GWのイベントに向けて準備をしている従業員と話しながら天守閣を下りてきた。印象的なマキの木の並木道を抜けて駐めておいた自転車に戻る。
 ようやく旅の出発という気分である。まず平戸大橋へ向けて坂を上っていく。もう1.5往復目になる。一昨日とは変わって曇り空の海峡と橋を見つつ田平へと戻っていく。橋のたもとから少し行ったところを右に曲がると国道から外れて田平天主堂へ行ける。平戸や長崎のキリシタンの歴史を感じられる教会は旅の醍醐味なので立ち寄りたかったが、分岐を見つけられないまま通り過ぎたようだ。そこに繋がってるか不明なところに曲がるのも面倒だし諦めることにした。学生時代はアップダウンがあることすら感じない道も今だとやたらきつい。田平の道の駅に向けて道は徐々に上っている。その傾斜が足に重くのしかかる。

平戸城の天守閣


マキの並木道


平戸城の天守閣からの眺め(街側)


平戸城の天守閣からの眺め(海峡)

 やや、へとへとになりながら田平の道の駅に辿り着いた。ここで休憩していく。長崎らしい魚の天ぷら(すり身を揚げた物)を買い込み、また続きを走って行く。ここから、かなり込み入ったワインディングを下っていく。傾斜もカーブも厳しい。そして何故か直線区間だけ車線分離のポールが立っていて、追いついてきた車をやり過ごせない。本当に邪魔だ。実質、カーブで追い越してもらうしかないが、そっちは危険が多すぎる。仕方ないので、前の車について行けるだけのスピードを出す方向に転換する。車線の中央で追従していくが、傾斜が緩くなると当然スピードは落ちていくわけで距離が引き離されていく。そうなると後ろの車の問題が出てくる。
 坂を下りきって江迎に辿り着くと'99に一泊した場所を思い出すが、その場所は見つからない。そして再び緩い坂を上り始める。長串山つつじ祭りの幟や看板が目立つようになってきた。ツツジの花や九十九島を見下ろせる山には上がっておきたいところだったので、つつじ祭りの長串山は外せない。じっくり上る坂を越えて下ってしばらく走ると山への登り口に辿り着く。長串山の展望台へ続く上り坂は、まずは急な坂で始まる。しばらく上っていくと山側にツツジが満開の生け垣が出てきた。石垣の上に生け垣が植えてあるので自転車を止めた状態の写真も撮りやすく有りがたい。そこからさらに進むと海側は展望が開けて、いくつもの小さな島が見えてきた。天気は曇っているので遠くは霞んでいるが、少し高いところから眺める九十九島の眺めは素晴らしい。
 さらに進むと警備員が誘導するぐらい大きい駐車場があり、向こうにはツツジが広がっている。山の斜面を覆い尽くすような赤い花が印象的である。駐車場に自転車を置いて、まずはツツジ園を歩く前に昼飯を…と思ってレストランの方に歩いて行こうとしたら、そこも入場料が必要とのことだ。入場券を買って園内に入って、まずは展望台で昼飯にする。展望テラスで、すり身揚げとうどんで昼食を満喫する。九州の柔らかいうどんが懐かしい。
 昼飯で満腹になったら、ツツジ園を散策してみる。見上げる斜面も一面のツツジが咲いていて、上から見下ろすツツジ園とその先に見える海と九十九島の眺めも素晴らしい。園芸による芸術美と自然美が融合している。この見下ろすツツジ園を歩いて抜けれるので、せっかくだし歩いて行く。背の高い立派なツツジの茂みの脇を抜けて時々 見下ろせる景色と見上げる景色を楽しんでいく。

長串山つつじ祭りと九十九島の眺め

 景色を楽しんだら、警備員のおじさんに見送られながら出発して坂を下っていく。あっという間に県道に戻る。またいくつかのアップダウンを越えながら県道を南下していく。過去に走ったことのある道だが、当時の俺には印象にすら残ってないがアップダウンは激しい。体力を消耗しつつ、右へ曲がると神崎鼻公園へ向かう分岐へ出た。既に過去に行ったこともある端っこだが再びそこへ向かう。道自体もこの先は平らなので体力はほぼ消費しない。相変わらずの静かな漁村を抜けていく。突き当たりは広場と公園になっている。
 自転車を駐車場において、少し休憩してから岬へ向かう。前に来たときと違って公園の丘から行ける道の他に海沿いの磯から行く道もできていた。新しく出来た磯の方から向かっていく。こっちから行くと、果てに辿り着いた先に最西端があるという感じは無く、目の前に見えてるモニュメントに向かって歩いて行くだけのようで風情がない。この端っこ自体は沖に島が見えていたりで端っこ感が少ないだけに、ここの演出も弱いところだろう。とは言っても端っこは端っこであり旅を語る上で重要な場所である。元々、人気も少なく写真が撮りづらい場所だからかカメラスタンドが設置されていてスマホやカメラでも良い角度で写真が撮れるようになっている。
 公園内を一通り見て飲み水をペットボトルに補給して、続きの道を走っていく。せっかくなので本土最西端 到達証明書は手に入れておきたい。また、いくつかのアップダウンを越えて小佐々の役場か漁協を目指していく。今では24時間発行されるようになったようだ。漁港にある漁協で配っているとのことなので漁協に行ってみるが、観光客が入っていけるような雰囲気ではない漁協のオフィスが窓口のようだ。本当にここでもらえるのか恐る恐る聞いてみたら発行してくれた。ここには何の交通手段で来たか、他の端っこには行ったことがあるかなどの簡単なアンケートに答えるだけで料金も無料になった。当然、自転車で他の端っこは全て制覇済みであり、ここも二度目である。

本土最西端 神崎鼻


日本本土最西端 到達証明書
(スキャナ故障中)

 証明書をもらって一安心したところで佐世保を目指して走って行く。もう少しで佐世保の相浦へと入っていく交差点近くで雨が降ってきた。雨をやり過ごしつつコンビニで休憩していく。もう10kmほどで着くので安心感はある。雨が一段落したところで海沿いを回るバイパスを走るが、このアップダウンが容赦ない。長崎県立大学を過ぎたら九十九島へ曲がる分岐があったが、今日は佐世保市街まで行くのでまっすぐ行く。その判断が間違いで、日野峠という名前まで立派に付いてる峠を越えさせられる。回り道がことごとく裏目に出ている。明日は佐世保連泊とは言え、日没が迫る時間帯に痛い。
 すっかり真っ暗になった佐世保の市街地へと下ってきた。やや道に迷いながら、一方では寝床の候補も探す。やはり学生時代も野宿した佐世保公園が妥当なところだろう。まさか米軍基地内の公園はまずいだろう。寝床の目処も付けたところで佐世保駅に到着した。ここでケータイを使って風呂の場所を探す。温泉と銭湯が1軒ずつ見つかった。もうすっかり夜だが、温泉を目指していく。市役所の近くにあるようだ。それっぽい交差点を右に曲がると、ホテルは見えてきた。坂の上にありそうだ。最後のひと踏ん張り上ろうかと思ったが異変を感じて立ち止まる。看板がやけに暗い。客室の明かりは一つも光っていない。何というか営業しているように見えない。念のため電話をかけてみると誰も出ない。坂の手前のホテルに自転車を立てかけて歩いて様子を見て情報収集する。不審者である俺を警戒してかフロントの人が出てきた。ちょうど良いので聞いてみたら、やはり閉館していたようだ。坂に上る前に気付いて良かった。となると、佐世保には日帰り入浴できる場所は1軒しかなく、銭湯のみである。入り組んだところに古い銭湯が1軒見つかった。これで何とか体の汚れを洗い落とせそうである。ただ、佐世保に日帰り入浴が無いというのは心配である。
 風呂を終えたらコインランドリーに洗濯しに行く。さっきのホテルへ上る坂のすぐ近くにある。洗濯しながらここまでの日記を書き進める。乾燥まで終えたところで荷物に詰め込んで、やっと夕飯だ。ずいぶん遅い時間になってしまった。自炊は有り得ないので、晩酌がてら食べられれば良いかと居酒屋を探してみる。なかなか活気のある街だが店の終わりは早く閉店してるところが多い。何とも思い通りに行かない。結局、面倒になってきてラーメン屋へ行く。庶民的な古い店だが意外と美味しい。
 夕飯を終えて佐世保公園へ行きテントを張る。明日は連泊なので、まずは自転車のクランク周りから響いてきてる異音対策のために片道10kmほどの早岐まで行って修理を試みたいところだ。早起きがポイントになるので眠りについた。


   出発(長崎県田平町)から 188.87 km

4日目 佐世保 → 早岐 → 九十九島 → 佐世保 44.74 km
2015/04/29
 せっかくなのでテントを片付けて佐世保の朝市へ行ってみる。朝市がある割に道に活気が伝わって来ない。屋根の下の市場は4分の1ぐらいしか開店していない。朝市だというのに8時でもう店じまい… それとも最近だと最初から店が少ないのだろうか。朝飯になりそうなものを手に入れることは出来ず、市場内にあるうどん屋でワカメうどんを食べる。柔らかい九州らしいうどんが胃に優しい。ただ、昨日は酒を飲んでいないので胃は元気だ。ふとサイドバッグの中に昨日買った魚の天ぷらがあることを思い出した。悪くなるほど暑くも無かったし大丈夫だろうと それを食べて腹を満たす。
8時時点で開いてる店が少ない朝市

 トイレのために港のターミナルに立ち寄ると、朝から佐世保バーガーの店が開いていた。こんなことなら朝市ではなく佐世保バーガーでも良かったかと後悔する。というか、佐世保バーガーはなんとしても食していかなくてはならない名物だろう。今日の昼か明日の朝が現実的なところだろう。朝から開いてる店があるなら、明日の朝が良い。
 佐世保市街から車通りが多くて道が狭い国道を南へと走っていく。向かい風でもありアップダウンもまあまあ多い道で走りが捗らない。今日は雨が降るという天気予報だったにもかかわらず暑いほどに晴れてきた。連泊で九十九島観光の予定だったので、これは有りがたい天気予報外しである。捗らない道がさらに面倒なことに本線は右に曲がりながら坂を上っていくが路側帯がない狭い陸橋を越える。左にエスケープすれば車通りはさほど多くない道で平らに行けそうだ。左に抜けてみる。ただ、地元の裏道になっているのか車通りは多いし、ところどころ踏切や信号でふんづまって進まない。ただ、鉄道沿いなので鉄道ウォッチングを楽しみながら走れるのが良い。
 平地でエスケープできるかと思ったら最後に軽く一つ丘を越えて、再び国道に下る。地図で見るとかなり店に近づいてきたようだ。相変わらず路側帯が狭くて走りづらい国道を南下していくと、大きくは無いが専門的な自転車屋が見えた。長崎県では数少ないスポーツサイクル専門店だ。小さな店と話し好きの店主と若いメカニックと大きな犬が特徴的だ。店の前で荷物をほどいて症状を説明する。こればかりは、どこから鳴ってるかの音源や原因を特定するのは難しいので、1個ずつ潰していくしかない。ペダルに油を入れたところで大幅に改善が見られた。話し好きの店主と話をしながら自転車に荷物を載せていく。
 だいぶ良くなった感覚の自転車に乗って、店を後にして佐世保市街地に戻っていく。途中、ジャパネットタカタのスタジオが見えたり佐世保らしさを満喫していく。戻りは回り道もしていないし行きより圧倒的に早い。昼前に佐世保駅前に戻った。商店街で目を付けていたレモンステーキの店に行ってみる。まだ混んでいない時間帯なので、さっと席に座った。熱々に焼けたステーキにレモンソースをかけて食べる。肉も軟らかくて肉の濃い味が美味しいが、それをさっぱりと酸味のあるレモンで食べるのがまた美味しい。ルーツは不明の料理だが米軍が駐留しているだけあって、こういうのはうまい。
 昼飯を食い終えたらトンネル横丁を見てSKSの大きな造船所のわきを抜けて九十九島へ向かう。夕日の見える石岳と水族館と遊覧船が見所だろう。その前に造船所の眺めも楽しんでいく。大きな設備で船を作っていくところが見たかったがドッグは空いていた。九十九島パールリゾートはGWらしく観光客が多い。自転車を置いて水族館と遊覧船の順番を決めに行く。遊覧船は頻繁に出てるし整理券配られて待つほど混んでるわけでもないので水族館から先に見ても大丈夫だろう。
 まず水族館を見ていく。最近の俺の旅で水族館訪問率が高くなっている。沖縄の美ら海水族館のように誰もが知る大きい水族館もいいが、意外と地方の特徴が出ていて面白い。ここも大村湾や五島や九十九島の魚の展示が楽しめる。ウミガメの餌付けタイムも見れたし満足である。

佐世保名物 レモンステーキ


防空壕の跡を活用したトンネル横丁


九十九島水族館 ウミガメの餌付け


九十九島水族館のイルカ

 遊覧船の出航まで時間があるし、暑いのでかき氷を食べる。佐世保らしいミルクセーキが濃厚で美味しい。体の熱も冷めたところで遊覧船に乗ってみる。帆船型の遊覧船はマストにも展望台が付いていて上から楽しめる。馬鹿と煙は高いところが好きということで俺は出港早々からマストに上って楽しむ。島と複雑に入り組んだ入り江や岩を縫うように走って行く船が楽しい。徐々に空は曇ってきて雲に覆われてきたが、沖の方は雲の切れ間から光が差し込んでいて天使の梯子が見えている。外に面した展望デッキにずっと居たのは俺だけだったが、リアス式海岸の地形を海から眺める遊覧船は本当に楽しい。
 ビジターセンターで自然についての展示を見ると夕方だ。夕日には早い時間だがやることが尽きた。石岳に行こうにもどうせ曇りで夕日は見れないし、上からの眺めは昨日の長串山で満喫したのでもう良いかと、パールリゾートの近くに温泉もあるが泊まるところは明確に決まらないので佐世保市街地へ戻ることにした。渋滞に巻き込まれていると原付のおじさんに話しかけられる。今年の長崎県の旅では話しかけられる頻度がもの凄く多い。良い感じの旅の風情を楽しめる。

九十九島遊覧船


島と島の間の狭いところを抜けていく


沖に差し込む日の光と島


もう1隻の遊覧船

 佐世保市街地に戻ったらスーパーで買い出しをする。今日はなんと言っても魚を食べたい。ということで、イサキとアジを買っていく。刺身と茶漬けにしたい。アラ汁にちょうど良い頭なども安く売っている。シンプルに魚とネギと大根で塩味でいきたいところだ。塩も平戸の天然塩を既に買い込んでいる。昨日と同じ銭湯で入浴を済ませてサッパリしたところで佐世保公園へ行き、昨夜と同じ屋根の下あたりでテントを張る。先客が近くのベンチで飲んでいたが構わず張る。雨が降るので屋根の下で飯が食える場所は確保したいところだ。
 先客が撤収したところで俺も魚を捌こうとしたら土砂降りの雨が降ってきた。しゃれにならないほどの雨だ。屋根の下にいても防ぎきれないほど風で流れてはねた水がかかる。魚を捌くのに水道の近くでやりたいのだが水道は屋根が付いていない。ペットボトルにくんでいた水で洗い流しながら、イサキとアジを3枚におろす。ヒレが堅いイサキには苦戦する。それ以上に屋根に降り込んでくる雨にも苦しむ。座る位置を変えてもしぶきが降りかかる。魚を何とか捌いたところで、飯も炊けたようだ。続いてアラ汁を作る。意を決して土砂降りの雨の中を水道まで歩く。地面も水浸しだ。大コッフェルとペットボトルを満水にして屋根の下に戻ってくる。大コッフェルの水で洗える物は少し洗う。大根と魚のアラを煮込んで塩だけで味つけをする。良い味が出ると塩だけのシンプルな味つけの方が映える。捌いた魚も俺の下手くそな腕前では小骨が痛々しく感じるが、除けながら食べれば問題は無い。歯ごたえもよく臭みも無く美味い。さすが海有り県である。
 洗い物をするときも相変わらず土砂降りの雨は降り続くし雷も鳴っている。ずぶ濡れになりつつコッフェルや包丁やまな板を洗う。生ものを使ったので良く洗わないと臭いも残ってしまう。魚臭い手も何とか洗って屋根の下に戻る。食器をトイレットペーパーで拭いてバッグに仕舞い込んでから、地面から3cmぐらい小上がりになってる屋根の下にテントを張る。大きいテントなので屋根からははみ出す。ペグは打てないので荷物をテントに入れる。何とも落ち着かない土砂降りの雨の中で眠りにつく。

アジとイサキを1匹ずつさばく


イサキを3枚におろして刺身にする


博多のごまサバ風にアジをまとめる


あら汁も作る



   出発(長崎県田平町)から 233.61 km

5日目 佐世保 → 西海橋 → 西海(大瀬戸) 61.16 km
2015/04/30
 去年の夏の北海道でテントの底が浸水するようになってきたのに気付いて防水液を塗って強化したものの十分ではなかったのか圧力の高いタイルの目地付近は水が浸みている。さらに塗り込むかグランドシートをビニール系にするか考えないとダメそうだ。微妙に濡れてる荷物を片付けてテントのボトムを乾かす。地面は水はけが良いからか水たまりは残っていない。川に下りていく階段でテントのフライシートを干す。これも撥水にして振るだけで乾くレベルにしたいものだ。
 自転車に荷物を積み込んで佐世保公園を出発する。昨日の朝に見つけていた港の佐世保バーガー屋に行ってみたが今日は開店していない。朝から営業してる店が無いか観光案内所で配っていた佐世保バーガーマップで確認してみる。昨日の自転車修理で早岐に向かう途中のエスケープ路から少し東へ行ったところに早朝からやってる店があった。朝7時から営業しててハンバーガーというのも凄い。朝飯でハンバーガーを食べようという発想は俺ぐらいしかいないと思っていたので驚きであるが有り難い。
 空腹を我慢しながら昨日と同じ道を南に向かって走っていく。安息日があったおかげで昨日よりは調子が良い。あっという間に国道エスケープの分岐に辿り着いて左に曲がる。もう1度マップを見てどこで曲がるかを特定して進んでいく。この先にありそうだという分岐を曲がると、結構な急坂が襲いかかる。住宅街に向かってグイグイ上っていく道ではあるが路肩は広いので走りやすい。俺の燃料系はそろそろEマークが点灯し始めているが、順調に進んでいく。
 小学校や住宅街を抜けた先にスーパーが見つかった。その敷地内にパン屋が建っている。表にはテラスもあってイートインもできるようだ。パン屋には佐世保バーガーと明確には書いてないし総菜パンのところにも置いていない。聞いてみると受注生産のようだ。少しのパンを買って佐世保バーガーも注文する。焼きたてのパンをつまみつつ待っているとできあがった。甘めの味つけのマヨネーズとしっかりしたハンバーグで一言でいえば優しい味という感じである。これはかなり美味しい。おそらく観光客は来ないであろう立地の穴場的な佐世保バーガーは大正解の選択だった。

「もみじの香り」の店構え
表のデッキがイートイン


「もみじの香り」の佐世保バーガー

 遅い朝飯に元気をもらって坂を下って走り出す。昨日の自転車屋の寸前の交差点で右へ曲がって早岐市街、西海の方へ向かって進んでいく。この辺りからは道が狭くて走りづらい。輪行移動中に早岐の車両基地で寝台特急ななつ星の機関車を見かけたので、もしかして見れないかな…と期待しながら早岐駅の方へ入っていく。線路を渡る陸橋を歩いてみたが、機関車の姿は見えない。乗る金は無いが見てみたい列車の一つでもあり、乗り物を開発する人間として水戸岡デザインの鉄道は興味深い。諦めて陸橋から降りてくると俺の自転車に興味津々の人がいて話が盛り上がる。浮き世離れした旅ではあるが、興味を持ってくれる人がいるというのは嬉しい物である。
 早岐を通り過ぎると西海橋まで広い道が続く。ただ、西海橋に近づくほどアップダウンが激しくなってくる。小高い丘の上から眺める海と丘の景色は気持ちいい。橋に近づいていくと戦時中のアンテナ塔が3本見える。コンクリートでまっさらな形に真っ直ぐそびえ立つアンテナ塔が異様な光景を見せている。アンテナ塔を見ながら進むと西海橋に辿り着く。午前中でここまで来ておきたいところだったが、既に13時半過ぎとなってしまった。西海橋の下の針尾瀬戸流れの速い海峡で渦潮も見れる。瞬間でしか見れないが渦が出来ているのが見えて楽しい。これで日本三大急潮(諸説あるが、鳴門海峡、関門海峡、来島海峡、針尾瀬戸、黒ノ瀬戸のいずれか3つ)を見たことになる。海やアンテナ塔を眺められる公園でしばらく景色を楽しんだら西海橋を渡った対岸の店で昼食にする。
 せっかくの西海なので、アラカブは外せない。ちょうど良く回転寿司があった。色んな魚を少しずつ楽しめるので好都合だ。アラカブ、ウチワエビなど長崎ならではの魚介を楽しんでいく。回転寿司とは言え閉店間際だから注文してお盆に載せてまとめて持ってきてもらえた。普通の飯と同じで回転寿司の風情はない。それでも味には満足である。

新西海橋


西海橋 下の海は渦巻いている


アンテナ塔


アラカブの寿司と味噌汁


うちわえびの寿司

 さて次の目的地は道の駅 西海である。東彼杵半島に入ると一発目から鋭いアップダウンが襲いかかる。静かな海沿いに下ったら東彼杵半島の西側へ向けて峠越えである。かなりきつい坂をグイグイと上っていく。短い坂一本で平坦かと思いきや、延々と上り坂が続く。ちょっとした山の上まで上っていくような感じである。しかも、今日は天気が良くて蒸し暑い陽気のためばて気味になる。
 体力を削られて時間もかけて、やっと道の駅 西海に辿り着いた。小さな道の駅ではあるが売店でアイスが売られていたので買っていく。西海は温州ミカンの原産地でミカン100%のシャーベットが美味しそうだ。暑いのでサッパリした柑橘系のシャーベットが体にも気持ちにも有り難い。甘酸っぱくて濃厚なシャーベットが気持ちを冷ましてくれる。この時点で夕方の4時過ぎで、想定していた到達時刻を大幅に遅れている。本当は往復40kmの大島にも行って西海市街で一泊と思っていたが、大島は諦めて西海市街に向かうしか無さそうだ。気持ち良いほどのワインディングを下って海へ向い海沿いの道に突き当たって南へと曲がる。
 せっかくなので七ツ釜鍾乳洞には立ち寄りたい。営業時間は17時半までだが現在既に16時45分というところである。上り坂1本あるとアウトな予感だが祈るように向かっていく。国道から山の方へ進む道は平らなまま七ツ釜鍾乳洞へ向かっていく。駐車場も見えてきて辿り着いた。17時前なので余裕はありそうだ。急いで受付をして鍾乳洞へと入っていく。きつい中腰の姿勢で観光客が全くいない洞窟を一人で進んでいく。地下水が勢いよく流れていて少し怖い感覚もある。見れる場所の規模は小さいが自然の神秘を感じる場所である。コウモリが多いのも驚きを煽る。狭い洞窟を上ったり下ったりが多くて大変ではあるが、途中で滝があったりで見所も多い。今までの旅でも色んな鍾乳洞に行ったが、何故か惹かれるもののある観光スポットである。洞窟を見たあとは、せっかくなので七ツ釜鍾乳洞の天然水で作ったというラムネを買う。ビー玉を落とすための治具があったので使ってみるが見事に瓶が倒れてまき散らす結果となった。ビー玉と押し玉の位置決めは悪くないが瓶の固定方法は考えた方がいい構造である。

西海のミカンアイス


七ツ釜鍾乳洞内の滝


七ツ釜鍾乳洞の水で作ったラムネ
栓を開ける治具

 再び出発して西海の市役所がある大瀬戸を目指していく。アップダウンは多く3本ほど坂を上り下りする。最後にトンネルを抜けると、ようやく店や家が建っているところに出た。1軒のスーパーをトンネル直後に見つけて、まさかこの店が買い出しポイントの最後ではないだろうと思いながら一度通り過ぎる。フェリーターミナルや市役所のあたりまで行っても店は無く、その先は雪の浦に向けて坂を上っているような道が見える。仕方なくさっきのスーパーまで戻って夕飯の買い出しをする。泊まる公園はこの先の雪の浦海浜公園になりそうで、おそらく水は確保できるだろうという目論見だ。ちゃんぽん麺と野菜ミックスを見つける。肉は無しで地元のカマボコのみとする。味付け用のスープを探したが麺の周りには見つからない。調味料コーナーを見たら「ちゃんぽんの素」というのを見つけた。これで夕飯は決定である。
 そろそろ暗くなってきたので雪の浦へ向かう。雪の浦はコインシャワーとかはありそうだが営業してるのか怪しい。水道もあるものだと仮定してるが、無かった場合のバックアップを想定したい。見つけた水道で水をくんでボトルを満タンにして、完全に日が暮れた海岸線の道路を進んでいく。真っ暗な中で坂を上って下るとそれらしき場所に出た。家も何軒も建ってるが公園がどこにあるかが見えない。携帯で見ると素直に住宅地を海側に抜ければ良さそうである。住宅地の向こうは墓場でその向こうが公園のようだ。真っ暗で誰もいない墓地の真ん中の歩道を抜けると公園に出た。トイレやコインシャワーや管理棟がある建物の前に広場がある。形はロータリーになってるが車止めがあるので車が来る可能性はない。ここにテントを張ることにした。
 まずテントを張って、汗くさい服を全て着替える。多少はサッパリしたところで夕飯を作る。水道も自販機もあるし自販機で買った物なら捨てられるゴミ箱もある。風呂に入れなかったこと以外では生活に困らない環境である。キヌサヤの筋を取ってカマボコを切ったところで料理を始める。まずは野菜をごま油で炒める。キヌサヤを入れて麺を入れる。そこに水とちゃんぽんの素を入れて煮込む。意外とお手軽にできあがった。カマボコも美味しいし、ちゃんぽんにも良い味を与えている。キャンピングちゃんぽん 意外と悪くない。
 夕飯に満足して洗い物も済ませてから眠りにつこうとしたら、腹の調子が悪い。旅で体調を崩すのは困る。正露丸糖衣Aを飲んで不安を抱えて眠りについた。

西海の魚天と野菜のちゃんぽん



   出発(長崎県田平町)から 294.77 km

6日目 西海 → 外海(そとめ) → 長崎 41.52 km
2015/05/01
 今日は朝早めに移動して長崎に辿り着いて観光のために時間を確保したいところだ。7時にはテントを片付けて海を見ながら朝食を食べて出発する。サンセットオーシャン202と呼ばれている国道202号からの海の眺めは素晴らしい。西に向いているので天気が良ければ海に沈む夕日が楽しめるコースである。青い空の下に静かで穏やかな海を見下ろしながら、厳しいアップダウンを走って行く。一本一本の坂が重く高低差がある。
 3本ほど越えたところで道の駅そとめに辿り着いた。体力もだいぶ削られたので休憩は本格的になる。海の眺めも素晴らしいが、崖際に建つ石積みの集落の眺めも良い。産直の売店もなかなかの充実ぶりで柑橘類がいっぱいあるし試食もできる。樹上で熟したデコポンの不知火とを買って行く。ド・ロ神父が日本に伝えたのが日本のパスタの発祥らしいので、パスタとそうめんも買っていく。今後の食を豊かにしてくれるだろう。暑いしミカンシャーベットも食べていく。濃厚でさっぱりしていて美味しい。
 元気を貰ったところで、長崎に向けて走って行く。この先の道もアップダウンが激しい。坂に苦戦しながら進んでいくと県道の峠でショートカットして長崎市街地へ行く道と海沿いを回り道して行く道とで分かれる。海沿いを行っても峠を回避してると思えず、短くて1本で済む峠越えを選んだ。交通量がまあまあ多い峠を少しずつ登っていく。本格的にGWの太陽に炙られて暑い。意識はあるが朦朧とした感じになってくる。坂の途中には大量の納車前のホンダ車が保管してあるグロスがある。気分が少し現実に戻る。グロスを越えて少し走ると峠の頂上らしきトンネルに出た。ショートカット戦略は成功だったかもしれない。

泊まった雪の浦海岸


サンセットオーシャン202と呼ばれる
国道202号からの海の眺め


道の駅そとめ ミカンシャーベット


道の駅そとめからの眺め


道の駅そとめからの眺め

 峠を越えると道は気持ちよく下っていく。このまま長崎駅まで下ってくれ!そう願いながら走って行く。交通量は多いので油断はできないが走る労力がないのは助かる。途中にある平和祈念公園に立ち寄っていこうかと思ったが自転車を止める場所がどこにもない。駅にも競技場にも公園にもない。これが長崎の観光地なのだろうか。坂が多いので自転車ユーザーが非常に少ないという噂は聞く。仕方なく一度 市街地へ行ってホテルに自転車を置いてバスや路面電車で観光する作戦に切り替える。
 もう少しで長崎駅かというところまで来て、バス停で爺さんが倒れている。慌てて自転車を止めて助けに入る。大丈夫だと言い張っているが地面も熱くなるぐらいの日向で起き上がれていない。もう1人いた人と一緒に持ち上げてベンチに座らせる。こっちも汗だくになってしまう。そんなトラブルもあって14時にようやく長崎駅が見えてきた。駅の中より周りと思って探し回るが店は見つからない。ランチタイムもそろそろ終わりだろう。店を探していると地元の自転車好きから話しかけられて、俺のランドナーに興味を持っていた。話は長くなったが、東彼杵半島の西側は本気系のロード乗りしか行かないルートとのことだった。敢えてそんなところばかり選んで走っているようだ。
 駅前の駐輪場に自転車を置いて、駅の中へと入っていく。デパートの中にトルコライスが出てくるカレー屋さんがあった。ここ最近の野菜不足を解消すべく多めのサラダとトルコライスで昼飯にする。カレーととんかつとナポリタンと半熟卵が添えてあってサラダも載っているワンプレートである。こういう地元に根付くジャンク感のある物は好きだ。でもカレーは本格的でピリッと辛く、全体をうまくまとめている感じがある。
 15時過ぎに遅い昼飯を終えてホテルへ行く。とにかく自転車を置いて観光に行きたい。チェックインを済ませてホテルの裏に自転車を置いてレーパンのままで観光するのも嫌なので短パンを上から履く。まずはホテルの前にある文明堂カステラ本店の前を通り過ぎて路面電車に乗ってグラバー園を目指す。今ではグラバー園に行くのに坂を上らずにエレベーターで上がれるようになっている。せっかくなのでハイテクを存分に活用する。エレベーターを乗り継ぐとあっという間にグラバー園の門に着く。入場料を払って入ると長崎市街地の眺めが気持ち良い。建物自体は過去に来たこともあるし、何となくせわしない気分なのでそれなりに見ていく。俺の中で気になっているのは港に停泊している海外の大型客船だ。マンションのような大きな船を一望できる場所を探しながら観光を楽しむ。グラバー園も改めて見ると見所は多く歴史を感じる。
 グラバー園を見終えると長崎くんちの展示も見れたりで、豪華客船一望だけではない満足感がそこにはあった。せっかくなので大浦天主堂にも立ち寄ろうと思ったら既に閉まっていた。門から遠目に姿を眺めて、また歩いて行く。せっかくなので豪華客船も見に行くために歩いて出島の方へ向かっていく。豪華客船の入口付近は出国手続きのゲートもあって、普通の港とは違う情緒が楽しめる。どこの船かは不明だが客はほとんど中国人である。警備が物々しいため、船にはあまり近付けない上、港まで行ってしまうと目の前にマンションが建っているようにしか見えないので船という感覚がほぼ無い。

長崎名物 トルコライス


定番 グラバー邸


グラバー邸から眺める豪華客船

 そのまま歩いて出島まで辿り着いた。閉園寸前に駆け込みで入って見ていく。観光地化していて展示は充実しているが、今や海に面していない内陸なので風情がない。さっさと見ていたら閉園の時間になってしまった。出島から路面電車で長崎駅へ行く。この次は稲佐山を目指す。乗り場がどこなのか分かりにくいが、地元のおじさんが若い女の子に乗り場を懇切丁寧に教えているのを横から聞いて理解して乗り込む。
 ロープウェイの乗り場に着いてロープウェイで上がっていく。まだロープウェイは空いていた。徐々に上っていく間に長崎の夜景を見下ろす展望が開けていく。ただ、乗り込み順で言うと窓際では無いので、そんなには楽しめない。山頂に上がると少し歩いて展望台へ向かっていく。車もいっぱい止まっていて混んでいる。展望台の最上階に上がるとフェンス際は人でいっぱいだ。この角度から見ようと決めたところでじっと待ってれば順番は巡ってくる。そんな作戦で待ちながら景色を楽しむ。長崎の夜景は山に囲まれた立体的な地形が見物だが、ここは少し標高が高すぎる感があり立体感が薄い。それでも港を中心に集まった光は美しい。港に停泊していたマンションのような豪華客船は既に海に浮かんでいた。徐々に遠ざかっていく船も小さく見えるが見応えがある。

月明かりを受ける長崎


稲佐山からの長崎市内の夜景

 稲佐山の夜景に満足して、ロープウェイで下っていく。しかし、数本分待たされるぐらいの行列が乗り場には出来ていた。上ってくるロープウェイも満員のものが続いている。早めに混雑に巻き込まれたような形となっているようだ。3本目の便で乗れるかギリギリ…という場面になったが、ちょうど俺の前で定員は区切られた。これはラッキーな状況である。ギリギリ乗れるより圧倒的にポジティブに捉えられる。要は最初に乗り込んでベストポジションを確保すれば良いのだ。ワクワクしながらロープウェイの到着を待つ。そして案内されて乗り込む。当然、一番前の港側の角の窓の前を確保する。ロープウェイから眺める夜景としてはベストポジションだ。立体感は、俺の読みでは半分ほど下ったところだと思うのでロープウェイか山腹からの眺めが一番だろう。素早く下っていくロープウェイからバシバシ写真を撮りまくる。ベストな立体感を楽しめるのは、ほんのわずかな時間だ。
 下りきったら、バスで長崎駅へ向かい路面電車に乗り換えてホテルを目指す。観光して満員のロープウェイに乗っていたのが申し訳ないほど汗臭いのでサッパリしたい。部屋のシャワーで汚れを洗い流す。そして汚れ物を洗濯機に放り込んで、夕飯に出かける。新地の中華街に出向いてみる。しかし、22時という時間にして店が全く開いていない。何とも商売っ気のない街である。仕方なく歩き回って居酒屋に入る。中華は完全に忘れて魚介類で飲みに徹する。鯨も魚も美味しく酒が進む。
 鋭気を養って歩いてホテルへ戻る。洗濯物を乾燥機に移して日記を書きながら乾燥を待つ。しかし、ある意味では予想通り力尽きた。夜中の2時に一度目を覚まして洗濯物を乾燥機から引き上げる。そして畳んで圧縮袋に詰め込む。そこまでやったところで再び力尽きて眠りについた。

ロープウェイの途中で撮った夜景。
俺が思うベストな標高


鯨の刺身


長崎の皿うどん



   出発(長崎県田平町)から 336.29 km

7日目 長崎 → 愛野 → 小浜温泉 52.07 km
2015/05/02
 ここからは勝負所に向けた走りが始まる。今日も天気は良い。カラッとしたGWの日差しと風を浴びて準備をして出発する。せっかくなので眼鏡橋を見てから走り出す。朝の人が少ない時間帯の眼鏡橋は落ち着いた空気が流れていて良い。長崎はどこから来ても峠1本を越える場所なので覚悟していた上り坂が始まる。昨日、長崎市内で会ったサイクリストは雲仙の小浜温泉まで5つも峠があるとは聞いているので、その1本目だと考えれば頑張れる。2車線のバイパスの横の広い歩道を上がっていく。交通量が多いし背の高いフェンスで区切られているし、どうせペースは上がらないので車道を行くメリットは無い。
長崎の名所 眼鏡橋

 登り切ったところのトンネルを越えようとしたらママチャリで日本一周しているサイクリストとすれ違い俺も上り坂で疲れたので立ち止まって話は盛り上がる。やはり、小浜温泉までのアップダウンは半端じゃないらしい。ママチャリよりはランドナーの方が良いが日本一周や縦断など長期ツーリングは鬼の16連休である俺から見ても羨ましい。
 トンネルを抜けると道は下り始める。峠を下って海沿いに出てすぐの場所に寄り道したい水族館があるので見落としに気をつけながら走る。坂の途中で標示が出ていたので、団地の脇を右折して住宅地に入っていく道が水族館へ向かう道だ。下りきった所に広い道がありそうだが、下りきったあとでやはり上り直しってことになると面倒なので、あえて住宅街を抜ける。さすがにGWということもあって駐車場はほぼ満車となっている。自転車置き場はそんな混み具合とは関係ないので自転車を止めて水族館へと入っていく。
 長崎ペンギン水族館は、ペンギンを専門に扱った個性派の水族館である。ここ最近の旅で水族館にハマっている俺としては寄らずにいられない場所だ。大きなプールの上と下のペンギンの様子が楽しめる。深く大きなプールを飛ぶように泳ぐペンギンたちと上で餌をねだってピョコピョコ歩くペンギンの姿が両方楽しめる。ペンギンの種類も多く大型から小型まで豊富だ。魚も展示してあって長崎の海をそこに表現しているが、ペンギンのインパクトの方が大きい。

えさをねだるコウテイペンギン
@長崎ペンギン水族館


プールの周りを歩いてる。


プールを自由に泳ぐペンギン


結構 近くでも見れる。

 今日の目的地 小浜温泉を目指して走り出す。しばらく海沿いを走ったかと思うと内陸へと食い込んでいく。ここで上り坂が始まる。GWの太陽に焼かれて熱くなりながら坂を徐々に上っていける。まだまだ調子は悪くないようだ。明日が雲仙の仁田峠まで1000mを一気に上る計画なので今日は温存しながら行きたいところだ。距離も45kmほどと少なめの設定としている代わりにアップダウンが多いのが悩みの種である。意外と大きく労力を使うことなく坂道を越えた。少し下ると集落に出た。少し早めだが、この先は店なども少なくなりそうだし、ここで見つけた食事処に立ち寄ることにした。刺身定食は魚の種類が豊富でさすがは海沿いである。キビナゴやイカも新鮮で美味しい。
 刺身定食に満足してペットボトルに水も汲んで貰って、ストレッチで足の筋肉を伸ばして走り出す。集落を抜けると再び上り坂が襲いかかってくる。傾斜は緩いが徐々に俺の体力を奪っていく。少し登り切ると一気に展望が開けて広々とした畑が段々に連なっている景色が広がる。ちょうどそこに直売所があったので、何か嗅覚が働いて立ち止まる。昼飯から5kmも走っていないが、立ち寄らずに居られない気配を感じた。ここで夕飯の食材を買い出しするのも良いだろう。この辺りは段々畑を活用したジャガイモが名産のようなので買い込んでいく。作りたてのコロッケも売っているので1個買って行く。コロッケはその場で食べてみると、ホクッとしながらも粉っぽく感じないジャガイモと濃厚の味が広がる。こんな美味いジャガイモはそうそう無い。
 周りの畑は散策コースになっていて海の方まで降りれるようだ。ただし、海まで降りたら上って戻ってこないと元々の道には戻れない。周りの畑で眺めの良い高台まで走ってみると、そこには一面のジャガイモの段々畑とその向こうには橘湾と雲仙が見える絶景である。明日は雨という噂もあるので、雲仙を見るのがこれで最後かもしれないという思いもあり、景色を存分に楽しんでいく。名も無い展望台からの眺めが思わぬ絶景を作り出している。この先もしばらくは段々畑が左右に広がっている。交通量は多いので立ち止まって写真を撮るのは少し危険だが、下り坂を流しながら楽しんでいける。
坂を下りきると、またすぐに上り坂が始まる。確かにハードなルートである。ちょっとしたアップダウンかというと海を雄大に見下ろせるぐらいまで上がっていく。険しい崖の上と思われる道なので遮るものがなく海と向こうの島原半島が見渡せるて大潮の干潮時しか現れない池も海の上に見えている。またしばらく走ると一度下って段々畑を徐々に上っていくようなしんどい道が続く。急な坂をグイグイ上るのは嫌いではないが徐々に上っていく道は何だか上っている達成感や感覚がなく平地に毛が生えた程度の道なのに苦戦している感覚になり、いつまで経っても終わらない長い坂が多いので苦手である。雲仙の火山灰がベースになってるような乾いた土の上に植えられたジャガイモと向こうに見える雲仙が雄大で景色は良い。
 この坂も登り切ると橘湾と雲仙を見渡せる展望台に辿り着いた。この時点で夕方の4時半を回っている。傾いた太陽から金色に照らされる海と雲仙の眺めは素晴らしい。おそらく明日は雨で雲仙は見れないので今のうちに楽しんでおこう。それでも峠に登ろうとしている俺は何なんだろう。展望台からの景色で得た情報では小浜までもう1つ山越えだ。それに気付いた時点でげんなりしてくる。海沿いにエスケープしても坂を上っているのが見えるし、国道で行くと山の向こうを回るので峠越えは確実だ。夕日の時間までには小浜温泉に辿り着きたいのだが、少し頑張りが必要そうだ。
 展望台から坂を下っていく。海から内陸に入っていく道で早速の上り坂だ。国道では無く海沿いを回りたかったが、その道に入る分岐を見落として国道で行く。徐々に道は山の中に入っていくがカーブも傾斜もさほど鋭くならないまま徐々に標高を稼いでいく。日没の迫る峠道というのは気分を焦らせる。特に上り坂のうちに日没を越えると、野生動物が出現したり薄暗い道で障害物を見落としたりリスクも多い。

美味い刺身定食


段々畑の丘


愛豊とポテトコロッケ


段々畑の先に橘湾と雲仙を眺める
隠れた絶景スポット


徐々に上る道と両サイドの段々畑
正面には雲仙普賢岳


愛野展望台からの島原半島

 想像していたほどのボリュームはなく明るいうちに峠を越えた。峠を下ると海沿いに出た。おそらく小浜温泉までは上り直しはないだろう。ちょうどチャリステレオのスピーカーの電池が切れていたので下りきった所のコンビニで単4電池を買って入れ替える。明日は雨なのでフロントバッグ内から出したくない。海沿いを走っている間に夕日はまだ沈んでいないことに気付く。せっかくなのでゆっくり見れそうな岸壁へ曲がっていく。橘湾と向こうの長崎半島が金色に照らされ、沈むごとに黄昏色へと変わっていく。この旅で3度目の夕日となり、西の海を見ながら走るツーリングの醍醐味を存分に味わえた。
 寝床の公園だが、いくつかはネットで目星を付けていたので回ってみる。海沿いにある小浜温泉の足湯公園の隣が良さそうだ。水やトイレもあって雨が降ってもしのげそうな屋根付きのステージもある。足湯は20時で水も抜かれるので人も来ないだろう。あっさりと決定。入浴は海沿いの温泉を見つけたので行ってみたら、19時以降は貸し切り家族風呂のみの受付で入れない。国道沿いにあった浜の湯しかないようだ。買い出しと入浴で浜の湯の方へ行く。温泉のすぐ近くにスーパーもあったので好都合だ。スーパーで食材を買って浜の湯で風呂に入る。150円と激安の公衆浴場だ。露天風呂とか気の利いた物はないが源泉掛け流しの風呂を満喫していく。
 湯煙漂う風情のいい温泉街を通って先ほど目を付けておいた公園へ行く。何だかんだ言って雰囲気が非常に良くて普通に温泉旅館に泊まるのも良い感じの温泉だ。夕日が沈んだあとの橘湾には沖に漁り火が見える。旅を満喫している感じがする。また来たいが、次は自転車で来るのは正直嫌である。
 まだ足湯が閉まっていないのでテントは張らずに夕飯だけ作る。今日のメニューは決まっている。途中の産直で買ったジャガイモ 愛豊(あいゆたか)を使ったポテトサラダだ。ジャガイモで炭水化物を摂るのでご飯は炊かない。まずは塩水でおたふく豆(空豆)を茹でる。それをつまみながらジャガイモを茹でる。皮はあえて剥かずに切り込みだけを入れて茹でる。火の通りは早い。ゆであがったジャガイモをコッフェルから出してコッフェルのお湯を捨ててコッフェルにジャガイモを戻して少し火にかけて表面の水分を飛ばす。粉ふきいもみたいなイメージに持ち込みたい。これにマヨネーズと胡椒であえてポテトサラダの完成だ。このポテトサラダがポテトサラダ史上最大の美味さを誇る。愛豊というジャガイモの持ち味だろうか、ほくほくしているがジャガイモ特有のむせる感じがなく、しっとりとしてサラッと流れていく。旨味も濃い。今まで食べたジャガイモの中で最高に美味しい。そう思わせるのは旅の空の下だからという理由だけでは無い。
 夕飯に満足したところで、コッフェルを洗ってテントを張る。足湯からは人影が全く無くなったので安心だ。ステージの奥の屋根の深いところに張って雨の出発に備える。さっと起きてさっと出発したいので荷物は出来るだけシンプルにまとめておく。ついでにチェーンに油を入れて動きもスムーズにしておく。明日の勝負日に向けて準備は整った。

小浜温泉から眺める橘湾の夕日


小浜温泉


橘湾の漁り火


愛豊のポテトサラダ


おたふく豆



   出発(長崎県田平町)から 388.36 km

8日目 小浜温泉 → 雲仙温泉 17.45 km
2015/05/03
 この旅で最大の山場を越える勝負の朝を迎えた。雨はしっかりと降り注いでいる。気が重いが峠への有料道路は時間制限があるしのんびりはしてられない。さっさと荷物をまとめてレーサータイツに履き替えて、コンビニで朝飯を食べて出発する。
 温泉街から早速のようにグイグイと上る急坂が続いていく。当然ながら標高1000mの仁田峠までの長い険しい上り坂を覚悟はしていたので、全力で迎え撃つだけだ。進めば進むほ雨足が強くなって大粒の雨が降り注いでくるようになってきた。道路沿いに標高1000mごとに看板が立っているので進捗は把握しやすい。まず最初の目標は標高700mの雲仙温泉だ。ここまでを昼までに上りたい。それが達成できれば、今日中に峠越えするのも容易だ。そこに遅れを取るようだと、後が苦しくなってくる。時間不足で明日ともなると全体計画にも響く話だ。色んなところで重要な意味を持っている今日である。
 雨が降り注ぐ上に霧が出てきたので嫌でも集中力は上がる。雨で寒いぐらいなので体温も上がることなく、上り坂での体温上昇を水冷式でクールダウンしているバランスの良さでペースは決して悪くない。1時間で200m程度のペースで標高を稼いでいく。11時には標高600mに達した。ここでようやく気分的に一安心で張り詰めていたものが緩む。休憩しつつ雨の中ではあるがストレッチをして残りの行程に備える。そして気合い一発上ろうと思ったら、すぐに雲仙温泉街まで登り切った。この時点で11時過ぎなのでペースは非常に良い。最近の俺は日本経済や仕事と同じで、計画割れ、想定より遅いというのが常だが、久々の上方修正 景気の良いニュースだ。
 今日もしかすると泊まるかもしれないキャンプ場も途中で発見した。入口から先の見えない急坂がサイトまで続いている。雨降ってるし本当にここに泊まるか疑問だ。というか宿があれば宿に泊まりたい。そのまま進んで観光案内所に立ち寄る。GW真っ只中だが宿がないか聞いてみるが、残念ながら今日はどこも満室だ。まあ、当然だろう。観光案内所とは別にあるネイチャーセンターにも情報収集のため立ち寄る。ここでマップを見ると衝撃の情報が分かった。仁田峠の道は回る方向が決まっている一方通行だが俺の理解とは逆だったようだ。危うく200m無駄上りしてしまうところだった。そして、受付の背後のホワイトボードにはもっと衝撃の情報が載っていた。
 「仁田峠循環道路 濃霧のため通行止め」…有料道路の峠なので管理上でこういうことも有り得るのだ。無料の国道峠だと悪天候だろうとなんだろうと気合いで上れるのだが、通行止めになってしまうと敵わない。ぼっこし凹まされるが、こればかりはどうしようも無い。峠をスルーして島原に下ってしまう案と、ここで一泊して明日を待つ案の2つがある。明日は天候回復方向なので見込みがあるだろう。ただ、下りの途中から入る平成新山を見る道はおそらく行けないだろう。明日は朝から仁田峠循環道路を越えて島原に下れば夕方にはフェリーに乗って熊本に渡れる… そういうことで頭の中で計画をし直す。宿については、雨でテンション上がらないがキャンプするしかないだろう。
 そうと決まれば雲仙温泉を観光する。土砂降りの雨の中でネイチャーセンターを出て温泉街へ行く。まずは昼飯だ。店がいっぱいあるようでない。目を付けた店は店主が店の表で自転車を道路の向こう側の電柱に止めろと言い続けるので別の店にする。見つけた店に入って、今日は体が冷えているので温かいちゃんぽんを頼む。具だくさんの特製ちゃんぽんは温かく冷えと疲れた体に染み渡る。味つけはリンガーハットよりあっさりしているので長崎以外で食べるちゃんぽんとはだいぶ違う。
 腹を満たしたところで温泉街で夕飯の買い出しを考える。小さいスーパーが1軒あるのみだ。当たり付けをしたところで、雲仙地獄を見物に行く。道路沿いにあって前が見えなくなるほどの湯煙を出している。再び降ってきた雨を避けることもできず、雨ざらしのまま自転車を置いて湯煙が沸き立つ雲仙地獄の遊歩道を歩いて見て回る。荒涼とした岩肌と硫黄の岩山と時折視界を遮るほどの湯煙が上がる風景が印象的である。ここにも隠れキリシタンの負の歴史があって拷問に使われた地獄も今や温泉という天国を供給する源泉であり奥の深さを感じる。降ってくる雨をレインウェアでしのいで見物を終える最後の方で温泉で作った温泉卵を食べていく。地面から吹いている温泉の上に蒸し器で蒸して、ちょうど蒸し上がりたてのが出てきた。触れないほど熱い。そして猫舌なので食えないほど熱い。しかも雨をしのげる屋根がないし傘もないので濡れっぱなしだ。

雲仙仁田峠に向けて雨のヒルクライム


衝撃のお知らせ。仁田峠 通行止め。


気を取り直して特製ちゃんぽん


雲仙地獄の遊歩道
荒涼とした景色と湯気が続く。


噴き上がる蒸気で卵を蒸している


釜で蒸し上がったばかりの卵

 地獄を見たらスーパーで買い出しをする。自転車を止めていた場所のすぐそばでキノコ専門店を見つけたので立ち寄ってみる。試食のきのこ汁がやたら美味しいし、てんこ盛りのキノコが安いので買って行く。レジを打ち間違えてるのでは無いか?というほど安い。「すいません 金額間違えてないですか?」と聞いたがてんこ盛りのキノコはたったの100円だ。そとめで買ってきたド・ロ神父のパスタと合わせてキノコの和風パスタにできそうだ。次にスーパーに行ってみたが、パスタに合わせたいニンニクが見つからない。唐辛子もない。アーリオオーリオにしておいて、めんつゆで少し味を付ければ和風イタリアンになるのだが… 仕方なく他の野菜を買っていく。
 スーパーから出ると雨は強くなってきた。温泉街に足湯があるカフェがあったので休んでいく。午後が丸ごとOFFになったので暇である。温泉ラムネを飲みながら足湯で体を温める。オルゴールでの穏やかなBGMと暖かい温泉に足だけ浸かっていると眠くなってくる。道路に面してて通行人からは目立つ。そんな中でも居眠りしそうな俺との戦いが続く。雨足が落ち着くまで足湯で時間を潰そうと思ったが雨は一向に収まる気配がない。寝落ち寸前のところで足湯を出て行く。足湯のあとで、再び濡れた靴下と靴をはくのが気持ち悪い。
 続いてキャンプ場に向かいつつ、雲仙ビードロ美術館にも立ち寄る。ガラス製品を飾ってある。中は撮影禁止なので、粛々と見て歩く。確かに、大きさとか細やかさは素晴らしいのだが、今の俺は足湯で勢いの付いた眠気との戦いをしているので、ふらつかないことに注意するだけで見物を楽しみきれない。お土産なんかも見ていくが、割れ物は持って帰れないしふらついて商品を壊すと怖いので近寄れない。雨がやむまで時間を潰したかったが強行突破するしかないようだ。

雲仙レモネードを飲みながら足湯


雨が降りしきる道路を見ながら
足湯に浸かって暖まる

 キャンプ場への道は激しい上り坂でコンクリートの地面に滑り止めの穴があって走りづらい。しかもコンクリートの面自体は落ち葉やコケで滑りやすく、一度止まってしまうとペダルを踏み込むと後輪がドリフトして前に進まない。インナーのローに入れてじっくりと上って白雲の池の畔に出た。予想通り、誰もいない池の畔とキャンプ場である。受付も17時からなので1時間待ちだ。自転車でサイトの中に入っていく。どうせ泊まる人はいないだろうから奥の方の炊事場で雨をしのぎながら過ごす作戦だ。荷物を下ろして荷紐を炊事場の梁に張って中身を乾かす。長いことやってるのと、元々防水を考慮してない部分は弱点として露呈している。まだテントは張らずに竈門の上に荷物を並べておく。
 夕方の17時になったら受付をしにいく。俺以外はバイクで来た人が1人だけだ。雨なのでテントの中からは出て来ない。受付を済ませたら、そのまま歩いて坂を下って温泉に行く。すぐそばに日帰り入浴できる宿があるが、この坂をいちいち自転車で下って上りたくはない。掛け流しの贅沢な温泉と露天風呂を満喫する。今日ぐらい肌寒いと露天風呂が気持ち良い。相変わらず濡れた靴を履くのが気持ち悪いのを我慢してキャンプ場へ戻る。
 炊事場で雨をしのぎながら夕飯を作る。今日も空豆を剥いて塩ゆでする。豆をつまみながら、キノコをオリーブオイルで炒めてめんつゆで味付けする。ニンニクがないせいで、どうしてもうどんのつゆっぽい雰囲気になってしまう。パスタを茹でてゆで汁をフライパンに少し入れて、パスタと和えて胡椒をふって完成だ。食べてみると麺自体もうどん的な味わいなので、パスタと言うよりうどんという雰囲気で、フォークで巻いて食べるより、うどんのようにすすりながら食べたくなる。でも、キノコの味がよく出ていて美味しい。マイタケの香りとナメコの食感が心地よい。
 飯を食い終えたらテントを張る。炊事場1つにキャンパー1人という人数でこんなところに張りに来る人はいないので屋根の下に入れてしまう。濡れない方が撤収は楽だ。自分で炊事場を消灯して眠りについた。

今夜の食材 空豆とマイタケとナメコ
トマトは生でかじる


道の駅そとめで買ったド・ロ神父の
パスタとキノコの和風ソース
(ほぼ、うどん)



   出発(長崎県田平町)から 405.81 km

9日目 雲仙温泉 → 仁田峠 → 島原 26.84 km
2015/05/04 島原 −フェリー→ 熊本
熊本港 → 江津湖 19.87 km
 一応、仁田峠を登る体で目が覚めた。昨日は濃霧のため通行止めだったのだが、予報では天候回復傾向にあるようだが今朝は昨日以上に霧が濃い。こりゃダメかなと思いながら準備をする。霧のせいで荷物は乾いておらずテントも濡れている。荷物を片付けて朝8時過ぎに出発する。温泉街を通り抜けたら上り坂が再び始まった。まだ峠の循環道路に入っていないのだが、まあまあの傾斜で襲いかかる。国立公園のど真ん中にあるゴルフ場に違和感を感じつつも横を通り過ぎる。
 まっすぐ行けば島原へ下り、左に曲がると仁田峠に登る分岐に着いた。仁田峠は開通しているようだ。峠の方へ入っていくと料金所があり、確かに通行止めにはなっていないようだ。天候が回復傾向なので様子見ということで開いている。ゲートの前に自転車を置いてトイレに行きストレッチをしてアタック開始する。濃い霧の中で無の世界を上っていく。無の世界だからか逆に集中できるという面もある。昨日の疲れも全く感じさせずに力強く坂を上っていけているので、少し安心感はある。スタート時点で標高700mで仁田峠が1090mなのでボリュームは十分に読める峠である。道路沿いにキロポストが立っているので進捗も分かりやすい。
 想像以上に順調なペースで上るが、刺激や景色が全く無いのが寂しいところだ。見下ろしたら豪快な谷やツツジ、見上げれば雲仙普賢岳なんかも見えるのだろうけど、全くの無の世界が続く。景色を頭の中に妄想しながら進めていき、展望台に辿り着いた。もちろん何の展望もない。車で来た人と話しながら無の展望台を楽しんでいく。あとは仁田峠までは大きく上るわけでもないだろう。
 続きの道を走ると、右に大きな駐車場が現れた。見えてきたというより突然広がって駐車場になったような感覚である。どうやら仁田峠に辿り着いたようだ。駐車場を少し進むとロープウェイの乗り場へ上がる公園が見えてきたので間違いないだろう。ちょうど良い時間なので昼食にでもしたかったが店らしきものはここに無い。
 霧なので記念写真も撮りづらい。仁田峠と書いた石碑はあるものの公園の少し中なので霧の中では文字と自転車は同時に写真が撮れない。仕方なく自転車をフェンスに固定してカギをかけて、公園を歩いて行く。ミヤマキリシマがちょうど満開で霧の中にぼやけているのが幻想的である。ロープウェイ乗り場で何とか昼飯を見つけた。自動販売機の焼きおにぎりだけだが暖かい昼飯は有り難い。せっかくなのでロープウェイの乗って山頂まで行く。観光客はほぼいないので受注に従って動かしているようだ。無の世界の中をすーっと上っていくロープウェイは何とも不思議な気分である。峠を登っている時以上に霧の中の浮遊感はある。
 山頂の駅に着いたら、数分で辿り着く山頂まで歩いて行く。そんなに花が咲いているわけでもなく展望はもちろんなく見所がほぼ無い。満開のミヤマキリシマ、深い谷、雲仙普賢岳の豪快な岩肌を想像して真っ白な霧に包まれた周りを眺める。そんなに時間がもつわけでもなく駅へと降りてきた。またロープウェイに乗って下っていく。少し霧が晴れたような気がする。
 公園を歩いて行くと満開のミヤマキリシマが見事である。ようやく楽しめる状況になってきた。駐車場に降りてくると、明らかに上ってきた直後と比べて景色が広がった。山の斜面を覆い尽くすミヤマキリシマが見事に見える。先ほどは霧が濃すぎて存在すら気付かなかったが道路の向かいに店があった。おにぎり2個では昼飯としては寂しい物で温泉卵を2個ほおばって、店の小さな子供をあやしつつ暖を取る。
 ミヤマキリシマの写真を撮ったら、仁田峠を下っていく。視界が晴れてきたので安心感がある。ウェットな路面だけは要注意だが見えるか見えないかの差は大きい。出口側のゲートを抜けると、より傾斜が厳しくなってきた。ゆっくり下っているロード乗りと抜きつ抜かれつで慎重に下っていくと池の原園地に辿り着く。ここは峠以上にミヤマキリシマの群生が見事だ。せっかくなので自転車を止めて遊歩道を歩いて見る。先ほどの仁田峠より霧が濃くなってきた。だが、逆に霧の中にぼんやりと浮かぶ紫と赤の花が幻想的でもある。くっきりと晴れた時とは違う様相を見せている。本数と花の数と色が見事で霧の中で映えるほどに力強い。
 何故か今年は一般人によく話しかけられるもので、母親以上の年の人とも話をして、また出発する。何にしても最大の山場を越えている安心感はあるので、夕方のフェリーまでに下るというノルマはあっても気は楽である。

濃い霧の朝…


仁田峠循環道路のゲート


濃い霧に包まれる仁田峠循環道路


やっとたどり着いた霧の仁田峠


仁田峠から頂上へのロープウェイ
霧が濃すぎて無の世界


山頂からの眺め
何も見えない…


降りてきたら霧が晴れてきた仁田峠


仁田峠に群生するミヤマキリシマ


仁田峠に群生するミヤマキリシマ


池の原園地のミヤマキリシマ群生


池の原園地のミヤマキリシマ群生

 仁田峠の入口を越えると下り坂が始まった。ワインディングの具合や傾斜は申し分ない。標高が下がると霧も完全に晴れて、空も晴れてきた。路面も乾いている。峠としては不足が無い。上ってきた俺の労をねぎらうように走りやすい。しかし、ここも長崎県特有の道路構造で直線だけ真ん中にポールが立っている。追い上げてきた車をやり過ごす場所がない。カーブで抜いて貰うのも危険だし、直線ではポールが邪魔だ。ほんとに余計な構造である。仕方なく車と同じペースを維持しながら下っていく。久々にギアもアウターに入れてグイグイ踏み込んでカーブの手前で力強く落としてメリハリのある走りを続ける。
 気楽に流せない坂は緊張感があるもので、展望台で休憩する。レインウェアも脱いで身軽になる。ここまで下ってくると寒かった仁田峠から一変して夏のように暑い。しまっておいたサングラスも取り出してかける。また気合いの下りが始まる。後半にはやっと道路のポールが無くなって快適な下りになってきた。山岳コース的な下り坂が終わっても島原の市街地へ向けて徐々に下っていく走りが楽な道が続く。アップダウンに巻き込まれること無く最後まで下ってくれと願いながら走って行く。島原の市街地に近づいてきたが、まだまだ眼下にある。海沿いにある道の駅へ曲がる選択肢もあったが、今は道の駅に立ち寄るより下り坂だ。道の駅に降りてしまうとアップダウンに巻き込まれそうだ。島原半島は峠だけは制覇できたものの残項目がある場所なので、またいつか来れば良いだろう。
 坂を下りきると島原市街地に着いた。まだまだ明るい時間なので、城と水路の街を見物しにいく。まずは城だが城外には駐輪場は見当たらない。敷地内に入るのは激坂を上るしかないようだ。気合い一発でフルパワーで坂をグイグイ上って駐車場に入る。自転車を置いて城に入ろうと思ったが、よりによって入口でキャラクターショーをやってるので入れない。頼むから動線を少し外したところでやってくれと言いたい。隙を見て城に入っていく。何故か、ここ数年は旅に城は欠かせない。天守閣は高さがあり中の博物館も展示が多くて見所は多い。上まで上り詰めると眉山と有明海と島原市街が見渡せて気持ちが良い。峠での雨や霧とは打って変わってすっきりした空と海が心地よい。

島原城の天守閣


島原城天守閣からの眉山と島原の街

 城から降りてきた裏には北村西望の記念館がある。島原出身で長崎の平和祈念像を作った彫刻家である。平和祈念公園には立ち寄れなかったが像の姿は誰でも知っているので見ていく。自転車を止めていたすぐ近くに雲仙普賢岳災害の展示館があったのでせっかくだし見ていく。雲仙の自然の猛威を感じる。橘湾まで含めた大きな火山帯で自然のスケールの大きさが凄い。
 自転車に戻って武家屋敷街に向けて出発しようとしていると、城の入口でショーをやっていたお姉さん(たぶん年下)がコスチュームのまま話しかけてきた。何故か今年は色んな人に話しかけられる旅で、ここ数年は人影の少ないマニアックなルートばかり走っているので、こういう楽しさも久しぶりな気がする。
 城のすぐ近くの武家屋敷街を自転車で散策する。道の真ん中には雲仙の湧水が流れていて、武家屋敷の塀も雲仙の石で作られている。明るくごつごつした岩でできた塀が独特の雰囲気を出しているし、雲仙の自然と文化が融合している。せっかくなので武家屋敷で寒ざらしを食べていく。すっきりとした湧水で冷やされたシロップと白玉団子が涼しげな雰囲気を出している。シンプルな味だけに美味しい。
 見るべき物は見たので、フェリーターミナルへと向かう。長崎県の旅もいよいよ終了で、この旅も後半ステージに入っていく。楽しくきつかった余韻と続きに向けてのわくわく感を持って港へ向かう。ついでに途中のダイエーで買い物も済ませていく。GWのため熊本に渡るフェリーは混んでいるが待たされるほどでは無い。チケットを買って売店でお土産を買う。試食したチェリー豆、塩豆、ウニ豆がやたら美味いので買って行く。
 待っていると乗船案内の放送が流れた。自転車に戻り車列に並んで待つ。大きなフェリーで2階の車両甲板もあり急な坂を上るのかと不安になる。フェリーのゲートブリッジの上り坂は足下も悪いし車も後ろから来るので緊張感があって好きでは無い。さんざん坂を上らされた長崎県の最後もやはり坂だ。そう思いながら熊本から来た車が降りていくのを待つ。その間、夕暮れに染まる眉山と雲仙の稜線がくっきりと見えて美しい。2階の車両甲板に乗るのは回避されて1階になった。安心しながらゲートブリッジを渡っていく。フェリーのゲートブリッジというのは旅の節目として特別な気分にしてくれる場所である。眉山や雲仙を眺めていると、また長崎県を旅したくなってきた。俺が20年も旅を続けていられるのは、どんなにきつかった場所でも終わってみると 「また来たい」と思う精神構造あってのものだろう。
 フェリーに乗り込んだら、書き切れずにたまっている日記を必死で書く。昔は毎晩書いていたのだが、今はまとめて書くことが多く、洗濯中、フェリー移動、輪行、ホテル宿泊時に限られてしまっている。今回のフェリー移動中の日記執筆は重要である。すっかり日が暮れた有明海を船は進んでいく。デッキで夜風に吹かれながら書いていると、高速フェリーが追い越していく。
 1時間の航路はあっという間で熊本に着いた。車両甲板で走行距離を記録して、車の最後としてゲートブリッジを降りていく。もう気持ちは長崎県から離れて熊本県になっている。今の俺の頭は九州最東端を目指す旅である。熊本新港の暗いフェリーターミナルを出て長い橋を渡って行く。夜風が気持ち良いが車通りも少なく真っ暗である。

島原名物 寒ざらし


島原 武家屋敷


島原 武家屋敷街


夕暮れの雲仙の眺め


船から見る雲仙と島原市街

 しばらくは4車線の広々として真っ直ぐで平らな道が続いていく。ナイトランで雑念がないので距離はグングン進んでいく。途中のコンビニで冷たいお茶を買って、ケータイで情報収集する。風呂もコインランドリーも江津湖の近くである。ていうか風呂と同じ敷地にある。便利で助かる。
 そうと分かれば集中して走るだけだ。しばらく走ると左側のライトの電池が切れた。交差点の歩道で電池を交換する。何だかスムーズに行かないものである。しばらく走ると徐々に江津湖に近づいてきた。夕飯もまだだし途中にあったお弁当のヒライには惹かれるが立ち寄らずに温泉を目指す。
 温泉の駐車場はかなり混んでいる。芋洗い状態だろうか… というか24時間サウナみたいな扱いだったら仮眠室で寝れたりしないのか調べてみるが、どうもダメそうだ。一度ここを通り過ぎて江津湖の公園でテントを張れそうな場所を探す。雨をしのぐ必要が無ければ難なく見つかった。天気予報では今日も明日もすっきり晴れなので大丈夫だろう。一安心したらコインランドリーへ戻る。まずは汚れ物を洗濯するが着替えが出来そうなトイレなどが近くに無い。仕方なく人通りが全く無い夜であるのを良いことに近くの駐車場の物陰でさっさと着替える。汚れ物を洗濯しつつ日記の続きを書く。乾燥まで終えたところで23時。良い時間である。風呂は遅くまで開いてるが飯を食う場所がないので、まず夕飯にする。目を付けていたラーメン屋は既に閉まっていたので、CoCo壱番屋で夕飯にする。旅に来てチェーン店か…と思ったが仕方ない。
 夜も12時を回って風呂に入る。もしかして仮眠室とか良い感じに泊まれるところが無いかな…と期待したが、やはり無い。やや混んでる風呂に入って、公園に向かう。草地にさっさとテントを張って眠りにつく。この時点で夜中の1時半。今日は長い1日だった。


   出発(長崎県田平町)から 452.52 km

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