旅記録

2015 GW 九州
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10日目 熊本 → 美里 → 山都 54.00 km
2015/05/05
 長崎から続いた激しいアップダウンと昨日と一昨日の雲仙 仁田峠越えで体力が削られた上に昨夜は遅かったので疲れはどっぷり残っている。さらに今日からはテンポ良く距離を稼いで高千穂と佐伯まで走って行かないと完走が危ぶまれる行程が続く。疲れに勝てないが出発する。今日も気持ちの良い晴れた空が広がっている。
 昨日の夜に見かけたお弁当のヒライへ寄っていく。熊本にもの凄い軒数ある弁当チェーン店だが、俺が思うに弁当としては日本最強だ。作りたてで種類が豊富で24時間営業でイートインもある。味も美味しい。熊本県を旅したら必ず寄らないといけない飲食店だ。熊本での工場研修の時に寮の近くにあったので、こよなく愛している店だ。やはり美味しい。心にしみる味である。北のセイコマに対して南のヒライと言っても過言では無い。 
 まずは熊本から南に20kmほど平坦な道を進んでいく。眠くなるぐらいに退屈だ。というより退屈だから眠いのでは無く、疲れているから眠いのだ。さすがに自転車で居眠りするほど強くないので何とか真っ直ぐ走っていける。さらに昼になるにつれて日射がきつくなってきた。南に向かって走るとなおさらそれを感じる。途中で2kmほど道を間違えるアクシデントもやらかして、ますます体力を削られていく。向かう道が南から東へと変わっていくところでアップダウンが始まった。
 1本目の短い坂を越えて下ったところで、二俣五橋という石橋があるので脇道へ逸れていく。せっかくなので石橋巡りをしたいのと、橋の影が川に映る姿と橋の姿でハート型になるらしく看板に写真が貼ってある。ちょっとしたネタになるのでは…と期待しながら、ゆっくり流れる清流を見ながら川沿いを走っていくと石橋があった。橋の下の河原では家族連れが川遊びをしている。最近、こういう光景は見かけなくなってきた気がするので微笑ましい。石橋と掛け替えたコンクリートの古い橋がいくつも並んでいる光景は見事だ。橋としての機能美とか造形美を楽しみながら写真に納めていく。

時間帯によってはアーチの影で
ハート型になるらしい


二股五橋
 二俣五橋へ入っていく道の先で国道に再合流する。早速始まったアップダウンを少し走ると道の駅 美里に辿り着いた。時間的には昼飯には少し早いが、この先はあまり無さそうなのでここで昼飯にしていく。温泉も併設されてレストランもある充実の道の駅だ。レストランでは地元の野菜やあか牛の料理が豊富にある。ステーキ丼にしようかと思ったら時間が掛かると言うことなのであか牛と野菜のカレーにする。。カレーに入ってる肉もしっかりした歯ごたえでソテーした野菜が乗っていて美味しい。
 道の駅の水道でペットボトルに水を汲んで午後の走りに出発する。進めば進むほどアップダウンの振幅も傾斜も激しくなっていく。かなりハードなコースでなかなか思うように進まない。正直、ここまでのボリュームとは考えていなかった。そして熱い日差しが俺に降り注いで体力を奪っていく。地図上でのポイントが全く進んでいかない。今日は通潤橋を越えて25km先のキャンプ場まで行って、宮崎と熊本の県境を少し越えたところが目標だったが、たどり着ける気が全くしない。
 途中、石橋の高さとしては日本一の霊台橋に寄っていく。深い谷底まで石を積み上げた形の橋で見事である。アーチ型で無駄なく応力を分散させている姿には機能美を感じる。霊台橋からは道に沿っている川がダムになる。同時に道路も坂を上りダムから離れていく。少し上ったところで産直があったので休憩する。車に自転車を積んでキャンプしにきた60歳ぐらいの人たちと話をしながら休憩する。自転車を持ってきたのは良いが坂がきつすぎて乗れないとぼやいていた。俺もそう思う。ついでに地元の抹茶を使ったアイスも食べていく。冷たさと甘さがありがたい。抹茶の濃い香りも甘さと合う。
 ここから峠らしい峠を1本越えていく。一気に傾斜が厳しい坂が続いて峠へと進む。時々見下ろす景色は深い谷底で谷の向こうには雄大な九州山地の尾根が見えて山が奥へ奥へと連なっている。完全にノーマークの峠に苦戦を強いられる。それでも26HE化した効果でインナーギアを使わないまま走れていくので進捗は決して悪くないように思える。
 思ったより長かった峠を越えて下っていくと通潤橋のある山都に下った。しかし、もう時間は既に17時過ぎになっている。雰囲気は夕方である。目標地点まであと25kmもあって峠越えもある。どう考えても無理だ。観光案内所で情報収集をして打開策を考えるも妙案は浮かばない。通潤橋の周りで泊まれる場所が見つかれば、温泉はあるし何とかなるだろう。だが、途中でメーターをリセットした疑いはあるものの、たったの40kmしか走れていない。危機的な状況だ。
 おそらく日程マージンの1日はこの先でリカバリーできる見込みはないので使い果たすことになるだろう。社会人としての旅は連休明けの仕事始めまでに戻るのが原則なのでマージンを計画上持つことはあるのだが、本当に使い果たしてしまったのは今回が初めてとなった。まずは山都の町中で公園を探してみるが、良い感じの公園はない。水道もトイレもない公園が1個あるのみだった。

あか牛と野菜のカレー


霊台橋



美里町 お茶やさんのあいすくりーむ


ダム湖と九州山地を見渡す

 最後の期待をかけて通潤橋へ行く。大きな道の駅と川と公園と橋がある。雨をしのいだり飯を食ったりするような東屋もある。川の向こうなので人はそうそう来ない。体育館があるので水道もある。蛇口をひねると水がちゃんと出る。トイレは道の駅にある。宿決定だ。そうなるとやる気が出てきた。まずは橋を見に行く。公園をてくてくと歩いていく。ちょうど川の水がぴたっと流れが止まっているので水面に通潤橋のアーチが映り込んでいて見事な景色になっている。橋のすぐそばの山を登ると橋の上に出られる。橋の上には水を流す水路を切り替える昔からの調整場もある。橋の上はフェンスや欄干など一切無い。幅は狭くはないが端を歩くのは怖い。落ちたら確実に死ぬ高さだ。注意書きで「端を歩かない」と書いてあるのは納得だが、今まで一度も事故はないのだろうか。確かにフェンスなんて付いてしまったら風情が全く無い。この時間は放水してくれる人が誰もないので水が流れていない通潤橋になってしまっている。やはり真ん中からどばーっと水を出してこその通潤橋だろう。調べてみると1日1回の放水または予約制で1回1万円で放水らしい。そこまでの準備はしていなかったし1万円は出せない。
 宿の見通しが立ったところで、買い出しをする。雲仙仁田峠を越えたお祝いをする暇も無く、前半戦の中締めもすることなく今に至っている。きちんと前半を閉めて後半を迎えていないのが今日の不調の原因と捉えた。自分を奮い立たせる料理ということを意識すると自ずと答えは出る。ビールを買っていく。ちゃんと飲むべきだ。阿蘇産の豚肉と野菜が美味しそうだ。焼いて豚丼にしたら美味そうだ。醤油やみりんはあるので作れる。テンションの上がる夕飯になりそうだ。
 祭りで使う枝や葉で作った像がいっぱい展示してあったので見ていく。かなり大きくてディテールもきっちり作られている。クオリティが高い。再び通潤橋へと行き、公園の隅にテントを張る。荷物をテントに放り込む。自転車はポールにカギをかけて止めておく。風呂セットと着替えを持って歩いて温泉まで行く。もの凄い坂の上にありそうなのだが、いちいち自転車で行くのも面倒だ。すっかり日が暮れた通潤橋はライトアップされている。その様子を横目に坂道を歩いて行く。自転車で来なくて正解だったと心から思える坂を上って温泉に着いた。温泉で汚れと疲れを落として、またテントへ戻る。もう完全に真っ暗である。持ってきておいたライトで地面を照らしながら歩いて行く。
 テントに戻ったら夕飯を作る。水場は少し遠いがコッフェルに米を入れて研ぎに行く。まずは米を炊く。その間にキヌサヤの筋を取って豚肉の筋を包丁で切る。ご飯が炊けたら豚肉とナスとタマネギを炒める。地元の水で作った豆腐をトビウオ節と醤油で食べる。既にビールは開幕している。熊本を含む九州の長なすは日本屈指の美味さである。調理法も味付けもシンプルに済ませて野菜はご飯にのせておいて肉を残したままソースを作る。醤油とみりんとビールだけだ。シンプルが一番だ。がっつりした豚丼とビールで気分的には元気を取り戻した。1日遅らせると決断すると明日の行動も少し余裕と夢がわいてくる。夕飯と俺の決断、そして1日遅れの仁田峠・前半戦の中締め、昨夜決まった長崎の軍艦島を含む世界遺産の認定を一人で祝い労い満足の夜である。

川面に映る通潤橋


橋の端は危険


放水口から下をのぞく


八朔(はっさく)祭り 大造り物






冷や奴と飛び雪


阿蘇産豚の豚丼



   出発(長崎県田平町)から 506.52 km

11日目 山都 → 高千穂 44.17 km
2015/05/06
 気分良く目覚めて出発する。山都の街を出る前にヤマザキデイリーでパンを食べていく。朝から比較的調子は良いが、まだまだ上り坂は続いていく。県境までは上り坂だろうと推測している。九州の背骨を越える旅なので仕方が無いだろう。山都を過ぎると車通りはますます少なくなってくる。人通りも少ない山道をじっくりと上っていく。とにかく早めに高千穂まで行って観光に時間を費やしたいところである。ただ、昨日は通潤橋で切り上げたのが正解だったと心から思えるほどに道のりは険しく長い。
 道の駅 清和にたどり着いて休憩していく。神楽もやっている道の駅には、まだ少し連休の賑わいがあるが、今日が世間のGW最終日なので活気も落ち着き方向にあるのが分かる。まだまだ坂を上り峠を1本越えると分水嶺と書かれていた。おそらくこの峠を境にして西の有明海に流れる川と東の日向灘に流れる川が分かれる峠だろう。ようやく登り切ったか!?と期待しつつ峠を下る。
 下りきったところにある待ちに九州のへそとっかあれたモニュメントが建っていた。熊本から続いた70kmの上り坂はここで終わったのだろうか。期待はさせるが地図を見る限りではもう1本ある。九州最西端、最東端を制覇しようとしている旅で九州の中心という通過点は重要な意味を持つ。だが、これだけ走ってもまだ半分!?という気持ちもあり、もう少し早くへそがあっても良かったのでは無いかとも思ってしまう。
 ここを越えたら予想通り坂は上り始める。まだまだ終わっていないようだ。昨日のうちにここより先のキャンプ場を目指していたと思うと無謀だ。とても走りきれるボリュームでは無い。まだまだ厳しい坂を必死にこぎながら上る。深い谷にかかる橋からは遠くに阿蘇山が見渡せる。逆側は九州山地の山が連なっている。隠れた絶景がそこにある。そして宮崎県に突入した。きつい思い出が多くなってしまった熊本県だが、何だかんだでこの石橋から始まり九州山地を徐々に上るルートは見所は多かったと思う。感謝しながら橋の上からの絶景を楽しんで宮崎県に入る。
 宮崎県に入るとすぐに産直があった。ここで食事もできるようなので立ち寄っていく。メニューとしては地物のそばが美味しそうだ。ヤマメの甘露煮も付ける。山の中なので山の幸を楽しんでいく。薄味のつゆにそばの味と香りが楽しい。骨まで柔らかい甘露煮も美味しい。ここから少し下って五ヶ瀬の街に入って、再び上る。今度こそ最後の上り坂だろうと期待しながら登り、長いトンネルを抜けて道路は下りに入った。今度こそ終わりだろう。もう熊本から80kmずっと登り基調で走っている。
 ここから高千穂まで豪快な下り坂が続いていく。今までの上り坂を労うように傾斜もカーブも鋭い。GWも終わりかけで交通量が少なくなってきたので、思い切った走りで下っていく。26HE化したことによる低重心を楽しみ久々に60km/hを越えて後ろから追いついてくる車も居ない。傾斜が落ち着いたところで深い谷の上を渡る橋になり、渡りきると道の駅 高千穂に着いた。

蘇陽 九州のへそ


熊本-宮崎県境の谷からの阿蘇


宮崎県五ヶ瀬の蕎麦と
ヤマメの甘露煮


後半戦ピーク 津花峠トンネル

 ひとまずはここで情報収集だ。今夜は雨が降るようだし、俺も疲れがたまってきているので気持ち的にはホテルでの一泊が決まっている。ケータイで探したらすぐに見つかった。立地だけ調べたら予約をさっさと入れる。迷っている暇は無い。そして雨が降ってきた。これから高千穂峡を観光しようと思っていたのに出鼻をくじかれる。
 レインウェアを着て高千穂峡へと向かっていく。予想通りだが深い谷底へ厳しい坂を下っていく。へたにスピードを上げてしまったら制御不能になって谷底に突っ込みそうだ。注意しながらウェットの路面を下っていく。きつそうな坂で慎重に下るが、同じ坂を帰りに上ることもしっかり頭にすり込まれていく。後で上る坂を下るときほど空しい気分は無い。しかも割り切って攻めて楽しめるコンディションなら良いのだが、コントロールするのが精一杯の雨とウェット路面。やりきれないものがあるが、下れば下るほど谷を囲む山肌は神秘を感じるような景色になっていく。
 谷底まで降りると左に滝があるが眺める余裕は無い。池と駐車場があったので自転車を置いて鍵をかけていく。歩いて偵察しながらボート乗り場の受付へ向かってみる。上の道の駅では3時間待ちと書かれていたが果たして乗れるだろうか。…というかもう1つの心配事は1人乗りの浮いてる客を受け付けてくれるのだろうかというのもある。駐車場の奥の受付所に行くと1時間半待ちで乗れそうだ。雨のおかげで客が減ったようだ。受付を済ませて番号札を受け取る。
 1時間半待ちの間に歩き回りたい。まずは淡水魚水族館へ行く。小さい水族館だがチョウザメやウーパールーパーが飼育されている。宮崎キャビアということでチョウザメの卵が売られているようだ。高千穂のきれいな水で育てられている。少しビジネス感がある水族館だが楽しんでいく。続いて高千穂峡をトレッキングする。あと1時間でボートの時間だが歩く範囲を選べば帰って来れるだろう。足だけは強いサイクリストの見せ場だ。さくさくと歩いて柱状節理の迫力がある高千穂峡を見ていく。上からボートで行ける範囲も見えてしまった。そんなに長距離をいけるわけではないようだ。歩いて行く方が遙かに奥まで行けるし、谷から上の崖の眺めも楽しい。苔むした岩と下を流れるゆっくりとした清流に自然の大きさを感じる。まあまあ良いところまで歩いて引き返してくる。歩きはまだまだ快調だ。

谷底の滝


歩きながら見下ろす高千穂峡


見上げる岩も迫力がある

 駐車場まで戻ってきたところで、まだ20分ほど時間はある。少し座って休憩する。10分前になったらボート乗り場へ行く。一人で乗る客は当然俺しか居ない。20人ぐらいがボートを待って次々と出て行く。俺もボートの経験はあまりなく、釧路でカナディアンカヌーに乗ったぐらいだが、ガイドさんの操縦によってボートは動いてるだけで俺は気が向いたときに漕いでいただけだ。しかも漕ぐ方向は前を見ながら片方ずつだ。全然勝手が違う。見ていると全く進まない状態の女の人やら進む方向が決まらない人もいて混乱している。
 そして俺の番が来た。体力だけはほかの人より有り余ってるので力強い動きは出来る。方向もちゃんと決まる。まあまあ悪くないライディングだ。景色よりボートの操縦を楽しんでしまっている。アクセル、ブレーキ、ステアリングを駆使しながら慣れない乗り物を楽しむように漕ぐ。しかし、それは谷に入る前の広いエリアだけだ。一番の見所である滝壺の近くに来ると幅が狭い中にボートが密集している。谷の上を歩いてる時から谷底の悲鳴は聞こえていたが、当たらないように漕ぐのはほぼ不可能だ。俺もぶつかりまくるし、ぶつかってくる船も居る。岩の方に寄せて落ち着いたところで、やっと滝を見れる。しかし、そうこうしてるうちに船がぶつかってくる。奥の折り返し地点に進むのは困難だ。というか後ろ向きに進むボートをコントロールするのは難しい。帰り側はもっとひどい状況に追い込まれる。ぶつかってぶつかって滝壺に押し込まれる。俺のボートに滝が降り注ぐ。ここまで来るとギャグだ。周りのボートの笑いも誘いながら通り抜けていく。まあ、これはこれで楽しい旅の醍醐味だろう。一人のボートを意外と楽しんで戻ってくる。広いところに出れば船のコントロールは楽な物だ。力強く船着き場に近づけて片手で器用に漕いで岸壁に寄せる。上手な縦列駐車でも決めたようにぴたっと止める。

高千穂峡を象徴する滝
川から見るのが一番だ。


光が差し込む滝が神秘的
この混雑してるボートの中を
通り抜けるのが困難

 何だかんだで楽しんだボートのあとで自転車に戻る。ここでトラブル発生だ。どう見てもグローブが片方見つからない。周りを見回しても見つからない。諦めて予備のグローブを出す。今回の旅は手違いもあって捨てようとしてたヨレヨレのグローブと併せて3枚も持っていた。よりによって一番新しくて手にフィットしているボントレガーのグローブが無くなったのは痛い。そろそろ出発しようと思ったら車で旅してる大学生の集団だ話しかけてきた。こういうノリの旅人同士の会話は久しぶりだ。
 歩いて駐車場に向かっていく大学生を追い越して見送られながら坂を上っていく。きつい坂だが意外と元気に進んでいく。夕方でボートの営業も終わったので上ってくる車も下って来る車もほとんど居ない。夕暮れで少しずつ暗くなっている。雨が降っていたので雲が崖のあたりにたなびいている。坂の途中で見た谷の光景は正に神話の里で、昔の人が神の存在を感じたのが十分に理解できる景色が広がっている。どこまでも続く深い谷とたなびく雲… これこそ高千穂だろう。
 高千穂の谷を楽しんで登り切ると、高千穂神社に立ち寄っていく。大きな老木が生い茂っていて日が暮れて明かりがついているのがまた神秘的で厳かである。少し特別な風情を感じる神社を楽しんでいく。これが神話の里ということだろう。
 すっかり暗くなった高千穂の街はGW最終日ということもあって客はほとんど居なくて店も開いていない。街を抜けてホテルへ向かう。ホテルまでは坂を上る。どこまでも上り坂に苦しめられる旅だ。坂を上りきって国道にぶつかると、国道沿いにホテルを見つけた。1Fがファミマで2Fから上がホテルという便利すぎる立地ときれいな建物に満足だ。

夕暮れで人影も少ない高千穂峡
たなびく雲が神秘


高千穂神社
日暮れのあとの厳かな雰囲気

 チェックインを済ませたところで作戦に気づいた。計画では明日の延岡か明後日の佐伯で洗濯をしようと思っていたが、このホテルで洗濯すれば旅の間に洗濯する必要が無くなる。しかも、残りのコースをすべてレーパンで走れる。シャワーを浴びて、コインランドリーに汚れ物を突っ込んで洗濯機を回す。夕飯は高千穂の街に出ようかとも思ったが、さっきの雰囲気からすると店はほとんど開いてなさそうだ。ホテルのレストランもなかなか美味しそうだし、ホテルで夕飯を済ますのもありだろう。
 ホテル内のレストランに入り、高千穂牛のステーキとビールを注文する。サラダバーなので野菜は食べ放題になっている。何せ旅が野菜不足感満載なので、サラダを楽しむ。しかも地物の野菜が新鮮で美味しい。サラダだけでビールを飲んでいるとステーキが来た。あっという間にビールをおかわりする。柔らかくも肉のうまみと歯ごたえがあって本当に美味しいステーキだ。高千穂は九州の中では標高が高く寒暖の差もあり空気も水もきれいだから、何でも美味しくなるのだろう。高千穂の大地の味を満喫した。

高千穂牛のステーキ

 洗濯物を乾かしてる間に日記を書き進める。何せ16日のロングランなので洗濯の間にしっかり書いておかないと、帰りの電車では書き切れないまま宇都宮に着いてしまう。書かされている日記に追い込まれている自分が妙なものである。ちなみにこのHPの文章を書くのに旅の間に書いた日記は参照していない。すべて記憶にだけ頼って書いているのだ。乾燥が終わって洗濯物を片付けてテレビを見たら眠りについた。


   出発(長崎県田平町)から 550.69 km

12日目 高千穂 → 延岡 56.30 km
2015/05/07
 もうGWを終えて普通の日という雰囲気になってきた。朝になっても天気は冴えないが雨は降っていない。ホテルの朝食へ行く。バイキングだが、昨日の夜も美味しかったので楽しみで仕方ない。朝食のクオリティもまた高い。地元の新鮮な野菜や郷土料理と地元の米。しっかりと歯ごたえがあって甘みを感じる米だ。高千穂野自然のすばらしさを朝食に感じる。宮崎らしくマンゴージュースなども飲み放題でバイキングにはもったいないほどのクオリティだ。
 すっかり満足して元気をもらったホテル泊で出発する。まずはホテルの向かいの運動公園でペットボトルに水をくんでから旧高千穂駅へ立ち寄る。すでに廃線になっているが終点とあって風情があって大きな駅だ。レールの上をエンジン付きのレールカートで巡れるツアーがあるのだが、なぜか乗らないで見送ってしまった。後になって考えてみれば乗っておくべきだった。出発ぎりぎり時間だったので判断に迷いが生じてしまった。
 駅を後にして出ようとしたら、駅前で「レールカートの乗り場はどこですか?」と聞かれたので「そこです 次は11時20分です」と無駄に親切に案内した。市街地を抜けて坂を上って、くしふる神社に寄っていく。疲労の隠せない俺にはげんなりする石段が続くが上っていく。ちょうど地元ガイドに連れられてる老夫婦もいたので、どさくさに紛れてガイドを聞いていく。天孫降臨の地と言われてる神社の白木で作られた社には風情がある。小さいながらも自然に囲まれた神社には威厳を感じる。石段の途中にある土俵は泣き相撲で有名だ。
 くしふる神社から坂を上ってトンネルを抜けると、また景色が一変して里山と谷が続くのどかで険しい道になる。川沿いに延岡に下るだけだと思っていたら、谷の上をアップダウンしながら進んでいくようだ。もうさすがに疲れてきたので下りに集中させて欲しい。そこに追い打ちをかけるように雨が降ってきた。レインウェアを着ないとしのげないほどの大粒である。いろんな物に振り回される自然の厳しさと山と谷の風景とその恵みで農業を営む景色… 非日常の景色は雨の方がかえってはえるのだろうか。
 しばらく走ると雨はやんだ。しかし相変わらずアップダウンは続いていく。谷にかかる橋と深い谷を見ながら進んでいくと、道の駅にたどり着いた。ここで昼食にしていく。アップダウンがあるとはいえ、下り基調なので体力の消耗は今日は少ない。道の駅の売店の2Fにある食事処で昼食にする。宮崎と言えばなんと言ってもチキン南蛮だろう。メニューの中で光り輝いていたので注文する。さくっと揚がった鶏肉と甘酢にタルタルソース。力強い味付けだが鶏肉のうまみが負けずに調和する。これが醍醐味だろう。窓から見える橋と谷の景色と飯のうまさを楽しんでいく。

旧高千穂駅


天孫降臨の地 くしふる神社


深い谷が続く高千穂


豪快な谷と橋が印象的


橋の上から見下ろす眺めは迫力

 

深い谷にかかる大きな橋


宮崎の郷土料理 チキン南蛮

 昼飯のときに忘れていきそうになったタオルを届けてもらって、出発する。どうもここ最近は忘れ物が多いような気がするので旅の中では注意が必要だ。谷をかける橋を越えてトンネルを抜けると道は徐々に下り始めてきた。ようやくアップダウン地獄も終わろうとしているようだ。谷の上の道は谷底へ徐々に下がっていく。そして川の流れも徐々に海へと下がっていく。スピードが出すぎるわけでもなく気持ちよく漕いで進んでいける。
 途中の産直に立ち寄って夕飯の食材を物色するが惹かれるものはなく、店の表でストレッチだけをしていく。凝り固まっている体を伸ばすだけで疲労は回復する。これで道は下りだし勢いづく一方だ。川沿いを気持ちよく延岡市街地へと下っていく。そして完全に市街地へと入った。過去に来たことはあるので雰囲気は思い出せる。まだ明るい時間帯で余裕を持って延岡に到着した。スーパーも銭湯も途中で見つけた。たぶん前に泊まった時に使った店である。
 延岡駅で情報収集し、寝床の候補の後援を何カ所か覚える。おやつとしてKIOSKでチーズまんじゅうを買ってコーヒーを飲みながら食べる。宮崎で食べたさくっとしてる物とは違ってしっとりしている。場所によって味わいも食感も違うのがおもしろい。駅を出たら公園の候補地を回る。おそらく前に泊まったのと同じところに最初にたどり着く。東屋もあるし水道もトイレもある。草地で柔らかい。決定だ。スーパーで夕飯の食材を買っていく。UFOという何だかふざけた名前で、広い駐車場に入ると頭の中にはピンクレディーのUFOのイントロが流れ出す。頭の後ろでUFOと言いながら手を突き上げたくなる衝動を抑えて店内に入る。店の名前はあれだが、魚の充実度はすばらしい。今日は地物の天然ぶりがそろっている。ぶりの身は刺身と茶漬けにして、あら汁も作れそうだ。あらを使った塩味のぶり大根なんていうのもおもしろい。
 夕飯が決まったところで、銭湯に行って入浴も済ませる。番台のおばさんと話が盛り上がり、この先の佐伯までの道の厳しさも聞いた。前にも佐伯〜延岡は逆から走っているが蒲江の海の方から来た。距離もあったしアップダウンも激しかったが、今回は峠越え1つで山を抜けていく。地元では厳しい峠という扱いのようだ。
 公園でテントを張って夕飯にする。たまに公園を人が通り抜けていくが特に気にしない。まずはご飯を炊きながら、ぶりの身を切って刺身を作る。これを醤油と酒に漬け込む。続いて、塩味のぶり大根に向けて大根を切って面取りして隠し包丁を入れる。ご飯が炊けて蒸らしてる間に、お湯を沸かそうとしたら何とここで痛恨のガス欠だ。もう自炊は明日の夜を残すのみ。ここでガス1本購入というのは痛い。歩いてコンビニに行ってガスを1本買って来る。無駄に元気な火力を見ながらお湯を沸かすとあっという間に沸く。大根を茹でて火を通す。そこにブリのあらを入れる。あらという割には身も結構ついてる。しばらく煮ると良い出汁が出てきた。平戸で買ってきた塩で味を付ける。少しだけ醤油で色を付ける。潮汁のシンプルさでブリ大根が出来た。ここでブリ茶漬けをご飯にかけて、わさびを添えて白髪ネギを添える。醤油とゴマとブリがよく合う。熱々のご飯がより美味しくなる。ブリ大根もブリのあらは味が美味しい。しかし、大根には味があまり染みていない。火を止めてしばらく置いても染みこまない。チャレンジングなレシピだったが、ブリ大根は醤油で煮付けるべきであった。
 まだ存分に余ってるガスをどうするか悩みつつ片付ける。とにかく明日はガスを消費する料理に徹するしか無いだろう。片付けたところで眠りにつく。

天然ブリの切り身を刺身に


醤油と酒とゴマで和えたブリ


シンプルな潮汁でブリ大根


塩とコショウだけで味付け



   出発(長崎県田平町)から 606.99 km

13日目 延岡 → 宗太郎 → 弥生 → 佐伯 → 弥生 84.07 km
2015/05/08
 いよいよ残り2日でマージン無しの距離勝負の走りが続く。昨日のような下り坂では無く宗太郎峠を越えて佐伯まで80km近く走る。幹線道路とは言え立派に峠越えだ。気合いは入る。朝から公園の草刈りの音が聞こえる。寝ていちゃまずいかと思ったが、まだ朝の7時だ。邪魔にはなってなさそうなので、気にせず片付ける。8時過ぎには公園を撤収して駅に向かう。延岡駅の中にあるうどん屋さんで朝飯にうどんを食べていく。九州らしいゴボウ天うどんと丸天を食べていく。どちらも揚げたてなので美味しいし、うどんは九州らしく柔らかい。
 幹線国道である国道10号線をひたすら南下する道を走る。交通量は幹線国道にしては少ないが車道の横は狭いので走りにくい。すぐ隣を走る日豊本線の右や左をまたがる陸橋を何度か越えながら走る。10kmほど走ると上り坂が出てきた。少し上ると、道の駅 北川はゆま にたどり着いた。ここで休憩しながら情報収集をしていく。だが情報らしい情報は何も得られない。この国道10号線沿いには何も無いのだろうか。期間限定の日向夏ソフトクリームを食べていく。少しシャーベット状で甘酸っぱく爽やかだ。熱くなった体を冷まして、また出発する。
 道の駅を過ぎると、いよいよ道沿いには何もなくなってきた。道は徐々に上っていく。晴れた日差しにあぶられて熱されながら走って行く。道は広いし車も少なく走りやすい峠を順調に登っていく。頂上が近いと思われる宗太郎駅の前を通り過ぎるのもあっという間だった。そろそろだろうと思い続けながら上っていたが、なかなか傾斜は終わらない。道のすぐ横に川が流れているが、走っている方向は川の流れに逆らっている。どこかで川がなくなって川の流れが道に沿うのかと思うのだが、なかなかそうはならない。
 そして宮崎県を後にして大分県に突入した。まだ30km近くあるのにもう今日の目的地である佐伯市だ。明日の鶴御崎も佐伯市なので、もう最後の市町村になる。市町村合併で広い市町村が出来てしまうとゴールが遠くても、ゴールの境界を越えるので感動が薄まってしまう。佐伯市の入口を示す看板には鶴御崎の写真も載っているのでゴールに向かう気持ちが高まっていく。
 県境を越えたら、そこが峠か近いはずなのだが、まだまだ上り坂は続く。そろそろだろうと思い始めたところからの上り坂が長い。いつまでも続く坂と日照りにやられる。ペットボトルの水もどんどん消費していく。山深い道はますます山深くなっていき、車も少ない。道沿いには昼飯を食べる店どころか自販機の1つもない。これでも国道10号線だ。もうへとへとになってきた時に、駅前に到着した。ようやく自販機があった。水道でも無いかと思ったら水道はなく水は補充できない。500mlのお茶を買っていく。

延岡駅 ゴボウ天うどん


美味しい丸天


道の駅はゆま 日向夏ソフト


最後の県境 大分県へ

 ここでやっと峠を越えた。思ったよりずっと南に頂上があって苦戦した形となった。それでも、もう佐伯までは下りだけだろう。気は楽になった。腹は減っているが、気持ちよくワインディングを下っていく。坂の途中の産直に立ち寄っていく。やっと待望の昼飯か!と期待して見ると食事は売っていた。ただ、ほとんど売り切れていてパンだけが残っていた。2つほど買って店の表のデッキで食べる。頭の上にツバメの巣があってビュンビュン飛んで来る。カブトムシを模ったパンが意外と美味しい。パンだけだと足りないのと、美味しそうだったのでにんじんペーストが入ってるソフトクリームも食べる。クリームに少し練り込んであり、にんじんジャムもトッピングしてある。これがニンジンの香りがして美味しい。先ほどのカブトムシパンで気付いたが、佐伯市のこのエリアも昆虫の里と呼ばれている。出発地の田平も昆虫の里と言っていたので出発地と到着地の両方の共通点に感動すら覚える。

産直のニンジンソフト


昆虫の里


カブトムシパン
チョコ味でかりっとしている

 続きの道を気持ちよく下っていく。多少の登り返しはあったもののアップダウンは少なく下り基調で進んで、道の駅やよいにたどり着いた。ここで夕飯の材料を買っていく。取りたてっぽいニンニクが美味しそうだ。トマトも買っていく。これでパスタを作れば美味しいだろう。魚介の具は佐伯市街地のスーパーで手に入るだろう。ガスの消費のためにショウガ茶を買っていく。明日は佐伯市街地の向こうに行くので、風呂付きの道の駅とすぐ近くの公園で宿というプランも無いことは無いがスルーをしていくしかないだろう。道の駅内にある淡水水族館を楽しんだら、出発する。
 ここからは下り基調の道を6kmほど進む。市街地を抜けた先にある佐伯駅に到着した。ここで寝床の公園候補をチェックする。ケータイで探したスーパー銭湯もあるので、そこに向かいつつ寝床を見ていく。佐伯から四国に渡るフェリーターミナル付近の公園を見たが雨はしのげそうも無い。今日は雨が降るらしいので、屋根付きの場所を探したい。フェリーターミナルは、かなりボロボロな感じで四国へ渡る人もプロかマニアだけだろう。
 自衛隊基地の隣にある公園で東屋を見つけた。水道もトイレもある。ここで決定だろう。安心したところでスーパーを目指す。スーパー銭湯と近いので便利だ。市街地から遠いがショッピングセンターがあったりで栄えているエリアがある。寝床も確定してるし、スーパーで魚を買っていく。今日はコウイカとタコを買う。さっきのニンニクと合わせて、パスタを作るのが良さそうだ。あと、オリーブオイルでニンニクを煮込んでイカとタコを入れてアヒージョを作るアイデアも浮かんだ。今日の夕飯は決定した。
 買い物袋をぶら下げてスーパー銭湯に行ってみたら、無い。どう見ても無い。改めて調べてみると、どうもつぶれたらしい。ケータイのナビはネットで最新情報が集まるはずなのに、何でこんなに使えないんだろう。何度もケータイのナビに騙されて頭にきている。風呂はさっきの道の駅に戻る以外にはなさそうだ。
 ここから怒りのペダリングで真っ暗な道を逆方向へ戻っていく。上り坂を徐々に上っていくと、あっという間に道の駅に着いた。風呂はまだ営業している。まずは裏の運動公園で寝床を探す。狙い目は野球場だが、ここはスタンド付きの立派な球場なので野宿には向かない。だが、屋根がしっかりして一段高くて浸水しない東屋があったので宿は決定だ。風呂に入ってさっぱりする。入口にラーメンの屋台があって空腹の俺は惹かれるが今日は意地でも自炊してガスを使い果たさないとならないので我慢する。
 運動公園の東屋の下のテーブルで夕飯を作る。まずはコウイカをさばく。まずは甲羅を取って皮をはがす。げそをつかんで引っ張る。俺のイメージはイカスミパスタだ。しかし墨袋を上手く取り出せない。水道で流しながら取り出そうとしたが、痛恨でつぶれた。2匹あるので2匹目でもトライしたが結果は同じだ。イカスミパスタは難しい。ただ、小さい墨袋なのに水は真っ黒になるほどイカスミは強烈だ。まあタコとイカのトマトソースでも良いだろう。身を切ってゲソを切って準備をする。フライパンでパスタソースを作り始める。ニンニクを刻んでオリーブオイルで揚げて香りを出す。そこにフレッシュトマトを刻んで入れて煮詰める。堅くならない程度の茹で具合を狙ってイカとゲソを入れる。さらに強火でパスタを茹でる。麺は長崎で買ってきたド・ロ神父のパスタだ。麺をゆであげたところでソースと和える。これでコウイカのトマトソースは完成だ。雲仙で食べたときは稲庭うどんみたいな食感になったが、オリーブオイルとニンニクの香りがつくと純然たるパスタだ。イカの味が美味しくパスタとよく合う。新鮮な魚貝で作るパスタは美味しい。
 続いてコッフェルの蓋にオリーブオイルと塩を入れてニンニクを薄皮を残して揚げる。薄皮を残すという選択がよかった。ニンニク本体が焦げることなく香りを出してほっくりと揚がる。そこにイカとタコを入れて食べると、オリーブオイルやニンニクの香りがついて魚介のぷりっとした食感と味が美味しい。まともにアヒージョを食べたことは少ないがイメージ通りの物が出来た。これは本当に美味しい。ニンニク2玉分を平らげて元気が出そうだ。最後に余ったガスでお湯を沸かし続けて使い果たす。12時過ぎにガスが使い果たせて晩餐は終わった。
 荷物は自転車に付けたままでテントだけを張る。シンプルにまとめてさくっと撤収して出発したいのだ。泣いても笑っても明日は最終日で完走するしかない。ごつごつした石が痛い地面だが、我慢して眠りにつく。

佐伯産のニンニク


コウイカのトマトソース
長崎外海のド・ロ神父のパスタ


コウイカとタコのアヒージョ



   出発(長崎県田平町)から 691.06 km

14日目 弥生 → 鶴御崎 → 佐伯 77.72 km
2015/05/09
佐伯 -特急にちりん→ 大分 -特急ソニック→ 別府 
 昨日の就寝は遅くなってしまったが、体の疲れは見えない。しかし、朝からしっかりと雨が降り注いでいる。今年のGWは全体的に雨率が高い。最終日の雨というのは本当に面倒なものだ。片付けて、コンビニで朝飯を食べて出発する。大粒の雨に打たれながら鶴御崎を目指していく。1往復半も昨日と同じ道を走り抜いて佐伯市街地を抜けていく。
 鶴御崎に行く半島海沿いの道は地形に合わせてカーブしまくっている。しかし、道はずっと平らである。去年のGW行った四国最東端 かもだ岬のように、もっと激しく壮絶なアップダウンを想像していたが、正直助かる。まだまだ降り続く雨の中を順調に東へ進んでいく。

最終日のスタートは雨…

 鶴見の集落にあった産直で休憩していく。GWを過ぎているからか産直の品揃えはイマイチだ。このルートは助かることに厳しそうな岬はすべてトンネルで打ち抜いてくれているので道自体は平地で行ける。カーブは多いが車も少なくて道も広くて走りやすい海沿いを行く。
 進めば進むほど左の対岸に見える物が何もなくなってくる。雨が降っていて何も見る気が起きないから雑念もなく集中力のある走りが続く。鶴御崎の先端は山になっているが、登り口についた。ここで休憩していく。この近くに海事博物館があるはずなのだが、見当たらない。そのままスルーして坂を上る。もう残りの距離は少ないのでインナーギアを遠慮無く使って確実に上っていく。
 上り坂の途中の展望台で海峡を見下ろす。霧が出ていてよくは見えないが対岸の島との間の海峡は海の流れが速いのが分かる。変化に富んだ地形を楽しみながら進んでいく。1つめの山を越えて、一度下ってまた上る。海事博物館はこの下ったところから、さらに海まで下ったところにあるのだが、無駄に下って上るのも嫌なのでスルーだ。ここからの坂道が長い。海は見えるが、ほぼ山岳コースという感じの道が続く。山から出てきた大きなミミズが不気味だ。上れば上るほど霧が濃くなってくる。本来は四国まで見渡せるような絶景のはずだが、当然何も見えない。
 残りは短いのでじっくりと上っていると、霧の中に料金所の跡地のようなゲートが見えてきた。ようやく九州最東端の公園に入る。しかし、まだまだ園内の道は続くし上る。一度、山を登り切って岬へと下る。また上るという事実をかみしめながら下っていく。霧も濃いし人もいないし無の世界だ。坂を下りきったところに駐車場がある。おそらく車で来れる限界はここだろう。まだ灯台に向かう遊歩道は自転車で行けそうだ。ただ、押していかないと進まないほどの傾斜だ。インナーにギアを入れ直して気合い一発で上っていく。もうここまで来ればラストスパートだ。土砂降りの雨は相変わらずで水が流れてきている。山からミミズも何匹か出てきている。
 坂を上りきると、鶴御崎灯台にたどり着いた。ここが自転車で行ける限界のようだ。自転車を灯台の前に置いて、歩いて行く。木道を抜けるとシングルトラックになってきた。足下が滑らないように慎重に岬へ下っていく。そして、坂を下りきると広場に出た。広場の真ん中に「九州最東端 鶴御崎」と書かれたシンプルなポールが現れた。途中でフェリーは使った物の、この瞬間に九州横断を達成した。感動が胸を突き上げる。
 大きな目標を決めた旅といえば、今まででもそんなに回数は無い。日本縦断、渋峠、乗鞍の3回ぐらいだろう。今回は最西端から最東端という大きく決めた目標を達成する喜びを得た。いろんな場面で通用するような大きな自信を得た。

鶴御崎灯台


九州最東端 鶴御崎に到達!!



鶴御崎から眺める四国
(何も見えない…)

 喜びをかみしめながら灯台に戻ってきた。コンビニで買っておいたランチパックを1つ食べて、戻っていく。佐伯の観光案内所に行けば九州最東端到達証明書を入手できるとのことなので少し急ぐ。灯台から駐車場に下ると大阪から来た老夫婦とすれ違い、少し話す。なかなか人と会わないような辺鄙な岬の上に雨なので珍しい。相変わらずの霧の中を岬から公園のゲートに向かって上っていく。そんなに厳しい傾斜でもないように感じてさくさくと上っていく。自信を得ると調子は上がる。
 ゲートのあたりで先ほどの老夫婦に車で追い越された。ゲートからは急な下り坂が続いていく。上ってきたので具合は知ってるから慎重に下っていく。行きに立ち寄った海峡の展望台は帰りには霧が少し晴れて見やすくなっていたので立ち寄っていく。

元の間(もとのま)海峡

 これを下ってしまえば、あとは平地だけなので気楽である。途中で休憩して今夜の宿を探す。佐伯で探すと楽天トラベルだと見つからない。ホテル自体がそんなに無いのだろうか。昨日の風呂といい思い通りにいかないものだ。仕方なく別府で探す。特急で1時間ぐらいなので輪行すれば行ける。別府だと駅から歩いて行ける範囲にホテルが取れそうだ。さっさと予約を入れてしまう。
 1つ用事をこなしたところで安心してペースを上げて帰って行く。もう雨もやんでいる。行きに立ち寄った産直にもあっという間にたどり着いた。ランチパック1個しか食べてないので昼飯になりそうな物とかつまめる物が無いかと探したら全く無い。すぐにスルーして市街地へと向かう。途中で空が晴れて日が差してきた。ぬれた地面に日光が反射してまぶしいほどだ。レインウェアを脱いで走る。路面も乾いてきた。快適そのものの走りが始まった。
 見覚えのある市街地に戻ってきた。駅までの距離を徐々に詰めていく。3kmほど残ってる状態で16時。17時まではいくら何でも観光案内所は開いているだろうから間に合うだろう。何度か信号に引っかかってストップ&ゴーが続いた。
 そして、16時30分に佐伯駅へ到着した。今年も全行程の完走を果たした。距離は777kmしか走っていなくても16連休という苦戦ぶりだったが、大きな目標を達成するために走れた良い旅となった。すぐに観光案内所に駆け込んで九州最東端到達証明書をもらう。ほかのところは端っこで売ってるか証拠は特に求めないが、ここは証拠になる写真などを求めてくる。デジカメの画面の写真を見せて発行してもらう。ついでに、ごまだしうどんが食べれる店のマップももらう。
 喜びをかみしめたら荷物の発送をしにいく。郵便局に行ってみるが、ゆうゆう窓口があるくせに既に閉まってる。本当に最近の郵便局は使い物にならない。荷物の制限が無駄に厳しい。単3乾電池、ガスがついてないバーナーすら発送できない。閉まるのは早い。少しは民間の運送会社を見習って欲しい。真の意味での郵政民営化をして欲しいところだ。
 段ボールが小さいので4個買うのが痛いところだがヤマトの営業所に行く。営業所の玄関の前でパッキングを外して段ボールに詰め込む。多くの荷物がぬれているので、濡れてる物と乾いてるもので箱を分けたり工夫が必要だ。寸法もギリギリで納めるのが大変だ。途中で今着ているものを隣の店のトイレで着替えて来る。何とか荷物を詰め込んで発送が済んだ。箱のサイズさえゆうパック並みになれば、本当に便利だ。
 荷物を送ったら日が暮れてしまった。観光案内所でもらった地図を見ながら、ごまだしうどんを食べれる店を探す。良い感じの居酒屋街もあるし佐伯に泊まりたいところだった。そのまま通り抜けて、うどんを食べれる店を見つけたが、どうも入りづらい。国道沿いのうどん屋に入る。うどんと天ぷらを注文する。熱々のうどんにゴマ味噌と魚を混ぜた物がのっている。少し混ぜて食べてみると感動するほど美味しい。出汁がきいてるし、ゴマと味噌のコクが良い。あっという間に平らげた。佐伯は美味しい物が多い楽しむべき街だっただけに泊まる場所が見つからなかったのは本当に痛い。次は四国から渡って来るのが現実的かもしれないが、また来たい場所である。
 佐伯駅前に戻り自転車をばらす。もう慣れた手つきでランドナーを分解して輪行袋に詰め込む。絶妙のバランスで収まった。券売機で自由席特急券を別府まで買う。電車を待ってる間に日記を書き進める。そして、特急にちりんがホームに入ってきた。乗り込んで空いてる席に座る。また夢中で日記を書き進める。大分で特急ソニックに乗り換える。大分と別府は特急だとあっという間に着いてしまう。

九州最東端 到達証明書
(スキャナ故障中)


佐伯の郷土料理 ごまだしうどん


特急にちりん 大分行き

 別府で降りたらロータリーの向こうにあるホテルへ輪行袋を持ったまま歩いて行く。チェックインして部屋まで輪行袋を持ち込む。さっさとホテルに併設された温泉に入る。せっかく別府に来たなら温泉に入らないともったいない。温泉で疲れが取れて生き返る。別府だとビジネスホテルでも温泉が当たり前なので宿を選ぶ苦労が無くて良い。
 風呂を終えたら飲みに出かける。23時を回ったので開いてる店自体が少なくなってきた。俺はまだ居酒屋を探しているのに風俗に引き込む呼び込みが次々と来る。魚介系の居酒屋は見つからないが、馬刺し専門の店は見つかった。おばあさん一人で切り盛りしてる小さな馬肉専門の居酒屋がいい。奥の座敷は宴会中だが、カウンターなら自分のペースでのんびりできる。刺身、寿司、煮付けなど酒が進む。ビールと焼酎ですっかり満足して旅の最後を締めくくる。やたら元気なお婆さんが切り盛りしている姿が印象的な店だった。隠れた名店とも言える。
 酔ってふらふらとホテルへ歩いて戻る。別府という選択も正解だったようだ。

馬刺し盛り合わせ


馬肉の煮こみ


   出発(長崎県田平町)から 768.78 km

15日目 別府 -日豊本線→ 大分 -特急ソニック→ 小倉
-東海道山陽新幹線→ 東京 -東北新幹線→ 宇都宮
2015/05/10
 ホテルをチェックアウトして別府駅へ出る。朝飯は食べてないので駅の中にある唐揚げとかしわ飯で朝飯にする。大分の鶏は美味しい。かしわ飯の素朴な味が良い。別府で遊ぶところは無いというか少し遠いので、あまり行ったことがなく通り過ぎただけの大分に行ってみることにした。鈍行に乗って大分へ向かう。鈍行でもすぐに着く。
 大分駅は改装したばかりで、かなり大きくきれいな駅になっている。店もいっぱい入っていて買い物する気がある人には見所に欠かない。大分駅から出て楽しむのであれば、水族館のうみたまごなんかに行ってみたいが、そこまでの時間は無い。駅ビルの中で土産を探したりアウトドア店を見たり大分らしいことは出来なかった。スターバックスに入ってコーヒーを飲みながら日記の残りを書く。集中して書いたので少し進んだ。
 昼になってきたので、昼飯にする。駅ビルの中に回転寿司があったので、そこにする。関あじや関サバは外せないところだが、ほかにも魅力的なネタはいっぱいある。やはり海に面している大分は魚のレベルが高い。地魚をすっかり満足していく。もう今回の旅に思い残すことは無い。帰るのみだ。
 大分から宇都宮までの特急券と新幹線自由席券を買って、特急ソニックに乗り込む。大分始発なので座席は確実に確保できる。席に座ったら夢中で日記を書く。遅れは深刻だが、小倉までの特急と新幹線の乗り継ぎで書き切れるだろう。油断せずに進めたい。特急の車窓から見てると、北九州から宇佐や国東半島など行き残している場所もまだまだある。旅人である限り旅への欲求は持ち続けたいものである。

かしわ飯のおにぎり


大分名物 とり天


特急にちりん


特急 由布


九州横断特急


特急ソニック

 あっという間に小倉に着いた。やや広い小倉駅を輪行袋を持って歩いて新幹線ホームへ行く。東京行き のぞみに乗り換える。GWは終わっているのに座席は混んでいない。N700Aの窓側の席も取れた。コンセントがあると安心だ。D-SNAPで音楽を聴きながら日記を書き進めていく。乗り慣れてる路線なので車窓が気になることも無く集中する。東京に着く前に今日の現時点というところまで書き終えた。
 東京で東北新幹線に乗り換えると旅から現実に一気に引き戻される。ここまで来れば近い物で、あっという間に宇都宮に着いた。駅前で自転車を組み立てて土産物を左手に握りながら自宅まで戻る。今更ながらサドルが少し低いことに気付く。漕ぐと膝が少し余っている。ポジションをあげれば、もう少し楽に走れたのだろうか。夏に向けて、自転車のメンテやキャンプ道具のメンテなど課題はいっぱいあるが、向き合っていきたいものだ。自宅に帰り着いて、史上最長のGWの旅が無事以上の結果で終了した。


   出発(長崎県田平町)から 768.78 km

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