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11日目 |
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松江 → 出雲 → 大社 |
55.39 km |
1996/03/11 |
今日は安息日と言えるほどの短距離、まずは節目と思っている出雲大社まで行こう。テントの撤収も不安なほどに風が強い。天気も悪い。松江からひたすら宍道湖を右に見ながら進んでいく。向かい風に横風と渦巻いているような感じだ。時々通りかかる大型の車に巻かれてふらつく。白波立っている宍道湖にきつくて不安を感じる走り。思った以上にハードな一日になりそうだ。
午前中に宍道湖沿いの吹きさらしは抜けて、出雲市で昼飯。せっかくなので出雲名物の出雲そばを食って、出雲市内を抜けて大社の方へ。向かう途中で雨が降ってきた。どんよりとした雲、車もまばらな道を走って出雲大社を目指す。完全に雨なので宿をゲットする。出雲大社の前のえびすやYHへ電話を入れる。「夕食はどうしますか?」「頂けますか?」「外で食べてください」なんか嫌な予感がするほどかみ合わない会話。無愛想な態度。
出雲大社に着く寸前にワイナリーを見つけたので立ち寄る。全てフルーティーで飲みやすい系のワインだ。結構、かわいらしいお姉さんに勧められるまま酔っぱらうほど試飲し、泊めてくれた名古屋の親戚にセットを送り、再び雨の中を出発。 |
まさに神が降り立ちそうな荘厳な境内。さすが出雲大社だ。そろそろ浮いた話の一つや二つ欲しい年頃なので、お参りしていく。せっかくなのでお守りも買っていく。巫女さんが驚くほど美人揃いだ。
YHに着くと、無愛想なペアレントともう一人チャリダーが居た。俺と同じく飯は外で食えと言われてしまったらしく、俺より先に済ませていた。まだ峠にはまっていない俺とは違って山ばかりをひたすら走っている人だった。スキー場の前をチャリで通過したとも言っていた。夜中に自販機で飲み物を買うと、「ガラッ うるさい」とペアレントに怒られる。そんなに深夜でもないのに。もちろん禁酒YHだ。キャンプの方がましじゃないかと思うほどの一泊だ。 |

雨の出雲大社
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12日目 |
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大社 → 仁摩 → 浜田 |
106.25 km |
1996/03/12 |
さあ後半戦のスタートだ。のんびり準備をしていると、9時頃になると「チェックアウトしてください」とペアレントに追い出された。後にも先にも史上最低のYHだ。
古い大社駅に立ち寄る。立派な和風の建築の駅だ。今じゃ田舎の大きい神社という感じだが、昔は全国から参拝に来る大御所だったのだろう。でも少し洋風な感じもするいわゆる「はいから」な雰囲気も漂う。YH以外はよかった出雲の観光を締めくくるスポットだ。旧大社駅を後にして、また日本海沿いの激アップダウンロードへと向かっていく。つかの間の平穏な走りが終わった。 ここから海岸線沿いの道は、平らなところが全くないほどのアップダウンが続く。上り坂の途中で犬に追いかけ回されたり、警官に職務質問されたりで苦労が絶えない。今日は好天に恵まれて日本海が青くきれいだ。岩がちな海岸線と、その合間に見える真っ白な砂浜。海岸ツーリングの醍醐味を十分に味わわせてくれる。
仁摩で昼食と観光をかねて休憩。せっかくなのでサンドミュージアムに立ち寄ってみる。ガラスでピラミッド型の立派な建物。すぐそばには琴ヶ浜という鳴き砂の浜がある。世界最大の砂時計なんてのもある。ミュージアムはそこそこに見学し、砂浜に行ってみる。SPDに砂がかんだらいやなので靴を脱いで靴下も脱いで素足で歩く。鳴らない…。あきらめた。
気を取り直して、激アップダウンの国道を進む。浜田ぐらいまで走りたい。そうすれば明日には何とか萩までいけるだろう。そろそろ足も限界になってきたころ、浜田に到着。そのまま今夜の宿にしてしまおう。公園も風呂もあっさり見つかった。今日は質素にすます。浜田名物と思われる、鯖一本丸ごとの鯖姿寿司がうまい。当然、日本海沿いなので魚貝類は充実しているようだ。久々に本格的に寒いキャンプになってきたが眠りについた。 |

旧大社駅
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仁摩町 サンドミュージアム
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仁摩町 琴ヶ浜(鳴り砂)
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13日目 |
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浜田 → ホルンフェルス大断層 → 萩 |
135.79 km |
1996/03/13 |
今朝は妙に冷える。松江とか米子の暖かさすら懐かしい。テントに霜が降りている。寒さに震えながら、のんびりと撤収してると集団登校の小学生が集まってきてしまった。集合場所になっていたようだ。「おじさんどこまで行くの」「福岡まで」「今日?」「今日は萩までだな」言ってしまった。今日中に萩まで行きます宣言。今日は天気は良好。アップダウンに耐えれば快適な一日になりそうだ。
予想通りアップダウンは続いている。人もまばらな日本海沿いの道を走っていく。青い海と青い空が気持ちいい。そんなアップダウン責めの日々にも慣れてきたような気さえするほど走りは快調だ。もはや坂が苦手でアップダウンなんて論外な俺からアップダウン得意な俺に変貌しているのだろうか。 |
須佐で寄り道だ。3kmほど脇道をそれてホルンフェルス大断層へ行く。穏やかな海に縞模様の地層の岩がむき出しになっている。なかなかスケールの大きい景色だ。断層の崖の上のレストランで断層を眺めながら昼食。
一気に下って国道に戻り、西へ進む。小さな峠を越えて、ついに山口県に到達。鳥取と島根を抜けるとアップダウンも減った。穏やかな青い海と、そうでもないアップダウン。あとで考えてみると津和野にも行っておけばよかったのだが、萩に向けてスルーである。海岸沿いの道を一気に走り抜き、萩に到着。笠山と明神池など観光地もあったが、今日のところはスルーだ。明日の連泊で訪れよう。 |

ホルンフェルス大断層
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萩市内を丸一周するほどの走りで何とか宿を見つける。結局、萩城のそばの山の麓にテントを張る。飯も風呂も洗濯も済ませた日没後だ。つまりゲリラキャンプだ。テントを張り終えて荷物を放り込んだところで、斜面のうっそうとした茂みからガサガサッとカップルが降りてきた。心臓が飛び出るほど驚いた。もともと宿もやばげだし、明日の夜ぐらいから天気悪そうだし、フル装備でうろうろするぐらいなら、朝からYHに荷物を預けて2泊目を確保した方がよさげなので、萩YHに明日の予約を取りに行く。宿泊客もいっぱいで楽しそうだ。
なんとなく不安な心持ちで眠りについた。 |
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14日目 |
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萩 市内 |
40.81 km |
1996/03/14 |
さっさと荷物をかたづけて出発。すぐに萩YHにチェックインして荷物を全て置いていく。久々に身軽な走行だ。いきなり軽くなってしまったのでフラフラしてしまう。古式な城下町を自転車で散歩する。久々にのんびりと「サイクリング」を楽しんでいる自分がいる。古い町並みに夏みかんの垣根。やはり雰囲気がいい。
藩校・明倫館やら見学し、萩焼の器でコーヒーとケーキを楽しんだりで萩観光を満喫。せっかくなので萩焼の窯元なんかも見に行く。たまたま見学に行った窯元の職人さんと仲良くなってしまった。当然、まともな器を買うお金もなければ、自転車なのでわれものも運べない。明らかに冷やかしだが、いろいろ話につきあってくれた。ろくろを回して器用に作り上げていく。ものすごく見事なとっくりができあがったが、「まあ喋りながら作ったもんじゃ売り物にはならんよ」とその場でひねりつぶしてしまった。萩焼はツヤのある明るい色で使い込むと細かいひびのような模様がついていき、味が出る。比較的好きな焼き物のひとつでもある。 |
窯元の職人さんにすっかり楽しませてもらい、笠山と明神池へ行く。やっぱチャリ観光は便利だと思ってしまう。普通は池というと鯉なんかが泳いでるところを想像してしまうが、タイとかボラとか海の魚ばかりだ。地下から海水が流れていて海の水でできてる池のようだ。池のほとりを一周歩いていると冷たい風の吹いてくる風穴など不思議なものがおおい。歴史ある街と自然が味わえてしまう楽しい街だ。
売店でサザエの壷焼きを食って、萩市内へと戻る。ちょっと気に入ってしまった萩市内を回って萩城を見物してYHへ戻る。たまには人とふれあう宿もいいものだ。気さくなライダーにペアレント、女子大生もいっぱい。話も盛り上がり楽しい一泊になった。明日の天気予報にみんなで嘆きながらも・・・ |

萩焼 窯元 登り窯
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15日目 |
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萩 → 長門 |
35.27 km |
1996/03/15 |
そして朝から雨。今日、萩YHから旅立つやつで一番つらいのは俺だろう。ゴアをまとい、萩の街を駆け抜けていく。さらば萩。また来よう。長門市へと抜ける鎖峠を登っていく。200mほどの峠だがあっさりと越えてしまった。結構、とばしやすい下り。あれた日本海を右に見ながら下っていく。雨だがメーターは70km/hを表示している。峠を下りきり、海岸沿いを走り青海島の観光船乗り場に到着。コンディション最悪ながら最高速85.6km/hをマーク。
ちょっと波は高いようだが出航しているようだ。客はまばらだが、ここまで来たら乗るしかない。俺と物好きなカップルの3人を乗せた小さな観光船は走り出した。港を出た瞬間、波が高くなってきた。船が上下左右に揺れまくる。上下のGを感じるほどの揺れ。2人で抱き合って怖がっているカップル。揺れを楽しんでいる俺。結局、外海のコースは回れず引き返した。乗り場に戻ったら料金も返ってきた。無料でこれだけ楽しめればある意味元を取り返したと言える。
天候の回復も見込めず、行くあてもないので午前中で走りを終了し長門市に一泊することにした。観光船乗り場でストーブで暖をとりながら地元のおじさんと話して午後は暇をつぶした。長門市駅前に行きホテルを探した。なんと激安のホテルを見つけてしまった。しかも駅の真ん前。びしょぬれの荷物を部屋に持ち込み、チャリに鍵をかけようと思ったら、鍵が見あたらない。仕方なく近くのホームセンターに買いに行く。
駅前の定食屋で夕食を済ませて部屋に戻る。風呂もトイレも何と共同。俺の下宿と同じだ。今日も楽に夜は過ぎていき眠りについた。 |
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16日目 |
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長門 → 俵温泉 → 秋吉台 |
61.99 km |
1996/03/16 |
今日も雨は降っていないが天気は冴えない。177番に電話しても曇りの予報。何はともあれ出発だ。今日から内陸を抜けて下関へ向かう。さらば日本海。まず峠を越えて俵山温泉へ向かう。ちょっとした寄り道で男性器の形をした観音様を祭ってある麻羅観音へ行く。なんとも奇妙な境内だ。話のタネに寄ってみた。写真はこのリンクで。それだけではないが、割とにぎやかな温泉街もある。温泉饅頭を頬張って出発。
俵山から下って、渓流沿いの静かな道を走り石柱渓へ。六角形の断面の岩が連なる不思議な景色の渓谷を、歩いてみる。たまにはトレッキングもいいもんだ。木漏れ日を浴びてというわけには行かないが、深い緑のきれいな水とうっそうとした森、奇妙な形の岩。SPDのクリートを岩で壊さないように気をつけて歩く。 |
渓谷でのトレッキングの後は、再び走って弁天池へ。不思議な色をした澄んだ水の池。思わず写真に収めたくなるが、チャリと一緒に撮りづらく苦戦。池の真ん中に向かって青く色が変わっていく様が神秘的としか言いようがない。水がきれいだからこそなせるグラデーションだ。
そして秋吉台へと進んでいく。秋芳洞の入り口を過ぎてYHへと激坂を上っていく。今日は、天気も微妙だし国立公園だからキャンプもできなさげなので秋吉台YHに泊まることにした。YHは相変わらず不便で坂の上とかにあるものだ。坂を登り切るとYHがあり、その向こうには広がるカルスト台地が・・・。息をのむような絶景。明日はこのカルストの中を走り抜けられるのかと思うとわくわくしてくる。
YHの客はわずか3人。俺と関西人の女子大生2人。節々におもしろさがあふれている2人とコタツで夕食を食いながらTVを見る。なんか家庭みたいにこじんまりとした感じで、かなり楽しい。出会いのある旅というのも楽しいものだ。
部屋に帰ると俺一人だ。大きいYHの割に空いている。夕食は楽しかったが、部屋は少し寂しい。 |

弁天池
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秋吉台 カルスト台地
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17日目 |
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秋吉台 |
29.86 km |
1996/03/17 |
YHで女子大生2人を見送り、俺も本気で観光に行く。まずはカルストを軽く眺めて秋芳洞を散策だ。千枚皿や乙女の乳房など不思議な形の鍾乳石と黄金柱など豪快な鍾乳石。洞窟の中はかなり広い。もはや神秘に圧倒される。溶けては再結晶化を繰り返してできた造形美に驚く。すっかり鍾乳洞フェチになったのであった。
草原に白い岩がボツボツと出ているカルストのワインディングを走る。かなり楽しいサイクリングだ。こういう時こそ自転車の楽しさと醍醐味がある。開放感と立体で味わう景色。それなりにアップダウンしてるが荷物をYHに置いてきたので軽々と走り抜ける。大量の荷物でアップダウンを耐えて鍛えた体があってのことだ。カルストを走り抜けた先で洞窟見学だ。秋芳洞を見た後では小さい洞窟では物足りなさも感じてしまう。大正洞の探検コースは増水のため閉鎖。入水鍾乳洞の再来とは行かなかった。せっかくヘッドランプも準備してただけに残念。 先ほど走ったカルストを戻って行く。楽しく下った道をまた上る。精神的にきついもんだ。それでも何回見てもカルスト台地の豪快な景色はいい。存分に楽しみ、距離も短く足を休める一日となった。
YHに戻ると、かなり幸福な状況になっていた。俺以外の7人の客が全員女子大生だ。成蹊大のかなりカワイイ系のお嬢様と意気投合したりで、今日も楽しいミーティングタイムとなった。最近の宿運は恐ろしいぐらい良い。そこで運を使い果たしたか記念写真はピンぼけしてしまった。 |

秋芳洞
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秋吉台 ワインディング
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18日目 |
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秋吉台 → 下関 → 門司 → 福岡 |
149.65 km |
1996/03/18 |
昨夜、意気投合した女子大生を見送り、俺も出発。YHの前の激坂を歩いて下っていく彼女たちを追い越しピースサインで見送った。秋吉台から美祢そして下関へと追い風に乗ってグングン進んでいく。今日の予定地だった下関に午前中に到着してしまいそうだ。既に70km走っている。
もうすぐ終点の国道2号線に合流。バイパスのような道を相変わらず快調に飛ばし、海沿いに出た。向こうに関門橋が見えてきた。とうとう本州は終わりである。九州人の旅人はこの海峡を見ると妙に達成感がある。
壇ノ浦に架かる関門橋の下の人道トンネル入り口がある。そこで休憩し昼食を食い、エレベーターで地下に下って狭いトンネルを走る。半分は下り、半分は登りだ。下りきったところで福岡県突入!!
門司に着くとエレベーターをあがっていく。めかり公園の脇の道を小倉方面へ向かう。
国道3号線に乗ると、バイパスっぽい道が続いているので徹底的にとばしまくった。絶対に今日中に完走を決めてやる。そんな勢いだ。相変わらずの追い風で走りも絶好調。
そしてついに福岡市東区に突入。渾身のガッツポーズで境界線を突破。ここまで来れば高校生の頃にサイクリングしたコースだ。もはやゴールは見えてきた。そして南区へ・・・ どんどん見慣れた実家の近くの景色になってきた。そして実家の門が見えた。あと10m、9m・・・そして完走を決めた。
このとき、今まで味わったこともないような達成感と喜びが胸を突き上げた。同時に強い決心が俺に芽生えた。夏には日本縦断をして、もっと大きいものを得たい。楽しかった旅が終わる寂しさより、今日の喜びの方が大きかった。こうして次への目標も見いだして俺の旅は終わった。 |

関門橋
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福岡県突入!! (関門トンネル人道)
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