週刊 多事走論 バックナンバー 2007年10,11,12月合併号
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2007年10月1st Week
2007年10月6,7,8(土日月) 戸隠 New Style ツーリング

1日目 2007年10月6日(土) 晴

 うちの業界では珍しく祝日が休みになっているので、新しいツーリングスタイルの模索ということで、旅立ちました。俺の好きなことと言えば、車の長距離運転、キャンプ、自転車、温泉、グルメ これを一気に手軽に楽しめる方法を探りたいと思っています。電車での輪行を絡めた旅というのもいいのですが、車でひとっ走り行って、自転車乗って、キャンプで一泊して、そのキャンプ場は温泉の近くに取っておいて、買い出しなどは車でやれれば 美味しい物には簡単にありつけるという狙いです。そこでチョイスした場所は秋の紅葉と新そばが楽しめそうな長野・戸隠です。
 連休初日の明け方にPRELUDEを飛ばして向かいます。佐野藤岡まで東北道、そこから50号を進んで、北関東道から関越道に入って上信越道で長野へ向かいます。新たな発見ですが、上信越道から見える群馬県の妙義山や赤城山も侮れない美しさですね。今度は群馬県でのツーリングというのも案に入れてみたいですね。
 朝には長野にたどり着いて、8:30には信濃町の道の駅に到着です。出発前に地場産品の野菜を買ってPRELUDEのトランクに積み込みます。これは夕飯が楽しみな状況ですね。
 道の駅を出発すると、早速と言わんばかりに戸隠高原へと登っていくヒルクライムが始まりました。どうしようもないぐらいに体のキレは無く、えっちらおっちらと登っていきます。10%弱の傾斜が続く道を黙々と上りつつ今さらながら違和感のあるクリートポジションをなおしたりと感触を確かめながら登っていきます。特にスピードなどにこだわるわけではないが、いかんせんキレがないというのは焦りを生みます。
 走りを度外視して楽しまないと意味がありません。長野県ともなると、そこら辺に見える山の景色の迫力が違います。そして 雲がほとんど見あたらないほどの晴天。コンディションと景色はいいです。
 ヘロヘロになりながら坂を登ると、きれいな水をたたえた古くて雰囲気のいい水門と、向こうに戸隠岳が見渡せる雰囲気のいい場所に出ました。この雰囲気の良さを理解できるもう一人は、絵を描いていました。
 さらに坂を登って森の中を駆け抜けると、戸隠高原キャンプ場にたどり着きました。まずは今夜の宿をここで確定します。ちょうど「星見」のイベントも今夜行われるようで、しかもサイトまで車を乗り入れてもいいオートキャンプでありながら1泊3000円と比較的安いです。受付証とかゴミ袋を受け取って、また走り出します。キャンプ場の真ん前にあるカフェも少し気になりますが、まずは神社に行って、そばなので今日はスルーです。

戸隠高原への上り坂

水門
 戸隠神社・奥社へ向かう入り口に自転車を置いて、うっそうとした まっすぐな並木道を歩いていきます。MTB用SPDでよかったと思うほどの長い道のりが続きます。少しずつ紅葉し始めている森の中を進んでいきます。途中からは日光の杉並木を思わせるような道が始まり、最後は厳しい石段が続きます。自転車でやられた脚には重くのしかかります。
 ほどほどに涼しく熱を帯びてくる体には心地よい気温です。最後に奥社までたどり着くと、戸隠岳の山肌を見上げる見事な眺めがあります。昔の人が「ここに神が居る」と思って神社を作って崇めるのも十分に分かるような神秘的な荘厳さがあります。山の上の方は、きれいに紅葉していました。下界はまだ少し早いかもしれませんが、戸隠岳の上の方に少しだけ色づいた木々が見えるのも風情がいいです。
 そして、ぐっさん。は腹が減ってきました。ちょうど昼時です。長い並木道を戻っていきます。奥社の入り口の脇にあったそば屋さんが少し気になってましたので、そこを目指します。戸隠といえば秋の新そばを食べなきゃ来た意味がないですから、そば好きの俺としては足取りが急ぎ気味になります。
 純粋な盛りそばでも良いかと思いましたが、少しお腹も減り気味なので、漬けそばにしてみました。せっかくの新そばの味を邪魔してしまうかと思いましたが、とんでもない。そばのさりげなくも力強い甘みと香りは鴨に全く負けることもなく、過度に主張することもなく見事に釣り合うのです。これは新たな発見でした。戸隠まで来た甲斐が十分にあった一杯のそばになりました。
 今日か明日の夕食で、そんな漬けそばを作ってみたいなぁと思ってしまいます。あと、何とかして戸隠の竹細工で作ったざるを入手したいところです。

戸隠神社・奥社へと続く並木道

鴨漬けそば
 次は鏡池を目指します。しばらく見飽きない迫力の戸隠岳を右に見ながら森の中のリゾート地という感じの道を走り、少し気になる感じのこぎれいなそば屋の角を曲がって鏡池へと続く坂を登っていきます。覚悟はしていましたが、狭くて急な坂が続きます。午前中で体も温まって、少しだけキレが戻りつつあります。
 坂を登り切ると、急な坂を下り始めます。また後で登ることを考えると憂鬱な下りでもあります。坂を下りきると鏡池と戸隠岳が向こうに見えてきました。風で少しさざ波が立っている池と山 ある意味では平凡 ある意味では山の迫力のみ楽しめる中に池が良い雰囲気を醸し出しているという感じだろう。
 しばらく池のほとりをうろうろしながら写真を撮りながら、どこかで風がやまないかなと待っていた。そのとき、奇跡が起こった。風がぴたりとやんで全く揺れていない湖面が表れた。慌てて山が映りそうな角度へと走っていくと、見事に湖面に映る戸隠岳が見えたのだ。目と心にそしてカメラに焼き付けていく。胸にじーんとくるような絶景である。
 そして10分もしないうちに、また風が吹き始めてきて湖面がざわつき始めて、鏡は消えて無くなった。景色には大満足だが、紅葉には少し早すぎたようだ。満足できたので、また先ほど下ってきた坂を登って戻っていく。
 戸隠神社と蕎麦博物館に立ち寄りながら信濃町を目指していく。蕎麦博物館がなかなか面白く、戸隠の蕎麦の歴史や風土についての展示、そば粉を挽く水車小屋があり、見所もなかなか多い。時間があれば蕎麦打ちも体験できるようだ。
 そのまま森の中を駆け抜けて、いくつも続くアップダウンを耐えていく。下り基調ではあるものの、なかなか脚に堪える坂が続く。飯縄高原を抜けて、最後に坂を下りきって信濃町に戻ってきた。

戸隠 鏡池と戸隠岳

戸隠 大座法師池
 今夜は少し寒くなりそうなので、ほうとうにしようということで追加の買い出しをしに PRELUDEで出かける。道の駅で食材が揃うかと思ったが、どうも ほうとうは北信州ではマイナーなようで南か山梨のもののようだ。それでも、車をからめていくと このあたりが楽である。信濃町で一軒のみと思われるスーパーに行くと、味噌もうどんの麺もあった。野菜は道の駅の直売所で手に入れたので、あとは鶏肉。買い物を一通り終えたら、車で坂を登って先ほど受付を済ませたキャンプ場へと向かっていく。
 こんなのよく自転車で登ったよなぁと自分でも感心するほどの坂を登っていく。2速と3速あたりでシフトチェンジを楽しみながら車を坂の上へと導いていく。徐々に日が暮れてきた戸隠は寒さを帯びてきた。薄暗くなってきたキャンプ場にたどり着いて、車で流しながらテントを張る場所を探していく。空いているようで意外と混んでるというのが実感だ。
 場所を見つけてテントを張り、温泉へ行く。日が沈むとすっかり冷え込んでしまった。これは、ほうとうというチョイスが光ったような気がする。
 車を運転して温泉へ向かう。建物は立派だが、露天風呂が無いことに納得がいかず 少し残念ではあるが、疲れが取れて暖まる湯だ。
 キャンプ場に戻ったら、すぐに食材をさばく。腹も減ってきた。野菜と鶏肉をざくざくと切ってからテントへ持って戻る。最大サイズのコッフェルに張った水をわかして具材を入れていく。よけいな出汁は不要だ。全て長野の食材の味で勝負する。カボチャとジャガイモをグツグツと煮込み、ネギを入れて鶏肉を入れて、ほうとう用うどんを入れて煮込む。馬肉の薫製でワインを飲もうと思ったが、ワインオープナーを自宅に忘れて来るという初歩的なミスに気付く。仕方なくビールのみで晩酌だ。今夜は寒いので飲み過ぎない方が良いだろう。
 馬肉でビールを飲みながら、ほうとうが煮えるのを待つ。そして頭上に広がる星空を楽しむ。宇都宮とは比較にならないほどの星の数である。そうこうしているうちに、煮える音がグツグツと重みを増してきた。全ての具に火が通って狙い通りに カボチャが溶け始めて汁に味を与え始めてきた。フォークで鍋から直接楽しむ。全ての野菜の出汁が濃厚に出てきて味噌と合っている。濃厚な味噌とうどんで体が温まる。長野の大地の力は偉大で かなりの美味。
 ほうとうにも星空にも満足して世は更けていく。

信州名物・馬肉の薫製

キャンプ食事史に残る一品
秋の信州大地のほうとう


2日目 2007年10月7日(日) 晴

 少し体調は冴えない。朝から頭痛がする。天気が良いのでテンションだけは無理矢理あげながら、昨夜 歴史的一品となった美味のほうとうを温めて、残りのうどんをコッフェルに入れて茹でる。昨日からこなれたほうとうの味はさらに深まっていた。ものすごく冷たい水でコッフェルを洗ってテントの周りを少し片付けて、レーパンに履き替える。
 俺のキャンプ風景には少し違和感を感じる。まずテントのタイプ。普通はオートキャンプなら大きいファミリーテントだ。車はRVやミニバンが普通だろうが 俺はスポーツクーペ。そして自転車も小径車やMTBが多そうなもんだが、しゃきっとロードレーサー。ある意味では時代を先駈けている新スタイルの旅なのかと実感する。
 まずは昨日登ってきた道、そして今日も後で上る道を信濃町の方へ下っていく。登る道を下るのは精神的には楽しみが薄い。そして、意外に急な坂であることに気付く。傾斜表示で10%と書いた標識があちこちにある。よく登ってきたものだと感心すると同時に、夕方にはまた登るかと思うと げんなりしてしまう。
 坂を下りきったら黒姫高原へと向かいつつ道の駅に立ち寄る。少し休憩してMAZDA ROADSTERのオーナーミーティングを見物して出発する。高低差にして200mもない程度の上り坂を踏ん張って黒姫高原まで行くだけなら、まあそれほど大変でもないかとなめてかかっていたが、黒姫高原への上り坂が始まると、傾斜のきつさと体調のイマイチさに翻弄される。何度か足を地面につきつつ坂を登り切った。不安なほど体にキレがない。
 調子の悪いときもあるものだと割り切って、コスモス園の散策に入る。満開!はもう過ぎた感はあるが、まだまだコスモスは見頃。見事なスケールで咲き誇っています。コスモスは群生する花なので見応え十分です。
 リフトに乗ると山の上の方まで行って、さらに眺めを楽しめるので乗って上がっていきます。高いところが若干 苦手な俺には多少の恐怖があります。冬場なら一面の雪原で真っ白だし良いのですが、まだまだ地面が見えていると高さを感じます。
 リフトを登り切ると、そこから広がる景色が見事でした。近いところで野尻湖と斑尾山がそびえ立っています。遠くを眺めると北アルプスの山々やが一望できます。

黒姫高原のコスモス園

黒姫高原から眺める野尻湖
 コスモス園から坂を下りつつ黒姫高原の街で食事をする場所を探す。何軒か気になるそば屋を見つけたが混んでいたりで、どうもしっくり来ない。結局、信濃町まで下りきってしまった。そのまま店もない道を走り黒姫の駅の方へ向かう。駅のすぐ近くで、少しさえない雰囲気もある蕎麦屋を見つけた。食券制だし そば以外のメニューもあるし、入ってはみたものの少しハズレな感じもしてしまう。
 当然ながら昼は蕎麦にする。秋の新そばシーズンに長野の戸隠まで来ておいて、蕎麦以外を食べるのはもったいない。店が混み合っているせいもあって、蕎麦が出てくるのは時間がかかっている間に向かい側に座った関西人のおじさんと意気投合してしまった。MAZDA ROADSTERで大阪から飛ばしてきたということであるが、オーナーミーティングとは関係なかったようだ。旅と車を楽しむ自由な中年という感じだろう。
 待ってる間に天ぷらだけ先に来た。腹は減っているし揚げたての方がうまいので、天ぷらから頬張る。しかし、なかなか蕎麦が来ない。蕎麦と合わせるために衣が多めの天ぷらなので 少しきついなぁと思いながらも食は進む。
 そして、いよいよ真打ち 秋の新そばが来た。当然ながら冷たくしゃきっと打ったざる蕎麦にする。色も香りも歯ごたえも 天ぷらなどに負けないほどの強さと鮮やかさを持っている。でも 蕎麦らしくほんのりとさりげない程度の物だ。後から知ったが、このテキトーに入った店は信濃町あたりでは割と有名な店だったようだ。
 最後にそば湯も楽しんで店を後にした。店の前で自転車を準備していると、やたらと話しかけられてしまう。荷物満載のチャリダールックなら分からなくもないが、一般人にかわいがられるサイクリストでありたい俺としては嬉しいことである。同じく自転車を趣味にしている外国人の方には、これから坂を登る話をしたら、苦笑いしながら励まされた。
 野尻湖を回りたい予定だったが、頭痛が加速してきたのでキャンプ場へ戻って休むことにして戸隠高原の方へ再び坂を上り始める。意外や意外に昨日より体はキレていて、割と元気よく上れていく。ただ、踏ん張るたびに少し頭痛がしてくる。
 途中にススキの原の向こうに黒姫岳が見えている絶景が見えてきたので、藪をかき分けて少し高いところに立って写真を撮る。もう少し頑張れば、ちょっとした観光地になりそうなほどの景色だが、高さも少し足りず写真も撮りづらい。

黒姫駅前 しなの屋の天ざるそば


ススキの原っぱと黒姫岳

 10%の傾斜が続く坂を上り、キャンプ場の手前のギャラリーでコーヒーを飲んで休憩。体も温まったところでテントへ戻る。
 車に乗って下界へ一度下って夕飯の食材とワインオープナーを買いに行く。こういうところが車を絡めたツーリングの楽なところである。夕食は道の駅で新そばと馬肉の薫製を買い、酒屋でワインオープナーを調達し、スーパーで鶏肉も買って戻る。
 そのまま温泉へ向かって、風呂に入ってからテントへと戻る。すっかり日も暮れて真っ暗になったが、昨夜ほどの寒さはない。冷たいざる蕎麦も苦にはならなさそうだ。
 昨日から余っているネギとキノコを切って準備する。フライパンで鶏肉を焼いてネギも焼く。ネギの葉の部分は敢えて焦がして香りを出す。茎の部分も表面をほんのりと焦がしておく。最後にならたけを入れて火を通す。半分は蕎麦の付け汁用に分けておく。残り半分は完全に炒めきって塩胡椒で味を付けて炒め物にする。続いてつゆを沸かしながら、先ほどの炒め物と馬肉の薫製で地ビールを飲む…と思ったら、栓抜きがないことに気付いた。周りにあった鉄杭の角に押し当てながら蓋を開けて何とか乾杯できた。ビールを空けたら昨日買っておいた赤ワインで薫製を楽しむ。少しクセのある馬肉の薫製が赤ワインとばっちし合う 狙い通りだ。
 つゆが沸いたところで、鶏肉とネギとならたけを入れて味が出るようさらに火を通す。つゆに続いて蕎麦を茹でるためのお湯を自慢の特大コッフェルで沸かす。お湯が沸くまでは、しばらく晩酌を楽しむ。赤ワインを飲んでいると、少し飲み過ぎたか…と思うほど酔ってきた。時折、炊事場から出て空を眺めながら星見酒を楽しみつつ酒は進む。
 そしてお湯が沸いたところで、最後は蕎麦で締める。すっかり酔っぱらって良い気分になりながら、蕎麦を茹でる。キャンピングざる蕎麦というスタイルも徐々に確立しつつあり手慣れた物だ。ゆで加減を見極めて差し水をして、もう一度沸いたところでお湯を捨てて水をさっと入れる。このとき 麺をいかにこぼさずにお湯を捨てて素速く水を入れるかの勝負だ。鮮やかに決まった。冷水でちゃっちゃと洗って冷やしながらぬめりを取っていく。
 先ほど作った付け汁と合わせて食うと、さすがは戸隠の新そばだけあって、狙い通り付け汁とベストマッチである。昨夜に続いてヒットを連発した。
 満足の夕食を食って片付けて、また今夜も地面に仰向けになって星空を眺めてから眠りについた。明日は雨なのでアクティブな旅は今日で終わりだろう。

信濃ブルワリー地ビール
とがくし高原ワイン


信州 山の幸 ソテー 〜秋

つけ蕎麦の汁
(蕎麦の写真を撮るのを忘れた)


3日目 2007年10月8日(月) 雨

 朝からテントを打つ雨音が聞こえる。まだまだ布地は元気なので浸水の心配はないが、テントから出るのが億劫だ。テントの中で朝食にする。道の駅で買ってきた こずく饅頭を頬張りながら少しでも小降りになるタイミングを待つ。雨が少ないうちにテントから車へと荷物を移したい。
 しかし、雨は全く落ち着く気配がない。テントの中で待つこと1時間 あきらめて雨の中で撤収を始めます。荷物を持って車のトランクの前に居て作業しているとトランクの中が水浸しになりそうな雰囲気なので作戦変更だ。テントの近くの炊事場に一度荷物を移して軒先に車をバックで付けてトランクに入れる作戦に。テントから炊事場へ荷物を運んで屋根の下でテントの水分をはじいてトランクに全て積み込む。雨で整理されていないので行きよりボリュームが増えてしまったような感じである。

こずく饅頭
 雨ではかどらない作業をこなして、キャンプ場を後にした。雨の中、いろいろと寄り道をして買い物をしていく。まずはそばの本場・戸隠に来たら買わなきゃいけないでしょう。そばを食べるための「ザル」ということで戸隠に何軒かある竹細工の店を探して回ります。竹細工もピンキリなもので安いのもあれば高いのもある。安いのでも良いので そばが美味そうに見えるザルということでチョイスする。
 雨の森の中で車を走らせて、少し色づき始めた紅葉を楽しんでいると、ちょうど昼時になってきた。11:30と少し早いが鏡池へ曲がる交差点にある「そばの実」へ行く。大きなガラスから眺める戸隠の森と綺麗でありながらレトロな雰囲気がいい。
 そして蕎麦は地粉10割の戸隠そば。期間限定、数量限定の10割そばを頼んだ。その蕎麦には、めんつゆの他に岩塩がついてきた。何と岩塩だけでも楽しめるということだ。確かに、蕎麦の甘みと香りが十分にあるので、岩塩でもその味わいは引き立つ。突き出しに出てきた揚げそばも香ばしくて美味しい。新そばの本当の旨みを十分に味わえて満足だ。
 満腹になったところで戸隠忍者村へ立ち寄ってみる。雨でも楽しめそうな忍者のテーマパークである。茅葺き屋根の忍者屋敷が建ち並んでいる。いろんなからくりが仕込まれた屋敷を歩くところや、手裏剣を的に当てるところなど… 一人で来ても微妙というのが正直な感想ではあるが、忍者ごっこを真剣にしているようにしか見えない戸隠忍者に少し笑いを誘われる。
 忍者村を後にしてバードラインを走り長野市内へと下る。それにしても、急な坂が続くこのライン 長野から戸隠へのアプローチの厳しさと楽しさを感じる。善光寺にでも立ち寄ろうかと思ったが雨だし車を置く場所も近くなさそうだし行ったこともあるしスルーする。駅前に車を置いて土産を買って長野を後にした。雨の長野自動車道、上信越道を走って群馬県に戻ると晴れてきた。淡々と走って宇都宮へたどり着いて新しいスタイルを追求した旅は終わった。
 俺の好きな物を全て盛り込んだ旅であり、満足いく形となった。

戸隠 そばの実の十割そば

戸隠忍者

以上、多事走論でした。  ぐっさん。
2007年10月3rd Week
2007年10月21日(日) 渥美ぐる輪サイクリング参戦

 サイクリング大会史上 最も遠い場所で開催される大会に参戦です。前夜祭などの都合もあり宿泊は静岡ですが、場所は愛知県の渥美半島 最も遠い場所では伊良湖岬まで行きます。フェリーに乗っちゃえば三重県の鳥羽まで渡れてしまう場所です。
 今回は連敗STOPへ順調に出発から快晴です。夜中に移動する体力は無かったので、高速料金の割引なんかも一切無く容赦なく渋滞する首都高を抜けて静岡を目指します。天気が良くて東名から富士山がよく見えていました。余力は十分でしたが富士川SAにて休憩です。山頂のみ冠雪している姿は秋だけのものかもしれませんね。これが1〜2週間もすればおなじみの冠雪した富士山になります。
 一緒に走るメンバーはトラブルに巻き込まれていました。眼鏡を無くして車を運転できず、清水の山奥の温泉に取り残されています。俺がピックアップしに向かいます。何とかバスで興津駅まで出てきてもらってピックアップして静岡市の彼の家に向かい眼鏡を取ってきて、また清水の温泉へ向かいます。ようやく車を動かして降りてきたときには22時。明日の朝も早いので前夜祭という雰囲気にはならず、バイキング形式のレストランで夕食としてホテルへ戻り宿泊です。
朝はあっという間に訪れます。何しろ出発は5時なので4時半には身支度を済ませて駅へ向かいます。まだまだ真っ暗な静岡駅前のロータリーに集合して、高速に乗って西へ向かいます。どちらも走行性能がある車なので快調に飛ばして浜松ICで降ります。浜名湖バイパスで西へ向かい、渥美半島へ曲がっていきます。全く土地勘のない場所で戸惑いましたが、何とかスタート地点にたどり着きます。
 グローブ越しのパフパフとした拍手の中で開会式は執り行われました。今回の大会では「最も遠くから来たで賞」の表彰などはありませんでした。片道500km近くになったので自信はあったのですが、残念です。愛三工業の別府匠選手がアドバイザーとして参加していたり、なかなか至れり尽くせりな大会でロケーションも天気もよく期待が高まります。
 やや強い風に吹かれながら出発です。しばらくは集団のペースについて行きながら車道の脇を走っていきます。TOYOTAの工場のわきを抜けて、他の参加者と話しながら走っていき、いよいよ最初の山場である蔵王山が始まります。元々 ヒルクライムは強い方ではないので苦戦は苦戦だが、思ったより悪くないという印象だ。足は着いてもいいが、何とかインナーを使わずに登り切りたいが無理はしないつもりだ。足が不自由ながら手で動かすリカンベントで参加している人がいた。その逞しい上半身と精神力に脱帽だ。チェックポイントではアミノバリュー500mlとカロリーメートが支給された。

富士川SA(下り)から眺める富士山

スタート地点にて

蔵王山 山頂からの眺め
 蔵王山を慎重に下る。夏休みに秋田・寒風山の下りで事故を起こして以来、下りは怖くてしょうがないのでスピードが上がらない。とにかく道路の左端をトレースしながら下っていく。
 下りきったかと思ったら、ノーマークなことに急な坂で上り坂がおそってくる。早く海沿いでユルユルと走りたいところだが、そうはさせてくれないコースだ。秋の里山という感じの峠を越えて、しばらく半島の内陸のアップダウンをたえていく。田園風景を抜けていくと、やっと海が見えてきた。ものすごい急な坂を一気に下って海岸沿いに出たところでチェックポイントを迎える。ここではミネラルウォーター500mlとチョコレートが支給される。そろそろ水分もらい過ぎな感じである。スタートから1.5Lを突破した。
 半島の地形と海が見事な景色だ。南国のような気持ちの良い海岸線と砂浜がどこまでも続いています。
 こんな感じの海岸線を伊良湖岬まで走り続けられるのかと思うと少し楽しみである。所々では車道に出る場面はあるものの自転車道がちゃんと整備されて続いていて走りが気持ちいい。昔、ツーリングで駆け抜けた時は自転車道の存在に気付いていなかったので国道を走ってしまったが、それを取り返すかのように満喫していく。
 ただ、向かい風はなかなか強い。他の参加者を引いてあげつつ、たまに引いてもらいつつ走っていく。それでも、いつも一人で走っているからか、経験からか体力ない割に向かい風をいなしながら走って行けている方だろう。
 進めば進むほど視界は開けて、対岸の紀伊半島・鳥羽あたりも見えてきた。左は太平洋の大海原、足下には砂浜だったり岩場だったり変化のある海岸線、正面は伊良湖岬と対岸が見えている。これだけ眺めが良いと走りは気持ちがいい。

渥美ロングビーチの眺め

海とサイクリングロードと
向こうに見える紀伊半島
 海岸線を走り抜けると伊良湖岬への上り坂が始まった。どこに行っても岬の地形というのは複雑にアップダウンするもので、自転車道が森の中を登っていく。自転車用に整備してあるので傾斜はそうでもないが登ったり下ったりというのと、それまでの向かい風による疲労がそろそろ足にきつくのしかかる。
 土地勘がほとんど無いのだが、この近辺で昼食を確保しなくてはならない。説明では浜名湖のように支給されるような話はない。最後は伊良湖岬の道の駅でよさそうだが、様子を見ながらゆっくりと進めていく。そうこうしているうちにチェックポイントに着いた。ここでも緑茶が500mL支給される。そしてミカンが1個ついてきた。ドリンク支給は通算2.0Lとなった。真夏ならともかく この時期ではそんなに消費しないので飲み物がたまっていく一方だ。
 チェックポイントの展望台から眺める砂浜がかなりきれいだ。恋路ヶ浜などという名前が付いている。岬と岬の間にできた弓なりの砂浜ときれいな海がいい。
 さらに森の中の坂を登って伊良湖岬灯台のわきを抜けたら下り始めた。歩いて岬に向かう人もいるので慎重に下っていると、猛スピードで追い越される。頼むからマナーという物を身につけてほしい最近のサイクリストに説教したくなるが、坂を下りきると伊良湖岬の道の駅とフェリーターミナルにたどり着いた。サイクリストというもの、何故か岬など端っこに行きたがる。思えば色んな岬に行きました。宗谷岬、スコトン岬、納沙布岬、襟裳岬、白神崎、大間崎、竜飛崎、入道崎、禄剛崎、犬吠埼、野島崎、石廊崎、御前崎、潮岬、足摺岬、佐多岬… でも俺の一番好きなみさきは、伊東美咲です。
 冗談はさておき、自転車を置いて、ここで昼食にする。1Fでジャンク系なら手っ取り早いが、せっかくなら何か美味い物でもということで3Fのレストランへ行く。刺身とアサリの酒蒸しとジャコ飯が付いてくる定食を満喫する。海の眺めと飯ですっかりくつろぐ。サイクリング大会の途中であることも忘れるほどくつろぐ。

恋路が浜の眺め

伊良湖岬灯台

アサリの酒蒸し


ジャコ飯と刺身

 ここからは横風と追い風に吹きまくられながら走っていく。しばらくは田園の単調な景色が続いていく。こんなに直進が続くか?というほど長い道が続く。でも他の参加者もいるので道は正しそうだ。時折、横から吹き荒れる突風にふらつかないように気をつけつつ、時に向かい風、時に追い風 風力を利用しつつ振り回されないようにしつつ走っていく。
 しばらくすると交差点の左から大量の自転車が来た。どうやら道を間違えて どこかをショートカットしていたようだ。おかげで、かなり遅れが取り戻せたようである。
 今回のルートのスイーツポイント 鯛焼き屋の前で休憩するサイクリストがいっぱい見えてきた。せっかくなので休憩していく。サイクリストの並ぶ先には、焼いてる最中の鯛焼きがある。しばらく待つとおばあさんが焼き上げた。甘すぎず でもあんこの甘みと生地の香ばしさと熱々感。はみ出したあんこが焦げている部分がにくい。

渥美半島 行列のできる鯛焼き屋
 相方は少し疲れ気味だが、俺は風のいなし方を知っているからか多少は余力を残して最後に続くアップダウンを走り抜いていく。予定より10km弱 短縮してしまったコースを走り抜いてゴールに到着。それでも完走の歓びはある。とは言え、ショートカットしてしまったコースは来年にでもリベンジしたいところだ。
 アサリのみそ汁をもらって、土産を買って撤収する。夕日を浴びながら車を運転し、浜名湖バイパスと東名を飛ばして静岡へ戻る。明日は有休だ。今回は月曜出勤だと栃木まで帰り着く自信はない。静岡市内で打ち上げをして、ホテルへ戻って眠りについた。
 初めて参戦した大会であるが、今年の経験を生かして来年は走り抜くポイントと正しいコースと適度な寄り道を織り交ぜて、より楽しめそうだ。ヒルクライムが最初ってところがいい。

以上、多事走論でした。
2007年11月1st Week
2007年11月4日(日) 茨城ハーフセンチュリー参戦

 新たなサイクリング大会の開拓ということで、参加してみました。ひたちなか市から御前山方面に80kmほど走る大会です。今回も早朝から ひたちなかに集合ということで単独参戦でも朝は早いので寝不足です。スタートの準備をしてから一人で出発を待ちます。眠いので足を止めて休んでいると寒いし、動くと寝れないし難しいものです。
 そんなことを思いながらウロウロしていると、久々に見た佐治さんと飯口さんがいました。最近はリベルタスクラブとも距離を置いているので、仲間と会うこと自体が久々なのですが、もっと久々の仲間でびっくりです。結局、クラブのメンバーは多数参加していたので、みんなと久々の再会を果たしました。
 そして出走です。ゼッケン番号が俺だけ離れているので、先に出て行きます。写真を撮っていると、あっという間に容量不足で警告が出ました。何とSDカードを入れ忘れてきました。写真はケータイでしか撮れません。それか容量を小さくして内蔵メモリのみです。テンション下がります。
 スタートから茨城県らしい緩いアップダウンが続いています。そんなコースレイアウトからか走っている人はみんなストイックな感じです。とは言っても83kmを昼過ぎには帰ってこないといけないので、決して楽なルートではないです。
 コース自体は走ったことがないのですが、マップを見る限りアップダウンは多く、大枠で峠は2つありそうです。そして、笠間と同じでエイドステーションが少なすぎるので、補給や休憩は自分で考えながらやらないと身がもちません。
 おそらく1個目だろうと思える峠をグイグイと登っていきます。結構な長さの峠です。アップダウンの一部と数えるレベルではないです。ここ最近は調子を取り戻しつつあり、峠も何とか越えて休憩です。するとクラブのメンバー一人に抜かれました。速い人は速いものです。最近はツーリングクラブではなく、レーシングクラブなので。
 峠を下ってしばらく行くと、やっと1つめのチェックポイントです。長かった…。20kmおきぐらいにある浜名湖を見習って欲しいところです。しかも途中で休みたくなるような寄り道スポットもないのでストイックな感じですね。御前山の麓にあたるここで支給されるのは、御前山饅頭とバナナです。純粋な甘さのバナナで糖分を補い、少し塩気もあるアンコが美味い饅頭が良いですね。
 チェックポイントでしっかり休憩を取ってから、御前山の峠へ挑む。紅葉の中をのんびりと登っていきます。足を付かずに登るとかそういうことを追求する気はありません。景色が良いと思えば写真を撮る。内蔵メモリが許す限り それが俺のポリシィです。
 峠で他の参加者と話をしながら休憩して下っていきます。少しずつトラウマから脱出しつつある俺は元気に下っていきます。このあたりからはストイックなサイクリストとちょっとした競争状態です。さっさと抜いてくれればいいのに、俺の後ろについて走る人がいます。前に行かせると意外と速くなくて追いついてしまいます。
 鬱陶しくなってきたので、登りでちぎるという暴挙に出ました。アップダウンの登りのところでエイエイともがいて差をつけます。そして信号で追いつかれる… なんだか上手くいかないです。ただ、後半で疲れも出る距離でこれだけ頑張って走れている自分に納得です。

ひやまの御前山饅頭

御前山の上り坂


秋の気配が漂う那珂川

 来年に向けて手応えも掴めた走りは終わりを迎えた。無事以上の結果で完走を果たした。人と比べてどうこうは議論するつもりは無いが、去年までの俺に比べて速く強くなった。それだけで納得である。来年は27歳、28歳あたりの走りを思い出せるように体を作っていきたい。
 完走賞としてくじ引きにあたればリンゴが貰えるはずが外れて納豆となった。1ダースという量を一人暮らしの俺がどうやって消費しようなどと少し途方に暮れてしまった。完走賞の呼び出しを待つこと40分以上、やっと賞状をもらったので写真を撮って帰ろうかと思ったところで、クラブのメンバー達も帰ってきた。
 一緒に撤収して少し遅い昼食を共にして、それぞれに帰って行った。

完走賞の品々

以上、多事走論でした。

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